説明

樹脂組成物、プリプレグ及び金属張積層板

【課題】鉛フリーはんだを使用したプリント配線板の製造工程において、基板の膨れ等の不具合発生が少なく、かつ、基板の接続信頼性、絶縁信頼性が良好であり、また、基板の打抜き加工性が良好である樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を用いたプリプレグ、金属張積層板を提供する。
【解決手段】 エポキシ樹脂配合物と、多官能型硬化剤と、無機充填材とを含む樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂配合物は、(A)テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂4〜8質量%と、(B)前記(A)成分以外の、軟化点が70℃以上の多官能型エポキシ樹脂13〜18質量%と、(C)繰返し構造単位n=0の液状エポキシ樹脂2〜8質量%と、(D)臭素含有樹脂を残部含み、かつ、前記エポキシ樹脂配合物中の臭素含有量が11.5〜14.5質量%であり、前記エポキシ樹脂配合物100質量部に対して、前記(E)多官能型硬化剤28〜36質量部を含み、さらに前記樹脂組成物中、前記(F)無機充填材25〜35質量%を含むことを特徴とする樹脂組成物、この樹脂組成物を含むプリプレグ、及び金属張積層板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、プリプレグ及び金属張積層板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器に用いられているプリント配線板のはんだ付けには、従来、鉛−錫を用いた共晶はんだが使用されていた。しかし、環境問題の高まりと共に、鉛の人体、環境への影響を考慮し、脱鉛化が急速に進行している。
一般的に、鉛フリーはんだの溶融温度は、従来の鉛−錫系よりも高くなっている(210〜230℃)。そのため、従来、一般的に使用されていたプリント配線板用材料(FR−4)では、リフロー工程での基板の膨れの発生または絶縁信頼性が低下するという問題があった。
このため、基板に使用する樹脂のガラス転移温度(Tg)を高くするかまたは充填材の凝集を防ぎながら充填材を多量に添加するといった手法がとられている(下記特許文献1を参照)。
しかし、従来の高Tgの基板では、260℃前後のリフロー試験において膨れが発生してしまうという問題点、或いはシリカに代表される高硬度の充填材を高充填すると、打抜き加工性の悪化及びドリル磨耗量が大幅に上昇し、プリント配線板製造工程において、ドリル磨耗分が混入するといった問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開2002−80624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記の従来技術の問題点を解消し、鉛フリーはんだを使用したプリント配線板の製造工程において、基板の膨れ等の不具合発生が少ない樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記樹脂組成物を用いたプリプレグを提供することを目的とする。さらに本発明は、前記プリプレグを含む、接続信頼性、絶縁信頼性、及び打抜き加工性が良好である金属張積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を続けた結果、テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、前記以外の多官能型エポキシ樹脂、繰返し構造単位n=0の液状エポキシ樹脂、多官能型硬化剤、及び無機充填材を含む樹脂組成物であって、前記樹脂組成物は臭化物を含み、かつ、前記無機充填材と臭素との含有量を特定範囲とした樹脂組成物が上記目的を達成しうることを見出した。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、
1.エポキシ樹脂配合物と、多官能型硬化剤と、無機充填材とを含む樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂配合物は、(A)テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂4〜8質量%と、(B)前記(A)成分以外の、軟化点が70℃以上の多官能型エポキシ樹脂13〜18質量%と、(C)繰返し構造単位n=0の液状エポキシ樹脂2〜8質量%と、(D)臭素含有樹脂残部と、を含み、かつ、前記エポキシ樹脂配合物中の臭素含有量が11.5〜14.5質量%であり、前記エポキシ樹脂配合物100質量部に対して、前記(E)多官能型硬化剤28〜36質量部を含み、さらに前記樹脂組成物中、前記(F)無機充填材25〜35質量%を含むことを特徴とする樹脂組成物、
2.前記(F)無機充填材がシリカである上記1記載の樹脂組成物、
3.前記シリカの平均粒径が0.5〜5.0μmであり、かつ比表面積が3.3〜6.1m2/gである上記2記載の樹脂組成物、
4.前記1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に含浸してなることを特徴とするプリプレグ、
5.前記基材がガラス織布である上記4に記載のプリプレグ、
6.前記4または5に記載のプリプレグ、またはそれを含む積層体の両面、もしくは片面に金属層が形成されてなることを特徴とする金属張積層板、
に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る樹脂組成物は、鉛フリーはんだを使用したプリント配線板の製造工程において、基板の膨れ等の不具合発生が少ない。また、前記樹脂組成物を用いたプリプレグ、及び前記プリプレグを含む金属張積層板は、接続信頼性、絶縁信頼性、及び打抜き加工性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂配合物と、多官能型硬化剤と、無機充填材とを含む樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂配合物は、(A)テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂4〜8質量%と、(B)前記(A)成分以外の、軟化点が70℃以上の多官能型エポキシ樹脂13〜18質量%と、(C)繰返し構造単位n=0の液状エポキシ樹脂2〜8質量%と、(D)臭素含有樹脂を残部含み、かつ、前記エポキシ樹脂配合物中の臭素含有量が11.5〜14.5質量%であり、前記エポキシ樹脂配合物100質量部に対して、前記(E)多官能型硬化剤28〜36質量部を含み、さらに前記樹脂組成物中、前記(F)無機充填材25〜35質量%を含むことを特徴とする樹脂組成物である。
【0009】
本発明に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂配合物と、多官能型硬化剤と、無機充填材とを含む樹脂組成物であるが、前記エポキシ樹脂配合物として、以下の(A)〜(D)成分を含むものである。
先ず、本発明で用いられる(A)成分は、テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂である。このテトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂のテトラキスヒドロキシフェニルエタンの具体例としては、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス[(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル]エタン等が挙げられる。
これらのテトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂はそれぞれ単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記樹脂配合物における(A)成分の含有量は4〜8質量%、好ましくは5〜7.5質量%とするが、この含有量が4質量%未満であると、良好な耐熱性が得られなくなり、逆に8質量%を超えると、加工性が悪化する傾向となり、好ましくない。
【0010】
本発明で用いられる(B)成分は前記(A)成分以外の、軟化点が70〜140℃の多官能型エポキシ樹脂であるが、その具体例としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、またはトリフェニルグリシジルエーテルメタン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;テトラグリシジルメタキシレンジアミン型エポキシ樹脂等の4官能型エポキシ樹脂;等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また2種以上を組み合わせてもよい。
この多官能型エポキシ樹脂は、架橋密度を適度に高くする作用を発揮する。
前記樹脂配合物における(B)成分の含有量は13〜18質量%、好ましくは15〜18質量%とする。その含有量が13質量%未満となると、ガラス転移温度(以下、Tgと呼ぶことがある。)が低下し、逆に18質量%を超えると、加工性が劣化する傾向となる。
【0011】
本発明で用いられる(C)成分は、繰返し構造単位n=0の液状エポキシ樹脂であり、その例としては、ビスフェノール類とエピクロルヒドリン類とのモル比が1:2のもの、より具体的には、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールSエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂等が挙げられる。また、ビフェニル型エポキシ樹脂等も挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また2種以上を組み合わせてもよい。
本発明においては、(C)成分のエポキシ樹脂は常温で液状であるために、本発明の樹脂組成物から基板を作製すると、加工性が優れたものとなる。
前記樹脂配合物における(C)成分の含有量は2〜8質量%、好ましくは3〜7質量%とする。この含有量が2質量%未満となると、加工性向上効果が少なくなり、逆に8質量%を超えると、Tgの低下や樹脂の流動性が大きくなりすぎ、成形性が悪化する傾向となる。
【0012】
本発明で用いられる(D)成分は臭素含有樹脂である。
このような樹脂としては、二価フェノールの臭素化物とエピクロルヒドリンとの固形の縮合反応物等が挙げられる。ここで、2価フェノールとしては、様々なものを挙げることができるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、及び両者の中間的性格を有するビスフェノールADなどが挙げられ、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で特にビスフェノールAが好適である。
(D)成分の含有量は、(A)〜(C)成分のエポキシ樹脂配合物に、さらに(D)成分を残部含有することで、配合物が100質量%となるように調整する。
【0013】
本発明に係る前記エポキシ樹脂配合物中の臭素含有量は11.5〜14.5質量%、好ましくは11.5〜14.0質量%とすると、良好な難燃性と耐熱性が得られる。
逆に臭素含有量が11.5質量%未満であると、難燃性を確保できなくなる傾向が出るため好ましくなく、また一般的に、臭素含有樹脂は熱分解温度が低いため、臭素含有率が14.5質量%を超えると、高温時に臭素含有ガスが発生し、耐熱性が低下するため、好ましくない。
【0014】
本発明で用いられる(E)成分は多官能型硬化剤であり、例えば、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、フェノールビフェニレンノボラック型、及びこれらの臭化物等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また2種以上を組み合わせてもよい。
前記樹脂配合物100質量部に対して、前記(E)成分の含有量は28〜36質量%、好ましくは29〜35質量%とする。この含有量が28質量%未満となると、硬化物の耐熱性が悪化し、逆に36質量%を超えると、加工性が悪化するため、好ましくない。
なお、(D)成分として、軟化点が120〜130℃の範囲内のものを選択すると、Tgの低下がなく、基板の接続信頼性と絶縁信頼性が確保でき、かつ加工性も良好となるので、好ましい。
【0015】
本発明で用いる(F)成分は無機充填材であり、硝酸アルミニウム水和物、硫酸カルシウム水和物、シュウ酸カルシウム水和物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、クレー、ガラス、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、アルミナ、シリカ、酸化チタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また2種以上を同時に用いてもよい。
上記無機充填材のうち、耐熱性、基材の熱膨張性を考慮すると、シリカを使用することが望ましい。
また、本発明の全樹脂組成物中における無機充填材の含有量は25〜35質量%、好ましくは25〜34質量%とすることにより、低熱膨張特性、高い外層ピール強度、及び低いドリル磨耗量等の特性が得られる。
逆に樹脂組成物中のシリカ含有量が25質量%未満であると接続信頼性を確保するための低熱膨張特性を得られにくくなり、また、35質量%を超えると外層ピール強度の低下或いはドリル磨耗量の増加が認められる。
また、無機充填材の体積平均粒径及び比表面積は、適宜選択すればよいが、例えばシリカの場合、通常、体積平均粒径0.5〜5.0μm、比表面積3.3〜6.1m2/gの範囲のものを選択すればよい。
無機充填材の体積平均粒径及び比表面積が上記範囲内とすれば、シリカの凝集、沈降を抑えることができ、良好なワニス状態を得ることができるので、望ましい。
【0016】
本発明では、各種のエポキシ樹脂成分と多官能型硬化剤成分を使用するが、これらのうち、少なくとも1種の成分は臭化物を含有するものを採用することが好ましい。
【0017】
本発明の樹脂組成物においては、さらに硬化促進剤を用いることができる。
硬化促進剤としては、特に制限はないが、例えば、イミダゾール系化合物、有機リン含有化合物、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が用いられ、これらから単独または2種以上が選択される。
硬化促進剤の含有量は、特に制限はないが、上記樹脂組成物中のエポキシ樹脂100質量部に対して、通常、0.05〜1.00質量部程度である。
【0018】
イミダゾール系化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4、5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2、4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2、4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等が挙げられる。
これらイミダゾール系化合物は、マスク剤によりマスクされていてもよい。
前記マスク化剤としては、アクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、メラミンアクリレート等が挙げられる。
有機リン系化合物としては、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、ブチルホスフィン、フェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン/トリフェニルボラン錯体、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。
第2級アミンとしては、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−アルキルアリールアミン、ピペラジン、ジアリルアミン、チアゾリン、チオモルホリン等が挙げられる。
第3級アミンとしては、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、溶剤で希釈してワニス化して使用することが好ましい。
このとき使用される溶剤の種類は特に制限はなく、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と言う。)、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;N−メチルピロリドン、N、N'−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、メチルセロソルブアセテート等のエステル系溶剤;ブチロニトリル等のニトリル系溶剤等があり、これらは単独で用いても2種以上を混合してもよい。
【0020】
また、ワニスの固形分濃度は特に制限はなく、樹脂組成や含有量等により適宜変更できるが、プリプレグを作製する場合は、通常、50〜80質量%、好ましくは50〜70質量%に調整すると、適度のワニス粘度が得られ、それを用いたプリプレグの樹脂分も十分となり、外観不良等もないので望ましい。
【0021】
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物を基材に含浸させてなるものである。
基材としては、金属箔張積層板や多層プリント配線板を製造する際に用いられるものであれば、特に制限されないが、通常、織布や不織布等の繊維基材が用いられる。
繊維基材の材質としては、ガラス、アルミナ、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維;アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維等およびこれらの混抄系があり、特にガラス繊維の織布が好ましく用いられる。この場合、ガラス織布の厚さは20〜250μm程度とする。
【0022】
樹脂組成物を基材に含浸させる方法としては、ワニス中に基材を漬けて含浸させる方法や、基材表面に樹脂組成物を塗布する方法等が挙げられる。
ワニスの含浸量は、ワニス固形分と基材の総量に対して、ワニス固形分が35〜80質量%であることが好ましい。
【0023】
こうして樹脂組成物を基材に含浸させた後、80〜200℃の範囲で乾燥させて、プリプレグを製造する。
乾燥時間は、ワニスのゲル化時間との兼ね合いで特に制限はなく適宜選択されるが、ワニスに使用した溶剤が80質量%以上揮発する時間を選ぶことが好ましい。
【0024】
本発明の、金属張積層板は、通常130〜250℃、好ましくは150℃〜200℃の範囲の温度で、また通常0.5〜20MPa、好ましくは1〜8MPaの範囲の圧力下で、前記プリプレグまたはそれを含む積層体の両側、また葉片側に金属箔を重ねて、加熱加圧成形されて得られる。
加熱加圧成形の際の構成材としては、特に制限されるものではないが、銅箔付積層体、アルミ箔付積層体、離型フィルム(旭硝子製:アフレックス)等が用いられる。
このように、本発明の樹脂組成物から製造されたプリプレグ、及びそれを含む金属積層板は、鉛フリーはんだを用いた多層プリント配線板の製造工程において、基板の膨れ等の不具合発生が少なく、接続信頼性、絶縁信頼性、及び打ち抜き加工性に優れている。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0026】
実施例1
撹拌装置、コンデンサ、温度計を備えたガラスフラスコに、(A)テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂(エポキシ当量:200、ジャパンエポキシレジン株式会社製、エピコート1031S)5.9質量%、(B)フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量:178、ジャパンエポキシレジン株式会社製、エピコート154)17.6質量%、(C)ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:185、ジャパンエポキシレジン株式会社製、エピコート827)3.0質量%、(D)臭素含有樹脂(エポキシ当量:475、臭素含有量:21質量%、ジャパンエポキシレジン株式会社製、エピコート5046)73.5質量%、および(E)ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂硬化剤(ジャパンエポキシレジン株式会社製、YLH129)34.1質量%、並びに(F)シリカ(福島窯業株式会社製、F05−30、体積平均粒径4.2m、比表面積5.8m2/g)を樹脂組成物に対して25.1質量%、及び硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、2E4MZ)を樹脂配合物に対して0.1質量部を、それぞれMEK100質量部に溶解、希釈し、1時間室温(25℃)にて撹拌を行い、最終的に固形分60質量%の樹脂組成物ワニスになるようにMEKで調整した。
【0027】
このワニスを厚さ約100μmのガラス布(日東紡績株式会社製、スタイル2116、Eガラス)に含浸後、150℃で5分間乾燥して樹脂分50質量%のプリプレグを得た。
このプリプレグを16枚用い、得られた積層体の両側に12μmの銅箔を重ね、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で、厚さ、約1.6mmの銅張積層板を作製した。
【0028】
実施例2
(A)〜(F)成分の含有量を表1記載の含有量に変更した以外は、実施例1と同様にした。
【0029】
比較例1
(A)〜(F)成分の含有量を表1に記載の含有量とした以外は、実施例1と同様にした。
【0030】
比較例2
その他の樹脂成分として、さらにビスフェノールA型固形樹脂(エポキシ当量:475、軟化点:64℃、ジャパンエポキシレジン株式会社製、エピコート1001)18.0質量%を添加し、かつ(A)〜(F)成分の含有量を表1に記載の含有量に変更した以外は実施例1と同様にした。
上記で作製した銅張積層板を用い、以下の(1)〜(4)の評価を行なった。
その結果を表1に示す。
【0031】
(1)5%熱分解温度
TGA Q500(TA Instrument製TGA(Thermo Gravitimetry Analyzer))を用いて、5%熱分解温度を測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
TMA 2940〔Dupont社製、TMA(Thermal Material Analyser)〕を用いてガラス転移温度を測定した。
(3)スルーホール接続信頼性
ドリル直径φ0.4mm、めっき厚み20μm、ランド径φ0.6mmのテストパターンを作製し、「−55℃、30分→室温→150℃、30分→室温」を1サイクルとし、スルーホール接続抵抗値が10%低下するまでのサイクル数をカウントした。
試験は100サイクルを1セットとして実施した。500サイクルの試験をしてもスルーホールの接続抵抗値の低下が10%未満のとき、500cycleOKと記載した。一方、200サイクルの試験をしている間に前記接続抵抗値が10%以上低下したときには、200cycleNGと記載した。
(4)基板打抜き剥離面積(白化量)
打抜き用超硬合金金型により、上下型の抜きクリアランスを25μmとして、80トンプレスによって基板を打抜き、その時の基板打抜き剥離面積(白化量)を測定した。
(5)絶縁信頼性
ドリル径φ0.4mm、穴壁間0.3mmのTH−TH間電食性評価パターンにおいて、85℃80%、DC100Vを印加し、絶縁抵抗値が108Ωを下回るまで測定を実施した。なお、評価基板は260℃リフロー2回処理を実施した基板を使用した。
【0032】
【表1】

【0033】
表1から明らかなように、実施例1〜2の銅張積層板は、耐熱性に優れ、また、スルーホール接続信頼性、打抜き白化量のバランスに優れることが判明した。
これに対し、比較例1の銅張積層板は、スルーホール接続信頼性には優れるが、絶縁信頼性、耐熱性、打抜き白化量が劣ることが判明した。
また、比較例2の銅張積層板は、耐熱性、絶縁信頼性、打抜き白化量には優れるが、スルーホール接続信頼性が劣ることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、鉛フリーはんだを使用したプリント配線板の製造工程において、基板の膨れ等の不具合発生が少なく、基板の接続信頼性や絶縁信頼性が良好であり、また基板の打抜き加工性が良好である樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたプリプレグ及び金属張積層板を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂配合物と、多官能型硬化剤と、無機充填材とを含む樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂配合物は、
(A)テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂4〜8質量%と、
(B)前記(A)成分以外の、軟化点が70℃以上の多官能型エポキシ樹脂13〜18質量%と、
(C)繰返し構造単位n=0の液状エポキシ樹脂2〜8質量%と、
(D)臭素含有樹脂残部と、を含み、
かつ、前記エポキシ樹脂配合物中の臭素含有量が11.5〜14.5質量%であり、
前記エポキシ樹脂配合物100質量部に対して、前記(E)多官能型硬化剤28〜36質量部を含み、
さらに前記樹脂組成物中、前記(F)無機充填材25〜35質量%を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記(F)無機充填材がシリカである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記シリカの平均粒径が0.5〜5.0μmであり、かつ比表面積が3.3〜6.1m2/gである請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に含浸してなることを特徴とするプリプレグ。
【請求項5】
前記基材がガラス織布である請求項4に記載のプリプレグ。
【請求項6】
請求項4または5に記載のプリプレグ、またはそれを含む積層体の両面、もしくは片面に金属層が形成されてなることを特徴とする金属張積層板。

【公開番号】特開2009−215457(P2009−215457A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61525(P2008−61525)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】