説明

樹脂封止型半導体装置

【課題】スタックド構造のMCP製造時における作業性の欠点である接着剤の塗布などの工程を改善し接着剤を使用することなく半導体チップを積層することができ、かつ各種の信頼性に優れた半導体装置を提供する。
【解決手段】エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)と光酸発生剤(B)を含む樹脂組成物の樹脂層を半導体チップの回路素子形成面上に有し、かつ該半導体チップ上に積層する別の半導体チップの裏面が該樹脂層に直接接触していることを特徴とするスタックド構造のMCP(マルチチップパッケージ)の樹脂封止型半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂組成物を用いたスタックド構造のMCPの樹脂封止型半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、小型化に伴って電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んできている。そこで、1つのパッケージ内に複数のチップを配置してマルチチップパッケージとすることにより、半導体装置の高機能化と小型化とが図られている。そして、マルチチップパッケージには複数の半導体チップを平面的に並べたものと、複数の半導体チップを厚み方向に積層したものとがある。半導体チップを平面的に並べたマルチチップパッケージは広い実装面積を必要とするため、電子機器の小型化への寄与が小さい。このため、半導体チップを積層したスタックド構造のMCP(例えば、特許文献1参照)の開発が盛んに行われている。
しかしながら、従来のスタックド構造のMCPは、積層した半導体チップを接着剤によって相互に接合するようにしており、接着剤の塗布などを必要として工程が煩雑となる。
【特許文献1】特開平6−37250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前述したスタックド構造のMCP製造時における作業性の欠点を改善し、かつ各種の信頼性に優れたスタックド構造のMCPの樹脂封止型半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[1]エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)と光酸発生剤(B)を含む樹脂組成物の樹脂層を半導体チップの回路素子形成面上に有し、かつ該半導体チップ上に積層する別の半導体チップの裏面が該樹脂層に直接接触していることを特徴とするスタックド構造のMCPの樹脂封止型半導体装置。
[2]環状オレフィン系樹脂がポリノルボルネン系樹脂である[1]記載の樹脂封止型半導体装置。
[3]エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)が式(1)で示される繰り返し単位を含むものである[1]又は[2]記載の樹脂封止型半導体装置。
【0005】
【化5】

【0006】
[式(1)中、XはO、CH2、(CH22のいずれかであり、nは0〜5までの整数である。R1〜R4はそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基、エポキシ基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R1〜R4は単量体の繰り返しの中で異なっていてもよいが、全繰り返し単位のR1〜R4のうち、少なくとも一つ以上はエポキシ基を有する官能基である。]
[4]エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)が式(2)及び式(3)で示される繰り返し単位を含むものである[1]〜[3]記載の樹脂封止型半導体装置。
【0007】
【化6】

【0008】
[式(2)(3)中、R1〜R7はそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R1〜R7は単量体の繰り返しの中で異なっていてもよい。]
[5]エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)が式(4)、(5)及び(6)で示される繰り返し単位を含むものである[1]〜[4]記載の樹脂封止型半導体装置。
【0009】
【化7】

【0010】
[式(4)(5)(6)中、nは1〜5の整数である。R1〜R10はそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R1〜R10は単量体の繰り返しの中で異なっていてもよい。][6] エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)が式(7)で示される繰り返し単位を含むものである[1]〜[5]記載の感光性樹脂組成物。
【0011】
【化8】

【0012】
[式(7)中、YはO、CH2、(CH22のいずれか、Zは−CH2−CH2−、−CH=CH−のいずれかであり、lは0〜5までの整数である。R1〜R4はそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基、エポキシ基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R1〜R4は単量体の繰り返しの中で異なっていてもよいが、全繰り返し単位のR1〜R4のうち、少なくとも一つはエポキシ基を有する。]
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の半導体チップが積層されてなる半導体パッケージにおいて積層する半導体チップを効率よく製造することが可能となる半導体装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で使用する環状オレフィンモノマーとしては、一般的には、シクロヘキセン、シクロオクテン等の単環体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環体が挙げられる。これらのモノマーに官能基が結合した置換体も用いることができる。
【0015】
本発明で使用する環状オレフィン系樹脂としては、上記環状オレフィンモノマーの重合体が挙げられる。なお重合方法はランダム重合、ブロック重合など公知の方法が用いられる。具体例としては、ノルボルネン型モノマ−の(共)重合体、ノルボルネン型モノマ−とα−オレフィン類などの共重合可能な他のモノマ−との共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物などが具体例に該当する。これら環状オレフィン系樹脂は、公知の重合法により製造することが可能であり、その重合方法には付加重合法と開環重合法とがある。このうち、ノルボルネンモノマーを付加(共)重合することによって得られたポリマーが好ましいが、本発明はなんらこれに限定されるものではない。
【0016】
環状オレフィン系樹脂の付加重合体としては、ポリノルボルネン系樹脂が挙げられる。具体的には、(1)ノルボルネン型モノマ−を付加(共)重合させて得られるノルボルネン型モノマ−の付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマ−とエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマ−と非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマ−との付加共重合体が挙げられる。これらの樹脂は公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0017】
環状オレフィン系樹脂の開環重合体としては、ポリノルボルネン系樹脂が挙げられる。具体的には、(4)ノルボルネン型モノマ−の開環(共)重合体、及び必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマ−とエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、及び必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマ−と非共役ジエン、又は他のモノマ−との開環共重合体、及び必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂が挙げられる。これらの樹脂は公知のすべての重合方法で得ることができる。
上記のうち、(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合させて得られる付加(共)重合体が好ましいが、本発明はなんらこれに限定されるものではない。
【0018】
本発明で使用するエポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)は、一般的には分子内にエポキシ基を含むモノマーを直接重合することによって得ることができるが、重合後に変性反応によって側鎖にエポキシ基を導入する方法によっても同様の重合体を得ることができる。変性反応としては、上記重合体にエポキシ基含有不飽和モノマ−をグラフト反応させる、上記重合体の反応性官能基部位にエポキシ基を有する化合物を反応させる、分子内に炭素−炭素二重結合を有する上記重合体に過酸やハイドロパ−オキサイドなどのエポキシ化剤を用いて直接エポキシ化させる等の公知の方法がある。
【0019】
環状オレフィン系樹脂の付加重合体は、金属触媒による配位重合、又はラジカル重合によって得られる。このうち、配位重合においては、モノマーを、遷移金属触媒存在下、溶液中で重合することによってポリマーが得られる(NiCOLE R. GROVE et al. Journal of Polymer Science:part B,Polymer Physics, Vol.37, 3003−3010(1999))。
配位重合に用いる金属触媒として代表的なニッケルと白金触媒は、PCT WO 9733198とPCT WO 00/20472に述べられている。配位重合用金属触媒の例としては、(トルエン)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、(メシレン)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、(ベンゼン)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、ビス(テトラヒドロ)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、ビス(エチルアセテート)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケル、ビス(ジオキサン)ビス(パーフルオロフェニル)ニッケルなどの公知の金属触媒が挙げられる。
【0020】
ラジカル重合技術については、Encyclopedia of Polymer Science,John Wiley&Sons, 13,708(1988)に述べられている。
一般的にはラジカル重合はラジカル開始剤の存在下、温度を50℃〜150℃に上げ、モノマーを溶液中で反応させる。ラジカル開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル、アゾビスイソカプトロニトリル、アゾビスイソレロニトリル、t−ブチル過酸化水素などである。
【0021】
環状オレフィン系樹脂の開環重合体は、公知の開環重合法により、チタンやタングステン化合物を触媒として、少なくとも一種以上のノルボルネン型モノマ−を開環(共)重合して開環(共)重合体を製造し、次いで必要に応じて通常の水素添加方法により前記開環(共)重合体中の炭素−炭素二重結合を水素添加して熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を製造することによって得られる。
【0022】
上述重合系の適当な重合溶媒としては炭化水素や芳香族溶媒が含まれる。炭化水素溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、やシクロヘキサンなどであるがこれに限定されない。芳香族溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンやメシチレンなどであるがこれに限定されない。ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、エステル、ラクトン、ケトン、アミドも使用できる。これら溶剤を単独や混合しても重合溶媒として使用できる。
【0023】
本発明の環状オレフィン系樹脂の分子量は、開始剤とモノマーの比を変えたり、重合時間を変えたりすることにより制御することができる。上記の配位重合が用いられる場合、米国特許No.6,136,499に開示されるように、分子量は連鎖移動触媒を使用することにより制御することができる。この発明においては、エチレン、プロピレン、1−ヘキサン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、などα―オレフィンが分子量制御するのに適当である。
【0024】
本発明において重量平均分子量は10,000〜500,000、好ましくは30,000〜100,000さらに好ましくは50,000〜80,000である。重量平均分子量は標準ポリノルボルネンを用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。(ASTMDS3536−91準拠)
【0025】
本発明で用いられるエポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂を製造するために使用する環状オレフィンモノマーとしては、一般式(8)で表されるノルボルネン型モノマーが好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基等が、アルケニル基の具体例としては、ビニル、アリル、ブチニル、シクロヘキシル基等が、アルキニル基の具体例としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル基等が、アリール基の具体例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル基等が、アラルキル基の具体例としてはベンジル、フェネチル基等がそれぞれ挙げられるが、本発明は何らこれらに限定されない。
エステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基ついては、これらの基を有している官能基であれば特に構造は限定されない。エポキシ基を含有する官能基の好ましい具体例としては、グリシジルエーテル基を有する官能基が挙げられるが、エポキシ基を有する官能基であれば特に構造は限定されない。
【0026】
【化9】

【0027】
[式(8)中、XはO、CH2、(CH22のいずれかであり、nは0〜5までの整数である。R1〜R4はそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基、エポキシ基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。]
【0028】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂を製造するために使用する環状オレフィンモノマーとしては、例えば、アルキル基を有するものとして、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−プロピル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ペンチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−ヘプチル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−ノニル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネンなど、アルケニル基を有するものとしては、5−アリル−2−ノルボルネン、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(2,3−ジメチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(3,4−ジメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2−ジメチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(5−エチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2,3−トリメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネンなど、アルキニル基を有するものとしては、5−エチニル−2−ノルボルネンなど、シリル基を有するものとしては、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジメチルビス((2−(5−ノルボルネン−2−イル)エチル)トリシロキサンなど、アリール基を有するものとしては、5−フェニルー2−ノルボルネン、5−ナフチル−2−ノルボルネン、5−ペンタフルオロフェニル−2−ノルボルネンなど、アラルキル基を有するものとしては、5−ベンジル−2−ノルボルネン、5−フェネチル−2−ノルボルネン、5−ペンタフルオロフェニルメタン−2−ノルボルネン、5−(2−ペンタフルオロフェニルエチル)−2−ノルボルネン、5−(3−ペンタフルオロフェニルプロピル)−2−ノルボルネンなど、アルコキシシリル基を有するものとしてはジメチルビス((5−ノルボルネン−2−イル)メトキシ)シラン、5−トリメトキシシリル−2−ノルボルネン、5−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、5−(2−トリメトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン、5−(2−トリエトキシシリルエチル)−2−ノルボルネン、5−(3−トリメトキシプロピル)−2−ノルボルネン、5−(4−トリメトキシブチル)−2−ノルボルネン、5ートリメチルシリルメチルエーテル−2−ノルボルネンなど、ヒドロキシル基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するものとしては、5−ノルボルネン−2−メタノール、及びこのアルキルエーテル、酢酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、プロピオン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、酪酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、吉草酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプロン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプリル酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、カプリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、ラウリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、ステアリン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、オレイン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、リノレン酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸エチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸i−ブチルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸トリメチルシリルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸トリエチルシリルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸イソボニルエステル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシエチルエステル、5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボン酸メチルエステル、ケイ皮酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、5−ノルボルネン−2−メチルエチルカルボネート、5−ノルボルネン−2−メチルn−ブチルカルボネート、5−ノルボルネン−2−メチルt−ブチルカルボネート、5−メトキシ−2−ノルボルネン、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−メチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−エチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−n―プロピルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−i−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−i−プロピルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−オクチルエステル、(メタ)アクリル酸5−ノルボルネン−2−デシルエステルなど、エポキシ基を有するものとしては、5−[(2,3−エポキシプロポキシ)メチル]−2−ノルボルネンなど、またテトラシクロ環から成るものとして、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−n−プロピルカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−i−プロピルカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−(2−メチルプロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−(1−メチルプロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−t−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−シクロヘキシロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−(4’−t−ブチルシクロヘキシロキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−テトラヒドロフラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−テトラヒドロピラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−i−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−(2−メチルポロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−(1−メチルポロポキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−t−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−シクロヘキシロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−(4’−t−ブチルシクロヘキシロキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−テトラヒドロフラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチル−8−テトラヒドロピラニロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−アセトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(メトキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(エトキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(n−プロポキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(i−プロポキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(n−ブトキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(t−ブトキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(シクロへキシロキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(フェノキシロキシカロボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8,9−ジ(テトラヒドロフラニロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジ(テトラヒドロピラニロキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン−8−カルボン酸、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン−8−カルボン酸、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデック−3−エン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.01,6]ドデック−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,12]ドデック−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,101,6]ドデック−3−エンなどが挙げられる。
【0029】
本発明で用いられるエポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)は、好ましくは一般的に式(9)で表されるように、ノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体である。
【0030】
【化10】

【0031】
[式(9)中、XはO、CH2、(CH22のいずれかであり、nは0〜5までの整数、mは10〜10,000までの整数である。R1〜R4はそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基、エポキシ基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R1〜R4は単量体の繰り返しの中で異なっていてもよいが、全繰り返し単位のR1〜R4のうち、少なくとも一つ以上はエポキシ基を有する官能基である。]
【0032】
本発明で用いられるエポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)としては、式(10)(11)で表される重合体が硬化後のポリマー特性の点から好ましい。式(11)のように、アラルキル基を有するノルボルネンモノマーをポリマーに導入することで、ネガ型現像液の溶媒として用いられているシクロペンタノンやヘプタノンなどの極性溶媒への溶解性を向上させることが可能となり、作業性に優れるという利点を有する。
【0033】
【化11】

【0034】
[式(10)中、m、nは1以上の整数である。R1〜R7はそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R1〜R7は単量体の繰り返しの中で異なっていてもよい。]
【0035】
【化12】

【0036】
[式(11)中、l、m、nは1以上の整数、pは0〜5の整数である。R1〜R10はそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R1〜R10は単量体の繰り返しの中で異なっていてもよい。]
【0037】
本発明で用いられるエポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)として、式(12)で表される重合体が硬化後のポリマー特性の点から更に好ましい。デシル基を有するモノマーを導入することにより低弾性な膜が得られ、また、フェニルエチル基を有するモノマーを導入することにより低吸水性、耐薬品性、極性溶媒溶解性に優れる膜が得られる。
【0038】
【化13】

[式(12)中、l、m、nは1以上の整数である。]
【0039】
共重合体中のエポキシ基を有するモノマーの含有率としては、露光により架橋し、現像液に耐えうる架橋密度が得られることで決めることができる。エポキシ基を有するモノマー含有率がポリマー中に5〜95モル%、好ましくは、20〜80モル%、さらに好ましくは30〜70%の割合で使用する。こうして得られるポリマーは低吸水性(<0.3wt%)、低誘電率(<2.6)、低誘電損失(0.001)、ガラス転移点(170〜400℃)などの優れた物理特性を示す。
【0040】
光酸発生剤としては、公知のあらゆる化合物を用いることができる。光酸発生剤はエポキシ基の架橋を行うとともに、その後の硬化により基板との密着性を向上する。好ましい光酸発生剤としてはオニウム塩、ハロゲン化合物、硫酸塩やその混合物である。例えばオニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩、スルフォニウム塩、リン酸塩、アルソニウム塩、オキソニウム塩などである。前記のオニウム塩とカウンターアニオンを作ることができる化合物である限り、カウンターアニオンの制限はない。カウンターアニオンの例としては、ホウ酸、アルソニウム酸、リン酸、アンチモニック酸、硫酸塩、カルボン酸とその塩化物であるがこれに限定されない。オニウム塩の光酸発生剤としては、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロボレート、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロアルセナート、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロフォスフェート、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロサルフェート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムテトラフルオロボレート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムテトラフルオロアンチモネート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムテトラフルオロアーセナート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムテトラフルオロフォスフェート、4−チオフェノキシジフェニルスルフォニウムテトラフルオロスルフォネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムテトラフルオロボレート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムテトラフルオロスルフォニウム、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムテトラフルオロアンチモネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムトリフルオロフォスフォネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルフォニウムトリフルオスルフォネート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムトリフルオロボレート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムテトラフルオロボレート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロアーセネート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムヘキサフルフォスフェート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロスルフォネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルフォニウムテトラフルオロボレート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムヘキサフルオアンチモネート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムヘキサフルオフォスフェート、トリス(4−メチルフェニル)スルフォニウムトリフルオロスフォネート、トリフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルヨードニウムヘキサフルオロアーセネート、トリフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリフェニルヨードニウムトリフルオロスルフォネート、3,3−ジニトロジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、3,3−ジニトロジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,3−ジニトロジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアーセネイト、3,3−ジニトロジフェニルヨードニウムトリフルオロサルフォネート、4,4−ジニトロジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4,4−ジニトロジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4−ジニトロジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアーセネイト、4,4−ジニトロジフェニルヨードニウムトリフルオロサルフォネートを単独で使用しても混合して使用しても良い。
ハロゲンを含有している光酸発生剤の例としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)トリアジン、2−アリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、α,β,α−トリブロモメチルフェニルスルフォン、α、α―2,3,5,6−ヘキサクロロキシレン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロキシレン、1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタンとそれらの混合物である。
スルフォネート系の光酸発生剤としては、2−ニトロベンジルトシレート、2,6−ジニトロベンジルトシレート、2,4−ジニトロベンジルトシレート、2−ニトロベンジルメチルスフォネート、2−ニトロベンジルアセテート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルフォネート、1,2,3−トリス(メタンスルフォニルロキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(エタンスルフォニルロキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(プロパンスルフォニルロキシ)ベンゼンなどであるがこれに限定されない。
好ましくは、光酸発生剤としては4,4’−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムトリフレート、4,4’,4”−トリス(t−ブチルフェニル)スルフォニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルフォニウムジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(t−ブチルフェニル)スルフォニムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとそれらの混合物である。
本発明における光酸発生剤の配合割合としては、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して0.1から100重量部であり、より好ましくは0.1から10重量部である。
【0041】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂組成物には、必要により感光特性を高めるために増感剤を用いることが可能である。増感剤は光酸発生剤を活性化することが可能な波長の範囲を広げることが可能で、ポリマーの架橋反応に直接影響を与えない範囲で加えることができる。最適な増感剤としては、使用された光源近くに最大吸光係数を持ち、吸収したエネルギーを効率的に光酸発生剤に渡すことができる化合物である。光酸発生剤の増感剤としては、アントラセン、パイレン、パリレン等のシクロ芳香族である。例えば2−イソプロピル−9H―チオキサンテン−9−エン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサンテン、フェノチアジンとそれらの混合物である。本発明における光酸発生剤の配合割合としては、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して0.1から10重量部であり、より好ましくは0.2から5重量部である。光源がg線(436nm)とi線(365nm)などの長波長の場合、増感剤は光酸発生剤を活性化するのに有効である。
【0042】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂組成物には、必要により少量の酸捕捉剤を添加することにより解像度を向上することが可能である。光化学反応の間に酸捕捉剤は未露光部へ拡散する酸を吸収する。酸捕捉剤としてはピリジン、ルチジン、フェノチアジン、トリ−n−プロピルアミンとトリエチルアミンなどの第二、第三アミンであるがこれに限定されない。酸捕捉剤の配合割合としては、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して0.1から0.05重量部である。
【0043】
本発明における、エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)と光酸発生剤(B)を含む樹脂組成物には、必要によりレベリング剤、酸化防止剤,難燃剤,可塑剤、シランカップリング剤等の添加剤を添加することができる。
【0044】
本発明においてはこれらの成分を溶剤に溶解し、ワニス状にして使用する。溶剤としては、非反応性の溶剤と反応性の溶剤があり、非反応性溶剤は、ポリマーや添加物のキャリアとして働き、塗布や硬化の過程で除去される。反応性溶剤は樹脂組成物に添加された硬化剤と相溶性がある反応基を含んでいる。非反応性の溶剤としては炭化水素や芳香族である。例を挙げると、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンやデカヒドロナフタレンなどのアルカンやシクロアルカンの炭化水素溶剤であるがこれに限定されない。芳香族溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレンやメシチレンなどである。ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、アセテート、エステル、ラクトン、ケトンやアミドも有用である。反応性の溶剤としてはシクロヘキセンオキサイドやα−ピネンオキサイドなどのシクロエーテル化合物、[メチレンビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビスオキシランなどの芳香族シクロエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどのシクロアリファティックビニルエーテル化合物、ビス(4−ビニルフェニル)メタンなどの芳香族を単独でも混合して用いてもよい。好ましくは、メシチレンやデカヒドロナフタレンであり、これらはシリコン、シリコンオキサイド、シリコンナイトライド、シリコンオキシナイトライド、などの基板に樹脂を塗布するのに最適である。
【0045】
本発明で用いられる樹脂組成物の樹脂固形分は5〜60重量%である。さらに好ましくは、30〜55重量%であり、さらに好ましくは、35〜45重量%である。溶液粘度は10〜25,000cPであるが、好ましくは100〜3,000cPである。
【0046】
本発明で用いられる樹脂組成物は、エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂と光酸発生剤、及び必要に応じて溶剤、増感剤、酸捕捉剤、レベリング剤、酸化防止剤,難燃剤,可塑剤、シランカップリング剤等を単純に混合することによって得られる。
【0047】
次に本発明の半導体装置の作製方法について述べる。まず環状オレフィン系樹脂組成物を適当な支持体、例えば、シリコンウエハー、セラミック、アルミ基板等に塗布する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等がある。次に、90〜140℃でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に化学線を照射する。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、200〜700nmの波長のものが好ましい。
【0048】
化学線の照射後に続きベークを行う。この工程はエポキシ架橋の反応速度を増加させる。ベーク条件としては50〜200℃である。好ましくは80〜150℃で、さらに好ましくは90〜130℃である。
次に未照射部を現像液で溶解除去することによりレリーフパターンを得る。現像液としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンやシクロヘキサンなどのアルカンやシクロアルカンなどの炭化水素、トルエン、メシチレン、キシレン、メシチレン等の芳香族溶媒である。またリモネン、ジペンテン、ピネン、メクリンなどのテルペン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノンなどのケトン類を用いることができ、それらに界面活性剤を適当量添加した有機溶剤を好適に使用することができる。
現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。次に、現像によって形成したレリーフパターンをリンスする。リンス液としては、アルコールを使用する。次に50〜200℃で加熱処理を行い、現像液やリンス液を除去し、さらにエポキシ基の硬化が完了し耐熱性に富む最終パターンを得る。
【0049】
次に前記のシリコンウエハーをダイシングにより小片化し、得られた半導体チップをダイアタッチ用接着フィルムを用いて、ボンディングフィンガーとその裏面に半田ボール搭載用のランドを持つプリント配線板に搭載され、金線により半導体素子とプリント配線板を接続した。
その半導体チップの上に該半導体チップより小さいサイズの半導体チップを乗せ、加圧接着した。金線により第2の半導体チップとプリント配線板を接続した。このようにして半導体チップが2個積層して搭載されたプリント配線板は半導体チップ面を半導体封止樹脂により封止され、半田ボールを搭載し、BGAパッケージとした。
スタックド構造のMCPについては、複数個の半導体チップを積層することも可能であり、上記以外の公知の方法により作製することができる。また、上記方法に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
《実施例1》
デシルノルボルンネン/グリシジルメチルエーテルノルボルネン=70/30コポリマーの共重合体(A−1)の例を挙げる。
すべてのガラス機器は60℃で0.1Torr以下で18時間乾燥する。その後ガラス機器はグローボックスに移され、グローボックスに備え付けられる。エチルアセテート(917g)、シクロヘキサン(917g)、デシルノルボルネン(192g、0.82mol)とグリシジルメチルエーテルノルボルネン(62g、0.35mol)が反応フラスコに加えられた。反応フラスコはグローボックスから取り出し、乾燥窒素ガスを導入した。反応中間体は30分間溶液中に窒素ガスを通して脱気した。グローボックス中でニッケル触媒すなわちビストルエンビスパーフルオロフェニルニッケル9.36g(19.5mmol)がトルエン15mlに溶解して、25mlのシリンジに入れ、グローボックスから取り出し、反応フラスコに加えられた。20℃にて5時間攪拌して反応を終了した。次に過酢酸溶液(975mmol)を加え18時間攪拌した。攪拌を止めると水層と溶媒層に分離した。水層を分離した後、1lの蒸留水を加え、20分間攪拌した。水層が分離するので取り除いた。1lの蒸留水で3回洗浄を行った。その後環状オレフィン系樹脂をメタノールに投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥した。乾燥後243g(収率96%)の環状オレフィン系樹脂を回収した。得られた環状オレフィン系樹脂の分子量はGPCによりMw=115,366 Mn=47,000、単分散性=2.43であった。環状オレフィン系樹脂の組成はH−NMRからデシルノルボルネンが70モル%エポキシノルボルネンが30モル%であった。
【0051】
合成した環状オレフィン系樹脂228gをデカヒドロナフタレン342gに溶解した後、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)(0.2757g、2.71×10-4mol)1−クロロ−4−プロポロキシ−9H−チオキサントン(0.826g、2.71×10-4mol)、フェノチアジン(0.054g、2.71×10-4mol)、3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(0.1378g、2.60×10-4mol)、を加えて溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過し環状オレフィン系樹脂組成物を得た。
【0052】
作製したこの環状オレフィン系樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で5分乾燥し、膜厚約10μmの塗膜を得た。この塗膜にi線ステッパー露光機NSR−4425i(ニコン(株)製)によりレチクルを通して300mJ/cm2で露光を行った。その後ホットプレートにて100℃で4分、露光部の架橋反応を促進させるため加熱した。
次にリモネンに30秒浸漬することによって未露光部を溶解除去した後、イソプロピルアルコールで20秒間リンスした。その結果、パターンが形成されていることが確認できた。この時の残膜率(現像後の膜厚/現像前の膜厚)は99.6%と非常に高い値を示した。また形成後のパターンにおいて、微細パターン剥がれは全く観察されず、現像時の密着性が優れていることが確認できた。その後160℃、60分で硬化し、架橋反応を完結させた。この硬化膜の吸水率は0.2%であった。
【0053】
次に前記のシリコンウエハーをダイシングにより小片化し、得られた半導体チップの上に該半導体チップより小さいサイズの半導体チップを乗せ、1秒加圧(0.1MPa)接着し、密着強度試験片とし、1水準当たり10個成形した。その後、自動せん断強度測定装置(DAGE社製、PC2400)を用いて、チップとチップとのせん断強度を測定した。結果は、8.8MPaであり、半導体チップの材料破壊であり、良好であった。
得られた半導体チップをダイアタッチ用接着フィルム(住友ベークライト(株)製 IBF−3021)を用いて、ボンディングフィンガーとその裏面に半田ボール搭載用のランドを持つプリント配線板に搭載され、金線により半導体チップとプリント配線板を接続した。
さらに、半導体チップの上に該半導体チップより小さいサイズの第2の半導体チップを乗せ、1秒加圧(0.1MPa)接着した。金線により第2の半導体チップとプリント配線板を接続した。このようにして半導体チップが2個積層して搭載されたプリント配線板は半導体チップ面を半導体封止樹脂(住友ベークライト(株)製 EME−7730L)により封止され、半田ボールを搭載し、BGAパッケージの半導体装置とした。
【0054】
上記の半導体装置をもちいて半田リフロー試験を行った。この半導体装置を温度及び湿度がそれぞれ85℃、85%の条件に設定された恒温恒湿槽中で72時間吸湿させた。その後、240℃/10秒のリフロー条件で半田リフローを行い、半導体装置の外部クラックの発生数を顕微鏡(倍率:15倍)で観察した。5個のサンプルについてクラックの発生を確認し0/5であった。さらに、上記半田リフロー試験後の半導体装置を実際のプリント基板に実装し、半導体装置としての動作確認を行った結果、半導体装置として正常に動作することが確認された。
チップサイズ:8mm×10mm、6mm×8mm
【0055】
《実施例2》
実施例1のデシルノルボルネン(192g、0.82mol)とグリシジルメチルエーテルノルボルネン(62g、0.35mol)の代わりに、デシルノルボルネン(129g、0.55mol)とグリシジルメチルエーテルノルボルネン(177g、0.30mol)、フェネチルノルボルネン(29.7g、0.15mol)を用いた以外は、実施例1と同様にしてデシルノルボルンネン/グリシジルメチルエーテルノルボルネン/フェネチルノルボルネン=55/30/15の環状オレフィン系樹脂(A−2)を得た。重合、再沈殿を行い、乾燥後309g(収率92%)の環状オレフィン系樹脂を回収した。得られた環状オレフィン系樹脂の分子量はGPCによりMw=30000、Mn=68000、単分散性=2.3であった。環状オレフィン系樹脂の組成はH−NMRからデシルノルボルネンが54モル%、エポキシノルボルネンが31モル%、フェネチルノルボルネンが15モル%であった。
実施例1と同様にシリコンウエハー上に硬化膜を作製したところ、この硬化膜の吸水率は0.2%であった。実施例1と同様に、せん断強度、半田リフロー試験、実際の動作確認を行った。せん断強度については、6.3MPaであり、半導体チップの材料破壊で、良好であった。半田リフロー試験では、5個のサンプルについてクラックの発生を確認し0/5であった。動作確認では、実際にプリント基板に実装され、半導体装置としての動作に支障のないことが確認された。
【0056】
《実施例3》
デシルノルボルネンとフェネチルノルボルネンコポリマーの開環メタセシス共重合体(A−3)の例を挙げる。
すべてのガラス機器は60℃で0.1Torr下で18時間乾燥する。その後ガラス機器は内部の酸素濃度と湿度がそれぞれ1%以内に抑えられたグローブボックス内に移され、グローブボックスに備え付けられる。トルエン(917g)、シクロヘキサン(917g)、デシルノルボルネン(129g、0.55mol)とフェネチルノルボルネン(29.7g、0.55mol)、1−ヘキセン(368g、2.2mol)が反応フラスコに加えられた。反応フラスコはグローボックスから取り出し、乾燥窒素ガスを導入した。反応中間体は30分間溶液中に窒素ガスを通して脱気した。グローブボックス中で五塩化タングステンのt−ブチルアルコール/メタノール(モル比0.35/0.3)溶液(0.05モル/l)を調製し、この3.78gをトリエチルアルミニウム0.011gがトルエン25gに溶解された助触媒溶液0.634gと共に反応フラスコに加えられた。20℃にて5時間攪拌して反応を終了した。
次にこの溶液をオートクレーブに入れ、RuHCl(CO)[P(C553340.02gを加え、内圧が100kg/cm2になるまで水素を導入し、165℃で3時間加熱攪拌を行った。加熱終了後室温まで放冷し、反応物をメタノール(975mmol)に加え18時間攪拌した。攪拌を止めると水層と溶媒層に分離した。水層を分離した後、1lの蒸留水を加え、20分間攪拌した。水層が分離するので取り除いた。1lの蒸留水で3回洗浄を行った。その後ポリマーをメタノールに投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥した。乾燥後320g(収率85%)の環状オレフィン系樹脂を回収した。得られた環状オレフィン系樹脂の分子量はGPCによりMw=22,000 Mn=9,600、単分散性=2.3であった。TgはDMAによると150℃であった。環状オレフィン系樹脂の組成は1H−NMRからデシルノルボルネンが48モル%、フェネチルノルボルネンが52モル%であった。
【0057】
得られた環状オレフィン系樹脂50重量部、5,6−エポキシ−1−ヘキセン6重量部およびジクミルパーオキシド1.5重量部をシクロヘキサン120重量部に溶解し、オートクレーブ中にて150℃、3時間反応を行った後、得られた反応生成物溶液を240重量部のイソプロピルアルコール中に注ぎ、反応性生成物を凝固させた。凝固したエポキシ変成重合体を100℃で5時間、真空乾燥し、環状オレフィン系樹脂のエポキシ変成重合体を50重量部を得た。このエポキシ変成重合体のTgはDMAによると15℃であった。得られたエポキシ変成重合体の分子量はGPCによりMw=23,000 Mn=10、000、単分散性=2.3であった。このエポキシ変成重合体のエポキシ変成率は2%であった。得られたエポキシ変成重合体を実施例1と同様にして樹脂組成物を作製し、同じ評価を行った。
実施例1と同様にシリコンウエハー上に硬化膜を作製したところ、この硬化膜の吸水率は0.2%であった。実施例1と同様に、せん断強度、半田リフロー試験、実際の動作確認を行った。せん断強度については、7.5MPaであり、半導体チップの材料破壊で、良好であった。半田リフロー試験では、5個のサンプルについてクラックの発生を確認し0/5であった。動作確認では、実際にプリント基板に実装され、半導体装置としての動作に支障のないことが確認された。
【0058】
《比較例1》
ポリイミド樹脂(住友ベークライト(株)製 CRC−6061)と接着剤(住友ベークライト(株)製 IBF−3021)をもちいた従来の構造の半導体装置での評価した。
実施例1と同様に、せん断強度、半田リフロー試験、実際の動作確認を行った。せん断強度については、8.0MPaであり、半導体チップの材料破壊で、良好であった。半田リフロー試験では、5個のサンプルについてクラックの発生を確認し0/5であった。動作確認では、実際にプリント基板に実装され、半導体装置としての動作に支障のないことが確認された。結果は、良好であったが、接着剤や接着剤の半導体チップへの貼り付け工程が必要であり、実施例1よりも工程が多くなった。
《比較例2》
実施例1で環状オレフィン系樹脂をポリイミド樹脂(住友ベークライト(株)製 CRC−6061)に変更した半導体装置で評価した。
実施例1と同様に、せん断強度、半田リフロー試験、実際の動作確認を行った。せん断強度については、密着強度が弱すぎるため測定不可能であった。半田リフロー試験では、5個のサンプルについてクラックの発生を確認し4/5であった。動作確認では、実際にプリント基板に実装され、半導体装置として正常に動作しないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、低応力性、耐溶剤性、低吸水性、電気絶縁性、密着性等に優れたスタックド構造のMCPに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】エポキシ基を含む環状オレフィン系樹脂を用いて半導体チップを積層した本発明の半導体装置の概略図
【図2】半導体チップと半導体チップとを接着剤を用いて接着した従来の半導体装置の概略図
【符号の説明】
【0061】
1 金線、
2 半導体チップ、
3 エポキシ基を含む環状オレフィン系樹脂、
4 プリント配線板、
5 半田ボール、
6 ダイアタッチ用接着フィルム
7 積層した半導体チップ
8 封止樹脂
9 ポリイミド樹脂
10 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)と光酸発生剤(B)を含む樹脂組成物の樹脂層を半導体チップの回路素子形成面上に有し、かつ該半導体チップ上に積層する別の半導体チップの裏面が該樹脂層に直接接触していることを特徴とするスタックド構造のMCP(マルチチップパッケージ)の樹脂封止型半導体装置
【請求項2】
環状オレフィン系樹脂がポリノルボルネン系樹脂である請求項1記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項3】
エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)が式(1)で示される繰り返し単位を含むものである請求項1又は2記載の樹脂封止型半導体装置。
【化1】

[式(1)中、XはO、CH2、(CH22のいずれかであり、nは0〜5までの整数である。R1〜R4はそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基、エポキシ基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R1〜R4は単量体の繰り返しの中で異なっていてもよいが、全繰り返し単位のR1〜R4のうち、少なくとも一つ以上はエポキシ基を有する官能基である。]
【請求項4】
エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)が式(2)及び式(3)で示される繰り返し単位を含むものである請求項1〜3記載の樹脂封止型半導体装置。
【化2】

[式(2)(3)中、R1〜R7はそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R1〜R7は単量体の繰り返しの中で異なっていてもよい。]
【請求項5】
エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)が式(4)、(5)及び(6)で示される繰り返し単位を含むものである請求項1〜4記載の樹脂封止型半導体装置。
【化3】

[式(4)(5)(6)中、nは0〜5の整数である。R1〜R10はそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R1〜R10は単量体の繰り返しの中で異なっていてもよい。]
【請求項6】
エポキシ基を有する環状オレフィン系樹脂(A)が式(7)で示される繰り返し単位を含むものである請求項1〜6記載の感光性樹脂組成物。
【化4】

[式(7)中、YはO、CH2、(CH22のいずれか、Zは−CH2−CH2−、−CH=CH−のいずれかであり、lは0〜5までの整数である。R1〜R4はそれぞれ水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はエステル基を含有する官能基、ケトン基を含有する官能基、エーテル基を含有する官能基、エポキシ基を含有する官能基のうちいずれであってもよい。R1〜R4は単量体の繰り返しの中で異なっていてもよいが、全繰り返し単位のR1〜R4のうち、少なくとも一つはエポキシ基を有する。]

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−114756(P2006−114756A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301613(P2004−301613)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】