説明

構造の電磁散乱特性を計算し、近似構造を再構築する方法及び装置

【課題】回折格子の輪郭を再構築するCSIアルゴリズムを開示する。
【解決手段】電流密度Jの体積積分式を解くには、Jの近似解を求めるように、E及びJの連続成分を選択することにより、電場E及び電流密度Jに関連するベクトル場Fの暗示的構築を使用し、Fは1つ又は複数の材料境界にて連続している。Fは、少なくとも1つの方向x、yに関して少なくとも1つの有限フーリエ級数で表され、体積積分式を数値的に解くステップは、Fの畳み込みによってJの成分を決定することを含み、畳み込み演算子Mは、両方向の材料及び幾何構造の特性を含む。Jは、両方向に関して少なくとも1つの有限フーリエ級数で表すことができる。連続成分は、E及びJに作用する畳み込み演算子P及びPNを使用して抽出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、構造の電磁散乱特性の計算に関する。本発明は、例えば微細構造のメトロロジーに適用して、例えばリソグラフィ装置のクリティカルディメンション(CD)性能を評価することができる。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板のターゲット部分に適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。このような場合、代替的にマスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成すべき回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ又は幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターンが与えられる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。従来のリソグラフィ装置は、パターン全体をターゲット部分に1回で露光することによって各ターゲット部分が照射される、いわゆるステッパと、基板を所与の方向(「スキャン」方向)と平行あるいは逆平行に同期的にスキャンしながら、パターンを所与の方向(「スキャン」方向)に放射ビームでスキャンすることにより、各ターゲット部分が照射される、いわゆるスキャナとを含む。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へとパターンを転写することが可能である。
【0003】
[0003] リソグラフィプロセスを監視するために、パターン付き基板のパラメータ、例えば基板内又は基板上に形成された連続層間のオーバレイ誤差を測定する必要がある。走査型電子顕微鏡及び様々な専用ツールの使用を含め、リソグラフィプロセスで形成された微細構造を測定するための様々な技術がある。専用検査ツールの一形態が、放射のビームを基板の表面上のターゲットに誘導し、散乱又は反射したビームの特性を測定するスキャトロメータである。基板によって反射又は散乱する前とその後のビームの特性を比較することにより、基板の特性を決定することができる。これは、例えば既知の基板特性に関連した既知の測定値のライブラリに格納されたデータと反射ビームを比較することによって実行することができる。スキャトロメータは2つの主なタイプが知られている。分光スキャトロメータは広帯域放射ビームを基板上に誘導し、特定の狭い角度範囲に散乱した放射のスペクトル(波長の関数としての強度)を測定する。角度分解スキャトロメータは単色放射ビームを使用し、散乱した放射の強度を角度の関数として測定する。
【0004】
[0004] さらに一般的には、散乱した放射を、構造の複数のモデルから数学的に予測された散乱挙動と比較することができ、予測された挙動が現実のサンプルから観察された散乱と一致するまで、これを自由に設定し、変更することができれば有用である。残念ながら、数値処理によって散乱をモデル化する方法は原則的に知られているが、既知の技術の計算負荷によって、このような技術は非現実的になり、リアルタイムの再構築が望ましい場合、及び/又は関係する構造が1次元で周期的な単純構造よりも複雑である場合に特にそうである。
【0005】
[0005] CDの再構築は、逆散乱という一般名で知られる一群の問題に属し、逆散乱では観察データを可能な物理的状況と突き合わせる。その目的は、可能な限り近い観察データを生じる物理的状況を発見することである。スキャトロメータの場合は、電磁理論(マクスウェルの方程式)によって、所与の物理的状況に対して測定(散乱)データがどうなるかを予測することができる。これを前方散乱問題と呼ぶ。逆散乱問題は、実際の測定データに対応する適切な物理的状況を探し出すことになり、これは通常、高非線形の問題である。この逆散乱問題を解くには、多くの前方散乱問題の解を使用する非線形ソルバを使用する。既知の再構築方法では、非線形問題が3つの成分に基づいている。
・測定データと推定した散乱設定から計算したデータとの差のガウス・ニュートンの最小化
・散乱設定のパラメータ化した形状、例えばコンタクトホールの半径及び高さ
・パラメータ更新毎の前方問題の解(例えば計算した反射係数)の十分に高い精度
【0006】
[0006] 逆散乱問題を解決するために最近の文献に記録されている別の成功アプローチは、コントラスト源反転(Contrast-Source Inversion: CSI)[14]である。本質的に、CSIはデータの不整合とマクスウェルの方程式の不整合とを同時に解決する公式化を使用する、すなわち、最小化の各ステップでマクスウェルの方程式を十分な精度まで解かない。さらに、CSIはパラメータ化した形状ではなく、ぼやけた像を使用する。
【0007】
[0007] CSIが成功したのは、基本的な未知数として、いわゆるコントラスト源J及びコントラスト関数χに関して逆問題を再公式化したことによるところが大きい。この再公式化によって、測定データの不整合がχからもJの線形問題からも無関係になるが、χとJの結合により、マクスウェルの方程式の不整合は非線形のままである。CSIは、体積積分法(Volume-Integral Method: VIM)[14]、有限要素法(Finite Element method: FEM)[15]、及び有限差分法(Finite Difference: FD)[16]とうまく結合された。しかし、基礎となる数値的方法(VIM、FEM、FD)はすべて、空間公式化及び空間離散化(すなわち、ピクセル又はメッシュ)に基づいている。
【発明の概要】
【0008】
[0008] 半導体処理の分野では、電磁散乱特性の正確な計算を迅速に実行することが望ましい。
【0009】
[0009] 本発明の第1の態様によれば、構造の電磁散乱特性を計算する方法であって、構造が、材料境界にて電磁場に少なくとも1つの不連続を引き起こすような様々な特性の材料を含み、前記方法が、電磁場の連続成分及び電磁場に対応するスケーリング電磁束密度の連続成分で演算するために、コントラスト電流密度の体積積分式を、場と材料の相互作用演算子を使用してコントラスト電流密度の成分を決定することによって、数値的に解くステップであって、スケーリング電磁束密度が電磁場及びコントラスト電流密度の不連続成分のスケーリング合計として形成される、ステップと、コントラスト電流密度の決定された成分を使用して構造の電磁散乱特性を計算するステップとを含む、方法が提供される。
【0010】
[0010] 本発明の第2の態様によれば、放射線によるオブジェクトの照明で生じる検出された電磁散乱特性からオブジェクトの近似構造を再構築する方法であって、少なくとも1つの構造パラメータを推定するステップと、少なくとも1つの構造パラメータから少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定するステップと、検出された電磁散乱特性を少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較するステップと、比較の結果に基づいて近似オブジェクト構造を決定するステップとを含み、モデル電磁散乱特性が第1の態様による方法を使用して決定される、方法が提供される。
【0011】
[00011] 本発明の第3の態様によれば、オブジェクトの近似構造を再構築する検査装置であって、オブジェクトを放射で照明するように構成された照明システムと、照明から生じた電磁散乱特性を検出するように構成された検出システムと、少なくとも1つの構造パラメータを推定し、少なくとも1つの構造パラメータから少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定し、検出された電磁散乱特性を少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較し、検出された電磁散乱特性と少なくとも1つのモデル電磁散乱特性との差から近似オブジェクト構造を決定するように構成された処理装置とを備え、該処理装置が、第1の態様による方法を使用してモデル電磁散乱特性を決定するように構成される、検査装置が提供される。
【0012】
[0012] 本発明の第4の態様によれば、構造の電磁散乱特性を計算するために機械読み取り可能命令の1つ又は複数のシーケンスを含み、命令が1つ又は複数の処理装置に第1の態様による方法を実行させるようになされている、コンピュータプログラムプロダクトが提供される。
【0013】
[0013] 本発明の別の特徴及び利点と本発明の様々な実施形態の構造及び作用を、添付の図面を用いて以下に詳述する。本発明は、本明細書に記載する特定の実施形態に限定されないことに留意されたい。このような実施形態は、例示のみを目的として本明細書に記載されている。本明細書に含まれる教示に基づいて当業者はさらなる実施形態を容易に思い付くであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
[0014] 本明細書に組み込まれ、明細書の一部をなす添付の図面は、本発明を例示し、説明と共に、本発明の原理をさらに説明し、当業者が本発明を実施して使用することを可能にする。
【図1】[0015]リソグラフィ装置を示す。
【図2】[0016]リソグラフィセル又はクラスタを示す。
【図3】[0017]第1のスキャトロメータを示す。
【図4】[0018]第2のスキャトロメータを示す。
【図5】[0019]スキャトロメータの測定値から構造を再構築するために本発明の実施形態を使用する第1の例のプロセスを示す。
【図6】[0020]スキャトロメータの測定値から構造を再構築するために本発明の実施形態を使用する第2の例のプロセスを示す。
【図7】[0021]本発明の実施形態により再構築することができる散乱幾何形状を示す。
【図8】[0022]バックグラウンドの構造を示す。
【図9】[0023]グリーンの関数を使用して散乱場と層状媒体の相互作用を計算することを示す。
【図10】[0024]コントラスト電流密度のVIM式に対応する線形系を解く高レベルの方法のフローチャートである。
【図11】[0025]従来技術で知られているようなコントラスト電流密度のVIM式を使用して更新ベクトルを計算するフローチャートである。
【図12】[0026]本発明の実施形態を示す。
【図13a】[0027]本発明の実施形態による更新ベクトルの計算のフローチャートである。
【図13b】[0028]本発明の実施形態によりコントラスト源反転でVIM式を解く際に使用するコントラスト電流密度の行列ベクトル積のフローチャートである。
【図13c】[0029]図13bの行列ベクトル積に使用する材料及び投影オペレータの動作のフローチャートである。
【図14】[0030]本発明の実施携帯による構造の電磁散乱特性を計算する方法のフローチャートである。
【図15a】[0031]オフセットcがある回転楕円のグローバル(x,y)及びローカル(x”,y”)座標系の定義である。
【図15b】[0032]楕円座標系のNV場を示す。
【図15c】[0033]楕円の等角写像を示す。
【図16a】[0034]矩形の連続NV場を示す。
【図16b】[0035]矩形の不連続NV場を示す。
【図17】[0036]基本形状の「ドッグボーン」のメッシュを示す。
【図18】[0037]本発明の実施形態により、断面が角丸矩形のプリズムの法線ベクトル場を、これより小さい矩形及び円弧から構築することを示す。
【図19】[0038]回転してシフトした三角形をNV場及びローカル座標系で示す。
【図20】[0039]回転してシフトした台形をNV場及びローカル座標系で示す。
【図21】[0040]回転してシフトした円弧をNV場及びローカル座標系で示す。
【図22】[0041]段階的近似によって楕円を近似する手順を示す。
【図23】[0042]本発明の実施形態による方法を実行するために、プログラム及びデータで構成したコンピュータシステムを概略形式で示す。
【0015】
[0043] 本発明の特徴及び利点は、類似の参照番号がそれに対応する要素を一貫して識別する図面を参照しながら以下の説明を読むことでさらに明らかになろう。図面では、通常、類似の番号が同一の、機能が類似した、及び/又は構造が類似した要素を示す。ある要素が最初に出現する図面は、対応する参照番号の左端の1つ又は複数の数字によって示される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0044] 本発明は、均一性補償器を用いて、例えば、照明ビームの移動、光カラムの均一性、均一性補償器のドリフトなどによって引き起こされる均一性ドリフトを補償する方法に関する。本明細書は、本発明の特徴を組み込んだ1つ又は複数の実施形態を開示する。開示された実施形態は本発明を例示するに過ぎない。本発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【0017】
[0045] 記載される実施形態、及び明細書内の、「一実施形態」、「ある実施形態」、「例示の実施形態」などの表現は、記載された実施形態が特定の機能、構造、又は特性を含むことができる旨を示すが、すべての実施形態が特定の機能、構造、又は特性を必ずしも含まなくてもよい。さらに、このような字句は、必ずしも同じ実施形態に言及している訳ではない。さらに、特定の機能、構造、又は特性がある実施形態に関連して記載されている時には、明示的であるか否かを問わず、当業者は知識の範囲内でこのような機能、構造、又は特性を他の実施形態に関連して扱うことができると考えられる。
【0018】
[0046] 本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組合せで実施してもよい。また、本発明の実施形態は、1つ又は複数のプロセッサによって読み出して実行することができる機械読み取り可能媒体に格納された命令として実施してもよい。機械読み取り可能媒体は、機械(例えば、コンピュータ装置)が読み取れる形式で情報を記憶又は伝送できる任意の機構を含んでもよい。例えば、機械読み取り可能媒体は、読取専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM),磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音声又はその他の形態の伝搬信号(例えば、搬送波、赤外線信号、ディジタル信号など)、その他を含んでもよい。さらに、本明細書に一定の動作を実行するファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令を記載してもよい。しかし、そのような記載は便宜のためだけであり、そのような動作は、実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピュータ装置、プロセッサ、コントローラ、又はその他のデバイスによって行われる。
【0019】
[0047] このような実施形態を詳述する前に、本発明の実施形態を実施することができる例示の環境を提示することが有用であろう。
【0020】
[0048] 図1は、リソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えばUV放射又はDUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構成され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続された支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つ又は複数のダイを含む)に投影するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PLとを含む。
【0021】
[0049] 照明システムは、放射の誘導、整形、又は制御を行うための、屈折、反射、磁気、電磁、静電型等の光学コンポーネント、又はその任意の組合せなどの種々のタイプの光学コンポーネントを含んでいてもよい。
【0022】
[0050] 支持構造は、パターニングデバイスを支持、すなわちその重量を支えている。支持構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。この支持構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械式、真空式、静電式等のクランプ技術を使用することができる。支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置にくるようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
【0023】
[0051] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに与えられるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。通常、放射ビームに与えられるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
【0024】
[0052] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小さなミラーのマトリクス配列を使用し、そのミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
【0025】
[0053] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折型光学システム、反射型光学システム、反射屈折型光学システム、磁気型光学システム、電磁型光学システム及び静電型光学システム、又はその任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なしてもよい。
【0026】
[0054] 本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)。
【0027】
[0055] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)又はそれ以上の基板テーブル(及び/又は2つ以上のマスクテーブル)を有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルを並行して使用するか、1つ又は複数の他のテーブルを露光に使用している間に1つ又は複数のテーブルで予備工程を実行することができる。
【0028】
[0056] リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を水などの比較的高い屈折率を有する液体で覆えるタイプでもよい。液浸液は、例えばマスクと投影システムの間など、リソグラフィ装置の他の空間に適用することもできる。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させるために当技術分野で周知である。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板などの構造を液体に沈めなければならないということをもっぱら意味するのではなく、露光中に投影システムと基板の間に液体が存在するというほどの意味である。
【0029】
[0057] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDを用いて、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0030】
[0058] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するアジャスタADを備えていてもよい。通常、イルミネータILの瞳面における強度分布の少なくとも外側及び/又は内側半径範囲(通例それぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調整することができる。また、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを備えていてもよい。イルミネータILを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
【0031】
[0059] 放射ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスク)MAに入射し、パターニングデバイスによってパターニングされる。マスクMAを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2のポジショナPWと位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、2Dエンコーダ、又は容量センサ)を用いて、基板テーブルWTは、例えば、様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めできるように正確に移動できる。同様に、第1のポジショナPMと別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めできる。通常に、マスクテーブルMTの移動は、第1のポジショナPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現できる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2のポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。マスクMA及び基板Wは、マスクM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分の間の空間に位置してもよい(スクライブレーンアライメントマークとして知られている)。同様に、マスクMA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0032】
[0060] 図示のリソグラフィ装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
1.ステップモードにおいては、マスクテーブルMT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で結像されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
2.スキャンモードにおいては、マスクテーブルMT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームに与えられるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。マスクテーブルMTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPLの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分の(スキャン方向における)高さが決まる。
3.別のモードでは、マスクテーブルMTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWTを移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
【0033】
[0061] 上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0034】
[0062] 図2に示すように、リソグラフィ装置LAは、リソセル又はクラスタとも呼ばれることがあるリソグラフィセルLCの一部を形成し、それは基板上で露光前及び露光後プロセスを実行する装置も含む。従来、これらはレジスト層を堆積させるスピンコータSC、露光されたレジストを現像する現像器DE、チルプレートCH及びベークプレートBKを含む。基板ハンドラ、すなわちロボットROは入力/出力ポートI/O1、I/O2から基板を取り上げ、それを様々なプロセス装置間で移動させ、次にリソグラフィ装置のローディングベイLBに送出する。多くの場合まとめてトラックと呼ばれるこれらのデバイスは、トラック制御ユニットTCUの制御下にあり、それ自体は監視制御システムSCSによって制御され、それはリソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置も制御する。したがってスループット及び処理の効率を最大化するために様々な装置を動作させることができる。
【0035】
[0063] リソグラフィ装置によって露光される基板が正確かつ一貫して露光されるために、露光した基板を検査し、後続層間のオーバレイ誤差、ラインの太さ、クリティカルディメンション(CD)などのような特性を測定することが望ましい。誤差が検出された場合は、特に同じバッチの他の基板がまだ露光されないほど十分即座にかつ高速で検査を実行できる場合は、後続基板の露光を調節することができる。また、既に露光した基板を(歩留まりを改善するために)取り外して再加工するか、又は廃棄し、それにより欠陥があることが分かっている基板で露光を実行するのを回避することができる。基板の幾つかのターゲット部分のみに欠陥がある場合、良好であるそれらのターゲット部分のみでさらなる露光を実行することができる。
【0036】
[0064] 基板の特性を、特に異なる基板又は同じ基板の異なる層の特性が層ごとにいかに変化するかを決定するために、検査装置が使用される。検査装置をリソグラフィ装置LAに組み込むことができる、又はリソセルLCは独立型デバイスとすることができる。最も迅速な測定を可能にするために、検査装置は露光直後に露光したレジスト層の特性を測定することが望ましい。しかし、レジストの潜像はコントラストが非常に低く、(放射に露光してあるレジストの部分と露光していない部分との間には屈折率の非常に小さい差しかない)すべての検査装置が、潜像を有用に測定するほど十分な感度を有しているわけではない。したがって、露光後ベークステップ(Post-Exposure Bake: PEB)の後に測定を実行することができ、これは通常は露光した基板で実行する最初のステップであり、レジストの露光部分と非露光部分との間のコントラストを増大させる。この段階で、レジストの像を半潜像と呼ぶことができる。現像したレジスト像で(その時点でレジストの露光部分又は非露光部分は除去されている)又はエッチングなどのパターン転写ステップの後で測定することも可能である。後者の見込みは、欠陥がある基板を再加工する見込みを制限するが、それでも有用な情報を提供することができる。
【0037】
[0065] 図3は、本発明のある実施形態に使用できるスキャトロメータを示す。これは、放射を基板Wに投影する広帯域(白色光)放射プロジェクタ2を備える。反射した放射はスペクトロメータ検出器4へと渡され、これは鏡面反射した放射のスペクトル10(波長の関数としての強度)を測定する。このデータから、検出されるスペクトルを生じる構造又はプロファイルを処理ユニットPUにより、例えば従来のRCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)及び非線形回帰により、又は図3の下部に図示されたようなシミュレートしたスペクトルのライブラリとの比較により再構築することができる。概して、再構築するために構造の全体的形状を知り、幾つかのパラメータは、構造を作成したプロセスの知識から仮定して、スキャトロメータのデータから決定するべき構造のパラメータはわずかしか残らない。このようなスキャトロメータは、垂直入射スキャトロメータ又は斜め入射スキャトロメータとして構成することができる。
【0038】
[0066] 本発明のある実施形態で使用できる別のスキャトロメータが、図4に示されている。このデバイスでは、放射源2によって放出された放射が、レンズシステム12を使用して干渉フィルタ13及び偏光子17を通して集束し、部分反射面16によって反射して、好ましくは少なくとも0.9、さらに好ましくは少なくとも0.95の高い開口数(NA)を有する顕微鏡の対物レンズ15を介して基板Wに集束する。液浸スキャトロメータは、開口数が1を超えるレンズを有することさえある。反射した放射は次に、散乱スペクトルを検出させるために部分反射面16を通って検出器18内に伝達される。検出器は、レンズシステム15の焦点距離にある逆投影された瞳面11に位置付けることができるが、瞳面は、代わりに補助光学系(図示せず)で検出器に再結像することができる。瞳面は、放射の半径方向位置が入射角度を画定し、角度位置が放射の方位角を画定する面である。検出器は、基板ターゲット30の2次元角度散乱スペクトルを測定できるように、2次元検出器であることが好ましい。検出器18は、例えばCCD又はCMOSセンサのアレイでよく、例えば1フレーム当たり40ミリ秒の積分時間を使用することができる。
【0039】
[0067] 例えば、入射放射の強度を測定するために、基準ビームを使用することが多い。そのために、放射ビームがビームスプリッタ16に入射すると、その一部がビームスプリッタを通って基準ビームとして基準ミラー14に向かって伝達される。次に、基準ビームは同じ検出器18の異なる部分へと投影される。
【0040】
[0068] 例えば405〜790nm又はさらに低く、200〜300nmなどの範囲の対象となる波長を選択するために、1組の干渉フィルタ13が使用可能である。干渉フィルタは、1組の様々なフィルタを備えるのではなく、調整可能とすることができる。干渉フィルタではなく格子を使用することができる。
【0041】
[0069] 検出器18は、1つの波長(又は狭い波長範囲)で散乱光の強度を、複数の波長で別個に、又はある波長範囲にわたって積分された強度を測定することができる。さらに、検出器は横方向磁気光及び横方向電気分極光の強度及び/又は横方向磁気光と横方向電気分極光の位相差を別個に測定することができる。
【0042】
[0070] 広帯域光源(すなわち光の周波数又は波長、したがって色の範囲が広い光源)を使用することが可能であり、これは大きいエタンデュを生じ、複数の波長を混合できるようにする。広帯域の複数の波長は、好ましくはそれぞれΔλの帯域幅及び少なくとも2Δλ(すなわち帯域幅の2倍)の間隔を有する。幾つかの放射「源」は、ファイバ束を使用して分割されている延在した放射源の様々な部分でもよい。この方法で、角度分解散乱スペクトルを複数の波長で平行して測定することができる。3次元スペクトル(波長と2つの異なる角度)を測定することができ、これは2次元スペクトルより多くの情報を含む。これによって、より多くの情報を測定することができ、それはメトロロジープロセスのロバスト性を高める。このことは、参照により全体を本明細書に組み込むものとするEP1,628,164Aでさらに詳細に説明されている。
【0043】
[0071] 基板W上のターゲット30は格子でよく、それは現像後にバーがレジストの実線で形成されるように印刷される。バーは、代替的に基板にエッチングしてもよい。このパターンは、リソグラフィ投影装置、特に投影システムPLの色収差に敏感であり、照明の対称性及びこのような収差の存在は、印刷された格子の変化に現れる。したがって、印刷された格子のスキャトロメータデータを使用して、格子を再構築する。線の幅及び形状などの格子のパラメータは、印刷ステップ及び/又は他のスキャトロメータのプロセスの知識から、処理ユニットPUによって実行される再構築プロセスに入力することができる。
【0044】
モデリング
[0072] 上述したように、ターゲットは基板の表面上にある。このターゲットは、2Dアレイの回折格子又は実質的に矩形の構造で一連の線の形状をとることが多い。メトロロジーにおける厳密光回折理論の目的は、ターゲットから反射する回折スペクトルの効率的な計算である。すなわち、CD(クリティカルディメンション)の均一性及びオーバレイのメトロロジーに対してターゲット形状の情報を取得する。オーバレイのメトロロジーとは、基板上の2つの層が位置合わせされているか否かを決定するために2つのターゲットのオーバレイを測定する測定システムである。CDの均一性とは、リソグラフィ装置の露光システムがいかに機能しているかを決定するために、単にスペクトルの回折格子の均一性を測定することである。特にCD、すなわち、クリティカルディメンションとは、基板に「書かれる」オブジェクトの幅であり、リソグラフィ装置が物理的に基板に書くことができる限界である。
【0045】
[0073] ターゲット30のようなターゲット構造及びその回折特性のモデリングと組み合わせて上述したスキャトロメータの一つを使用すると、構造の形状及び他のパラメータの測定を幾つかの方法で実行することができる。図5で表した第1のタイプのプロセスでは、ターゲット形状(第1の候補の構造)の第1の推定値に基づいた回折パターンを計算し、観察した回折パターンと比較する。次にモデルのパラメータを体系的に変更し、一連の反復で回折を再計算し、新しい候補の構造を生成すると、最良適合に到達する。図6で表した第2のタイプのプロセスでは、多くの異なる候補構造の回折スペクトルを事前に計算して、回折スペクトルの「ライブラリ」を生成する。次に、測定ターゲットから観察された回折パターンを計算したスペクトルのライブラリと比較して最良適合を求める。両方の方法を一緒に使用することができる。すなわち、ライブラリから粗適合を取得することができ、その後に反復プロセスで最良適合を求める。
【0046】
[0074] 図5をさらに詳細に参照して、ターゲット形状及び/又は材料特性の測定を実行する方法を手短に説明する。この説明では、ターゲットを1次元(1D)で周期的な構造と仮定する。実際には2次元で周期的なことがあり、それに応じて処理を適合させる。
【0047】
[0075] ステップ502では、上述したようなスキャトロメータを使用して、基板上にある実際のターゲットの回折パターンを測定する。この測定した回折パターンを、コンピュータのような計算システムに転送する。計算システムは、以上で言及した処理ユニットPU、又は別個の装置でよい。
【0048】
[0076] ステップ503では、幾つかのパラメータp(p、p、pなど)に関してターゲット構造のパラメータ化したモデルを画定する「モデルレシピ」が確立される。これらのパラメータは、例えば1Dで周期的な構造の側壁の角度、フィーチャの高さ又は深さ、フィーチャの幅を表すことができる。ターゲット材料及び下にある層の特性は、屈折率(スキャトロメータの放射ビームに存在する特定の波長における)などのパラメータでも表される。特定の例を以下に挙げる。ターゲット構造を、その形状及び材料特性を表す数十のパラメータによって画定できる場合、モデルレシピが固定値を有するようにそれらの多くを画定する一方、他のパラメータはその後のプロセスステップのために可変であるか、「浮動」パラメータとなることが重要である。
【0049】
[0077] ステップ504では、浮動パラメータ(すなわち、p(0)、p(0)、p(0)など)の初期値p(0)を設定することにより、モデルターゲット形状を推定する。各浮動パラメータは、レシピで画定されるように、予め画定された特定の範囲内で生成される。
【0050】
[0078] ステップ506では、推定した形状を表すパラメータをモデルの様々な要素の光学特性とともに使用して、散乱特性を計算し、例えばRCWAなどの厳密光回折方法又はマクスウェルの方程式の任意の他のソルバを使用する。これで、推定されたターゲット形状の推定又はモデル回折パターンが与えられる。
【0051】
[0079] ステップ508及び510では、次に測定した回折パターン及びモデル回折パターンを比較し、その類似度及び差を使用してモデルターゲット形状の「メリット関数」を計算する。
【0052】
[0080] ステップ512では、モデルが実際のターゲット形状を正確に表すには、モデルを改良する必要があるということをメリット関数が示すと仮定して、新しいパラメータp(1)、p(1)、p(1)などを推定し、ステップ506に反復フィードバックする。ステップ506から512を繰り返す。
【0053】
[0081] サーチを補助するために、ステップ506の計算はメリット関数の偏導関数をさらに生成し、パラメータ空間のこの特定の領域において、パラメータの増減がメリット関数を増減する感度を示す。メリット関数の計算及び導関数の使用は当技術分野で通常知られているので、本明細書では詳細に説明しない。
【0054】
[0082] ステップ514では、この反復プロセスが所望の正確さの解に収束していることをメリット関数が示す場合、現在推定しているパラメータを実際のターゲット構造の測定値として報告する。
【0055】
[0083] この反復プロセスの計算時間は、使用する順方向回折モデルによって、すなわち、推定したターゲット構造からの厳密光回折理論を使用した推定モデル回折パターンの計算によってほぼ決定される。さらに多くのパラメータが必要である場合は、さらに多くの自由度がある。計算時間は原則として、自由度の累乗で増加する。
【0056】
[0084] 506で計算した推定又はモデル回折パターンは、様々な形式で表すことができる。計算したパターンを、ステップ510で生成した測定パターンと同じ形式で表すと、比較が単純化される。例えばモデル化したスペクトルは図3の装置で測定したスペクトルと容易に比較することができ、モデル化した瞳パターンは図4の装置で測定した瞳パターンと容易に比較することができる。
【0057】
[0085] 本明細書の説明を通して図5以降では、「回折パターン」という用語は、図4のスキャトロメータを使用するものと仮定して使用する。当業者であれば、この教示を様々なタイプのスキャトロメータに、さらには他のタイプの測定計器に容易に適合させることができる。
【0058】
[0086] 図6は、様々な推定ターゲット形状(候補の構造)の複数のモデル回折パターンを事前に計算し、実際の測定値と比較するためにライブラリに記憶する代替例のプロセスを示す。その背後にある原理及び用語は図5のプロセスと同じである。図6のプロセスのステップは以下の通りである。
【0059】
[0087] ステップ602では、ライブラリを生成するプロセスを実行する。ターゲット構造のタイプ毎に別個のライブラリを生成することができる。ライブラリは、必要に応じて測定装置の使用者が生成するか、又は装置の供給業者が予め生成することができる。
【0060】
[0088] ステップ603では、幾つかのパラメータp(p、p、pなど)に関してターゲット構造のパラメータ化したモデルを画定する「モデルレシピ」を確立する。考慮事項は、反復プロセスのステップ503のそれと同様である。
【0061】
[0089] ステップ604では、例えばそれぞれが予想された値の範囲内である全パラメータのランダム値を生成することによって、第1のセットのパラメータp(0)、p(0)、p(0)などを生成する。
【0062】
[0090] ステップ606では、モデル回折パターンを計算してライブラリに記憶し、パラメータによって表されたターゲット形状から予想される回折パターンを表す。
【0063】
[0091] ステップ608では、新しいセットのパラメータp(1)、p(1)、p(1)などを生成する。ステップ606〜608は、記憶したモデル化回折パターンをすべて備えるライブラリが十分に完全であると判断されるまで数十回、数百回、又は数千回も繰り返される。記憶された各パターンは、多次元パラメータ空間のサンプル点を表す。ライブラリ内のサンプルは、任意の実際の回折パターンが十分密に表されるほど十分な密度でサンプル空間を占有しなければならない。
【0064】
[0092] ステップ610では、ライブラリを生成した後(しかし、その前でもよい)、実際のターゲット30をスキャトロメータ内に配置し、その回折パターンを測定する。
【0065】
[0093] ステップ612では、測定したパターンをライブラリに記憶されたモデル化パターンと比較して最も一致したパターンを求める。比較はライブラリの全サンプルで実行するか、又はさらに体系的なサーチ戦略を使用して、計算の負担を軽減することができる。
【0066】
[0094] ステップ614では、一致が発見された場合は、一致するライブラリパターンの生成に使用された推定ターゲット形状を近似オブジェクト構造であると決定することができる。一致するサンプルに対応する形状パラメータが、測定形状パラメータとして出力される。一致プロセスは、モデル回折信号で直接実行するか、又は高速評価のために最適化された代替モデルで実行することができる。
【0067】
[0095] ステップ616では、任意選択で最近似一致サンプルを開始点として使用し、洗練プロセスを使用して、報告用の最終パラメータを取得する。この洗練プロセスは、例えば図5に示したものと非常に類似した反復プロセスを含むことができる。
【0068】
[0096] 洗練ステップ616が必要か否かは作成者の選択の問題である。ライブラリが非常に密にサンプリングされている場合は、常に良好な一致が見られるので反復的な洗練は必要ないことがある。他方で、このようなライブラリは実際に使用するには大きすぎるかもしれない。したがって実際的な解決法は、粗いパラメータセットのライブラリサーチを使用し、その後にメリット関数を使用して1回以上反復してさらに正確なセットのパラメータを決定し、所望の正確さでターゲット基板のパラメータを報告することである。追加の反復を実行する場合は、計算した回折パターン及び関連の洗練したパラメータセットをライブラリの新しい項目として追加する選択肢となる。この方法で、比較的少量の計算作業に基づいているが、洗練ステップ616の計算作業を使用してさらに大きいライブラリへと拡大するライブラリを最初に使用することができる。いずれの方式を使用しても、複数の候補構造の一致度に基づいて、報告された可変パラメータのうち1つ又は複数の値をさらに洗練することもできる。例えば、最終的に報告されるパラメータの値は、パラメータ間に2つ以上の候補構造の値を補間し、これらの候補構造の両方又は全部が高い一致スコアを有すると仮定することによって作成することができる。
【0069】
[0097] この反復プロセスの計算時間は、ステップ506及び606の順方向回折モデルによって、すなわち、推定したターゲット形状からの厳密光回折理論を使用した推定モデル回折パターンの計算によってほぼ決定される。
【0070】
[0098] 2D周期的構造のCD再構築には順方向回折モデルのRCWAが通常使用されるが、差動法、体積積分法(Volume Integral Method:VIM)、ドメイン有限差分時間領域法(Finite-difference time-domain: FDTD)、有限要素法(Finite element method: FEM)も報告されている。例えばRCWA及び差動法に使用されるようなフーリエ級数展開も使用して、フーリエ展開を使用するユニットセルの境界付近で完全一致層(perfectly matchied layers: PML)又は無限に向かう放射を模倣する他のタイプの吸収境界条件を採用することによって非周期的構造を分析することができる。
【0071】
法線ベクトル場
[0099] 厳密回折モデリングでは、材料の界面全体に不連続の成分を有するE及びD場ではなく、材料の界面全体で連続的な補助中間場Fを導入することによって解の収束を抜本的に改善できることが実証されている[1]。収束が改善されると、より少ない計算費用で、より正確な回答につながる。これは光学スキャトロメータで、特に2D周期的回折格子における主要な問題の一つである。
【0072】
[0100] このベクトル場Fは、いわゆる法線ベクトル場、すなわち、材料の界面に対して垂直である架空のベクトル場を使用して公式化される。法線ベクトル場を生成するアルゴリズムは、RCWAの状況で[3,5]にて提案されている。法線ベクトル場は、RCWAとの組合せばかりではなく、差動法との組合せでも使用されている。
【0073】
[0101] しかし、法線ベクトル場の概念における主要な問題の一つは、計算のドメイン(domain)全体で法線ベクトル場自体を実際に生成することである。このような場の生成に対する制約は非常に少ないが、それと同時にその生成に関して多くの公然の疑問がある。法線ベクトル場は、十分な幾何学的設定に対して生成しなければならず、材料界面の接続を考慮せずに隔離されたドメインで作業することはできない。シュワルツ・クリストッフェルの変換を使用した解決法が提案されているが[3]、これらの方法はすべて、任意の形状で法線ベクトル場を生成するための融通性がないか、融通性があっても計算費用が高くなってしまう[5]。両方とも、高速の再構築にとっては破壊的である。何故なら、再構築するために、回折格子構造の変動する次元にて連続的に変動する法線ベクトル場を常時監視することが重要だからである。これが重要であるのは、不連続で展開する法線ベクトル場が、再構築プロセスを案内する全体的に非線形のソルバの収束を妨害することがあるからである。さらなる問題は、法線ベクトル場を設定するのに必要な時間である。この計算のオーバヘッドは、高速の分析及び再構築を見越して、可能な限り少なくしなければならない。
【0074】
1.体積積分法
[0102] RCWAの主要な問題の一つは、2D周期的構造のために大量の中央処理装置(CPU)の時間及びメモリが必要なことである。何故なら、固有値/固有ベクトルのシーケンスの問題を解決し、連結しなければならないからである。FDTD及びFEMの場合も、CPUの時間が通常はかかりすぎる。
【0075】
[0103] ([9]、米国特許第6,867,866B1号及び米国特許第7,038,850B2号で開示されているような)既知の体積積分法は、メッシュの洗練に関して低速の収束を示す完全空間離散化方式、又は高調波の増加に関して収束不良を示すスペクトル離散化方式に基づいている。代替法として、収束を改善するために発見的方法を組み込んだスペクトル離散化方式が提案されている[9]。
【0076】
[0104] VIMに対して解くべき線形系は、RCWAと比較するとはるかに大きいが、反復方法で解くと、幾つかのベクトルの記憶とともに、行列ベクトル積しか必要とされない。したがって、メモリの使用量は通常、RCWAの場合よりはるかに少ない。潜在的なボトルネックは、行列ベクトル積そのものの速度である。VIMでリーの法則[10,11]を適用する場合は、幾つかの逆部分行列が存在するので、行列ベクトル積がはるかに遅くなる。あるいは、リーの法則を無視して、FFTを使用し、高速の行列ベクトル積に到達することができるが、収束不良の問題は残る。
【0077】
[0105] 図7は、本発明の実施形態により再構築することができる散乱幾何形状を概略的に示す。基板802は、z方向で層状になった媒体の下方部分である。他の層804及び806も図示されている。x及びyに周期的である2次元回折格子808が、層状媒体の頂部に図示されている。x、y及びz軸810も図示されている。入射場812が構造802から808と相互作用し、それによって散乱し、その結果、反射場814となる。したがって、構造は少なくとも1方向x、yに周期的であり、入射場成分Einc、散乱場成分E、電磁場成分の合計を含む電磁場Etot内で異なる材料間の材料の境界にて不連続点を引き起こすような異なる特性の材料を含む。
【0078】
[0106] 図8は、背景の構造を示し、図9は、入射場と層状媒体との相互作用を計算するために使用することができるグリーン関数を概略的に示す。図8及び図9では、層状媒体802から806は図7と同じ構造に対応する。図8では、入射場812とともに、x、y及びz軸810も示されている。正反射場902も示されている。図9に関して、点源(x’,y’,z’)904は、場906を生成する背景とグリーン関数の相互作用を表す。この場合は、点源904が最上層806より上にあるので、806と周囲媒体との最上界面からの背景反射908が1つしかない。点源が層状媒体内にある場合は、上方向と下方向の両方に背景反射がある(図示せず)。
【0079】
[0107] 解くべきVIM式は以下の通りである。
【数1】

【0080】
[0108] この等式では、入射場Eincは入射角、分極及び振幅の既知の関数であり、Etotは未知で解が計算される全電場であり、Jはコントラスト電流密度であり、
【数2】

はグリーン関数(3×3の行列)であり、χはjω(ε(x,y,z,)−ε(z))で与えられるコントラスト関数であり、ここでεは構造の誘電率、εは背景媒体の誘電率であり、χは回折格子以外のゼロである。
【0081】
[0109] グリーン関数
【数3】

は知られており、802から806を含む層状媒体について計算可能である。グリーン関数はxy面における畳み込み及び/又はモード分解(m,m)を示し、
【数4】

におけるz軸方向の主な計算負荷は畳み込みである。
【0082】
[0110] 離散化のために、全電場をブロッホ/フロケモードでxy面にて拡張する。χを掛けると、(a)xy面における離散畳み込み(2D FFT)及び(b)zにおける積となる。xy面におけるグリーン関数の相互作用は、モード毎の相互作用である。zにおけるグリーン関数の相互作用は、1次元(1D)FFTと複雑性O(NlogN)で実行することができる畳み込みである。
【0083】
[0111] xyにおけるモード数はMであり、zにおけるサンプル数はNである。
【0084】
[0112] 有効行列ベクトル積は、複雑性O(MNlog(MN))を有し、記憶域の複雑性はO(MN)である。
【0085】
[0113] Ax=bのVIM解決方法は、クライロフの部分空間法、例えばBiCGstab(l)(安定化対双共役勾配法)に基づいた反復ソルバを使用して実行され、これは通常、以下のステップを有する。
残差をr=b−Axと定義する。
残差を介して更新ベクトルνを計算する。
解を更新する:xn+1=x+αν
残差を更新するrn+1=r−αAν
【0086】
[0114] 図10は、VIM式に対応する線形系を解く高レベルの方法のフローチャートである。これは、体積積分を数値的に解くことによって構造の電磁散乱特性を計算する方法である。最高レベルで、第1のステップは、入力を読み取ってFFTを準備することを含む前処理1002である。次のステップは、解1004を計算することである。最後に、反射係数を計算する後処理1006を実行する。ステップ1004は、図10の右手側にも示された様々なステップを含む。これらのステップは、入射場の計算1008、グリーン関数の計算1010、更新ベクトル1012の計算、解及び残差の更新(例えばBicGstabを使用する)1014、及び収束に到達したかを調べる検査1016である。収束に到達していない場合は、制御がループして、更新ベクトルの計算であるステップ1012へと戻る。
【0087】
[0115] 図11は、先行技術で知られているような体積積分法を使用して、図10のステップ1012に対応する更新ベクトルの計算ステップを示し、これは電場Eの体積積分式を数値的に解くことによって構造の電磁散乱特性を計算する方法である。
【0088】
[0116] スペクトルドメイン(spectral domain)では、積分表現は全電場を入射場及びコントラスト電流密度に関して表し、ここで後者はグリーン関数と相互作用する、すなわち、下式になる。
【数5】

但し、
【数6】

さらに、
【数7】

は、z方向に平面層化されたスペクトルグリーン関数を指し、e(m,m,z)はxy面にてスペクトルベースで書き込まれた全電場E(x,y,z)のスペクトル成分を指し、j(m,m,z)はコントラスト電流密度J(x,y,z)のスペクトル成分を指し、これもxy面にてスペクトルベースで書き込まれている。
【0089】
[0117] 第2の等式は、全電場とコントラスト電流密度との関係であり、これは基本的に、構成中に存在する材料によって定義された構成関係であり、すなわち、下式になり、
【数8】

ここでJはコントラスト電流密度を指し、ωは角周波数であり、ε(x,y,z)は構成の誘電率であり、ε(z)は層化した背景の誘電率であり、Eは全電場であって、すべて空間ベースで書かれている。
【0090】
[0118] 単刀直入なアプローチは、[9]で提案されているように、等式(1.2)をスペクトルドメインに直接変換することである。すなわち、下式となる。
【数9】

ここでM1l及びM2lは、E及びJの有限フーリエ表現のために考慮されるスペクトルの下限であり、M1h及びM2hはスペクトルの上限である。さらに、χ(k,l,z)は横断(xy)面に対するコントラスト関数χ(x,y,z)のフーリエ係数である。
【0091】
[0119] ステップ1102は、4次元(4D)アレイでベクトルを認識する。このアレイでは、1次元が3つの要素
【数10】

【数11】

及び
【数12】

を有する。2次元はmの全値の要素を有する。3次元はmの全値の要素を有する。4次元はzの各値の要素を有する。したがって、4Dアレイは、コントラスト電流密度
【数13】

の(xy面での)スペクトル表現を記憶する。各モードで(すなわち、zの全サンプル点で同時に)、ステップ1104から1112を実行する。ステップ1106の横から下がる3つの平行な点線の矢印は、等式(1.1)の積分項の計算に相当し、これは背景とコントラスト電流密度との相互作用である。これは、(z方向に関して)スペクトルドメインにおける乗法を使用し、(z方向に関して)空間グリーン関数で
【数14】

を畳み込むことによって実行される。
【0092】
[0120] 詳細には、ステップ1104でスペクトルコントラスト電流密度
【数15】

をx、y及びzのそれぞれについて3つの1Dアレイとして取り出す。ステップ1106では、畳み込みは最初に、3つのアレイ毎に1DのFFTを順方向に計算し、z方向に関してスペクトルドメインにして、
【数16】

を生成し、ここでkzはz方向に関するフーリエ変数である。ステップ1108では、コントラスト電流密度の切り捨てたフーリエ変換に、(z方向に関する)スペクトルドメインにて空間グリーン関数
【数17】

のフーリエ変換を掛ける。ステップ1110では、1DのFFTを逆方向に実行し、z方向に関する空間ドメイン(spatial domain)にする。ステップ1112では、z方向に関する空間ドメインで背景反射(図9の908参照)を追加する。このようにグリーン関数から背景反射を分離することは、従来からの技術であり、このステップは、当業者に理解されるようにランク1の投影を追加することによって実行することができる。各モードを処理するにつれて、このように計算された散乱電場(E,E,E)(m,m,z)の更新ベクトルを、ステップ1114で4Dアレイに戻す。
【0093】
[0121] 次に、各サンプル点で(すなわち、全モードで同時に)ステップ1116から1122を実行する。図11のステップ1114から下がる3つの平行な点線の矢印は、各サンプル点zで実行されるステップ1116から1122によって、E、E及びEそれぞれについて1つ、すなわち、3つの2Dアレイを処理することに対応する。これらのステップは、材料特性で散乱電場(E,E,E)(m,m,z)の(xy面の)スペクトル表現の畳み込みを実行し、散乱電場
【数18】

に関するコントラスト電流密度の(xy面の)スペクトル表現を計算する。これらのステップは、ここではeについて全電場ではなく散乱場のみを読み取るという意味で、等式(1.3)に対応する。詳細には、ステップ1116は3つの2Dアレイを取り出すことを含む(2次元はm及びmのものである)。ステップ1118では、3つのアレイ毎に2DのFFTを順方向に計算し、空間ドメインにする。ステップ1120では、3つのアレイそれぞれに、フーリエ表現の切り捨てによってフィルタリングされたコントラスト関数χ(x,y,z)の空間表現を掛ける。畳み込みは、ステップ1122で2DのFFTを逆方向にして(xy面の)スペクトルドメインにし、散乱電場
【数19】

に関してスペクトルコントラスト電流密度を生じることで終了する。ステップ1124では、計算したスペクトルコントラスト電流密度を4Dアレイに戻す。
【0094】
[0122] 次のステップは、ベクトル内で4Dアレイを再構成すること1126であり、これは逆の作業であるという点で、ステップ1102の「4Dアレイでベクトルを再構成する」こととは異なる。すなわち、各1次元指数を4次元指数に一意に関連させるのである。最後にステップ1128で、ステップ1126からのベクトル出力を入力ベクトルから引き、これは式(1.1)の右手側の減法にコントラスト関数χ(x,y,z)を掛けることに対応する。入力ベクトルは、図11のステップ1102で入力されるベクトルであり、
【数20】

を含む。
【0095】
[0123] 図11で述べた方法の問題は、収束不良につながることである。この収束不良は、切り捨てたフーリエ空間表現の誘電率及びコントラスト電流密度が同時に急上昇することによって引き起こされる。以上で検討したように、VIM法では、収束問題を克服するのにリーの逆法則が適切ではない。何故なら、VIMでは逆法則の複雑性が、VIM数値解に必要である非常に多数の逆演算により、非常に大きい計算負荷をもたらすからである。本発明の実施形態は、同時に急上昇することによって引き起こされる収束問題を、リーが述べたような逆法則の使用に頼ることなく克服する。逆法則を回避することにより、本発明の実施形態は、VIMの方法で反復して線形系を解くために必要である行列ベクトル積の効率を犠牲にしない。
【0096】
[0124] 図12は本発明の実施形態を示す。これは、コントラスト電流密度Jの体積積分式を数値的に解くことを含む。これは、場と材料の相互作用演算子Mを使用することによって、コントラスト電流密度Jの成分を決定し、電磁場Eの連続成分、電磁場Eに対応するスケーリング電磁束密度Dの連続成分、電磁場E及びコントラスト電流密度Jの不連続成分のスケーリング合計として形成されているスケーリング電磁束密度Dで演算することによって実行される。この実施形態は、E及びJの成分を選択することにより、電場Eに関連するベクトル場F及び電流密度Jの黙示的作図を使用し、ベクトル場Fは、電流密度Jの近似解を求めるように、1つ又は複数の材料境界にて連続している。ベクトル場Fは、少なくとも1つの方向x、yに関する少なくとも1つの有限フーリエ級数によって表され、体積積分式を数値的に解くステップは、場と材料の相互作用演算子Mでベクトル場Fを畳み込むことによって電流密度Jの成分を決定することを含む。場と材料の相互作用の演算子Mは、少なくとも1つの方向x、yで構造の材料及び幾何学的特性を含む。電流密度Jはコントラスト電流密度でよく、少なくとも1つの方向x、yに関する少なくとも1つの有限フーリエ級数によって表される。さらに、連続成分抽出演算子は、電場E及び電流密度Jに作用する畳み込み演算子P及びPである。畳み込みは、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform: FFT)及び数論変換(Number-Theoretic Transform: NTT)を含むセットから選択されるような変換を使用して実行される。畳み込み演算子Mは、有限の結果を生じるように有限離散畳み込みに従って演算する。したがって、構造は少なくとも1方向に周期的であり、電磁場の連続成分、スケーリング電磁束密度の連続成分、コントラスト電流密度の成分及び場と材料の相互作用の演算子は、少なくとも1つの方向に関する少なくとも1つの個々の有限フーリエ級数によってスペクトルドメインで表され、方法はさらに、フーリエ係数の計算によって場と材料の相互作用演算子の係数を決定することを含む。本明細書で述べる方法は、フーリエドメイン(Fourier domain)以外の連続関数に基づく展開、例えば擬似スペクトル法の一般的クラスの体表としてのチェビシェフ多項式に関する展開、又はガボール基底の展開にも関係ある。
【0097】
[0125] 図12は、連続成分抽出演算子を使用して形成された中間ベクトル場Fを採用することにより、電流密度JについてVIMシステムを解くステップ1202を、グリーン関数演算子を電流密度Jに作用させることによって全電場Eを取得する後処理ステップ1204とともに示す。図12は、右手側にVIMシステムを反復的に解く有効行列ベクトル積を形成する略図も1206から1220で示す。これはステップ1206の電流密度Jで開始する。最初にJを設定する時、これはゼロから開始することができる。その所期ステップの後、Jの推定は反復ソルバ及び残差によって誘導される。ステップ1208で、グリーン関数Gとコントラスト電流密度Jとの間の畳み込み及びランク1の保護を計算して、散乱電場Eを生成する。またステップ1214では、散乱電場E及び電流密度Jに作用する2つの連続成分抽出演算子P及びPでの畳み込みを使用して、中間ベクトル場Fを計算する。このように、ステップ1210で第1の連続成分抽出演算子Pを使用して、電磁場Eの連続成分を抽出し、ステップ1212で第2の連続成分抽出演算子Pを使用して、スケーリング電磁束密度Dの連続成分を抽出する。ステップ1216で、場と材料の相互作用演算子(M)が、抽出した連続成分で演算する。ステップ1214は、ステップ1210で取得した電磁場の連続成分とステップ1212で取得したスケーリング電磁束密度の連続成分とからの材料境界にて連続しているベクトル場Fの形成を表す。コントラクト電流密度の成分を決定するステップ1216は、場と材料の相互作用演算子Mを使用し、ベクトル場Fで演算することによって実行される。ステップ1210から1216は、FFTにより畳み込みを実行する状態で、zの各サンプル点について実行される。畳み込みは、高速フーリエ変換(FFT)及び数論変換(NTT)を含むセットから選択されるような変換を使用して実行することができる。演算1218は2つの計算結果JをJから引き、1220で入射電場Eincに関連するJincの近似値を取得する。ステップ1206から1220は更新ベクトルを作成するので、後処理ステップ1204を使用して全電場Eの最終値を作成する。
【0098】
[0126] 全更新ベクトルの合計は、別個の後処理ステップ1204ではなく、散乱電場Eを計算するためにステップ1208で記録され、後処理ステップは、入射電場Eincを散乱電場に追加することのみになる。しかし、その方法はこの方法の記憶要件を増加させ、後処理ステップ1204は反復ステップ1206から1220と比較して、記憶又は処理時間が高くつかない。
【0099】
[0127] 図13aは、本発明の実施形態による更新ベクトルの計算のフローチャートである。図13のフローチャートは、図12の右手側(ステップ1206から1220)に対応する。
【0100】
[0128] ステップ1302では、ベクトルを4Dアレイで再構成する。
【0101】
[0129] その後、図11の対応する同一の番号のステップについて述べたものと同じ方法で、ステップ1104から1114によって各モードm、mについてグリーン関数と背景との相互作用を計算する。
【0102】
[0130] 次にzの各サンプル(すなわち、各層)について、ステップ1304から1318を実行する。ステップ1304では、3つの2Dアレイを4Dアレイから取り出す。これらの3つの2Dアレイ(E,E,E)(m,m,z)は、それぞれがm及びmに対応する2次元を有する散乱電場Eのデカルト成分に対応する。ステップ1306では、(F,F,F)(m,m,z)によって表される連続ベクトルの畳み込みを、最初にステップ1306で2DのFFTを順方向に計算し、(E,E,E)(m,m,z)によって表された3つのアレイ毎に空間ドメインにする。ステップ1308では、ステップ1306で取得したフーリエ変換(E,E,E)(x,y,z)に、空間ドメインで空間情報演算子MP(x,y,z)を掛けるが、これは2つの機能を有する。すなわち、第一に、接線写像演算子Pを適用することによって散乱電場の連続成分を除去し、したがって連続ベクトル場Fの接線成分を生成し、第二に、散乱場のみに関して連続ベクトル場Fをコントラスト電流密度Jに関連づけるコントラスト係数Mによる乗法を実行する。
【0103】
[0131] ステップ1114で4Dアレイ内に配置された散乱電場(E,E,E)(m,m,z)を、以上で検討したようなステップ1304とステップ1310との両方で、以下で検討するように供給する。
【0104】
[0132] ステップ1310では、zの各サンプル点(すなわち、各層)について、散乱電束密度Dのスケーリング版を、ステップ1114から取得した散乱電場とステップ1302から順方向に供給されたコントラスト電流密度とのスケーリング合計として計算し、その後にDのデカルト成分に対応する3つの2Dアレイをスペクトルドメインで取り出す。ステップ1312では、これらのアレイの2DのFFTを実行し、空間ドメインでデカルト成分(D,D,D)(x,y,z)を生成する。ステップ1314では、これらのアレイに空間ドメインで乗法演算子MPを掛けるが、これは2つの機能を有する。すなわち、第一に、連続的であるスケーリング束密度の法線成分を除去して、連続ベクトル場
【数21】

の法線成分を生成し、第二に、散乱場のみに関して連続ベクトル場Fをコントラスト電流密度Jに関連づけるコントラスト係数Mによる乗法を実行する。次にステップ1316で、ステップ1308と1314の結果を組み合わせて、連続ベクトル場Fの全成分について、すなわち、接線成分と法線成分の両方で演算の近似値MFを生成する。次にステップ1318で、MFを逆方向の2DのFFTで変換して、スペクトルドメインにし、
【数22】

で表されるスペクトルコントラスト電流密度の近似値を生成する。ステップ1320では、散乱場に関連するスペクトルコントラスト電流密度を4Dのアレイに戻す。
【0105】
[0133] ステップ1320では、散乱場に関連するスペクトルコントラスト電流密度結果を4Dのアレイに戻し、その後にステップ1322で変換してベクトルに戻す。すなわち、4Dのアレイのすべての4次元指数がベクトルの1次元指数に一意に関連づけられる。最後にステップ1324では、入射電場Jincに関連する既知のコントラスト電流密度の近似値の計算が、ステップ1302の入力から順方向に供給されたコントラスト電流密度の合計からステップ1322の結果を引いて終了する。
【0106】
[0134] 図14を参照すると、法線ベクトル場nを使用することによって電磁場Eとそれに対応する電磁束密度Dの場の成分との組合せから1404でベクトル場Fを形成し、少なくとも1つの材料境界Eに対して接線方向の電磁場Eの連続成分を除去して、少なくとも1つの材料境界Dに対して法線方向の電磁束密度の連続成分も除去する。電磁場Eの連続成分は、第1の連続成分抽出演算子Pを使用して抽出される。スケーリング電磁束密度Dの連続成分は、第2の連続成分抽出演算子Pを使用して抽出される。スケーリング電磁束密度Dは、電磁場Eとコントラスト電流密度Jの不連続成分のスケーリング合計として形成される。
【0107】
[0135] 法線ベクトル場nが、本明細書で述べるように材料境界に関して画定された構造の領域(region)に1402で生成される。この実施形態では、この領域が個々の境界まで、又はそれを越えて延在する。局所化した法線ベクトル場を生成するステップは、領域を複数の部分領域に分解することを含むことができ、各部分領域は、個々の法線ベクトル場及び場合によっては対応する閉形の積分を有するように選択された基本形状である。これらの部分領域の法線ベクトル場は通常、予め画定されている。これは代替的に実行時に画定することができるが、追加の処理が、したがって余分な時間が必要である。部分領域の法線ベクトル場を予め画定し、(入力として)部分領域内の位置の関数として、出力として法線ベクトル場の(デカルト)成分を与える関数をプログラミングすることによって、数値的な積分を可能にすることができる。次に、この関数を求積法サブルーチンによって呼び出し、数値的積分を実行することができる。この求積法の法則は、全フーリエ成分を同じサンプル点(部分領域内の位置)で計算するような方法で構成し、計算時間をさらに削減することができる。1406で領域全体の法線ベクトル場の局所積分を実行して、場と材料の相互作用演算子の係数を決定するが、これはこの実施形態では畳み込み及び基底変更演算子C(式(4)のCε)である。この実施形態では、材料畳み込み演算子M(式(4)及び(5)で定義されたjω[εCε−εε])も、この局所化した法線ベクトル場を使用して構築される。局所積分を実行するステップは、各部分領域を積分するために個々に予め定義した法線ベクトル場を使用することを含むことができる。
【0108】
[0136] コントラスト電流密度
【数23】

の成分は、場と材料の相互作用演算子Mを使用して、ベクトル場Fで、したがって電磁場Eの抽出連続成分、及びスケーリング電磁束密度Dの連続成分で延在することによって、1408で数値的に決定される。したがって、反射係数などの構造の電磁散乱特性は、コントラスト電流密度の近似解を求めるように、この実施形態ではコントラスト電流密度Jの体積積分式を解くことによってコントラスト電流密度
【数24】

の決定された成分を使用して、1410で計算することができる。
【0109】
[0137] この領域は、コントラスト源の支持に対応することができる。
【0110】
[0138] 局所法線ベクトル場を生成するステップは、連続成分の少なくとも1つをスケーリングすることを含むことができる。
【0111】
[0139] スケーリングのステップは、材料境界にて連続しているスケーリング関数(α)を使用することを含むことができる。
【0112】
[0140] スケーリング関数は定数であってもよい。スケーリング関数は、背景の誘電率の逆関数と等しくてもよい。
【0113】
[0141] スケーリングのステップは、材料の不等方性特性を説明するために、材料境界で連続しているスケーリング演算子(S)を使用することをさらに含むことができる。
【0114】
[0142] スケーリング関数はゼロ以外であってもよい。スケーリング関数は定数でよい。スケーリング関数は、背景の誘電率の逆関数と等しくてもよい。
【0115】
[0143] スケーリングは、領域の外側で区別不可能な電磁場の連続成分及び電磁束密度の連続成分を作成するように構成することができる。
【0116】
[0144] 局所法線ベクトル場を生成するステップは、ベクトル場で変換演算子(T)を直接使用して、ベクトル場を法線ベクトル場に依存する基底から法線ベクトル場に依存しない基底へと変換することを含むことができる。
【0117】
[0145] 法線ベクトル場に依存しない基底は、電磁場及び電磁束密度の基底であってよい。
【0118】
[0146] さらに、2次元で周期的な順方向散乱問題には、電場のスペクトル領域体積積分式(spectral-domain volume-integral equation)を使用して反射係数を計算することができる。
【0119】
[0147] 正確かつ効率的であるコントラスト電流密度に基づいて体積積分式にスペクトルの公式化を使用できるようにすることが望ましい。正確さ及び速度の改良は、FFTの形態で書き直したフーリエ因数分解の法則を使用し、材料境界で連続する電場と電束密度との混合の形態で基本未知数に新しい基底を導入することによって、「連続ベクトル場のVIM方法」で取得することができる。しかし、このような連続ベクトル場のVIM方法をCSIの公式化に直接適用することはできない。基本未知数Jの選択がCSIによって規定されるからである。さらに、コントラスト電流密度Jの全成分は、常に材料境界にて不連続である。したがって、このような方法の速度及び正確さは、CSI型の公式化に使用することができない。
【0120】
[0148] 連続ベクトル場のVIM方法のキーポイントは、補助場Fに関して電場E及びコントラスト電流密度Jを表すことである。本発明の実施形態では、最初にJに関して補助場Fを表し、次にFに関して以前に確立したJの関係を使用することができる。前者のステップは、散乱電場の積分表現、電場と一方では電束密度、他方ではコントラスト電流密度との関係、及び投影演算子P及びPに基づく。等方性媒体の最も単純なケースでは下式が得られる。
【数25】

ここで、Gはグリーン関数演算子を表す。
【0121】
[0149] 項を再構成した後、最終的に下式になる。
【数26】

これはコントラスト電流密度の体積積分式である。この積分式は、投影演算子P及びPが存在することで、標準的な積分式とは異なる。これらの演算子は、Mと同様にFFTの形態の有効行列ベクトル積を有する。投影演算子及びMを単独の演算子、すなわち、MP及びMPと組み合わせることにより、完全な行列ベクトル積におけるFFTの量が減少する。FFTはアルゴリズムの主要な計算負荷であるので、この縮小ステップは計算時間の削減に直接つながる。
【0122】
[0150] コントラスト電流密度に関して、対応する行列ベクトル積を図13bに示す。
【0123】
[0151] 演算子MP及びMPを、図13cに示すように組み込むことができる。
【0124】
局所法線ベクトル場
[0152] 上述したように、[1]で導入したような法線ベクトル場の概念は、幾つかの計算のフレームワーク、特に差動法(DM)及びRCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)に採用されている。この概念の基本思想は、法線ベクトル場が電場E及び電束密度Dの成分に対するフィルタとして作用できるということである。このフィルタを介して、相補的であるE及びD両方の連続成分を抽出し、いかなる場所でも連続的なベクトル場Fを構築することができるが、場合によっては調査中の散乱オブジェクトの幾何学的な縁及び隅に対応する隔離された点及び線がある。一般的な3D処理の後、セクション3は、2D法線ベクトル場(ウェーハの(x,y)面で)を詳細に分析する。後者は、RCWAに採用されたスライシング戦略と同様の、ウェーハの垂線(z軸)に沿った3Dの幾何形状のスライシング戦略と適合性がある。
【0125】
[0153] 本発明の実施形態は、局所法線ベクトル場を提供する。これによって、基本的なビルディングブロックでカットアンドコネクト技術が可能になり、より複雑な形状で法線ベクトル場を迅速かつ柔軟に生成することができる。本発明の実施形態は、反復的再構築中に変化する回折格子構造の次元のようなパラメータの関数として、連続的に変化する法線ベクトル場を有するパラメータ化したビルディングブロックを採用することにより、上述したパラメータ変化の状態で設定時間及び連続性に関する以上の問題に取り組む。
【0126】
1.法線ベクトル場の公式化
[0154] この検討にとって適切な開始点が論文[1]に見られる。そこで進められている主要思想の一つは、計算のドメイン全体にわたって法線ベクトル場n(x,y,z)を導入することである。この法線ベクトル場は以下の2つの条件を満足する。
・全材料界面に対して直交方向を指す。
・空間の各点に単位長を有する。
【0127】
[0155] 以上のこと以外に、このベクトル場の定義に他の制約はないが、何らかの形態の連続性など、他の特性を含むと都合がよい。法線ベクトル場が構築されたら、{n,t,t}が計算ドメイン(computational domain)の各点にて正規直交点を形成するように、2つの接線ベクトル場t(x,y,z)及びt(x,y,z)を生成することができる。例えば、n及びnを法線ベクトル場のx及びy成分にすると、tは下式のように構築することができる。
【数27】

ここで、u及びuはそれぞれ、x及びy方向の単位ベクトルを指す。最後に、nとtのクロス乗積を介して、ベクトル場tが生成される。
【0128】
[0156] ベクトル場nを使用して、電束密度の不連続成分を除去することができ、その結果、連続スカラー場D=(n,D)になり、ここで(・,・)はスカラー積を指す。接線ベクトル場を使用して、下式のように電場の連続成分を抽出することができる。
【数28】

【0129】
[0157] [1]に従い、次に下式のようにベクトル場Fを構築する。
【数29】

これはいかなる場所でも連続的であるが、場合によっては誘電率関数の幾何形状の縁及び隅に対応する隔離された点又は線がある。
【0130】
[0158] このベクトル場Fの主要な利点は、その連続性によって従来の畳み込みの法則を介してスペクトル系で場と材料の相互作用が可能になることである。
したがって、Eと一方ではDと、他方ではFとの関係、すなわち、[1]の表記法を確立することが極めて重要であり、その思想は以下の関係式を確立することである。
【数30】

【0131】
2.局所法線ベクトル場に向かって
2.1投影演算子のフレームワーク
[0159] 電場及び電束密度の成分を除去する手順を形式化するために、下式のように演算子Pを導入する。
【数31】

ここで、vは任意の3Dベクトル場である。法線ベクトル場nの特性から、Pが投影演算子であり、したがってベキ等である、すなわち、P=Pであることが観察される。同様に、下式のように演算子Pを導入することができる。
【数32】

これも投影演算子である。これらの投影演算子、ベクトル場Fが下式のように構築される。
【数33】

【0132】
[0160] ベキ等特性以外に、投影演算子P及びPは幾つか他の有用な特性を有する。最初にP=I−Pがあり、ここでIは単位作用素である。この特性は、接線ベクトル場の構築で既に観察された演算子P及び演算子Pの両方を生成するのに、法線ベクトル場自体で十分であることを示す。第二に、演算子PはPに対して相互に直交する。すなわち、P=P=0である。
【0133】
2.2.スケーリング関数の導入
[0161] 法線ベクトル場の数学的表現[1]の概念に導入する最初の改良点は、ベクトル場Fの成分をスケーリングする可能性である。このスケーリングには多くの形態があり得るが、単純にするために、ベクトル場Fの法線成分のスケーリングについて検討する。すなわち、下式である。
【数34】

ここで、αはゼロ以外のスケーリング関数であり、材料の界面で連続している。このスケーリングの結果は2倍になる。最初に、ベクトル場Fの成分のスケールを同じ桁にすることができる。これは、線形系Cε及びεCεの状態を改良する。第二に、そしてさらに重要なことであるが、以下で示すように、素直ベクトル場nの局所性にとって広範囲にわたる結果がある。実際、第2の態様は非常に重要であるので、最適ではない状態になっても、通常、スケーリングの選択を誘導する。
【0134】
2.3.場と材料の界面
[0162] 次に、ベクトル場Fから式(4)の演算子を構築するために、これらの演算子P及びPを使用できる方法を示す。そのために、一方では電場と電束密度との空間ドメインの関係、他方ではベクトル場Fの定義から開始する。下式を有する。
【数35】

ここでMεは、通常は非等方性である誘導率テンソルεを掛けた空間乗法演算子であり、
【数36】

は誘電率テンソルの(点に関する)逆数を掛けた乗法演算子である。
【0135】
[0163] 最初に、EとFとの関係を確立する。式(13)及び(14)があるので、式(15)となる。
【数37】

【0136】
[0164] 後者の式を再構成し、Pのベキ等を採用すると、下式が得られる。
【数38】

ここで、Pの範囲で(Pε−1は(Pε)の逆数であり、すなわち、
(Pε−1(Pε)=Pとなる。
【0137】
[0165] したがって、式(4)の線形演算子Cεは下式で与えられる。
【数39】

【0138】
[0166] さらに、P=I−P及び(Pε−1(Pε)=Pの関係式を採用すると、下式に到達する。
【数40】

ここで、表記Mζ=Pζ=(Pε−1を導入しており、ここでMζは、スカラー乗法演算子である。
【0139】
[0167] 同様の方法で、電束密度とベクトル場Fとの関係を導出することができる。
【数41】

【0140】
[0168] 第2の式で、次に式(16)を採用して、Eを除去することができる。すなわち、下式になる。
【数42】

それ故に、下式になる。
【数43】

【0141】
[0169] 再び関係式P=I−P及び式(18)のCεの表現式を採用すると、下式になる。
【数44】

【0142】
[0170] 下式の特性により、
【数45】

【0143】
[0171] 最終的に、下式のようになる。
【数46】

【0144】
[0172] 後者の演算子表現では、演算子の積Mεεを単一の乗法演算子と見なすことが基本である。そうしないと、リーの法則の基本原理が維持されない。何故なら、Mε及びCεが空間ドメインで同時に急上昇するからである。
【0145】
[0173] 式(18)及び(25)のCε及びεCεの表現から、投影演算子P(Mζにおけるその外観を含む)が演算子
【数47】

との組合せでのみ生じることが観察される。それ故に原則的に、後者の演算子の支持が、演算子Cε及びεCεの係数を生成するために法線ベクトル場nを必要とするドメインを決定する。
【0146】
2.3.5.境界一致の非等方性
[0174] 電磁散乱の他のモデリング方法では、媒体パラメータの非等方性の方向は、散乱オブジェクトの幾何形状を考慮せずにグローバル座標系に関して表現される。
【0147】
[0175] 非等方性媒体を使用する一つの重要な用途は、線縁粗さ(LER)又は線幅粗さに関係する。LERは、線に沿った3次元変数としてモデリングすることができるが、この厳密モデリングの方法は通常、非常に時間がかかる。したがって、LERは通常、媒体の有効近似を介してモデリングされ、ここで遷移層が、粗さを含む線の部分を捕捉する。この遷移層は、非等方性媒体として最も良くモデリングされる。非等方性の方向は通常、粗さの幾何学的特徴に依存する。例えば[12]参照。線は自動的にデカルト座標系と位置合わせされるので、境界一致の非等方性は自動的に、座標軸に沿った非等方性と等しい。
【0148】
[0176] 他の方法では、非等方性が散乱幾何形状と無関係に定義される。縁粗さに関して、非等方性の有効媒体モデルは、線については知られているが、例えば円形又は楕円の断面のコンタクトホールのような他の幾何形状については知られていない。
【0149】
[0177] 本発明の実施形態は、法線ベクトル場を採用して、数値的収束を向上させる。実施形態は、水平及び素直方向について複屈折の媒体をモデリングする能力を有する。非等方性の方向がパターンの境界沿い、及び境界に法線方向を指す、すなわち、非等方性が境界と一致する、より一般的な非等方性媒体を扱うことが可能である。LERの有効媒体方法[12]の一連の推論に従い、このようなタイプの非等方性は、例えばLERのモデリングに使用される有効媒体方法に、自然に拡張される。さらに、各境界の垂線は既に、本明細書で述べたように使用された法線ベクトル場の方法で決定されているので、追加の処理は必要ない。
【0150】
[0178] 式(12)に従ってベクトル場Fを下式のように定義する。
【数48】

さらに、束密度と場の強度との間に下式のような関係がある。
【数49】

【0151】
[0179] さらに、下式のように誘電率について境界一致非等方性を定義する。
【数50】

これは、幾何形状の法線方向に沿った誘電率、及びその同じ幾何形状の接線方向に沿った異なる誘電率と解釈することができる。
【0152】
[0180] 一方の束密度D及び場の強度Eを、他方の補助場Fと関連させることができる。下式が得られる。
【数51】

及び
【数52】

【0153】
[0181] これらの式は、法線ベクトル場を局所的に画定する自由を維持し、本明細書で検討するように誘電率の倍率に小さい変化しかない。
【0154】
[0182] 垂直方向の2進回折格子又は段階的近似の場合では、境界一致非等方性は、P演算子を垂直部分と水平部分に分割する、すなわち、P=P+PT1にすることによってさらに延長することができ、ここで、後者の2つの演算子は相互に直交する。これで、誘電率は下式によって与えられる境界一致非等方性の方向を3つも有することができる。
【数53】

【0155】
[0183] Fに関してEを表現する式は、依然として以上の式(25)と同一である。Dの式は下式のようになる。
【数54】

【0156】
[0184] このタイプの非等方性は、境界に沿った層に局所化されるのみであると仮定すると、法線ベクトル場は局所性のままであり、演算子PT1及びPは既に使用可能である。
【0157】
[0185] したがって、電磁束密度は、局所法線ベクトル場が生成され、材料境界に局所的である領域にて、材料境界に法線方向の誘電率εの成分、及び材料境界に対して接線方向の誘電率の少なくとも1つの他の異なる成分ε、εを使用して電場に関連づけられる。
【0158】
[0186] この実施形態は、例えば湾曲した境界の縁粗さに関して有効媒体方法の範囲を広げる。さらに、すべての成分が使用可能であるので、このモデルを設定するために余分な処理が必要ない。それ故に、対応する数学及び数値の問題を設定する際に、余分な時間を費やさない。
【0159】
[0187] 境界一致非等方性は、縁粗さを取り扱う適切な方法であるので、縁粗さを伴うCDの再構築プロセスの有意な高速化につながる。
【0160】
2.4.ベクトル場基底の選択
[0188] 以上で、法線ベクトル場は、ベクトル場Fの成分間に適切なスケーリングを選択することにより、局所化される可能性を有することが観察されている。しかし、典型的なマクスウェルのソルバでは、接線ベクトル場及び法線ベクトル場はソルバの成分を表さない。多くの場合は、例えばVIM、RCWA、又は差動法にて、デカルト基底の方が適切である。投影演算子はベクトル場の基底を変化させないので、マクスウェルソルバに必要な基底に到達するために、電場及び電束密度の追加の変換が必要になることがある。誘電率演算子Mεにも同様のことが言え、これは通常、デカルト座標で表される。したがって、基底が異なる場合は、演算子Mεも変換しなければならない。演算子MζもMεを含むことが分かっている。しかし、Mζはスカラー乗法であるので、その最終形は選択した基底に依存しない。さらに、式(6)で与えられたような投影演算子Pの定義は、選択された基底に依存しないが、その実際の行列表現は法線ベクトル場について選択された基底に依存する。したがって、Pを基底に依存しない演算子として書くことにする。
【0161】
[0189] 次に変換演算子Tを紹介すると、これは法線及び接線基底で表されたベクトル場を、例えば電場、電束密度及び誘電率演算子Mεに使用するデカルトベクトル場に変換する。これで、デカルト座標で表される電場をした式のように書くことができる。
【数55】

【0162】
[0190] ここで、Fは法線及び接線基底で書かれているものと仮定されている。
【0163】
[0191] その直接的な結果は、Cεに単位作用素が存在することにより、計算ドメイン全体に法線ベクトル場及び接線ベクトル場が必要になることである。しかし、Mεも同じ基底変換を含むことにより、上式を下式のように再構成することもできる。
【数56】

【0164】
[0192] ここで、演算子
【数57】

を導入している。これは、変換演算子がFに直接作用することができ、これもTFを未知数とみなす限り局所法線ベクトル場につながる可能性を有する。すなわち、E及びDの基底にFを直接書き込む。εCεの同様の導出は下式を示す。
【数58】

【0165】
[0193] これは、以上で示したような関係式
【数59】

によるものである。
【0166】
2.5.等方性媒体
[0194] 考慮すべき非常に重要なクラスは、等方性媒体である。このような媒体の場合、乗法演算子Mεは、場の各成分に等しく作用するスカラー乗数である。したがって、変換TはMεに影響しない。さらに、Cε及びεCεの式は、非常に単純化される。等方性の場合、次にデカルト座標のF、さらにE及びDの表現結果について考察する。この状態で下式がある。
【数60】

【0167】
[0195] ここで、(スカラー)関数1/(αε)による点乗法として、乗法演算子
【数61】

を導入してあり、その結果、単位作用素のスカラー乗法になる。それ故に、下式になる
【数62】

【0168】
[0196] 次に、αには幾つかの選択肢がある。
・αを1/ε、すなわち、(局所)背景誘電率の逆数と等しい定数となるように選択する。その結果、誘導率が背景誘導率とは異なる領域(region)、すなわち、コントラスト関数がゼロ以外である領域では法線ベクトル場しか必要なくなる。この選択肢は、回折格子構造に媒体が2つしか存在せず、その一方が背景材料である場合に、特に興味深い。
・第2の選択肢も、αを定数となるように選択する。しかし、回折格子の構造に応じて、異なる定数を選択した方が都合がよいこともある。重要な場合は、背景の誘電率がユニットセルの境界をまたがないドメイン(domain)で生じる回折格子である。これは例えば、レジスト内の円形コンタクトホールの場合であり、コンタクトホールの充填材料が背景媒体として選択される。これで、この選択は、円上の法線ベクトル場の式の単純化につながり、反対に、円を残したユニットセルの法線ベクトル場では、結果となる積分の計算がはるかに困難になる。
・第3の選択肢は、元の逆誘導率関数の平滑化した版となるように、例えばトライリニア補間又はガウス窓による平均化を介して、αを連続関数とすることである。その場合は、材料間の界面のすぐ近傍でのみ法線ベクトル場が必要となり、さらに局所化される。しかし、その結果である計算すべき積分は、通常、さらに困難である。1つの誘電率から他の誘電率へと徐々に変化する遷移を開始する位置を選択することにより、最終的に2つの媒体間にある界面の一方側でのみ必要とされる局所法線ベクトル場になることが可能である。
【0169】
[0197] 通常、他の閉じた構造が存在する場合は、以降で検討するようにカットアンドコネクト戦略がはるかに複雑になるので、境界の外側に行くことがさらに複雑になる。
【0170】
2.6.等方性媒体の場と材料の相互作用係数の表現
[0198] 次に、場と材料の相互作用演算子
【数63】

及び
【数64】

についてさらに詳しく見てみる。電場、電束密度、ベクトル場F、及び法線ベクトル場nを、そのデカルト成分に関して書くと仮定する。これで、式(29)から取得される以下の空間関係式になる。
【数65】

【0171】
[0199] ここで、下式のようになり、
【数66】

【0172】
[0200] 及び
【数67】

【0173】
[0201] ここで、下式となる。
【数68】

【0174】
[0202] 電場E、電束密度D、及び補助ベクトル場Fの全成分は、x及びy方向に関してスペクトルベースで表されるので、例えば下式のようになる。
【数69】

【0175】
[0203] ここで、
【数70】

及び
【数71】

は周期性の方向に依存し、
【数72】

及び
【数73】

は入射場の角度に依存する。このスペクトルベースでは、以上の場と材料の相互作用は、xy面の畳み込みになる。例えばi,j∈{x,y,z}の場合は、下式になる。
【数74】

【0176】
[0204] ここで、下式のようになる。
【数75】

ここで、Sはxy面のユニットセルを指し、
【数76】

はその面積を指す。すなわち、i,j∈{x,y,z}について、係数Cij及びεCijのxy面におけるフーリエ積分を計算しなければならない。法線ベクトル場と散乱幾何形状の特定の組合せでは、閉じた形態で、例えばセクション3に示すような円及び矩形について、これを実行することができる。より一般的な形状では、これらの係数はメッシュ戦略(セクション4)又は数値的求積法(セクション5)で近似することができる。
【0177】
2.7.2進及び段階的回折格子の複屈折率
[0205] 問題の第2の重要なクラスは、回折格子材料が複屈折材料の特性を有し、非等方性の軸がz軸である、すなわち、下式の場合である。
【数77】

【0178】
[0206] ここで、ε及びεは、原則的にx、y及びzの関数である。
【0179】
[0207] 次に、間隔z∈[z,z]にわたってz軸に沿って不変の断面を、さらにzに関係ない誘電率輪郭を有する2進回折格子の場合を考察する。このような2進回折格子に対して、接線ベクトル場の1つがz軸に沿って位置合わせされるように、すなわち、t=uになるように選択する。すなわち、n及びtは2次元ベクトル場である、すなわち、そのz成分はゼロである。この選択肢で、xy面における法線ベクトル場の問題は再び等方性の問題となり、スケーリングパラメータαに関する考察事項は、ここではセクション2.5の場合と非常に類似し、例えば2媒体の問題では、オブジェクトの内部又は外部のεに関して電束密度をスケーリングしなければならず、したがってスケーリングした電束密度はユニットセルの専用部分の電場と同一になる。
【0180】
[0208] より一般的な回折格子の幾何形状では、z方向に関して回折格子の段階的近似を適用することができる。これで、回折格子は一連の2進回折格子で構成され、これらの2進回折格子毎に、以上で概略した戦略を辿ることができる。
【0181】
3.断面が楕円及び矩形の2進回折格子の局所法線ベクトル場
[0209] このセクションでは、2つの基本的な2次元形状、すなわち、矩形及び楕円形のCε及びεCεのスペクトル表現を導出しなければならない。これらの形状は、2Dウェーハメトロロジー構造の一体又は基本的ビルディングブロックとして遭遇することが多い。この導出は、Cε及びεCεの法線ベクトル場(NV)の構築、及びその後の行列要素のフーリエ積分の計算を示す。所与の外形について、一意の法線ベクトル場はない。単位長を有し、外形に対して垂直である無限に多くのNV場を構築することができる。特定の選択肢にするための重要な動機は、Cε及びεCεのフーリエ係数の解析式を導出する可能性であることが分かるはずである。また、NV場の特異点の数を最小化して、フーリエ級数の収束を最適化しなければならない。楕円形及び矩形は、フーリエ積分の解析式を有するほど恵まれている。
【0182】
3.1.任意ユニットセルのフーリエ積分
[0210] 2次元では、格子の周期性がブラヴェ格子ベクトル(a,a)で記述される。
【数78】

【0183】
[0211] 上式をシフトすると、同等の格子位置になる。ブラヴェ格子と同じ周期性を有する平面波は、以下の条件に答える波数ベクトルを有する。
【数79】

【0184】
[0212] この条件を満たす全波数ベクトルの空間を、逆格子と呼ぶ。この空間には、次の2つの基本ベクトルが張っている。
【数80】

【0185】
[0213] これらが、以下の直交性の条件に答える。
【数81】

これにより、式(2)を証明することができる。これで、任意の2次元格子のフーリエ積分を、平面波の基底に関して逆格子の波数ベクトルで定義する。
【数82】

【0186】
[0214] ここで、フーリエ係数は以下の積分から得られる。
【数83】

【0187】
[0215] ここで、0≦η=a/|a|≦1は、各ブラヴァ格子ベクトルを張る無次元数である。デカルト座標系に変換すると、下式になる。
【数84】

【0188】
[0216] これで、式(54)の2次元積分を下式のように書くことができる。
【数85】

【0189】
[0217] ここで、
【数86】

【0190】
[0218] 上式は、デカルト軸上に投影された逆格子ベクトルである。
【0191】
[0219] Cijの式、すなわち、式(33)〜(41)を参照すると、対角線要素は、ユニットセルについて1のフーリエ積分、及び法線ベクトル成分とスケーリング関数α(x,y,z)及び誘電率ε(x,y,z)の位置依存関数との積のフーリエ積分を含むことが分かる。第1の積分、すなわち、ユニットセルについての1の積分は
【数87】

に等しい。第2の積分は、スケーリング関数αを1/εと等しいと選択した場合に、非等方性媒体の場合に非常に単純化することができる。この関数は、これでコントラスト源の支持体の外側ではゼロであり、内側では定数である。フーリエ係数cij(m,m,z)は、積分に関して下式のように表すことができる。
【数88】

【0192】
[0220] これは、Cij(式(33)〜(41))のスペクトル表現を単純化して、下式とする。
【数89】

【0193】
[0221] さらに、εCε(式(43)〜(51))のスペクトル表現を単純化して、下式とする。
【数90】

【0194】
[0222] 以下のセクションでは、楕円及び矩形の場合にΓijの積分(式(66))について閉じた形態の式を導出するが、最初に、散乱オブジェクトの並進及び回転について積分をさらに単純化する。
【0195】
3.2.散乱オブジェクトの並進及び回転
[0223] 楕円及び矩形のような基本的形状の場合、Γij積分の計算は、ローカル座標系に変換することによってさらに単純化することができる。
【0196】
[0224] 図15aは、回転してオフセットcがある楕円について、グローバル(x,y)及びローカル(x”,y”)座標系の定義である。
【0197】
[0225] 任意のオフセットcに関して、これは下式の並進
【数91】

【0198】
[0226] 及び下式の回転になる。
【数92】

【0199】
[0227] 散乱オブジェクトのNV場は、回転からのみ影響される。グローバル(x,y)及びローカル(x”,y”)座標系の式(66)のNV成分の積は、線形変換によって関連づけられる。
【数93】

【0200】
[0228] 式(71)、(72)及び(73)を組み合わせて、ローカル座標系で計算するように、Γij積分をΓ”ijに変換することができる。
【数94】

【0201】
[0229] ここで、Mnn”は式(73)からの結合行列及び下式である。
【数95】

【0202】
[0230] ここで、有効波数ベクトルを導入してある。
【数96】

【0203】
[0231] Γ”ij積分はまだ、コントラスト源の支持と等しい面積(並進及び回転によって変化しない)について計算されるが、ローカル座標系では、積分は以下で分かるように、楕円及び矩形の方が容易に評価することができる。
【0204】
[0232] 要するに、ローカル座標系への変換の効果は3つある。
・オフセットの効果を述べる定位相因子
・ブラヴァ格子に対するオブジェクトの方向を述べる有効波数ベクトル
・Γijは、ローカル座標系の3つのΓ”ij全部の線形結合になる。
【0205】
3.3.楕円
[0233] 楕円のNV場を生成するために2つの周知の方法がある。
・楕円座標系を介する。
【数97】

・αが水平対称軸に沿った半径である場合、bは垂直対称軸に沿った半径、φは方位角、
【数98】

は楕円率である。
・等角写像を介する。
【数99】

・定数u(0≦u<∞))及び0≦ν≦2πの場合、これは楕円の外形を与える。
【0206】
[0234] 図15bは、楕円座標系のNV場を示し、図15cは等角写像を示す。
【0207】
[0235] 楕円座標系は、Γ”ijの解析式を導出することができ、法線ベクトル場は(0,0)にのみ特異点を有するが、等角写像は焦点を結ぶ線上に特異挙動を有するという利点を有する。後で、矩形の場合、特異点が存在してもなお良好な収束を獲得できることが分かる。したがって、特異点の存在のみでは、法線ベクトル場を拒否する確証的な主張にならない。フーリエ積分の解析式を導出する可能があることは、はるかに強力な主張になる。何故なら、行列ベクトル積を高速で計算することになるからである。法線ベクトル場は、接線ベクトル∂r/∂φに垂直のベクトルとして導出することができる。
【数100】

【0208】
[0236] この式について、式(66)に必要である法線ベクトル積を以下に書く。
【数101】

【0209】
[0237] Γ”ij積分を楕円座標系に書き換えると、下式になる。
【数102】

【0210】
[0238] 恒等式を使用することによって、フーリエ指数からr及びφ従属をさらに分離できるので都合がよい[2,p.973]。
【数103】

【0211】
[0239] ここで、J(z)は整数桁nの第1の種のベッセル関数である。式(81)の指数の引数を書き換えることにより下式になる。
【数104】

である。
【0212】
[0240] 式(82)の恒等式を式(81)の整数の指数に適用することができ、その結果、Γ”xxについて以下の式になる。
【数105】

【0213】
[0241] ここで、
【数106】

【0214】
[0242] Γ”xy及びΓ”yyの式は、角積分の分子をesinφcosφ、sinφそれぞれで置換することによって得ることができる。楕円に関するこの方法の有効性は、ラジアル及び角積分の解析式を求めることができるという事実から導かれる。ベッセル関数のラジアル積分に関するこれらの式は、付録Aから導かれる。角積分の場合、これは付録Bから導かれ、これは、偶数項及び奇数項それぞれの合計の指数kについてφからφbまで及ぶ角積分について
【数107】

及び
【数108】

というラベルが付けられる。完全な楕円の場合、式(84)の評価は、
【数109】

であることで単純化される。偶数項の角積分は下式の通りである。
【数110】

【0215】
[0243] 円(e=1)の場合、(k=1)項のみがゼロではないことに留意されたい。
【0216】
[0244] これで、ラジアル積分は、偶数次数nについてのみ評価する必要がある。付録Aでは、不定積分に対して閉じた形態の式が導出される。
【数111】

【0217】
[0245] ここで、合計はn>1の場合のみ計算される。式(86)及び(88)を式(84)内に置換すると、下式になる。
【数112】

【0218】
[0246] ここでNは、偶数ベッセル関数の合計及び下式で保持される項の数である。
【数113】

【0219】
[0247] 最終項では、k及びmの合計がスワップされて、同じ引数のベッセル関数を複数回評価するのを防止することに留意されたい。Γ”xy及びΓ”yyの計算では、
【数114】


【数115】

及び
【数116】

の式で置換するだけでよい(付録B参照)。
【0220】
3.4.矩形
[0248] 矩形の連続NV場の生成は楕円の場合ほど明瞭ではない。[3]は、このためにシュワルツ・クリストッフェル変換の使用を提案している[4]。矩形についてこの解を密に近似するNV場は下式である。
【数117】

【0221】
[0249] 図16aは、対応する矩形の連続NV場を示す。しかし、この式ではΓij積分の解析式が導かれない。この場合は、式(91)に非常に類似しているが、矩形の対角線に沿って不連続であり、対抗戦によって形成された三角形内で一定で、矩形の辺に対して垂線であるNV場を導出することにする。
【0222】
[0250] 図16bは、対応する矩形の不連続NV場を示す。この法線ベクトル場は、下式を計算するためにΓ”ij積分を特に単純にする各三角形に対して一定である。
【数118】

【0223】
[0251] 面積分の評価は単純明快である。三角形Δ(図16b参照)の場合は、下式が与えられる。
【数119】

【0224】
[0252] 三角形Δの場合は、
【数120】


【数121】

をスワップするだけでよい。三角形Δ及びΔの結果は、単純にΔ及びΔそれぞれの積分の複素共役である。
【0225】
[0253] このNV場の場合、Δ及びΔではΓxx=0であり、三角形Δ及びΔではΓyy=0であり、全部の三角形でΓxy=Γyx=0である。極限値key→0の場合、式(93)は下式になることに留意されたい。
【数122】

【0226】
4.カットアンドコネクト戦略
[0254] 矩形のNV場生成に関する前のセクションは、比較的任意の形状に関してNV場を生成する非常に強力な方法を示している。これらの形状は、Γij積分が高速計算に適した閉じた形態を有する基本形状に分解することができる。特定のフーリエモード指数にて各基本形状について関連するΓij積分を合計することにより、Cε及びεCεのスペクトル表示を容易に取得することができる。言うまでもなく、基本形状のクラスは、関連するより複雑な形状をすべて生成するほど重文に大きくなければならない。基本形状のクラスは、以下のいずれかを含む。(A)定数NV場を有する三角形。1つの界面が材料界面である場合、NV場はこの界面に垂直でなければならない。材料界面がない場合、NV場は任意に選択することができる。
(B)定数NV場を有する台形(矩形は特殊な場合である)。1つの界面が材料界面である場合、NV場はこの界面に垂直でなければならない。材料界面がない場合、NV場は任意に選択することができる。(C)半径方向NV場及び円の辺に沿った材料界面を有する円弧。
【0227】
[0255] 任意の形状、又はその近似はいずれも、原則的にこれらの基本形状のメッシュに分解することができる。
【0228】
[0256] 図17は、これらの基本形状の「ドッグボーン」のメッシュを示す。
【0229】
[0257] 図18は、本発明の実施形態により、断面が角丸矩形のプリズムの法線ベクトル場を、これより小さい矩形1802及び円弧1804から構築することを示す。矢印で示す法線ベクトル場は、物理的界面に対してそれらの物理的界面に垂直であることに留意されたい。
【0230】
[0258] 本発明の実施形態では、ユニットセル全体ではなく局所的に(すなわち、散乱オブジェクト又はその部分に)法線ベクトル場を構築する方法が提供される。これは法線ベクトル場の生成を単純化し、円、楕円及び矩形のような基本的形状に関して数学的に非常に単純な式さえ与える。
【0231】
[0259] より複雑な形状の場合は、カットアンドペーストメッシング技術が提供され、これは任意形状の法線ベクトル場が、2つ以上の基本形状の法線ベクトル場で構成され、この基本形状は、三角形、矩形、台形又は円弧の断面を有する角柱、四面体、棒、2つの平行面を有する六面体、基平面に平行な切断面を有する頂点切頭角錐、及び球台から選択される。
【0232】
[0260] これらのビルディングブロックの場合、法線ベクトル場は非常に単純で、迅速に生成することができる。
【0233】
[0261] あるいは、他の複雑な形状の場合は、高いメッシュ密度を回避するために、以上のメッシング戦略を適用せずに形状から法線ベクトル場を直接生成することが有利なことがある。その結果、補間法を使用して法線ベクトル場を生成し、次にこれを使用して、特定のフーリエ積分を計算する。本発明の実施形態は、計算ドメインの様々な媒体の支持で、フーリエ積分を幾つかの積分に分割する。これらのドメインのそれぞれで、専用の求積法の法則を補間アルゴリズムと組み合わせて適用し、このドメイン上に法線ベクトル場を生成する。補間は、ユニットセルの境界に関する特定の選択により、コンポーネントに人為的不連続が生じるのを回避するために、周期的連続がある基底関数に基づいて適用される。さらに、法線ベクトル場の支持を材料界面のすぐ隣にさらに制限することが可能である。これにより、より複雑な形状に対して法線ベクトル場を生成する方法が、さらに倹約的になる。
【0234】
4.1.基本ビルディングブロック
[0262] 本セクションでは、形状頂点の座標で表される3つの基本ビルディングブロックについて、Γij積分の閉じた形態の式を導出する。
【0235】
4.2.三角形
[0263] 図19は、回転してシフトした三角形をNV場及びローカル座標系で示す。
【0236】
[0264] 図19は、頂点A、B及びCを有する任意の三角形を示す。材料界面(B−C)に対向する頂点を、ローカル原点として選択する。頂点は、逆時計回りの方向に順序づけられることに留意されたい。最初に、ベクトルAを並進して、ベクトルB’=(B−A)及びC’=(C−A)を取得する。次に、角度φだけ回転してローカル座標系を得る。この座標系では、B”及びC”が式(72)で与えられる。
【数123】

【0237】
[0265] ここで、
【数124】

である。
【0238】
[0266] B”及びC”の座標系の式で、下式が取得される。
【数125】

【0239】
[0267] B”C”が材料界面である場合、NV場は
【数126】

になり、Γ”xxのみがゼロ以外の成分になる。このグローバル座標系のΓijは、式(74)で取得される。
【0240】
4.3.台形
[0268] 図20は、回転してシフトした台形をNV場及びローカル座標系で示す。
【0241】
[0269] 台形の場合は、同じ一連の推論を辿ることができる。最初に、A上で座標を並進させると、下式が与えられる。
【数127】

【0242】
[0270] その後にφ回転すると、下式になる。
【数128】

【0243】
[0271] ここで、
【数129】

である。
【0244】
[0272] ローカル座標系では、下式になる。
【数130】

【0245】
[0273] この結果は、台形を2つの三角形に分解し、両方の三角形について式(97)を加えることによっても取得することができる。台形でも、B”C”が材料界面である場合はNV場が
【数131】

であり、Γ”xxのみがゼロ以外の成分になる。グローバル座標系のΓiyは式(74)で取得される。
【0246】
4.4.円弧
[0274] 円弧は、原点A、下半径終点B及び切片角度φを有する円の切片と定義される。
【0247】
[0275] 図21は、回転してシフトした円弧をNV場及びローカル座標系で示す。
【0248】
[0276] NV成分Γ”ijは、セクション3.3の完全な楕円の場合と同じ線に沿って計算することができる。主要な違いは、ここでは角積分が0から任意の角度φまで評価されることである。これは、ベッセル合計の偶数項で角積分が
【数132】

となる効果を有する。また、奇数項では、ベッセル関数のラジアル積分が解析式を有する(付録A参照)。
【数133】

【0249】
[0277] ここで、この合計はn≧1の場合にのみ当てはまる。式(84)に式(102)を代入すると、下式になる。
【数134】

ここで、Nは、偶数ベッセル関数の合計及び下式の合計で保持される項の数である。
【数135】

【0250】
[0278] Jの基本関数は、([2,p.633])を使用して書き換えられている。
【数136】

【0251】
[0279] Γ”xy及びΓ”yyについては、角積分の適切な式を代入することによって、NV成分を容易に求めることができる(付録B参照)。
【0252】
5.より一般的な形状の法線ベクトル場の生成
[0280] 特定の状況、例えば珍しい散乱幾何形状の場合又は複数の材料が相互の間に接続界面を有する場合は、メッシング要素の数が少なくなり、電場のスペクトル基底及び電束密度に迅速な収束を示すメッシング戦略を適用することが困難なことがある。このような場合は、場と材料の相互作用演算子のフーリエ係数を生成するために、より一般的な方法が必要なことがある。このような方法の一つは、数値求積法を採用して、形態(54)の積分を評価することである。これで、求積法の法則は、幾つかの点にて積分の関数値を引き出し、所望の積分の近似に到達する。考察中のコンポーネントを見てみると、任意の(x,y)点にて法線ベクトル場の誘電率、指数関数、及びデカルト成分を評価する必要があることが分かる。これは、前者の2つの関数については些細なことであるが、後者については些細なことではない。以前に導入したスケーリングにより、法線ベクトル場はαε≠1であるドメインでしか必要ではない。さらに、全フーリエ指数(m,m)のフーリエ係数は、同じ求積法の法則及び関数評価により取得できるが、指数関数は全フーリエ指数について評価されることが分かる。したがって、主要な関心事は、任意の位置で法線ベクトル場を評価することである(αε≠1であると仮定する)。
【0253】
[0281] 法線ベクトル場を生成する幾つかの秘訣が[3,5]で検討されている。最初の論文は、シュワルツ・クリストッフェル等角写像に基づいて、又は静電問題を解くことによって、RCWAの状況で2次元法線ベクトル場を生成することについて検討している。第2の論文は、逆距離補間アルゴリズムを介した生成について検討し、これはラジアル基底関数を有するいわゆる散乱データ補間アルゴリズムの特定の例である。しかし、論文は両方とも、法線ベクトル場が局所でしか必要でないという可能性を考慮せずに、側的なグリッドで法線ベクトル場を生成することを教示している。さらに、規則的なグリッドは、この規則的なグリッドに適合しない誘電率輪郭に、すなわち、規則的なメッシュと一致しない界面を有する区分的コンスタント材料特性に、低速の収束を生じることがある。その結果、収束した解に到達するために、非常に多数のグリッド点が必要になることがある。これら2つの観察結果により、この手順はCPUの時間に関して非常に高価になる。
【0254】
[0282] 本発明の実施形態により、局所法線ベクトル場を使用し、散乱オブジェクトの積分ドメインを考慮に入れる求積法の法則を適用する、すなわち、材料界面の形状を考慮に入れる積分ドメインで作業する。その結果、ユニットセルの積分が、一定の誘電率を有するドメインでの一連の積分で置換される。より複雑なドメインで積分する求積法の法則が、例えば[6,7,8]で研究されている。積分ドメイン毎の誘電率が一定であり、指数関数が連続的であるので、生じ得る唯一のハードルはこの場合も法線ベクトル場である。したがって、求積法の法則の収束を維持するために、求積法の法則の積分ドメインで十分に平滑な法線ベクトル場を生成する必要がある。これは、散乱データ補間アルゴリズムによって達成することができ、その入力データは積分ドメインの境界、及びその境界における対応する法線ベクトル場の記述から生成される。例えば、境界を区分的線形近似で記述すると、法線は局所的に定数項ベクトルである。境界に沿って法線ベクトル場を十分密にサンプリングすることにより、散乱データ補間アルゴリズムを適用するのに十分なデータが生成される。
【0255】
5.1.法線ベクトル場の周期的連続性
[0283] 標準的な散乱データ補間アルゴリズムは、いわゆるラジアル基底関数、すなわち、データ点と補間点との距離にのみ依存する基底関数を使用する。一般的な補間の問題では、これは通常、良好な考えである。何故なら、近くのデータが遠いデータと比較して大きい影響を補間データに与えることができるからである。しかし、周期的な環境では、データ点と補間点との距離も周期的になる。このことを考慮に入れないと、周期的境界をまたがる補間が人為的不連続を導入することがあり、これは、特定の求積法の法則の収束、又は法線ベクトル場に投影された電磁場の解の収束さえ低下させることがある。したがって、ラジアル基底関数での散乱データ補間の代替法を探している。重要な考えは、構成の周期性を示す周期距離関数を生成し、この関数で距離関数を置換することである。
【0256】
5.2.周期距離関数
[0284] 正規ユークリッド空間
【数137】

では、2点rとr’の間の距離rは下式によって与えられる。
【数138】

これは、負ではなく、2点が一致する場合にのみゼロである。
【0257】
[0285] 次に、まずx軸に沿ってp>0の周期で1Dに周期的な場合について考察する。このような場合では、最初に下式のようにモジュロ(p)関数を導入する。
【数139】

ここで、
【数140】

はシーリング演算子を指す。したがって、下式が得られる。
【数141】

【0258】
[0286] 以上の定義で、xとx’の間のユークリッド距離d(x,x’)=|x−x’|は、周期的な場合でd(x,x’)=|(x−x’)modp|になる。しかし、例えば距離測定値を定義する別の方法もある。
【数142】

上式も距離測定値d(x,x’)の基本的基準を満たす。すなわち、下式になる。
1.d(x,x’)≧0(負ではない)
2.x=x’である場合、及びその場合のみd(x,x’)=0(識別不能の恒等式)
3.d(x,x’)=d(x’,x)(対称)
4.d(x,x”)≦d(x,x’)+d(x’,x”)(三角不等式)
【0259】
[0287] 2方向に周期性がある空間では、この状況はさらに複雑になる。周期的格子ベクトルをa及びaとすると、空間の任意の点r=(x,y,z)を下式で示すことができる。
【数143】

ここで、η及びηは、下式のようにx及びyに関連する横断面における座標である。
【数144】

【0260】
[0288] さらに、散乱構成がη及びηで周期的であり、両方とも周期1であることが分かる。
【数145】

のユークリッド距離関数は、下式のようにa及びaで表すことができる。
【数146】

【0261】
[0289] 周期距離関数に到達するには、η−η及びη−ηを、周期1及びf(0)=0の周期関数f(・)で置換し、
従って|f(・)|は1次元周期距離関数、すなわち、下式を生成する。
【数147】

ここで、f(x)は例えばxmod1またはsin(πx)に等しい。
【0262】
5.3.周期散乱データ補間
[0290] 散乱データ補間アルゴリズムに、基底関数φ(r)、r≧0を導入する。例えばβ>0の状態でφ(r)=exp(−βr)である。さらに、1組のデータ点r及び対応する関数値F(r)、n∈{1,...,N}が提供される。次に、アルゴリズムが係数cを決定し、従ってすべてのn=1,...,Nに対して下式になる。
【数148】

ここで、d(r,r)は、データ点rとrの間の距離を指す。この線形方程式が非特異である場合は、係数cを決定することができ、散乱データ補間アルゴリズムは以下のFの補間につながる。
【数149】

【0263】
[0291] 周期的場合では、以上の2式の距離関数d(・,・)に式(113)の周期距離関数を代入すると、データの周期的補間になり、これを使用して、[5]と同様の方法で、材料境界における法線ベクトル場のデカルト成分から法線ベクトル場のデカルト成分を生成することができる。すなわち、最初に下式のように保管された成分を求める。
【数150】

ここで、j∈{x,y,z}である。次に、rから1の位置で法線ベクトル場を正規化する。すなわち、
【数151】

とする。
【0264】
6.任意の非等方性媒体の局所法線ベクトル場
[0292] 以上のセクションでは、ポポフ及びネヴィエールによって定義されたベクトル場のスケーリング関数及び基底変換を導入することにより、連続ベクトル場Fの構造中の局所法線ベクトル場の概念を得た。法線ベクトル場の局所化が、例えば回折格子の幾何形状の段階的近似により、いかなる場所でも法線ベクトル場に直交する固定異常軸を有する等方性媒体及び複屈折媒体について示された。次に、局所法線ベクトル場の概念を任意の非等方性媒体の最も一般的な場合に引き継ぐ。しかし、スカラー関数によるスケーリングには、最も一般的な場合を扱うのに十分な柔軟性がない。一般的な非等方性媒体の場合を扱うために、まずベクトル場Fの定義を修正する。Fのこの新しい定義は下式によって与えられる。
【数152】

ここでSは追加のスケーリング演算子であり、αはゼロではないスケーリング関数であり、これは両方とも材料不連続部の近傍で連続している。PD及びPEは両方とも連続ベクトル場であるので、ベクトル場Fもα及びSの要件にて連続している。
【0265】
[0293] 投影演算子の以前に概略した代数で下式が得られる。
【数153】

【0266】
[0294] 角括弧内の演算子を、例えば
【数154】

を選択する、すなわち、不連続部を含まない特定領域の媒体パラメータ(例えば充填媒体の定数誘電率テンソル)と等しくすることにより、及びSを選択することによりゼロ以外の連続関数であるαP=(PSP−1(Pの範囲で理解される)を選択することにより、局所的にゼロにすることができる。αでは、これは
【数155】

になる。したがって
【数156】

が当てはまる領域では、ベクトル場Fの基底が法線ベクトル場に依存しない、すなわち、デカルト座標で表される限り、法線ベクトル場が必要ではない。Sの別の選択肢は、誘電率分布の平滑化したタイプを使用することである。この選択肢の場合は、法線ベクトル場が必要である領域がさらに縮小する。
【0267】
[0295] 等方性媒体の場合、ベクトル場Fに関する以上の修正は以前の定義と矛盾しない。何故なら、Sが単位作用素の倍数になり、したがってP及びPと交換可能になるからである。その結果、PSPは等しくゼロであり、αの選択肢は以前に定義した場合まで減少する。
【0268】
[0296] 局所法線ベクトル場の主要な利点、各オブジェクトについてすなわち、演算子Cε及びεCεの係数の式を別個に予め計算する可能性、及びカットアンドコネクト戦略を適用する可能性は、一般的な非等方性の場合でも依然として有効である。しかし、非等方性の方向が法線ベクトル場の方向と混合するので、演算子の係数は通常、さらに複雑である。これは、例えば等方性媒体の法線ベクトル場に依存しなかった演算子(Pε−1で観察することができ、これは一般的な場合の法線ベクトル場及び非等方性の方向に依存する。したがって、係数を画定するフーリエ積分の閉じた形態の式を求めることが通常はさらに困難になり、セクション5で概略したような求積法の方法が代替的に有用なことがある。明瞭な例外は、オブジェクトの非等方性がオブジェクトの支持全体で一定であり、オブジェクトの形状が、法線ベクトル場の方向が固定されたメッシュ要素、例えば三角形又は多角形のメッシュ要素で記述される場合である。この場合では、導出された閉じた形態の式が依然として有効であるが、(一定の)法線ベクトル場と誘電率テンソルの非等方性の(一定)方向との間の角度に依存する定数スケーリング因子を除く。
【0269】
[0297] 例えばRCWA、差動法、及び体積積分法で使用することができる、スペクトル基底、等方性及び非等方性媒体の場と材料の相互作用内の局所法線ベクトル場の概念を解析する投影演算子のフレームワークについて説明してきた。このフレームワークで、スケーリング及び基底変換を局所法線ベクトル場につなげることができ、これにより専用の形状の法線ベクトル場で作業し、メッシング戦略を適用して、より一般的な形状の法線ベクトル場を構築できることを示した。これは、法線ベクトル場の方法の融通性を大幅に改良し、これらの場を設定するCPUの時間の多大な節約にもつながる。幾つかのビルディングブロックに関する閉じた形態の解、及び周期距離補間アルゴリズムを含むより一般的な形状のベクトル場の生成の例についても例示した。
【0270】
[0298] 本発明の実施形態により、2D及び3Dでの法線ベクトルの設定をさらに高速に柔軟性を高めることができ、その結果、CDの再構築時間がより迅速になり、ライブラリレシピの生成がより迅速になる。簡単な例では、同じ計算ハードウェアで数秒から1秒未満への高速化が観察された。
【0271】
2.法線ベクトル場の公式化の代替方法
1.リーの法則及び代替方法
[0299] 以上の公式化は法線ベクトル場の公式化を指すことに留意されたい。しかし、上記は、矩形の幾何形状に適切なリーの公式化にも拡大することができる。このリーの公式化の対応する演算子について以下で説明する。
2.畳み込み構造を維持する修正リーの法則及び法線ベクトル場の公式化の代替方法
【0272】
[0300] 以上のセクションでは、いわゆるk空間リップマン・シュウィンガー方程式(0.1)及び(0.2)を修正して、スペクトルベースでその正確さを保持しながら、場と材料の相互作用の有効行列ベクトル積を構築した。これは、Eで示した電場に1対1対応の補助ベクトル場Fを導入することによって達成することができ、したがってFが計算されると、追加の計算が非常に少ない状態でEが取得される。要するに、下式の形態の1組の式が導出された。
【数157】

ここでEincは入射場を指し、Gは層状背景媒体のグリーン関数の行列表現を指し、M、P、P、Cε及び(εCε)は、FFTの形態における有効行列ベクトル積に対応する。
【0273】
[0301] 以上の場合、FとJとEの関係によって、コンパクトで効率的な数学的形式が可能になる。しかし、有効行列ベクトル積とともに高い正確さというゴールを達成するために、他の経路が存在する。これらの代替方法を調査し、文書化することが、本セクションの目的である。既存の数学的形式は、Eと補助ベクトル場Fの間の1対1対応を削除することによって、すなわち、可逆演算子Cεを介して拡張することができる。これは例えば、例えばセクション2.2で示すように、補助ベクトル場Fに電場Eの場合より多くの自由度を導入する場合である。さらなる措置を執らないと、その結果となるベクトル場Fの線形方程式の組は決定が不十分であり、したがってFが一意ではなくなる。これは通常、反復ソルバの使用時に望ましくない。何故なら、通常、多数の反復又は反復プロセスのブレークダウンにつながるからである。この状況を克服するには、方程式F、E及び/又はJの間に追加の組の線形制約を見込む。この基本原理で、以下の一般化された組の修正リップマン・シュウィンガー方程式になる。
【数158】

ここで、以上の行列方程式の各演算子は、例えばFFTによって有効行列ベクトル積を実施することができる。
【0274】
2.1.ラランによる法則
[0302] 2Dの周期性がある周期構造についてリーによって導出された法則以前に、ララン[13]が、誘電率行列Mεの重み付き平均式([13]でE及び逆誘電率行列(Minv(ε)−1([13]でP−1とされている)の逆行列とされている)を提案している。この作業方法では、電場Eと補助ベクトル場Fとの組合せで作業することができる。後者のベクトル場は、(Minv(ε)−1とEとの積に遭遇する点にて導入され、第1の行列ベクトル積に到達して、コントラスト電流密度J又はそのスケーリングした対応物qを計算する。
【数159】

ここで、Fは下式を満たす。
【数160】

【0275】
[0303] Mε及びMinv(ε)は両方とも、FFTを介して有効行列ベクトル積が実行される。
【0276】
[0304] 式(2.73)及び(2.74)の結果は、式(2.72)の形態でより大きい線形系として実行することができる。ここでは、演算子I及びGを含む第1の組の方程式はそのままである。第2の組の方程式は、一方のJと他方のE及びFとの間に関係式(2.73)を引き出す。すなわち、C11=jωα(Mε−εI)、C12=−I、及びC13=jω(1−α)Iである。第3の組の方程式は、式(2.74)と同様にE及びFに関係する。すなわち、C21=−I、C22=0、及びC23=Minv(ε)である。最後に、C31、C32、C33、及び右手側の最終行を含む最終組の方程式は存在しない。これは、電流密度Jの近似解を求めるように、前記電磁場Eに関係し、それとは異なる電流密度J及びベクトル場Fの体積積分式の数値的解を含むことにより、構造の電磁散乱特性の計算に組み込むことができる。ここで、ベクトル場Fは、逆作用素Minv(ε)によって電場Eと関連づけられる。
【0277】
2.2.連結リーの法則
[0305] 交差した回折格子の場合、リー[10,11]は、対応する相互作用行列が(ブロック)テプリッツ行列と逆(ブロック)テプリッツ行列の積の合計で構成されている場合、場と材料との相互作用がスペクトル基底でよりよく捕捉されることを示している。(ブロック)テプリッツ行列は通常、「ローランの法則」の表示と呼ばれ、これは標準離散畳み込みに対応する。逆(ブロック)テプリッツ行列を通常、「逆法則」と呼ぶ。逆法則は、場の成分が材料界面にまたがって不連続である場合は常に適用され、ローランの法則は場の成分が材料界面にまたがって連続している場合に適用される。これらの規則は往々にして「リーの法則」と呼ばれる。(ブロック)テプリッツ行列によってFFTの形態の有効行列ベクトル積が可能になるが、逆テプリッツ行列はテプリッツの形態を有さず、したがって高速行列ベクトル積が容易に形成されない。したがって、補助ベクトル場の考えを拡大することにより、制約とともに追加の補助場を導入して、(ブロック)テプリッツ行列の逆数も考慮に入れた有効行列ベクトル積に到達することができる。
【0278】
[0306] 2進回折格子、すなわち、誘電率が周期性の生じた面に直交する方向、ここではz方向で示す方向に依存しない回折格子の等方性媒体の場合を考察してみる。これで、リーの法則は、横断面、すなわち、xy面の電界Eの場成分しか修正しなくてよい。何故なら、電場のz成分が2進回折格子の材料界面にて連続しており、したがって有効行列ベクトル積で表されるローランの法則を直接適用できるからである。幾つかの矩形のブロックから誘電率関数を作成するが、このブロックは隣接していても、していなくてもよい。特に、誘電率関数及び対応する逆誘電率関数は、下式のように書かれる。
【数161】

ここで、
【数162】

は、全区間の支持がラベルαを伴う状態で、方向βにおけるパルス関数である。パルス関数とは、その関連区間では1、その他ではゼロである関数である。x方向にはI非オーバーラップ区間があり、y方向にはJ非オーバーラップ区間がある。さらに、χijは、関数
【数163】

及び
【数164】

の支持上の連続スカラー関数である。
【0279】
[0307] 電場及び電束のx成分の標準的な場と材料の相互作用の関係式
【数165】

から下式が得られる。
【数166】

ここで、リーの一連の推論[10,11]により、
【数167】

はフーリエ空間で分解可能であるが、
【数168】

は分解可能ではない。何故なら、Dxが材料の界面にy方向の不連続部を有するからである。関数
【数169】

は投影演算子と解釈することができるので、以下のことを使用することができる。
【0280】
[0308] Iを単位作用素とし、Aを相互に直交する投影演算子Pと交換可能である有界演算子のシーケンスとすると、演算子
【数170】

は有界逆数
【数171】

を有し、ここでB=A(I+A−1である。
【0281】
[0309] 代数を計算し、投影演算子の等べきを考慮に入れることによって証明される。
【0282】
[0310] この結果から、次に電場成分に関して電束成分を下式のように表すことができる。
【数172】

ここで、A及びBとPとの交換特性が使用される。
【0283】
[0311] 同様に、y成分については下式がある。
【数173】

【0284】
[0312] これで、電場の成分で直接延在する逆行列演算を実行した後、乗法演算子はそれぞれフーリエ因数分解可能である。すなわち、スペクトルドメインでは、逆作用素が逆(ブロック)テプリッツ行列になって、逆法則を表し、投影演算子
【数174】

の組合せが(ブロック)テプリッツ行列になって、ローランの法則を表す。以上の関係から、通常の方法でコントラスト電流密度を導出することができる。すなわち、J=jω[D−εE]である。
【0285】
[0313] 以上の関係から、x及びy方向に沿ったすべての区間が逆作用素、すなわち、I+J逆数の合計を生じることが明白になる。逆作用素を含む中間行列ベクトル積に補助変数(ベクトル場)を導入すると、これらの逆数をそれぞれ回避することができる。例えば、式(2.78)の行列ベクトル積
【数175】

は、補助変数Fxjで置換され、ここでもスペクトルドメインにその行列ベクトル積の有効表現を有する線形方程式
【数176】

は、線形系に組み込まれる(2.72)。その方法で、FFTの形態で行列ベクトル積の効率が保持されるが、変数は増加する。このことは、I及びJが1より大きい場合に、特に当てはまる。何故なら、逆数がそれぞれ補助変数の量を増加させ、それにより行列ベクトル積の合計のサイズを増大させるからである。
【0286】
2.3.リーの法則の逆作用素の数を減少させる
[0314] セクション2.2の結論は、各投影演算子
【数177】

が新しい補助ベクトル場を導入し、それによってこの手順が、幾つかの写像演算子より多くを必要とする幾何形状ではかなり非効率になるということである。したがって、段階的戦略の幾何学的融通性を犠牲にせずに、最初に導入されるその戦略より少ない投影演算子で作業する方法があるか否かという疑問が生じる。
【0287】
[0315] 努力したことは主に、含まれる投影演算子を減少させた合計として、式(2.75)を書き換えること、すなわち、下式に書き換えることである。
【数178】

【0288】
[0316] これは有名な「4色問題」(four-color problem)に触発されたものであり、これでは平坦なマップを異なる4色のみで着色することができ、マップの2つの隣接する領域で同じ色を有する領域はない。今回の場合では、状況が多少似ている。すなわち、隣接する支持の投影演算子は、その乗法関数
【数179】

がそれを相互接続する境界をまたがって連続している場合にのみ併合することができる。一般に、このような制約は幾何学では対処されない。したがって、隣接する支持を有さない投影演算子を併合するように、グルーピングを導入する。これで、併合した投影演算子の支持で乗法関数
【数180】

に適合する連続乗法演算子を構築することができる。
【0289】
[0317] 最初に、これを1次元で示してみる。x方向の(周期的)区間を[0,α]として与え、この間隔を偶数の非オーバーラップセグメントS(i=0,...,2I)に分割してみる。したがってセグメントの和集合が周期的区間[0,a]に広がり、セグメントがこの区間に沿ってその位置に従って決定される。すなわち、セグメントSi−1がセグメントSを進めることになる。これで、逆誘電率関数を下式のように書くことができる。
【数181】

ここで、Π(x)の支持はi番目のセグメントに対応する。
【0290】
[0318] 次に、(相互に直交する)奇数及び偶数投影演算子を下式のように導入する。
【数182】

【0291】
[0319] さらに、(スカラー)関数f(x)及びf(x)を導入する。これらの関数は、区間[0,a]で連続しており、周期的連続性を有し、すなわち、f(0)=f(a)及びf(0)=f(a)であり、k=1,...,Iの場合に、下式を満たす。
【数183】

偶数及び奇数投影演算子が投影演算子を隣接する支持と併合しないということから、関数f及びfを連続関数として、例えば偶数及び奇数投影演算子の支持の外側にあるセグメントの線形補間を介して構築することができる。したがって、逆誘電率関数を下式のように書くことができる。
【数184】

【0292】
[0320] 次に、この考えを2次元に、すなわち、回折格子構造の横断面に拡大する。(相互に直交する)偶数及び奇数投影演算子を、次元毎に偶数のセグメントがある状態で、デカルト積グリッドのx及びy方向に導入する。さらに、周期的領[0,a]×[0,b]に、f00(x,y)、f0e(x,y)、fe0(x,y)、及びfee(x,y)で示した4つの周期的に連続するスカラー関数を導入する。これらの関数は、これに掛ける投影演算子の支持の外側で、双線形補間によって構築することができる。この手順を図22に示す。
【0293】
[0321] 図22は、次元毎に偶数投影演算子2206(白い支持)及び奇数投影演算子2208(実線/影の支持)を導入することにより、段階的近似2204によって横断面で楕円2202を近似する手順を示す。1方向の投影演算子に他の方向の投影演算子を掛けることにより、隔離されたボックスのパターンが現れる。これにより、隔離された各ボックスの支持に対して適切な挙動を有する連続関数を構築することができる。
【0294】
[0322] これで、逆誘電率関数を下式のように書くことができる。
【数185】

これは、関係する2次元投影演算子(色付き)が4つしかないことを示す。
【0295】
[0323] セクション2.5.2で概略した方法に従うと、以下のリーの法則に到達する。
【数186】

さらに、DとEとの関係について、同様の式にも到達する。
【0296】
[0324] この手順を完結させるために、下式を満たすx成分を有する2つの補助場F及びFを導入する。
【数187】

さらに、y成分についても同様の関係式を導入する。これらの条件で、最終的に下式が得られる。
【数188】

さらに、y成分についても同様の関係式が得られる。以前のセクションの逆作用素とは異なり、FとEを連結する演算子が2次元の特徴を有することに留意されたい。しかし、すべての演算子はここでは、2D(又は繰り返した1D)のFFTを介した有効行列ベクトル積を組み込んだ乗法演算子である。これらの関係から、この場合も通常の方法でコントラスト電流密度間の関係式、すなわち、J=jω[D−εE]を導出し、式(2.72)の線形方程式を組み立てることができる。
【0297】
2.4.単一のブリックに対するリーの法則
[0325] 次に、xy面の回折格子の断面が、誘電率εの背景媒体に埋め込まれた等方性誘電率の単一の矩形ブロック(ブリックとも呼ばれる)で構成される特有の場合について考察する。上述した定義で、この場合の誘電率関数及び逆誘電率関数を下式のように書くことができる。
【数189】

ここから、コントラスト電流密度について下式が得られる。
【数190】

さらに、以下の関係式がある。
【数191】

ここで、Gはこの場合もグリーン関数演算子を指す。次に、x方向のコントラスト電流密度に関する分割法則、すなわち、下式に到達するために電場及び束密度のx成分を特に見てみる。
【数192】

角括弧内の2番目の項は、固定したxに対してy方向に沿って連続的である。したがって、積
【数193】

はフーリエ因数分解可能である、すなわち、角括弧内に与えられたパルス関数と合計電場の間の積は、スペクトルドメインでローランの法則により計算することができる。その後、以下の合計を考察する。
【数194】

これは、固定したyに対してx方向に沿って連続的である。したがって、空間ドメインにおける
【数195】

の乗法は、スペクトルドメインにおけるローランの法則で表すことができる。すなわち、積はフーリエ因数分解可能である。空間的に有効な関係式、
【数196】

及び
【数197】

から、下式が得られ、
【数198】

これは、積分式のx成分として書き換えることができ、
【数199】

コントラスト電流密度のy成分には、同様の式がある。入射電場はいかなる場所でも連続的であり、したがってリーの法則は入射場では役割を果たさないことに留意されたい。z成分については、標準的な積分式を即座に書くことができる。何故なら、電場のz成分は、固定したzに対してx及びyのすべてで連続的であり、したがって
【数200】

及び
【数201】

の積はすべてフーリエ因数分解可能である。すなわち、下式になる。
【数202】

【0298】
[0326] 本発明の実施形態の利点は、メトロロジーの用途で回折格子の輪郭を再構築するために、コントラスト源反転(CSI)アルゴリズムができることである。
【0299】
[0327] 本発明の実施形態は、不連続ベクトル場で演算する不連続演算子、及びそれに関する性能の不利を回避し、したがって収束の正確さ及び速度を改良する。
【0300】
[0328] 図23は、本発明の実施形態による方法を実行するために、プログラム及びデータで構成されたコンピュータシステムを概略形態で示す。コンピュータシステムは中央処理装置(CPU)2302及びランダムアクセスメモリ(RAM)2304を備え、これはプログラムの実行中にプログラム命令2306及びデータ2308を記憶するために使用される。コンピュータシステムは、プログラムを実行する前後にプログラム命令及びデータを記憶するために使用されるディスク記憶装置2310も含む。
【0301】
[0329] プログラム命令2306は、高速フーリエ変換ルーチン2312、行列乗算関数2314、加算及び減算などの他の算術関数2316、及びアレイ編成関数2318を含む。データ2308は、VIMシステムの解の計算中に使用される4Dアレイ2320及び2Dアレイ2322を備える。入力及び出力用の他の従来のコンピュータコンポーネントは図示されていない。
【0302】
[0330] 本発明の実施形態では、フーリエ級数展開を使用し、完全一致層(PML)、又は他のタイプの吸収境界条件を使用することによって非周期的構造を解析して、フーリエ展開を使用するユニットセルの境界付近で無限に向かう放射を模倣することができる。
【0303】
[0331] 本発明の実施形態を、図5及び図6に関して述べた再構築方法に従って組み込み、放射によるオブジェクトの照明から生じる電磁散乱特性を検出して、オブジェクトの近似構造を再構築する方法を提供することができる。
【0304】
[0332] 本発明の実施形態は、図3及び図4に関して述べた処理装置PUに関して本明細書で述べた方法を組み込むことによって組み込み、オブジェクトの近似構造を再構築する検査装置を提供することができる。
【0305】
[0333] 図3、図4及び図23に関して述べた処理装置は、構造の電磁散乱特性を計算する1つ又は複数の機械可読命令のシーケンスを含むコンピュータプログラムの制御下で演算することができ、命令は、1つ又は複数の処理装置に本明細書で述べた方法を実行させるように構成される。
【0306】
[0334] 本文ではICの製造における検査装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明する検査装置には、例えば、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造のような他の用途もあることを理解されたい。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが、当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又は検査ツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0307】
[0335] 上述した本発明の実施形態による方法は、図5及び図6に関して上述したように、放射によるオブジェクトの照明によって生成される回折パターンなどの検出された電磁散乱特性からオブジェクト(1D周期性に限定されない)の近似構造を再構築する順方向回折モデルに組み込むことができる。図3及び図4に関して上述した処理ユニットPUは、この方法を使用してオブジェクトの近似構造を再構築するように構成することができる。
【0308】
[0336] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明は文脈によってはその他の用途、例えばインプリントリソグラフィでも使用することができ、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内のトポグラフィが基板上に作成されるパターンを形成する。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層内に刻印され、電磁放射、熱、圧力又はこれらの組合せを印加することによりレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0309】
[0337] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、355nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極端紫外線(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を包含する。
【0310】
[0338] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁及び静電型光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ、又はその組合せを指すことができる。
【0311】
[0339] 「電磁」という用語は、電気及び磁気を包含する。
【0312】
[0340] 「電磁散乱特性」という用語は、スペクトル(波長の関数としての強度など)、回折パターン(位置/角度の関数としての強度)及び横方向磁気及び横方向電気偏光の相対強度及び/又は横方向磁気と横方向電気偏光との位相差を含む反射及び透過係数及びスキャトロメータ測定パラメータを包含する。回折パターン自体は、例えば反射係数を使用して計算することができる。
【0313】
[0341] したがって、本発明の実施形態は反射散乱に関して説明されているが、本発明は透過散乱にも適用可能である。
【0314】
[0342] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることが理解される。例えば、本発明は、上記で開示したような方法を述べる機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はこのようなコンピュータプログラムを内部に格納したデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとることができる。
【0315】
[0343] なお、「発明の概要」及び「要約書」の項は、発明者が考える本発明の1つ又は複数の例示的実施形態を記載できるがそのすべては記載できないため、本発明及び添付の特許請求の範囲を決して限定するものではない。
【0316】
[0344] 以上、特定の機能及びそれらの関係の実施態様を示す機能ビルディングブロックを使用して本発明の実施形態について説明した。本明細書においては、これらの機能ビルディングブロックの境界は、説明の便宜上、任意に画定されている。特定の機能及びそれらの関係が適切に実施される限り、代替境界を画定することも可能である。
【0317】
[0345] 特定の実施形態についての上記説明は、本発明の一般的な性質を余すところなく開示しており、したがって当業者は、当分野における知識を適用することにより、不適切な過度の実験作業を必要とすることなく、また、本発明の一般概念から逸脱することなく、様々な用途のためにこのような特定の実施形態に容易に修正を加え、及び/又は適合させることができる。したがって、このような適合及び修正は、開示されている実施形態の、本明細書において示されている教示及び手引きに基づく同等物の意味及び範囲内に含まれることが意図されている。本明細書における表現又は用語は、説明を目的としたものであって本発明を限定するためのものではなく、したがって本明細書の用語又は表現は、当業者によって、教示及びガイダンスに照らして解釈されるべきものであることを理解されたい。
【0318】
[0346] 本発明の広さ及び範囲は、上で説明したいずれの例示的実施形態によっても限定されず、唯一添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物によってのみ定義されるものとする。
【0319】
[0347] 本出願の特許請求の範囲は、親出願又は他の関連出願のものとは異なる。したがって出願人は、本出願に関して親出願又はいかなる先行出願でなされた特許請求の範囲に関するいかなるディスクレイマー(disclaimer)も無効にする。したがって、審査官には、このようないかなる以前のディスクレイマー、並びに回避するようにされた引用文献を再訪する必要があることを留意頂きたい。さらに、審査官には、本出願でなされたいかなるディスクレイマーも親出願に取り込まれない、又は親出願に対して読まれないことも認識されたい。
【0320】
参照文献(すべて参照により全体を本明細書に組み込むものとする)
[1] Evgeny Popov and Michel Neviere. Maxwell equations in Fourier space: fast-converging formulation for diffraction by arbitrary shaped, periodic, anisotropic media. J. Opt. Soc. Am. A, 18(11):2886-2894, November 2001.
[2] I. S. Gradshteyn and I. M. Ryzhik. Table of Integrals, Series and Products. Academic Press, 1980.
[3] Thomas Schuster, Johannes Ruoff, Norbert Kerwien, Stephan Rafler, and Wolfgang Osten. Normal vector method for convergence improvement using the RCWA for crossed gratings. J. Opt. Soc. Am. A, 24(9):2880-2890, September 2007.
[4] R.V. Churchill. Complex Variables and Applications. McGraw-Hill, 1960.
[5] Peter Gotz, Thomas Schuster, Karsten Frenner, Stephan Rafler, and Wolfgang Osten. Normal vector method for the RCWA with automated vector field generation. OPTICS EXPRESS, 16(22):17295-17301, October 2008.
[6] Alvise Sommariva and Marco Vianello. Gauss-Green cubature and moment computation over arbitrary geometries. Journal of Computational and Applied Mathematics, to be published.
[7] Alvise Sommariva and Marco Vianello. Product Gauss cubature over polygons based on Green's integration formula. BIT Numerical Mathematics, 47(2):147-177, August 2007.
[8] G. Gabard. Exact integration of polynomial-exponential products with application to wave-based numerical methods. Commun. Numer. Meth. Engng, 2008.
[9] Yia-Chung Chang, Guangwei Li, Hanyou Chu, and Jon Opsal. Efficient finite-element, Green's function approach for critical-dimension metrology of three-dimensional gratings on multilayer films. J. Opt. Soc. Am. A, 23(3):638-6454, March 2006.
[10] Lifeng Li. Use of Fourier series in the analysis of discontinuous periodic structures. J. Opt. Soc. Am. A, 13(9):1870-1876, September 1996.
[11] Lifeng Li. New formulation of the Fourier modal method for crossed surface-relief gratings. J. Opt. Soc. Am. A, 14(10):2758-2767, October 1997.
[12] Brent C. Bergner, Thomas A. Germer, and Thomas J. Suleski. Effect of Line Width Roughness on Optical Scatterometry Measurements. Metrology, Inspection, and Process Control for Microlithography XXIII, edited by John A. Allgair, Christopher J. Raymond. Proc. of SPIE Vol. 7272, 72720U, 2009. DOI: 10.1117/12.813770.
[13] Philippe Lalanne. Improved formulation of the coupled-wave method for two-dimensional gratings. J. Opt. Soc. Am. A, 14(7):1592-1598, July 1997.
[14] A contrast source inversion method, P. M. van den Berg and R. E. Kleinman, Inverse Problems vol. 13 (1997), pp. 1607-1620.
[15] Finite-element contrast source inversion method for microwave imaging, A. Zakaria, C. Gilmore and J. LoVetri, Inverse Problems vol 26 (2010), 115010 (21pp), doi:10.1088/0266-5611/26/11/115010.
[16] A finite-difference contrast source inversion method, A. Abubakar, W. Hu, P. M. van den Berg, and T. M. Habashy, Inverse Problems vol. 24 (2008), 065004 (17pp), doi:10.1088/0266-5611/24/6/065004.
【0321】
付録A
ベッセル関数のラジアル積分
ラジアル積分すると、以下の積分の閉じた形態の式が発見される。
(n≧0)の場合、
【数203】

これらは以下のベッセル関数の繰り返し関係式を採用することによって発見することができる([2])。
【数204】

式(2)にn+1≡2kを代入して積分すると、偶数ベッセル積分の繰り返し関係式が与えられる。
【数205】

この式の第2の積分を、式(A3)を使用して書き換えることができる。
n+1=2k−1を代入して積分すると、下式が与えられる。
【数206】

両方の繰り返し積分式を下式で明示的に書くことができる。
【数207】

式(A6)に式(A7)を代入すると、下式が与えられる。
【数208】

この式の欠点は、ベッセル関数が同じ引数の複数の評価を有することである。これは数値的に高くつく演算であるので、二重総和を切り換えると、下式が与えられる。
【数209】

k指数の最終総和は、下式に等しいと示すことができる。
【数210】

これにより、偶数ベッセル関数のラジアル積分の最終の閉じた形態の式が与えられる。
【数211】

ここで、この総和はn>1にのみ当てはまる。
奇数ベッセル関数のラジアル積分にも、同じ推論を適用することができる。式(A2)にn+1≡2k+1を代入し、式(A3)にn+1≡2kを代入して積分すると、以下の繰り返し積分が与えられる。
【数212】

両方の繰り返し積分関係式を下式で明示的に書くことができる。
【数213】

式(A14)に式(A15)を代入し、二重総和をスワップすると、下式が与えられる。
【数214】

以下の関係式を使用し、
【数215】

式(A16)のzJ(z)を部分積分すると、以下の最終式が与えられる。
【数216】

ここで、最終総和は、n≧1にのみ当てはまる。
【0322】
付録B
角積分
角積分の最も一般的な形態は、下式のように書かれる。
【数217】

ここで、中括弧内にある項のすべての組合せが可能であり、
【数218】

は楕円率であり、φは楕円又は円弧の角度であり、cは幾何学的入力パラメータに従う角度オフセットである(式(83)参照)。この積分の閉じた形態の式を導出することができるが、本報告書では2つの特定の場合に焦点を絞らねばならない。
・円弧
・完全楕円
円の場合はe=1であり、これは積分を非常に単純化する。
【数219】

ここで、eは偶数モードを、oは奇数モードを指す。さらに、中括弧内にある項のすべての組合せが可能である。単純明快な積分で、下式が与えられる。
【数220】

奇数角積分でも、同様の式を導出することができる。
【数221】

完全楕円の場合、eは式(B1)中で任意である。偶数角積分
【数222】

は、下式のように書くことができる。
【数223】

ここで、等角三角関数を使用して、サイン及びコサインの二乗を書き換えてある。さらに、サイン・コサインの積の法則、及び全三角関数が2πの周期性を有することを使用すると、下式が与えられる。
【数224】


被積分関数の対称性を調べると、下式のことを示すことができる。
【数225】

ここで、式(B17)には基本積分が使用されている([2,p.366]参照)。
同じ対称性引数で、下式のことを示すことができる。
【数226】

【数227】

及び
【数228】

についてこの作業を根気よく繰り返すと、下式のことが示される。
【数229】

円(e=1)の場合は、(k=1)項のみがゼロではないことに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造の電磁散乱特性を計算する方法であって、前記構造が、材料境界にて電磁場に少なくとも1つの不連続を引き起こすような様々な特性の材料を含み、当該方法が、
(a)前記電磁場の連続成分及び前記電磁場に対応するスケーリング電磁束密度の連続成分で演算するために、コントラスト電流密度の体積積分式を、場と材料の相互作用演算子を使用して前記コントラスト電流密度の成分を決定することによって、数値的に解くステップであって、前記スケーリング電磁束密度が、前記電磁場及び前記コントラスト電流密度の不連続成分のスケーリング合計として形成される、ステップと、
(b)前記コントラスト電流密度の前記決定された成分を使用して、前記構造の電磁散乱特性を計算するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
(a)前記電磁場の前記連続成分を抽出するために第1の連続成分抽出演算子を使用するステップと、
(b)前記スケーリング電磁束密度の前記連続成分を抽出するために第2の連続成分抽出演算子を使用するステップと、
をさらに含み、
前記場と材料の相互作用演算子が前記抽出された連続成分で演算する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構造が少なくとも1方向に周期的であり、前記電磁場の前記連続成分、前記スケーリング電磁束密度の前記連続成分、前記コントラスト電流密度の前記成分、及び前記場と材料の相互作用演算子が、前記少なくとも1つの方向に対して、少なくとも1つの個々の有限フーリエ級数によってスペクトルドメインで表され、前記方法が、フーリエ係数を計算することによって、前記場と材料の相互作用演算子の係数を決定するステップをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記電磁場の前記連続成分及び前記スケーリング電磁束密度の前記連続成分から、前記材料境界にて連続しているベクトル場を形成するステップをさらに含み、前記コントラスト電流密度の成分を決定する前記ステップが、前記ベクトル場で演算するために場と材料の相互作用演算子を使用することによって実行される、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
(a)前記材料境界に関して画定された前記構造の領域に局所法線ベクトル場を生成するステップと、
(b)前記材料境界に対して接線方向の前記電磁場の連続成分を選択し、前記材料境界に対して法線方向の対応する電磁束密度の連続成分を選択するために、前記法線ベクトル場を使用することによって前記ベクトル場を構築することと、
(c)前記場と材料の相互作用演算子の係数を決定するために、前記領域で前記法線ベクトル場の局所積分を実行するステップと、
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(a)前記材料境界に関して画定された前記構造の領域で局所ベクトル場を生成するステップと、
(b)前記材料境界に対して法線方向の前記電磁場の前記不連続成分、及び前記材料境界に対して法線方向の前記コントラスト電流密度の前記不連続成分を選択するために、前記法線ベクトル場を使用するステップと、
(c)前記場と材料の相互作用演算子の係数を決定するために、前記領域で前記法線ベクトル場の局所積分を実行するステップと、
をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記局所法線ベクトル場を生成する前記ステップが、前記連続成分のうち少なくとも1つをスケーリングすることを含む、請求項5から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記局所法線ベクトル場を生成する前記ステップが、変換演算子を前記ベクトル場で直接使用して前記ベクトル場を前記法線ベクトル場に依存する基底から前記法線ベクトル場に依存しない基底へと変換することを含む、請求項5に従属の請求項5に記載の方法。
【請求項9】
局所法線ベクトル場を生成する前記ステップが、前記領域を、それぞれが個々の法線ベクトル場を有する複数の部分領域に分解することを含み、局所積分を実行する前記ステップが、前記部分領域それぞれの前記個々の法線ベクトル場のそれぞれで積分することを含む、請求項5から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記局所法線ベクトル場が生成されて、前記材料境界に局所的である前記領域内で、前記材料境界に対して法線方向の誘電率の成分、及び前記材料境界に対して接線方向の誘電率の少なくとも1つの他の異なる成分を使用して、前記電磁束密度を前記電場に関連させるステップをさらに含む、請求項5又は9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
放射線によるオブジェクトの照明で生じる検出された電磁散乱特性からオブジェクトの近似構造を再構築する方法であって、
(a)少なくとも1つの構造パラメータを推定するステップと、
(b)前記少なくとも1つの構造パラメータから少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定するステップと、
(c)前記検出された電磁散乱特性を前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較するステップと、
(d)前記比較の結果に基づいて近似オブジェクト構造を決定するステップと、
を含み、
(e)前記モデル電磁散乱特性が、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法を使用して決定される、方法。
【請求項12】
複数の前記モデル電磁散乱特性をライブラリ内で構成するステップをさらに含み、前記比較ステップが、前記検出された電磁散乱特性を前記ライブラリの内容と一致させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定する前記ステップと、前記検出された電磁散乱特性を比較する前記ステップとを反復することをさらに含み、前記構造パラメータが以前の反復で比較した前記ステップの前記結果に基づいて更新される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
オブジェクトの近似構造を再構築する検査装置であって、
(a)前記オブジェクトを放射線で照明するように構成された照明システムと、
(b)前記照明から生じた電磁散乱特性を検出するように構成された検出システムと、
(c)(i)少なくとも1つの構造パラメータを推定し、
(ii)前記少なくとも1つの構造パラメータから少なくとも1つのモデル電磁散乱特性を決定し、
(iii)前記検出された電磁散乱特性を前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性と比較し、
(iv)前記検出された電磁散乱特性と前記少なくとも1つのモデル電磁散乱特性との差から近似オブジェクト構造を決定するように構成された処理装置と、
を備え、
前記処理装置が、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法を使用して、前記モデル電磁散乱特性を決定するように構成される、検査装置。
【請求項15】
構造の電磁散乱特性を計算するために機械可読命令の1つ又は複数のシーケンスを含み、前記命令が1つ又は複数の処理装置に請求項1から10のいずれかに記載の方法を実行させるようになされている、コンピュータプログラム。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13b】
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【図13c】
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【図14】
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【図15b】
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【図15c】
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【図16a】
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【図16b】
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【図18】
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【図23】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図11】
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【図13a】
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【図15a】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−204835(P2012−204835A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−60219(P2012−60219)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】