説明

水素貯蔵及び発生用触媒構造体並びにそれを用いた水素の貯蔵及び発生方法

【課題】従来試みられることのなかった新規な方法で担体に触媒材料を担持してなる水素貯蔵及び発生用触媒構造体、並びに該触媒構造体を用いた水素の貯蔵及び発生方法を提供する。
【解決手段】担体表面に反応性スパッタリング法により触媒材料をコーティングしてなる水素貯蔵及び発生用触媒構造体、並びに、該触媒構造体と、芳香族炭化水素とを用いることを特徴とする水素の貯蔵方法、及び上記触媒構造体と、芳香族炭化水素の水素化誘導体とを用いることを特徴とする水素の発生方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵及び発生用触媒構造体、並びにそれを用いた水素の貯蔵及び発生方法に関し、特に燃料電池等の使用される水素エネルギーを貯蔵及び発生させるのに好適な触媒構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、発電効率が高く、環境への負荷が小さい電池として、燃料電池が注目を集めており、広く研究開発が行われている。該燃料電池は、上記のような種々の利点を有するため、電気自動車用電源、分散発電システム、家庭用のコージェネレーションシステムとして広く普及することが期待されている。しかしながら、該燃料電池において燃料として使用される水素は、通常気体で且つ可燃性であるため、貯蔵及び運搬等に注意を要する。そのため、水素を高圧ボンベ等に貯蔵して使用するよりも、必要に応じて、安全な水素貯蔵体から水素を発生させ使用する方が好ましい。
【0003】
これに対して、上記燃料電池に供給する水素の貯蔵手段及び供給手段が種々検討されており、例えば、水素吸蔵合金を用いて水素を貯蔵し、必要に応じて水素を発生させる技術や、カーボンナノチューブ等のカーボン材料を用いて水素を貯蔵し、必要に応じて水素を発生させる技術等が提案されている。しかしながら、上記水素吸蔵合金及びカーボンナノチューブは、単位体積当たりの水素貯蔵量が低く、且つ高価であるという問題がある。
【0004】
一方、水素貯蔵体として芳香族炭化水素を用い、該芳香族炭化水素を触媒の存在下で水素化して水素を貯蔵し、必要に応じて、得られた芳香族炭化水素の水素化誘導体を触媒の存在下で脱水素して水素を取り出して燃料電池に供給する技術が提案されている。該水素の貯蔵・発生技術においては、使用する触媒の活性が非常に重要であり、芳香族炭化水素の水素化能及び芳香族炭化水素の水素化誘導体からの脱水素能に優れた触媒が求められている。
【0005】
【非特許文献1】図解 燃料電池のすべて,工業調査会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況下、本発明の目的は、従来試みられることのなかった新規な方法で担体に触媒材料を担持してなる水素貯蔵及び発生用触媒構造体、並びに該触媒構造体を用いた水素の貯蔵及び発生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々の触媒担持方法を試みた結果、反応性スパッタリング法で触媒を担体にコーティングすることにより、芳香族炭化水素の水素化反応に対し高い触媒作用を示し、且つ芳香族炭化水素の水素化誘導体の脱水素反応にも高い触媒作用を示す触媒構造体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体は、担体表面に反応性スパッタリング法により触媒材料をコーティングしてなることを特徴とする。
【0009】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体としては、一種又は複数の金属又は金属化合物を同時にスパッタリングして前記担体表面に触媒材料をコーティングしたものが好ましい。ここで、本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体としては、前記複数の金属又は金属化合物をスパッタリングするに際し、複数のカソードを用い同時に放電させて、前記担体表面に触媒材料をコーティングしたもの、並びに、前記複数の金属又は金属化合物をスパッタリングするに際し、複数のターゲットを一つのカソードに取り付け、放電時に該カソードにおいて同時に複数の金属をスパッタリングして前記担体表面に触媒材料をコーティングしたものが更に好ましい。なお、前記複数の金属又は金属化合物をスパッタリングするに際し、複数のターゲットを一つのカソードに取り付け、放電時に該カソードにおいて同時に複数の金属をスパッタリングして前記担体表面に触媒材料をコーティングした後に、該コーティングされた触媒材料中の金属又は金属化合物の少なくとも1種を酸及び/又はアルカリで除去することも好ましい。また、前記複数のターゲットを一つのカソードに取り付けるに際し、該ターゲットが二つの場合は、該ターゲットを対面させて配置し、前記ターゲットが三つ以上の場合は、該ターゲットを多面体状に配置することが好ましい。
【0010】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体としては、前記反応性スパッタリングにおいて、放電時の発光量をモニタリングし、該発光量に応じて反応性ガスをカソード又は担体近傍に供給したものや、放電時の電源部のインピーダンスをモニタリングし、該インピーダンスの値に応じて反応性ガスをカソード又は担体近傍に供給したものも好ましい。ここで、該水素貯蔵及び発生用触媒構造体は、反応性ガス量に応じて電流、電圧及び電力が大きく変化する遷移領域で前記反応性スパッタリングを行ったものであることが更に好ましい。
【0011】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体としては、前記反応性スパッタリングにおいて、カソード近傍に隠れアノードを設け、カソード-アノード間に交流電圧を印加したものや、カソードを複数設け、該カソードに交流電圧を印加したものも好ましい。ここで、前記交流電圧の波形がサイン波又は矩形波であることが好ましい。また、前記矩形波がパルス状であり、印加パターン、より具体的には、正負の印加電圧、正負の印加時間及び印加比率で規定される印加パターンを任意に制御することが更に好ましい。
【0012】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体の好適例においては、前記金属が、Na,Mg,Al,Si,K,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Rb,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Cs,Ba,La,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Tl,Pb,Bi,Ce,Pr,Nd,Sm及びEuからなる群から選択される少なくとも1種の金属である。
【0013】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体の他の好適例においては、前記金属が貴金属である。ここで、該貴金属が、Ag,Pt及びAuからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体の他の好適例においては、前記金属化合物が金属酸化物である。ここで、該金属酸化物が、AlOx,SiOx,TiOx,FeOx,CoOx,NiOx,CuOx,ZnOx,NbOx,MoOx,LaOx,TaOx,WOx及びPbOxからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記xの値をスパッタリング時の酸素流量で制御することが好ましい。
【0015】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体の他の好適例においては、前記金属化合物が金属窒化物である。ここで、該金属窒化物が、AlNx,SiNx,TiNx,FeNx,CoNx,NiNx,CuNx,ZnNx,NbNx,MoNx,LaNx,TaNx,WNx及びPbNxからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記xの値をスパッタリング時の窒素流量で制御することが好ましい。
【0016】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体の他の好適例においては、前記金属化合物が金属炭化物である。ここで、該金属炭化物が、AlCx,SiCx,TiCx,FeCx,CoCx,NiCx,CuCx,ZnCx,NbCx,MoCx,LaCx,TaCx,WCx及びPbCxからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記xの値をスパッタリング時の炭化水素流量で制御することが好ましい。
【0017】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体の他の好適例においては、前記金属化合物が金属酸化窒化物である。ここで、該金属酸化窒化物が、AlOxy,SiOxy,TiOxy,FeOxy,CoOxy,NiOxy,CuOxy,ZnOxy,NbOxy,MoOxy,LaOxy,TaOxy,WOxy及びPbOxyからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記x及びyの値をスパッタリング時の酸素流量及び窒素流量で制御することが好ましい。
【0018】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体においては、前記反応性スパッタリングで用いたターゲット材の使用効率が80%以上であることが好ましい。
【0019】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体の他の好適例においては、前記担体がカーボン繊維集合体である。ここで、該カーボン繊維集合体としては、カーボンペーパー、直径1nm〜1μmのフィブリル状カーボン繊維集合体、並びに前記カーボンペーパー上に直径1nm〜1μmの前記フィブリル状カーボン繊維集合体を配設してなる複合カーボン集合体が好ましい。
【0020】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体の担体としては、芳香環を有する化合物を酸化重合してフィブリル状ポリマーを得、該フィブリル状ポリマーを焼成、好ましくは非酸化性雰囲気中で焼成して得た3次元連続状炭素繊維が特に好ましい。ここで、前記芳香環を有する化合物がベンゼン環又は芳香族複素環を有する化合物であることが好ましく、アニリン、ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一種の化合物であることが更に好ましい。
【0021】
また、本発明の水素の貯蔵方法は、上記触媒構造体と、芳香族炭化水素とを用いることを特徴とし、本発明の水素の発生方法は、上記触媒構造体と、芳香族炭化水素の水素化誘導体とを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、触媒材料を反応性スパッタリング法で担体にコーティングした新規な水素貯蔵及び発生用触媒構造体、並びに該水素貯蔵及び発生用触媒構造体を用いた水素の貯蔵方法及び発生方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体は、担体表面に反応性スパッタリング法により触媒材料をコーティングしてなる。反応性スパッタリング法により触媒材料を担体表面にコーティングすることにより、通常のスパッタリング方式(プレーナー型マグネトロンスパッタリング)対比、金属酸化物薄膜の場合、2〜20倍の成膜速度で膜を形成することができる。高速成膜法としては、真空蒸着法がポピュラーであるが、基材との密着性が悪く、これに対し、スパッタリング法を用いることで基材と強固に結合した膜を作製することができる。従って、触媒性能を発揮するためのある膜厚を得るのに、スパッタ法では短時間で成膜が可能であるため、低温での形成が可能となり、また、担持体との密着性に優れた触媒担持材料を形成することができる。一方、成膜時に流す反応性ガス流量の制御により、本願にも記載するように、例えば、MeOx(Meは金属を示す、以下同じ)等のx値、MeOxy等のx、y値を制御することができ、この制御は真空蒸着法では不可能である。
【0024】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体は、芳香族炭化水素の水素化反応及び芳香族炭化水素の水素化誘導体の脱水素反応の双方に高い触媒作用を示す。ここで、本発明の触媒構造体の存在下で水素化される芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル等が挙げられる。一方、本発明の触媒構造体の存在下で脱水素される芳香族炭化水素の水素化誘導体としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、デカリン、テトラリン等が挙げられる。これら芳香族炭化水素及びその水素化誘導体は、一種単独であってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。
【0025】
上記水素の発生及び貯蔵は、温度及び水素圧等で制御することができ、芳香族炭化水素に水素を貯蔵する場合は、20〜500℃、水素圧0.01〜50気圧で水素化反応を行うことが好ましく、一方、芳香族炭化水素の水素化誘導体から水素を発生させる場合は、水素が存在しない環境下、20〜500℃で脱水素反応を行うことが好ましい。
【0026】
本発明で担体表面に触媒材料をコーティングするのに用いる反応性スパッタリング法は、スパッタガス中に反応性ガスを混合し、スパッタリングによって成膜される触媒材料の薄膜の組成や性質を制御する方法である。該反応性スパッタリング法は、デュアルカソード方式マグネトロンスパッタリング法で行うことが好ましく、バイポーラ型デュアルカソード方式マグネトロンスパッタリング法又はユニポーラ型デュアルカソード方式マグネトロンスパッタリング法で行うことが更に好ましい。図1に本発明の実施に好適なバイポーラ型デュアルカソード方式マグネトロンスパッタ装置の概略図を、図2に本発明の実施に好適なユニポーラ型デュアルカソード方式マグネトロンスパッタ装置の概略図を示す。
【0027】
図1に示すバイポーラ型デュアルカソード方式マグネトロンスパッタ装置は、カソード1A,1B上にターゲット2A,2Bが配設されており、カソード1A,1Bの背面には磁石3A,3Bが配設されている。また、カソード1A,1Bは、スイッチングユニット4を介して交流電源5A,5Bに接続されている。更に、ターゲット2A,2Bの近傍には、ガスの導入口6A,6Bが配置されており、該導入口6A,6Bからは、瞬間的にガス供給可能なピエゾバルブ7A,7Bで制御された反応性ガスが供給される。ここで、反応性ガスの供給制御には、ピエゾバルブに代えて高速応答性マスフローコントローラー等の他の制御機器を用いてもよい。また更に、ガス導入口6A,6Bの近傍には、放電時の発光量をモニタリングするセンサー8A,8Bが配置されており、該センサー8A,8Bは、コントローラー9A,9Bに信号を送り、該コントローラー9A,9Bが、該信号に応じて、ピエゾバルブ7A,7Bの開閉を制御する。なお、交流電源5A,5Bのインピーダンスをモニタリングして、該インピーダンスの値に応じて反応性ガスの供給を制御することも可能である。図1に示すスパッタ装置では、スイッチングユニット4により、カソード1Aとカソード1Bとに電力が交互に供給される。そのため、高速且つ安定して触媒材料のコーティングを形成することができると共に、スイッチングユニット4による切換えで極性が変わり、ターゲット2A,2Bに蓄積された荷電が解消されるため、安定してスパッタリングすることができ、また、触媒材料からなる薄膜中の組成を均一にすることができる。
【0028】
一方、図2に示すユニポーラ型デュアルカソード方式マグネトロンスパッタ装置は、カソード1A,1B上にターゲット2A,2Bが配設されており、カソード1A,1Bの背面には磁石3A,3Bが配設されている。また、カソード1A,1Bは、それぞれスイッチングユニット4A,4Bを介して交流電源5A,5Bに接続されている。更に、ターゲット2A,2Bの近傍には、ガスの導入口6A,6Bが配置されており、該導入口6A,6Bからは、瞬間的にガス供給可能なピエゾバルブ7A,7Bで制御された反応性ガスが供給される。また更に、ガス導入口6A,6Bの近傍には、放電時の発光量をモニタリングするセンサー8A,8Bが配置されており、該センサー8A,8Bは、コントローラー9A,9Bに信号を送り、該コントローラー9A,9Bが、該信号に応じて、ピエゾバルブ7A,7Bの開閉を制御する。更にまた、カソード1A,1Bの近傍には、隠れアノード10A,10Bが配設されており、カソード-アノード間に交流電圧を印加することができる。図2に示すスパッタ装置では、スイッチングユニット4A,4Bにより、カソード1A,1Bに独立して電圧を印加することが可能である。
【0029】
また、図1及び図2において、担体11は、ホルダー12に支持されており、スパッタ粒子及び反応性ガスから所望の組成の触媒材料の被膜を担体11の表面に形成することができる。
【0030】
上記触媒材料は、通常金属及び/又は金属化合物からなり、本発明においては、金属及び金属化合物の少なくとも一種をスパッタリングして上記触媒材料の被膜を担体表面に形成する。ここで、スパッタリングされる金属及び金属化合物は、一種単独であっても、二種以上の混合物であってもよい。また、複数の金属又は金属化合物をスパッタリングして担体表面上に触媒材料の層を形成する場合、複数の金属又は金属化合物を同時にスパッタリングすることが好ましい。
【0031】
上記複数の金属又は金属化合物をスパッタリングする場合は、複数のカソード1A,1Bを用い同時に放電させて、前記担体表面に触媒材料をコーティングすることが好ましい。ここで、各カソード1A,1Bに、異種の金属からなるターゲット2A,2Bを配設することで、複数の金属又は金属化合物を同時にスパッタリングして触媒材料の被膜を形成することが可能となる。
【0032】
また、上記複数の金属又は金属化合物をスパッタリングする場合は、複数のターゲットを一つのカソードに取り付け、放電時に該カソードにおいて同時に複数の金属をスパッタリングして担体表面に触媒材料をコーティングすることも好ましい。ここで、上記カソードにおいて同時に複数の金属をスパッタリングして担体表面に触媒材料をコーティングした後、コーティングされた触媒材料中の金属又は金属化合物の少なくとも1種を酸及び/又はアルカリで除去してもよい。ここで、金属又は金属化合物を除去するために用いる酸及びアルカリは、除去対象の金属又は金属化合物と、残留させる金属又は金属化合物との種類に応じて適宜選択され、例えば、酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、フッ酸、クロム酸、過酸化水素、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クエン酸、シュウ酸、臭化水素等が挙げられ、これらを単体で又はこれらを混合した混酸で水溶液として用いることができる。また、溶解する金属によっては、混酸と塩化第二鉄のような金属塩化物、金属硫化物との混合水溶液を用いることもできる。一方、アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液やアンモニア水等を用いることができる。なお、酸水溶液、アルカリ水溶液の濃度、組成は、溶解する金属の種類に応じて適宜選定することができる。
【0033】
また、上記複数のターゲットを一つのカソードに取り付けるに際しては、該ターゲットが二つの場合は、ターゲットを対面させて配置し、ターゲットが三つ以上の場合は、ターゲットを多面体状に配置することが好ましく、例えば、ターゲットが三つの場合は、ターゲットを三角形状に配置し、ターゲットが四つの場合は、ターゲットを四角形状に配置することが好ましい。
【0034】
上記反応性スパッタリングにおいては、放電時の発光量をモニタリングし、該発光量に応じて反応性ガスをカソード又は担体近傍に供給することが好ましい。また、上記反応性スパッタリングにおいては、放電時の電源部5A,5Bのインピーダンスをモニタリングし、該インピーダンスの値に応じて反応性ガスをカソード又は担体近傍に供給することも好ましい。発光量に応じて反応性ガスをカソード1A,1B又は担体11近傍に供給したり、インピーダンスの値に応じて反応性ガスをカソード1A,1B又は担体11近傍に供給することで、担持される触媒材料の組成を均一に制御することができる。ここで、反応性ガス量に応じて電流、電圧及び電力が大きく変化する遷移領域で前記反応性スパッタリングを行うことが好ましい。
【0035】
上記反応性スパッタリングにおいては、カソード1A,1B近傍に隠れアノード10A,10Bを設け、カソード-アノード間に交流電圧を印加することが好ましい。また、カソード1A,1Bを複数設け、該カソード1A,1Bに交流電圧を印加することも好ましい。ここで、交流電圧の波形としては、サイン波及び矩形波が好ましい。また、交流電圧の波形が矩形波の場合、該矩形波がパルス状であり、その印加パターンを任意に制御することが好ましい。ここで、該印加パターンは、正負の印加電圧、正負の印加時間及び印加比率等で規定されるものである。
【0036】
上記スパッタリングされる金属は、Na,Mg,Al,Si,K,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Rb,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Cs,Ba,La,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Tl,Pb,Bi,Ce,Pr,Nd,Sm及びEuからなる群から選択されることが好ましく、本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体には、これら金属を一種単独で用いてもよいし、これら金属の二種以上を用いてもよい。
【0037】
また、本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体においては、上記金属として貴金属も好ましく、該貴金属としては、Ag,Pt及びAu等が挙げられる。本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体においては、これら貴金属の一種若しくは複数を使用することができる。
【0038】
本発明においてスパッタリングされる金属化合物としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物及び金属酸化窒化物等が挙げられ、これらの中でも、金属酸化窒化物をスパッタリングすることが好ましい。なお、これら金属化合物を担体表面にコーディングする場合は、ターゲット2A,2Bに上記金属を用い、反応性ガスを導入口6A,6Bから導入して反応性スパッタリングを行うことが好ましい。
【0039】
上記金属酸化物としては、AlOx,SiOx,TiOx,FeOx,CoOx,NiOx,CuOx,ZnOx,NbOx,MoOx,LaOx,TaOx,WOx及びPbOx等が挙げられ、本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体には、これら金属酸化物を一種単独で用いてもよいし、これら金属酸化物の二種以上を用いてもよい。ここで、上記反応性スパッタリングによれば、上記各化学式中のxの値をスパッタリング時において導入口6A,6Bから導入される酸素の流量を調整することで所望の値に制御することが可能となる。
【0040】
また、上記金属窒化物としては、AlNx,SiNx,TiNx,FeNx,CoNx,NiNx,CuNx,ZnNx,NbNx,MoNx,LaNx,TaNx,WNx及びPbNx等が挙げられ、本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体には、これら金属窒化物を一種単独で用いてもよいし、これら金属窒化物の二種以上を用いてもよい。ここで、上記反応性スパッタリングによれば、上記各化学式中のxの値をスパッタリング時において導入口6A,6Bから導入される窒素の流量を調整することで所望の値に制御することが可能となる。
【0041】
上記金属炭化物としては、AlCx,SiCx,TiCx,FeCx,CoCx,NiCx,CuCx,ZnCx,NbCx,MoCx,LaCx,TaCx,WCx及びPbCx等が挙げられ、本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体には、これら金属炭化物を一種単独で用いてもよいし、これら金属炭化物の二種以上を用いてもよい。ここで、上記反応性スパッタリングによれば、上記各化学式中のxの値をスパッタリング時において導入口6A,6Bから導入される炭化水素の流量を調整することで所望の値に制御することが可能となる。なお、反応性スパッタリングにおいて使用する炭化水素としては、特に制限はなく、メタン、エタン、エチレン、アセチレン等が挙げられる。
【0042】
また、上記金属酸化窒化物としては、AlOxy,SiOxy,TiOxy,FeOxy,CoOxy,NiOxy,CuOxy,ZnOxy,NbOxy,MoOxy,LaOxy,TaOxy,WOxy及びPbOxy等が挙げられ、本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体には、これら金属酸化窒化物を一種単独で用いてもよいし、これら金属酸化窒化物の二種以上を用いてもよい。ここで、上記反応性スパッタリングによれば、上記各化学式中のx及びyの値をスパッタリング時において導入口6A,6Bから導入される酸素及び窒素の流量を調整することで所望の値に制御することが可能となる。なお、これら金属酸化窒化物の中でも、TiOxyが更に好ましい。
【0043】
本発明の好適態様においては、上記反応性スパッタリングで用いたターゲット材の使用効率が80%以上である。この場合、高価なターゲット材を有効に利用することができる。
【0044】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体における上記触媒材料の担持量は、その材料の触媒性能によって大きく変わるが、0.001mg/cm2〜10g/cm2の範囲が好ましい。担持量が0.001mg/cm2未満では、触媒としての働きが不十分であり、一方、10g/cm2を超えると、触媒としての有効面積が取れず、触媒性能が飽和する。
【0045】
本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体を構成する担体としては、カーボン繊維集合体が好ましい。ここで、該カーボン繊維集合体としては、カーボンペーパー及び直径1nm〜1μmのフィブリル状カーボン繊維集合体等が更に好ましい。また、上記担体としては、カーボンペーパー上に直径1nm〜1μmのフィブリル状カーボン繊維集合体を配設してなる複合カーボン集合体も特に好ましい。
【0046】
また、上記担体として用いるフィブリル状カーボン繊維集合体としては、芳香環を有する化合物を酸化重合してフィブリル状ポリマーを得、該フィブリル状ポリマーを焼成、好ましくは非酸化性雰囲気中で焼成して得た3次元連続状炭素繊維が特に好ましい。なお、上記芳香環を有する化合物としては、ベンゼン環を有する化合物、芳香族複素環を有する化合物を挙げることができ、ベンゼン環を有する化合物としては、アニリン及びアニリン誘導体が好まく、芳香族複素環を有する化合物としては、ピロール、チオフェン及びこれらの誘導体が好ましい。これら芳香環を有する化合物は、一種単独で用いても、二種以上の混合物として用いてもよい。
【0047】
上記芳香環を有する化合物を酸化重合して得られるフィブリル状ポリマーは、直径が30〜数百nmで、好ましくは40〜500nmであり、長さが0.5〜100000μmで、好ましくは1〜10000μmである。
【0048】
上記酸化重合法としては、電解酸化重合法が好ましい。また、酸化重合においては、原料の芳香環を有する化合物と共に、酸を混在させることが好ましい。この場合、酸の負イオンがドーパントとして合成されるフィブリル状ポリマー中に取り込まれ、導電性に優れたフィブリル状ポリマーが得られ、このフィブリル状ポリマーを用いることにより最終的に得られる炭素繊維の導電性を向上させることができる。なお、重合の際に混在させる酸としては、特に限定されるものではなく、HBF4、H2SO4、HCl、HClO4等を例示することができ、該酸の濃度は、0.1〜3mol/Lの範囲が好ましく、0.5〜2.5mol/Lの範囲が更に好ましい。
【0049】
上記電解酸化重合によりフィブリル状ポリマーを得る場合には、芳香環を有する化合物を含む溶液中に、作用極及び対極を浸漬し、両極間に上記芳香環を有する化合物の酸化電位以上の電圧を印加するか、または該芳香環を有する化合物が重合するのに充分な電圧が確保できるような条件の電流を通電すればよく、これにより作用極上にフィブリル状ポリマーが生成する。ここで、作用極及び対極としては、ステンレススチール、白金、カーボン等の良導電性物質からなる板や多孔質材などを用いることができる。また、電解酸化重合における電流密度は、0.1〜1000mA/cm2の範囲が好ましく、0.2〜100mA/cm2の範囲が更に好ましく、芳香環を有する化合物の電解溶液中の濃度は、0.05〜3mol/Lの範囲が好ましく、0.25〜1.5mol/Lの範囲が更に好ましい。なお、電解溶液には、上記成分に加え、pHを調製するために可溶性塩等を適宜添加してもよい。
【0050】
上記のようにして作用極上に得られたフィブリル状ポリマーを、水や有機溶剤等の溶媒で洗浄し、乾燥させた後、焼成、好ましくは非酸化性雰囲気中で焼成して炭化することで、フィブリル状で3次元連続状の炭素繊維が得られる。ここで、乾燥方法としては、特に制限されるものではないが、風乾、真空乾燥の他、流動床乾燥装置、気流乾燥機、スプレードライヤー等を使用した方法を例示することができる。また、焼成条件としては、特に限定されるものではなく、最適導電率となるように適宜設定すればよいが、特に高導電率を必要とする場合は、温度500〜3000℃、好ましくは600〜2800℃で、0.5〜6時間焼成することが好ましい。更に、非酸化性雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、ヘリウム雰囲気等を挙げることができ、場合によっては水素雰囲気とすることもできる。なお、非酸化性雰囲気は、フィブリル状ポリマーが完全に酸化されない限り、少量の酸素を含んでもよい。
【0051】
上記3次元連続状炭素繊維は、直径が30〜数百nm、好ましくは40〜500nmであり、長さが0.5〜100000μm、好ましくは1〜10000μmであり、表面抵抗が106〜10-2Ω、好ましくは104〜10-2Ωである。また、該炭素繊維は、残炭率が95〜30%、好ましくは90〜40%である。該炭素繊維は、カーボン全体が3次元に連続した構造を有するため、粒状カーボンよりも導電性が高い。
【0052】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
[担体の作製]
アニリンモノマー0.5mol/LとHBF4 1.0mol/Lとを含む酸性水溶液中に、作用極としてカーボンペーパー[東レ製]を設置し、対極として白金板を使用し、室温にて10mA/cm2の定電流で10分間電解重合を行い、ポリアニリンを作用極上に電析させた。得られたポリアニリンをイオン交換水で洗浄後、24時間真空乾燥した後、SEMで観察したところ、カーボンペーパーの白金板に面した側に直径が50〜100nmのフィブリル状ポリアニリンが生成していることを確認した。
【0054】
次に、上記ポリアニリンをカーボンペーパーごとAr雰囲気中3℃/分の昇温速度で950℃まで加熱し、その後950℃で1時間保持して焼成処理した。得られた焼成物をSEMで観察したところ、直径が40〜100nmのフィブリル状で3次元連続状の炭素繊維が、カーボンペーパー上に生成していることを確認した。なお、得られた炭素繊維は、残炭率が45%で、表面抵抗が1.0Ωであった(三菱油化製, Loresta IP又はHiresta IPで測定)。
【0055】
[触媒の担持]
図2に示すスパッタ装置を用い、下記の条件でTiOxy薄膜を成膜し、触媒構造体を作製した。なお、チタン化合物の成膜は、先ずアルゴンガスのみでの放電を起こし、その時のチタンの発光強度を測定し、その値を基準値(9.5)とし、未発光時をゼロとし、0〜9.5間で設定値(セットポイント)を決め、該設定値を維持できるように反応性ガスの供給を高速応答性マスフローコントローラーで制御して行った。
<パルス反応性スパッタリング条件>
・ターゲット寸法: 75mmφ×5mmt
・基板位置と基板間距離: 平行平板(片側にターゲット、距離80mm離して基板)
・スパッタ圧力: 0.5Pa
・スパッタ電力: 300W
・Arガス流量: 50sccm
・O2ガス流量: 0〜25sccm
・N2ガス流量: 0〜10sccm
・ガス制御セットポイント: 1〜5
・基板温度: 室温(基板加熱なし)
・基板固定
・スパッタ成膜時間: 1分〜100分
・TiOxy触媒担持量: 0.4mg/cm2
【0056】
[水素発生能(脱水素能)評価]
上記カーボンペーパー上に形成された触媒構造体10gを反応容器に収容し、水素気流中300℃にて1時間還元した。次に、27mLのシクロヘキサンを原料貯蔵部に入れ、反応容器内を高純度アルゴンで置換した後、触媒反応部を180℃に加温した。次に、原料貯蔵部からシクロヘキサンを滴下して反応させ、生成物を10℃に冷却した蒸気凝縮部で凝縮し貯蔵部に戻した。30分後の水素生成速度と、シクロヘキサンの転化率を求めた。結果を表1に示す。なお、生成物の分析を行ったところ、生成物はベンゼンのみであった。
【0057】
[水素貯蔵能(水素化能)評価]
次に、上記の装置及び触媒を用い、原料貯蔵部の内容物を水素貯蔵体であるベンゼンに置き換えて、以下の方法で水素貯蔵実験を行った。まず、水素発生実験と同様に、水素気流中300℃にて反応容器に収納した触媒構造体10gを2時間還元した。次に、27mLのベンゼンを原料貯蔵部に入れ、系内を1気圧の水素で満たした。次に、触媒反応部を200℃に加温した後、原料貯蔵部からベンゼンを滴下して反応させ、生成物を10℃に冷却した蒸気凝縮部で凝縮し貯蔵部に戻した。反応中の水素圧は1気圧である。30分後のベンゼンの転化率を求め、表1に示す結果を得た。なお、生成物の分析を行ったところ、生成物はシクロヘキサンのみであった。
【0058】
(比較例1〜2)
比較として、反応性ガスを導入しなかった例(比較例1)と、反応性ガスとして酸素のみを導入した例(比較例2)とを行った。これらの結果を1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から明らかなように、3次元連続状炭素繊維上にTiOxyをコーティングした触媒構造体は、シクロヘキサンの脱水素反応及びベンゼンの水素化反応に高い触媒作用を示し、水素貯蔵及び発生用触媒として優れていた。一方、触媒材料がチタン又は酸化チタンからなる触媒構造体は、シクロヘキサンの脱水素反応及びベンゼンの水素化反応における触媒活性が低かった。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体の製造に好適なバイポーラ型デュアルカソード方式マグネトロンスパッタ装置の一例の概略図を示す。
【図2】本発明の水素貯蔵及び発生用触媒構造体の製造に好適なユニポーラ型デュアルカソード方式マグネトロンスパッタ装置の一例の概略図を示す。
【符号の説明】
【0062】
1A,1B カソード
2A,2B ターゲット
3A,3B 磁石
4,4A,4B スイッチングユニット
5A,5B 交流電源
6A,6B ガス導入口
7A,7B ピエゾバルブ
8A,8B センサー
9A,9B コントローラー
10A,10B 隠れアノード
11 担体
12 ホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体表面に反応性スパッタリング法により触媒材料をコーティングしてなる水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項2】
一種又は複数の金属又は金属化合物を同時にスパッタリングして前記担体表面に触媒材料をコーティングしたことを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項3】
前記複数の金属又は金属化合物をスパッタリングするに際し、複数のカソードを用い同時に放電させて、前記担体表面に触媒材料をコーティングしたことを特徴とする請求項2に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項4】
前記複数の金属又は金属化合物をスパッタリングするに際し、複数のターゲットを一つのカソードに取り付け、放電時に該カソードにおいて同時に複数の金属をスパッタリングして前記担体表面に触媒材料をコーティングしたことを特徴とする請求項2に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項5】
前記複数の金属又は金属化合物をスパッタリングするに際し、複数のターゲットを一つのカソードに取り付け、放電時に該カソードにおいて同時に複数の金属をスパッタリングして前記担体表面に触媒材料をコーティングした後、該コーティングされた触媒材料中の金属又は金属化合物の少なくとも1種を酸及び/又はアルカリで除去したことを特徴とする請求項4に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項6】
前記反応性スパッタリングにおいて、放電時の発光量をモニタリングし、該発光量に応じて反応性ガスをカソード又は担体近傍に供給したことを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項7】
前記反応性スパッタリングにおいて、放電時の電源部のインピーダンスをモニタリングし、該インピーダンスの値に応じて反応性ガスをカソード又は担体近傍に供給したことを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項8】
反応性ガス量に応じて電流、電圧及び電力が大きく変化する遷移領域で前記反応性スパッタリングを行ったことを特徴とする請求項6又は7に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項9】
前記反応性スパッタリングにおいて、カソード近傍に隠れアノードを設け、カソード-アノード間に交流電圧を印加したことを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項10】
前記反応性スパッタリングにおいて、カソードを複数設け、該カソードに交流電圧を印加したことを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項11】
前記交流電圧の波形がサイン波であることを特徴とする請求項9又は10に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項12】
前記交流電圧の波形が矩形波であることを特徴とする請求項9又は10に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項13】
前記矩形波がパルス状であり、印加パターンを任意に制御したことを特徴とする請求項12に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項14】
前記印加パターンが、正負の印加電圧、正負の印加時間及び印加比率で規定されることを特徴とする請求項13に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項15】
前記金属が、Na,Mg,Al,Si,K,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Rb,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Cs,Ba,La,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Tl,Pb,Bi,Ce,Pr,Nd,Sm及びEuからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項16】
前記金属が貴金属であることを特徴とする請求項2に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項17】
前記貴金属が、Ag,Pt及びAuからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項16に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項18】
前記金属化合物が金属酸化物であることを特徴とする請求項2に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項19】
前記金属酸化物が、AlOx,SiOx,TiOx,FeOx,CoOx,NiOx,CuOx,ZnOx,NbOx,MoOx,LaOx,TaOx,WOx及びPbOxからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記xの値をスパッタリング時の酸素流量で制御したことを特徴とする請求項18に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項20】
前記金属化合物が金属窒化物であることを特徴とする請求項2に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項21】
前記金属窒化物が、AlNx,SiNx,TiNx,FeNx,CoNx,NiNx,CuNx,ZnNx,NbNx,MoNx,LaNx,TaNx,WNx及びPbNxからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記xの値をスパッタリング時の窒素流量で制御したことを特徴とする請求項20に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項22】
前記金属化合物が金属炭化物であることを特徴とする請求項2に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項23】
前記金属炭化物が、AlCx,SiCx,TiCx,FeCx,CoCx,NiCx,CuCx,ZnCx,NbCx,MoCx,LaCx,TaCx,WCx及びPbCxからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記xの値をスパッタリング時の炭化水素流量で制御したことを特徴とする請求項22に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項24】
前記金属化合物が金属酸化窒化物であることを特徴とする請求項2に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項25】
前記金属酸化窒化物が、AlOxy,SiOxy,TiOxy,FeOxy,CoOxy,NiOxy,CuOxy,ZnOxy,NbOxy,MoOxy,LaOxy,TaOxy,WOxy及びPbOxyからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記x及びyの値をスパッタリング時の酸素流量及び窒素流量で制御したことを特徴とする請求項24に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項26】
前記反応性スパッタリングで用いたターゲット材の使用効率が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項27】
前記複数のターゲットを一つのカソードに取り付けるに際し、該ターゲットが二つの場合は、該ターゲットを対面させて配置し、前記ターゲットが三つ以上の場合は、該ターゲットを多面体状に配置したことを特徴とする請求項4又は5に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項28】
前記担体がカーボン繊維集合体であることを特徴とする請求項1〜27のいずれかに記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項29】
前記カーボン繊維集合体がカーボンペーパーであることを特徴とする請求項28に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項30】
前記カーボン繊維集合体が直径1nm〜1μmのフィブリル状カーボン繊維集合体であることを特徴とする請求項28に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項31】
前記担体が、前記カーボンペーパー上に直径1nm〜1μmの前記フィブリル状カーボン繊維集合体を配設してなる複合カーボン集合体であることを特徴とする請求項28に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項32】
前記担体が、芳香環を有する化合物を酸化重合してフィブリル状ポリマーを得、該フィブリル状ポリマーを焼成して得た3次元連続状炭素繊維であることを特徴とする請求項28又は30に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項33】
前記焼成を非酸化性雰囲気中で行ったことを特徴とする請求項32に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項34】
前記芳香環を有する化合物がベンゼン環又は芳香族複素環を有する化合物であることを特徴とする請求項32に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項35】
前記芳香環を有する化合物が、アニリン、ピロール、チオフェン及びそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項34に記載の水素貯蔵及び発生用触媒構造体。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれかに記載の触媒構造体と、芳香族炭化水素とを用いることを特徴とする水素の貯蔵方法。
【請求項37】
請求項1〜35のいずれかに記載の触媒構造体と、芳香族炭化水素の水素化誘導体とを用いることを特徴とする水素の発生方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−130375(P2006−130375A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319551(P2004−319551)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】