説明

樹脂の製造方法、それを用いた樹脂、ポジ型レジスト組成物及びパターン形成方法、それに用いられる化合物

【課題】組成分布が狭い樹脂の再現性の高い製造方法、それにより得られた樹脂、それに用いる化合物を提供する。また、感度、LER及びパターン倒れ性能を向上させたレジスト組成物およびそれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】所定の2つの繰り返し単位を含有し、かつ、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂を製造する方法であって、所定の官能基を含有するモノマーを重合する工程、および、所定の官能基を脱保護する工程、を含む製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の製造方法に関する。より具体的には、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにその他のフォトファブリケーション工程に使用されるポジ型感光性組成物に好適な樹脂、及びそれを用いたパターン形成方法、および該樹脂に最適な化合物に関するものである。さらに詳しくは250nm以下、好ましくは220nm以下の遠紫外線などの露光光源、および電子線などによる照射源とする場合に好適なポジ型感光性組成物、それに用いる化合物及びそれを用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学増幅系感光性組成物は、遠紫外光等の放射線の照射により露光部に酸を生成させ、この酸を触媒とする反応によって、活性放射線の照射部と非照射部の現像液に対する溶解性を変化させ、パターンを基板上に形成させるパターン形成材料である。
【0003】
KrFエキシマレーザーを露光光源とする場合には、主として248nm領域での吸収の小さい、ポリ(ヒドロキシスチレン)を基本骨格とする樹脂を主成分に使用するため、高感度、高解像度で、且つ良好なパターンを形成し、従来のナフトキノンジアジド/ノボラック樹脂系に比べて良好な系となっている。
【0004】
一方、更なる短波長の光源、例えばArFエキシマレーザー(193nm)を露光光源として使用する場合は、芳香族基を有する化合物が本質的に193nm領域に大きな吸収を示すため、上記化学増幅系でも十分ではなかった。
このため、脂環炭化水素構造を有する樹脂を含有するArFエキシマレーザー用レジストが開発されてきた(例えば特許文献1及び2参照)。この樹脂は、一般的に、酸解離性基、ラクトン基を有する。さらに高機能化するために、水酸基やカルボキシル基のように水素結合性を有する極性基(ヒドロキシル基やカルボキシル基など)を導入する場合がある。しかし、水素結合性を有する極性基をもつモノマー種を共重合させる場合、重合中の各モノマーの消費速度が異なるため、樹脂の組成分布が大きくなってしまう。この樹脂を用いてパターンを形成すると、レジストパターン幅のばらつき(ラインエッジラフネス、LER)や感度が悪いという問題があった。この問題を解決する方法として、重合時に酸触媒を添加し、酸解離基を分解させながら重合してカルボキシル基含有樹脂を得るという方法が報告されている(特許文献3及び特許文献4参照)。しかし、この方法は酸解離基の分解のコントロールが難しいため、樹脂を再現性良く製造することが非常に難しかった。さらに、重合中はモノマーとポリマーが共存するため、この条件下で脱保護を行うと、ポリマーの酸解離性基と共にモノマーの酸解離性基も分解が進行してしまい、ポリマーの組成分布が広がってしまうという問題点があった。
【特許文献1】特開平9−73173号公報
【特許文献2】米国特許第6388101号明細書
【特許文献3】特開2006−316108号公報
【特許文献4】特開2006−317553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点に対してなされたものであり、組成分布が狭い樹脂の再現性の高い製造方法を提供することにある。さらに、本発明の方法により製造された樹脂により、感度、LER及びパターン倒れ性能を飛躍的に向上させるレジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討したところ、極性基を保護基により保護することにより、重合時の各モノマーの消費速度のばらつきが小さくなることを見出した。さらに、保護基を選ぶことによって、脱保護工程が高選択的に進行し、目的である樹脂が再現性良く製造できることを見出し本発明を完成するに至った。さらに、重合後に脱保護反応を行うことにより、前記のモノマーの酸分解性基の脱保護が進行することを抑制し、組成分布をさらに均一化することに成功した。また、本発明で製造した樹脂を用いることにより、特に感度、LER(ラインエッジラフネス)・パターン倒れ性能が向上したレジストを提供できることを見出した。
【0007】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
【0008】
<1>
一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(III)で表される官能基を含む繰り返し単位とを含有し、かつ、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂を製造する方法であって、
一般式(II)で表される官能基を含有するモノマーを重合する工程、および、
一般式(II)で表される官能基を脱保護反応により一般式(III)で表される官能基に変換する脱保護工程、
を含む製造方法。
【化1】

一般式(I)中、
Xa1は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
Tは単結合又は二価の連結基を表す。
Rx1〜Rx3は、それぞれ独立にアルキル基またはシクロアルキル基を表す。Rx1〜Rx3の少なくとも2つが結合して、シクロアルキル基を形成してもよい。
−A−W (II)
一般式(II)中、
Aは酸素原子、−N(Rw)−で表される基、又は、硫黄原子を表す。−N(Rw)−で表される基においてNは窒素原子であり、Rwは水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
WはRx1〜Rx3が炭素原子と共に形成する三級アルキル基以外の保護基を表す。
−A−H (III)
一般式(III)中、Aは一般式(II)中のAと同義である。
【0009】
<2>
脱保護工程を重合終了後に行うことを特徴とする上記<1>に記載の樹脂の製造方法。
【0010】
<3>
脱保護工程において、一般式(I)中のRx1〜Rx3が炭素原子と共に形成する三級アルキル基の分解率が5モル%以下であることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載の樹脂の製造方法。
【0011】
<4>
一般式(II)におけるWが一般式(IV−1)又は一般式(IV−2)で表される基であることを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれかに記載の樹脂の製造方法。
【化2】

一般式(IV−1)中、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアルコキシ基を表す。
はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はシクロアルケニル基を表す。R2とR3とが連結して環を作っても良い。
【化3】

一般式(IV−2)中、
、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアルコキシ基を表す。
【0012】
<5>
酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂がラクトン構造を有する繰り返し単位を含有することを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれかに記載の酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂の製造方法。
【0013】
<6>
上記<1>〜<5>のいずれかに記載の方法で製造された酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂。
【0014】
<7>
(A)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、及び、
(B)上記<6>に記載の酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂、
を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【0015】
<8>
上記<7>に記載のレジスト組成物により、膜を形成し、該膜を露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成法。
【0016】
<9>
一般式(V)で表される化合物。
【化4】

一般式(V)中、
Rvは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアルコキシ基を表す。
nは1〜3の整数を表す。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造法によって、組成分布が狭い樹脂を再現性良く製造することが可能となる。さらに、その樹脂を含有する感光組成物及びそれを用いたパターン形成法により、感度、ラインエッジラフネス、パターン倒れ性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
尚、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0019】
本発明は、一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(III)で表される官能基を含む繰り返し単位とを含有し、かつ、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂を製造する方法であり、一般式(II)で表される官能基を含有するモノマーを重合する工程と、一般式(II)で表される官能基を脱保護反応により一般式(III)で表される官能基に変換する脱保護工程とを含むことを特徴とする。
【0020】
【化5】

一般式(I)中、
Xa1は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
Tは単結合又は二価の連結基を表す。
Rx1〜Rx3は、それぞれ独立にアルキル基、シクロアルキル基を表す。Rx1〜Rx3の少なくとも2つが結合して、シクロアルキル基を形成してもよい。
−A−W (II)
一般式(II)中、
Aは酸素原子、−N(Rw)−で表される基、又は、硫黄原子を表す。−N(Rw)−で表される基においてNは窒素原子であり、Rwは水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
WはRx1〜Rx3が炭素原子と共に形成する三級アルキル基以外の保護基を表す。
−A−H (III)
一般式(III)中、Aは一般式(II)中のAと同義である。
【0021】
Rwにおけるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル等)が挙げられる。
Rwにおけるシクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル等)が挙げられる。Rwは特に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基であることが好ましい。
Aは、特に酸素原子であることが好ましい。
【0022】
Wにおける保護基とは、水素結合性を有する基(一般式(III)で表される基)を水素結合性を有さない基(一般式(II)で表される基)に変換でき、かつ脱保護反応により容易に脱保護できる保護基であり、かつ、一般式(I)中のRx1〜Rx3が炭素原子と共に形成する三級アルキル基以外の保護基を表す。ここでいう「一般式(I)中のRx1〜Rx3が炭素原子と共に形成する三級アルキル基以外の保護基」とは、一般式(I)中のRx1〜Rx3が炭素原子と共に形成する三級アルキル基と同じ構造を有さず、かつ、この基が実質的に分解しない条件で脱保護できる保護基である。ここでいう「実質的に分解しない条件」とは、保護基Wの脱保護条件で、一般式(I)中のRx1〜Rx3が炭素原子と共に形成する三級アルキル基の分解率(分解した三級アルキル基のモル数/脱保護反応前の三級アルキル基のモル数×100(%))が10モル%以下であることを言う。特に、三級アルキル基の分解率が5モル%以下の条件で脱保護できる保護基を用いることが好ましい。三級アルキル基の分解率を5モル%以下に抑える方法としては、(1)反応温度20℃の酸性条件下で容易に加水分解できる保護基をWに用い、反応温度20℃の酸性条件下でWを選択的に加水分解する方法、(2)金属を用いる反応で脱保護できる保護基をWに用い、金属を用いて脱保護する方法、が挙げられる。これらの脱保護条件では、一般式(I)中のRx1〜Rx3が炭素原子と共に形成する三級アルキル基は実質的に分解しないため、分解率を5モル%以下に抑えることが可能となる。
このような保護基は、例えば、アルコキシメチル(一般式(IV−1)で表される基)、シリル(一般式(IV−2)で表される基)、トリフェニルメチル、メチルチオメチル等の比較的穏やかな酸性条件下で脱保護できる基や、ベンジル、アリル等の非酸性条件下(例えば、金属を用いる反応で脱保護できる条件等)で脱保護できる基が挙げられるが、脱保護反応の容易さからアルコキシメチル(一般式(IV−1)で表される基)及びシリル(一般式(IV−2)で表される基)が最も好ましい。
【化6】

【0023】
一般式(IV−1)中、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアルコキシ基を表す。
はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はシクロアルケニル基を表す。R2とR3とが連結して環を作っても良い。
【0024】
【化7】

【0025】
一般式(IV−2)中、
、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアルコキシ基を表す。
【0026】
以下にWとしての保護基の代表的な例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
構造式中、Aは酸素原子、NRw(Nは窒素原子)及び硫黄原子を表す。R1w、R2wは各々独立して水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアルコキシ基を表す。
【0027】
【化8】

【0028】
一般式(IV−2)の保護基を有するモノマーの一例として、一般式(V)で表される化合物が挙げられる。このモノマーは本発明の製造方法以外にも、他の機能性材料(例えば、防湿材料、防水材料、電気絶縁材料等)の原料としても有用である。
【0029】
【化9】

【0030】
一般式(V)中、
Rvは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
、R及びRは一般式(IV−2)中のR、R及びRと同義であり、炭素数1〜5のアルキル基であることが特に好ましい。
nは1〜3の整数を表す。
【0031】
保護基を有するモノマーの代表的な例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。式中、R3WおよびRvは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
【0032】
【化10】

【0033】
【化11】

【0034】
【化12】

【0035】
【化13】

【0036】
本発明の一般式(V)で表される化合物は、一般式(Va)で表される化合物と一般式(Vb)で表される化合物との反応により得ることができる。反応は、0〜80℃で行うことが好ましく、10〜50℃で行うことが最も好ましい。一般式(Vb)で表される化合物は、一般式(Va)で表される化合物が含有する水酸基に対し、1.0〜5.0モル当量用いることが好ましく、1.1〜2.5モル当量用いることが最も好ましい。反応は、塩基性物質の存在下で行うことが好ましい。ここでいる塩基性物質とは水中25℃でpKaが7より大きい化合物をいう。塩基性物質は、アミン(例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N−メチルピペリジンなど)、含窒素テロ環化合物(例えば、ピリジン、キノリン、ピコリン、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾールなど)、炭酸塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなど)が挙げられ、特に三級アミン、含窒素ヘテロ環化合物が好ましい。塩基性物質は、一般式(Va)で表される化合物が含有する水酸基に対し、1.0〜5.0モル当量用いることが好ましく、1.1〜2.5モル当量用いることが最も好ましい。
【0037】
【化14】

【0038】
本発明の脱保護工程について説明する。本発明の脱保護工程は重合中又は重合後のどちらで行ってもよいが、重合後に行うことが特に好ましい。これは、重合中に脱保護反応を行うと、保護基を有する未反応モノマーの保護基が脱保護し、本発明の効果(水素結合性を有するモノマーを保護することによるモノマー消費速度均一化の効果)が小さくなるためである。
脱保護反応は、保護基に応じて最適な脱保護反応(例えばProtecting Groups 3rd Edition(Thime)に記載されている脱保護反応)を選び実施する。保護基がアルコキシメチル基(一般式(III−1)で表される基)及びシリル基(一般式(III−2)で表される基)である場合、酸性物質及びプロトン性溶媒を用いて脱保護反応をすることが好ましい。ここでいう酸性物質とは、水中25℃でのpKaが4以下の化合物をいう。
【0039】
脱保護反応に用いる酸性物質の具体的な例としては、スルホン酸(例えば、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等)、ハロゲン化水素(フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素)、ペルフルオロカルボン酸(例えば、トリフルオロ酢酸、ペルフルオロブタンカルボン酸等)、硝酸等が挙げられる。これらの酸は単独で用いても良く、混合して用いても良い。また、ピリジン等の塩基の塩になっていても良い(例えば、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩など)。
酸性物質の使用量は、保護基Wに対し、0.1〜10モル当量用いることが好ましく、0.5〜5モル当量用いることが最も好ましい。
酸性物質と共に用いるプロトン性溶媒とは、ヒドロキシル基を有する溶媒であり、例えば、水、アルコール溶媒(例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等)が挙げられる。
脱保護反応は均一溶媒系で行ってもよく、不均一溶媒系(樹脂を含有する有機溶媒とプロトン性溶媒の二相系)で行っても良い。均一溶媒系で脱保護を行う場合、樹脂が析出しないようにプロトン性溶媒を添加することが好ましい。均一溶媒系で脱保護反応を行う場合、プロトン性溶媒は保護基Wに対し1.0〜10000モル当量用いることが好ましく、10〜1000モル当量用いることが最も好ましい。不均一溶媒系で脱保護を行う場合、プロトン性溶媒が含有する酸性物質の重量濃度(酸性水溶液(g)に含有される酸性物質(g)の割合)は、20重量%以下が好ましく、10重量%以下が最も好ましい。これにより、一般式(I)で表される酸分解性基を有する繰り返し単位を分解させずに効果的に脱保護反応を進行させることができる。
【0040】
脱保護反応は、通常、0〜100℃で行うことができるが10〜50℃で行うことが好ましく、10〜35℃で行うことが最も好ましい。
反応時間は5時間以内であることが好ましく、2時間以内であることが最も好ましい。
【0041】
本発明の重合方法としては、ラジカル重合、カチオン重合、イオン重合等の付加重合や、重縮合等が挙げられるが、特にラジカル重合が好ましい。
ラジカル重合の方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤(場合によってはモノマー種や開始剤を含有してもよい)にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられるが、滴下重合法が好ましい。
反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、酢酸エチルのようなエステル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、さらには後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても良く、混合して用いても良い。より好ましくは本発明のレジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0042】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。重合は、連鎖移動剤を添加して行っても良い。連鎖移動剤としては、硫黄を含有する化合物が好ましく、炭素数が1〜10のチオール、炭素数が2〜20のジスルフィドが最も好ましい。チオールとしては、1−ブタンチオール、1−ペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、1−オクタンチオール等が挙げられる。ジスルフィドとしては、ジブチルジスルフィド、ジオクチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド等が挙げられる。これら連鎖移動剤の添加量は、目的の重合体の分子量によるため一義的に決定できないが、全モノマーモル数に対し、概ね0.01〜10モル%である。重合反応の全モノマー濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60℃〜100℃である。
【0043】
本発明の樹脂は、酸の作用により分解し、アルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂であり、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂(「酸分解性樹脂」、「酸分解性樹脂(B)」又は「樹脂(B)」とも呼ぶ)である。
【0044】
アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基を有する基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、カルボン酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基が挙げられる。
酸で分解し得る基(酸分解性基)として好ましい基は、これらのアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
【0045】
本発明の樹脂(B)は、酸分解性基を有する酸分解性繰り返し単位として前記式(I)で表される繰り返し単位を含有するが、他にも酸分解性基を有する酸分解性繰り返し単位を含有してもよい。
【0046】
式(I)中、
Tにおける二価の連結基としてはアルキレン基、−COO−Rt−(Rtはアルキレン基又はシクロアルキレン基)、−ORt−等が挙げられる。Tは、特に単結合又は−COO−Rt−が好ましい。Rtは炭素数1〜5のアルキレン基(−CH−、−(CH−等)が好ましい。
Rx1〜Rx3のアルキル基は直鎖でも分岐していてもよく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
Rx1〜Rx3のシクロアルキル基としては、単環でも多環でもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環環状アルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環環状アルキル基が好ましい。
Rx1〜Rx3の少なくとも2つが結合して形成されるシクロアルキル基としてはシクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環環状アルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環環状アルキル基が好ましい。
Rx1がメチル基またはエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を結合している様態が好ましい。
【0047】
酸分解性繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、20〜50mol%が好ましく、より好ましくは25〜45mol%である。
【0048】
好ましい酸分解性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示す。式中、Xa1は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
【化17】

【0052】
【化18】

【0053】
(B)成分はラクトン基を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
ラクトン基としては、ラクトン構造を含有していればいずれの基でも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造を含有する基であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造を有する基が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)(LC1−4)(LC1−5)(LC1−6)(LC1−13)(LC1−14)であり、特定のラクトン構造を用いることでラインエッジラフネス、現像欠陥が良好になる。
【0054】
【化19】

【0055】
ラクトン構造部分は置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられ、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性官能基である。
2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在するRb2は同一でも異なっていてもよく、また、複数存在するRb2同士が結合して環を形成してもよい。
【0056】
一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0057】
【化20】

【0058】
一般式(AII)中、Rb0は、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rb0のアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0059】
b0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。Rb0は水素原子、メチル基が好ましい。
【0060】
bは、アルキレン基、単環または多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、単結合、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、又はこれらを組み合わせた2価の基を表す。好ましくは単結合、−Ab1−CO2−で表される連結基である。
Ab1は直鎖、分岐アルキレン基、単環または多環のシクロアルキレン基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基である。
【0061】
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のうちのいずれかで示される基を表す。
【0062】
ラクトン構造を有する繰り返し単位は通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90以上のものが好ましく、より好ましくは95以上である。
【0063】
ラクトン構造を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、15〜60mol%が好ましく、より好ましくは20〜50mol%、更に好ましくは30〜50mol%である。
【0064】
ラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、RxはH、CH3、CH2OH、またはCF3を表す。
【0065】
【化21】

【0066】
【化22】

【0067】
【化23】

【0068】
ラクトン基を有する繰り返し単位としては最も好ましくは下記の繰り返し単位が挙げられる。最適なラクトン構造を選択することにより、パターンプロファイル、粗密依存性が良好となる。
【0069】
【化24】

【0070】
(B)成分は極性基を有する繰り返し単位が好ましい。極性基としては、水酸基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基、カルボニル基、エステル基又はスルホ基が例としてあげられるが、水酸基又はシアノ基が特に好ましい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。水酸基またはシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましい。水酸基またはシアノ基で置換された脂環炭化水素構造の脂環炭化水素構造としてはアダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。好ましい水酸基またはシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0071】
【化25】

【0072】
一般式(VIIa)〜(VIId)中、R2c〜R4cは、各々独立に水素原子又は水酸基、シアノ基を表す。ただし、R2c〜R4cのうち少なくとも1つは水酸基、シアノ基を表す。好ましくはR2c〜R4cのうち1つまたは2つが水酸基で残りが水素原子である。(VIIa)において更に好ましくはR2c〜R4cのうち2つが水酸基で残りが水素原子である。
【0073】
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIII)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0074】
【化26】

【0075】
一般式(AIIIa)〜(AIIId)中、R1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基、ヒドロキメチル基を表す。
極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、5〜40mol%が好ましく、より好ましくは5〜30mol%、更に好ましくは10〜25mol%である。
【0076】
一般式(AIIIa)〜(AIIId)で表される構造を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0077】
【化27】

【0078】
本発明の樹脂(B)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。アルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビスルスルホニルイミド基、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコールが挙げられ、カルボキシル基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、さらにはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環または多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。最も好ましくはアクリル酸、メタクリル酸である。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、1〜20mol%が好ましく、より好ましくは3〜15mol%、更に好ましくは5〜10mol%である。
【0079】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示す。
【0080】
【化28】

【0081】
本発明の樹脂(B)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を含有することができる。
【0082】
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
これにより、樹脂(B)に要求される性能、特に、
(1)塗布溶剤に対する溶解性、
(2)製膜性(ガラス転移点)、
(3)アルカリ現像性、
(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、
(5)未露光部の基板への密着性、
(6)ドライエッチング耐性、
等の微調整が可能となる。
【0084】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0085】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0086】
樹脂(B)において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0087】
本発明の樹脂を感光性組成物とし、それが特にArF露光用のレジスト組成物であるとき、ArF光への透明性の点から樹脂は芳香族基を有さないことが好ましい。
本発明に用いる樹脂(B)として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート、繰り返し単位のすべてがアクリレート、メタクリレート/アクリレート混合のいずれのものでも用いることができるが、アクリレート繰り返し単位が全繰り返し単位の50mol%以下であることが好ましい。
より好ましくは一般式(I)で表される酸分解性基を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位20〜50%、ラクトン構造を含有する(メタ)アクリレート繰り返し単位20〜50%、一般式(II)で表される官能基を有する繰り返し単位0〜10%、式(III)で表される基を含む繰り返し単位0〜20%を含む共重合ポリマーである。さらに、式(III)で表される基を含む繰り返し単位以外の極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位0〜20%、その他の繰り返し単位を0〜20%を含んでいてもよい。
【0088】
本発明に係る樹脂の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、更に好ましくは3,000〜20,000、最も好ましくは5,000〜15,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。 分子量分布は通常1〜5であり、好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2の範囲のものが使用される。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0089】
本発明で得られた樹脂は、レジスト等の感光性組成物用途に好適に使用することができる。感光性組成物として使用する場合、(A)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、及び、(B)本発明で得られたアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂、を含有するポジ型感光性組成物として使用することが好ましい。
【0090】
本発明の感光性組成物において、本発明に係わる全ての樹脂の組成物全体中の配合量は、全固形分中50〜99.99質量%が好ましく、より好ましくは60〜99.0質量%である。
また、本発明の感光性組成物において、樹脂は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
以下、ポジ型感光性組成物が含有する、樹脂以外の各成分について説明する。
【0091】
(A)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明の感光性組成物は活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(A)(酸発生剤、光酸発生剤ともいう)を含有する。
そのような光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0092】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0093】
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0094】
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0095】
併用してもよい活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0096】
【化29】

【0097】
上記一般式(ZI)において、R201、R202及びR203は、各々独立に有機基を表す。
-は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4-、PF6-、SbF6-などが挙げられ、好ましくは炭素原子を含有する有機アニオンである。
【0098】
好ましい有機アニオンとしては下式AN1〜AN4に示す有機アニオンが挙げられる。
【0099】
【化30】

【0100】
式AN1〜AN4中、
Rc1は有機基を表す。
Rc1における有機基としては、好ましくは炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、またはこれらの複数が、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。
Rd1は水素原子、アルキル基を表し、結合しているアルキル基、アリール基と環構造を形成してもよい。
Rc1の有機基としてより好ましくは1位がフッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子またはフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。
Rc1において炭素原子を5個以上有する時、少なくとも1つの炭素原子は水素原子で置換されていることが好ましく、水素原子の数がフッ素原子より多いことがより好ましい。炭素数5以上のパーフロロアルキル基を有さないことにより生態への毒性が軽減する。
【0101】
Rc1の最も好ましい様態としては、下記一般式で表される基である。
【0102】
【化31】

【0103】
Rc6は炭素数4以下、より好ましくは2〜4、更に好ましくは2〜3のパーフロロアルキレン基、または、3〜5個のフッ素原子及び/または1〜3個のフロロアルキル基で置換されたフェニレン基を表す。
Axは連結基(好ましくは単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−)を表す。Rd1は水素原子、アルキル基を表し、Rc7と結合して環構造を形成してもよい。
Rcは水素原子、フッ素原子、アルキル基(直鎖または分岐)、シクロアルキル基(単環または多環)、アリール基を表す。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基は置換基としてフッ素原子を含有しないことが好ましい。
Rc3、Rc4、Rcは各々独立して有機基を表す。Rc3、Rc4、Rcにおける有機基として好ましくはRc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができる。
Rc3とRc4とが結合して環を形成していてもよい。
Rc3とRc4とが結合して形成される基としてはアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。Rc3とRc4が結合して環を形成することにより光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上し、好ましい。
【0104】
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。
201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)における対応する基を挙げることができる。
【0105】
尚、一般式(Z1)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくともひとつが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくともひとつと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0106】
更に好ましい(Z1)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、及び(ZI−3)を挙げることができる。
【0107】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基およびシクロアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖、分岐アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
201〜R203のアリール基、アルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては炭素数1〜12の直鎖、分岐アルキル基またはシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、最も好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0108】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖又は分岐の2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、最も好ましくは直鎖又は分岐2−オキソアルキル基である。
【0109】
201〜R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。アルキル基として、より好ましくは2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基を挙げることができる。シクロアルキル基として、より好ましくは、2−オキソシクロアルキル基を挙げることができる。
【0110】
2−オキソアルキル基は、直鎖又は分岐のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
2−オキソシクロアルキル基は、好ましくは、上記のシクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
【0111】
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。
【0112】
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
【0113】
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0114】
【化32】

【0115】
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、水素原子又はアルキル基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
【0116】
1c〜R5cとしてのアルキル基およびシクロアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個のアルキル基、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)、炭素数3〜8個の環状アルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが直鎖、分岐アルキル基、シクロアルキル基、又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1cからR5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0117】
x及びRyとしてのアルキル基は、R1c〜R5cとしてのアルキル基と同様のものを挙げることができる。
x及びRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
【0118】
x、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基である。
【0119】
一般式(ZII)、(ZIII)中、R204〜R207は、各々独立に、置換基を有しててもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基およびシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10の環状アルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(I)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0120】
併用してもよい活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物を挙げることができる。
【0121】
【化33】

【0122】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、Ar3及びAr4は、各々独立に、置換若しくは未置換のアリール基を表す。
206は、置換若しくは未置換のアルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。
207及びR208置換若しくは未置換のアルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基、電子求引性基を表す。R207として好ましくは置換若しくは未置換のアリール基である。
208として好ましくは電子求引性基であり、より好ましくはシアノ基、フロロアルキル基である。
Aは、置換若しくは未置換のアルキレン基、置換若しくは未置換のアルケニレン基又は置換若しくは未置換のアリーレン基を表す。
【0123】
活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の内でより好ましくは、一般式(ZI)〜(ZIII)で表される化合物であり、更に好ましくは(ZI)で表される化合物であり、最も好ましくは(ZI−1)〜(ZI−3)で表される化合物である。
更に、活性光線又は放射線の照射により、上記一般式AN1、AN3、AN4に対応する酸、即ち下記式AC1、AC3、AC4で表される酸を発生する化合物が好ましい。式中、各置換基は上記一般式AN1、AN3、AN4と同様の意味を表す。
【0124】
【化34】

【0125】
すなわち、最も好ましい(A)成分の様態としては一般式(ZI)の構造においてX-がAN1、AN3、AN4から選ばれるアニオンである化合物である。
【0126】
活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の中で、特に好ましいものの例を以下に挙げる。
【0127】
【化35】

【0128】
【化36】

【0129】
【化37】

【0130】
酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
【0131】
酸発生剤の組成物中の含量は、レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0132】
本発明の感光性組成物は、上記酸分解性樹脂のほかに(B2)酸の作用により分解する基を有さない樹脂を含有してもよい。
「酸の作用により分解する基を有さない」とは、本願の感光性組成物が通常用いられる画像形成プロセスにおいて酸の作用による分解性が無いかまたは極めて小さく、実質的に酸分解による画像形成に寄与する基を有さないことである。このような樹脂としてアルカリ可溶性基を有する樹脂、アルカリの作用により分解し、アルカリ現像液への溶解性が向上する基を有する樹脂があげられる。
【0133】
(B2)の樹脂としては(メタ)アクリル酸誘導体および/又は脂環オレフィン誘導体から導かれる繰り返し単位を少なくとも1種有する樹脂が好ましい。
(B2)成分に含有されるアルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、フェノール性水酸基、1位または2位が電子求引性基で置換された脂肪族水酸基、電子求引性基で置換されたアミノ基(例えばスルホンアミド基、スルホンイミド基、ビススルホニルイミド基)、電子求引性基で置換されたメチレン基またはメチン基(例えばケトン基、エステル基から選ばれる少なくとも2つで置換されたメチレン基、メチン基)が好ましい。
【0134】
(B2)成分に含有される(b)アルカリの作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基としては、ラクトン基、酸無水物基が好ましく、より好ましくはラクトン基である。(b)アルカリの作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基を有する繰り返し単位として具体的には以下の繰り返し単位が挙げられる。
【0135】
(B2)成分には上記以外の他の官能基を有する繰り返し単位を有してもよい。他の官能基を有する繰り返し単位としては、ドライエッチング耐性、親疎水性、相互作用性などを考慮し、適当な官能基を導入することができる。
【0136】
他の繰り返し単位としては水酸基、シアノ基、カルボニル基、エステル基などの極性官能基を有する繰り返し単位、単環または、多環環状炭化水素構造を有する繰り返し単位、シリコン原子、ハロゲン原子、フロロアルキル基を有する繰り返し単位またはこれらの複数の官能基を有する繰り返し単位である。
【0137】
好ましい(B2)成分の具体例を以下に示す。
【0138】
【化38】

【0139】
(B2)成分の添加量は好ましくは(B)成分に対し0〜30質量%であり、より好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜15質量%である。
【0140】
(C)アルカリ可溶性基、親水基、酸分解性基から選ばれるすくなくとも1つを有する、分子量3000以下の溶解制御化合物
本発明の感光性組成物は、アルカリ可溶性基、親水基、酸分解性基から選ばれるすくなくとも1つを有する、分子量3000以下の溶解制御化合物(以下、「(C)成分」或いは「溶解制御化合物」、「溶解阻止剤」ともいう)を加えてもよい。
溶解制御化合物としては、カルボキシル基、スルホニルイミド基、α位がフロロアルキル基で置換された水酸基などのようなアルカリ可溶性基を有する化合物、水酸基やラクトン基、シアノ基、アミド基、ピロリドン基、スルホンアミド基、などの親水性基を有する化合物、または酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基または親水性基を放出する基を含有する化合物が好ましい。酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基または親水性基を放出する基としてはカルボキシル基あるいは水酸基を酸分解性基で保護した基が好ましい。溶解制御化合物としては220nm以下の透過性を低下させないため、芳香環を含有しない化合物を用いるか、芳香環を有する化合物を組成物の固形分に対し20wt%以下の添加量で用いることが好ましい。
好ましい溶解制御化合物としてはアダマンタン(ジ)カルボン酸、ノルボルナンカルボン酸、コール酸などの脂環炭化水素構造を有するカルボン酸化合物、またはそのカルボン酸を酸分解性基で保護した化合物、糖類などのポリオール、またはその水酸基を酸分解性基で保護した化合物が好ましい。
【0141】
本発明における溶解制御化合物の分子量は、3000以下であり、好ましくは300〜3000、更に好ましくは500〜2500である。
【0142】
溶解制御化合物の添加量は、感光性組成物の固形分に対し、好ましくは3〜40質量%であり、より好ましくは5〜20質量%である。
【0143】
以下に溶解制御化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0144】
【化39】

【0145】
(D)塩基性化合物
本発明のポジ型感光性組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減あるいは、露光によって発生した酸の膜中拡散性を制御するために、(D)塩基性化合物を含有することが好ましい。
【0146】
塩基性化合物としては含窒素塩基性化合物、オニウム塩化合物を挙げることができる。好ましい含窒素塩基性化合物構造として、下記式(A)〜(E)で示される部分構造を有する化合物を挙げることができる。
【0147】
【化40】


【0148】
ここでR250、R251及びR252は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であり、ここでR250とR251は互いに結合して環を形成してもよい。これらは置換基を有していてもよく、置換基を有するアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基又は炭素数3〜20のアミノシクロアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基又は炭素数3〜20のヒドロキシシクロアルキル基が好ましい。
また、これらはアルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含んでも良い。
【0149】
式中、R253、R254、R255及びR256は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基を示す。
【0150】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジンを挙げることができ、置換基を有していてもよい。更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0151】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等があげられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エンなどがあげられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはトリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシドなどがあげられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等があげられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0152】
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上で用いられる。塩基性化合物の使用量は、ポジ型感光性組成物の固形分を基準として、通常0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。十分な添加効果を得る上で0.001質量%以上が好ましく、感度や非露光部の現像性の点で10質量%以下が好ましい。
【0153】
(E)フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤
本発明のポジ型感光性組成物は、更に、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましい。
【0154】
本発明のポジ型感光性組成物がフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤とを含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
【0155】
これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
【0156】
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0157】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
【0158】
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0159】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。さらに、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C817基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C817基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、などを挙げることができる。
【0160】
フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤の使用量は、ポジ型感光性組成物の全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0161】
(H)有機溶剤
本発明の感光性組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤に溶解して用いる。
【0162】
使用し得る有機溶剤としては、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。
【0163】
本発明において、有機溶剤としては、単独で用いても混合して用いても良いが、異なる官能基を有する2種以上の溶剤を含有する混合溶剤を用いることが好ましい。これにより素材の溶解性が高まり、経時におけるパーティクルの発生が抑制できるだけでなく、良好なパターンプロファイルが得られる。溶剤が含有する好ましい官能基としては、エステル基、ラクトン基、水酸基、ケトン基、カーボネート基が挙げられる。異なる官能基を有する混合溶剤としては以下の(S1)〜(S5)の混合溶剤が好ましい。
(S1)水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤、
(S2)エステル構造を有する溶剤とケトン構造を有する溶剤とを混合した混合溶剤、
(S3)エステル構造を有する溶剤とラクトン構造を有する溶剤とを混合した混合溶剤、
(S4)エステル構造を有する溶剤とラクトン構造を有する溶剤と水酸基を含有する溶剤とを混合した混合溶剤、
(S5)エステル構造を有する溶剤とカーボネート構造を有する溶剤と水酸基を含有する溶剤とを混合した混合溶剤。
これによりレジスト液保存時のパーティクル発生を軽減でき、また、塗布時の欠陥の発生を抑制することができる。
【0164】
水酸基を含有する溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等を挙げることができ、これらの内でプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルが特に好ましい。
【0165】
水酸基を含有しない溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらの内で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンが最も好ましい。
【0166】
ケトン構造を有する溶剤としてはシクロヘキサノン、2−ヘプタノンなどが挙げられ、好ましくはシクロヘキサノンである。
エステル構造を有する溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、酢酸ブチルなどが挙げられ、好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
ラクトン構造を有する溶剤としてはγ−ブチロラクトンが挙げられる。
カーボネート構造を有する溶剤としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネートが挙げられ、好ましくはプロピレンカーボネートである。
【0167】
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
エステル構造を有する溶剤とケトン構造を有する溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは40/60〜80/20である。エステル構造を有する溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
エステル構造を有する溶剤とラクトン構造を有する溶剤との混合比(質量)は、70/30〜99/1、好ましくは80/20〜99/1、更に好ましくは90/10〜99/1である。エステル構造を有する溶剤を70質量%以上含有する混合溶剤が経時安定性の点で特に好ましい。
エステル構造を有する溶剤とラクトン構造を有する溶剤と水酸基を含有する溶剤を混合する際は、エステル構造を有する溶剤を30〜80質量%、ラクトン構造を有する溶剤を1〜20質量%、水酸基を含有する溶剤を10〜60質量%含有することが好ましい。
エステル構造を有する溶剤とカーボネート構造を有する溶剤と水酸基を含有する溶剤を混合する際は、エステル構造を有する溶剤を30〜80質量%、カーボネート構造を有する溶剤を1〜20質量%、水酸基を含有する溶剤を10〜60質量%含有することが好ましい。
【0168】
これら溶剤の好ましい様態としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート(好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を含有する溶剤であり、より好ましくはアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートと他の溶剤の混合溶剤であり、他の溶剤が水酸基、ケトン基、ラクトン基、エステル基、エーテル基、カーボネート基から選ばれる官能基、あるいはこれらのうちの複数の官能基を併せ持つ溶剤から選ばれる少なくとも1種である。最も好ましい混合溶剤は乳酸エチル、γブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル、シクロヘキサノンから選ばれる少なくとも1種とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの混合溶剤である。
最適な溶剤を選択することにより現像欠陥性能を改良することができる。
【0169】
<その他の添加剤>
本発明のポジ型感光性組成物には、必要に応じてさらに染料、可塑剤、上記(E)成分以外の界面活性剤、光増感剤、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物等を含有させることができる。
【0170】
本発明で使用できる現像液に対する溶解促進性化合物は、フェノール性OH基を2個以上、又はカルボキシ基を1個以上有する分子量1,000以下の低分子化合物である。カルボキシ基を有する場合は脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。
【0171】
これら溶解促進性化合物の好ましい添加量は、酸分解性樹脂に対して2〜50質量%であり、さらに好ましくは5〜30質量%である。現像残渣抑制、現像時パターン変形防止の点で50質量%以下が好ましい。
【0172】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4916210号、欧州特許第219294号等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
【0173】
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0174】
本発明においては、上記(E)フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を加えることもできる。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪族エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル類等のノニオン系界面活性剤を挙げることができる。
これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また、いくつかの組み合わせで添加することもできる。
【0175】
(パターン形成方法)
本発明のポジ型感光性組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、次のように所定の支持体上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターは0.1ミクロン以下、より好ましくは0.05ミクロン以下、更に好ましくは0.03ミクロン以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
【0176】
例えば、ポジ型感光性組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布、乾燥し、感光性膜を形成する。
当該感光性膜に、所定のマスクを通して活性光線又は放射線を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像、リンスする。これにより良好なパターンを得ることができる。
活性光線又は放射線の照射時に感光性膜とレンズの間に空気よりも屈折率の高い液体(液浸媒体)を満たして露光(液浸露光)を行ってもよい。これにより解像性を高めることができる。用いる液浸媒体としては空気よりも屈折率の高い液体であればいずれのものでも用いることができるが好ましくは純水である。また、液浸露光を行なう際に液浸媒体と感光性膜が直接触れ合わないようにするために感光性膜の上にさらにオーバーコート層を設けても良い。これにより感光性膜から液浸媒体への組成物の溶出が抑えられ、現像欠陥が低減する。
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0177】
活性光線又は放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、電子線等を挙げることができるが、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下の波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、X線、電子ビーム等であり、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(13nm)、電子ビームが好ましい。
【0178】
現像工程では、アルカリ現像液を次のように用いる。レジスト組成物のアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
さらに、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
【実施例】
【0179】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0180】
(合成例1)樹脂(RA−1−1)の合成
窒素気流下、シクロヘキサノン12.3gを3つ口フラスコに入れ、80℃に加熱し、これに下記化合物(1−1)8.17g(48.0mmol)、化合物(1−2)5.67g(24.0mmol)、化合物(1−3)9.84g(42.0mmol)、化合物(1−4)0.87g(6.0mmol)及び重合開始剤V−60(和光純薬製)1.58g(9.6mmol)をシクロヘキサノン110.5gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。得られた重合溶液から2g取り出しメタノール18mL、水2mLの混合溶液に添加して樹脂(RA−1)を析出させた。ろ過により採取し、乾燥後NMR測定を行ったところ、組成比が左から41.0/21.9/33.9/3.2であることが分かった。放冷後、酢酸エチル200mLと3N塩酸100mLを加え、分液ろうと中で5分間混合した。このとき(1−4)由来のアセタール部は完全に消失していることをNMRで確認した。有機相と水相を分離後、有機相に水100mLを加え5分間混合した。有機相と水相を分離後、有機相をエバポレーターで濃縮して酢酸エチルを除去し、得られた有機相をメタノール900mL、水100mLの混合溶液中に滴下した。析出した樹脂をろ過により採取し、40℃で24時間かけて減圧乾燥して樹脂(RA−1−1)を21.2g得た。
【0181】
【化41】

【0182】
(合成例2、3)樹脂(RA−1−2)及び樹脂(RA−1−3)の合成
合成例1と全く同様の操作を繰り返し、樹脂(RA−1−2)及び樹脂(RA−1−3)をそれぞれ21.5g、21.1g得た。
【0183】
(合成例4(比較例))樹脂(RA−1’−1)の合成
下記化合物(1−1)8.17g(48.0mmol)、化合物(1−2)5.67g(24.0mmol)、化合物(1−3)11.3g(48.0mmol)、重合開始剤V−60(和光純薬製)1.58g(9.6mmol)をシクロヘキサノン110.5gに溶解させ、これに硫酸0.15gをシクロヘキサノン100gに溶解させた硫酸−シクロヘキサノン溶液1.0mLを添加した。窒素気流下、この溶液を80℃に加熱したシクロヘキサノン12.2gに6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。放冷後、重合溶液をメタノール900mL、水100mLの混合溶液中に滴下した。析出した樹脂をろ過により採取し、40℃で24時間、減圧下で乾燥して樹脂(RA−1’−1)を21.2g得た。
【0184】
【化42】

【0185】
(合成例5、6(比較例))樹脂(RA−1’−2)及び樹脂(RA−1’−3)の合成
合成例4と全く同様の操作を繰り返し、樹脂(RA−1’−2)及び樹脂(RA−1’−3)をそれぞれ21.1g、22.1g得た。
【0186】
合成例1〜6で得られた樹脂の重量平均分子量、分散度、組成比を表1−1に記した。表1−1より、合成例1〜3の方法が合成例4〜6の方法と比較して樹脂を再現性よく製造できることが分かる。また、合成例1で得られた樹脂(RA−1)と樹脂(RA−1−1)の比較により、本発明の脱保護条件では化合物(1−3)由来の三級アルキル基(1−メチルアダマンチル基)を分解させずに、脱保護反応が進行していることが分かる。
【0187】
【表1】

【0188】
(合成例7)樹脂(RA−2b)の合成
窒素気流下、シクロヘキサノン14.8gを3つ口フラスコに入れ、80℃に加熱し、これに下記化合物(2−1)10.7g(48.0mmol)、化合物(2−2)10.1g(24.0mmol)、化合物(2−3)8.75g(48.0mmol)及び重合開始剤V−60(和光純薬製)1.58g(9.6mmol)をシクロヘキサノン132.8gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。得られた重合溶液から2g取り出しメタノール18mL、水2mLの混合溶液に添加して樹脂(RA−2a)を析出させた。ろ過により採取し、乾燥後NMR測定を行ったところ、組成比が左から40.0/20.9/39.1であることが分かった。放冷後、酢酸エチル200mLと3N塩酸100mLを加え、分液ろうと中で5分間混合した。有機相と水相を分離後、有機相に水100mLを加え5分間混合した。有機相と水相を分離後、有機相をエバポレーターで濃縮して酢酸エチルを除去し、得られた有機相をメタノール900mL、水100mLの混合溶液中に滴下した。析出した樹脂をろ過により採取し、40℃で24時間かけて減圧乾燥して樹脂(RA−2b)(組成比 左から39.5/20.0/39.6)を20.1g得た。
【0189】
【化43】

【0190】
(モノマー合成例)モノマー(3−2)の合成
下記化合物(2’−2)30.3g(120mmol)、イミダゾール24.5g(360mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド150mLに溶解させ、そこにtert−ブチルジメチルクロロシラン45.2g(300mmol)を添加し、25℃で10時間攪拌した。その後、酢酸エチル1000mLと水500mLを加え分液操作を行った。有機相をエバポレーターで濃縮後、カラムクロマトグラフィー(充填剤 シリカゲル(和光純薬製) 溶離液 ヘキサン/酢酸エチル=10/1)にて単離精製し、化合物が20.1g(41.8mmol、収率35%((2’−2)基準)得られた。化合物はNMRにより同定し、下記に示す結果より化合物が式(3−2)で示される構造であることを確認した。
【0191】
【化44】

【0192】
H NMR(溶媒 重ジメチルスルホキシド)
δ0.08(12H,s)、0.83(18H,s)、1.57(4H,d,J=1.8Hz)、1.71(4H,dd,J=23.1Hz,8.1Hz)、1.83(3H,s)、1.88(d、J=1.8Hz)、2.02(4H,dd,J=8.1Hz,23.1Hz)、2.28(1H,m)、5.61(1H,t,J=1.2Hz)、5.95(1H,s)
【0193】
(合成例8)樹脂(RA−3b)の合成
窒素気流下、シクロヘキサノン14.8gを3つ口フラスコに入れ、80℃に加熱し、これに下記化合物(1−1)8.17g(48.0mmol)、化合物(3−2)11.6g(24.0mmol)、化合物(2−3)9.42g(48.0mmol)及び重合開始剤V−60(和光純薬製)1.58g(9.6mmol)をシクロヘキサノン133.2gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。得られた重合溶液から2g取り出しメタノール18mL、水2mLの混合溶液に添加して樹脂(RA−3a)を析出させた。ろ過により採取し、乾燥後NMR測定を行ったところ、組成比が左から40.5/20.2/39.3であることが分かった。放冷後、酢酸エチル200mLと3N塩酸100mLを加え、分液ろうと中で5分間混合した。有機相と水相を分離後、有機相に水100mLを加え5分間混合した。有機相と水相を分離後、有機相をエバポレーターで濃縮して酢酸エチルを除去し、得られた有機相をメタノール900mL、水100mLの混合溶液中に滴下した。析出した樹脂をろ過により採取し、40℃で24時間かけて減圧乾燥して樹脂(RA−3b)(組成比 左から39.9/20.0/40.1)を19.2g得た。
【0194】
【化45】

【0195】
(合成例9)樹脂(RA−4b)の合成
窒素気流下、シクロヘキサノン16.3gを3つ口フラスコに入れ、80℃に加熱し、これに下記化合物(2−1)10.7g(48.0mmol)、化合物(2−2)10.1g(24.0mmol)、化合物(4−3)11.0g(42.0mmol)、化合物(4−4)0.87g(6.0mmol)及び重合開始剤V−60(和光純薬製)1.58g(9.6mmol)をシクロヘキサノン146.9gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。得られた重合溶液から2g取り出しメタノール18mL、水2mLの混合溶液に添加して樹脂(RA−4a)を析出させた。ろ過により採取し、乾燥後NMR測定を行ったところ、組成比が左から40.1/20.2/35.3/4.4であることが分かった。放冷後、酢酸エチル200mLと3N塩酸100mLを加え、分液ろうと中で5分間混合した。有機相と水相を分離後、有機相に水100mLを加え5分間混合した。有機相と水相を分離後、有機相をエバポレーターで濃縮して酢酸エチルを除去し、得られた有機相をメタノール900mL、水100mLの混合溶液中に滴下した。析出した樹脂をろ過により採取し、40℃で24時間かけて減圧乾燥して樹脂(RA−4b)(組成比 左から39.9/20.0/35.1/5.0)を19.8g得た。
【0196】
【化46】

【0197】
(合成例10)樹脂(RA−5b)の合成
窒素気流下、シクロヘキサノン16.3gを3つ口フラスコに入れ、80℃に加熱し、これに下記化合物(2−1)12.2g(55.0mmol)、化合物(4−3)14.4g(55.0mmol)、化合物(5−3)0.88g(5.0mmol)及び重合開始剤V−60(和光純薬製)1.58g(9.6mmol)をシクロヘキサノン146.9gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。得られた重合溶液から2g取り出しメタノール18mL、水2mLの混合溶液に添加して樹脂(RA−5a)を析出させた。ろ過により採取し、乾燥後NMR測定を行ったところ、組成比が左から48.0/47.9/4.1であることが分かった。放冷後、重合溶液をオートクレーブに移し、パラジウムカーボン(パラジウム金属5重量%含有)2.0gを加え、水素圧60atmに加圧し、50℃で8時間加熱した。放冷後、パラジウムカーボンをろ過で除去した。得られた溶液をメタノール900mL、水100mLの混合溶液中に滴下した。析出した樹脂をろ過により採取し、40℃で24時間かけて減圧乾燥して樹脂(RA−5b)(組成比 左から48.1/48.0/3.9)を22.5g得た。
【0198】
【化47】

【0199】
(合成例11(比較例))樹脂(RA−2’)の合成
窒素気流下、シクロヘキサノン13.1gを3つ口フラスコに入れ、80℃に加熱し、これに下記化合物(2−1)10.7g(48.0mmol)、化合物(10−2)6.06g(24.0mmol)、化合物(2−3)9.42g(48.0mmol)及び重合開始剤V−60(和光純薬製)1.58g(9.6mmol)をシクロヘキサノン117.7gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。得られた重合溶液をメタノール900mL、水100mLの混合溶液中に滴下した。析出した樹脂をろ過により採取し、40℃で24時間かけて減圧乾燥して樹脂(RA−2’)を22.8g得た。
【0200】
【化48】

【0201】
合成例7〜10で得られた樹脂の重量平均分子量、分散度、組成比を表1−2に記した。
【0202】
【表2】

【0203】
実施例及び比較例
<条件1>
<レジスト調製>
下記表2に示す成分を溶剤に溶解させ固形分濃度8質量%の溶液を調製し、これを0.03ミクロンのポリエチレンフィルターでろ過してポジ型レジスト溶液を調製した。調製したポジ型レジスト溶液を下記の方法で評価し、結果は表2に示した。
【0204】
<パターン形成方法>
スピンコーターにてヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上にブリューワーサイエンス社製反射防止膜DUV−42を600オングストローム均一に塗布し、100℃で90秒間ホットプレート上で乾燥した後、190℃で240秒間加熱乾燥を行った。その後、各ポジ型レジスト溶液をスピンコーターで塗布し120℃で60秒乾燥を行い160nmのレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜に対し、マスクを通してArFエキシマレーザーステッパー(ASML社製 NA=0.75、ダイポール)で露光し、露光後直ぐに120℃で60秒間ホットプレート上で加熱した。さらに2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥し、ラインパターンを得た。
【0205】
<条件2>
<レジスト調整>
下記表2に示す成分、及び、表面疎水化樹脂Polymer―Aを塗布膜における純水の後退接触角が70〜75°になるように溶解させ固形分濃度8質量%の溶液を調整し、これを0.03μmのポリエチレンフィルターで濾過してポジ型レジスト溶液を調整した。調製したポジ型レジスト溶液を下記の方法で評価し、結果は表2に示した。
【0206】
【化49】

【0207】
<パターン形成方法>
ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(NA=0.85)を用い、液浸液としては超純水を用いて液浸露光を行った以外は、レジスト評価1と同様の手法を用い、ラインパターンを得た。
<感度>
80nmのラインアンドスペース1/1のマスクパターンを再現する露光量を最適露光量(Eopt)とした。この値が小さいほど、感度が高い。
<ラインエッジラフネス>
ラインエッジラフネス(LER)の測定は、測長走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して80nmの孤立パターンを観察し、ラインパターンの長手方向のエッジが5μmの範囲についてエッジのあるべき基準線からの距離を測長SEM((株)日立製作所S−8840)により50ポイント測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
<パターン倒れ>
80nmのラインアンドスペース1:1のマスクパターンを再現する露光量を最適露光量とし、ラインアンドスペース1:1の密集パターン及びラインアンドスペース1:10の孤立パターンについて、最適露光量で露光した際により微細なマスクサイズにおいてパターンが倒れずに解像する線幅を限界パターン倒れ線幅とした。値が小さいほど、より微細なパターンが倒れずに解像することを表し、パターン倒れが発生しにくいことを示す。
【0208】
【表3】

【0209】
以下、表2中の略号を示す。
【0210】
〔塩基性化合物〕
DIA:2,6−ジイソプロピルアニリン
TEA:トリエタノールアミン
PEA:N−フェニルジエタノールアミン
〔界面活性剤〕
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素及びシリコン系)
W−3:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)(シリコン系)
〔溶剤〕
S1:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート
S2:2−ヘプタノン
S3:シクロヘキサノン
S4:プロピレングリコールメチルエーテル
【0211】
表2から、本発明のポジ型レジスト組成物は、感度、LER(ラインエッジラフネス)・パターン倒れ性能に優れ、さらに重合によるロット間差が小さいことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される繰り返し単位と、一般式(III)で表される官能基を含む繰り返し単位とを含有し、かつ、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂を製造する方法であって、
一般式(II)で表される官能基を含有するモノマーを重合する工程、および、
一般式(II)で表される官能基を脱保護反応により一般式(III)で表される官能基に変換する脱保護工程、
を含む製造方法。
【化1】

一般式(I)中、
Xa1は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
Tは単結合又は二価の連結基を表す。
Rx1〜Rx3は、それぞれ独立にアルキル基またはシクロアルキル基を表す。Rx1〜Rx3の少なくとも2つが結合して、シクロアルキル基を形成してもよい。
−A−W (II)
一般式(II)中、
Aは酸素原子、−N(Rw)−で表される基、又は、硫黄原子を表す。−N(Rw)−で表される基においてNは窒素原子であり、Rwは水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
WはRx1〜Rx3が炭素原子と共に形成する三級アルキル基以外の保護基を表す。
−A−H (III)
一般式(III)中、Aは一般式(II)中のAと同義である。
【請求項2】
脱保護工程を重合終了後に行うことを特徴とする請求項1に記載の樹脂の製造方法。
【請求項3】
脱保護工程において、一般式(I)中のRx1〜Rx3が炭素原子と共に形成する三級アルキル基の分解率が5モル%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂の製造方法。
【請求項4】
一般式(II)におけるWが一般式(IV−1)又は一般式(IV−2)で表される基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂の製造方法。
【化2】

一般式(IV−1)中、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアルコキシ基を表す。
はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基又はシクロアルケニル基を表す。R2とR3とが連結して環を作っても良い。
【化3】

一般式(IV−2)中、
、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアルコキシ基を表す。
【請求項5】
酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂がラクトン構造を有する繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法で製造された酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂。
【請求項7】
(A)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、及び、
(B)請求項6に記載の酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂、
を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のレジスト組成物により、膜を形成し、該膜を露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成法。
【請求項9】
一般式(V)で表される化合物。
【化4】

一般式(V)中、
Rvは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアルコキシ基を表す。
nは1〜3の整数を表す。

【公開番号】特開2008−274049(P2008−274049A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117157(P2007−117157)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】