説明

樹脂製パネルおよびその製造方法

【課題】 予め成形した発泡体からなる芯材に補強材を嵌合して一体化した内装材を用いることにより、ガタツキ防止や成形収縮による変形を起こすことがない樹脂製パネルを得られるようにする。
【解決手段】 樹脂製パネル1は、表壁2と裏壁3および表壁2と裏壁3を繋ぐ周囲壁4からなる中空二重壁構造である。中空部5内には、中空部5内の空間と略同一形状に予め成形された熱可塑性樹脂の発泡体からなる芯材6に補強材7を嵌合して芯材6と補強材7が一体となった内装材8を内装してある。補強材7はH型押出リンフォースで金属製である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーゴフロアパネル(自動車荷室の蓋パネルまたはラゲージボード)またはリアパーセルシェルフなどの自動車用内装品または内装壁パーティション、扉などのパネル状の建築用品などに用いられる樹脂製パネルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両等に用いられる化粧板などの内装部品であって、シートブロー成形による内装部品の中間部材として断熱材あるいは吸音材など空気層を有する材料、鋼管やフレームなどの補強材を配置した樹脂中空成形品であって中空二重壁構造の中空部に発泡体と補強材とを内装した樹脂製パネルおよびその成形方法は、特開2008−247003号公報および特開2006−334801号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−247003号公報
【特許文献2】特開2006−334801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の特許文献1に記載されている樹脂成形品は、そのブロー成形時に発泡体と併せて補強材をインサートするものであるから、樹脂中空成形品に内装する内装部材が複数となって、金型間における内装部材の配置や位置決めが容易でなく、成形精度が低下したり、内装部材の充密状態が得られずガタつきが生じたり、金属製の補強材のように収縮を起こさない内装部材の場合には樹脂中空成形品の成形収縮による変形が大きくなるなどの問題点が指摘されていた。
【0005】
また、前掲の特許文献2に記載されている樹脂成形品は、樹脂成形品のブロー成形時に内装する内装材を予め成形された熱可塑性樹脂からなる発泡体とし、その発泡体に形成した補強材を配置するための収容部に補強材を配置するが、ブロー成形後に収縮する発泡体と収縮を起こさない補強材との関係で発泡体に変形が生じるのを防止するため、発泡体の収容部に対して遊びをもたせて補強材を配置している。このため、ブロー成形時にインサートする際、あるいはブロー成形の過程において発泡体に配置した補強材が位置ずれを起こしたり外れるなど、成形不良の大きな原因となることが問題となっている。
【0006】
そこで、本発明は、中空二重壁構造の中空部に、中空部内の空間と略同一形状に予め成形された熱可塑性樹脂からなる芯材に補強材を嵌合して芯材と補強材が一体となった内装材を内装することにより、内装する内装材の位置決めが的確にできて、ガタツキ防止や成形収縮による変形を起こすことがない樹脂製パネルおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の請求項1に係る樹脂製パネルは、表壁と裏壁および表壁と裏壁を繋ぐ周囲壁からなる中空二重壁構造の樹脂製パネルであって、中空二重壁構造の中空部には、中空部内の空間と略同一形状に予め成形された熱可塑性樹脂からなる芯材に補強材を嵌合して芯材と補強材が一体となった内装材を内装してあることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の請求項5に係る樹脂製パネルの製造方法は、表壁と裏壁および表壁と裏壁を繋ぐ周囲壁からなる中空二重壁構造であって芯材と補強材とを一体とした内装材を内装した樹脂製パネルの製造方法において、分割金型間に溶融状態のパリソンもしくは樹脂シートを配置し、パリソンもしくは樹脂シートを真空もしくは圧空により金型のキャビティに沿わせて成形し、ついで、中空部内の空間と略同一形状に予め成形された熱可塑性樹脂からなる芯材に補強材を嵌合して芯材と補強材とが一体となった内装材を金型のキャビティに配置して型締めを行い、溶融状態のパリソンもしくは樹脂シートの内面と内装材の外面を溶着させることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る樹脂製パネルは、請求項1記載の構成を基本として、補強材は芯材の端部と同じ長さの長尺状であってその長さ方向に延びる嵌合溝を有しており、芯材の端部を補強材の嵌合溝に圧入嵌合して芯材と補強材が一体となった内装材としてあること、補強材は芯材の一方の端部および他方の端部にそれぞれ嵌合してあることが好適である。また、補強材はH形、コ字形、角形パイプ状あるいは円形パイプ状であって芯材に嵌合一体化可能な形状のものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中空二重壁構造の中空部に、中空部内の空間と略同一形状に予め成形された熱可塑性樹脂からなる芯材に補強材を嵌合して芯材と補強材が一体となった内装材を内装することにより、内装する内装材の位置決めが的確にできて、ガタツキ防止や成形収縮による変形を起こすことがない樹脂製パネル得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る樹脂製パネルの全体斜視図およびその一部の拡大破断図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1および図2に示す樹脂製パネルにおいて発泡体と補強材との嵌合態様を示す部分斜視図である。
【図4】発泡体と補強材との嵌合態様の他例を示す斜視図である。
【図5】発泡体と補強材との嵌合態様のさらに他例を示す斜視図である。
【図6】発泡体と補強材との嵌合態様のまたさらに他例を示す斜視図である。
【図7】発泡体に角形パイプ状の補強材を嵌合する態様を示す斜視図である。
【図8】図7に示す発泡体の断面図である。
【図9】発泡体に円形パイプ状の補強材を両側およびその中間部にそれぞれ嵌合した態様の斜視図である。
【図10】発泡体に円形パイプ状の補強材を嵌合した態様の他例を示す側面図である。
【図11】発泡体の両側中間部に円形パイプ状補強材を嵌合した態様の断面図である。
【図12】発泡体の両側中間部にH形補強材を嵌合した態様の断面図である。
【図13】発泡体の両側にH形補強材を、その中間部に円形パイプ状の補強材を嵌合した態様の斜視図である。
【図14】本発明に係る樹脂製パネルのブロー成形態様を示す断面図である。
【図15】図14の状態から次工程に進んだ状態を示す断面図である。
【図16】本発明に係る樹脂製パネルを自動車のカーゴフロアパネル(自動車荷室の蓋パネルまたはラゲージボード)として用いた例を示す概要側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る樹脂製パネルは、中空二重壁構造の中空部に、中空部内の空間と略同一形状に予め成形された熱可塑性樹脂からなる芯材に補強材を嵌合して芯材と補強材が一体となった内装材を内装してなるものである。ここに芯材と補強材が一体となった内装材とは、芯材に対して補強材が密に嵌合、さらには強固に嵌合されている状態であり、芯材に対して補強材が不動状態であって不用意に外れない状態のものをいう。このため、本発明に係る内装材にあっては、ブロー成形過程およびその後に収縮する芯材と収縮を起こさない補強材との関係において芯材の収縮分が補強材に食い込むように吸収され、芯材が変形等を起こす不都合を生じない。
【実施例1】
【0013】
本発明に係る樹脂製パネル1は、図1および図2に示すように、表壁2と裏壁3および表壁2と裏壁3を繋ぐ周囲壁4からなり、この樹脂製パネル1は中空二重壁構造であって5は中空部である。表壁2の表面には周囲壁4にかけて装飾などのための表皮材を貼着してもよい。中空二重壁構造の中空部5には、中空部5内の空間と略同一形状に予め成形された熱可塑性樹脂の発泡体からなる芯材6に補強材7を嵌合して、芯材6と補強材7が一体となった内装材8が内装されている。芯材6はハニカム構造など適宜のものであってよい(図示せず)。
【0014】
補強材7は芯材6の端部と同じ長さの長尺状であってその長さ方向に延びる嵌合溝9を有しており(いわゆるH型押出リンフォースであり)、芯材6の端部を補強材7の嵌合溝9にそれぞれ圧入嵌合して芯材6と補強材7が一体となった1枚の内装材8としているものである。図1および図2に示す態様にあっては、中空二重壁構造の中空部5に内装する内装材8を、複数の芯材6,6の間に補強材7を介してそれらを互いに繋いで一体のものとしている。補強材7はアルミニウムなどの金属製あるいは硬質のプラスチック製である。なお、補強材7はH型押出リンフォースのほか、C形、コ字形、角形パイプ状あるいは円形パイプ状等であって芯材6に嵌合一体化可能な形状であれば適宜のものでよい。
【0015】
補強材7がH型押出リンフォースの場合には、図3に示すようにH型押出リンフォースの嵌合溝9に芯材6を端部を圧入して一体化するが、図3の(A)に示すようにH型押出リンフォースの嵌合溝9に、その両端または一端に鉤状部10を形成したものとし、芯材6を鉤状部10の係合溝11を形成したものとすれば、補強材7の嵌合溝9に圧入した芯材6の結合状態が強固に保持される。また図3の(B)に示すようにH型押出リンフォースの嵌合溝9にその長手方向に多数条の山形細溝(ギザギザ)12を形成し、芯材6の端部を一段低い係合段部13を形成したものとしても同様である。なお、図3の(C)に示すように芯材6の端部に切り込み14を設けておけば補強材7が通常のH型押出リンフォースであっても補強材7の嵌合溝9に圧入した芯材6の結合状態を強固に保持できる。図3の(D)に示すように芯材6の端部に一段低い係合段部15を形成して芯材6とH型押出リンフォースである補強材7とを同一面とした内装材8を構成することができる。
【実施例2】
【0016】
本発明に係る樹脂製パネル1は、図4に示すように2枚の芯材6,6をH型押出リンフォースである補強材7で繋ぐとともに芯材6,6のそれぞれの端部を押出リンフォースである補強材7,7を嵌合した構成の内装材8、図5に示すように1枚の芯材6の両端部にコ字形の補強材16,16を嵌合した構成の内装材8、さらには図6に示すように1枚の芯材6の両端部にH型押出リンフォースである補強材7,7を嵌合した構成の内装材8をそれぞれ内装したものとすることができる。
【実施例3】
【0017】
また、本発明に係る樹脂製パネル1は、図7に示すように角形パイプ状の補強材17を嵌合したものとすることができる。すなわち、図7の(A)に示すように芯材6の嵌合溝9内の一端側に角形パイプ状の補強材17に係合させる突起18を、かつ他端側にも突起18より短い突起19を形成してあって、図7の(B)に示すように角形パイプ状の補強材17の一端を突起18に係合したうえ嵌合溝9内に押し込んで他端も突起19に係合させて芯材6と角形パイプ状の補強材17を一体としたものである。なお、嵌合溝9の他端側を開放状として止め駒20を後嵌合することによって角形パイプ状の補強材17を固定する構成とすることもできる。
【0018】
図7に示す態様においては、図8に示すように芯材6の両端にコ字形補強材16,16を嵌合した構成とするほか、図9に示すように芯材6の両端およびその中間部にそれぞれ円形パイプ状の補強材21を嵌合した構成とすることができ、この態様においては図10に示すように、補強材21を嵌合する部分の両端部に設けた係合突起22に補強材21を嵌合して一体化するものである。なお、この態様においては、図11に示すように芯材6の両端部にコ字形の補強材16,16を嵌合した構成とし、また図12に示すように芯材6の両端部をH型押出リンフォースである補強材7,7を嵌合した構成としてもよく、さらには図13に示すように芯材6の中間部にH型押出リンフォースである補強材7を、かつ両端部にコ字形補強材16,16を嵌合した構成とするなど種々適宜の態様とすることができる。
【0019】
本発明に係る樹脂製パネル1は、図14および図15に示す態様でブロー成形される。すなわち、樹脂押出ヘッド23から押し出される溶融状態のパリソン24を分割金型25,25間に配置し、パリソン24を真空もしくは圧空により金型のキャビティ26,26に沿わせて成形する。ついで、中空部5内の空間と略同一形状に予め成形された熱可塑性樹脂からなる芯材6に補強材7を嵌合して芯材6と補強材7が一体となった内装材8を一方の金型25のキャビティ26に配置して型締めを行い、溶融状態のパリソン24の内面と内装材8の外面を溶着させ、芯材6と補強材7が一体となっている内装材8を内装した樹脂製パネル1を得るものである。なお、この樹脂製パネル1は、一対の予備成形した樹脂シートをブロー成形する態様で成形することもできる(図示せず)。図14および図15において27は真空チャンバー、28は通気接触面、29はブローピンである。
【0020】
本発明においてブロー成形とは、筒状のパリソンまたは複数の樹脂シートを溶融押し出し若しくは予備成形した樹脂シートを過熱溶融させるとともに、分割金型間に配置して型締めを行うことにより所望の形状に成形するいわゆるダイレクトブロー成形またはシートブロー成形などをいい、エアの吹込みを伴うか否かについては問わないものである。
【0021】
樹脂製パネル1の表壁2、裏壁3および周囲壁4を構成する熱可塑性樹脂は、ブロー成形が可能なものであればよく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル等のエンジニアリング・プラスチックなどが好適であり、適宜にガラス繊維、カーボンファイバー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなどの充填材を添加することができる。
【0022】
芯材6をなす発泡体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどからなり、表壁、裏壁、周囲壁のパネルを構成する熱可塑性樹脂と同材質であることが望ましい。また、発泡体には適宜、ガラス繊維、カーボンファイバー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなどの充填材を添加することができる。
【0023】
なお、樹脂製パネル1の表面に表皮材を施す場合において表皮材としては、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維およびこれらのブレンドからなる繊維を加工して得られる編物、織物、不織布、またはポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)または熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)などの熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリエチレンポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂からなる樹脂シートおよびこれらの積層シートから適宜選択可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る樹脂製パネル1の主な用途は、図16に示すように自動車30のカーゴフロアパネル(自動車荷室の蓋パネルまたはラゲージボード)31であるが、リアパーセルシェルフなどの自動車用内装品としても好適であるうえ、建築用品として内装壁パーティション、扉などのパネル状の建築用品など高い汎用性を有するものである。
【符号の説明】
【0025】
1 樹脂製パネル
2 表壁
3 裏壁
4 周囲壁
5 中空部
6 芯材
7 H型押出リンフォースである補強材
8 内装材
9 嵌合溝
10 鉤状部
11 係合溝
12 多数条の山形細溝(ギザギザ)
13 係合段部
14 切り込み
15 係合段部
16 コ字形の補強材
17 角形パイプ状の補強材
18 突起
19 突起
20 止め駒
21 円形パイプ状の補強材
22 係合突起
23 樹脂押出ヘッド
24 パリソン
25 分割金型
26 キャビティ
27 真空チャンバー
28 通気接触面
29 ブローピン
30 自動車
31 カーゴフロアパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表壁と裏壁および表壁と裏壁を繋ぐ周囲壁からなる中空二重壁構造の樹脂製パネルであって、
中空二重壁構造の中空部には、中空部内の空間と略同一形状に予め成形された熱可塑性樹脂からなる芯材に補強材を嵌合して芯材と補強材が一体となった内装材を内装してある
ことを特徴とする樹脂製パネル。
【請求項2】
補強材は芯材の端部と同じ長さの長尺状であってその長さ方向に延びる嵌合溝を有しており、芯材の端部を補強材の嵌合溝に圧入嵌合して芯材と補強材が一体となった内装材としてあることを特徴とする請求項1記載の樹脂製パネル。
【請求項3】
補強材は芯材の一方の端部および他方の端部にそれぞれ嵌合してあることを特徴とする請求項2記載の樹脂製パネル。
【請求項4】
補強材はH形、コ字形、角形パイプ状あるいは円形パイプ状であって芯材に嵌合一体化可能な形状であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂製パネル。
【請求項5】
表壁と裏壁および表壁と裏壁を繋ぐ周囲壁からなる中空二重壁構造であって芯材と補強材とを一体とした内装材を内装した樹脂製パネルの製造方法において、
分割金型間に溶融状態のパリソンもしくは樹脂シートを配置し、
パリソンもしくは樹脂シートを真空もしくは圧空により金型のキャビティに沿わせて成形し、
ついで、中空部内の空間と略同一形状に予め成形された熱可塑性樹脂からなる芯材に補強材を嵌合して芯材と補強材とが一体となった内装材を金型のキャビティに配置して型締めを行い、
溶融状態のパリソンもしくは樹脂シートの内面と内装材の外面を溶着させる
ことを特徴とする樹脂製パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−174577(P2010−174577A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21055(P2009−21055)
【出願日】平成21年1月31日(2009.1.31)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】