説明

樹脂ペースト組成物及び半導体装置

【課題】金及び銀に対して接着性に優れる樹脂ペースト組成物及び半導体装置を提供する。
【解決手段】(A1)1分子中に、2個のアクリロイルオキシ基と、炭素数5〜20の脂環式構造又は炭素数4〜20の脂肪族構造とを有するアクリロイルオキシ基含有化合物、(A2)1分子中に、2個のメタクリロイルオキシ基と、炭素数5〜20の脂環式構造又は炭素数4〜20の脂肪族構造とを有するメタクリロイルオキシ基含有化合物、(B)重合開始剤、及び(C)充填材を含有する樹脂ペースト組成物。支持部材、支持部材の表面に設置された半導体素子、支持部材の表面と半導体素子との間に介在して支持部材と半導体素子とを固定する上記樹脂ペースト組成物の硬化物、及び支持部材の一部と半導体素子とを封止する封止材を有する半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はIC、LSI等の半導体素子をリードフレーム、ガラスエポキシ配線板等に接
着するのに好適な樹脂ペースト組成物及びこれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置は、半導体チップなどの素子をダイボンディング材でリードフレームのダイパッド部(台座)等に固定し、更にこれら素子とリードフレームのうち外部接続部以外の部分とを封止材で封止した構造となっている。従来、このダイボンディング材としては、金−シリコン共晶、半田、樹脂ペースト組成物等が知られているが、作業性及びコストの点から樹脂ペースト組成物が広く使用されている。
【0003】
この半導体装置の実装方式は、高密度実装の点から、従来のピン挿入実装方式(半導体装置のリード端子をプリント配線基板等よりなる基板の孔(スルーホール)に通して、片面又は両面に半田付けする方式)から表面実装方式(半田印刷された基板上に半導体装置を実装し、この半田を赤外線等で加熱して溶かし、半導体装置を基板に固定する方式)へと移行している。この表面実装方式においては、上記のとおり基板上に半導体装置を実装した状態で基板全体を赤外線等で加熱するリフローソルダリングが用いられ、パッケージが200℃以上の高温に加熱されるため、吸湿した水分の急激な膨張によりペースト層の剥離が発生することがある。そのため、ダイボンディングペーストには半導体素子(シリコンチップ等)とリードフレーム間のダイシェア接着強度(以下、接着強度という場合もある)が高いことが要求される。
【0004】
この点に関して、特許文献1には、樹脂ペースト組成物の銅リードフレームに対する接着強度の向上等を目的として、アクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物、ラジカル開始剤、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及び銀粉を含む樹脂ペースト組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−179769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体素子の支持部材(リードフレーム等)としては、上記銅フレーム以外にも種々のものが用いられている。例えば、銅等の表面に銀メッキを施したリードフレームや、ニッケル/金の2層のメッキを施したリードフレームも用いられている。また、近年、リードフレームにニッケル/パラジウム/金の3層のメッキを施したPre Plating Lead Frame(以下PPFと略す)と呼ばれるリードフレームが増えてきている。そして、これら表面に銀や金が施されたリードフレームのダイパッド部に対して、半導体素子を強固に接着することが望まれている。
本発明は、特に金や銀よりなる支持部材の表面に対して半導体素子を良好に接着することができる樹脂ペースト組成物と、この樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子と支持部材とを接着してなる半導体装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のアクリロイルオキシ基含有化合物と特定のメタクリロイルオキシ基含有化合物との両方を含んだ樹脂ペースト組成物が、これら2つの化合物の相乗効果により、表面が金や銀よりなる支持部材に対して半導体素子を良好に接着できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は以下を提供するものである。
(A1)1分子中に、2個のアクリロイルオキシ基と、炭素数5〜20の脂環式構造又は炭素数4〜20の脂肪族構造とを有するアクリロイルオキシ基含有化合物、(A2)1分子中に、2個のメタクリロイルオキシ基と、炭素数5〜20の脂環式構造又は炭素数4〜20の脂肪族構造とを有するメタクリロイルオキシ基含有化合物、(B)重合開始剤、及び(C)充填材を含有する樹脂ペースト組成物。
支持部材、前記支持部材の表面に設置された半導体素子、前記支持部材の表面と前記半導体素子との間に介在して前記支持部材と前記半導体素子とを固定する上記樹脂ペースト組成物の硬化物、及び前記支持部材の一部と前記半導体素子とを封止する封止材を有する半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂ペースト組成物及び半導体装置によると、表面が金や銀よりなる支持部材に対して半導体素子を良好に接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】体積抵抗率の測定方法を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[樹脂ペースト組成物]
本発明の樹脂ペースト組成物は、(A1)1分子中に、2個のアクリロイルオキシ基と、炭素数5〜20の脂環式構造又は炭素数4〜20の脂肪族構造とを有するアクリロイルオキシ基含有化合物、(A2)1分子中に、2個のメタクリロイルオキシ基と、炭素数5〜20の脂環式構造又は炭素数4〜20の脂肪族構造とを有するメタクリロイルオキシ基含有化合物、(B)重合開始剤、及び(C)充填材を含有するものである。
【0012】
<(A1)アクリロイルオキシ基含有化合物>
本発明の樹脂ペースト組成物において、(A1)アクリロイルオキシ基含有化合物(以下、「(A1)成分」と称することがある。)は、必須の成分である。この(A1)アクリロイルオキシ基含有化合物を含有しない樹脂ペースト組成物は、金や銀表面と半導体素子のシリコン表面との接着強度が不十分なものとなる。
【0013】
本発明で用いる(A1)アクリロイル基含有化合物は、後述する(A2)メタクリロイル基含有化合物と同様に、後述する(C)充填材を分散させるマトリックスともいえる成分であり、好ましくは、硬化性の(A1)アクリロイル基含有化合物としては、アクリル酸エステル化合物を用いることができる。
本発明で用いる(A1)アクリロイルオキシ基含有化合物としては、1分子中に、2個のアクリロイルオキシ基と、炭素数5〜20の脂環式構造又は炭素数4〜20の脂肪族構造とを有するものであれば特に制限はなく、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等のトリシクロアルカン基含有ジアクリレート化合物などが挙げられる。
【0014】
樹脂ペースト組成物中における(A1)成分の含有量は、5〜15質量%が好ましく、6〜12質量%が特に好ましい。この含有量が5質量%以上であると接着強度が大きくなり、15質量%以下であると粘度が小さくなり過ぎることが防止される。
【0015】
<(A2)メタクリロイルオキシ基含有化合物>
本発明の樹脂ペースト組成物において、(A2)メタクリロイルオキシ基含有化合物(以下、「(A2)成分」と称することがある。)は、必須の成分である。この(A2)メタクリロイルオキシ基含有化合物を含有しない樹脂ペースト組成物は、金や銀表面と半導体素子のシリコン表面との接着強度が不十分なものとなる。
【0016】
本発明で用いる(A2)メタクリロイル基含有化合物は、前述の(A1)アクリロイル基含有化合物と同様に、後述する(C)充填材を分散させるマトリックスともいえる成分であり、好ましくは、硬化性の(A2)メタクリロイル基含有化合物としては、メタクリル酸エステル化合物を用いることができる。
本発明で用いる(A2)メタクリロイルオキシ基含有化合物としては、1分子中に、2個のメタクリロイルオキシ基と、炭素数5〜20の脂環式構造又は炭素数4〜20の脂肪族構造とを有するものであれば特に制限はなく、例えば、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート等のトリシクロアルカン基含有ジメタクリレート化合物などが挙げられる。
【0017】
樹脂ペースト組成物中における(A2)成分の含有量は、5〜15質量%が好ましく、6〜12質量%が特に好ましい。この含有量が5質量%以上であると接着強度が大きくなり、15質量%以下であると粘度が小さくなり過ぎることが防止される。
【0018】
<(A1)成分及び(A2)成分>
このように、本発明の樹脂ペースト組成物は、(A1)アクリロイルオキシ基含有化合物と(A2)メタクリロイルオキシ基含有化合物の両方を含有することが必須である。本発明の樹脂ペースト組成物は、これら2種の化合物の相乗効果により、いずれか1種しか含有しない樹脂ペースト組成物と比べて接着強度が向上する。
(A1)成分と(A2)成分の含有割合は、接着強度をより向上できる観点から、質量比で(A1)成分/(A2)成分=10/90〜90/10が好ましく、30/70〜70/30がより好ましく、40/60〜60/40が更に好ましい。
<(A3)成分>
なお、本発明の効果を損ねない程度に、(A1)成分及び(A2)成分以外のアクリロイルオキシ基含有化合物及びメタクリロイルオキシ基含有化合物(以下、これら(A1)成分及び(A2)成分以外の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物を「(A3)成分」と称することがある。)の1種又は2種以上を併用することができる。
<(A1)成分、(A2)成分及び(A3)成分>
樹脂ペースト組成物中におけるこれら(A1)成分、(A2)成分及び(A3)成分の総量は、好ましくは10〜35質量%であり、より好ましくは12〜25質量%である。この含有量が10質量%以上であると接着強度が大きくなり、30質量%以下であると粘度が小さくなり過ぎることが防止される。
【0019】
<可とう化剤>
本発明の樹脂ペースト組成物には、必要に応じて可とう化剤を添加してもよい。可とう化材を含有することによって、半導体装置の各部材の熱膨張や収縮等に起因して樹脂ペースト組成物の硬化物に生じる応力を緩和することができる。
可とう化材に特に制限はないが、液状ゴム又は熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
(液状ゴム)
前記液状ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、マレイン化ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴム、アミノ末端アクリロニトリルブタジエンゴム、ビニル末端アクリロニトリルブタジエンゴム、及びスチレンブタジエンゴム等の液状ゴム等のポリブタジエン骨格を有する樹脂が挙げられる。
【0021】
(熱可塑性樹脂)
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸アルキル等のアクリル樹脂、ε−カプロラクトン変性ポリエステル、フェノキシ樹脂及びポリイミド等の熱可塑性樹脂などが挙げられる
これらの可とう化材の中でも、樹脂ペースト組成物の硬化物の弾性率をより低減できる観点からは、エポキシ化ポリブタジエン、又はカルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムが好ましい。前記エポキシ化ポリブタジエンは、一般に市販されているポリブタジエンを過酸化水素水、過酸類によりエポキシ化することによって容易に得られる。前記エポキシ化ポリブタジエンとしては、例えば、B−1000、B−3000、G−1000、G−3000(以上日本曹達(株)製)、B−1000、B−2000、B−3000、B−4000(以上日本石油(株)製)、R−15HT、R−45HT、R−45M(以上出光石油(株)製)、エポリードPB−3600、エポリードPB−4700(以上ダイセル化学工業(株)製)などが市販品として入手可能である。
【0022】
エポキシ化ポリブタジエンのオキシラン酸素濃度としては、3%から18%であることが好ましく、5%から15%であることがより好ましい。
また、ダイシェア接着強度(半導体素子を支持部材に実装させた状態において側面より針を押し当て、接合された半導体素子をはく離させるために必要な強度)をより向上できる観点からは、カルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムがより好ましい。カルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムとしては、一般式(I)で表される化合物が特に好ましい。
【0023】
【化1】

【0024】
〔一般式(I)中、x及びyはそれぞれ独立に1以上の整数を示す。x/yは95/5〜50/50であり、nは5〜50の整数である。〕
前記一般式(I)で表されるカルボキシル基を有するブタジエン−アクリロニトリル共重合体としては、たとえば、Hycar CTBN−2009×162,CTBN−1300×31,CTBN−1300×8、CTBN−1300×13、CTBN−1009SP−S、CTBNX−1300×9(いずれも宇部興産株式会社製)が市販品として入手可能である。
作業性及び接着強度の観点からは、エポキシ化ポリブタジエン及びカルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムを併用することが好ましい。
【0025】
(数平均分子量)
液状ゴムとしては、数平均分子量が500〜10,000のものが好ましく、1,000〜5,000のものがより好ましい。数平均分子量が500以上だと可とう化効果に優れ、10,000以下だと樹脂ペースト組成物の粘度の上昇が少なく作業性に優れる。
熱可塑性樹脂としては、数平均分子量が10,000〜300,000のものが好ましく、20,000〜200,000のものがより好ましい。数平均分子量が10,000以上だと可とう化効果に優れ、300,000以下だと、樹脂ペースト組成物の粘度が上昇せずに作業性に優れる。
数平均分子量は、蒸気圧浸透法で測定した値、又は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレンの検量線を利用して測定した値である。
【0026】
(含有量)
樹脂ペースト組成物中における可とう化剤の含有量は、好ましくは3〜12質量%であり、より好ましくは4〜10質量%であり、更に好ましくは5〜8質量%である。この配合量が3質量%以上であると可とう化効果が向上し、12質量%以下であると、粘度が大きくなり過ぎて樹脂ペースト組成物の作業性が低下することが防止される。
【0027】
<その他のバインダー樹脂成分>
本発明の樹脂ペースト組成物は、さらにその他のバインダー樹脂成分として、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などを含有してもよい。
但し、樹脂ペースト組成物の粘度の上昇を抑え、また、体積抵抗率を低減できる観点からは、芳香族系エポキシ樹脂は実質的に含有しない方が好ましい。ここで「実質的に芳香族系エポキシ樹脂を含有しない」とは、体積抵抗率の急激な上昇が観測されない程度で、芳香族系エポキシ樹脂が微量に存在してもよいことを意味する。
具体的には、樹脂ペースト組成物中における芳香族系エポキシ樹脂の含有量は、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下である。また、芳香族系エポキシ樹脂を含有しないことが特に好ましい。
【0028】
<アミン化合物>
本発明の樹脂ペースト組成物は、アミン化合物を含有してもよい。アミン化合物は、特に制限はないが、ジシアンジアミド、下記一般式(II)
【0029】
【化2】

【0030】
(式中、R19はm−フェニレン基、p−フェニレン基等の2価の芳香族基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す)で表される二塩基酸ジヒドラジド[ADH、PDH、SDH(いずれも(株)日本ファインケム、商品名)]、エポキシ樹脂とアミン化合物の反応物からなるマイクロカプセル型硬化剤[ノバキュア(旭化成工業(株)、商品名)]等、イミダゾール類(キュアゾール、2P4MHZ、C17Z、2PZ−OK、いずれも四国化成(株)製の商品名)などを用いることもできる。中でもジシアンジアミド又はイミダゾール類が樹脂組成物の強度が向上するため、好ましく、特にジシアンジアミドが好ましい。
これらのアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂ペースト組成物中におけるアミン化合物の含有量は、好ましくは0.05〜1.5質量%であり、より好ましくは0.1〜1.0質量%である。アミン化合物の含有量が0.05質量%以上であると硬化性に優れ、1.5質量%以下であると樹脂ペースト組成物の安定性が良好となる。
【0031】
<(B)重合開始剤>
本発明の樹脂ペースト組成物は、上記(A1)成分及び(A2)成分を含有するため、これら成分のラジカル重合用の重合開始剤(ラジカル開始剤)を含有する必要がある。
本発明に用いられるラジカル開始剤としては特に制限はないが、例えば、熱重合開始剤及び光重合開始剤が挙げられ、これらを併用することもできる。
【0032】
熱重合開始剤の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系ラジカル開始剤、1,1,3,3−テトラメチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。
光重合開始剤の具体例としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等のアセトフェノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
上記重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
これらの重合開始剤の中でも特に、樹脂ペースト組成物の硬化物中にボイドと呼ばれる空隙を低減できる観点からは過酸化物が好ましく、また樹脂ペースト組成物の硬化性及び粘度安定性の点から、過酸化物の10時間半減期温度は、60〜170℃のものが好ましく、65〜120℃のものがより好ましく、70〜110℃のものが更に好ましい。
ここで半減期とは、一定温度における、過酸化物が分解してその活性酸素量が1/2になるまでに要する時間を示し、10時間半減期温度とは、半減期が10時間となる温度を示す。
【0034】
半減期は、例えば、以下のようにして測定することができる。まず、ラジカルに対して
比較的不活性な溶液、例えばベンゼンを使用して、0.1mol/l濃度の過酸化物溶液
を調整し、窒素置換を行ったガラス管中に密閉する。そして、所定温度にセットした恒温
槽に浸し、熱分解させる。一般的に過酸化物の分解は近似的に一次反応として取り扱うこ
とができるので、t時間後までに分解した過酸化物の濃度x、分解速度定数k、時間t、
初期過酸化物濃度aとすると、下記式(i)が成り立つ。
dx/dt=k(a−x) (i)
そして、式(i)を変形すると式(ii)になる。
ln a/(a−x)=kt (ii)
半減期は、分解により過酸化物濃度が初期の半分に減ずるまでの時間であるので、半減
期をt1/2で示し、式(ii)のxにa/2を代入すると、式(iii)になる。
kt1/2=ln2 (iii)
したがって、ある一定温度で熱分解させ、得られた直線の傾きから分解速度定数kを求
め、式(iii)からその温度における半減期(t1/2)を求めることができる。
【0035】
樹脂ペースト組成物中における重合開始剤の含有量は、好ましくは0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.3〜3質量%であり、更に好ましくは0.6〜1質量%である。この含有量が0.1質量%以上であると、硬化性が向上し、5質量%以下であると、揮発分が少なくなり、樹脂ペースト組成物の硬化物中にボイドと呼ばれる空隙が生じ難くなる。
【0036】
<(C)充填材>
本発明の樹脂ペースト組成物は、(C)充填材を含有する。この(C)充填材を含有することにより、樹脂ペースト組成物の接着強度が向上する。
この(C)充填材には特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、ステンレス、酸化ケイ素、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等の粉体が挙げられる。これらの中で、樹脂ペースト組成物に電気伝導性を付与する観点からは、金、銀、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属粉が好ましく、電気伝導性及び低コストの観点からは、銀粉及びアルミニウム粉が好ましく、銀粉及びアルミニウム粉を併用することがより好ましい。特に、これら銀粉及びアルミニウム粉を併用することにより、電気伝導性、接着性、保存安定性に優れ、かつ塗布作業性、機械特性にも優れる樹脂ペースト組成物を得ることができる。
樹脂ペースト組成物中における(C)充填材の含有量は、好ましくは60〜85質量%であり、より好ましくは65〜80質量%であり、更に好ましくは70〜80質量%である。上記範囲内であると、樹脂ペースト組成物の電気伝導性、粘度等の特性がダイボンディング材として一層好適なものとなる。
【0037】
(アルミニウム粉)
アルミニウム粉の平均粒径は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは2〜10μmであり、更に好ましくは2〜9μmであり、特に好ましくは3〜8μmである。アルミニウム粉の平均粒径が10μm以下であると、ペーストの均一性、各種物性が向上する。アルミニウム粉の平均粒径が2μm以上であると、樹脂ペースト組成物中における分散性に優れる。なお、アルミニウム粉の平均粒径は、マイクロトラックX100(レーザー回析法回折法)により測定した累積質量50%径(D50)である。
また、アルミニウム粉の見かけ密度は0.40〜1.20g/cm3が好ましく、0.55〜0.95g/cm3であることがより好ましい。この範囲内であると、電気伝導性、接着性、保存安定性に優れ、かつ塗布作業性、機械特性にも優れる。見かけ比重は、JIS Z2504−2000に準拠して測定した値である。
アルミニウム粉の形状としては、粒状、フレーク状、球状、針状、不規則形などが挙げられるが、粒状が好ましい。
【0038】
(銀粉)
銀粉の平均粒径は、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜4μmであり、銀粉のタップ密度は、好ましくは3〜6g/cm3、より好ましくは4〜5g/cm3であり、銀粉の比表面積は、好ましくは0.2〜2m2/g、より好ましくは0.5〜1m2/gである。これらの範囲内であると、電気伝導性、接着性、保存安定性に優れ、かつ塗布作業性、機械特性にも優れる。
ここで、銀粉の平均粒径はマイクロトラックX100(レーザー回折法)により測定した累積質量50%径(D50)である。銀粉のタップ密度はJIS Z2512−2006に準拠して測定した値である。銀粉の比表面積はJIS Z8830−2001のBET法(N2ガス)に準拠して測定した値である。
また、銀粉の形状としては、粒状、フレーク状、球状、針状、不規則形などが挙げられるが、フレーク状が好ましい。
【0039】
(アルミニウム粉及び銀粉の併用)
上記アルミニウム粉と銀粉とを併用することにより、銀粉のみを用いる場合と比べて低コストであり、かつアルミニウム粉のみを用いる場合と比べてより電気伝導性、接着性、保存安定性に優れ、かつ塗布作業性、機械特性にも優れる樹脂ペースト組成物を得ることができる。
混合するアルミニウム粉の銀粉に対する質量比(アルミニウム粉/銀粉)は、好ましくは2/8〜8/2であり、より好ましくは3/7〜7/3であり、更に好ましくは4/6〜6/4である。このアルミニウム粉と銀粉の質量比が8/2以下であると、樹脂ペースト組成物が低抵抗、高接着強度となり、また粘度が大きくなり過ぎることが防止され、作業性が向上する。2/8以上であると、コスト上のメリットがより明確なものとなる。
【0040】
<カップリング剤>
本発明の樹脂ペースト組成物には、カップリング剤を添加することができる。カップリング剤としては特に制限はなく、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤等の各種のものが用いられる。
【0041】
カップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリ(メタクリロキシエトキシ)シラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−(4,5−ジヒドロイミダゾリル)プロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリグリシドキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、エトキシシラントリイソシアネート等のシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピオネート等のアルミニウム系カップリング剤、テトラプロピルジルコネート、テトラブチルジルコネート、テトラ(トリエタノールアミン)ジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、ジルコニウムアセチルアセトネートアセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート等のジルコネート系カップリング剤等がある。
【0042】
樹脂ペースト組成物中におけるカップリング剤の含有量は、好ましくは0.5〜6質量%であり、より好ましくは1.0〜5質量%である。この含有量が0.5質量%以上であると、接着強度の向上効果に優れ、6質量%以下であると、揮発分が少なくなり、硬化物中にボイドが生じることが抑制される。
【0043】
<その他の添加成分>
本発明になる樹脂ペースト組成物には、さらに必要に応じて酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の吸湿剤、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、高級脂肪酸等の濡れ向上剤、シリコーン油等の消泡剤、無機イオン交換体等のイオントラップ剤等、粘度調整のための希釈剤を単独又は数種類を組み合わせて、適宜添加することができる。
【0044】
<粘度>
本発明の樹脂ペーストの粘度(25℃)は、作業性の観点から、30〜200Pa・sであることが好ましく、40〜150Pa・sであることがより好ましく、40〜80Pa・sであることが特に好ましい。なお、粘度は、JIS Z8803−1991に準拠して回転粘度計で測定した値である。
【0045】
[樹脂ペースト組成物の製造方法]
本発明の樹脂ペースト組成物を製造するには、上記の(A1)アクリロイルオキシ基含有化合物、(A2)メタクリロイルオキシ基含有化合物、(B)重合開始剤、及び(C)充填材と共に、必要に応じて用いられる可とう化剤やカップリング剤などの上記各種添加剤を、一括又は分割して撹拌器、ハイブリッドミキサー、プラネタリーミキサー等の分散・溶解装置を適宜組み合わせた装置に投入し、必要に応じて加熱して混合、溶解、解粒混練又は分散して均一なペースト状とすればよい。
【0046】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、支持部材、前記支持部材の表面に設置された半導体素子(シリコンチップ)、支持部材の表面と半導体素子との間に介在して支持部材と半導体素子とを固定する上記樹脂ペースト組成物の硬化物、及び支持部材の一部と半導体素子とを封止する封止材を有するものである。
<支持部材>
支持部材としては、例えば、銅リードフレーム等のリードフレーム、ガラスエポキシ基板(ガラス繊維強化エポキシ樹脂からなる基板)、BT基板(シアネートモノマー及びそのオリゴマーとビスマレイミドからなるBTレジン使用基板)等の有機基板が挙げられる。
上記支持部材は、好ましくはリードフレームの表面が金及び銀の少なくとも1種よりなるものである。上記リードフレーム表面の金は、銅等よりなる支持部材本体表面に、ニッケル/パラジウム/金の順に3層にメッキしたものやニッケル/金の順に2層にメッキしたものであることが好ましく、ニッケル/パラジウム/金の3層メッキがより好ましい。上記リードフレーム表面の銀は、銅等よりなる支持部材本体表面に、銀メッキしたものであることが好ましく、銀スポットメッキしたものであることがより好ましい。これら金や銀の表面に対して、本発明の樹脂ペースト組成物は強固に接着することができる。
<封止材>
封止材には特に制限はなく、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂を含む封止材を用いるモールディング(トランスファーモールディング)、ポッティング、プリモールド等が挙げられる。
【0047】
[半導体装置の製造方法]
本発明の半導体製造装置の製造方法には特に制限はない。例えば、まず支持部材上に樹脂ペースト組成物をディスペンス法により塗布した後、半導体素子を圧着し、その後オーブン又はヒートブロック等の加熱装置を用いて樹脂ペースト組成物を加熱硬化して硬化物とする。次いで、常法によるワイヤボンド工程を経た後、上記封止材で常法により支持部材(ただし、基板との接着箇所を除く)及び半導体素子を封止することにより、半導体装置とすることができる。
上記加熱硬化は、低温での長時間硬化の場合や、高温での速硬化の場合により異なるが、通常、温度150〜220℃、好ましくは180〜200℃で、30秒〜2時間、好ましくは1時間〜1時間30分行うことが好ましい。
【実施例】
【0048】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0049】
[樹脂ペースト組成物中に含有させる各種化合物]
実施例及び比較例で用いる各種化合物は、次のとおりである。
<(A1)成分>
A−DCP(トリデカンジメタノールジアクリレート、新中村工業株式会社製、下記の構造で表される化合物)
【0050】
【化3】

【0051】
<(A2)成分>
(1) DCP(トリデカンジメタノールジメタクリレート、新中村化学工業株式会社製、下記の構造で表される化合物)
【0052】
【化4】

【0053】
(2) FA−124M(1,4−ブタンジオールジメタクリレート、日立化成工業株式会社製、下記の構造で表される化合物)
【0054】
【化5】

【0055】
(3) FA−125M(ネオペンチルグリコールジメタクリレート、日立化成工業株式会社製、下記の構造で表される化合物)
【0056】
【化6】

【0057】
<(A3)成分>
SR−349(EO変性ビスフェノールAジアクリレート、サートマー社製、下記の構造で表される化合物)
【0058】
【化7】

【0059】
<(B)重合開始剤>
トリゴノックス22−70E(化薬アクゾ株式会社製、1、1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、10時間半減期温度;91℃)
<(C)充填材>
(1) アルミニウム粉
VA−2000(山石金属株式会社製、形状:粒状、平均粒径=6.7μm)
(2) 銀粉
AgC−212DH(福田金属箔粉工業株式会社製、形状:燐片状、平均粒径:2.9μm)
【0060】
<可とう化材>
(1) CTBN−1009SP−S(宇部興産株式会社製、カルボキシ基を有するアクリロニトリルポリブタジエン共重合体)
(2) エポリードPB−4700(ダイセル化学工業(株)製、エポキシ化ポリブタジエンの商品名、エポキシ当量:152.4〜177.8、数平均分子量=3500)
<アミン化合物>
Dicy(ジャパンエポキシレジン株式会社製、ジシアンジアミド)
<カップリング剤>
(1) KBM−403(信越化学工業株式会社製、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
(2) SZ−6030(東レダウコーニング株式会社製、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)
【0061】
[実施例1〜3比較例1〜5]
表1に示す配合割合で、各材料を混合し、プラネタリミキサーを用いて混練した後、666.61Pa(5トル(Torr))以下で10分間脱泡処理を行い、樹脂ペースト組成物を得た。この樹脂ペースト組成物の特性(ダイシェア接着強度、体積抵抗率)を下記に示す方法で調べた。その結果を表1に示す。
【0062】
(1) ダイシェア接着強度
樹脂ペースト組成物をニッケル/パラジウム/金メッキ銅基板(シリコンチップとの被着体:金)、銀スポットメッキ銅基板(シリコンチップとの被着体:銀)及び銀リングメッキ銅基板(シリコンチップとの被着体:銅)の表面に約0.5mg塗布し、この上に3mm×3mmのシリコンチップ(厚さ約0.4mm)を圧着し、さらにオーブンで180℃まで30分で昇温し180℃で1時間硬化させた。これを、自動接着力試験装置(BT4000、Dage社製)を用い、260℃/20秒保持時の剪断接着強度(MPa)を測定した。なおダイシェア接着強度の測定は10個の試験片について行い、その平均値をダイシェア接着強度とした。
【0063】
(2) 体積抵抗率
図1に示す手順で、樹脂ペースト組成物の硬化物の体積抵抗率を測定した。図1は、体積抵抗率の測定方法を説明する平面図である。
スライドグラス1(東京硝子器機株式会社製、寸法=76×26mm、厚さ=0.9〜1.2mm)(図1(a))の表面に、3枚の紙テープ2(日東電工CSシステム製、No.7210F、寸法幅=18mm、厚さ=0.10mm)を互いに間隔をおいて平行に貼り付けることにより、これら3枚の紙テープ2同士の間にスライドグラス1表面の露出部3(幅2mm)を2条形成した(図1(b))。これら露出部3に樹脂ペースト組成物4aを置き(図1(c))、他のスライドグラスなどで平らに伸ばした(図1(d))。次いで、紙テープ2を剥がし、オーブンで180℃で1時間硬化させることにより、スライドグラス1の表面に互いに平行な2条の線状の硬化物4を得た(図1(e))。デジタルマルチメーター(TR6846、ADVANTEST社製)を用い、温度23℃にて、これら硬化物4の体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。
【0064】
(3) 粘度安定性
EHD型回転粘度計(東京計器社製)、3°cone rotorを用いて0.5rpmにて、25℃における粘度(Pa・s)を測定した。この測定は、樹脂ペースト組成物の作製直後(初期)、作製から1日後(1日目)、3日後(3日目)、及び7日後(7日目)のそれぞれの時点で行った。
【0065】
【表1】

【0066】
表1の結果から、本発明の導電性フィラーを含む樹脂ペースト組成物は、ニッケル/パラジウム/金メッキ基板(被着体:金)、銀スポットメッキ基板(被着体:銀)のいずれに対しても高い接着強度を有することが確認できた。また、本発明の導電性フィラーを含む樹脂ペースト組成物は、銀リングメッキ基板(被着体:銅)に対しても、比較例と同等の接着強度を有することが確認できた。
本発明の導電性フィラーを含む樹脂ペースト組成物(実施例1〜3)は、体積抵抗率が比較例1〜5と同程度であると共に、粘度安定性が比較例1〜2、4〜5と同程度であり、体積抵抗率及び粘度安定性にも優れていることが確認できた。
【符号の説明】
【0067】
1 スライドグラス
2 紙テープ
3 露出部
4 硬化物
4a 樹脂ペースト組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)1分子中に、2個のアクリロイルオキシ基と、炭素数5〜20の脂環式構造又は炭素数4〜20の脂肪族構造とを有するアクリロイルオキシ基含有化合物、
(A2)1分子中に、2個のメタクリロイルオキシ基と、炭素数5〜20の脂環式構造又は炭素数4〜20の脂肪族構造とを有するメタクリロイルオキシ基含有化合物、
(B)重合開始剤、及び
(C)充填材
を含有する樹脂ペースト組成物。
【請求項2】
更に可とう化剤を含有する請求項1に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項3】
更にアミン化合物を含有する請求項1又は2に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項4】
前記充填材が、銀粉及びアルミニウム粉を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項5】
前記アルミニウム粉の平均粒径が2〜10μmである請求項4に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項6】
銀粉の平均粒径が1〜5μmである請求項4又は5に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項7】
前記銀粉に対する前記アルミニウム粉の質量比(アルミニウム粉/銀粉)が2/8〜8/2である請求項4〜6のいずれか1項に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項8】
実質的に芳香族系エポキシ樹脂を含有しない請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項9】
支持部材、
前記支持部材の表面に設置された半導体素子、
前記支持部材の表面と前記半導体素子との間に介在して前記支持部材と前記半導体素子とを固定する請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂ペースト組成物の硬化物、及び
前記支持部材の一部と前記半導体素子とを封止する封止材、
を有する半導体装置。
【請求項10】
前記支持部材のうち前記硬化物との設置表面が、金及び銀の少なくとも1種よりなる表面である請求項9に記載の半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−236873(P2012−236873A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105164(P2011−105164)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】