説明

樹脂成型装置

【課題】オーバーモールドボトルの量産性を向上させることができる樹脂成型装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの樹脂流入口101から複数の樹脂流出口102まで順次分岐されて連通している分岐樹脂流路103が形成されている。その複数の樹脂流出口102の各々に個々に複数のオーバーモールド金型300が連結され、その内部にインサートボトル500が保持される。樹脂流入口101に樹脂圧送機構200が溶融樹脂を圧送するので、インサートボトル500の外面にオーバーモールド樹脂が成型されるオーバーモールド成型が、複数のオーバーモールド金型300で同時に実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を射出成型する樹脂成型装置に関し、特に、インサートボトルの外側に溶融樹脂を射出してオーバーモールド樹脂を成型する樹脂成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧水、薬品または飲料など流動性をもつ液状物を収容する容器として、樹脂製のインサートボトル(インナーシェル)の外側に溶融樹脂を射出してオーバーモールド樹脂(アウターシェル)を成型したオーバーモールド容器が提案されている。
【0003】
かかるオーバーモールド容器は、インサートボトルとオーバーモールド樹脂とを異なる材料より作製できる。このため、例えば、インサートボトルには耐食性を求め、オーバーモールド樹脂には機械強度を求めるなど、収容物の特性に応じた容器を実現することができる(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
ここで、インサートボトルの外側にオーバーモールド樹脂をオーバーモールド成型するに際しては、オーバーモールド金型に対するインサートボトルの変位を抑制した状態で行う必要がある。
【0005】
また、インサートボトルとオーバーモールド樹脂がともに角瓶形状であったり、それぞれに特定の装飾が施されていたりする場合には、オーバーモールド金型に対するインサートボトルの向きを定めてオーバーモールド成型する必要がある。
【0006】
これに対し、上記文献1,2に記載の樹脂成型装置では、インサートボトルの円筒首部の外周面に雄ネジが形成されており、これと螺合する雌ネジをオーバーモールド金型の円形穴部の内周面に形成しておくことにより、インサートボトルをオーバーモールド金型の内部に固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/010597号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/010600号パンフレット
【特許文献3】特開2000−006194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した射出成型装置では、インサートボトルを何度も回転させて円筒首部の雄ネジをオーバーモールド金型の円形穴部の雌ネジに螺合させないと、インサートボトルをオーバーモールド金型に固定することができない。
【0009】
このため、インサートボトルをオーバーモールド金型に固定する作業が煩雑であり、その自動化なども容易ではない。このため、インサートボトルにオーバーモールド樹脂が成型されたオーバーモールドボトルの生産性が低下している。
【0010】
上述のような課題を解決するため、本出願人はインサートボトルを回転させずともオーバーモールド金型に固定できる技術を発明し、これを特願2008−190240号として出願した。
【0011】
上記出願の発明により、オーバーモールドボトルの量産性を向上させることができることとなった。しかし、さらなるオーバーモールドボトルの量産性の向上が現在は要望されている。
【0012】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、オーバーモールドボトルの量産性を向上させることができる樹脂成型装置を提供するものである。量産性にあたっては多数個取りが考えられるが、金型内に射出される溶融樹脂流によってインナーボトルが所定位置から変位したり、ボトル自体が変形しないように精密制御する必要がある。本発明は、他にはインナーボトルが変位したり、或いは変形しないように精密制御できる多数個取りのオーバーモールド用の樹脂成型装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の樹脂成型装置は、少なくとも一つの樹脂流入口から複数の樹脂流出口まで順次分岐されて連通している分岐樹脂流路が形成されている流路形成部材と、分岐樹脂流路の樹脂流入口に溶融樹脂を圧送する樹脂圧送機構と、分岐樹脂流路の複数の樹脂流出口の各々に個々に連通する複数のオーバーモールドキャビティを各々形成する複数のオーバーモールド金型と、複数のオーバーモールド金型の各々のオーバーモールドキャビティに溶融樹脂でオーバーモールド成型されるインサートボトルを保持する複数のボトル保持機構と、を有する。
【0014】
従って、本発明の樹脂成型装置では、少なくとも一つの樹脂流入口から複数の樹脂流出口まで順次分岐されて連通している分岐樹脂流路が流路形成部材に形成されている。その分岐樹脂流路の樹脂流入口に樹脂圧送機構が溶融樹脂を圧送する。分岐樹脂流路の複数の樹脂流出口の各々に個々に連通する複数のオーバーモールドキャビティを複数のオーバーモールド金型が各々形成する。これら複数のオーバーモールド金型の各々のオーバーモールドキャビティに溶融樹脂でオーバーモールド成型されるインサートボトルを複数のボトル保持機構が保持する。このため、インサートボトルの外面にオーバーモールド樹脂が成型されるオーバーモールド成型が、複数のオーバーモールド金型で同時に実行される。
【0015】
また、上述のような樹脂成型装置において、インサートボトルは端面が開口している円筒首部の外周面に雄ネジが形成されており、雄ネジに周面方向の複数箇所で軸心方向にスリット部が形成されており、ボトル保持機構は、円筒首部が着脱自在に挿入される円形穴部の内周面にスリット部と係脱自在に係合するリブ状部が形成されていてもよい。
【0016】
また、上述のような樹脂成型装置において、溶融樹脂を樹脂流出口からオーバーモールド金型に注入するホットランナーノズルと、オーバーモールドキャビティに保持されたインサートボトルの内部に流体を圧送する流体圧送機構と、ホットランナーノズルからオーバーモールド金型に流入する溶融樹脂の温度と流速と圧力との少なくとも一つと流体圧送機構がインサートボトルに圧送する流体の温度と流速と圧力との少なくとも一つとを同期させて制御する成型制御手段と、を有してもよい。
【0017】
また、上述のような樹脂成型装置において、成型制御手段は、ホットランナーノズルによりオーバーモールド金型に流入する溶融樹脂の温度と流速と圧力との少なくとも一つを制御してもよい。
【0018】
また、上述のような樹脂成型装置において、成型制御手段は、複数のオーバーモールド金型ごとにホットランナーノズルにより溶融樹脂の温度と流速と圧力との少なくとも一つを制御するとともに複数のインサートボトルごとに流体圧送機構で流体の温度と流速と圧力との少なくとも一つを制御してもよい。
【0019】
また、上述のような樹脂成型装置において、ホットランナーノズルは、事前に所定容量に計量された溶融樹脂を射出する樹脂射出機構を、さらに有し、成型制御手段は、ホットランナーノズルにより複数のオーバーモールド金型ごとに射出する溶融樹脂を所定容量に調整してもよい。
【0020】
なお、本発明の各種の構成要素は、その機能を実現するように形成されていればよく、例えば、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより付与された樹脂成型装置、コンピュータプログラムにより樹脂成型装置に実現された所定の機能、これらの任意の組み合わせ、等として実現することができる。
【0021】
また、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の樹脂成型装置では、少なくとも一つの樹脂流入口から複数の樹脂流出口まで順次分岐されて連通している分岐樹脂流路が流路形成部材に形成されている。その分岐樹脂流路の樹脂流入口に樹脂圧送機構が溶融樹脂を圧送する。分岐樹脂流路の複数の樹脂流出口の各々に個々に連通する複数のオーバーモールドキャビティを複数のオーバーモールド金型が各々形成する。これら複数のオーバーモールド金型の各々のオーバーモールドキャビティに溶融樹脂でオーバーモールド成型されるインサートボトルを複数のボトル保持機構が保持する。このため、インサートボトルの外面にオーバーモールド樹脂が成型されるオーバーモールド成型が、複数のオーバーモールド金型で同時に実行される。従って、オーバーモールドボトルの量産性を向上させることができる。さらに好ましい態様では、オーバーモールドキャビティに溶融樹脂を圧送するホットランナーノズルごとに樹脂射出機構を設けているため、オーバーモールド成型時のインナーボトルの変位や変形を大幅に低減でき、目的とするオーバーモールド成型品を高収率に成型できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態の樹脂成型装置の全体構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図2】インサートボトルの外観を示す二面図である。
【図3】オーバーモールド金型にインサートボトルを装填する工程を示す模式的な縦断正面図である。
【図4】オーバーモールド樹脂を成型してオーバーモールドボトルを完成する工程を示す模式的な縦断正面図である。
【図5】完成したオーバーモールドボトルにボトルキャップを装着する状態を示す模式的な正面図である。
【図6】一の変形例の樹脂成型装置の全体構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図7】ホットランナーノズルの内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図8】複数のホットランナーノズルと樹脂射出機構との連結構造を示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の一形態を図面を参照して以下に説明する。なお、本実施の形態では図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0025】
本実施の形態の樹脂成型装置1000は、図1に示すように、少なくとも一つの樹脂流入口101から複数の樹脂流出口102まで順次分岐されて連通している分岐樹脂流路103が形成されている流路形成部材100と、分岐樹脂流路103の樹脂流入口101に溶融樹脂を圧送する樹脂圧送機構200と、分岐樹脂流路103の複数の樹脂流出口102の各々に個々に連通する複数のオーバーモールドキャビティ301を各々形成する複数のオーバーモールド金型300と、複数のオーバーモールド金型300の各々のオーバーモールドキャビティ301に溶融樹脂でオーバーモールド成型されるインサートボトル500を底部が樹脂流出口102に対向するように保持する複数のボトル保持機構400と、を有する。
【0026】
より詳細には、インサートボトル500は、例えば、いわゆるペットボトルからなり、図2に示すように、四角柱状の中空のボトル本体510と、上端開口の円筒首部520と、を有する。
【0027】
例えば、ボトル本体510は底部が平坦に閉塞されており、上部が四角錐状に形成されて小径の円筒首部520に連通している。この円筒首部520の基部外周には円環状のストッパ部521が形成されている。
【0028】
なお、インサートボトル500はポリオレフィン、ポリエステルまたはポリアミドなどの樹脂材料からなり、内容物の視認性から透明性合成樹脂が好適に用いられる。具体的には、耐熱性や耐衝撃性、耐食性、装飾性、審美性などの観点から選択することができる。このため、耐熱ガラスからなるインサートボトル(図示せず)なども多用される。
【0029】
例えば、溶融温度の高さからポリエステルやポリアミド、耐食性の高さからポリエチレンやポリプロピレンまたは上記アイオノマー樹脂が好ましく用いられる。樹脂材料には、光反射粉を混合して、オーバーモールドボトル600の審美性を向上してもよい。
【0030】
さらに、円筒首部520の外周面には雄ネジ522が形成されているが、この雄ネジ522には、図示するように、周面方向の複数箇所で軸心方向にスリット部523が形成されている。
【0031】
そこで、ボトル保持機構400は、図3に示すように、円筒首部520が着脱自在に挿入される円形穴部410が形成されており、その内周面にスリット部523と係脱自在に係合するリブ状部411が形成されている。
【0032】
なお、オーバーモールド金型300は、第一/第二の分割金型310,320からなり、第一/第二の分割金型310,320を接合すると、その上部にオーバーモールドキャビティ301に連通して溶融樹脂が流入される樹脂流動通路302が形成される。
【0033】
オーバーモールドキャビティ301に連通するオーバーモールド金型300の下部には直方体状の空隙が形成されており、そこに直方体状の外形のボトル保持機構400が着脱自在に装着されている。
【0034】
このボトル保持機構400とオーバーモールド金型300には、保持したインサートボトル500の内部中央に冷却された流体、例えば空気が圧送される空気供給流路303と、インサートボトル500の内部下方から空気が排気される一対の空気排出流路304と、が形成されている。
【0035】
ボトルの内部に供給される流体は気体である必要はなく、水のような液体であってもよく、製品としてボトルに満たされる気体や液体であってもよい。また、供給する場所はボトル開口部中央である必要はない。ボトル内部に冷却された流体を供給するため、通常ではインナーボトルとして使用できない樹脂製のボトルも使用可能である。
【0036】
一方、本実施の形態の樹脂成型装置1000では、図1に示すように、前述のように少なくとも一つの樹脂流入口101に樹脂圧送機構200が装着されている流路形成部材100の分岐樹脂流路103が順次分岐されて複数の樹脂流出口102が形成されており、この複数の樹脂流出口102の各々に複数のホットランナーノズル210を個々に介して複数のオーバーモールド金型300が個々に連結されている。
【0037】
ホットランナーノズル210は、樹脂圧送機構200に圧送されて分岐樹脂流路103の樹脂流出口102から流出する溶融樹脂を、オーバーモールド金型300の樹脂流動通路302に射出する。
【0038】
なお、本実施の形態の樹脂成型装置1000では、上述のように複雑で長大な分岐樹脂流路103に溶融樹脂を流動させるため、分岐樹脂流路103の各所にヒータ部材110が配置されている。このため、複雑で長大な分岐樹脂流路103を流動する溶融樹脂は、ヒータ部材110の加熱により適正な温度および粘度に維持される。
【0039】
上述のようなヒータ部材(図示せず)はホットランナーノズル210にも内蔵されており、ホットランナーノズル210がオーバーモールド金型300に射出する溶融樹脂を適正な温度に加熱する。
【0040】
上述のような構成において、本実施の形態の樹脂成型装置1000による射出成型方法を以下に順番に説明する。まず、図2に示すように、円筒首部520の雄ネジ522に周面方向で複数位置にスリット部523が軸心方向に形成されているインサートボトル500を用意する。
【0041】
つぎに、図3に示すように、そのスリット部523がリブ状部411に係合するように、インサートボトル500の円筒首部520をボトル保持機構400の円形穴部410に挿入する。
【0042】
これでインサートボトル500はボトル保持機構400に保持されるので、このボトル保持機構400を第一/第二の分割金型310,320からなるオーバーモールド金型300に装着する。
【0043】
上述のように複数のオーバーモールド金型300を準備したら、図1に示すように、樹脂成型装置1000の複数のホットランナーノズル210の各々にオーバーモールド金型300を装着する。
【0044】
このとき、オーバーモールド金型300の空気供給流路303に冷気圧送機構(図示せず)を連結するとともに、一対の空気排出流路304に空気排気機構(図示せず)も連結する。
【0045】
上述のような状態で、樹脂圧送機構200により圧送される溶融樹脂が分岐樹脂流路103で順次分岐されて複数のホットランナーノズル210から複数のオーバーモールド金型300に個々に射出される。このとき、分岐樹脂流路103を流動する溶融樹脂はヒータ部材110により適正な温度に加熱されるので適正な粘度が維持される。
【0046】
また、ホットランナーノズル210も溶融樹脂を適正に加熱して射出するので、図4(a)に示すように、オーバーモールド金型300ではオーバーモールドキャビティ301にオーバーモールド樹脂610が成型される。
【0047】
このオーバーモールド樹脂610はインサートボトル500の外面に一体に成型されるが、このインサートボトル500には冷却された空気が所定の圧力で流動されるので、射出される溶融樹脂の圧力のためにインサートボトル500が変形することなどが防止される。
【0048】
オーバーモールド樹脂610の材料としては、アイオノマー樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体樹脂、またはスチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂などのスチレン系樹脂を用いることができ、好ましくはアイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体樹脂、より好ましくは、アイオノマー樹脂を用いることができる。
【0049】
アイオノマー樹脂としては、例えば不飽和カルボン酸含有が1〜40質量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものを使用することができる。
【0050】
アイオノマー樹脂のベースポリマーとなるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸、さらに任意の他の極性モノマーを共重合体して得られるものである。
【0051】
金属イオンとしては、1〜3価の原子価を有する金属イオン、特に元素周期律表におけるIA,IIA,IIIA,IVAおよびIII族の1〜3価の原子価を有する金属イオンが挙げられる。具体的には、オーバーモールド樹脂610の材料は、耐衝撃性や透明性、審美性などの観点から選択される。
【0052】
前述のようにインサートボトル500の外面にオーバーモールド樹脂610が一体にオーバーモールド成型されると、これでオーバーモールドボトル600が完成する。そこで、図4(b)に示すように、第一/第二の分割金型310,320を開放してオーバーモールドボトル600を取り出し、樹脂流動通路302で凝固した樹脂ランナー601を切除する。
【0053】
このとき、第一/第二の分割金型310,320を開放すると、オーバーモールドボトル600はボトル保持機構400から回転させることなく引き出される。しかし、このオーバーモールドボトル600の円筒首部520の雄ネジ522は、複数のスリット部523が形成されていても普通に機能するので、図5に示すように、内周面に雌ネジ621が形成されているボトルキャップ620が着脱自在に螺合される。
【0054】
本実施の形態の樹脂成型装置1000では、上述のように少なくとも一つの樹脂流入口101から複数の樹脂流出口102まで順次分岐されて連通している分岐樹脂流路103が流路形成部材100に形成されている。
【0055】
その分岐樹脂流路103の樹脂流入口101に樹脂圧送機構200が溶融樹脂を圧送する。分岐樹脂流路103の複数の樹脂流出口102の各々に個々に連通する複数のオーバーモールドキャビティ301を複数のオーバーモールド金型300が各々形成する。
【0056】
これら複数のオーバーモールド金型300の各々のオーバーモールドキャビティ301に溶融樹脂でオーバーモールド成型されるインサートボトル500を底部が樹脂流出口102に対向するように複数のボトル保持機構400が保持する。
【0057】
このため、インサートボトル500の外面にオーバーモールド樹脂が成型されるオーバーモールド成型が、複数のオーバーモールド金型300で同時に実行される。従って、オーバーモールドボトル600の量産性を向上させることができる。
【0058】
特に、インサートボトル500は端面が開口している円筒首部520の外周面に雄ネジ522が形成されており、雄ネジ522に周面方向の複数箇所で軸心方向にスリット部523が形成されている。
【0059】
そして、ボトル保持機構400は、円筒首部520が着脱自在に挿入される円形穴部410の内周面にスリット部523と係脱自在に係合するリブ状部411が形成されている。
【0060】
このため、オーバーモールド金型300の内部にインサートボトル500を配置するためには、その円筒首部520をボトル保持機構400の円形穴部410に軸心方向に挿入すればよい。
【0061】
つまり、円筒首部520の雄ネジ522をボトル保持機構400の雌ネジ(図示せず)に回転させて螺合させるような必要がない。このため、オーバーモールド金型300の内部にインサートボトル500を簡単かつ迅速に適正に配置することができ、さらにオーバーモールドボトル600の量産性を向上させることができる。
【0062】
しかも、本実施の形態の樹脂成型装置1000では、スリット部523とリブ状部411とを係合させて円筒首部520を円形穴部410に挿入することで、インサートボトル500をボトル保持機構400に保持させている。
【0063】
このため、雄ネジと雌ネジとの螺合に比較するとインサートボトル500の保持は強固ではない。しかし、本実施の形態の樹脂成型装置1000では、前述のようにボトル保持機構400はインサートボトル500を底部が樹脂流出口102に対向するように保持する。
【0064】
従って、樹脂流出口102からオーバーモールドキャビティ301に射出されてインサートボトル500に作用する溶融樹脂の動圧は、ボトル保持機構400による保持を補助する方向に作用することになる。このため、オーバーモールドキャビティ301に射出される溶融樹脂の動圧のためにインサートボトル500が変位することを良好に抑制できる。
【0065】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態ではインサートボトル500の円筒首部520の外周部に雄ネジ522が形成されていてスリット部523が形成されており、これが係合するリブ状部411がボトル保持機構400の円形穴部410に形成されていることを例示した。しかし、インサートボトルの円筒首部がスナップフィットに形成されており、ボトル保持機構の円形穴部にリブ状部が形成されていなくともよい(図示せず)。
【0066】
また、上記形態では樹脂圧送機構200が圧送する溶融樹脂をホットランナーノズル210で加熱してオーバーモールド金型300に射出するとともに、そのオーバーモールド金型300に保持されているインサートボトル500の内部に冷却した空気を所定の圧力で流動させることのみ例示した。
【0067】
しかし、上述のような樹脂成型装置1000において、ホットランナーノズル210からオーバーモールド金型300に流入する溶融樹脂の温度と流速と圧力との少なくとも一つと、インサートボトル500に圧送される冷気の温度と流速と圧力との少なくとも一つとを、同期させて制御してもよい(図示せず)。この場合、より迅速かつ正確にオーバーモールドボトル600をオーバーモールド成型するようなことが期待できる。
【0068】
例えば、上記形態ではホットランナーノズル210が動的に制御されない単純なノズルからなることを想定した。しかし、このホットランナーノズル210が動的に制御され、オーバーモールド金型300に流入する溶融樹脂の温度と流速と圧力との少なくとも一つを制御してもよい。
【0069】
この場合、樹脂成型装置(図示せず)は、複数のオーバーモールド金型300ごとにホットランナーノズル210により溶融樹脂の温度と流速と圧力との少なくとも一つを制御するとともに、複数のインサートボトル500ごとに流体の温度と流速と圧力との少なくとも一つを制御すればよい。
【0070】
例えば、本実施の形態の樹脂成型装置1000では、前述のようにスリット部523とリブ状部411とを係合させて円筒首部520を円形穴部410に挿入することで、インサートボトル500をボトル保持機構400に保持させている。
【0071】
このため、ホットランナーノズル210からオーバーモールド金型300に射出される溶融樹脂の流速によっては、インサートボトル500が変位する可能性がある。このような変位は、インサートボトル500がペットボトルではなく耐熱ガラスボトルの場合にも問題となる。
【0072】
そこで、上述のような課題が発生する場合には、インサートボトル500が変位しない範囲に、溶融樹脂の流速をホットランナーノズル210で制御することが好適である。
【0073】
また、インサートボトル500の外面に作用する溶融樹脂の圧力より内面に作用する冷却空気の圧力が異常に高いと、インサートボトル500がボトル保持機構400から脱落する可能性がある。
【0074】
そこで、スリット部523とリブ状部411とを係合させて円筒首部520を円形穴部410に保持させた構造でも、インサートボトル500がボトル保持機構400から脱落しないように、溶融樹脂と冷却空気との圧力を同期させて制御することが好適である。
【0075】
また、上記形態ではインサートボトル500は外側から溶融樹脂で加熱されるとともに内側から冷却空気で空冷されることを例示した。そこで、インサートボトル500に異常加熱や圧力差分による変形などが発生しないように、溶融樹脂と冷却空気との温度および流速を同期させて制御することも好適である。
【0076】
特に、前述のように複数のホットランナーノズル210から複数のオーバーモールド金型300に溶融樹脂を同時に注入してオーバーモールドボトル600を形成する場合、複数のホットランナーノズル210を個々に制御することが好適である。
【0077】
この場合、複数のインサートボトル500の機械強度に個体差などが存在しても、それに個別に対応して複数のオーバーモールドボトル600を均質に量産することができる。
【0078】
また、上述のような樹脂成型装置において、ホットランナーノズルが、事前に所定容量に計量された溶融樹脂を射出する樹脂射出機構を有してもよい。より具体的には、図6ないし図8に例示する樹脂成型装置2000のように、ホットランナーノズル700は、例えば、溶融樹脂を射出する樹脂射出機構710として、ノズルシリンダ711の内部にスライド自在に配置されたノズルピストン712、このノズルピストン712をピストンプランジャ713に連結してスライド移動させるピストンリンク機構714、等を有する。
【0079】
この機構によれば、一つのピストンプランジャ713により独立した複数のノズルピストン712を制動することができるので、装置構造も極めて簡単になる。本発明では、この機構だけでも、変位や変形を減少したオーバーモールドボトル600を製造することが可能である。
【0080】
なお、流路形成部材800の分岐樹脂流路803の樹脂流出口802は、上述のようなホットランナーノズル700の下部側面に連結されている。その樹脂流出口802には、例えば、射出される溶融樹脂を計量された所定容量に制限する流路ゲート810が形成されている。
【0081】
このような樹脂成型装置2000では、例えば、事前に複数のホットランナーノズル700の各々から射出される溶融樹脂が個々に計量される。そして、複数のホットランナーノズル700が同一の所定容量の溶融樹脂を射出するように、例えば、複数のホットランナーノズル700のノズルシリンダ711のホームポジションなどが個々に調整される。
【0082】
そこで、一個のピストンプランジャ713で複数のホットランナーノズル700のノズルシリンダ711を一様にスライド移動させても、複数のオーバーモールド金型300に同一の所定容量の溶融樹脂が射出されることになる。
【0083】
このため、オーバーモールド金型300のオーバーモールドキャビティ301に配置されているインサートボトル500の変形および変位を良好に防止することができ、成型されるオーバーモールド樹脂610の変形および変位も良好に防止することができる。このため、高品質なオーバーモールドボトル600を、均質に量産することができる。
【0084】
また、上記形態ではオーバーモールド金型300を準備してからホットランナーノズル210に連結することを例示した。しかし、最初からホットランナーノズル210に第一の分割金型310を連結しておき、第二の分割金型320を開閉するような構造も可能である(図示せず)。
【0085】
さらに、上記形態ではオーバーモールド金型300の第一/第二の分割金型310,320とボトル保持機構400とが着脱自在な別体に形成されていることを例示した。しかし、このようなボトル保持機構400を第一/第二の分割金型310,320の一方と一体に形成しておいてもよい(図示せず)。
【0086】
また、図1では図示および説明を簡単とするため、分岐樹脂流路103が単純に二次元状に分岐されており、その流路直径も均一とした。しかし、この分岐樹脂流路103は、実際には三次元状に分岐していてもよく、その流路直径も均一である必要はない(図示せず)。
【0087】
さらに、分岐樹脂流路103が二つに等長に分岐することを繰り返し、一つの樹脂流入口101から八つの樹脂流出口102まで連通していることを例示した。しかし、分岐樹脂流路が二つ以上に不等長に分岐することを繰り返した形状に形成されていることも不可能ではない(図示せず)。
【0088】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0089】
100 流路形成部材
101 樹脂流入口
102 樹脂流出口
103 分岐樹脂流路
110 ヒータ部材
200 樹脂圧送機構
210 ホットランナーノズル
300 オーバーモールド金型
301 オーバーモールドキャビティ
302 樹脂流動通路
303 空気供給流路
304 空気排出流路
310 第一の分割金型
320 第二の分割金型
400 ボトル保持機構
410 円形穴部
411 リブ状部
500 インサートボトル
510 ボトル本体
520 円筒首部
521 ストッパ部
522 雄ネジ
523 スリット部
600 オーバーモールドボトル
601 樹脂ランナー
610 オーバーモールド樹脂
620 ボトルキャップ
621 雌ネジ
700 ホットランナーノズル
710 樹脂射出機構
711 ノズルシリンダ
712 ノズルピストン
713 ピストンプランジャ
714 ピストンリンク機構
800 流路形成部材
802 樹脂流出口
803 分岐樹脂流路
810 流路ゲート
1000 樹脂成型装置
2000 樹脂成型装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの樹脂流入口から複数の樹脂流出口まで順次分岐されて連通している分岐樹脂流路が形成されている流路形成部材と、
前記分岐樹脂流路の前記樹脂流入口に溶融樹脂を圧送する樹脂圧送機構と、
前記分岐樹脂流路の複数の前記樹脂流出口の各々に個々に連通する複数のオーバーモールドキャビティを各々形成する複数のオーバーモールド金型と、
複数の前記オーバーモールド金型の各々の前記オーバーモールドキャビティに前記溶融樹脂でオーバーモールド成型されるインサートボトルを保持する複数のボトル保持機構と、
を有する樹脂成型装置。
【請求項2】
前記溶融樹脂を前記樹脂流出口から前記オーバーモールド金型に注入するホットランナーノズルと、
前記オーバーモールドキャビティに保持された前記インサートボトルの内部に流体を圧送する流体圧送機構と、
前記ホットランナーノズルから前記オーバーモールド金型に流入する前記溶融樹脂の温度と流速と圧力との少なくとも一つと前記流体圧送機構が前記インサートボトルに圧送する前記流体の温度と流速と圧力との少なくとも一つとを同期させて制御する成型制御手段と、
を有する請求項1に記載の樹脂成型装置。
【請求項3】
前記成型制御手段は、前記ホットランナーノズルにより前記オーバーモールド金型に流入する前記溶融樹脂の温度と流速と圧力との少なくとも一つを制御する請求項2に記載の樹脂成型装置。
【請求項4】
前記成型制御手段は、複数の前記オーバーモールド金型ごとに前記ホットランナーノズルにより前記溶融樹脂の温度と流速と圧力との少なくとも一つを制御するとともに複数の前記インサートボトルごとに前記流体圧送機構で前記流体の温度と流速と圧力との少なくとも一つを制御する請求項2または3に記載の樹脂成型装置。
【請求項5】
前記ホットランナーノズルは、事前に所定容量に計量された前記溶融樹脂を射出する樹脂射出機構を、さらに有し、
前記成型制御手段は、前記ホットランナーノズルにより複数の前記オーバーモールド金型ごとに射出する前記溶融樹脂を所定容量に調整する請求項2ないし4の何れか一項に記載の樹脂成型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−264673(P2010−264673A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118278(P2009−118278)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】