説明

樹脂組成物およびフォトカプラーデバイス

【課題】生産性に優れ、組立工程におけるリードタイムを短縮し、電気特性および信頼性に優れた軽薄短小型フォトカプラーデバイスおよびそれを作製するための一次封止用紫外線硬化型樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)重量平均分子量5,000〜30,000の(メタ)アクリロイル基を有するポリマー又はオリゴマー、(B)ラジカル開始剤、(C)接着助剤
を必須成分とし、(A)の100質量部に対して、(B)が0.1〜20質量部であることを特徴とする多重封止電子デバイスの一次封止用紫外線硬化型樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重封止電子デバイスの一次封止用紫外線硬化型樹脂組成物およびそれを用いた、生産性に優れ、組立工程におけるリードタイムを短縮し、電気特性および信頼性に優れた軽薄短小型フォトカプラーデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多重封止型デバイスの封止は、一次封止側と二次封止側の物性を揃えた材料で行われることが多いが、フォトカプラーデバイスの場合は、同一パッケージ内にある発光素子と受光素子を透過率の高いインナー材にて一次封止し、その後、外乱光を遮蔽する(透過率が低い)アウター材で二次封止する工程が一般的である(たとえば、特許文献1参照)。
フォトカプラーデバイスは、電気的絶縁性を保ちながら光による通信がとれるため、スイッチング機能を利用して様々な分野に使用されている。
フォトカプラーデバイスの形状には、大別すると、発光素子の発光面に受光素子の受光面が向き合う対向型フォトカプラーデバイスと、発光素子の発光面と受光素子の受光面が平面に並ぶ反射型フォトカプラーデバイスがある。
対向型フォトカプラーデバイスでは、発光素子と受光素子の距離を近づけることで変換効率が向上するが、発光素子側端子と受光素子側端子の電気的絶縁性は落ちていくため、端子間距離を短くするには限界があるので、近年の電子部品の軽薄短小化に対応した軽薄短小型フォトカプラーデバイスの設計には一次封止側のインナー材の絶縁特性が必要であり、かつ、一次封止側のインナー材と二次封止側のアウター材との接着性が高くないと吸湿時に界面の水分の影響でリーク不良が発生する恐れがある(たとえば、特許文献2参照)。
特にリードフレームが銅フレームの場合は顕著であり、一次封止側の熱硬化、二次封止側の熱硬化と2段階の熱履歴によりフレーム表面の酸化膜が成長し、特に二次封止側の材料はリードフレームとの密着性が弱くなってしまう。このため、二次封止の前にプラズマ洗浄を行ったり、銅フレームにパラジウムなどのめっきをすることもあるが、いずれも生産コスト増につながっていた。
二重封止型フォトカプラーデバイスのような電子デバイスにおいて、一次封止用樹脂と二次封止用樹脂との種類を変えたものは上記以外にも種々提案されている(たとえば、特許文献3〜5)。
特許文献3では、第1封止層の外周に第2封止層が形成された2層構造の封止層によって発光素子および受光素子を封止してなる反射型フォトカプラーデバイスにおいて、第1封止層として、シリコーンゲル、通常の透明エポキシ樹脂組成物等の形成材料を用い、第2封止層として、TiO2 を主成分とする無機粒子含むエポキシ樹脂組成物が用いられている。
また、特許文献4では、フォトカプラーデバイスではなく光半導体デバイスであるが、一次封止用樹脂としてシリコーン樹脂のような軟質樹脂を使用し、二次封止用樹脂として一次封止用樹脂より硬質の樹脂を使用するものである。
しかしながら、特許文献3や4に記載の構成では、シリコーンゲルや軟質の樹脂が硬質の樹脂に取囲まれている状態で体積膨張を行うので、高温の雰囲気下では、特性劣化の要因となる問題点がある。
反射型フォトカプラーデバイスでは対向型フォトカプラーデバイスと比較して、端子間距離を保ちながら軽薄化に対応することができる(例えば、特許文献5参照)。
しかしながら、二次封止側の樹脂の反射率が低いと対向型フォトカプラーデバイスに比べて変換効率が悪くなってしまうという欠点がある。
また、反射型または対向型いずれの形状にも適用できるフォトカプラーデバイスが開示(たとえば、特許文献6参照)されているが、二次封止側の樹脂厚を薄くしすぎると外乱光による誤動作を引き起こす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−37008号公報
【特許文献2】特開平8−288539号公報
【特許文献3】特開2003−192875号公報
【特許文献4】特開2004−363454号公報
【特許文献5】特開2008−150437号公報
【特許文献6】特開2009−29926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の欠点を解消するためになされたもので、生産性に優れ、組立工程におけるリードタイムを短縮した多重封止フォトカプラーデバイスの一次封止用紫外線硬化型樹脂組成物および、電気特性および信頼性に優れた軽薄短小型多重封止フォトカプラーデバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成しようと鋭意研究を重ねた結果、特定の紫外線硬化型樹脂組成物を用いるだけで、生産性に優れ、組立工程におけるリードタイムを短縮した多重封止フォトカプラーデバイスの一次封止材および、電気特性および信頼性に優れた軽薄短小型多重封止フォトカプラーデバイスが得られることを見いだし、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は下記
(1)(A)重量平均分子量5,000〜30,000の(メタ)アクリロイル基を有するポリマー又はオリゴマー
(B)ラジカル開始剤
(C)接着助剤
を必須成分とし、(A)の100質量部に対して、(B)が0.1〜20質量部であることを特徴とする多重封止電子デバイスの一次封止用紫外線硬化型樹脂組成物、
(2)前記(メタ)アクリロイル基を有するポリマー又はオリゴマーが分子の末端又は側鎖に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート、同エポキシ(メタ)アクリレート、または同ポリエステル(メタ)アクリレートのいずれかである上記(1)に記載の樹脂組成物、
(3)さらに、希釈剤を含む上記(1)または(2)に記載の樹脂組成物、
(4)さらに、架橋剤を含む上記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物、
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて、同一パッケージ内にある発光素子と受光素子を一次封止後、その外側をエポキシ樹脂組成物によって二次封止されてなるフォトカプラーデバイスおよび
(6)エポキシ樹脂組成物が白色エポキシ樹脂組成物である上記(5)に記載のフォトカプラーデバイスを提供する。
【発明の効果】
【0006】
後で述べる実施例の説明および表の結果からも明らかなように、本発明の多重封止電子デバイスの一次封止用紫外線硬化型樹脂組成物は優れた密着性と透明性、耐熱性、生産性を有し、長期信頼性が要求される電気電子部品材料、光学部品材料、光半導体材料、特にフォトカプラーデバイスの分野における封止保護材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】対向型フォトカプラーデバイスのパッケージ断面図の例である。
【図2】反射型フォトカプラーデバイスのパッケージ断面図の例である。
【図3】蛍光含浸塗料の3つの染み込みモードを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において(メタ)アクリレートとはメタクリレートとアクリレートの両者を指す。また、単にアクリル系という場合はアクリル系とメタクリル系の両方を意味する。
本発明に用いる(A)成分である重量平均分子量5,000〜30,000の(メタ)アクリロイル基を有するポリマー又はオリゴマーは分子の末端又は側鎖に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート、同エポキシ(メタ)アクリレート、同ポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらは単独又は併用して用いることができる。
本発明における重量平均分子量とは、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)により測定され、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
【0009】
まず、エポキシ(メタ)アクリレートについて説明する。
例えば、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ(メタ)アクリレートは、グリシジルメタクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレートのようなエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物2モルと両末端にカルボキシル基を有する重量平均分子量5000弱〜30000弱の化合物(たとえば、両末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂)1モルとを反応させることにより調製することができる。
また、グリシジルメタクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレートのようなエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸エステルのようなラジカル重合性不飽和単量体をラジカル重合して側鎖にエポキシ基を有する重量平均分子量5000弱〜30000弱のアクリル系ラジカル共重合体を調製し、次いで、同アクリル系ラジカル共重合体の側鎖に形成されたエポキシ基に(メタ)アクリル酸のような不飽和カルボン酸を反応させることにより側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ(メタ)アクリレートを調製することができる。
側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ(メタ)アクリレートは、上記後者の調製法において、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物と不飽和カルボン酸を入れ替えても調製することができる。
【0010】
次に、ウレタン(メタ)アクリレートについて説明する。
ウレタン(メタ)アクリレートは、たとえば、両末端に水酸基を有するポリエステル化合物やポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールのような重量平均分子量5000弱〜30000弱のポリエステル化合物またはポリエーテル化合物1モルとトリレンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネートのような有機ジイソシアネート化合物2モルとを反応させて両末端に―NCO基を有するウレタンプレポリマーまたはオリゴマーを調製し、次いで、同ウレタンプレポリマーまたはオリゴマーの両末端の―NCO基に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物の水酸基とを反応させることにより調製することができる。
【0011】
次に、ポリエステル(メタ)アクリレートについて説明する。
両末端にカルボキシル基を有する重量平均分子量5000弱〜30000弱のポリエステル化合物1モルとエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物2モルとを反応させることにより、両末端に(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量5000〜30000のポリエステル(メタ)アクリレートを調製することができる。
または、両末端にカルボキシル基を有する重量平均分子量5000弱〜30000弱のポリエステル化合物1モルと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物2モルとを脱水エステル化することによっても調製することができる。
あるいは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸エステルのようなラジカル重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルのようなラジカル重合性不飽和単量体とラジカル重合して側鎖に水酸基を有する重量平均分子量5000弱〜30000弱のアクリル系ラジカル共重合体を調製し、次いで、同アクリル系ラジカル共重合体の側鎖に形成された水酸基に(メタ)アクリル酸のような不飽和カルボン酸を反応させて脱水エステル化することによって側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重量平均分子量5000〜30000のポリエステル(メタ)アクリレートを調製することができる。
さらに、アジピン酸やコハク酸のような脂肪族多価カルボン酸またはフタル酸のような芳香族多価カルボン酸やシクロへヘキサンジカルボン酸のような脂環族多価カルボン酸にエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドのようなアルキレンオキサイドを付加して得られる重量平均分子量5000弱〜30000弱のポリマーまたはオリゴマーと(メタ)アクリル酸のような不飽和カルボン酸とのエステル化することによっても調製することができる。
(A)成分の使用量は、以下に述べる(B)および(C)成分の使用量の説明において述べる。
【0012】
次に、(B)成分について述べる。
本発明に用いる(B)成分であるラジカル開始剤には光ラジカル開始剤、熱ラジカル開始剤などが挙げられ、これらは単独又は併用して用いることができる。その1種として400nm以上に吸収波長を有する化合物を用いることが好ましい。例えば2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,6−ジクロルベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等の(ビス)アシルホスフィンオキシドおよび(ビス)アシルホスフィン酸エステル類;1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−ジフェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ジフェノキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、アゾビスイソブチロニトリル、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ3,5−トリメチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシラウリレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオキシパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。またこれらのラジカル開始剤には、本発明の目的に反しない限度においてなど、その他の一般公知の光ラジカル開始剤を併用することができる。これらのラジカル開始剤の添加量は上記(A)成分の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは、1〜10質量部である。
(B)成分の添加量が0.1質量部未満では、(A)成分の硬化が十分に進行せず、20質量部より多く添加すると無駄になるだけでなく、硬化物の物性が低下するので好ましくない。
【0013】
次に、(C)成分について述べる。
本発明に用いる(C)成分である接着助剤としては、シランカップリング剤やチオール系カップリング剤、チタネートカップリング剤などが挙げられ、これらは単独又は併用して用いることができる。例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの接着助剤の添加量は上記(A)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは、1〜10質量部である。
(C)成分の添加量が0.1質量部未満では、接着性向上効果が十分に発揮されず、20質量部より多く添加すると無駄になるだけでなく、硬化物の物性が低下するので好ましくない。
【0014】
本発明の多重封止電子デバイスの一次封止用紫外線硬化型樹脂組成物においては粘度を調整するために、通常、反応性希釈剤を使用してもよい。
反応性希釈剤としては、単なる溶剤ではなく、樹脂成分として硬化物中に組み込まれる(メタ)アクリロイル基を1個有する各種単量体を使用することが好ましい。
(メタ)アクリロイル基を1個有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸メチルのような各種アルキル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
希釈剤の使用量は使用する(A)成分の分子量(すなわち、粘度)によって異なるが、通常100質量部に対して50〜200質量部程度である。
希釈剤の使用量が50質量部未満では(A)成分である(メタ)アクリロイル基を有するポリマー又はオリゴマーの粘度を低下させる効果が低く、封止される発光素子や受光素子のような電子デバイスの部品の間隙に十分に流れ込まないため、硬化物にボイドが発生することがあり、逆に希釈剤の使用量が200質量部を超えると硬化が十分に進行せず、所望の性状を有する硬化樹脂が得られない場合があり、いずれも好ましくない。
【0015】
また、本発明の多重封止電子デバイスの一次封止用紫外線硬化型樹脂組成物においては硬化物に架橋構造を形成させて弾性率を向上させるため、架橋剤を使用してもよい。
架橋剤としては、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体が使用される。
(メタ)アクリロイル基を2個有する単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレートのようなアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリオキシアルキレン−グリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
4個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
5個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
架橋剤の使用量は(A)成分100質量部に対して通常30〜150質量部程度である。架橋剤の使用量が30質量部未満では架橋構造を形成させる効果が少なく、架橋剤の使用量が150質量部を超えると架橋構造が多くなるため硬くなり過ぎて硬化物が脆くなるので、いずれも好ましくない。
【0019】
また、本発明の多重封止電子デバイスの一次封止用紫外線硬化型樹脂組成物においては前述した(A)〜(C)の必須成分、および、必要に応じて添加される希釈剤、架橋剤以外に、本発明の目的に反しない限度において、また必要に応じて、例えば増感剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、溶剤等を適宜添加配合することができる。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、一般的には攪拌混合によりの調製される。このようにして得られた紫外線硬化型樹脂組成物は、フォトカプラーデバイスをはじめとする電子デバイスの封止、被覆、絶縁等に適用すれば、優れた生産性と密着性などの特性を付与することができる。
【0020】
本発明の多重封止電子デバイスにおいては、一次封止された後、二次封止が行なわれるが、二次封止は、通常、樹脂成分としてエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物を用いて行なわれる。
エポキシ樹脂としては、特に制限されることなくグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、より具体的にはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型水素添加エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂が主として用いられ、トリグリシジルイソシアネート、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ビフェノール型エポキシ樹脂又は4,4'−ビフェノール型エポキシ樹脂のようなビフェノール型エポキシ樹脂、及びフェノールジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂の芳香環を水素化したエポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂等を使用し得る。
【0021】
中でも、所望の光反射率が得られるという観点から前記各種エポキシ樹脂に酸化チタン、水酸化マグネシウム及び硫酸バリウムから選ばれる少なくとも一つを混合した白色エポキシ樹脂組成物として用いることが好ましい。
酸化チタンは、その結晶構造からルチル型、アナターゼ型に大別することができるが、いずれの構造のものでもよい。また、その粒子径については特に制限はない。この酸化チタンは、その表面をシラン系、アルミネート系、チタネート系、ジルコネート系などのカップリング剤等で処理したものであってもよい。
一方、酸化マグネシウムや硫酸バリウムは、様々な粒径のものや、表面処理されたものがあるが、所望の光反射率が得られるものであればよく、その種類については特に制限はない。
白色エポキシ樹脂組成物においては、この酸化チタン等は、上記各種エポキシ樹脂100質量部に対して、5〜90質量部の割合で配合することが好ましい。この酸化チタン等の配合量が上記範囲内であれば、他の物性を損なうことなく、所望の光反射率を実現することができる。より好ましい酸化チタン等の配合量は、20〜60質量部である。
【0022】
エポキシ樹脂組成物は、通常、硬化剤および硬化促進剤を用いて熱硬化させる。
硬化剤としては、酸無水物系硬化剤やフェノール樹脂系硬化剤が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物などが挙げられ、これらの中でもメチルヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。
フェノール樹脂系硬化剤としては、分子内にフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を指し、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシリレン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、ナフトールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられる。
硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基と硬化剤に含まれる酸無水物基または水酸基との割合が1対1を中心として0.7対1〜1対0.7の範囲となるようにするのが好ましい。
硬化促進剤としては、エポキシ基とカルボン酸無水物基やフェノール性水酸基との反応を促進するものであればよく、一般に封止用材料に使用されているものを広く使用することができ、例えば、トリメチルアミンのような第3級アミン類またはこの誘導体、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のようなジアザビシクロ化合物、トリフェニルホスフィンのような有機ホスフィン化合物、ジメチルベンジルアミンのような第2級アミン類、2−メチルイミダゾールのようなイミダゾール類等が挙げられる。これらは単独でも混合して用いても良い。硬化促進剤は全組成物の1質量%以下の割合で配合される。
【0023】
また、本発明のフォトカプラーデバイスは、前記の多重封止電子デバイスの一次封止用紫外線硬化型樹脂組成物(以下、一次封止材と記載する)を用いて発光素子や受光素子を一次封止し、次いで、その外側を前記エポキシ樹脂組成物(以下、二次封止材と記載する)にて二次封止することにより容易に製造することができる。
その具体的な方法は、以下の通りである。
まず、前記一次封止材を発光素子や受光素子にディスペンス塗布後、露光機で硬化させて一次封止する。次いで、前記二次封止材を用いてトランスファ成形機などにより熱硬化して二次封止する。次いで、バリ取り、めっき、T/F(トリム・フォーム)などの公知の工程を経てフォトカプラーデバイスが得られる。
本発明の多重封止電子デバイスの一次封止材は、前述した特定の(A)〜(C)成分を用いるだけで、密着性に優れたフォトカプラーデバイスの一次封止物を提供することができる。そして、二次封止工程を含む組立工程におけるリードタイムが短縮され、生産性に優れたフォトカプラーデバイスを提供することができ、同フォトカプラーデバイスは電気特性および信頼性に優れた軽薄短小型のものである。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において「%」とは「質量%」を意味する。
【0025】
[実施例1〜4、比較例1〜5]
下記表1に示す実施例1〜4および比較例1〜5に記載の配合比率で市販の(メタ)アクリロイル基を有するポリマー又はオリゴマー、ラジカル開始剤、接着助剤等を混合して各成分が均一になるまで攪拌し、一次封止材を調製した。
使用した材料は下記の通りである。
成分(A)
根上工業(株)製の無黄変型2官能ウレタンアクリレート(UN−7600、Mw:11,500)
根上工業(株)製の無黄変型2官能ウレタンアクリレート(UN−7700、Mw:20,000)
比較用成分(A′)
根上工業(株)製の無黄変型2官能ウレタンアクリレート(UN−6301、Mw:33,000)
ダイセルサイテック(株)製の2官能ウレタンアクリレート(EBECRYL270、Mw:1,500)
希釈剤
日立化成(株)製の1官能アクリレート(ジシクロペンタニルアクリレート、分子量206.3、表1中ではFA−513Aと記載)
架橋剤
日本化薬(株)製の3官能アクリレート(トリメチロールプロパントリアクリレート、分子量:296、表1中ではTMPTAと記載)
ラジカル開始剤(B)
ESACURE製のフォスフィンオキサイドとアルキルフェノンのブレンド系光ラジカル開始剤、KTO46
Ciba社製のアルキルフェノン系光ラジカル開始剤、イルガキュア907
Ciba社製のアルキルフェノン系光ラジカル開始剤、イルガキュア369
比較用開始剤(B′)
ADEKA社製の比較用オニウム塩系カチオン開始剤、SP150
接着助剤(C)
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のシランカップリング剤、TSL8370
増感剤
みどり化学社製のクマリン系ラジカル増感剤、BC
消泡剤
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のシリコーン系消泡剤、TSA720
酸化防止剤
ソマール社製のフェノール系酸化防止剤、アイオノール
【0026】
<試験方法および測定方法>
硬化条件:UV露光機〔ミカサ社製、MA60〕、6,000mJ/cm2照射、室温下酸素阻害防止用カバーなし、試験片厚1mm
1)一次封止材および同硬化物の外観:目視試験
2)一次封止材の硬化性:液状から固体状になるかの確認(○:硬化、×:未硬化)
3)同硬化物の表面タック性:指触試験(++:タックフリー、−:未硬化)
4)同硬化物の密着性:せん断接着試験(○:10MPa以上、×:10MPa未満)
5)同硬化物の弾性率:DMA(SII社製、動的年弾性測定装置)
6)同硬化物の光線透過率:400nmUV光透過率、試験片厚1mm
表1に一次封止材における各成分の配合組成を、表2に一次封止材の特性および同硬化物の主な物性を示した。
【0027】
[調製例1および2]
表3に示す各成分の配合組成で二次封止材であるエポキシ樹脂組成物として白色エポキシ樹脂組成物および黒色エポキシ樹脂組成物を調製した。表3に同硬化物の物性およびその測定方法を併せて記載した。
【0028】
[実施例5〜9および比較例6〜8]
各一次封止材または二次封止材を用いて多重封止電子デバイスを作製し、接着性および耐湿信頼性を測定した。それらの結果を表4に示す。
<多重封止電子デバイスの作製>
SOP16(Cuフレーム)上に置かれたChip(Chip size 2.5×2.5mm)上に実施例5〜9および比較例6〜7の一次封止材をポッティング後、UV露光機〔ミカサ社製、MA60〕を用いて、室温下、酸素阻害防止用カバーなしの状態で6,000mJ/cm2で照射することにより硬化させた。次いで、各例の二次封止材を用いて封止し、175℃×2分でトランスファ成形することにより多重封止電子デバイスおよび比較用の多重封止電子デバイスを作製した。
比較例8においては、熱硬化型シリコーンゲルを一次封止材として用い、150℃×30分で熱硬化させた後、二次封止材で封止し、それを175℃×2分でトランスファ成形することにより比較用の多重封止電子デバイスを作製した。
バリとり、はんだめっき、T/F工程を経た後、30℃×60%×168時間吸湿後に260℃×10秒のはんだ浸漬を行い、SOP16タイプのパッケージを作製し、特性試験を行った。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

【0033】
表4から明らかなように、(メタ)アクリロイル基含有オリゴマー又はポリマーの重量平均分子量が5,000未満では、耐熱性、耐湿性、接着性が劣っており、50,000を超えると高粘度のため作業性、加工性が低下する。また、表1から明らかなように、ラジカル開始剤の添加量が0.1質量部未満では硬化性が悪く、10質量部を超えると硬化性がむしろ低下し始め、一次封止材および同硬化物共に白濁し透明性が低下する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の多重封止電子デバイスの一次封止用紫外線硬化型樹脂組成物は長期信頼性が要求される電気電子部品材料、光学部品材料、光半導体材料、特にフォトカプラーデバイスの分野における封止保護材料として用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1:発光素子
2:受光素子
3:一次封止材
4:二次封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量5,000〜30,000の(メタ)アクリロイル基を有するポリマー又はオリゴマー
(B)ラジカル開始剤
(C)接着助剤
を必須成分とし、(A)の100質量部に対して、(B)が0.1〜20質量部であることを特徴とする多重封止電子デバイスの一次封止用紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリロイル基を有するポリマー又はオリゴマーが分子の末端又は側鎖に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート、同エポキシ(メタ)アクリレート、または同ポリエステル(メタ)アクリレートのいずれかである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、希釈剤を含む請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、架橋剤を含む請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて、同一パッケージ内にある発光素子と受光素子を一次封止後、その外側をエポキシ樹脂組成物によって二次封止されてなるフォトカプラーデバイス。
【請求項6】
エポキシ樹脂組成物が白色エポキシ樹脂組成物である請求項5に記載のフォトカプラーデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−153187(P2011−153187A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14575(P2010−14575)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】