説明

気相成長装置

【課題】原料ガス中の酸素を効果的に除去することで、酸素濃度の少ないエピタキシャル膜を得ることができる気相成長装置を提供する。
【解決手段】気相成長装置10は、原料ガスを供給する原料ガス供給部3と、原料ガス供給部と接続され、原料ガスを用いて基板に成膜するための反応室2と、酸素除去手段1とを有している。酸素除去手段1は、原料ガス供給部3と反応室2の少なくともいずれか一方に設けられ、固体電解質6を用いて原料ガスから酸素を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板などの処理対象物の表面にエピタキシャル膜を成膜するための装置の一つとして気相成長装置が知られている。気相成長装置によれば、原料ガスを基板が配置された反応室へ流し込み基板上に所望の膜を形成することができる。ここで原料ガス中や装置の配管内に不純物(例えば水分、酸素等)が含まれていると、それらが反応室内の雰囲気に混入してしまうおそれがある。結果として、基板に成膜しているエピタキシャル膜に酸素が混入してしまうため良好なエピタキシャル膜を得ることができなくなるおそれがある。
【0003】
たとえば特開2003−224079号公報(特許文献1)においては、気相成長装置の配管内に付着した水分を除去するために、配管の外側にテープヒータを巻きつけて配管の温度を100℃以上200℃以下に加熱することで水分を蒸発させて取除き、反応室内の雰囲気へ混入する水分量を低減することができる気相成長装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−224079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、気相成長装置は多数の複雑な形状をしている配管やバルブ等を有しているため、これらの箇所に対して上述のようなテープヒータを取付けることは困難であり、これらの箇所では水分を完全に除去するのは難しかった。
【0006】
また配管を加熱することで除去された水分は、ガスの流れに乗って成長室を通過して排気される。その際、水分は反応室内の温度の低い領域などに再付着してしまうことがある。そのため、基板に成膜するときにエピタキシャル膜の中へ上記水分などに由来する酸素が取り込まれてしまい良好なエピタキシャル膜を形成することが難しかった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、原料ガス中の酸素を効果的に除去することで、酸素濃度の少ないエピタキシャル膜を得ることができる気相成長装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る気相成長装置は、原料ガスを供給する原料ガス供給部と、原料ガス供給部と接続され、原料ガスを用いて基板に成膜するための反応室と、原料ガス供給部と反応室の少なくともいずれか一方に設けられ、固体電解質を用いて原料ガスから酸素を除去する酸素除去手段とを備えている。酸素除去手段は、原料ガス供給部と反応室の少なくともいずれか一方に設けられ、固体電解質を用いて原料ガスから酸素を除去する。
【0009】
この気相成長装置によれば、原料ガス供給部および反応室の少なくともいずれか一方において、酸素を効率的に除去することができる。そのため、酸素濃度の少ないエピタキシャル膜を得ることが可能である。
【0010】
より好ましくは、本発明に係る気相成長装置の原料ガス供給部は原料ガスを格納する原料ガス格納部と、原料ガス格納部と反応室とをつなぐ配管部とを含んでおり、酸素除去手段は配管部に設けられている。
【0011】
この気相成長装置によれば、酸素除去手段は配管部に設けられているため、反応室内の構造を改造することなく酸素除去手段を設けることができる。そのため、比較的簡便に酸素を除去することが可能である。
【0012】
より好ましくは、本発明に係る気相成長装置の反応室は基板を保持する基板保持面を有するサセプタを含み、酸素除去手段はサセプタの端部に設けられている。
【0013】
この気相成長装置によれば、より基板に近い場所で酸素を除去することができるため、より酸素濃度の少ないエピタキシャル膜を得ることが可能である。
【0014】
より好ましくは、本発明に係る気相成長装置の反応室は互いに間隔を隔てて配置され基板を保持する複数の小型サセプタを含み、酸素除去手段は複数の小型サセプタの間に設けられている。
【0015】
この気相成長装置によれば、酸素除去手段が複数の小型サセプタの間に設けられているため、より基板に近い場所で酸素を除去することができる。そのため、より酸素濃度の少ないエピタキシャル膜を得ることが可能である。
【0016】
より好ましくは、本発明に係る気相成長装置の反応室は基板を保持する基板保持面を有するサセプタを含み、酸素除去手段は反応室内での原料ガスの流通経路においてサセプタの直前に設けられている。
【0017】
この気相成長装置によれば、酸素除去手段を可動部であるサセプタではなく動作部のない反応管に設けるので、酸素除去手段の取付が容易になる。
【0018】
より好ましくは、本発明に係る気相成長装置は基板を加熱する熱源をさらに備え、酸素除去手段により原料ガスから酸素を除去するための熱エネルギーは、熱源から供給される。
【0019】
この気相成長装置によれば、酸素除去手段に供給する熱源と、基板に供給する熱源を共通化することができるので、気相成長装置の構造がシンプルになる。
【0020】
より好ましくは、酸素除去手段は筒状の固体電解質を含み、固体電解質の内側面および外側面の一方に正電極が設けられ、他方に負電極が設けられている。
【0021】
この気相成長装置によれば、固体電解質の形状が筒状なので、たとえば固体電解質の内周側に原料ガスを流したときに、固体電解質の内周面に位置する電極にまんべんなく原料ガスを接触させることができる。そのため、より効率的に酸素を除去することできるので、より酸素濃度の少ないエピタキシャル膜を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る気相成長装置は、原料ガス中の酸素を効果的に除去することで、酸素濃度の少ないエピタキシャル膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る気相成長装置を示す概念図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る気相成長装置を示す断面模式図である。
【図3】酸素除去手段の原理を示す概念模式図である。
【図4】酸素除去手段の構成の一例を示す概略平面図である。
【図5】酸素除去手段の構成の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る気相成長装置の一部を示す概略平面図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る気相成長装置の一部を示す概略断面図である。
【図8】本発明の実施の形態4に係る気相成長装置の一部を示す概略平面図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る気相成長装置の一部を示す概略断面図である。
【図10】本発明の実施の形態5に係る気相成長装置の一部を示す概略平面図である。
【図11】本発明の実施の形態5に係る気相成長装置の一部を示す概略断面図である。
【図12】本発明に係る気相成長装置の一部を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明については繰り返さない。
【0025】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1の構成について図1を用いて説明する。図1に示すように、気相成長装置10は、原料ガス供給部3と、反応室2と、酸素除去手段1とを主に有している。原料ガス供給部3は、基板に形成される膜の原料を供給する部分である。反応室2は、原料ガス供給部3と接続されている。反応室2は、基板が配置され、原料ガス供給部3から供給された原料ガスを用いて所望の膜を基板に形成する部分である。酸素除去手段1は固体電解質を用いて酸素を除去する部分である。酸素除去手段1は反応室2および原料ガス供給部3の少なくともいずれかに設けられている。言い換えれば、酸素除去手段1は反応室2および原料ガス供給部3のどちらか一方だけに設けられていても良いし、双方に設けられていても良い。実施の形態1の気相成長装置10によれば、原料ガスから酸素を効果的に除去できるので、酸素濃度の少ないエピタキシャル膜を得ることが可能である。
【0026】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2の構成について図2を用いて説明する。
【0027】
図2に示すように、気相成長装置10は、原料ガス供給部3と、反応室2と、酸素除去手段1とを主に有している。また、酸素除去手段1は原料ガス供給部3に設けられている。反応室2は、サセプタ20と、ヒータ23と、反応管24と、リング部25、26と、架台27と、サセプタガイド28と、サセプタホルダ29と、回転軸30と、ジョイント31と、モータ32とを主に有している。サセプタ20は基板を保持しつつヒータ23からの熱を基板に伝達する部分である。ヒータ23は、基板を加熱して原料ガスを用いて基板に成膜するために設けられている。ヒータの設定温度はたとえば1000℃程度である。
【0028】
具体的には、反応管24の底壁には開口部が形成されている。当該開口部には図2に示すようにサセプタ20が配置されている。また、反応管24の底壁下には、リング部25が配置されている。リング部25にはリング部開口部が形成されており、当該リング部開口部の内周面に摺動可能に接触するように環状のリング部26が配置されている。反応管24の底壁に形成された開口部が、上記リング部開口部と平面的に重なるように、反応管24とリング部25とは位置決めされる。開口部および上記リング部開口部の平面形状は例えば円形状である。
【0029】
リング部26は、リング部25に形成されたリング部開口部の内周面に沿って延びる側壁部と、当該側壁部の端部(上端部)において内周側に突出するフランジ部とを含む。リング部26の内周側にはサセプタガイド28が配置されている。サセプタガイド28の外周部は、リング部26のフランジ部における下部表面および側壁部の内周表面に接触して固定されている。サセプタガイド28の形状は環状であって、その下部表面には環状の溝が形成されている。また、サセプタガイド28の下には架台27が配置されている。架台27には環状に延びる凸部が形成されている。当該凸部は上記サセプタガイド28の下部表面の溝に嵌め込まれた状態になっている。このようにサセプタガイド28の溝に架台27の凸部が嵌め込まれた状態となることで、サセプタガイド28が架台27に対して位置決めされている。
【0030】
サセプタガイド28の上部表面上には、サセプタホルダ29が配置されている。サセプタホルダ29の平面形状は環状(たとえば円環状)である。サセプタガイド28の内周側に形成された開口部の幅(直径)より、サセプタホルダ29の内周側に形成された開口部の幅(直径)の方が小さくなっている。
【0031】
そして、サセプタホルダ29の内周側の開口部を塞ぐようにサセプタ20が配置されている。サセプタ20の外周部がサセプタホルダ29上に重なるように、サセプタ20の配置は決定されている。サセプタ20は、反応管24の開口部内部に配置された状態となっている。異なる観点から言えば、反応管24の底壁はリング部25上からサセプタホルダ29と部分的に重なる位置にまで延在している。また異なる観点から言えば、底壁に形成された開口部の内周側壁は、サセプタホルダ29上に位置する。
【0032】
サセプタ20の下部表面における中央部には、回転軸30が接続されている。回転軸30はジョイント31を介してモータ32に接続されている。モータ32が駆動することにより、回転軸30が回転する。その結果、サセプタ20は回転軸30を中心として回転する。サセプタ20、サセプタホルダ29、サセプタガイド28およびリング部26は互いに気密に接続され、サセプタ20とサセプタホルダ29が一体となって回転する。なお、サセプタガイド28とサセプタホルダ29とは摺動可能に接続されている。
【0033】
サセプタ20の下部(回転軸30が接続された側)には、ヒータ23が配置されている。ヒータ23は、サセプタガイド28の開口部の内周側に配置されている。
【0034】
反応管24は原料ガスG1が流入する部分である。リング部25、26はサセプタガイド28を取り囲むように設けられている。リング部25、26は、基板が設けられている側の空間と基板が設けられていない側(すなわちヒータ23が設けられている側)の空間の間をシールする。すなわち、基板が設けられている空間には原料ガス供給部から原料ガスG1が供給されて反応室2の反応管24へ流入する。一方、基板が設けられていない空間には、水素ガス供給部から水素ガスG2が供給されてくる。原料ガスG1と水素ガスG2とが混合しないようにリング部25、26でシールしている。
【0035】
具体的には、リング部25のリング部開口部の内周面に対向するように、リング部26の側壁部外周面が配置されている。リング部26はリング部25のリング部開口部の内周面に沿って摺動可能となっているが、リング部26の側壁部外周面とリング部25のリング部開口部の内周面との間の隙間は極めて小さく設定されている。また、リング部26の側壁部は、図2のリング開口部の内周面に沿った方向における長さが十分長くなるように形成されていることから、当該リング部25とリング部26との間の隙間は十分な気密性を有する。
【0036】
リング部25は、たとえばニッケルから作られていても良いし、モリブデン、炭化珪素またはカーボンから作られていても良い。リング部26の材料としては、セルメット(登録商標)などの金属多孔質を用いることができる。好ましくは、金属多孔質は、ニッケル、クロム、鉄、銅、ステンレス銅、マンガン、モリブデン、タングステン、チタンおよびアルミニウムの少なくともいずれかを含有する。より好ましくは、金属多孔質は、ニッケル、クロム、鉄、銅、ステンレス銅、マンガン、モリブデン、タングステン、チタン、およびアルミニウムのうち、いずれか1つの元素を有する金属、または複数の元素を有する合金である。なお、原料ガスがアンモニアなどの腐食性ガスを含む場合は、上記元素のうち銅およびアルミニウムの使用を避けることが好ましい。
【0037】
次に、本発明の実施の形態2の作用効果について説明する。
本実施の形態2に係る気相成長装置10によれば、酸素除去手段1が原料ガス供給部3と反応室2とを繋ぐ配管部に設けられているため、反応室2内の構造を改造することなく簡易に原料ガスから酸素を除去することができ、酸素濃度の少ないエピタキシャル膜を得ることが可能である。
【0038】
次に、酸素除去手段が酸素を除去する原理について図3を用いて説明する。
酸素除去手段1は、固体電解質6と、正電極7と、負電極8とを主に有する。酸素除去手段1は、固体電解質6の一方の表面に正電極7が設けられ、他方の表面に負電極8が設けられている。正電極7と負電極8との間に電源を接続し、電圧を印加した状態で正電極7側に酸素を含んだ原料ガスG1が流れてくると、酸素は還元されて酸素イオン(O2−)になる。その酸素イオンが負電極8側へ移動し、負電極8側に供給されている水素ガスと反応して水が生成される。これはいわゆる酸素と水素を使って電気を起こす燃料電池と同様の原理である。
【0039】
固体電解質6の材料としては、たとえばZrO系セラミック、LaGaO系セラミック、CeO系セラミック、SrCeO系セラミックおよびCaZrO系セラミック等が挙げられる。固体電解質6の厚みは、たとえば2mm〜8mmの範囲とすることができる。正電極7の材料としては、LSM(ランタンストロンチウムマグネート)、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)およびBSCF(バリウムストロンチウムコバルト鉄酸化物)などが挙げられる。負電極8の材料としては、ニッケル、あるいは、ニッケルとZrO系セラミックス等との複合体が挙げられる。正電極7および負電極8の厚みとしては、共に100um〜400umの範囲内とすることができる。固体電解質6には酸素と親和性の強い材料(たとえばチタン)をゲッター材として混ぜたものを使用してもよい。
【0040】
酸素除去手段1により酸素を除去するためには、固体電解質6を、たとえば600℃以上の高温に保つことが必要である。あるいは、正電極7と負電極8の間に電源9を設けて両者の間に電流を流すことで酸素を除去するためのドライビングフォースを与えることが可能である。
【0041】
次に、酸素除去手段1の具体例について図4および図5を用いて説明する。酸素除去手段1は、固体電解質6と、正電極7と、負電極8と、内壁部材と、外槽とを備える。固体電解質6は、筒状の形状をしており、たとえば円筒状である。また、断面が多角形状の筒でも良い。固体電解質6の内側面には筒状の固体電解質6の内側面の形状に沿うようにして筒状の正電極7が設けられる。また固体電解質6の外側面には筒状の固体電解質6の外側面の形状に沿うようにして負電極8が設けられている。外槽の内部には、外槽の内周表面と間隔を隔てて負電極側空間12を形成するように内壁部材が配置されている。内壁部材には、正電極7および負電極8が設けられた固体電解質6が固定されている。負電極8が負電極側空間12に露出するように、固体電解質6は内壁部材に固定されている。また、内壁部材の内周側に露出するように正電極7は配置されている。つまり、内壁部材の内周側の空間は正電極側空間11となっている。外槽の上方端部には配管53が接続されている。配管53は負電極側空間12につながるように形成されている。また、外槽の上部壁には配管51、52が接続されている。配管51、52は正電極側空間11につながるように形成されている。正電極側空間11の内部において、外槽の上部壁から配管51の先端部までの距離は、上部壁から配管52の先端部までの距離より短くなっている。また、外槽の中央部から見て配管53が接続された部分と反対側の端部(図5における外槽の右側下方端部)には配管54が接続されている。配管54は負電極側空間12につながるように形成されている。水素ガスG2は、配管53を通じて負電極側空間12に供給され、負電極側空間12を通過して配管54を通じて酸素除去手段1から排出される。正電極7と負電極8との間に電圧が印加された状態で、酸素を含む原料ガスG1は配管51を通じて供給されて、正電極側空間11を通過して、配管52を通じて酸素除去手段1から排出される。酸素を含む原料ガスG1が正電極側空間11に入ったときに、酸素が正電極7側で還元されて酸素イオン(O2−)になる。酸素イオンは固体電解質6を通じて負電極8側に移動して、負電極8側で水素と反応して水になる。このようにして酸素を含む原料ガスから酸素が除去される。また負電極側で生成した水は水素ガスG2とともに配管54を通じて酸素除去手段1から排出される。
【0042】
上述のように、正電極側空間11は、正電極7が露出して設けられている空間であり、酸素ガスを含む原料ガスG1が通過する部分である。負電極側空間12は負電極8が露出して設けられている部分であり、水素ガスG2が通過する部分である。
【0043】
なお、正電極7と負電極8の位置を反対にすることも可能であるが、その場合でも、正電極7が露出している正電極側空間11に酸素を含む原料ガスG1が通過し、負電極8が露出している負電極側空間12には水素ガスG2が通過する。
【0044】
次に、酸素除去手段1の作用効果について説明する。
酸素除去手段1を使用すれば、正電極側空間11に流入するガスG1から酸素を効果的に除去することが可能である。
【0045】
なお、本明細書では主に気相成長装置における原料ガスから酸素を除去する手段として本発明を使用することを説明するが、気相成長装置以外にも適用が可能である。たとえば酸素を含むガスから酸素を除去してガスの純度を高めるような精製装置としても本発明による酸素除去手段1を用いることができる。
【0046】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る気相成長装置10の構成について、図6および図7を用いて説明する。気相成長装置10の反応室は基板を保持する基板保持面22を有するサセプタ20を含み、酸素除去手段1はサセプタ20の端部に設けられている。サセプタ20は図6に示した方向からみると略円形である。ここでサセプタ20の端部とは円の外周側の端部のことである。基板保持面22は、サセプタ20に設けられ基板を保持する面である。
【0047】
サセプタ20の端部(外周部)に設けられた酸素除去手段1は、基本的に上述した固体電解質6と正電極7と負電極8とにより構成されている。具体的には、サセプタ20の外周部に負電極8が配置されている。負電極8はサセプタ20の端面の下部(裏面側)上に配置され、サセプタ20の外周を周回するように環状に形成されている。そして、サセプタ20の端面上において、負電極8と接触するように固体電解質6が形成されている。固体電解質6も、サセプタ20の外周を周回するように環状に形成されている。なお、固体電解質6を、複数の固体電解質部分を連結することで構成してもよい。そして、サセプタ20の上部表面(基板保持面22が形成された面)の外周端部から固体電解質6の外周面上を介してサセプタ20の裏面側にまで延在するように、正電極7が形成されている。正電極7は固体電解質6と接触しているとともに、負電極8とも接触している。つまり、図7に示した負電極8と正電極7とが直接的に対向配置された部分(サセプタ20の外周端部における裏面側)では、負電極8と正電極7とが直接接触している。なお、負電極8と正電極7との間に外部から電圧を印加する場合には、負電極8と正電極7とが直接的に対向する部分には絶縁部材を配置し、負電極8と正電極7とが直接接触する(短絡する)ことを防止することが好ましい。
【0048】
酸素除去手段1は、図6に示すようにサセプタ20の外周を全て囲うように設けられているのが好ましい。これにより、より広い面積にわたり酸素を除去することが可能になる。また、酸素除去手段1は、サセプタ20の端部に間欠的に設けることもできるし、サセプタの端部の一箇所に設けることもできる。これにより、酸素除去手段1の構造が比較的シンプルになる。
【0049】
なお、図6および図7に示した酸素除去手段1により原料ガス中の酸素を除去する具体的な方法については後述する。
【0050】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4に係る気相成長装置10の構成について、図8および図9を用いて説明する。気相成長装置10の反応室2は互いに間隔を隔てて配置され基板を保持する複数の小型サセプタ21を有し、酸素除去手段1は複数の小型サセプタ21の間に設けられている。酸素除去手段1は、図8に示すように複数の小型サセプタ21の全ての外周を囲うように設けられているのが好ましい。これにより、広い領域で酸素を除去することが可能である。また、酸素除去手段1は、たとえばの2つの小型サセプタ21を連結するように設けることもできる。これにより、2つの小型サセプタを固定することで強度を高めることが可能になる。さらに、酸素除去手段1は、2つの小型サセプタの外周と接することなく設けられていても構わない。また、酸素除去手段1は、それぞれの小型サセプタ21の外周を囲うように設けられ、それぞれの酸素除去手段1は接していないように設けることもできる。これにより、それぞれの小型サセプタ21の強度を補強しつつ、基板の直前で効率的に酸素を除去することが可能である。
【0051】
ここで、図8および図9に示した気相成長装置では、複数の小型サセプタ21が、酸素除去手段1に形成された開口部に嵌め込まれた状態になっている。具体的には、平面形状が円形状であって複数の開口部が形成された固体電解質6の、当該開口部のそれぞれに小型サセプタ21が配置されている。固体電解質6の一方の表面(図9に示した固体電解質6の下部表面)を覆うように、負電極8が形成されている。また、固体電解質6の他方の表面(図9に示した固体電解質6の上部表面を覆うとともに、固体電解質6の外周端面上にまで延在するように正電極7が形成されている。正電極7の外周端部は負電極8の端部と接触している。なお、負電極8と正電極7との間に外部から電圧を印加する場合には、負電極8と正電極7とが直接的に対向する部分には絶縁部材を配置し、負電極8と正電極7とが直接接触する(短絡する)ことを防止することが好ましい。
【0052】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5に係る気相成長装置10の構成について、図10および図11を用いて説明する。酸素除去手段1は、原料ガスの供給経路においてサセプタ20の直前に設けられている。より具体的には、原料ガスG1は紙面の左から右へ流れていく。酸素除去手段1は、サセプタ20の左側に位置する反応管24の端部付近に設けられている。
【0053】
具体的には、気相成長装置の反応管24の底面において、サセプタ20が配置された開口部に隣接して酸素除去手段1が配置されている。酸素除去手段1は、基本的に上述した固体電解質6と正電極7と負電極8とにより構成されている。酸素除去手段1は、反応管24の底面に形成された凹部の内部に配置されている。当該凹部は、サセプタ20が配置された開口部に対して、原料ガスG1の流通方向における上流側に配置されている。凹部の底部を覆うように負電極8が形成されている。負電極8の平面形状は、基本的に凹部の平面形状と同様である。そして、凹部の平面形状は、図10に示すように四角形の一辺が内周側に凹んだ曲線とった形状である。当該曲線は、サセプタ20の外周形状に沿ったものとなっている。
【0054】
そして、負電極8上に固体電解質6が配置されている。なお、固体電解質6においてサセプタ20に近い側の端面の位置は、上記凹部の側面との間に間隙を形成するように、側面から離れた位置となっている。そして、正電極7は固体電解質6の上部表面を覆うとともに、固体電解質6のサセプタ20に近い側の端面上にまで延在するように形成されている。なお、正電極7のうち固体電解質6の端面上に位置する部分は、その外周部が凹部の側面に接触している。また、正電極7の端部(固体電解質6の端面上に延在した部分における負電極8側の端部)は、負電極8と接触している。なお、負電極8と正電極7との間に外部から電圧を印加する場合には、負電極8と正電極7とが直接的に対向する部分には絶縁部材を配置し、負電極8と正電極7とが直接接触する(短絡する)ことを防止することが好ましい。
【0055】
そして、凹部の底部では、負電極8下に水素ガスG2を流通させるためのガス流通室が形成されている。当該ガス流通室には、反応管24の下側の空間(水素ガスG2が供給される空間)とガス流通室とをつなぐ2本の配管が接続されている。なお、配管は2本に限らず、3本以上の複数本としてもよい。
【0056】
酸素除去手段1を可動部であるサセプタ20ではなく動作部のない反応管24に設けるので、酸素除去手段1の取付が容易になる。また、酸素除去手段1は、サセプタ20の外周部に沿って円板状のサセプタ20の半円を取り囲むように設けられている。これにより、基板の直前で酸素を効率良く除去することが可能である。また、酸素除去手段1は反応管24に間欠的に複数設けても良いし、反応管24の一部に設けても良い。これにより、酸素除去手段1の構造が比較的シンプルになる。
【0057】
次に、図6〜図11に示した酸素除去手段1を加熱する方法について図12を用いて説明する。
【0058】
上述したように、固体電解質6を用いて酸素を除去するためには酸素除去手段1の温度を一定の温度以上にするか、あるいは、正電極7と負電極8の間に電源9を設けて両者の間に電流を流すことで酸素を除去するためのドライビングフォースを与えることが必要である。
【0059】
酸素除去手段1を加熱する場合、ヒータ23等の外部熱源により加熱することができる。酸素除去手段1を基板の近くに配置する場合、基板を加熱するヒータ23を用いて、酸素除去手段1を加熱することが可能である。図12に示すように、ヒータ23の熱がたとえば輻射R1により基板に伝達し、同じヒータ23から出た熱がたとえば輻射R2により酸素除去手段1に伝達する。このような気相成長装置10によれば、酸素除去手段1用の電源が不要となり、かつ酸素除去手段1を加熱する熱源と基板を加熱する熱源を共通化できるので、装置の構造がシンプルになる。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、気相成長装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 酸素除去手段、2 反応室、3 原料ガス供給部、4 原料ガス格納部、5 配管部、6 固体電解質、7 正電極、8 負電極、9 電源、10 気相成長装置、11 正電極側空間、12 負電極側空間、20 サセプタ、21 小型サセプタ、22 基板保持面、23 ヒータ、24 反応管、25,26 リング部、27 架台、28 サセプタガイド、29 サセプタホルダ、30 回転軸、31 ジョイント、32 モータ、51,52,53,54 配管、G1 酸素を含む原料ガス、G2 水素ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを供給する原料ガス供給部と、
前記原料ガス供給部と接続され、前記原料ガスを用いて基板に成膜するための反応室と、
前記原料ガス供給部と前記反応室の少なくともいずれか一方に設けられ、固体電解質を用いて前記原料ガスから酸素を除去する酸素除去手段とを備える、気相成長装置。
【請求項2】
前記原料ガス供給部は前記原料ガスを格納する原料ガス格納部と、前記原料ガス格納部と前記反応室とをつなぐ配管部とを含み、
前記酸素除去手段は前記配管部に設けられている、請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記反応室は前記基板を保持する基板保持面を有するサセプタを含み、
前記酸素除去手段は前記サセプタの端部に設けられている、請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記反応室は互いに間隔を隔てて配置され前記基板を保持する複数の小型サセプタを含み、
前記酸素除去手段は複数の前記小型サセプタの間に設けられている、請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項5】
前記反応室は前記基板を保持する基板保持面を有するサセプタを含み、
前記酸素除去手段は前記反応室内での前記原料ガスの流通経路において前記サセプタの直前に設けられている、請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項6】
前記基板を加熱する熱源をさらに備え、
前記酸素除去手段により前記原料ガスから前記酸素を除去するための熱エネルギーは、前記熱源から供給される、請求項1〜5のいずれかに記載の気相成長装置。
【請求項7】
前記酸素除去手段は筒状の前記固体電解質を含み、
前記固体電解質の内側面および外側面の一方に正電極が設けられ、他方に負電極が設けられている、請求項1または2に記載の気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−8798(P2013−8798A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139633(P2011−139633)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】