説明

樹脂封止装置

【課題】可動プラテンに生じる部分的な熱の偏りを平準化することで部分的な熱膨張差の発生を防止し、可動プラテンの歪みを防止する。
【解決手段】本体130と、本体130に内包され上下に往復動可能な可動プラテン140と、樹脂を加熱するためのヒータ115とを有する樹脂封止ユニット101を備えた樹脂封止装置100であって、樹脂封止ユニット101が、複数台隣接配置され、可動プラテン140の底面側から上面側に延在して中空部140Aを設け、中空部140A内に前記往復動のためのボールねじ150を配置すると共に、中空部140A内の空気を循環させるためのエア噴出口142を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ等を搭載した基板を樹脂にて圧縮封止する圧縮型の樹脂封止装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載される圧縮型の樹脂封止装置が知られている。図4に特許文献1に記載される樹脂封止装置1の概略構成を示す。樹脂封止装置1は、4本のタイバー(柱)20によって支持される天板10と、この天板10に対向して配置され該天板10に対して進退動(往復動)可能な可動プラテン40を備えている。この可動プラテン40は、本体30に内包されている。天板10には、ヒータが内臓された上型(図示しない)が垂設され、可動プラテン40上には、ヒータが内臓された下型(図示しない)が載置されることとなる。4本のタイバー20は、本体30に立設固定されている。この本体30内にはプレス機構が配置されており、可動プラテン40を上下に(天板10方向に)進退動させることが可能とされている。これにより、上型及び下型を接近させて、半導体チップ等が搭載された基板をクランプした上で、樹脂にて圧縮封止が行われる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−103402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動プラテン40上に載置される下型には、樹脂を溶融させ更に熱硬化させるためのヒータが備わっている。このヒータの熱は徐々に可動プラテン40側にも伝播し、当該可動プラテン40を加熱する。また、本体30に配置されるプレス機構(加圧機構)は可動プラテン40を進退動させるために当該可動プラテン40に連結されて配置される。その結果繰り返されるプレス機構の動きによってプレス機構自身が発熱し、当該熱が可動プラテン40との連結部分を介して可動プラテン40側へと伝播する可能性がある。このように可動プラテン40には自身の外部からの熱の流入が不可避的に発生する。仮に熱の伝播を防止する工夫を行ったとしても完全に防ぐことはできない。
【0005】
また、かかる熱の伝播(流入)によって、樹脂封止の精度が悪化するという問題がある。熱の流入は、載置する下型に近い部分またはプレス機構との連結部分に集中するため、可動プラテン40が部分的に加熱された結果、可動プラテン40の熱膨張に部分的に差が生じ、歪が生じる。その結果、載置する下型を水平に(上型に対して水平に)支持することができなくなり、上型と下型とを精度よく当接させて半導体チップが搭載された基板を正確にクランプすることができなくなってしまう。具体的には、樹脂漏れが生じたり、樹脂に対して適切な圧力を掛けることができなくなる等の不具合が発生する。
【0006】
このような不具合は、近年生産性向上のために樹脂封止ユニット(本体と、本体に内包され上下に往復動可能な可動プラテンと、樹脂を加熱するためのヒータとを備えた樹脂封止ユニット)が複数台隣接して配置されることとなった結果顕在化するに至ったものである。即ち、隣接部分に熱が不可避的に篭るため、熱による可動プラテンの部分的な熱膨張差が助長されてしまう結果と考えられる。
【0007】
本発明はかかる問題点を解決するべくなされたものであって、可動プラテンに生じる部分的な熱の偏りを平準化することで部分的な熱膨張差の発生を防止し、可動プラテンの歪みを防止することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本体と、該本体に内包され上下に往復動可能な可動プラテンと、樹脂を加熱するためのヒータとを有する樹脂封止ユニットを備えた樹脂封止装置であって、前記樹脂封止ユニットが、複数台隣接配置され、前記可動プラテンの底面側から上面側に延在して中空部を設け、該中空部内に前記往復動のためのプレス機構を配置すると共に、該中空部内の空気を循環させるための循環機構を設けることにより上記課題を解決するものである。このような構成を採用することで、可動プラテンに生じた部分的な熱の偏りを平準化し、可動プラテンの部分的な熱膨張差を解消することができる。換言すれば、可動プラテン全体を満遍なく熱膨張させることで、結果として可動プラテンが歪むことを防止し、載置する下型の水平度を維持している。
【0009】
また、前記循環機構を、前記中空部内に対するエアの噴出により実現するようにすれば、かかるエアの噴出によって可動プラテン内の空気の循環とともに、可動プラテンを積極的に冷却することも可能である。
【0010】
また、前記プレス機構をボールねじで構成すれば、当該循環機構がボールねじの冷却をも兼ねることが可能となり、使用時の温度制限の厳しいボールねじを適切に使用でき、プレス精度の向上及び寿命の向上を図ることが可能となる。
【0011】
また、前記隣接配置された樹脂封止ユニットにおける前記本体の隣接面に開口を設け、前記循環機構によって、前記樹脂封止ユニット間でも空気の循環が起こるような構成としてもよい。このように構成すれば、複数の樹脂封止ユニット全体として、熱の平準化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明を適用することにより、熱により可動プラテンに生じる部分的な熱膨張を解消され、下型を水平に支持することができる結果、樹脂封止精度を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態の一例である樹脂封止装置100の概略正面図(一部断面図)である。図2は、樹脂封止装置100の概略側面図である。
【0015】
樹脂封止装置100は、ベースプレート170上に配置された樹脂封止ユニット101と、この樹脂封止ユニット101を駆動するためのプレス用モータ160を有した構成とされている。
【0016】
樹脂封止ユニット101は、ベースプレート170上に載置された本体130と、この本体130に立設する4本(図1においては2本しか表れていない)のタイバー(柱)120と、このタイバー120によって支持される天板110と、本体130に内包されて天板110側へと進退動(往復動)可能な可動プラテン140とから主に構成されている。天板110とタイバー120とはタイバー固定ナット111にて連結固定されている。天板110には上型112が垂設されている。一方、可動プラテン140上には、下型114が載置されている。これら上型112及び下型114には、樹脂を溶融させたり熱硬化させるためのヒータ113、115が備わっている。本体130と可動プラテン140とは、スライドガイド116によってスライド可能に支持されており、プレス機構(後述する)によって上下にスライド可能とされている。
【0017】
また、略長方体の可動プラテン140には、自身の底面側から上面側に延在するように中空部140Aが設けられており、当該中空部140A内にプレス機構としてのボールねじ150が配置されている。このボールねじ150は、シャフト151と連結しており、当該シャフト151がスラスト軸受118によってベースプレート170から回転可能に支持されている。また、可動プラテン140の中空部140Aには、噴出口(循環機構)142が設けられ、当該噴出口142からエアを噴出させることが可能な構成とされている。
【0018】
一方、プレス用モータ160は、減速機162が連結された状態で、ベースプレート170に固定されている。この減速機162の出力軸163にはプーリ164が備わっており、更に当該プーリ164にタイミングベルト165が連結されている。また、前述したシャフト151にもプーリ166が備わっており、同様にタイミングベルト165が連結されている。その結果プレス用モータ160の回転が減速機162によって減速された上で、タイミングベルト165、シャフト151を介してボールねじ150へと伝達されることが可能な構成とされている。
【0019】
また、図2に示すように当該樹脂封止装置100の本体130内に内包された可動プラテン140及びボールねじ(プレス機構:図2において図示しない)を備えた樹脂封止ユニット101が2台隣接配置された構成とされている。また本実施形態では、それぞれの樹脂封止ユニット101のベースプレート170同士が、連結ピン180によって連結固定されている。
【0020】
この樹脂封止装置100は、上型112と下型114とが所定のタイミングで当接・離反することによって、半導体チップが搭載された基板をクランプし樹脂にて封止する作業が繰り返し行われる。また、かかる際にはプレス用モータ160の回転が減速機162及びタイミングベルト165、シャフト151を介してボールねじ150へと伝達され、当該ボールねじ150の作用によって可動プラテン140が天板110側へと進退動することによって上型112と下型114との当接・離反が行われる。また、所定のタイミングで金型112、114内に備わるヒータ113、115が金型112、114を加熱する。下型114に内蔵されたヒータ115による発熱は下型114のみならず下型114を介して当該下型114が載置される可動プラテン140にも伝達される。その結果、可動プラテン140の上面(下型114の載置部分)が他の部分に比べて相対的に熱くなる。一方、繰り返されるプレス動作によってボールねじ150自体が発熱し、当該熱がボールねじ150と可動プラテン140との連結部分Pを介して可動プラテン140へと伝播する。ここでも可動プラテン140における当該連結部分Pが他の部分に比べて相対的に熱くなる。その結果可動プラテン140には部分的な熱の偏りが生じ、熱膨張の差に起因した歪みが発生する可能性がある。
【0021】
しかしながら本実施形態においては、可動プラテン140における中空部140A内に所定のタイミングでエア噴出口142から常温のエアが噴き出され、可動プラテン140の中空部140A内の空気を強制的に循環させているため、この部分的な熱の偏りが平準化されている。その結果、可動プラテン140の熱による部分的な熱膨張の差を解消することができている。即ち、可動プラテン140に生じる熱膨張そのものを防止しているのではなく、可動プラテン140全体を満遍なく熱膨張させることで結果として可動プラテン140に歪が生じることを防止し、載置する下型114を水平に維持することを可能としている。
【0022】
なお、本実施形態では示されていないが、中空部140A内の表面に必要により例えば「ひだ形状」の突起を設け、より積極的に熱の循環を促すような構成を採用してもよい。また、エアの噴出口142は、本実施形態では2つであるが、樹脂封止装置の種類や設置環境等に応じて1つであってもよいし、3つ以上設けてもよい。また、エアが噴き出す方向を調整して中空部140A内に例えば竜巻のような空気の流れを積極的に形成してもよい。更に噴出口142の向きが所定のタイミングで変化するような構成を採用することも可能である。
【0023】
また、本実施形態では噴出口142から噴き出すエアは常温のエアとされている。これにより、噴出口142から噴き出されたエアが最初に当接する部分が過度に冷却されることが無く、過度の冷却による可動プラテン140の部分的な歪みを防止することも可能となっている。もちろんエアの温度が常温である必要はなく、例えば、常温よりも暖められたエアを使用して、部分的な過冷却をより積極的に防止してもよい。
【0024】
更に本実施形態においては、プレス機構としてボールねじ150を採用している。ボールねじは一般にその使用の際における温度制限が存在し、かかる温度制限を超えた状況での使用においてはその精度及び寿命の点で不利となる。しかしながら、噴出口142から噴き出されるエアによってこのボールねじ150を積極的に冷却することも可能となっている。即ち、当該循環機構をプレス機構の冷却機構としても機能させることが可能となっている。その結果ボールねじ150の温度制限内での使用が可能となり、プレス機構としての精度の向上及び寿命の向上を図ることが可能となっている。また、例えばボールねじ自体に冷却媒体を通す貫通孔を設ける等によって冷却する必要もないため、ボールねじ自体の構成を簡素化することも可能である。
【0025】
また、図3に示すように樹脂封止ユニット101を4台隣接配置したような場合には、両端に配置される樹脂封止ユニット101と内側に配置される樹脂封止ユニット101とでは可動プラテン140に生じる熱の偏りにも差が生じ得る。かかる場合には、それぞれの可動プラテン140の中空部140A内に噴出するエアの温度や量を調整することによって各樹脂封止ユニット101における可動プラテン140の熱膨張を平準化させることが可能となっている。更に、隣接配置された樹脂封止ユニット101における本体130の隣接面に開口を設け(図3では現れていない)、前記循環機構によって、各樹脂封止ユニット101間でも空気の循環が起こるように構成すれば、当該開口を介して空気が移動することができる。その結果、樹脂封止ユニット101間全体として熱の平準化を図ることが可能となる。また、場合によっては全ての樹脂封止ユニット101にそれぞれ循環機構としての噴出口142を設けなくともよく、低コスト化を実現できる。
【0026】
なお、樹脂封止ユニット101の隣接配置数は上記説明した2台配置及び4台配置に限定されるものではなく、3台配置であってもよいし5台以上の配置であっても良い。また、各樹脂封止ユニット101間が連結ピン180によって連結されていることは必須の構成要素ではない。複数台隣接配置することによって可動プラテンの部分的な熱の偏りが助長される限りにおいて機械的な連結は不要である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、半導体チップが搭載された基板を樹脂にて圧縮封止する樹脂封止装置として好適である
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態の一例である樹脂封止装置100の概略正面図(一部断面図)
【図2】樹脂封止装置100の概略側面図
【図3】樹脂封止ユニットが4列配置された樹脂封止装置200の概略側面図
【図4】特許文献1に記載される樹脂封止装置の概略構成図
【符号の説明】
【0029】
100…樹脂封止装置
101…樹脂封止ユニット
110…天板
111…タイバー固定ナット
112…上型
113、115…ヒータ
114…下型
116…スライドガイド
118…スラスト軸受
120…タイバー
130…本体
140…可動プラテン
140A…中空部
142…噴出口
150…ボールねじ
160…プレス用モータ
162…減速機
164…タイミングベルト
166…プーリ
170…ベースプレート
180…連結ピン
190…下型駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体に内包され上下に往復動可能な可動プラテンと、樹脂を加熱するためのヒータとを有する樹脂封止ユニットを備えた樹脂封止装置であって、
前記樹脂封止ユニットが、複数台隣接配置され、
前記可動プラテンの底面側から上面側に延在して中空部を設け、該中空部内に前記往復動のためのプレス機構を配置すると共に、
該中空部内の空気を循環させるための循環機構を設けた
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記循環機構が、前記中空部内に対するエアの噴出により実現されている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記プレス機構が、ボールねじである
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項4】
請求項1乃至3において、
前記隣接配置された樹脂封止ユニットにおける前記本体の隣接面に開口を設け、
前記循環機構によって、前記樹脂封止ユニット間でも空気の循環が起こる
ことを特徴とする樹脂封止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−238424(P2008−238424A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78250(P2007−78250)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】