説明

検査装置、及び検査方法

【課題】従来の方法では、膜種が同じで、膜厚が異なる場合等は再度の実測が必要となり、検査条件を設定するのに時間がかかってしまう。
【解決手段】複数の検出光学系がそれぞれ、検光角を変える光学素子と、前記検光角を制御する検光角制御部と、を有し、処理部は、前記複数の検出光学系毎の、前記検光角と、前記検光角に対応した信号対雑音比と、前記基板の膜種と、前記基板の膜厚との関係を保存したデータベースを有し、前記データベースを更新していく。さらにSNR閾値を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、および方法に関するものである。例えば、半導体デバイスの製造工程で半導体ウェハ表面の異物や欠陥等を検査する方法,異物や傷等の欠陥を光学式検査装置、及びそれらを用いた半導体デバイスの検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウェハ等の基板の欠陥を検査する検査装置では、散乱光を検出する際、検光については考慮しないか、または、固定した検光角度で検査することが一般的である。
【0003】
近年では、微細化する半導体デバイス製造分野において各デバイス製造メーカが半導体デバイスの膜種(材料),膜厚,表面状態,プロセスなどの研究を重ね、独自に最適な設計を行い、多種多様な半導体デバイスが開発されるようになった。
【0004】
そのような多種多様な半導体デバイスを検査する際、それぞれのデバイスにおいて最高の感度設定をするためには、膜種,膜厚に応じた検光角の設定が必要であることが知られるようになった。しかし、膜種,膜厚に応じた検光角等の検査条件の設定には多大な時間を要する。
【0005】
検光角を変化させる先行技術としては以下の特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−47308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、表面を検査する装置において偏光を調整可能な照射ビームで表面を照射し、明視野,暗視野,グレーフィールドで検出できる検出器を複数配置している。そして、表面から散乱された光を検出器している。特許文献1では検出器に、偏光が調整可能なコントローラを配置していることが開示されている。
【0008】
しかし、膜種が同じで、膜厚が異なる場合等では、最適な検光角が異なる。そのため、特許文献1の方法では、膜種が同じで、膜厚が異なる場合等は再度の実測が必要となり、検査条件を設定するのに時間がかかってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の特徴を有する。なお、本発明は以下の特徴をそれぞれ独立して備える場合もあれば、複合して備える場合もある。
【0010】
本発明の第1の特徴は、基板に光を照射する照射光学系と、前記基板からの光を検出する複数の検出光学系と、前記検出結果に基づいて前記欠陥を検出する処理部と、を有し、前記複数の検出光学系はそれぞれ、検光角を変える光学素子と、前記検光角を制御する検光角制御部と、を有し、前記処理部は、前記複数の検出光学系毎の、前記検光角と、前記検光角に対応した信号対雑音比と、前記基板の膜種と、前記基板の膜厚との関係を保存したデータベースを有し、前記データベースを更新することにある。
【0011】
本発明の第2の特徴は、前記処理部は、前記複数の検出光学系毎の、信号対雑音比に閾値処理を施し、前記閾値より大きい信号対雑音比同士を計算して、より強調していくことにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以下の効果を奏する。なお、本発明は以下の効果を独立して奏する場合もあれば、同時に奏する場合もある。
(1)膜厚や膜種が異なる場合でも迅速な検査条件設定が可能となる。
(2)検出感度が従来より向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施例の検査装置の構成。
【図2】検出領域(散乱方位)分割図。
【図3(a)】検光角を回転させる例。
【図3(b)】領域A、前方散乱における最適角度105°の例。
【図3(c)】領域C、後方散乱における最適角度165°の例。
【図4】ディスプレイ13の表示例。
【図5(a)】斜方照射での検出領域の配置。
【図5(b)】垂直照射での検出領域の配置。
【図6(a)】本実施例のフローチャート。
【図6(b)】データベースの例。
【図7】SNR閾値を説明する図。
【図8】検量線を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1に本発明の実施例である検査装置の装置構成を示す。
【0016】
本実施例では、パターン無しウェハの検査装置を例として扱う。光源1から照射された光は、ミラー2aで光路を切替えられ、垂直照明光は集光レンズ3aで集光し被検査体である試料4に照射される。ミラー2b,2cを経由した光は、斜方照明光として、試料に照射される。
【0017】
試料4は回転ステージ、および直進Xステージ、および高さ方向Zステージを備えたXZθステージ5上に配置されており、それぞれステージには位置座標がわかるスケールが配置されている。
【0018】
試料4からの散乱光は複数配置された検出光学系で検出される。複数の検出光学系で検出された散乱光は、各検出光学系が備える集束光学系6(レンズ等)で集束され、検光素子7を介して、検出器8(光電子増倍管等)を通してA/D変換される。
【0019】
各集束光学系6には、検光角を変える検光素子7が配置されており、各検光素子7には、それぞれの領域毎(散乱方位)に個別に検光角を回転させることができる検光素子制御部12が接続されている。検光素子制御部12は検出信号の最適化をするため、検光素子7を180°回転させながら信号とノイズを検出する。
【0020】
検出した信号とノイズを処理部10で計算し、SNRが最適になる検光角度を求め、フィードバック部11から検光素子制御部12に指令を与え、個々の検出領域で前述の最適検光角度に設定を行う。そして、この最適検光角度で散乱光を検出し、処理部10で欠陥の検査を行う。なお、処理部10は後述するデータベースを備える。
【0021】
図2に検出領域(散乱方位)分割図を示す。本実施例では、検出領域を4分割した場合を示す。図2の場合、領域Aは前方散乱領域、領域Bは、側方散乱領域、領域Cは後方散乱領域となる。
【0022】
例えば図3(a)に示す通り、検光素子を180°回転させながら欠陥14からの信号301と試料表面からの背景光(ノイズ)302を検出させる。前方散乱領域である領域Aの信号301と背景光(ノイズ)302の検出強度は図3(b)のようになる。検出光強度と、背景光強度から検光角度毎の信号対雑音比(SNR)303を計算し、SNRが最大になる検光角度を算出する。
【0023】
図3(b)では、領域A、前方散乱において、検出角度105°が最適角度になることが分かる。
【0024】
同様に図3(c)では、領域C、後方散乱において、165°が最適角度と分かる。
【0025】
なお、検光角は、試料面からの検光素子の透過軸を示している。本実施例であれば、このように検出領域によって検光角度の最適位置が異なる場合でも、領域毎(散乱方位毎)の最適な検光角を設定することができる。
【0026】
また、異なる材質の試料を検査する場合も領域毎(散乱方位毎)に最適検光角度が異なる。この場合は、標準粒子を塗布した被検査体をステージに乗せた後、被検査体を回転させながら検光素子を回転させる。標準粒子からの散乱光(信号)と被検査体表面からの背景光を取得し、最適角度を算出し、検光検出素子を最適位置に設定する。設定が終わった後、試料全面の検査を行うことで、ある被検査体で装置の最高感度を引き出すことが可能となる。信号取得では、例として標準粒子としたが、実異物など信号が取得できるものがあれば良い。
【0027】
図1のディスプレイ13には、図4のような各領域毎の信号やノイズ,SNRといったグラフ、および検光最適角度の情報などを表示することが可能である。
【0028】
また、検光設定値を手動で変更した場合や、検出領域を選択した場合のSNRが自動計算され表示される。SNRのグラフでは、グラフをクリックすると検出角度とSNRが表示される。
【0029】
また、図5(a)に示すように斜方照射の場合、試料4に対して斜方から入射する光に対して検出領域を対称に配置することで、実際の回転角度を半分にすることができ、検光検出最適値実測時間=180°÷領域数となり、最適検光検出角度設定までの時間を半減できる。図5(a)の場合、前方,側方,後方共に2領域ずつ検出領域が配置されているため、検光検出最適値実測時間は半分となる。
【0030】
図5(b)に垂直照射の場合を示す。垂直照射の場合は、検出領域は全方位で対称なので、斜方照射と同様に検光検出最適値実測時間=180°÷領域数となる。
【0031】
以降は、図6(a)のフローチャートを用いて、本実施例の処理の流れを説明する。
【0032】
まず、試料を測定する601。処理部10に登録された図6(b)に示すようなデータベース(膜種,膜厚,検光角,検出方位に対応した検光角等が登録されたもの。)を確認し、膜種,膜厚が既知か未知かを確認する602。
【0033】
また、グラフボタンを押すと図6(c)に示すような膜厚を振った場合のグラフが表示される。既知の膜種(光学係数)や膜厚を入力すると、最適な検光検出角度を表示する。また、実測した結果とデータベースを比較することで、膜種,膜厚の推測も可能となる。
【0034】
次に、膜種,膜厚が未知の場合について説明する。
【0035】
膜種,膜厚が未知の場合は、図3(a),(b)のように試料の測定603を行い、検出領域毎(検出方位毎)に最も大きいSNR、その時の検光角を算出する604。
【0036】
次に算出したSNR及び検光角について、データベースとの比較を行うか否かを選択する605。比較を行わない場合は、604にて算出した検光角を設定し、で検査を行う618。
【0037】
比較を行う場合606は、検出領域(検出方位)と検光角との関係から、膜種,膜厚を推定する607。
【0038】
データベースのデータと類似性がある場合は、データベースの値を検査に使うのか、実測した値を検査に使うのかを選択する608。
【0039】
比較を行ったが、類似性が無い場合は、新たなデータとして、検出領域(検出方位),SNR,検光角等の情報を、新たにデータベースへ登録し、データベースを更新していく609。
【0040】
次に、膜種,膜厚が既知の場合について説明する。
【0041】
膜種,膜厚が既知の場合は、データベースを確認する610。
【0042】
データベースに該当するデータがある場合は、過去の計算結果すなわち登録されている検光角を検査に使用する613。
【0043】
データベースに該当するデータが無い場合は、図1乃至図3の状態、すなわち検査装置をモデリングした光学シミュレーションを使用して611、SNRが最大となる検光角を算出する612。
【0044】
ここで、612,613で算出した検光角を実測値と比較し、検査で使用する検光角を決定しても良い614〜617。なお、実測する方法は前述した図3(a),(b),603,604の方法と同様である。
【0045】
そして、上記のフローで決定した検光角を用いて検査を行う618。
【0046】
そして、後述するSNR補正の選択を行い619,620、検査結果を表示し621、検査は終了する622。
【0047】
上記のような、フローを行うことで以下の効果を奏することができる。
(1)膜種,膜厚が未知の場合でも、最大のSNRを実現する検光角を用いて検査を行うことができる。
(2)算出した検光角等をデータベースに登録していくため、膜種,膜厚が異なる場合でも実測を行うことなく迅速に検査を行うことができる。
(3)膜種,膜厚が既知の場合は、データベースと照合するだけで実測を行わない分、検査を迅速に行うことが可能となる。
【0048】
また、図6(a)のようなフローをディスプレイ13にツリー状に表示、作業者がマウス等の入力装置で選択できるようにすれば、作業者は従来よりも容易に検査条件を設定することができる。
【0049】
併せて、図4や図6(b)の画面も表示すれば、より容易に検査条件を設定することができる。
【実施例2】
【0050】
次に実施例2として、さらに検出感度を向上させる方法について説明する。実施例1の方法では、検出方位(散乱方位)毎に最適なSNRを設定することができた。処理部10では、検出した信号と閾値を比較して欠陥を検出するが、本実施例では、検出方位(散乱方位)毎に最適に設定されたSNRを乗算し、SNRのSの部分をさらに強調する。さらに、特定の検出方位のSNRを除くような値(SNR閾値)を設ける。例えばSNR閾値を1以上に設定すれば、乗算結果が小さくなるような値を除くことができるので、SNRは強調される方向にのみ乗算されることが可能となる。なお、このSNR閾値は処理部10において、任意に変更することが可能である。
【0051】
実施例2を、図7を用いて説明する。SNR補正機能としてSNR閾値以上の検査領域結果を乗算することでSNRをさらに向上することができる。
【0052】
検出領域AのSNR701はSNR閾値711より大きいので、計算に使用する。同様に検出領域BもSNR閾値より大きいので、計算に使用する。領域CはSNR閾値以下のため702、領域Cの結果は、採用しない。
【0053】
そして、領域A、およびBに対して信号を乗算703し、ノイズに対しても領域AとBの結果を乗算する704と、最終SNR705は大幅に向上する。SNRしきい値以上の2領域の検出信号(領域Aの検出信号As)同士を乗算した結果がS_Totalとなる。
【0054】
S_Total=AsxBs ・・・・703
N_Total=AnxBn ・・・・704
SNR=S_Total/N_Total ・・・・705
【0055】
なお、S_Totalは領域数で除算してもよいし、単純和と同値になるように検量線を用いて補正してもよい。
【0056】
また、この機能を使用することで、最高感度検出のみでなく、信号強度が各領域で一定となる設定や、背景光を一定にする設定、SNRを一定に設定するということも可能である。
【0057】
なお、このSNR閾値を用いたSNR補正は、図6の619〜620に示すように任意に選択することができる。図6では、SNR補正は620において行われる。
【0058】
図8に示す通り、処理部10では、検出光強度を欠陥サイズに換算するのに検量線が用いられている。801は、単純和やシミュレーションを用いて作成した検量線である。前記の通り、SNRしきい値を用いて信号,ノイズ同士の乗算を行い、SNRを算出した場合の検量線802は傾きや形状が大きく異なる。これは、同一検出輝度Aでの検出欠陥サイズが基準検量線を使用した場合、欠陥サイズがBとなるのに対し、本実施例で測定した結果では、欠陥サイズがAとなり、検出欠陥サイズが異なることを示している。
【0059】
本実施例では、この検量線801に適合するように検量線802の傾きを調整する。これによって、検出輝度Aに対して検出欠陥サイズはCとなり、同一指標での検査が可能となる。
【0060】
この方法を採用すると単純和や領域毎にある係数を乗算して重み付けした結果の総和をとる以上に、SNRの向上が見込める。Noiseに対しても同様の処理を行った結果を用いて、上記信号とノイズとの比を取ることにより、SNRが向上する。
【0061】
本発明は、本実施例には限定されない。検査対象はウェハ,ハードディスク基板,液晶基板等であっても良いし、装置構成は本実施例に示す構成でなくても良い。検光を用いる検査装置に幅広く適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 光源
2a,2b,2c ミラー
3a,3b 集光レンズ
4 試料
5 XZθステージ
6 集束光学系
7 検光素子
8 検出器
9 A/D変換器
10 処理部
11 フィードバック部
12 検光素子制御部
13 ディスプレイ
14 欠陥
301 信号
302 ノイズ
303 SNR

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の欠陥を検査する検査装置において、
基板に光を照射する照射光学系と、
前記基板からの光を検出する複数の検出光学系と、
前記検出結果に基づいて前記欠陥を検出する処理部と、を有し、
前記複数の検出光学系はそれぞれ、
検光角を変える光学素子と、前記検光角を制御する検光角制御部と、を有し、
前記処理部は、
前記複数の検出光学系毎の、
前記検光角と、前記検光角に対応した信号対雑音比と、前記基板の膜種と、前記基板の膜厚との関係を保存したデータベースを有し、
前記データベースを更新することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記処理部は、
前記複数の検出光学系毎の、
信号対雑音比に閾値処理を施し、
前記閾値より大きい信号対雑音比同士を、乗算、または加算することを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−209088(P2011−209088A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76565(P2010−76565)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】