説明

樹脂組成物

【課題】高精度な塗布性、接着性、低透湿性、接着耐久性に優れたエネルギー線硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】(A)エポキシ化合物、(B)ノボラック樹脂、(C)光カチオン重合開始剤、(D)フィラーを含有する樹脂組成物。(A)エポキシ化合物は(a−1)脂環式エポキシ化合物と(a−2)芳香環を有するエポキシ樹脂を含有する。(D)フィラーが扁平タルクである。さらに(E)シランカップリング剤を含有する。(B)ノボラック樹脂の軟化点は、50℃以上150℃以下である。(B)ノボラック樹脂の水酸基当量は、80〜130(g/eq)の範囲である。(D)フィラーの粒子径は、0.1〜20μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、樹脂組成物とそれを用いた接着剤及び硬化体に関する。例えば、エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクス分野では、機器が高性能化している。特に、液晶や有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)等のディスプレイ部品や、CCD、CMOSといったイメージセンサー等の電子部品、さらに半導体部品等で用いられる素子パッケージ等の接着においては、微量かつ微少面積で高精度に塗布することが可能な接着剤が求められている。
【0003】
接着剤量や接着面積は、微量・微少化している。接着剤に要求される特性は、ガラス、セラミックス、樹脂等、各種被着体への高い接着性や、さらに高温多湿雰囲気への暴露下でも素子ダメージの要因となる湿気を通さない低透湿性、接着耐久性等である。その要求レベルは年々高まっている。
【0004】
このような技術の潮流の中で、当該分野における接着剤としては、接着性、透湿性に優れた熱硬化型のエポキシ系接着剤が主に用いられている。しかしながら、量産化を考慮したとき、従来の熱硬化型の代わりに、速硬化性を有するエネルギー線硬化性接着剤が望まれている。エネルギー線としては、紫外線等が挙げられる。
【0005】
エネルギー線硬化性エポキシ系接着剤は、硬化収縮が低く、さらには各種被着体への接着性に優れている。特許文献1にはラミネート用接着剤、特許文献2にはポレオレフィン用接着剤、特許文献3にはアルカリガラス、金属接合用接着剤、特許文献4にはCCD用接着剤、特許文献5には有機EL素子封止用接着剤についての記載があるように、エネルギー線硬化性エポキシ系接着剤は各分野で使用されている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−231938号公報
【特許文献2】特開2001−131516号公報
【特許文献3】特開2003−327785号公報
【特許文献4】特開2004−269554号公報
【特許文献5】特開2006−169540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の接着剤は、CCD、CMOS、有機EL等の素子パッケージ用接着剤に要求される特性を満足するものはなかった。CCD、CMOS、有機EL等の素子パッケージ用接着剤に要求される特性としては、微量且つ高精度な塗布性等が挙げられる。
【0008】
即ち、本願発明の目的は、高精度な塗布性を有する接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、下記成分を含有することを特徴とする樹脂組成物であり、
(A)エポキシ化合物、
(B)ノボラック樹脂、
(C)光カチオン重合開始剤、
(D)フィラー
(A)エポキシ化合物が(a−1)脂環式エポキシ化合物と(a−2)芳香環を有するエポキシ樹脂を含有することを特徴と該樹脂組成物であり、(B)ノボラック樹脂の軟化点が50℃以上150℃以下であることを特徴とする該樹脂組成物であり、(B)ノボラック樹脂の水酸基当量が、80〜130(g/eq)の範囲であることを特徴とする該樹脂組成物であり、(D)フィラーが扁平であることを特徴とする該樹脂組成物であり、(D)フィラーの粒子径が0.1〜20μmであることを特徴とする該樹脂組成物であり、(D)フィラーがタルクであることを特徴とする該樹脂組成物であり、さらに(E)シランカップリング剤を含有することを特徴とする該樹脂組成物であり、該樹脂組成物の粘度が、せん断速度:10〜100(1/s)の範囲で、せん断粘度:10〜500Pa・sの範囲であることを特徴とする樹脂組成物であり、該樹脂組成物の速度勾配を(式1)にて定義した場合、速度勾配が1〜2の範囲であることを特徴とする樹脂組成物であり、
(式1)
速度勾配=(10(1/s)でのせん断粘度)÷(100(1/s)でのせん断粘度)
該樹脂組成物を含有することを特徴とするエネルギー線硬化性樹脂組成物であり、該樹脂組成物からなる接着剤であり、該樹脂組成物からなる硬化体であり、該エネルギー線硬化性樹脂組成物に光照射をした後に、後加熱処理を行うことを特徴とする硬化方法である。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、高精度な塗布性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<用語の説明>
本願明細書において、エネルギー線硬化性樹脂組成物とは、エネルギー線を照射することによって硬化させることができる樹脂組成物を意味する。ここで、エネルギー線とは、紫外線、可視光線等に代表されるエネルギー線を意味する。
【0012】
又、本願明細書において、「〜」という記号は「以上」及び「以下」を意味し。例えば、「A〜B」というのは、A以上でありB以下であるという意味である。
【0013】
以下、本願発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
本実施形態に係る樹脂組成物としては、エネルギー線硬化性樹脂組成物が好ましい。エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ化合物、(B)ノボラック樹脂、(C)光カチオン重合開始剤、(D)フィラーを含有することを特徴とする。
【0015】
次に、本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物の成分について説明する。
【0016】
((A)エポキシ化合物)
本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ化合物を必須成分とする。エポキシ化合物を用いることにより、本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物は優れた接着性、低透湿性、接着耐久性を示す。
【0017】
(A)エポキシ化合物としては、(a−1)脂環式エポキシ化合物や、(a−2)芳香環を有するエポキシ樹脂が、優れた接着性、低透湿性、接着耐久性が得られることから、好適に用いられる。
【0018】
(a−1)脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環、ピネン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物もしくはその誘導体や、ビスフェノールA型エポキシ化合物等の芳香族エポキシ化合物を水素化して得られる水素化エポキシ化合物等の脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種又は2種以上を選択して使用してもよい。
【0019】
ここで、特に、1分子内に1個以上のエポキシ基と1個以上のエステル基を含有する脂環式エポキシ化合物であることが好ましい。このような脂環式エポキシ化合物は、特に接着性、光硬化性に優れるため好ましい。
【0020】
脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等が挙げられる。
【0021】
(a−2)芳香環を有するエポキシ樹脂としては、モノマー、オリゴマー又はポリマーのいずれも使用可能であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、又これらの変性物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種又は2種以上を選択して使用してもよい。特に好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂からなる群のうちの1種又は2種以上が、接着性、低透湿性に優れるために、好ましい。
【0022】
又、(a−1)脂環式エポキシ化合物と、(a−2)芳香環を有するエポキシ樹脂は、単独又は2種類以上を併用して用いることができる。光硬化性、高精度塗布性、接着性、透湿性、接着耐久性のバランスを考慮した場合、(a−1)と(a−2)の合量100質量部中、(a−2)成分が20〜80質量部の範囲であることが好ましく、特に40〜60質量部の範囲であることが好ましい。
【0023】
((B)ノボラック樹脂)
本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物には、さらにノボラック樹脂を含有することで、優れた高精度塗布性と低透湿性を両立できる。
【0024】
ノボラック樹脂としては、公知のノボラック樹脂が適用可能である。ノボラック樹脂として、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等が挙げられる。これらのノボラック樹脂は、1種又は2種以上を選択して使用してもよい。特にフェノールノボラック樹脂が、塗布性に優れるため、好ましい。
【0025】
フェノールノボラック樹脂としては、軟化温度が50℃以上150℃以下であるフェノールノボラック樹脂が好ましく、特に70℃以上100℃以下であるフェノールノボラック樹脂が好ましい。軟化温度が50℃以上150℃以下であるフェノールノボラック樹脂としては、大日本インキ化学工業社製のPHENOLITE TD−2131、TD−2106、TD−2093、TD−2091、TD−2090等が挙げられる。これらのフェノールノボラック樹脂は、1種又は2種以上を選択して使用してもよい。
【0026】
又、ノボラック樹脂の水酸基当量は、80〜130(g/eq)の範囲であることが(A)成分であるエポキシ化合物との相溶性、低透湿性の点から好ましく、特に好ましくは100〜120(g/eq)の範囲であることが好ましい。
【0027】
(B)軟化点が50℃以上150℃以下のノボラック樹脂の組成割合は、(A)及び(B)成分の合量100質量部中、(B)成分が10〜30質量部の割合で含有させることが、優れた高精度塗布性と、低透湿性をバランスよく得ることができるため好ましく、特に15〜25質量部の割合で含有させることが好ましい。
【0028】
((C)光カチオン重合開始剤)
本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物は、(C)光カチオン重合開始剤を含有する。光カチオン重合開始剤を用いることで、本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物は紫外線等のエネルギー線照射により硬化可能となる。
【0029】
(C)光カチオン重合開始剤としては、アリールスルホニウム塩誘導体(例えば、ダウケミカル社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172、サンアプロ社製のCPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210S、ダブルボンド社製チバキュアー1190等)、アリールヨードニウム塩誘導体(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュア250、ローディア・ジャパン社製のRP−2074)、アレン−イオン錯体誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤等が挙げられる。これらの光カチオン重合開始剤は、1種又は2種以上を選択して使用してもよい。
【0030】
(C)光カチオン重合開始剤のアニオン種としては、ホウ素化合物、リン化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、アルキルスルホン酸化合物等のハロゲン化物等が挙げられる。これらのアニオン種は、1種又は2種以上を選択して使用してもよい。光硬化性に優れ、接着性、接着耐久性が向上する点から、フッ化物が好ましい。
【0031】
(C)光カチオン重合開始剤は、(A)成分と(B)成分の合量100質量部に対して、0.01〜5質量部の割合で含有させることが好ましく、特に0.05〜3質量部の割合で含有させることが好ましい。光カチオン重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であれば光硬化性が悪くなることもないし、5質量部以下であれば接着耐久性を低下させることもない。
【0032】
(C)光カチオン重合開始剤の感度を向上させるため、各種光増感剤を併用してもよい。
【0033】
((D)フィラー)
本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物は、(D)フィラーを含有する。(D)フィラーを含有することにより、本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物は、優れた高精度塗布性、接着性、低透湿性、接着耐久性を提供できる。
【0034】
フィラーの粒子径は、0.1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることが、 高精度な塗布性に優れるため好ましい。
【0035】
フィラーとしては、扁平フィラーが好ましい。扁平フィラーとは、平板状のフィラーのことを言う。扁平フィラーは、平面の直径が0.5〜10μm、特に1〜5μmであることが好ましく、厚さが0.001〜1μm、特に0.01〜0.1μmの範囲にあることが、透湿性に優れるため、好ましい。扁平フィラーとしては、タルク、マイカ等の天然鉱物や、窒化ホウ素等のセラミックス等が挙げられる。高精度塗布性と低透湿性の両立に優れる点から、タルクが好ましい。
【0036】
ここで、タルクとは、例えば、化学組成としてMgO・SiO(1≦X≦2)で表される99%以上の純度であるタルクのことを言う。
【0037】
(D)扁平形状のタルクは、上記(A)成分と(B)成分の合量100質量部に対して、10〜60質量部の割合で含有させることが好ましく、特に15〜55質量部の割合で含有させることがより好ましい。15質量部以上であれば、優れた低透湿性を得ることができ、60質量部以下であれば高精度塗布性や接着性を低下させることもない。
【0038】
((E)シランカップリング剤)
本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤を含有することにより、本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物は、優れた接着性及び接着耐久性を示す。
【0039】
シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、好ましくはβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種又は2種以上を選択して使用してもよい。
【0040】
シランカップリング剤は、(A)成分と(B)成分の合量100質量部に対して、0.1〜10質量部の割合で含有させることが好ましく、特に0.5〜5質量部の割合で含有させることがより好ましい。シランカップリング剤の含有量が0.1質量部以上10質量部以下であれば好適な接着性、接着耐久性を得ることができる。
【0041】
(その他のカチオン重合性化合物)
本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物は、脂肪族エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等の他のカチオン重合性化合物を目的の物性を損なわない範囲で含有してもよい。
【0042】
本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物は、本実施形態の目的の物性を損なわない範囲で、アクリルゴム、ウレタンゴム等の各種エラストマー、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体やアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体等のグラフト共重合体、無機充填剤、溶剤、増量材、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤及び界面活性剤等の添加剤を使用することができる。
【0043】
上記構成からなるエネルギー線硬化性樹脂組成物は、エネルギー線の照射により硬化させ、硬化体としてもよい。
【0044】
又、上記構成からなるエネルギー線硬化性樹脂組成物は、接着剤として用いてもよい。この接着剤は、液晶や有機EL等のディスプレイ部品、CCD、CMOSといったイメージセンサー等の電子部品、さらに半導体部品等で用いられる素子パッケージ等の接着に、好適に用いることができる。
【0045】
[製造方法]
本実施形態に係るエネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法については、上記の材料を十分に混合できれば特に制限はない。材料の混合方法としては、プロペラの回転に伴う撹拌力を利用する撹拌法、ロール練り混込み法、サンドミルや自転公転による遊星式撹拌機等の通常の分散機を使用する混合方法等が挙げられる。これらの混合方法は、低コストで、安定した混合を行えるので好ましい。
【0046】
上記の混合を行った後、下記の光源を用いたエネルギー線の照射によりエネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化を行ってもよい。
【0047】
[光源]
本実施形態において、エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化、接着に用いられる光源としては、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ、ライトエミッティングダイオード(以下、LEDという)等が挙げられる。これらの光源は、それぞれの光重合開始剤の反応波長に対応したエネルギー線の照射を効率よく行えるので、好ましい。
【0048】
上記光源は、各々放射波長、エネルギー分布が異なる。そのため、上記光源は光重合開始剤の反応波長等により適宜選択される。又、自然光(太陽光)も反応開始光源になり得る。
【0049】
上記光源は、直接照射、反射鏡等による集光照射、ファイバー等による集光照射を行ってもよい。又、低波長カットフィルター、熱線カットフィルター、コールドミラー等も用いることもできる。
【0050】
又、本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物は、光照射後の硬化速度を促進するために、後加熱処理をしてもよい。後加熱の温度は、有機EL、CCD、CMOS等のセンサー素子パッケージへの適用を鑑み、素子にダメージを与えない点で、120℃以下、特に好ましくは80℃以下であることが好ましい。
【0051】
[粘度]
本実施形態において、エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度は、優れた高精度塗布性を得るために、せん断速度:10〜100(1/s)の範囲で、せん断粘度:10〜500Pa・sの範囲であることが好ましく、特に20〜400Pa・sの範囲であることがより好ましい。せん断粘度が10Pa・s以上であれば、接着剤が必要以上に濡れ広がってしまうこともないし、500Pa・s以下であればディスペンサー等市販の塗布装置を用い、高精度に塗布することが可能となる。
【0052】
高精度な塗布性を有するために、せん断速度依存性(以下、速度勾配という)が一定値以下であることが好ましい。速度勾配を下記式にて定義したとき、その値が1〜2の範囲にあることが好ましく、特に1.0〜1.6の範囲にあることがより好ましい。速度勾配が1以上2以下であれば、ディスペンサー等市販の塗布装置にて塗布量のバラツキなく、微量かつ微少面積で高精度に塗布できる。
【0053】
(式1)
速度勾配=(10(1/s)でのせん断粘度)÷(100(1/s)でのせん断粘度)
【0054】
せん断粘度の測定は、公知の装置を用いることができる。特にレオメーター(例えば、日本シイベルヘグナー社製「MCR−301」等)が、せん断粘度の速度依存性を精度良く測定できる。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本願発明を更に詳細に説明するが、本願発明はこれらに限定されるものではない。特記しない限り、23℃、相対湿度50質量%で試験した。
【0056】
実施例及び比較例では、以下の化合物を使用した。
(A)成分のエポキシ化合物として下記を用いた。
(A−1)3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学社製「セロキサイド2021P」)
(A−2)ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「YL−938U」)
【0057】
(B)成分の軟化点が50℃以上150℃以下のノボラック樹脂として下記を用いた。その軟化点及び水酸基当量については表1に示す。
(B−1)フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業社製「TD−2131」)
(B−2)フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業社製「TD−2090」)
(B−3)ビスフェノールA型ノボラック樹脂(大日本インキ化学工業社製「KH−6021」)
【0058】
【表1】

【0059】
(C)成分の光カチオン重合開始剤として下記を用いた。
(C−1)トリアリールスルフォニウム塩ヘキサフルオロアンチモネート(ADEKA社製「アデカオプトマーSP−170」)
【0060】
(D)扁平形状のタルクとして下記を用いた。その平均粒子径については表2に示す。平均粒子径の測定は、レーザー回折粒度分布測定装置、SALD−2200「島津製作所社製」を使用した。
(D−1)ハイフィラー 5000PJ(松村産業社製)
(D−2)SG−95(日本タルク社製)
(D−3)ミストロンベーパー(日本ミストロン社製)
【0061】
比較として下記球状シリカを用いた。
(D−4)球状シリカ(電気化学工業社製「デンカ溶融シリカFB−5SDX)
【0062】
【表2】

【0063】
(E)成分のシランカップリング剤として下記を用いた。
(E−1)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製 「KBM−403」)
【0064】
表3及び4に示す種類の原材料を、表3及び4に示す組成割合で混合し、実施例1〜9及び比較例1〜4の樹脂組成物を調製した。組成割合の単位は質量部である。
【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
実施例及び比較例の樹脂組成物について、下記の各測定を行った。その結果を表3及び4に示す。
【0068】
〔粘度〕
粘度測定は、レオメーター(日本シイベルヘグナー社製「MCR−301」)を用い、下記条件にて、せん断速度10(1/s)と100(1/s)の時のせん断粘度を測定した。
・プレート:円形平板25mmφ
・試料厚:0.1mm
・ノーマルフォース:0N
・温度:25±0.5℃
【0069】
せん断速度依存性を評価するため、速度勾配を下記式にて求め、速度勾配2以下のものを良好とした。
(式2)
速度勾配=(10(1/s)でのせん断粘度)÷(100(1/s)でのせん断粘度)
【0070】
〔硬化条件〕
樹脂組成物の硬化物性及び接着性の評価に際しては、下記光照射条件により硬化させた。
無電極放電メタルハライドランプ搭載UV硬化装置(フュージョン社製)により、365nmの波長の積算光量4,000mJ/cmの条件にて光硬化させた後、80℃のオーブン中で、30分間の後加熱処理を実施した。
【0071】
〔透湿度の評価〕
厚さ0.1mmのシート状の接着剤硬化体を前記光硬化条件にて作製し、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準じ、吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を用い、雰囲気温度60℃、相対湿度90%の条件で評価した。
【0072】
〔引張剪断接着強さ(初期)の評価〕
ホウ珪酸ガラス試験片「25mm縦×25mm横×2.0mm厚、テンパックス(登録商標)」を2枚用い、接着面積0.5cm、接着厚み80μmで前記光硬化条件にて接着剤を硬化させた。硬化後、接着剤で接合した試験片を用い、引張剪断接着強さ(単位:MPa)を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張速度10mm/分で測定した。
【0073】
〔接着耐久性(PCT)の評価〕
ホウ珪酸ガラス試験片「25mm縦×25mm横×2.0mm厚、テンパックス(登録商標)」を2枚用い、接着面積0.5cm、接着厚み80μmで前記光硬化条件にて接着剤を硬化させた。硬化後、接着剤で接合した試験片を用い、プレッシャークッカー(以下、PCTという)121℃、100%RH、2atmの雰囲気下に10時間暴露し、暴露後の試験片の引張剪断接着強さ(単位:MPa)を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張速度10mm/分で測定し、接着保持率を下記式にて求め、接着保持率50%以上のものを耐久性良好とした。
【0074】
(式3)
接着保持率(%)=(PCT後の引張剪断接着強さ)÷(初期の引張剪断接着強さ)×100
【0075】
上記実施例から以下のことが判る。本願発明は、微量な使用量で、高精度な塗布性、接着性、低透湿性、接着耐久性に優れたエネルギー線硬化性樹脂組成物を提供できる。高精度な塗布性を有することは、速度勾配が1〜2の範囲にあることから裏付けられる。低透湿性を有することは、透湿度が小さいことから裏付けられる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本願発明は、エレクトロニクス製品、特に、液晶や有機EL等のディスプレイ部品や、CCD、CMOSといったイメージセンサー等の電子部品、さらに半導体部品等で用いられる素子パッケージ等の接着において、好適に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分を含有することを特徴とする樹脂組成物。
(A)エポキシ化合物、
(B)ノボラック樹脂、
(C)光カチオン重合開始剤、
(D)フィラー
【請求項2】
(A)エポキシ化合物が(a−1)脂環式エポキシ化合物と(a−2)芳香環を有するエポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B)ノボラック樹脂の軟化点が50℃以上150℃以下であることを特徴とする請求項1ないし2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(B)ノボラック樹脂の水酸基当量が、80〜130(g/eq)の範囲であることを特徴とする請求項1ないし3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(D)フィラーが扁平であることを特徴とする請求項1ないし4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(D)フィラーの粒子径が0.1〜20μmであることを特徴とする請求項1ないし5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(D)フィラーがタルクであることを特徴とする請求項1ないし6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらに(E)シランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の粘度が、せん断速度:10〜100(1/s)の範囲で、せん断粘度:10〜500Pa・sの範囲であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の樹脂組成物の速度勾配を(式1)にて定義した場合、速度勾配が1〜2の範囲であることを特徴とする樹脂組成物。
(式1)
速度勾配=(10(1/s)でのせん断粘度)÷(100(1/s)でのせん断粘度)
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有することを特徴とするエネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる接着剤。
【請求項13】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる硬化体。
【請求項14】
請求項11に記載のエネルギー線硬化性樹脂組成物に光照射をした後に、後加熱処理を行うことを特徴とする硬化方法。

【公開番号】特開2010−24364(P2010−24364A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188294(P2008−188294)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】