説明

気泡除去装置、液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法、電気光学装置および電子機器

【課題】複数の気泡除去ユニットの交換を容易にできると共に、漏れた機能液を適切に処理することができること。
【解決手段】気泡除去装置135は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液流路126に介設され、機能液流路126を流れる機能液内のマイクロバブルを除去する気泡除去装置135であって、ケーシング301とケーシング301内の気体透過膜との間隙に減圧室304を構成すると共に気体透過膜の内側に機能液が流れる内部流路303を構成し、気体透過膜を介して機能液から減圧室304に溶存気体を透過させてマイクロバブルを除去する複数の気泡除去ユニット300と、減圧室304を開放した複数の気泡除去ユニット300を収容すると共に、真空吸引源89に連なる単一の減圧容器320と、複数の気泡除去ユニット300の内部流路303を直列に接続する複数の接続流路331、332と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドに供給される機能液内の気泡(マイクロバブル)を除去する気泡除去装置、液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法、電気光学装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の気泡除去装置として、気体透過膜を有する複数の気泡除去ユニットと、複数の気泡除去ユニット内を真空状態にする真空ポンプと、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。この気泡除去装置では、複数の気泡除去ユニットが、各気泡除去ユニットにそれぞれ接続した複数の吸気用配管を介して真空ポンプに接続されており、真空ポンプの吸引により気泡除去ユニット内に流入する液中の溶存気体を除去している。なお、各気泡除去ユニットは、気体透過膜の劣化に伴って交換される。
【特許文献1】特開平09−253459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の気泡除去装置では、気泡除去ユニットの交換の際には、接続用配管に加えて、気泡除去ユニットの数だけ吸気用配管の取付け取外しを行なう必要があり、作業が煩雑になる問題がある。また、気体透過膜の劣化により気泡除去ユニットに液漏れが生ずると、漏れた機能液が真空ポンプに流入し、真空ポンプに故障が生ずる問題があった。
【0004】
本発明は、複数の気泡除去ユニットの交換を容易にできると共に、漏れた機能液を適切に処理することができる気泡除去装置、液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法、電気光学装置および電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の気泡除去装置は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液流路に介設され、機能液流路を流れる機能液内のマイクロバブルを除去する気泡除去装置であって、ケーシングとケーシング内の気体透過膜との間隙に減圧室を構成すると共に気体透過膜の内側に機能液が流れる内部流路を構成し、気体透過膜を介して機能液から減圧室に溶存気体を透過させてマイクロバブルを除去する複数の気泡除去ユニットと、減圧室を開放した複数の気泡除去ユニットを収容すると共に、真空吸引源に連なる単一の減圧容器と、複数の気泡除去ユニットの内部流路を直列に接続する複数の接続流路と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、真空吸引源に連なる単一の減圧容器内に、減圧室を開放した複数の気泡除去ユニットを収容しているため、各気泡除去ユニットを個別に真空吸引源に接続させる必要がなく、複数の気泡除去ユニットの交換を容易に行なうことができる。また、複数の接続流路により、複数の気泡除去ユニットの内部流路が直列に接続されているため、気泡(マイクロバブル)除去処理を複数回行なうことができ、機能液の流入量が多くても、所定の値まで気泡除去を確実に行なうことができる。さらに、真空吸引源は減圧容器に接続されているため、たとえ気体透過膜に液漏れが生じても、これが真空吸引源に吸引されることがない。
【0007】
本発明の他の気泡除去装置は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液流路に介設され、機能液流路を流れる機能液内のマイクロバブルを除去する気泡除去装置であって、ケーシングとケーシング内の気体透過膜との間隙に減圧室を構成すると共に、気体透過膜の内側に機能液が流れる内部流路を構成し、気体透過膜を介して機能液から減圧室に溶存気体を透過させてマイクロバブルを除去する複数の気泡除去ユニットと、減圧室を開放した複数の気泡除去ユニットを収容すると共に、真空吸引源に連なる単一の減圧容器と、複数の気泡除去ユニットの内部流路を並列に接続する上流側の分岐流路および下流側の合流流路と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、真空吸引源に連なる単一の減圧容器内に、減圧室を開放した複数の気泡除去ユニットを収容しているため、各気泡除去ユニットを個別に真空吸引源に接続させる必要がなく、複数の気泡除去ユニットの交換を容易に行なうことができる。また、上流側の分岐流路および下流側の合流流路が、複数の気泡除去ユニットの内部流路を並列に接続しているため、各気泡除去ユニットの気泡除去処理を並行して行なうことができ、効率的に気泡除去処理を行なうことができる。また、分岐流路により機能液の流量が分割され、各気泡除去ユニットにおける気泡除去処理量が減少するので、機能液の流量が多くても、所定の値まで気泡除去を確実に行なうことができる。さらに、真空吸引源は減圧容器に接続されているため、たとえ気体透過膜に液漏れが生じても、これが真空吸引源に吸引されることがない。
【0009】
これらの場合、真空吸引源は、減圧容器に直接接続されており、減圧容器の下部に設けられ、気体透過膜を透過しケーシングから液漏れした機能液の限界液面を検出する液面検出手段を、更に備えたことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、液面検出手段が機能液の限界液面を検出するので、液漏れした機能液が限界液面を越えて真空吸引源に流入することがない。これにより、機能液の流入による真空吸引源の故障を未然に防止することができる。
【0011】
これらの場合、減圧容器の底部に連通する密閉式の廃液タンクと、廃液タンクに設けられ、廃液タンク内に貯留する機能液の限界液面を検出する液面検出手段と、を更に備え、真空吸引源は、廃液タンク内の上部空間に接続されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、廃液タンク内の底部に液漏れした機能液が貯留されると共に、液面検出手段が廃液タンク内の機能液の限界液面を検出するため、真空吸引源への機能液の流入を防止することができる。また、真空を利用して、漏れた機能液を減圧容器から廃液タンクに強制的に集液することができるため、廃液処理を容易に行なうことができる。
【0013】
これらの場合、各気泡除去ユニットは、両端部に設けた流入ポートおよび流出ポートを外部に突出した状態で、減圧容器に収容されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、気泡除去ユニットの交換等に際し、配管接続を簡単に行なうことができる。すなわち、各気泡除去ユニットと真空吸引源との配管接続が不要であるため、気泡除去ユニットの交換時には、気泡除去ユニット同士を接続する配管の取付けおよび取外しのみを行なえばよい。また、減圧容器の配管とのシール構造を必要としない。
【0015】
本発明の液滴吐出装置は、ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを移動させながら、機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行なう描画手段と、機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液流路に介設した上記した気泡除去装置と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、気泡除去装置により機能液内のマイクロバブルを除去することができる。このため、例えば、マイクロバブルが除去された機能液がサブタンク供給された場合には、サブタンク内でのマイクロバブルによる液位誤検出を抑えることができる。これにより、サブタンクの液位の調整を精度良く行うことができ、機能液滴吐出ヘッドの水頭値を安定に維持することができるため、機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を安定吐出させることができる。
【0017】
本発明の電気光学装置の製造方法は、上記した液滴吐出装置を用い、ワーク上に機能液滴による成膜部を形成することを特徴とする。
【0018】
本発明の電気光学装置は、上記した液滴吐出装置を用い、ワーク上に機能液滴による成膜部を形成したことを特徴とする。
【0019】
これらの構成によれば、高品質の電気光学装置を効率良く製造することができる。なお、機能材料としては、有機EL装置の発光材料(Electro-Luminescence発光層・正孔注入層)は元より、液晶表示装置に用いるカラーフィルタのフィルタ材料(フィルタエレメント)、電子放出装置(Field Emission Display, FED)の蛍光材料(蛍光体)、PDP(plasma Display Panel)装置の蛍光材料(蛍光体)、電気泳動表示装置の泳動体材料(泳動体)等であって、機能液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)により吐出可能な液体材料を言う。また、電気光学装置(Flat Panel Display, FPD)としては、有機EL装置、液晶表示装置、電子放出装置、PDP装置、電気泳動表示装置等がある。
【0020】
本発明の電子機器は、上記した電気光学装置の製造方法により製造した電気光学装置または上記した電気光学装置を搭載したことを特徴とする。
【0021】
この場合、電子機器としては、いわゆるフラットパネルディスプレイを搭載した携帯電話、パーソナルコンピュータのほか、各種の電気製品がこれに該当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して、本発明の機能液供給装置を適用した液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。
【0023】
図1、図2および図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース2上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在して、ワークWをX軸方向(主走査方向)に移動させるX軸テーブル11と、複数本の支柱4を介してX軸テーブル11を跨ぐように架け渡された1対(2つ)のY軸支持ベース3上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル12と、複数の機能液滴吐出ヘッド17(図示省略)が搭載された8個のキャリッジユニット51と、から成り、8個のキャリッジユニット51は、Y軸テーブル12に吊設されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ6と、チャンバ6を貫通して、チャンバ6の外部から内部の機能液滴吐出ヘッド17に機能液を供給する3組の機能液供給装置101を有した機能液供給ユニット7と、を備えている。X軸テーブル11およびY軸テーブル12の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット7から供給されたR・G・B3色の機能液滴を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンが描画される。なお、請求項にいう描画手段は、X軸テーブル11、Y軸テーブル12および8個のキャリッジユニット51により構成されている。
【0024】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット14、吸引ユニット15、ワイピングユニット16、吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置5を備えており、これらユニットを機能液滴吐出ヘッド17の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド17の機能維持・機能回復を図るようになっている。なお、メンテナンス装置5を構成する各ユニットのうち、フラッシングユニット14および吐出性能検査ユニット18は、X軸テーブル11に搭載され、吸引ユニット15およびワイピングユニット16は、X軸テーブル11から直角に延び、かつY軸テーブル12によりキャリッジユニット51が移動可能である位置に配設された架台上に配設されている(厳密には、吐出性能検査ユニット18は、後述するステージユニット77がX軸テーブル11に搭載され、カメラユニット78がY軸支持ベース3に支持されている。)。
【0025】
フラッシングユニット14は、一対の描画前フラッシングユニット71,71と、定期フラッシングユニット72とを有し、機能液滴吐出ヘッド17の吐出直前や、ワークWの載換え時等の描画処理休止時に行われる、機能液滴吐出ヘッド17の捨て吐出(フラッシング)を受ける。吸引ユニット15は、複数の分割吸引ユニット74を有し、各機能液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル98から機能液を強制的に吸引すると共に、キャッピングを行う。ワイピングユニット16は、ワイピングシート75を有し、吸引後の機能液滴吐出ヘッド17のノズル面97を拭取る。吐出性能検査ユニット18は、機能液滴吐出ヘッド17から吐出された機能液滴を受ける検査シート83を搭載したステージユニット77と、ステージユニット77上の機能液滴を画像認識により検査するカメラユニット78を有し、機能液滴吐出ヘッド17の吐出性能(吐出の有無および飛行曲り)を検査するものである。
【0026】
次に、液滴吐出装置1の構成要素について簡単に説明する。図2または図3に示すように、X軸テーブル11は、ワークWをセットするセットテーブル21と、セットテーブル21をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダ22と、上記のフラッシングユニット14およびステージユニット77をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダ23と、X軸方向に延在し、X軸第1スライダ22を介してセットテーブル21(ワークW)をX軸方向に移動させると共に、X軸第2スライダ23を介してフラッシングユニット14およびステージユニット77をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモータ(図示省略)と、X軸リニアモータに並設され、X軸第1スライダ22およびX軸第2スライダ23の移動を案内する一対(2本)のX軸共通支持ベース24と、を備えている。
【0027】
セットテーブル21は、ワークWを吸着セットする吸着テーブル31と、吸着テーブル31を支持し、吸着テーブル31にセットしたワークWの位置をθ軸方向に補正するためのθテーブル32等を有している。また、セットテーブル21のY軸方向と平行な一対の辺には、それぞれ上記の描画前フラッシングユニット71が添設されている。
【0028】
Y軸テーブル12は、8個の各キャリッジユニット51をそれぞれ吊設した8個のブリッジプレート52と、8個のブリッジプレート52を両持ちで支持する8組のY軸スライダ(図示省略)と、上記した一対のY軸支持ベース3上に設置され、8組のY軸スライダを介してブリッジプレート52をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモータ(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル12は、各キャリッジユニット51を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド17を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド17をメンテナンス装置5(吸引ユニット15及びワイピングユニット16)に臨ませる。
【0029】
一対のY軸リニアモータを(同期して)駆動すると、各Y軸スライダが一対のY軸支持ベース3を案内にして同時にY軸方向を平行移動する。これにより、ブリッジプレート52がY軸方向を移動し、これと共にキャリッジユニット51がY軸方向に移動する。なお、この場合、Y軸リニアモータの駆動を制御することにより、各キャリッジユニット51を独立させて個別に移動させることも可能であるし、8個のキャリッジユニット51を一体として移動させることも可能である。
【0030】
また、Y軸テーブル12の両脇には、これに平行にケーブル坦持体81が配設されている。両ケーブル坦持体81は、一方がY軸支持ベース3に固定されると共に他方が各ブリッジプレート52の1つに固定されている。このケーブル坦持体81には、各キャリッジユニット51用のケーブル類、エアーチューブ類および機能液流路(後述する下流側機能液流路127)等が収容されている。
【0031】
各キャリッジユニット51は、12個の機能液滴吐出ヘッド17と、12個の機能液滴吐出ヘッド17を6個ずつ2群に分けて支持するキャリッジプレート53と、から成るヘッドユニット13を備えている(図4参照)。また、各キャリッジユニット51は、ヘッドユニット13をθ補正(θ回転)可能に支持するθ回転機構61と、θ回転機構61を介して、ヘッドユニット13をY軸テーブル12(各ブリッジプレート52)に支持させる吊設部材62と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット51は、その上部に後述するサブタンク121が配設されており(実際には、ブリッジプレート52上に配設)、このサブタンク121から各機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給されるようになっている。
【0032】
図5に示すように、機能液滴吐出ヘッド17は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針92を有する機能液導入部91と、機能液導入部91に連なる2連のヘッド基板93と、機能液導入部91の下方に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体94と、を備えている。接続針92は、機能液供給ユニット7に接続され、機能液導入部91に機能液を供給する。ヘッド本体94は、キャビティ95(ピエゾ圧電素子)と、多数の吐出ノズル98が開口したノズル面97を有するノズルプレート96と、で構成されている。機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動すると(ピエゾ圧電素子に電圧が印加され)、キャビティ95のポンプ作用により、吐出ノズル98から機能液滴が吐出される。
【0033】
なお、ノズル面97には、多数の吐出ノズル98からなる2つのノズル列98bが相互に平行に形成されている。そして、2つのノズル列98b同士は、相互に半ノズルピッチ分位置ずれしている。
【0034】
チャンバ6は、内部温度及び湿度を一定に保つように構成されている。すなわち、液滴吐出装置1によるワークWへの描画は、温度および湿度が一定値に管理された雰囲気中で行われる。そして、チャンバ6の側壁の一部には、後述するタンクユニット122を収納するためのタンクキャビネット84が設けられている。なお、有機EL装置等を製造する場合には、チャンバ6内を、不活性ガス(窒素ガス)の雰囲気で構成することが好ましい。
【0035】
次に、図1および図6ないし図9を参照して機能液供給ユニット7について説明する。機能液供給ユニット7は、R・G・B3色に対応した3組の機能液供給装置101を備えている。また、機能液供給ユニット7は、後述するメインタンク181およびサブタンク121等の制御用の圧縮窒素ガスを供給する窒素ガス供給設備85と、各種開閉弁の制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備86と、各部からガス排気を行うためのガス排気設備87と、後述する気泡除去装置135に接続された真空設備(真空吸引源)89と、を備えている。3組の機能液供給装置101は、それぞれR・G・B3色に対応した機能液滴吐出ヘッド17に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド17には対応する色の機能液が供給される。
【0036】
図6に示すように、各機能液供給装置101は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク181,181を有するタンクユニット122と、各キャリッジユニット51に対応して設けた8つのサブタンク121と、タンクユニット122と8つのサブタンク121を接続する上流側機能液流路(機能液流路)126と、各サブタンク121と各機能液滴吐出ヘッド17とを接続する8組の下流側機能液流路(ヘッド側流路)127と、を備えている。
【0037】
各メインタンク181内の機能液は、これに接続して窒素ガス供給設備85からの圧縮窒素ガスにより加圧され、上流側機能液流路126を介して8つのサブタンク121に選択的に供給される。その際、圧縮エアー供給設備86の圧縮エアーにより、各種開閉弁が開閉制御される。また同時に、各サブタンク121は、ガス排気設備87を介して大気開放され、必要量の機能液を受容する。各サブタンク121の機能液は、これに連なる機能液滴吐出ヘッド17の駆動により、所定の水頭圧を維持しながら、下流側機能液流路127を介して機能液滴吐出ヘッド17に供給される。詳細は後述するが、サブタンク121からの機能液逆送時には、圧縮窒素ガスが各サブタンク121に供給される一方、各メインタンク181は、ガス排気設備87を介して大気開放(実際には負圧制御)される。
【0038】
タンクユニット122は、機能液の供給源となる一対のメインタンク181,181と、一対のメインタンク181,181の重量をそれぞれ測定する一対の重量測定装置182,182と、一対のメインタンク181,181に接続されると共に、上流側機能液流路126に接続した切替え機構183と、を備えている。各メインタンク181には、窒素ガス供給設備85およびガス排気設備87に接続されており、機能液を圧送する場合の加圧制御および機能液を逆送する場合の負圧制御(大気開放に相当)可能に構成されている。
【0039】
切替え機構183は、一対のメインタンク181,181に接続した一対のタンク流路186,186と、上流側に一対のタンク流路186,186が接続されると共に、下流側に上流側機能液流路126が接続されたタンク流路継手187と、各タンク流路186,186に介設されたタンク開閉弁188と、を備えている。一方のタンク開閉弁188を開弁し、他方のタンク開閉弁188を閉弁することにより、上流側機能液流路126への接続が、一対のメインタンク181,181の間で交互に切替えられる。
【0040】
重量測定装置182は、例えばロードセル等で構成され、メインタンク181内の機能液が消費され所定の重量になると、交換を促す警報を発するようになっている。また、各タンク流路186には、気泡検出センサ189(2つの光センサで構成されている)が設けられており、一方のメインタンク181が所定の重量になった後、この気泡検出センサ189が気泡を検出したところで、他方のメインタンク181に流路切替えする(自動または手動)。なお、重量測定装置182に代えて、液位検出センサあるいは気泡検出センサ等により警報を出すようにしてもよい。
【0041】
このように、重量測定装置182および気泡検出センサ189により一方のメインタンク181が要交換であると判断された場合、切替え機構183を介して上流側機能液流路126への接続を他方のメインタンク181に切替えることにより、他方のメインタンク181によりサブタンク121への補給を行うことができる。すなわち、一方のメインタンク181を交換する際にも、他方のメインタンク181によりサブタンク121への補給を継続的に行うことができる。これにより、メインタンク181交換の際に、機能液滴吐出ヘッド17による描画処理を停止する必要がなく、生産性を向上させることができる。
【0042】
上流側機能液流路126は、上流側から、上流側をタンクユニット122に接続した主流路131と、上流側を主流路131に接続した8分岐流路(分岐流路)132と、上流側を8分岐流路132に接続され、下流側をサブタンク121に接続した8本の枝流路133と、を備えている。タンクユニット122から供給された機能液は、8分岐流路132により8つに分流して各サブタンク121に供給される。
【0043】
また、主流路131には、上流側から気泡除去装置135、第1開閉弁136、エアー抜きユニット137、第2開閉弁138がそれぞれ介設されている。また、各8分岐流路132には、各サブタンク121の近傍に位置して第3開閉弁139がそれぞれ介設されている。
【0044】
各下流側機能液流路127は、上流側から、上流側を各サブタンク121に接続したヘッド側主流路146と、上流側をヘッド側主流路146に接続した4分岐流路147と、上流側を4分岐流路147に接続した複数の個別流路148と、により構成されている。これにより、機能液が各サブタンク121から4方に分岐して、それぞれの機能液滴吐出ヘッド17の接続されている。すなわち、上流側機能液流路126の8分岐と、下流側機能液流路127の4分岐により、8×4個の機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給されている。加えて、機能液供給ユニット7は、R・G・Bで3組の機能液供給装置101を有しているため、8×12個の機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給される。更に、ヘッド側主流路146には、第4開閉弁149および減圧弁150が介設されている。
【0045】
気泡除去装置135には、上記の真空設備(真空吸引源)89が接続されており、気体透過膜で隔てられた内部流路を真空引きし、気体透過膜を介して内部流路の機能液から気泡を透過させ除去する。このような気泡除去装置135を備えることにより、機能液内のマイクロバブルによる大きな気泡の発生を抑えることができる。そのため、気泡が含有した機能液がサブタンク121や機能液滴吐出ヘッド17に達することを抑えることができ、サブタンク121内において、後述する液位検出センサ177による液位誤検出を抑えることができる。これにより、機能液の厳密な液位検出を行うことができ、機能液滴吐出ヘッド17の水頭値を安定に維持することができるため、機能液滴吐出ヘッド17の吐出不良を抑えることができる。なお、気泡除去装置135の詳細については後述する。
【0046】
エアー抜きユニット137は、主流路131に介設したエアー抜き継手(エアー抜き手段)155と、開閉弁および気泡検出センサから成るエアー抜き弁(エアー抜き手段)157と、エアー抜き弁157に連なるエアー抜き流路156と、エアー抜き流路156の下流端に設けた貯液タンク158と、を有している。エアー抜きユニット137は、機能液供給装置101に機能液を初期充填するときに機能するものであり、メインタンク181からの機能液の送液に際し、エアー抜き弁157を開弁し且つ第2開閉弁138を閉弁して主流路131内のエアーを排出する。そして、エアー抜き弁157が気泡を検出したところ(少し時間をおく)で、エアー抜き弁157を閉弁し且つ第2開閉弁138を開弁してエアー抜きを終了する。
【0047】
このようなエアー抜きユニット137を有することにより、初期充填の際に、無用なエアーを適切にエアー抜きすることができる。これにより、初期充填時の無用なエアーを簡単に排除することができる。なお、貯液タンク158に流下した機能液を再利用する場合には、貯液タンク158を各色に対応させて3つとし、再利用しない場合には、貯液タンク158を1つとする。
【0048】
各サブタンク121の上流側および下流側近傍に設けた第3開閉弁139および第4開閉弁149は、容積変化なく開閉可能なエアーオペレートバルブで構成されており、開閉弁を開閉した際に発生する機能液の脈動を抑えることができる。そのため、機能液滴吐出ヘッド17に脈動が伝わることを抑え、機能液滴吐出ヘッド17による吐出不良を抑えることができる。なお、これらの開閉弁は、例えば、ダイヤフラム式のエアーオペレートバルブで構成することが好ましい。これにより、圧縮エアー供給設備86からの圧縮エアーにより開閉が制御できると共に、開閉弁の開閉をゆっくり行うことができるため、容易に容積変化なく開閉可能な構成に為されている。また、エアーオペレートバルブを使用することにより、防爆機能の他、開閉弁を通過する機能液の温度上昇を抑えることができる。
【0049】
8分岐流路132は、上流側端から下流側端まで、T字継手で形成された2分岐継手161と、2分岐継手161の下流側に接続された一対の接続短管162と、による2分岐を3段に亘って繰り返して構成されている(図8(a)参照)。8分岐流路132は、上流側を下にし、下流側を上にして配置し、タンクユニット122から供給された機能液が下から上に流れるように構成されている。このような8分岐流路132を使用することにより、8分岐流路132の下流端において圧力損失が同一となるため、8本の枝流路133の流速(流量)を一定にすることができる。また、上流側を下にし、下流側を上にすることにより、機能液が下から上に流れるため、8分岐流路132内にエアーが残留することを抑えることができる。さらに、2分岐継手161として安価なT字継手を使用することにより、8分岐流路132を安価の構成にすることができる。
【0050】
8分岐流路132は、最下流段に属する2分岐継手161および一対の接続短管162,162に比して、最上流段に属する2分岐継手161および一対の接続短管162,162は、太径に形成されている。これにより、8分岐流路132での圧力損失を極力小さくすることができる。
【0051】
なお、本実施形態においては8分岐の分岐流路であるため、端数が生じることがないが、端数が生じる場合、例えば10分岐(10分岐流路)である場合、6方の分岐については、3つの2分岐継手161と3本の接続短管162と通るのに対し、他4方の分岐については、4つの2分岐継手161と4本の接続短管162と通ることになる(図8(b)参照)。この際、6方の分岐と他4方の分岐の流路長に違いが出ると、サブタンク121への機能液の流量が同一にならないため、最下流段の一対の接続短管162,162(他4方の分岐)と、その上流段の接続短管162(6方の分岐)との間において、配管長で圧力損失が調整するよう構成する。
【0052】
また、各下流側機能液流路127の4分岐流路147も、上記の8分岐流路132と同様の構成とすることが、好ましい。但しこの場合には、4分岐流路147の上流側を上にし、下流側を下にすることが好ましい。これにより、下流側機能液流路127に気泡が混入することがあっても、気泡をサブタンク121側に抜くようにする。
【0053】
減圧弁150は、大気圧基準で作動すると共に対応する機能液滴吐出ヘッド17との間の水頭値を所定の許容範囲に維持するものである。この減圧弁150を使用することにより、機能液滴吐出ヘッド17のノズル面における機能液の水頭値を精度良く管理することができる。
【0054】
図9に示すように、サブタンク121は、機能液を貯留するサブタンク本体171と、サブタンク本体171に落し蓋様に浮かした蓋体フロート172と、サブタンク本体171の側方に配設された透明なバイパスチューブ176と、バイパスチューブ176に臨み、貯留された機能液の液位を検出する液位検出機構173と、サブタンク本体171の側方下部に配設された液圧センサ174と、を備えている。また、サブタンク121は、サブタンク本体171の上部には、窒素ガス供給設備85およびガス排気設備87が接続されており(図6参照)、サブタンク本体171の内部を、メインタンク181からの送液の際の大気開放およびメインタンク181への加圧制御可能に構成されている。加えて、サブタンク本体171の下方には、枝流路133が接続される流入ジョイント163、およびヘッド側主流路146が接続される流出ジョイント164が設けられており、機能液は、サブタンク本体171の下方から流入し、下方から流出するように構成されている。
【0055】
液位検出機構173は、バイパスチューブ176に臨んでおり、上限となる機能液の液位を検出する上限検出センサ178と、上下中間位置に配設され、補給時の機能液の液位を検出する液位検出センサ177と、下限となる機能液の液位を検出する下限検出センサ179と、を備えている。上限検出センサ178は、サブタンク121のオーバーフローを防止すべく設けられており、上限検出センサ178が上限液位を検出した場合には、メインタンク181からの送液を停止させる。一方、下限検出センサ179は、サブタンク121が空になるのを防止すべく設けられており、下限検出センサ179が下限液位を検出した場合には、現時点のワークWの描画が終了したところで液滴吐出装置1を停止させる。
【0056】
また、上限検出センサ178が上限液位を検出した場合には、その後サブタンク121の機能液をメインタンク181に戻す逆送動作が行われる。この逆送動作は、第4開閉弁149を閉弁すると共に第3開閉弁139を開弁し、且つメインタンク181への加圧を解除(負圧制御)した後、サブタンク121内を加圧(加圧制御)して機能液を逆流させる。そして、液位検出センサ177が液位を検出したところで、逆送動作を終了する。このような逆送動作により、サブタンク121に過剰供給された機能液を廃棄することなく、適切に処理することができる。
【0057】
液位検出センサ177は、機能液滴吐出ヘッド17の理想の水頭値を考慮した液位を検出するものであり、液位検出センサ177により機能液の液位が検出されると、後述する制御部197との協働により、満液もしくは減液と判断される。すなわち、液位検出センサ177より上に液位がある状態から、吐出動作により機能液が減り、液位検出センサ177により液位が検出されると減液と判断される。また、液位検出センサ177より下に液位がある状態から、補給動作により機能液が増え、液位検出センサ177により液位が検出された後、一定時間経過すると満液と判断される。このような液位検出センサ177により、サブタンク121内の機能液の液位が上下中間部位置に制御されている。このように機能液の液位がサブタンク121の上下中間部位置に制御されていることにより、サブタンク121内で、機能液が満たされていない大きな空間(気体容量)を常に構成することができる。これにより、サブタンク121の上流側で発生した機能液の脈動を吸収することができ、機能液滴吐出ヘッド17の吐出不良を抑えることができる。
【0058】
図7に示すように、各機能液供給装置101のタンクユニット122から8分岐流路132までの各構成要素は、チャンバ6の側壁に配設されたタンクキャビネット84に収納されている(図1参照)。図7に示すように、タンクキャビネット84は、各タンクユニット122が収納されたメインタンク収納部111と、メインタンク収納部111の上方に配設され、各気泡除去装置135が収納されたユニット収納部112と、ユニット収納部112に隣設され、各8分岐流路132が収納された分岐流路収納部113と、を備えている。
【0059】
メインタンク収納部111は、その開閉扉105aがチャンバ6の外側に開閉し、図示しないがユニット収納部112および分岐流路収納部113の開閉扉は、それぞれチャンバ6の内側に開閉する。すなわち、各気泡除去装置135および各8分岐流路132は、チャンバ6内に配設され、各タンクユニット122は、チャンバ6外に配設されている。したがって、タンクユニット122は、チャンバ6内を大気置換することなく、そのメインタンク181を交換可能に構成されている。このように、チャンバ6外にタンクユニット122を配設することにより、メインタンク181の交換の際に、チャンバ6を開放することがない。これにより、メインタンク181の交換の都度にチャンバ6内の雰囲気が破壊されることがない。すなわち、再度温度及び湿度の調整を行う必要なく(チャンバ6内を不活性ガスの雰囲気にしている場合には、不活性ガスが外部に漏れることがない)、メインタンク181の交換を行うことができるため、装置の生産性を向上させることができる。
【0060】
次に、図10を参照して、液滴吐出装置1の主制御系について説明する。同図に示すように、液滴吐出装置1は、ヘッドユニット13(機能液滴吐出ヘッド17)を有する液滴吐出部191と、X軸テーブル11、を有し、ワークWをX軸方向へ移動させるためのワーク移動部192と、Y軸テーブル12を有し、ヘッドユニット13をY軸方向へ移動させるヘッド移動部193と、メンテナンス手段の各ユニットを有するメンテナンス部194と、機能液供給ユニット7を有し、機能液滴吐出ヘッド17に機能液を供給する機能液供給部198と、各種センサを有し、各種検出を行う検出部195と、各部を駆動制御する各種ドライバを有する駆動部196と、各部に接続され、液滴吐出装置1全体の制御を行う制御部197と、を備えている。
【0061】
制御部197には、各手段を接続するためのインタフェース201と、一時的に記憶可能な記憶領域を有し、制御処理のための作業領域として使用されるRAM202と、各種記憶領域を有し、制御プログラムや制御データを記憶するROM203と、ワークWに所定の描画パターンを描画するための描画データや、各手段からの各種データ等を記憶すると共に、各種データを処理するためのプログラム等を記憶するハードディスク204と、ROM203やハードディスク204に記憶されたプログラム等に従い、各種データを演算処理するCPU205と、これらを互いに接続するバス206と、が備えられている。
【0062】
そして、制御部197は、各手段からの各種データを、インタフェース201を介して入力すると共に、ハードディスク204に記憶された(または、CD−ROMドライブ等により順次読み出される)プログラムに従ってCPU205に演算処理させ、その処理結果を、駆動部196(各種ドライバ)を介して各手段に出力する。これにより、装置全体が制御され、液滴吐出装置1の各種処理が行われる。
【0063】
ここで、機能液滴吐出ヘッド17への機能液供給動作について説明する。この動作は、各メインタンク181および各サブタンク121に機能液が貯液されていると共に、各流路に機能液が充液されている状態にて行われるものとする。加えて、窒素ガス供給設備85により、上流側機能液流路126に接続された一方のメインタンク181が加圧されているものとする。
【0064】
まず、サブタンク121の上流側に介設された第3開閉弁139を閉弁した状態で、機能液滴吐出ヘッド17を駆動して機能液滴の吐出を行う。第3開閉弁139が閉弁されているため、メインタンク181からの圧力は縁切りされ、機能液滴吐出ヘッド17のポンプ作用により、機能液が各サブタンク121から各機能液滴吐出ヘッド17に送液される。なお、機能液滴吐出ヘッド17のノズル面97における水頭値は、下流側機能液流路127に介設された減圧弁150により最終調整されている。
【0065】
次に、サブタンク121への機能液の補給について説明する。機能液滴吐出ヘッド17の吐出動作により、サブタンク121内の機能液が一定量減ると、液位検出機構173によって減液状態であると判断される。減液状態であると判断された場合、第3開閉弁139を開弁してメインタンク181からサブタンク121に機能液を補給する。メインタンク181は加圧されているため、第3開閉弁139を開弁することでメインタンク181の機能液が自動的にサブタンク121に送液される。なお、この際、機能液滴吐出ヘッド17の吐出動作は継続的に行われる。
【0066】
メインタンク181からサブタンク121に機能液が送液され、サブタンク121内の機能液が一定量貯まると、液位検出機構173によって、サブタンク121内が満液状態であると判断される。満液状態と判断されると、第3開閉弁139を閉弁して補給動作を終了する。なお、上記した機能液の逆送動作も、上記の制御系により行われる。
【0067】
次に、上流側機能液流路126に接続されたメインタンク181において、機能液が無くなった際の対処動作について説明する。サブタンク121への補給動作を繰り返すと、メインタンク181内の機能液が減り、対応した重量測定装置182により、メインタンク181が要交換であると判断される。メインタンク181が要交換であると判断されると、切替え機構183により上流側機能液流路126への接続を、要交換のメインタンク181から他方のメインタンク181(満液状態のメインタンク181)に切り替える。そして、他方のメインタンク181によりサブタンク121への補給動作が行われる。この際、要交換のメインタンク181を交換することができ、サブタンク121への供給動作(機能液滴吐出ヘッド17の吐出駆動)を止めることなく、メインタンク181の交換を行うことができる。
【0068】
以上のような構成によれば、一方のメインタンク181の機能液がなくなった際に、切替え機構183によりタンク切替えを行うことで、一方のメインタンク181を交換する一方で、他方のメインタンク181により機能液の供給を行うことができる。これにより、各サブタンク121への機能液補給を止めることなく、メインタンク181の交換を行うことができる。このため、機能液滴吐出ヘッド17による描画処理を停止する必要がなく、生産性を向上させることができる。
【0069】
次に、図11を参照して、気泡除去装置135について説明する。上述したように、気泡除去装置135は、ユニット収納部112内に配設されると共に、主流路131(上流側機能液流路126)に介設されており、メインタンク181から加圧送液される機能液内のマイクロバブル(気泡)を除去して、気泡除去後の機能液を上記各サブタンク121に供給する。なお、気泡除去装置135の気泡除去ユニット300は消耗品であるため、交換を迅速に行えるように、予備の気泡除去装置135を用意しておくことが、好ましい(図6参照)。
【0070】
気泡除去装置135は、マイクロバブルを除去する第1気泡除去ユニット300a、第2気泡除去ユニット300bおよび第3気泡除去ユニット300cと、これら3つ(複数)の気泡除去ユニット300を収容する単一の減圧容器320と、3つの気泡除去ユニット300a、300b、300cを直列に接続する複数の第1接続流路331および第2接続流路332と、を備えている。メインタンク181から圧送されてきた機能液は、第1気泡除去ユニット300a、第1接続流路331、第2気泡除去ユニット300b、第2接続流路332、第3気泡除去ユニット300cの順で流れ、マイクロバブルが除去された後、サブタンク121に向かって圧送される。
【0071】
各気泡除去ユニット300は、円筒形状に形成されたケーシング301と、ケーシング301に収容され、気体透過膜で構成された複数の膜チューブ302と、を有しており、複数の膜チューブ302の流路により気泡除去ユニット300の内部流路303が構成され、ケーシング301と膜チューブ302との間隙に減圧室304が構成されている。
【0072】
ケーシング301は、ケーシング本体305と、ケーシング本体305の両端部に設けられた一対のキャップ部306と、一対のキャップ部306に形成された流入ポート307および流出ポート308と、各キャップ部306に形成された一対の真空ポート309と、で構成されている。
【0073】
流入ポート307は、減圧容器320から外部に突出するように設けられており、先端部に設けられた接続部を介して、主流路131または第1接続流路331、第2接続流路332に接続されている。また、流入ポート307の基部側は、分流室(図示せず)を介して、複数の膜チューブ302に連通している。同様に、流出ポート308は、減圧容器320から外部に突出するように設けられており、先端部に設けられた接続部を介して、第1接続流路331、第2接続流路332または主流路131に接続されている。また、流出ポート308の基部側には、複数の膜チューブ302に連通した合流室(図示せず)が構成されている。本実施形態では、第1気泡除去ユニット300aおよび第3気泡除去ユニット300cに対し、第2気泡除去ユニット300bが上下反転した姿勢で配設されており、機能液は、第1気泡除去ユニット300aの内部流路303aを下から上へ流れ、第2気泡除去ユニット300bの内部流路303bを上から下へ流れ、さらに第3気泡除去ユニット300cの内部流路303cを下から上へ流れるようになっている。
【0074】
一対の真空ポート309には、チューブ等が接続されておらず(減圧容器320内に開放)、両真空ポート309は、そのまま減圧室304に連通している。したがって、真空吸引源89により減圧容器320内がエアー吸引されると、減圧室304が負圧となり、気体透過膜で構成された膜チューブ302から機能液内の溶存気体が減圧室304に透過される。これにより、各気泡除去ユニット300の内部流路303を流れる機能液のマイクロバブルが除去される。
【0075】
第1接続流路331、第2接続流路332は、いずれも気体非透過性のチューブ等で形成されており、第1接続流路331は、第1気泡除去ユニット300aの流出ポート308aと第2気泡除去ユニット300bの流入ポート307bと、を接続している。同様に、第2接続流路332は、第2気泡除去ユニット300bの流出ポート308bと、第3気泡除去ユニット300cの流入ポート307cと、を接続している。これにより、3つの気泡除去ユニット300a、300b、300cの内部流路303a、303b、303cが直列に接続されている。
【0076】
減圧容器320は、3つ(複数)の気泡除去ユニット300a、300b、300cを収容する密閉式のハウジング321と、ハウジング321の底部に連通する密閉式の廃液タンク322と、廃液タンク322を介してハウジング321に連通する真空吸引源(真空ポンプ)89と、を有している。また、廃液タンク322には、液面センサ(液面検出手段)324が設けられている。
【0077】
ハウジング321は、ステンレスやアルミニウム等の金属性材料で方形箱状に形成されており、その一部が透光性の樹脂性材料で形成され、外部から各気泡除去ユニット300が視認可能になっている。これにより、気泡除去ユニット300からの液漏れを容易に発見することができる。また、図示はしないが、ハウジング321は、半割り構造あるいは開閉構造になっており、各気泡除去ユニット300を交換可能に構成されている。ハウジング321の下壁には、第1気泡除去ユニット300a、第3気泡除去ユニット300cの流入ポート307a、307cおよび第2気泡除去ユニット300bの流出ポート308bが嵌合する嵌合穴が形成されており、これら流入ポート307a、307cおよび流出ポート308bの外周面と嵌合穴との間隙にはシール材が介設されている。同様に、ハウジング321の上壁には、第1気泡除去ユニット300a、第3気泡除去ユニット300cの流出ポート308a、308cおよび第2気泡除去ユニット300bの流入ポート307bが嵌合する嵌合穴が形成されており、これら流出ポート308a、308cおよび流入ポート307bの外周面と嵌合穴との間隙にはシール材が介設されている。これにより、ハウジング321内の気密性が保たれている。
【0078】
さらに、ハウジング321の下壁には、継手を介して、廃液チューブ325が接続されており、廃液チューブ325の先端は、廃液タンク322内の底部に達している。一方、廃液タンク322の上部空間には、真空吸引源89に連通する吸引用チューブ326が接続されている。これにより、真空吸引源89によりエアーの吸引を行うと、ハウジング321内の底部に漏れ出た機能液は、強制的に廃液タンク322に流入し、かつハウジング321内が負圧に保たれる。なお、吸引用チューブ326には、大気開放用のバルブを設けることが、好ましい。
【0079】
液面センサ324は、廃液タンク322内に貯留した機能液の限界液面を検出し、図外の制御装置等を介して警報を発するようになっている。これにより、液漏れした機能液が限界液面を越えて真空吸引源89に流入することがなく、真空吸引源89の故障を未然に防止することができる。なお、警報発令後、所定時間経過しても液面センサ324が、限界液面を検出している場合には、真空吸引源89の駆動を停止することが好ましい。
【0080】
次に、気泡除去装置135の気泡除去動作について説明する。メインタンク181から圧送された機能液は、減圧容器320内で、エアー吸引されながら第1気泡除去ユニット300aの内部流路303aを流れてゆく。すなわち、機能液内の溶存気体が気体透過膜を介して減圧室304に透過され、機能液内のマイクロバブルが除去されながら、機能液は、内部流路303aを流れてゆく。第1気泡除去ユニット300aを通過した機能液は、第1接続流路331を介して第2気泡除去ユニット300b内に流入し、同様に機能液内のマイクロバブルが除去されながら、内部流路303bを流れてゆく。そして、第2気泡除去ユニット300bを通過した機能液は、第2接続流路332を介して、第3気泡除去ユニット300c内に流入し、機能液内のマイクロバブルが除去されながら内部流路303cを流れ、主流路131を介してサブタンク121に向かって圧送される。
【0081】
以上のように、本実施形態によれば、真空吸引源89に連なる単一の減圧容器320内に、減圧室304を開放した複数の気泡除去ユニット300を収容しているため、各気泡除去ユニット300を個別に真空吸引源89に接続させる必要がなく、複数の気泡除去ユニット300の交換を容易に行なうことができる。また、複数の接続流路331、332により、複数の気泡除去ユニット300の内部流路303が直列に接続されているため、気泡(マイクロバブル)除去処理を複数回行なうことができ、機能液の流入量が多くても、気泡除去を所定の除去率まで確実に行なうことができる。さらに、真空吸引源89は減圧容器320に接続されているため、たとえ気体透過膜に液漏れが生じても、これが真空吸引源89に吸引されることがない。
【0082】
なお、気泡除去ユニット300のケーシング本体305には、全域に分散するようにして複数の小孔を形成してもよい。これにより、減圧の際の真空ポート309による圧力損失を軽減することができ、効率的に気泡除去処理を行なうと共に、気体透過膜からの液漏れを早期に発見することができる。
【0083】
また、本実施形態においては、8個のキャリッジユニット51を備えた液滴吐出装置1を備えたものを使用しているが、キャリッジユニット51の個数は任意である。
【0084】
次に、図12を参照して、本発明の第2実施形態に係る気泡除去装置135について説明する。なお、本実施形態において、上記第1実施形態の気泡除去装置135と同じ構成については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0085】
本実施形態に係る気泡除去装置135では、3つ(複数)の気泡除去ユニット300d、300e、300fは、全て流入ポート307を下にし、流出ポート308を上にして、減圧容器320に収容されており、これら気泡除去ユニット300d、300e、300fの各内部流路303d、303e、303fは、上流側に設けられた分岐流路341および下流側に設けられた合流流路343により並列に接続されている。すなわち、流入側の主流路131は、継手を介して3本の個別流入流路342から成る分岐流路341に接続し、分岐流路341は、各気泡除去ユニット300d、300e、300fの流入ポート307d、307e、307fを介して各内部流路303d、303e、303fに接続されている。また、各内部流路303d、303e、303fは、各流出ポート308d、308e、308fを介して3本の個別流出流路344から成る合流流路343に接続し、合流流路343は継手を介して流出側の主流路131に接続されている。なお、3本の個別流入流路342および3本の個別流出流路344による圧力損失の相違は、これら個別流入流路342および個別流出流路344の長さで調整することが好ましい。また、各個別流入流路342および各個別流出流路344は、上記第1実施形態と同様に、気体非透過性のチューブ等で構成することが、好ましい。
【0086】
本実施形態において、メインタンク181から圧送された機能液は、分岐流路341により3本に分岐され、真空状態になっている減圧容器320内でエアー吸引されながら、第1気泡除去ユニット300d、第2気泡除去ユニット300e、第3気泡除去ユニット300fの各内部流路303d、303e、303fをそれぞれ流れてゆく。すなわち、機能液内の溶存気体が気体透過膜を介して減圧室304に透過され、機能液内のマイクロバブルが除去されながら、機能液は、各内部流路303d、303e、303fを流れてゆく。各内部流路303d、303e、303f内を通過した各機能液は、合流流路343から主流路131に合流して、サブタンク121に向かって圧送される。
【0087】
以上のように、本実施形態によれば、上流側の分岐流路341および下流側の合流流路343が、複数の気泡除去ユニット300の内部流路303を並列に接続しているため、各気泡除去ユニット300の気泡除去処理を並行して行なうことができ、効率的に気泡除去処理を行なうことができる。また、分岐流路341により機能液の流量が分割され、各気泡除去ユニット300における気泡除去処理量が減少するので、機能液の流量が多くても、所定の除去率まで気泡除去を確実に行なうことができる。
【0088】
図13は、上記第1および第2実施形態の変形例を示すものであり、この変形例では、流入ポート307および流出ポート308を含んで各気泡除去ユニット300が、ハウジング321内に収容されている。一方、ハウジング321の上壁および下壁には、各気泡除去ユニット300に対応して3個ずつ計6個の継手351がシールされた状態でそれぞれ取付けられており、これにより、ハウジング321内を気密に保った状態でハウジング321内外の流路接続を可能にしている。そして、各気泡除去ユニット300の流入ポート307および流出ポート308は、接続短流路352を介して、継手351の内部ポートに接続され、上記接続流路331、332、分岐流路341および合流流路343は、継手351の外部ポートに接続されている。この場合、各接続短流路352および継手351は、上記の接続流路331、332、分岐流路341および合流流路343の一部を構成している。
【0089】
また、ハウジング321の上部には、吸引用チューブ326を介して真空吸引源89が直接連通し、下部には、液漏れした機能液の限界液面を検出する液面センサ324が設けられている。さらに、ハウジング321の底部には、継手を介してドレン配管353が連通されており、ドレン配管353には、ドレンバルブ354が介設されている。減圧容器320内で機能液の液漏れが発生した場合には、液面センサ324がこれを検出し、注意を喚起する。オペレータは、ドレンバルブ354を開放して、液漏れした機能液を抜き取り、必要があれば気泡除去ユニット300を交換する。
【0090】
なお、本実施形態の変形例では、各気泡除去ユニット300を、接続短流路352および継手351を介して主流路131、合流流路343および分岐流路341等の上流側機能液流路126と接続する構成にしたが、減圧容器320内の気密性が維持できる構成であれば、各気泡除去ユニット300と上流側機能液流路126とを直接接続するようにしてもよい。また、気泡除去ユニット300の個数は任意であり、機能液の流量および気泡の除去率と、気泡除去ユニット300の気泡除去性能により決定される。
【0091】
次に、本実施形態の液滴吐出装置1を用いて製造される電気光学装置(フラットパネルディスプレイ)として、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機EL装置、プラズマディスプレイ(PDP装置)、電子放出装置(FED装置、SED装置)、さらにこれら表示装置に形成されてなるアクティブマトリクス基板等を例に、これらの構造およびその製造方法について説明する。なお、アクティブマトリクス基板とは、薄膜トランジスタ、および薄膜トランジスタに電気的に接続するソース線、データ線が形成された基板をいう。
【0092】
まず、液晶表示装置や有機EL装置等に組み込まれるカラーフィルタの製造方法について説明する。図14は、カラーフィルタの製造工程を示すフローチャート、図15は、製造工程順に示した本実施形態のカラーフィルタ500(フィルタ基体500A)の模式断面図である。
まず、ブラックマトリクス形成工程(S101)では、図15(a)に示すように、基板(W)501上にブラックマトリクス502を形成する。ブラックマトリクス502は、金属クロム、金属クロムと酸化クロムの積層体、または樹脂ブラック等により形成される。金属薄膜からなるブラックマトリクス502を形成するには、スパッタ法や蒸着法等を用いることができる。また、樹脂薄膜からなるブラックマトリクス502を形成する場合には、グラビア印刷法、フォトレジスト法、熱転写法等を用いることができる。
【0093】
続いて、バンク形成工程(S102)において、ブラックマトリクス502上に重畳する状態でバンク503を形成する。即ち、まず図15(b)に示すように、基板501およびブラックマトリクス502を覆うようにネガ型の透明な感光性樹脂からなるレジスト層504を形成する。そして、その上面をマトリクスパターン形状に形成されたマスクフィルム505で被覆した状態で露光処理を行う。
さらに、図15(c)に示すように、レジスト層504の未露光部分をエッチング処理することによりレジスト層504をパターニングして、バンク503を形成する。なお、樹脂ブラックによりブラックマトリクスを形成する場合は、ブラックマトリクスとバンクとを兼用することが可能となる。
このバンク503とその下のブラックマトリクス502は、各画素領域507aを区画する区画壁部507bとなり、後の着色層形成工程において機能液滴吐出ヘッド17により着色層(成膜部)508R、508G、508Bを形成する際に機能液滴の着弾領域を規定する。
【0094】
以上のブラックマトリクス形成工程およびバンク形成工程を経ることにより、上記フィルタ基体500Aが得られる。
なお、本実施形態においては、バンク503の材料として、塗膜表面が疎液(疎水)性となる樹脂材料を用いている。そして、基板(ガラス基板)501の表面が親液(親水)性であるので、後述する着色層形成工程においてバンク503(区画壁部507b)に囲まれた各画素領域507a内への液滴の着弾位置のばらつきを自動補正できる。
【0095】
次に、着色層形成工程(S103)では、図15(d)に示すように、機能液滴吐出ヘッド17によって機能液滴を吐出して区画壁部507bで囲まれた各画素領域507a内に着弾させる。この場合、機能液滴吐出ヘッド17を用いて、R・G・Bの3色の機能液(フィルタ材料)を導入して、機能液滴の吐出を行う。なお、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライプ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
【0096】
その後、乾燥処理(加熱等の処理)を経て機能液を定着させ、3色の着色層508R、508G、508Bを形成する。着色層508R、508G、508Bを形成したならば、保護膜形成工程(S104)に移り、図15(e)に示すように、基板501、区画壁部507b、および着色層508R、508G、508Bの上面を覆うように保護膜509を形成する。
即ち、基板501の着色層508R、508G、508Bが形成されている面全体に保護膜用塗布液が吐出された後、乾燥処理を経て保護膜509が形成される。
そして、保護膜509を形成した後、カラーフィルタ500は、次工程の透明電極となるITO(Indium Tin Oxide)などの膜付け工程に移行する。
【0097】
図16は、上記のカラーフィルタ500を用いた液晶表示装置の一例としてのパッシブマトリックス型液晶装置(液晶装置)の概略構成を示す要部断面図である。この液晶装置520に、液晶駆動用IC、バックライト、支持体などの付帯要素を装着することによって、最終製品としての透過型液晶表示装置が得られる。なお、カラーフィルタ500は図15に示したものと同一であるので、対応する部位には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0098】
この液晶装置520は、カラーフィルタ500、ガラス基板等からなる対向基板521、および、これらの間に挟持されたSTN(Super Twisted Nematic)液晶組成物からなる液晶層522により概略構成されており、カラーフィルタ500を図中上側(観測者側)に配置している。
なお、図示していないが、対向基板521およびカラーフィルタ500の外面(液晶層522側とは反対側の面)には偏光板がそれぞれ配設され、また対向基板521側に位置する偏光板の外側には、バックライトが配設されている。
【0099】
カラーフィルタ500の保護膜509上(液晶層側)には、図16において左右方向に長尺な短冊状の第1電極523が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極523のカラーフィルタ500側とは反対側の面を覆うように第1配向膜524が形成されている。
一方、対向基板521におけるカラーフィルタ500と対向する面には、カラーフィルタ500の第1電極523と直交する方向に長尺な短冊状の第2電極526が所定の間隔で複数形成され、この第2電極526の液晶層522側の面を覆うように第2配向膜527が形成されている。これらの第1電極523および第2電極526は、ITOなどの透明導電材料により形成されている。
【0100】
液晶層522内に設けられたスペーサ528は、液晶層522の厚さ(セルギャップ)を一定に保持するための部材である。また、シール材529は液晶層522内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するための部材である。なお、第1電極523の一端部は引き回し配線523aとしてシール材529の外側まで延在している。
そして、第1電極523と第2電極526とが交差する部分が画素であり、この画素となる部分に、カラーフィルタ500の着色層508R、508G、508Bが位置するように構成されている。
【0101】
通常の製造工程では、カラーフィルタ500に、第1電極523のパターニングおよび第1配向膜524の塗布を行ってカラーフィルタ500側の部分を作成すると共に、これとは別に対向基板521に、第2電極526のパターニングおよび第2配向膜527の塗布を行って対向基板521側の部分を作成する。その後、対向基板521側の部分にスペーサ528およびシール材529を作り込み、この状態でカラーフィルタ500側の部分を貼り合わせる。次いで、シール材529の注入口から液晶層522を構成する液晶を注入し、注入口を閉止する。その後、両偏光板およびバックライトを積層する。
【0102】
実施形態の液滴吐出装置1は、例えば上記のセルギャップを構成するスペーサ材料(機能液)を塗布すると共に、対向基板521側の部分にカラーフィルタ500側の部分を貼り合わせる前に、シール材529で囲んだ領域に液晶(機能液)を均一に塗布することが可能である。また、上記のシール材529の印刷を、機能液滴吐出ヘッド17で行うことも可能である。さらに、第1・第2両配向膜524,527の塗布を機能液滴吐出ヘッド17で行うことも可能である。
【0103】
図17は、本実施形態において製造したカラーフィルタ500を用いた液晶装置の第2の例の概略構成を示す要部断面図である。
この液晶装置530が上記液晶装置520と大きく異なる点は、カラーフィルタ500を図中下側(観測者側とは反対側)に配置した点である。
この液晶装置530は、カラーフィルタ500とガラス基板等からなる対向基板531との間にSTN液晶からなる液晶層532が挟持されて概略構成されている。なお、図示していないが、対向基板531およびカラーフィルタ500の外面には偏光板等がそれぞれ配設されている。
【0104】
カラーフィルタ500の保護膜509上(液晶層532側)には、図中奥行き方向に長尺な短冊状の第1電極533が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極533の液晶層532側の面を覆うように第1配向膜534が形成されている。
対向基板531のカラーフィルタ500と対向する面上には、カラーフィルタ500側の第1電極533と直交する方向に延在する複数の短冊状の第2電極536が所定の間隔で形成され、この第2電極536の液晶層532側の面を覆うように第2配向膜537が形成されている。
【0105】
液晶層532には、この液晶層532の厚さを一定に保持するためのスペーサ538と、液晶層532内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するためのシール材539が設けられている。
そして、上記した液晶装置520と同様に、第1電極533と第2電極536との交差する部分が画素であり、この画素となる部位に、カラーフィルタ500の着色層508R、508G、508Bが位置するように構成されている。
【0106】
図18は、本発明を適用したカラーフィルタ500を用いて液晶装置を構成した第3の例を示したもので、透過型のTFT(Thin Film Transistor)型液晶装置の概略構成を示す分解斜視図である。
この液晶装置550は、カラーフィルタ500を図中上側(観測者側)に配置したものである。
【0107】
この液晶装置550は、カラーフィルタ500と、これに対向するように配置された対向基板551と、これらの間に挟持された図示しない液晶層と、カラーフィルタ500の上面側(観測者側)に配置された偏光板555と、対向基板551の下面側に配設された偏光板(図示せず)とにより概略構成されている。
カラーフィルタ500の保護膜509の表面(対向基板551側の面)には液晶駆動用の電極556が形成されている。この電極556は、ITO等の透明導電材料からなり、後述の画素電極560が形成される領域全体を覆う全面電極となっている。また、この電極556の画素電極560とは反対側の面を覆った状態で配向膜557が設けられている。
【0108】
対向基板551のカラーフィルタ500と対向する面には絶縁層558が形成されており、この絶縁層558上には、走査線561および信号線562が互いに直交する状態で形成されている。そして、これらの走査線561と信号線562とに囲まれた領域内には画素電極560が形成されている。なお、実際の液晶装置では、画素電極560上に配向膜が設けられるが、図示を省略している。
【0109】
また、画素電極560の切欠部と走査線561と信号線562とに囲まれた部分には、ソース電極、ドレイン電極、半導体、およびゲート電極とを具備する薄膜トランジスタ563が組み込まれて構成されている。そして、走査線561と信号線562に対する信号の印加によって薄膜トランジスタ563をオン・オフして画素電極560への通電制御を行うことができるように構成されている。
【0110】
なお、上記の各例の液晶装置520,530,550は、透過型の構成としたが、反射層あるいは半透過反射層を設けて、反射型の液晶装置あるいは半透過反射型の液晶装置とすることもできる。
【0111】
次に、図19は、有機EL装置の表示領域(以下、単に表示装置600と称する)の要部断面図である。
【0112】
この表示装置600は、基板(W)601上に、回路素子部602、発光素子部603および陰極604が積層された状態で概略構成されている。
この表示装置600においては、発光素子部603から基板601側に発した光が、回路素子部602および基板601を透過して観測者側に出射されると共に、発光素子部603から基板601の反対側に発した光が陰極604により反射された後、回路素子部602および基板601を透過して観測者側に出射されるようになっている。
【0113】
回路素子部602と基板601との間にはシリコン酸化膜からなる下地保護膜606が形成され、この下地保護膜606上(発光素子部603側)に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜607が形成されている。この半導体膜607の左右の領域には、ソース領域607aおよびドレイン領域607bが高濃度陽イオン打ち込みによりそれぞれ形成されている。そして陽イオンが打ち込まれない中央部がチャネル領域607cとなっている。
【0114】
また、回路素子部602には、下地保護膜606および半導体膜607を覆う透明なゲート絶縁膜608が形成され、このゲート絶縁膜608上の半導体膜607のチャネル領域607cに対応する位置には、例えばAl、Mo、Ta、Ti、W等から構成されるゲート電極609が形成されている。このゲート電極609およびゲート絶縁膜608上には、透明な第1層間絶縁膜611aと第2層間絶縁膜611bが形成されている。また、第1、第2層間絶縁膜611a、611bを貫通して、半導体膜607のソース領域607a、ドレイン領域607bにそれぞれ連通するコンタクトホール612a,612bが形成されている。
【0115】
そして、第2層間絶縁膜611b上には、ITO等からなる透明な画素電極613が所定の形状にパターニングされて形成され、この画素電極613は、コンタクトホール612aを通じてソース領域607aに接続されている。
また、第1層間絶縁膜611a上には電源線614が配設されており、この電源線614は、コンタクトホール612bを通じてドレイン領域607bに接続されている。
【0116】
このように、回路素子部602には、各画素電極613に接続された駆動用の薄膜トランジスタ615がそれぞれ形成されている。
【0117】
上記発光素子部603は、複数の画素電極613上の各々に積層された機能層617と、各画素電極613および機能層617の間に備えられて各機能層617を区画するバンク部618とにより概略構成されている。
これら画素電極613、機能層617、および、機能層617上に配設された陰極604によって発光素子が構成されている。なお、画素電極613は、平面視略矩形状にパターニングされて形成されており、各画素電極613の間にバンク部618が形成されている。
【0118】
バンク部618は、例えばSiO、SiO2、TiO2等の無機材料により形成される無機物バンク層618a(第1バンク層)と、この無機物バンク層618a上に積層され、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性に優れたレジストにより形成される断面台形状の有機物バンク層618b(第2バンク層)とにより構成されている。このバンク部618の一部は、画素電極613の周縁部上に乗上げた状態で形成されている。
そして、各バンク部618の間には、画素電極613に対して上方に向けて次第に拡開した開口部619が形成されている。
【0119】
上記機能層617は、開口部619内において画素電極613上に積層状態で形成された正孔注入/輸送層617aと、この正孔注入/輸送層617a上に形成された発光層617bとにより構成されている。なお、この発光層617bに隣接してその他の機能を有する他の機能層をさらに形成しても良い。例えば、電子輸送層を形成することも可能である。
正孔注入/輸送層617aは、画素電極613側から正孔を輸送して発光層617bに注入する機能を有する。この正孔注入/輸送層617aは、正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物(機能液)を吐出することで形成される。正孔注入/輸送層形成材料としては、公知の材料を用いる。
【0120】
発光層617bは、赤色(R)、緑色(G)、または青色(B)のいずれかに発光するもので、発光層形成材料(発光材料)を含む第2組成物(機能液)を吐出することで形成される。第2組成物の溶媒(非極性溶媒)としては、正孔注入/輸送層617aに対して不溶な公知の材料を用いることが好ましく、このような非極性溶媒を発光層617bの第2組成物に用いることにより、正孔注入/輸送層617aを再溶解させることなく発光層617bを形成することができる。
【0121】
そして、発光層617bでは、正孔注入/輸送層617aから注入された正孔と、陰極604から注入される電子が発光層で再結合して発光するように構成されている。
【0122】
陰極604は、発光素子部603の全面を覆う状態で形成されており、画素電極613と対になって機能層617に電流を流す役割を果たす。なお、この陰極604の上部には図示しない封止部材が配置される。
【0123】
次に、上記の表示装置600の製造工程を図20〜図28を参照して説明する。
この表示装置600は、図20に示すように、バンク部形成工程(S111)、表面処理工程(S112)、正孔注入/輸送層形成工程(S113)、発光層形成工程(S114)、および対向電極形成工程(S115)を経て製造される。なお、製造工程は例示するものに限られるものではなく必要に応じてその他の工程が除かれる場合、また追加される場合もある。
【0124】
まず、バンク部形成工程(S111)では、図21に示すように、第2層間絶縁膜611b上に無機物バンク層618aを形成する。この無機物バンク層618aは、形成位置に無機物膜を形成した後、この無機物膜をフォトリソグラフィ技術等によりパターニングすることにより形成される。このとき、無機物バンク層618aの一部は画素電極613の周縁部と重なるように形成される。
無機物バンク層618aを形成したならば、図22に示すように、無機物バンク層618a上に有機物バンク層618bを形成する。この有機物バンク層618bも無機物バンク層618aと同様にフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。
このようにしてバンク部618が形成される。また、これに伴い、各バンク部618間には、画素電極613に対して上方に開口した開口部619が形成される。この開口部619は、画素領域を規定する。
【0125】
表面処理工程(S112)では、親液化処理および撥液化処理が行われる。親液化処理を施す領域は、無機物バンク層618aの第1積層部618aaおよび画素電極613の電極面613aであり、これらの領域は、例えば酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理される。このプラズマ処理は、画素電極613であるITOの洗浄等も兼ねている。
また、撥液化処理は、有機物バンク層618bの壁面618sおよび有機物バンク層618bの上面618tに施され、例えば四フッ化メタンを処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)される。
この表面処理工程を行うことにより、機能液滴吐出ヘッド17を用いて機能層617を形成する際に、機能液滴を画素領域に、より確実に着弾させることができ、また、画素領域に着弾した機能液滴が開口部619から溢れ出るのを防止することが可能となる。
【0126】
そして、以上の工程を経ることにより、表示装置基体600Aが得られる。この表示装置基体600Aは、図1に示した液滴吐出装置1のワークステージ21に載置され、以下の正孔注入/輸送層形成工程(S113)および発光層形成工程(S114)が行われる。
【0127】
図23に示すように、正孔注入/輸送層形成工程(S113)では、機能液滴吐出ヘッド17から正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物を画素領域である各開口部619内に吐出する。その後、図24に示すように、乾燥処理および熱処理を行い、第1組成物に含まれる極性溶媒を蒸発させ、画素電極(電極面613a)613上に正孔注入/輸送層617aを形成する。
【0128】
次に発光層形成工程(S114)について説明する。この発光層形成工程では、上述したように、正孔注入/輸送層617aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる第2組成物の溶媒として、正孔注入/輸送層617aに対して不溶な非極性溶媒を用いる。
しかしその一方で、正孔注入/輸送層617aは、非極性溶媒に対する親和性が低いため、非極性溶媒を含む第2組成物を正孔注入/輸送層617a上に吐出しても、正孔注入/輸送層617aと発光層617bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層617bを均一に塗布できない虞がある。
そこで、非極性溶媒並びに発光層形成材料に対する正孔注入/輸送層617aの表面の親和性を高めるために、発光層形成の前に表面処理(表面改質処理)を行うことが好ましい。この表面処理は、発光層形成の際に用いる第2組成物の非極性溶媒と同一溶媒またはこれに類する溶媒である表面改質材を、正孔注入/輸送層617a上に塗布し、これを乾燥させることにより行う。
このような処理を施すことで、正孔注入/輸送層617aの表面が非極性溶媒になじみやすくなり、この後の工程で、発光層形成材料を含む第2組成物を正孔注入/輸送層617aに均一に塗布することができる。
【0129】
そして次に、図25に示すように、各色のうちのいずれか(図25の例では青色(B))に対応する発光層形成材料を含有する第2組成物を機能液滴として画素領域(開口部619)内に所定量打ち込む。画素領域内に打ち込まれた第2組成物は、正孔注入/輸送層617a上に広がって開口部619内に満たされる。なお、万一、第2組成物が画素領域から外れてバンク部618の上面618t上に着弾した場合でも、この上面618tは、上述したように撥液処理が施されているので、第2組成物が開口部619内に転がり込み易くなっている。
【0130】
その後、乾燥工程等を行うことにより、吐出後の第2組成物を乾燥処理し、第2組成物に含まれる非極性溶媒を蒸発させ、図26に示すように、正孔注入/輸送層617a上に発光層617bが形成される。この図の場合、青色(B)に対応する発光層617bが形成されている。
【0131】
同様に、機能液滴吐出ヘッド17を用い、図27に示すように、上記した青色(B)に対応する発光層617bの場合と同様の工程を順次行い、他の色(赤色(R)および緑色(G))に対応する発光層617bを形成する。なお、発光層617bの形成順序は、例示した順序に限られるものではなく、どのような順番で形成しても良い。例えば、発光層形成材料に応じて形成する順番を決めることも可能である。また、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライプ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
【0132】
以上のようにして、画素電極613上に機能層617、即ち、正孔注入/輸送層617aおよび発光層617bが形成される。そして、対向電極形成工程(S115)に移行する。
【0133】
対向電極形成工程(S115)では、図28に示すように、発光層617bおよび有機物バンク層618bの全面に陰極604(対向電極)を、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等によって形成する。この陰極604は、本実施形態においては、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。
この陰極604の上部には、電極としてのAl膜、Ag膜や、その酸化防止のためのSiO2、SiN等の保護層が適宜設けられる。
【0134】
このようにして陰極604を形成した後、この陰極604の上部を封止部材により封止する封止処理や配線処理等のその他処理等を施すことにより、表示装置600が得られる。
【0135】
次に、図29は、プラズマ型表示装置(PDP装置:以下、単に表示装置700と称する)の要部分解斜視図である。なお、同図では表示装置700を、その一部を切り欠いた状態で示してある。
この表示装置700は、互いに対向して配置された第1基板701、第2基板702、およびこれらの間に形成される放電表示部703を含んで概略構成される。放電表示部703は、複数の放電室705により構成されている。これらの複数の放電室705のうち、赤色放電室705R、緑色放電室705G、青色放電室705Bの3つの放電室705が組になって1つの画素を構成するように配置されている。
【0136】
第1基板701の上面には所定の間隔で縞状にアドレス電極706が形成され、このアドレス電極706と第1基板701の上面とを覆うように誘電体層707が形成されている。誘電体層707上には、各アドレス電極706の間に位置し、且つ各アドレス電極706に沿うように隔壁708が立設されている。この隔壁708は、図示するようにアドレス電極706の幅方向両側に延在するものと、アドレス電極706と直交する方向に延設された図示しないものを含む。
そして、この隔壁708によって仕切られた領域が放電室705となっている。
【0137】
放電室705内には蛍光体709が配置されている。蛍光体709は、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の蛍光を発光するもので、赤色放電室705Rの底部には赤色蛍光体709Rが、緑色放電室705Gの底部には緑色蛍光体709Gが、青色放電室705Bの底部には青色蛍光体709Bが各々配置されている。
【0138】
第2基板702の図中下側の面には、上記アドレス電極706と直交する方向に複数の表示電極711が所定の間隔で縞状に形成されている。そして、これらを覆うように誘電体層712、およびMgOなどからなる保護膜713が形成されている。
第1基板701と第2基板702とは、アドレス電極706と表示電極711が互いに直交する状態で対向させて貼り合わされている。なお、上記アドレス電極706と表示電極711は図示しない交流電源に接続されている。
そして、各電極706,711に通電することにより、放電表示部703において蛍光体709が励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0139】
本実施形態においては、上記アドレス電極706、表示電極711、および蛍光体709を、図1に示した液滴吐出装置1を用いて形成することができる。以下、第1基板701におけるアドレス電極706の形成工程を例示する。
この場合、第1基板701を液滴吐出装置1のワークステージ21に載置された状態で以下の工程が行われる。
まず、機能液滴吐出ヘッド17により、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴としてアドレス電極形成領域に着弾させる。この液体材料は、導電膜配線形成用材料として、金属等の導電性微粒子を分散媒に分散したものである。この導電性微粒子としては、金、銀、銅、パラジウム、またはニッケル等を含有する金属微粒子や、導電性ポリマー等が用いられる。
【0140】
補充対象となるすべてのアドレス電極形成領域について液体材料の補充が終了したならば、吐出後の液体材料を乾燥処理し、液体材料に含まれる分散媒を蒸発させることによりアドレス電極706が形成される。
【0141】
ところで、上記においてはアドレス電極706の形成を例示したが、上記表示電極711および蛍光体709についても上記各工程を経ることにより形成することができる。
表示電極711の形成の場合、アドレス電極706の場合と同様に、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴として表示電極形成領域に着弾させる。
また、蛍光体709の形成の場合には、各色(R,G,B)に対応する蛍光材料を含んだ液体材料(機能液)を機能液滴吐出ヘッド17から液滴として吐出し、対応する色の放電室705内に着弾させる。
【0142】
次に、図30は、電子放出装置(FED装置あるいはSED装置ともいう:以下、単に表示装置800と称する)の要部断面図である。なお、同図では表示装置800を、その一部を断面として示してある。
この表示装置800は、互いに対向して配置された第1基板801、第2基板802、およびこれらの間に形成される電界放出表示部803を含んで概略構成される。電界放出表示部803は、マトリクス状に配置した複数の電子放出部805により構成されている。
【0143】
第1基板801の上面には、カソード電極806を構成する第1素子電極806aおよび第2素子電極806bが相互に直交するように形成されている。また、第1素子電極806aおよび第2素子電極806bで仕切られた部分には、ギャップ808を形成した導電性膜807が形成されている。すなわち、第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807により複数の電子放出部805が構成されている。導電性膜807は、例えば酸化パラジウム(PdO)等で構成され、またギャップ808は、導電性膜807を成膜した後、フォーミング等で形成される。
【0144】
第2基板802の下面には、カソード電極806に対峙するアノード電極809が形成されている。アノード電極809の下面には、格子状のバンク部811が形成され、このバンク部811で囲まれた下向きの各開口部812に、電子放出部805に対応するように蛍光体813が配置されている。蛍光体813は、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の蛍光を発光するもので、各開口部812には、赤色蛍光体813R、緑色蛍光体813Gおよび青色蛍光体813Bが、上記した所定のパターンで配置されている。
【0145】
そして、このように構成した第1基板801と第2基板802とは、微小な間隙を存して貼り合わされている。この表示装置800では、導電性膜(ギャップ808)807を介して、陰極である第1素子電極806aまたは第2素子電極806bから飛び出す電子を、陽極であるアノード電極809に形成した蛍光体813に当てて励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0146】
この場合も、他の実施形態と同様に、第1素子電極806a、第2素子電極806b、導電性膜807およびアノード電極809を、液滴吐出装置1を用いて形成することができると共に、各色の蛍光体813R,813G,813Bを、液滴吐出装置1を用いて形成することができる。
【0147】
第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807は、図31(a)に示す平面形状を有しており、これらを成膜する場合には、図31(b)に示すように、予め第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807を作り込む部分を残して、バンク部BBを形成(フォトリソグラフィ法)する。次に、バンク部BBにより構成された溝部分に、第1素子電極806aおよび第2素子電極806bを形成(液滴吐出装置1によるインクジェット法)し、その溶剤を乾燥させて成膜を行った後、導電性膜807を形成(液滴吐出装置1によるインクジェット法)する。そして、導電性膜807を成膜後、バンク部BBを取り除き(アッシング剥離処理)、上記のフォーミング処理に移行する。なお、上記の有機EL装置の場合と同様に、第1基板801および第2基板802に対する親液化処理や、バンク部811,BBに対する撥液化処理を行うことが、好ましい。
【0148】
また、他の電気光学装置としては、金属配線形成、レンズ形成、レジスト形成および光拡散体形成等の装置が考えられる。上記した液滴吐出装置1を各種の電気光学装置(デバイス)の製造に用いることにより、各種の電気光学装置を効率的に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の平面図である。
【図3】液滴吐出装置の側面図である。
【図4】ヘッド群を構成する機能液滴吐出ヘッドの図である。
【図5】機能液滴吐出ヘッドの外観斜視図である。
【図6】機能液供給装置の配管系統図である。
【図7】タンクキャビネットを示した図である。
【図8】8分岐流路およびその変形例である10分岐流路を示した図である。
【図9】サブタンク廻りを模式的に表した断面図である。
【図10】液滴吐出装置の主制御系について説明したブロック図である。
【図11】気泡除去装置を示した模式図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る気泡除去装置を示した模式図である。
【図13】変形例に係る気泡除去装置を示した模式図である。
【図14】カラーフィルタ製造工程を説明するフローチャートである。
【図15】(a)〜(e)は、製造工程順に示したカラーフィルタの模式断面図である。
【図16】本発明を適用したカラーフィルタを用いた液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図17】本発明を適用したカラーフィルタを用いた第2の例の液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図18】本発明を適用したカラーフィルタを用いた第3の例の液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図19】有機EL装置である表示装置の要部断面図である。
【図20】有機EL装置である表示装置の製造工程を説明するフローチャートである。
【図21】無機物バンク層の形成を説明する工程図である。
【図22】有機物バンク層の形成を説明する工程図である。
【図23】正孔注入/輸送層を形成する過程を説明する工程図である。
【図24】正孔注入/輸送層が形成された状態を説明する工程図である。
【図25】青色の発光層を形成する過程を説明する工程図である。
【図26】青色の発光層が形成された状態を説明する工程図である。
【図27】各色の発光層が形成された状態を説明する工程図である。
【図28】陰極の形成を説明する工程図である。
【図29】プラズマ型表示装置(PDP装置)である表示装置の要部分解斜視図である。
【図30】電子放出装置(FED装置)である表示装置の要部断面図である。
【図31】表示装置の電子放出部廻りの平面図(a)およびその形成方法を示す平面図(b)である。
【符号の説明】
【0150】
17…機能液滴吐出ヘッド 89…真空吸引源 126…上流側機能液流路(機能液流路) 135…気泡除去装置 300…気泡除去ユニット 301…ケーシング 303…内部流路 304…減圧室 307…流入ポート 308…流出ポート 320…減圧容器 322…廃液タンク 324…液面センサ(液面検出手段) 331…第1接続流路(接続流路) 332…第2接続流路(接続流路) 341…分岐流路 343…合流流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液流路に介設され、前記機能液流路を流れる機能液内のマイクロバブルを除去する気泡除去装置であって、
ケーシングと前記ケーシング内の気体透過膜との間隙に減圧室を構成すると共に前記気体透過膜の内側に機能液が流れる内部流路を構成し、前記気体透過膜を介して機能液から前記減圧室に溶存気体を透過させてマイクロバブルを除去する複数の気泡除去ユニットと、
前記減圧室を開放した前記複数の気泡除去ユニットを収容すると共に、真空吸引源に連なる単一の減圧容器と、
前記複数の気泡除去ユニットの前記内部流路を直列に接続する複数の接続流路と、を備えたことを特徴とする気泡除去装置。
【請求項2】
インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液流路に介設され、前記機能液流路を流れる機能液内のマイクロバブルを除去する気泡除去装置であって、
ケーシングと前記ケーシング内の気体透過膜との間隙に減圧室を構成すると共に、前記気体透過膜の内側に機能液が流れる内部流路を構成し、前記気体透過膜を介して機能液から前記減圧室に溶存気体を透過させてマイクロバブルを除去する複数の気泡除去ユニットと、
前記減圧室を開放した前記複数の気泡除去ユニットを収容すると共に、真空吸引源に連なる単一の減圧容器と、
前記複数の気泡除去ユニットの前記内部流路を並列に接続する上流側の分岐流路および下流側の合流流路と、を備えたことを特徴とする気泡除去装置。
【請求項3】
前記真空吸引源は、前記減圧容器に直接接続されており、
前記減圧容器の下部に設けられ、前記気体透過膜を透過し前記ケーシングから液漏れした機能液の限界液面を検出する液面検出手段を、更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の気泡除去装置。
【請求項4】
前記減圧容器の底部に連通する密閉式の廃液タンクと、
前記廃液タンクに設けられ、当該廃液タンク内に貯留する機能液の限界液面を検出する液面検出手段と、を更に備え、
前記真空吸引源は、前記廃液タンク内の上部空間に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の気泡除去装置。
【請求項5】
前記各気泡除去ユニットは、両端部に設けた流入ポートおよび流出ポートを外部に突出した状態で、前記減圧容器に収容されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の気泡除去装置。
【請求項6】
ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを移動させながら、前記機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行なう描画手段と、
前記機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液流路に介設した請求項1ないし5のいずれかに記載の気泡除去装置と、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液滴吐出装置を用い、前記ワーク上に機能液滴による成膜部を形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の液滴吐出装置を用い、前記ワーク上に機能液滴による成膜部を形成したことを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項7に記載の電気光学装置の製造方法により製造した電気光学装置または請求項8に記載の電気光学装置を搭載したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2008−238127(P2008−238127A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85914(P2007−85914)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】