説明

水素ガス製造装置

【課題】二酸化炭素を実質的に放出することなく水素を製造することができ、また電力消費も大幅に低減して低コストで水素を製造することができるようにする。
【解決手段】本発明の水素ガス製造装置10Aは、水分を含有する水分含有液体と、粉体状の糖原料とを混合して水分糖原料混合液体を製造する水分糖原料混合液体製造部1Aと、その水分糖原料混合液体製造部1Aで製造された水分糖原料混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部2Aと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスを製造する水素ガス製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水素は燃料電池に使用され、消費量や用途が高まっている。この水素の製造は、原料またはエネルギーとして化石資源を用いる方法と用いない方法に大別される。
【0003】
化石資源を用いる方法は工業的製造法として確立し、例えばLPG、ナフサ等の軽質炭化水素を原料とする水蒸気改質プロセスにより大量に生産されている(下記の特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−175617号公報
【特許文献2】特開平11−323355号公報
【0005】
また、化石資源を用いない水素製造法としては、水の電気分解が代表的なものとして挙げられる。
【0006】
しかし、上記の水蒸気改質プロセスによる水素製造の場合は、工業的製造法として確立しているものの、大量の二酸化炭素を放出するという問題点を有している。
【0007】
また、水の電気分解による水素製造の場合は、電力消費が大量となり、水素が高コストとなるという問題点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は上記に鑑み提案されたもので、二酸化炭素を実質的に放出することなく水素を製造することができ、また電力消費も大幅に低減して低コストで水素を製造することができる水素ガス製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、水素ガスを製造する水素ガス製造装置において、水分を含有する水分含有液体と、粉体状の糖原料とを混合して水分糖原料混合液体を製造する水分糖原料混合液体製造部と、上記水分糖原料混合液体製造部で製造された水分糖原料混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部と、を備えたことを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、水素ガスを製造する水素ガス製造装置において、水分を含有する水分含有液体と、粉体状の炭素を含有する粉体状炭素含有物と、粉体状の糖原料とを混合して水分炭素糖原料混合液体を製造する水分炭素糖原料混合液体製造部と、上記水分炭素糖原料混合液体製造部で製造された水分炭素糖原料混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部と、を備えたことを特徴としている。
請求項7に記載の発明は、水素ガスを製造する水素ガス製造装置において、木タールと水蒸気とを混合して木タール蒸気混合体を製造する木タール蒸気混合体製造部と、上記木タール蒸気混合体製造部で製造された木タール蒸気混合体を加熱し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部と、を備えたことを特徴としている。
請求項8に記載の発明は、水素ガスを製造する水素ガス製造装置において、バイオマスを加熱して熱分解させ、水素と二酸化炭素と一酸化炭素とを生成する炭化炉と、上記炭化炉から導入された一酸化炭素と、供給された水蒸気とを反応させて二酸化炭素と水素に変換し、上記炭化炉から導入された水素および二酸化炭素とともに、水素ガスユーザ側に送出するシフト反応部と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、水分含有液体と、粉体状の糖原料とを混合し、その混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを製造するようにしたので、二酸化炭素を実質的に放出することなく水素を製造することができ、また電力消費も大幅に低減して低コストで水素を製造することができる。
【0011】
また、本発明によると、水分含有液体と、粉体状炭素含有物と、粉体状の糖原料とを混合し、その混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを製造するようにしたので、二酸化炭素を実質的に放出することなく水素を製造することができ、また電力消費も大幅に低減して低コストで水素を製造することができる。
【0012】
また、木タールと水蒸気とを混合して水素ガスを製造するようにしたので、二酸化炭素を実質的に放出することなく水素を製造することができ、また電力消費も大幅に低減して低コストで水素を製造することができる。
【0013】
また、バイオマスから水素ガスを製造するようにしたので、従来利用されていなかった伐採材なども活用することができ、水素製造のコストを大幅に低減することができる。
【0014】
また、水には、従来利用されていなかった排水・廃水も活用することができ、水素製造のコストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の水素ガス製造装置の第1の実施形態を示すブロック構成図である。
【図2】第1の実施形態における水素ガス製造装置の実施例1を示す図である。
【図3】第1の実施形態における水素ガス製造装置の実施例2を示す図である。
【図4】本発明の水素ガス製造装置の第2の実施形態を示すブロック構成図である。
【図5】本発明の水素ガス製造装置の第3の実施形態を示すブロック構成図である。
【図6】本発明の水素ガス製造装置の第4の実施形態を示すブロック構成図である。
【図7】本発明の水素ガス製造装置の第5の実施形態を示すブロック構成図である。
【図8】本発明の水素ガス製造システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、この発明の第1の実施形態について、図1〜図3を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の水素ガス製造装置の第1の実施形態を示すブロック構成図である。図1において、本発明の水素ガス製造装置10は、水素ガスを製造する装置であり、水分を含有する水分含有液体と、粉体状の炭素を含有する粉体状炭素含有物とを混合して水分炭素混合液体を製造する水分炭素混合液体製造部1と、その水分炭素混合液体製造部1で製造された水分炭素混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部2とを備えている。この水素ガス製造部2は、水素ガスと共に二酸化炭素ガスを発生させる。
【0018】
粉体状炭素含有物は、木炭、コークス、竹炭、無煙炭、カーボンブラック、黒鉛、炭化珪素、活性炭、練炭、ヤシガラ炭、トナー(廃トナーも含む)、および廃タイヤの少なくとも何れか1つからなる、粉体状のものである。
【0019】
水分炭素混合液体製造部1において、粉体状炭素含有物は、水分含有液体と混合し、水分に溶けた状態で混合する。その粒径は、水分に溶かすために、100μm以下とし、最も好ましいのは1〜10μmである。1μm未満だと細かすぎて取り扱いに困り、10μmより大きいと、大きすぎて水分含有液体に混ざりにくくなるためである。
【0020】
上記の水分含有液体は、H2Oを50重量%以上含み、例えば水であり、また発酵生成エタノールであり、あるいはその双方からなる。ここで、発酵生成エタノールは、トウモロコシやサトウキビなどのバイオマス原料を発酵させた直後に得られるもろみの液体成分で、H2Oを50重量%以上含んでいる。発酵生成エタノールの発酵原料はケーン(サトウキビ)、ピート、乳糖、ヘキソースなどの糖質原料、コーン、麦、米、甘薯、馬鈴薯などのデンプン質原料、未利用樹、廃材、稲わら、ササ、タケなどのセルロース系バイオマス原料である。
【0021】
上記の水素ガス製造部2は、水分炭素混合液体製造部1で製造された水分炭素混合液体を加熱して蒸気化し反応させる。その反応温度は、200〜700℃である。この反応温度下において、蒸気化された水分子(H2O)は、粉体状炭素含有物を構成する炭素(C)によって還元され、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)が生成される。このとき、大量の熱が発生し、この熱は水素ガス製造部2において、水分炭素混合液体の蒸気化に利用される。
【0022】
水素ガス製造部2では、水素とともに二酸化炭素が生成されるが、この二酸化炭素は、木炭、竹炭、発酵生成エタノールといったバイオマス中の炭素を起因として生成されており、全体として見ればカーボンニュートラルであり、大気中の二酸化炭素量を実質的には増加させない。
【0023】
水分含有液体が水、例えば地下水(井戸水)、河川水、湖沼水、海水淡水化水、農業用水、湧き水、ダムの水、工業用水、水道水、軟水、凝縮水、雨水、排水および廃水の何れかである場合、水素ガス製造部2は、下記式(1)の還元反応により、水素を生成する。
C+2H2O→2H2+CO2+74.8MJ(発生熱量)・・・(1)
【0024】
水分含有液体が発酵生成エタノール(C25OH、エタノール14.6体積%、H2O85.4体積%)の場合、水素ガス製造部2は、下記式(2)の還元反応により、水素を生成する。
C+0.25C25OH+4.75H2O+289.5MJ(必要入熱)→3.5H2+1.5CO2+2H2O+604.5MJ(発生熱量)・・・(2)
このように発生熱量は加えるべき熱量の約2倍であるため、スタートアップ時のみ外部からの熱が必要だが、定常運転では外部からの熱は不要である。
【0025】
図2は第1の実施形態における水素ガス製造装置の実施例1を示す図である。図2において、水素ガス製造装置100は、水分炭素混合液体製造部101と、水素ガス製造部201とから構成されている。
【0026】
水分炭素混合液体製造部101は混合機15を有し、この混合機15には、水タンク13の水がポンプ14を介して供給される。なお、水タンク13では、触媒(炭酸カリウム:K2CO3)を一定割合で水に加えている。触媒(炭酸カリウム:K2CO3)は加えなくてもよいが、加えた方が好ましい。炭酸カリウム(K2CO3)を5重量%含む実験結果は、より低い温度で反応することを確認した。
【0027】
また、ホッパー11に投入された炭素含有物(例えば、木炭、コークス、竹炭、無煙炭、カーボンブラック、黒鉛、炭化珪素、活性炭、練炭、ヤシガラ炭およびトナー(廃トナーも含む))が、粉砕機12で粒径100μm以下の粉体とされた状態で、混合機15に供給される。ただし、トナーはすでに粉状なので粉砕不要である。混合機15では、供給された粉体状炭素含有物が、例えばカーボンからなるコピー機用トナーが水に溶けて黒い液となるように、水に溶けて混合し、水分炭素混合液体となる。
【0028】
この水分炭素混合液体は、水素ガス製造部201のポンプ21を介して加熱蒸発器22に送出され、加熱蒸発器22において300℃に加熱・蒸気化された後、反応器23に送られる。この加熱蒸発器22における加熱は、ヒータ(図示省略)と、後述する反応器23から送られてくる、水素と二酸化炭素とからなる約670℃の高温ガスとの熱交換によって行われる。
【0029】
反応器23においては、触媒の作用も加わって、蒸気(H2O)中の水素が、炭素(C)により還元され、その結果水素ガス(H2)と二酸化炭素ガス(CO2)が生成される(上記の反応式(1)参照)。このとき発生する大量の熱によって、水素と二酸化炭素は、約670℃の高温ガスとなる。この高温ガス(水素と二酸化炭素)は、反応器23から出て上記の加熱蒸発器22に送られ、加熱蒸発器22での熱交換により冷却された後、さらに冷却・凝縮器24に送られる。
【0030】
冷却・凝縮器24に送られてきた高温ガスの内、過剰の酸素が水素と反応して生成された水蒸気が、冷却されて水となり凝縮水タンク26に蓄えられ、その後水タンク13に送出され回収される。また、冷却・凝縮器24に送られてきた高温ガスの内、水素と二酸化炭素は、50℃に冷却された後、ガスホルダー29に蓄えられ、その後ユーザーに搬送される。この場合のユーザーは、水素と二酸化炭素とが混合していても差し支えのないユーザー、例えば燃料電池(PEFC等)ユーザー、ガスエンジンユーザー、ガスタービンユーザーなどの内燃機関ユーザー、ボイラ、加熱炉などの外燃機関ユーザーである。
【0031】
また、冷却・凝縮器24で50℃に冷却された水素と二酸化炭素は、途中で分岐して脱炭酸部27に送られて二酸化炭素が除去された後、水素のみとなってガスホルダー28に蓄えられ、その後水素ユーザーに向けて搬送される。この場合の水素ユーザーは、例えば燃料電池ユーザー、化学工場、半導体工場、石炭液化工場、石炭ガス化工場、ガス充填所、水素ステーション、研究所・大学・試験機関である。
【0032】
図3は第1の実施形態における水素ガス製造装置の実施例2を示す図である。図3において、水素ガス製造装置100Aは、水分炭素混合液体製造部101Aと、水素ガス製造部201Aとから構成されている。この実施例2(図3)において、上記実施例1(図2)と略同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。実施例2が実施例1と相違するのは、水分炭素混合液体製造部101Aにおいて、水タンクでなく発酵生成エタノールタンク16を用いる点、および反応器・熱交換器23aを用いる点である。
【0033】
発酵生成エタノールタンク16には、発酵生成エタノール製造プラント17の工場から、タンクローリーやパイプラインを経由して発酵生成エタノールが供給される。この発酵生成エタノール(C25OH)は、H2Oを50重量%以上含む水分含有液体であり、反応器・熱交換器23aに送られると、実施例1の場合と同様に還元反応が起こり、水素と二酸化炭素が生成される。この場合、例えば下記の式(3)の反応が起こる。
2C+0.25C25OH+4.75H2O→5.5H2+2.5CO2・・・(3)
上記の式(3)の反応により生成された水素と二酸化炭素とは高温(1870℃)になるために、反応器・熱交換器23aには下部から冷却水(50℃)が導入され、反応器・熱交換器23a内を通過して熱交換により水蒸気となり、上部から外部に排出される。なお、この水蒸気は、後述する水蒸気ドラム50(図8)に供給することにより再利用可能である。
【0034】
生成された高温ガス(水素と二酸化炭素)は、反応器・熱交換器23aから出て、実施例1の場合と同様に、加熱蒸発器22および冷却・凝縮器24に送られる。なお、凝縮水タンク26に水が蓄えられるので、この水は実施例1の水タンク13に回収するようにすればよい。
【0035】
次に、この発明の第2、第3、第4および第5の実施形態について、図4〜図7を用いて説明する。
【0036】
図4は本発明の水素ガス製造装置の第2の実施形態を示すブロック構成図である。図4において、第2の実施形態における水素ガス製造装置10Aは、水素ガスを製造する装置であり、水分を含有する水分含有液体と、粉体状の糖原料とを混合して水分糖原料混合液体を製造する水分糖原料混合液体製造部1Aと、この水分糖原料混合液体製造部1Aで製造された水分糖原料混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部2Aと、を備えている。この水素ガス製造部2は、水素ガスと共に二酸化炭素ガスを発生させる。
【0037】
上記の糖原料は、粉体状のもので、水に溶ける糖なら何でも用いることができ、例えば砂糖、ショ糖、糖密、ケーンジュース、上白糖である。
【0038】
この第2の実施形態が、上記の第1の実施形態(図1)と相違しているのは、粉体状炭素含有物に代えて、粉体状の糖原料を用いている点である。
【0039】
上記の水素ガス製造部2Aは、水分糖原料混合液体製造部1Aで製造された水分糖原料混合液体を加熱して蒸気化し反応させる。この反応において、蒸気化された水分子(H2O)および糖原料を構成する水素(H)は、糖原料の炭素(C)によって還元され、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)が生成される。
【0040】
糖原料に上白糖(C122410)を用い、水分含有液体を水とした場合、水素ガス製造部2Aは、下記式(4)の還元反応により、水素を生成する。
122410+14H2O+K2CO3→26H2+12CO2・・・(4)
【0041】
糖原料にショ糖(C122211)を用い、水分含有液体を発酵生成エタノール(C25OH)とした場合、水素ガス製造部2Aは、下記式(5)の還元反応により、水素を生成する。
122211+C25OH+19H2O+K2CO3→30H2+14CO2+3H2O・・・(5)
【0042】
上記の式(4)(5)において、K2CO3(炭酸カリウム)は反応を促進するための触媒であり、極微量(5重量%以下)用いられる。
【0043】
図5は本発明の水素ガス製造装置の第3の実施形態を示すブロック構成図である。図5において、第3の実施形態における水素ガス製造装置10Bは、水素ガスを製造する装置であり、水分を含有する水分含有液体と、粉体状の炭素を含有する粉体状炭素含有物と、粉体状の糖原料とを混合して水分炭素糖原料混合液体を製造する水分炭素糖原料混合液体製造部1Bと、その水分炭素糖原料混合液体製造部1Bで製造された水分炭素糖原料混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部2Bとを備えている。この水素ガス製造部2Bは、水素ガスと共に二酸化炭素ガスを発生させる。
【0044】
上記の糖原料は、粉体状のもので、水に溶ける糖なら何でも用いることができ、例えば砂糖、ショ糖、糖密、ケーンジュース、上白糖である。
【0045】
この第3の実施形態が、上記の第1の実施形態(図1)と相違しているのは、粉体状炭素含有物に加えて、粉体状の糖原料を用いている点である。
【0046】
上記の水素ガス製造部2Bは、水分炭素糖原料混合液体製造部1Bで製造された水分炭素糖原料混合液体を加熱して蒸気化し反応させる。この反応において、蒸気化された水分子(H2O)は、粉体状炭素含有物および糖原料の炭素(C)によって還元され、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)が生成される。
【0047】
この二酸化炭素は、バイオマスである糖原料中の炭素を起因として生成されており、全体として見ればカーボンニュートラルであり、大気中の二酸化炭素量を実質的には増加させない。
【0048】
図6は本発明の水素ガス製造装置の第4の実施形態を示すブロック構成図である。図6において、第4の実施形態における水素ガス製造装置10Cは、水素ガスを製造する装置であり、木タールと水蒸気とを混合して木タール蒸気混合体を製造する木タール蒸気混合体製造部1Cと、その木タール蒸気混合体製造部1Cで製造された木タール蒸気混合体を加熱し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部2Cとを備えている。この水素ガス製造部2Cは、水素ガスと共に二酸化炭素ガスを発生させる。
【0049】
上記の木タールは、木材の乾留によって得られる黒褐色の粘性のある液体である。
【0050】
上記の水素ガス製造部2Cは、木タール蒸気混合体製造部1Cで製造された木タール蒸気混合体を加熱して蒸気化し反応させる。この反応において、蒸気化された水分子(H2O)および木タール中の水素(H)は木タールを構成する炭素(C)によって還元され、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)が生成される。
【0051】
この木タール(C683)と水蒸気との混合体から、水素ガス製造部2Cは、下記式(6)の還元反応により、水素を生成する。
683+9H2O→13H2+6CO2・・・(6)
【0052】
図7は本発明の水素ガス製造装置の第5の実施形態を示すブロック構成図である。図7において、第5の実施形態における水素ガス製造装置10Dは、水素ガスを製造する装置であり、バイオマス(木質系、農産物加工残渣)を加熱して熱分解させ、水素と二酸化炭素と一酸化炭素とを生成する炭化炉3と、その炭化炉から導入された一酸化炭素と、供給された水蒸気とを反応させて二酸化炭素と水素に変換し、炭化炉3から導入された水素および二酸化炭素とともに、水素ガスユーザ側に送出するシフト反応部4とを備えている。このシフト反応部4は、水素ガスと共に二酸化炭素ガスを発生させる。
【0053】
上記のバイオマスは、木質系バイオマスおよび農産物加工残渣の何れかであり、木質系バイオマスは、例えば伐採材、間伐材、製材、木屑、木質チップ、プレナーくず、建設廃材、木枠、製材残材、製材廃材、紙・パルプ工場の黒液、製紙工場廃材・スラッジ、都市の木質廃棄物、および植木・果樹剪定枝の何れかである。また、農産物加工残渣は、バガス(サトウキビの絞りかす)、果樹剪定残さ、コーン、籾殻、および鶏糞等の家畜の糞の何れかである。
【0054】
炭化炉3では、バイオマスを不活性雰囲気中で加熱し熱分解させ、その結果、水素と二酸化炭素と一酸化炭素を生成する。この実施形態では、生成された一酸化炭素をシフト反応部4において水蒸気により、さらに二酸化炭素と水素に変換し、最終的に水素と二酸化炭素のみを取り出している。
【0055】
バイオマスのうち、木質系バイオマスを用いた本発明の水素ガス製造システムについて、図8を用いて説明する。
【0056】
図8は本発明の水素ガス製造システムの構成図である。図8において、本発明の水素ガス製造システム100Sは、木炭炉(炭化炉)30を有し、この木炭炉30には、木質系バイオマス(木材(森林の伐採材、製材)、木屑、製材残材等)が供給される。木炭炉30では、この木質系バイオマスを不活性雰囲気中で加熱し熱分解させ、その結果、木炭、木タールとともに、水素と二酸化炭素と一酸化炭素を生成する。
【0057】
木質系バイオマスに木材(広葉樹、C507434)を用いた場合、木炭炉30では、下記式(7)の反応が起こっている。
507434→2C(木炭)+6.33C683(木タール)+5CO2+5CO+11.7H2・・・(7)
【0058】
木炭炉30で生成された水素と二酸化炭素と一酸化炭素は、シフト反応器40に導入される。
【0059】
シフト反応器40においては、一酸化炭素と水蒸気とを下記の式(8)に従って反応させ、水素と二酸化炭素とに変換する。
CO+H2O→CO2+H2・・・(8)
【0060】
したがって、シフト反応器40からは水素と二酸化炭素が送出され、この水素と二酸化炭素は、冷却器41で冷却された後、ガスホルダー42に蓄えられ、その後ユーザーに搬送される。この場合のユーザーは、水素と二酸化炭素とが混合していても差し支えのないユーザー、例えば燃料電池(PEFC等)ユーザー、ガスエンジンユーザー、ガスタービンユーザーなどの内燃機関ユーザー、ボイラ、加熱炉などの外燃機関ユーザーである。
【0061】
また、冷却器41で冷却された水素と二酸化炭素は、途中で分岐して脱炭酸部43に送られて二酸化炭素が除去された後、水素のみとなってガスホルダー44に蓄えられ、その後水素ユーザーに向けて搬送される。この場合の水素ユーザーは、例えば燃料電池ユーザー、化学工場、半導体工場、石炭液化工場、石炭ガス化工場、ガス充填所、水素ステーション、研究所・大学・試験機関である。
【0062】
また、木炭炉30で生成された水素と二酸化炭素と一酸化炭素は、シフト反応器40の手前で分岐され、冷却器45で冷却された後、そのままユーザーに搬送されるようにしてもよい。この場合のユーザーは、例えばSOFC(固体酸化物型燃料電池)ユーザー、ガスエンジンユーザー、ガスタービンユーザーなどの内燃機関ユーザー、ボイラ、加熱炉などの外燃機関ユーザーである。
【0063】
一方、木炭炉30で製造された木炭は、実施例1の水素ガス製造装置100、および実施例2の水素ガス製造装置100Aの各ホッパー11に投入されて、粉体状炭素含有物として利用可能となる。
【0064】
また、木炭炉30で製造された木タールは、混合機31で、350℃の水蒸気および少量の発酵生成エタノールとともに混合されて木タール蒸気混合体となる。水蒸気は、水蒸気ドラム50から供給されるが、この水蒸気ドラム50には、実施例2の反応器・熱交換器23aから約350℃の状態で排出される水蒸気を回収して利用することができる。
【0065】
混合機31で生成された木タール蒸気混合体は、その後、ポンプ32によって、加熱蒸発器33に送出される。そして、加熱蒸発器33において410℃に加熱・蒸気化された後、反応器36に送られる。
【0066】
反応器36においては、蒸気化された水分子(H2O)および木タール中の水素(H)は木タールを構成する炭素(C)によって還元され、上記の式(6)の反応が起こり、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)が生成される。このとき発生する大量の発生熱によって、水素と二酸化炭素は高温ガスとなり、反応器36から出て上記の加熱蒸発器33に送られ、加熱蒸発器33での熱交換により冷却されたた後、さらに冷却・凝縮器34に送られる。
【0067】
冷却・凝縮器34に送られてきた高温ガスの内、過剰の酸素が水素と反応して生成された水蒸気が、冷却されて水となり凝縮水タンク35に蓄えられ、その後実施例1の水タンク13(図2)に送出され回収される。
【0068】
冷却・凝縮器34に送られてきた高温ガスの内、水素と二酸化炭素は冷却された後、脱炭酸部38に送られて二酸化炭素が除去された後、水素のみとなってガスホルダー39に蓄えられ、その後水素ユーザーに向けて搬送される。
【0069】
また、冷却・凝縮器34で冷却された水素と二酸化炭素は、脱炭酸部38の手前で分岐し、そのままガスホルダー37に蓄えられ、その後ユーザーに搬送される。
【0070】
上記構成の水素ガス製造システム100Sにおいては、木炭炉30での反応式(7)、シフト反応器40での反応式(8)、反応器36での反応式(6)に基づく熱化学反応が起こる。また、木炭炉30で製造された木炭を実施例2の水素ガス製造装置100Aのホッパー11に投入した場合をこの水素ガス製造システム100Sに含めることができ、その場合は、実施例2の反応器・熱交換器23aでの反応式(3)に基づく熱化学反応も起こる。
【0071】
したがって、式(3)、(6)、(7)、(8)を合成すると、下記の反応式(9)が、木質系バイオマスを用いた水素ガス製造システム100Sのシステム全体の反応式として得ることができる。
507434(木材)+[0.25C25OH+4.75H2O](発酵生成エタノール)+62H2O→104.5H2+50.5CO2・・・(9)
【0072】
上記の本発明の水素ガス製造システム100Sについて考察する。1,219kgの木材(広葉樹)と97kgの発酵生成エタノールと1,117kgの水を原料にわずかな熱を加えるだけで、210kgの水素が得られる。
【0073】
安い原料で高価な水素が得られることのほかに、生成した水素104.5kmolは、ガスエンジン等の燃料あるいは燃料電池に消費されようともH2Oとなって地上に戻ってくる。原料である水(62kmol)と生成水(104.5kmol)の差は42.5kmolである。この42.5kmolは木材と発酵生成エタノールからくる。本発明の水素ガス製造システムを運転し続ける限り、原料である水は増加しつづける。すなわち原料の一つである炭素(C)が枯渇しない限りエネルギー原料の水がある限り地球は水素エネルギーの恩恵にあづかることができるようになる。
【0074】
また、CO2も50.5kmol排出されるが、このCはバイオマスからのCO2であるので、ゼロカウントとみなされる。排出権取引にも利用できる。
【0075】
この製造プロセスの最大の特長は、4種類の安価な原料(バイオマス、水、水分含有液体、粉体状の糖原料)中のHを、100%高価な水素ガス(H2)に変換することができることである。また、加えるべき熱量より発生熱量の方が大きいために定常運転では外部から熱を加える必要がないためにその分ランニングコストを小さくできる。
【0076】
本発明の水素ガス製造システムの特長をまとめると以下のようになる。
a)安価な原料から高価な水素ガス(H2)が製造できる。そのうちのほとんどの割合を占めるのが木質系バイオマスと水である。
b)原料も含めて、すべてバイオマスと水であるため製造ガス中に硫黄(S)分を全く含まない(脱硫設備不要)。
c)この水素製造プロセスの木炭炉(炭化炉)は製鉄所のコークス炉と同じであるため、設計が簡単にできる。発生ガス処理設備設計も同様である。
d)現在休止中のバイオエタノール製造プラントを活用できる。
e)休耕田を活用できる。発酵生成エタノールの原料は糖質原料であるサトウキビ,テンサイ等及びデンプン質原料であるトウモロコシ、小麦、米等。
f)雇用の創出ができる。林業、農業、工鉱業の雇用の創出ができる。
g)消費も含め経済が活性化する。林業、農業、鉱工業とほとんどの産業が活性化する。
h)廃バイオマス(廃木材等)及び廃水を利用できる。すなわちHがかなりの割合で入っていれば良い。原料中に一部廃プラスチック等でも可。
i)木タールは現在稼動中の”タール蒸留”と同様、付加価値の高い石炭酸(フェノール)等及び炭素繊維の原料であるピッチの製造も可能である。すなわち、石炭化学ならぬ木質系バイオマス化学への展開も可能である。
j)森林火災の防止にも役立つ。米国を含めた海外では大きな面積にわたって森林が火災にあっている。前もって樹木を伐採しておけば環境問題、エネルギー問題及び森林火災問題は解決できるはずである。
k)H2Oが循環するだけで、系内のH2Oは増加する。原料の水以外の原料中の水素(H)と酸素(O)からH2Oを生成することができる。
l)発電所と結びつければ、H2Oをメークアップする必要がない。(9)式の62kmolの水は、104.5kmolの水素(H2+0.5O2→H2O)から確保できる。
m)離島用発電プラントにはぴったりである。森林、バイオマス(サトウキビ等)及び水が豊富である。現在の発電コストより小さくしかもCO2ゼロエミッションである。
【0077】
以上述べたように、本発明によると、水分含有液体と、粉体状炭素含有物とを混合し、その混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを製造するようにしたので、二酸化炭素を実質的に放出することなく水素を製造することができ、また電力消費も大幅に低減して低コストで水素を製造することができる。
【0078】
また、本発明によると、水分含有液体と、粉体状の糖原料とを混合し、その混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを製造するようにしたので、二酸化炭素を実質的に放出することなく水素を製造することができ、また電力消費も大幅に低減して低コストで水素を製造することができる。
【0079】
また、本発明によると、水分含有液体と、粉体状炭素含有物と、粉体状の糖原料とを混合し、その混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを製造するようにしたので、二酸化炭素を実質的に放出することなく水素を製造することができ、また電力消費も大幅に低減して低コストで水素を製造することができる。
【0080】
また、木タールと水蒸気とを混合して水素ガスを製造するようにしたので、二酸化炭素を実質的に放出することなく水素を製造することができ、また電力消費も大幅に低減して低コストで水素を製造することができる。
【0081】
また、木質系バイオマスから水素ガスを製造するようにしたので、従来利用されていなかった伐採材なども活用することができ、水素製造のコストを大幅に低減することができる。
【0082】
また、水には、従来利用されていなかった排水・廃水も活用することができ、水素製造のコストを大幅に低減することができる。
【0083】
本発明の水素ガス製造装置で製造された水素は、燃料電池(PEFC、SOFC等)ユーザー、内燃機関ユーザー、外燃機関ユーザーに提供され、使用される。内燃機関はガスエンジン、ガスタービンであり、外燃機関は、ボイラ、加熱炉、焼成炉、ロータリーキルンなどの燃焼炉、またコークス炉、木炭炉などの炭化炉、スターリングエンジン等が挙げられる。
さらに化学工場、ガス充填所、水素ステーション、研究所・大学・試験機関でも使用可能である。
【0084】
上記の使用形態の如何に関わらず、本発明ではバイオマス、水を原料とすれば、燃焼排ガス中の、CO2、、SOxはゼロとなり、NOxは、原料中のN分は極めて小さいので、化石燃料に比べて低濃度となる。
【0085】
次にこの発明の水素ガス製造装置で製造した水素を、ガスエンジン車または燃料電池車で使用する場合について述べる。
【0086】
(1)(水素+CO2)使用ユーザー
例えば、図1の機器構成ならばコンパクト化が可能であり、自動車に載せることが十分可能である。
自動車には、水分炭素混合液体タンク、水素ガス製造部及び燃料電池部を搭載すればよい。現在の自動車のエンジンルームに水素ガス製造部と燃料電池部は十分納まる。現在のハイブリッド車あるいは電気自動車のモータは各四つのホイールに組みこまれている。水分炭素混合液体タンクは現在の燃料タンクのサイズで十分である。
自動車とは、バス、トラック、乗用車、建設機械、農業用機械、林業用機械などが考えられる。他に、本発明は、船舶用(潜水艦を含む)、航空用(飛行機、ヘリ等)のガスエンジン及び燃料電池(PEFC等)にも適用することができる。
さらに、本発明は宇宙用にも適用することができる。”H2O”のうちの”O”が反応に使われるために、反応(燃焼)用エアーが約3割程少なくすみ、エンジンを3割小さくすることができる。すなわち、重量を軽くできるため燃費の向上にも役立つ。
空気のないところを飛ぶロケットに適用可能で、現在のロケットは液体水素ボンベと液体酸素ボンベを搭載して推進している。たまに水素あるいは酸素が漏れて大事故になっている。これに対して、本発明の場合、液体酸素量は現在の7割ですむし、その分軽くできる。液体水素ボンベはなくなり、代わりに水分炭素混合液体タンクとなるので、ロケット全体の重量は軽くなり、かつより低コストとなる。水分炭素混合液体は加熱しない限り水素発生はないため、より安全である。ロケット内の発電も、製造した水素を使用することで燃料電池(PEFC)で行うことができる。
【0087】
(2)液体水素タンクとの比較
液体水素タンクと水分炭素混合液体タンクとの比較を行う。
液体水素及び水分炭素混合液体のそれぞれの密度(kg/m3)は以下のとおりである。
液体水素:70.8kg/m3@−253℃(20K)
水分炭素混合液体:1,000kg/m3@15℃(288K)
水分炭素混合液体の中のH2Oのモル数は、1000/18=55.6kmol
2O=H2+0.5O2
2OとH2のモル数は等しいので、H2のモル数は同じ55.6kmol
2の分子量は、2kg/kmolなので、H2の質量は、2×55.6=111kg。すなわち、同じ1m3で、液体水素の質量は70.8kg、水分炭素混合液体は111kgであり、その比率は70.8/111=0.638
したがって、タンクの容量を63.8%に小型化することができる。
また、水分炭素混合液体タンクの設計圧力はほぼ常圧(1.1気圧)なので安価なタンク材質が使用でき、かつ蒸発器が不要となるので、低コストで製造することができる。
水素重量割合について考察すると、現在、DOE(米国エネルギー省)の水素ガス(H2)の水素吸蔵物の重量割合の目標値は5%である。水分炭素混合液体のそれは、111/1000=0.111=11.1%とDOE目標値の2倍以上である。
【0088】
以上述べた実施形態では、(1)水素ガスを製造する水素ガス製造装置において、水分を含有する水分含有液体と、粉体状の炭素を含有する粉体状炭素含有物とを混合して水分炭素混合液体を製造する水分炭素混合液体製造部と、上記水分炭素混合液体製造部で製造された水分炭素混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部と、を備えるようにしている。
(2)水素ガスを製造する水素ガス製造装置において、水分を含有する水分含有液体と、粉体状の糖原料とを混合して水分糖原料混合液体を製造する水分糖原料混合液体製造部と、上記水分糖原料混合液体製造部で製造された水分糖原料混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部と、を備えるようにしている。
(3)水素ガスを製造する水素ガス製造装置において、水分を含有する水分含有液体と、粉体状の炭素を含有する粉体状炭素含有物と、粉体状の糖原料とを混合して水分炭素糖原料混合液体を製造する水分炭素糖原料混合液体製造部と、上記水分炭素糖原料混合液体製造部で製造された水分炭素糖原料混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部と、を備えるようにしている。
(4)水素ガスを製造する水素ガス製造装置において、木タールと水蒸気とを混合して木タール蒸気混合体を製造する木タール蒸気混合体製造部と、上記木タール蒸気混合体製造部で製造された木タール蒸気混合体を加熱し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部と、を備えるようにしている。
(5)水素ガスを製造する水素ガス製造装置において、バイオマスを加熱して熱分解させ、水素と二酸化炭素と一酸化炭素とを生成する炭化炉と、上記炭化炉から導入された一酸化炭素と、供給された水蒸気とを反応させて二酸化炭素と水素に変換し、上記炭化炉から導入された水素および二酸化炭素とともに、水素ガスユーザ側に送出するシフト反応部と、を備えるようにしている。
(6)水素ガスを製造する水素ガス製造システムにおいて、バイオマスを加熱して熱分解させ、水素、二酸化炭素および一酸化炭素の各ガス、木炭、並びに木タールを生成する炭化炉と、上記炭化炉から導入された一酸化炭素と、供給された水とを反応させて二酸化炭素と水素とに変換し、上記炭化炉から導入された水素および二酸化炭素とともに、水素ガスユーザ側に送出するシフト反応部と、を備えた水素ガス製造装置と、上記炭化炉で生成された木炭の粉砕物を粉体状炭素含有物として使用する、(1)に記載の水素ガス製造装置と、上記炭化炉で生成された木タールを使用する、(4)に記載の水素ガス製造装置と、を備えるようにしている。
(7)水素ガスを製造する水素ガス製造方法において、水分を含有する水分含有液体と、炭素を含有する粉体状炭素含有物とを混合して水分炭素混合液体を製造し、上記水分炭素混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させるようにした。
(8)水素ガスを製造する水素ガス製造方法において、水分を含有する水分含有液体と、粉体状の糖原料とを混合して水分糖原料混合液体を製造し、上記水分糖原料混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させるようにした。
(9)水素ガスを製造する水素ガス製造方法において、水分を含有する水分含有液体と、粉体状の炭素を含有する粉体状炭素含有物と、粉体状の糖原料とを混合して水分炭素糖原料混合液体を製造し、上記水分炭素糖原料混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させるようにした。
(10)水素ガスを製造する水素ガス製造方法において、木タールと水蒸気とを混合して水素ガスを発生させるようにした。
(11)水素ガスを製造する水素ガス製造方法において、木質系バイオマスを加熱して熱分解させ、水素と二酸化炭素と一酸化炭素とを生成するとともに、上記一酸化炭素は、供給された水とを反応させて二酸化炭素と水素に変換するようにした。
【符号の説明】
【0089】
1 水分炭素混合液体製造部
1A 水分糖原料混合液体製造部
1B 水分炭素糖原料混合液体製造部
1C 木タール蒸気混合体製造部
2 水素ガス製造部
2A 水素ガス製造部
2B 水素ガス製造部
2C 水素ガス製造部
3 炭化炉
4 シフト反応部
10 水素ガス製造装置
10A 水素ガス製造装置
10B 水素ガス製造装置
10C 水素ガス製造装置
10D 水素ガス製造装置
11 ホッパー
12 粉砕機
13 水タンク
14 ポンプ
15 混合機
16 発酵生成エタノールタンク
17 発酵生成エタノール製造プラント
21 ポンプ
22 加熱蒸発器
23 反応器
23a 反応器・熱交換器
24 冷却・凝縮器
26 凝縮水タンク
27 脱炭酸部
28 ガスホルダー
29 ガスホルダー
30 木炭炉
31 混合機
32 ポンプ
33 加熱蒸発器
34 冷却・凝縮器
35 凝縮水タンク
36 反応器
37 ガスホルダー
38 脱炭酸部
39 ガスホルダー
40 シフト反応器
41 冷却器
42 ガスホルダー
43 脱炭酸部
44 ガスホルダー
45 冷却器
50 水蒸気ドラム
100 水素ガス製造装置
100A 水素ガス製造装置
100S 水素ガス製造システム
101 水分炭素混合液体製造部
101A 水分炭素混合液体製造部
201 水素ガス製造部
201A 水素ガス製造部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを製造する水素ガス製造装置において、
水分を含有する水分含有液体と、粉体状の糖原料とを混合して水分糖原料混合液体を製造する水分糖原料混合液体製造部と、
上記水分糖原料混合液体製造部で製造された水分糖原料混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部と、
を備えたことを特徴とする水素ガス製造装置。
【請求項2】
上記水分糖原料混合液体は、糖原料を、水および発酵生成エタノールの少なくとも何れか一方に混合し溶かして得られた液体である、請求項1に記載の水素ガス製造装置。
【請求項3】
上記糖原料は、砂糖、ショ糖、糖密、ケーンジュースおよび上白糖の少なくとも何れか1つからなる、請求項1または2に記載の水素ガス製造装置。
【請求項4】
上記水分糖原料混合液体は、炭酸カリウムを含む、請求項1から3の何れか1項に記載の水素ガス製造装置。
【請求項5】
水素ガスを製造する水素ガス製造装置において、
水分を含有する水分含有液体と、粉体状の炭素を含有する粉体状炭素含有物と、粉体状の糖原料とを混合して水分炭素糖原料混合液体を製造する水分炭素糖原料混合液体製造部と、
上記水分炭素糖原料混合液体製造部で製造された水分炭素糖原料混合液体を加熱して蒸気化し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部と、
を備えたことを特徴とする水素ガス製造装置。
【請求項6】
上記粉体状炭素含有物は、粒径が100μm以下である、請求項5に記載の水素ガス製造装置。
【請求項7】
水素ガスを製造する水素ガス製造装置において、
木タールと水蒸気とを混合して木タール蒸気混合体を製造する木タール蒸気混合体製造部と、
上記木タール蒸気混合体製造部で製造された木タール蒸気混合体を加熱し反応させて水素ガスを発生させる水素ガス製造部と、
を備えたことを特徴とする水素ガス製造装置。
【請求項8】
水素ガスを製造する水素ガス製造装置において、
バイオマスを加熱して熱分解させ、水素と二酸化炭素と一酸化炭素とを生成する炭化炉と、
上記炭化炉から導入された一酸化炭素と、供給された水蒸気とを反応させて二酸化炭素と水素に変換し、上記炭化炉から導入された水素および二酸化炭素とともに、水素ガスユーザ側に送出するシフト反応部と、
を備えることを特徴とする水素ガス製造装置。
【請求項9】
上記バイオマスは、木質系バイオマスと農産物加工残渣との少なくとも何れか一方である、請求項8に記載の水素ガス製造装置。
【請求項10】
上記木質系バイオマスは、伐採材、間伐材、製材、木屑、木質チップ、プレナーくず、建設廃材、木枠、製材残材、製材廃材、紙・パルプ工場の黒液、製紙工場廃材・スラッジ、都市の木質廃棄物、および植木・果樹剪定枝の何れかであり、上記農産物加工残渣は、バガス(さとうきびの絞りかす)、果樹剪定残さ、コーン、籾殻、および鶏糞等の家畜の糞の何れかである、請求項9に記載の水素ガス製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−56839(P2012−56839A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225622(P2011−225622)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【分割の表示】特願2009−260061(P2009−260061)の分割
【原出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(509121514)
【出願人】(509315744)
【Fターム(参考)】