説明

油圧作業機の油圧回路

【課題】油圧作業機のアイドリング待機中における、ポンプのエネルギーロスを減らし、省エネを図ることができる油圧回路を提供する。
【解決手段】ネガコンリリーフ弁6に並列に設けられた電磁バイパス弁7と、エンジンの回転数設定器25と、パイロット圧油が連結された電磁比例減圧弁20と、ネガコン油路に設けられネガコンリリーフ弁6あるいは電磁比例減圧弁20の高圧側を選択して容量制御器2aに供給するシャトル弁21と、コントローラ24を備え、回転数設定器25で設定した回転数が規定回転数以下で一定時間継続すると、電磁バイパス弁7を開にしてメインポンプ2をアンロードにし、さらに電磁比例減圧弁20の出力をメインポンプの最小流量を規定する圧力に設定しメインポンプ2の吐出量を最小流量にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧作業機の油圧回路、さらに詳しくは、油圧力によって駆動され操作される油圧ショベルのような油圧作業機の、作業待機時における省エネを図ることができる油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルのような油圧作業機は、作業機を運転操作していない、例えば作業待機の状態が一定時間継続すると、エンジンの回転数を自動的に下げ、省エネを図る、オートアイドル手段を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−219753号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のオートアイドル手段は、エンジンの回転数を下げアイドリング状態にするが、油圧作業機を駆動するためのメインポンプの吐出量は、周知のネガティブ制御によって制御されている、すなわち油圧装置を操作する制御弁のセンタバイパス通路の出口側に設けられたネガコンリリーフ弁によって生成されるネガコン圧によって制御されているので、ポンプの吐出油は常時リリーフされており、アンロードすなわち負荷のない状態にはなっていない。
【0005】
また、運転操作のための、例えば制御弁を操作するためのパイロット油を出力するパイロットポンプは、所定の圧力を維持するために常時リリーフ状態になっている。
【0006】
したがって、作業待機中のような油圧作業機のアイドリング状態においても、メインポンプおよびパイロットポンプは所定の圧力で作動油を吐出しているので、燃料が消費されエネルギーロスが発生する。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、油圧作業機のアイドリング待機中における、メインポンプ、パイロットポンプのエネルギーロスを減らし、省エネを図ることができる油圧回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面によれば、上記技術的課題を解決する油圧作業機の油圧回路として、エンジンにより駆動される可変容量型のメインポンプの容量を制御するためのネガコン圧を生成するネガコンリリーフ弁に並列に設けられた常時閉の電磁バイパス弁と、該エンジンの回転数を規定する回転数設定器と、該エンジンによって駆動されるパイロットポンプのパイロット圧油が連結された常時は出力零の電磁比例減圧弁と、該ネガコンリーフ弁の上流側をメインポンプに接続するネガコン油路に設けられ、ネガコンリリーフ弁のネガコン圧あるいは電磁比例減圧弁の出力圧の高圧側を選択してメインポンプに供給するシャトル弁と、コントローラと、を備え、該コントローラは、該回転数設定器で設定した回転数が規定回転数以下で一定時間継続すると、該電磁バイパス弁を開にしてメインポンプをアンロードにするとともに、該電磁比例減圧弁の出力を、該アンロード状態のネガコン圧よりも高い、メインポンプの最小流量を規定する圧力に設定し、メインポンプの吐出量を最小流量にする、ことを特徴とする油圧作業機の油圧回路が提供される。
【0009】
本発明の他の局面によれば、上記技術的課題を解決する油圧作業機の油圧回路として、可変容量型のメインポンプを駆動するエンジンの回転数を規定する回転数設定器と、該エンジンによって駆動されるパイロットポンプとその吐出油が供給されるパイロット回路とを結ぶ油路に設けられた常時開の電磁遮断弁と、該パイロットポンプと電磁遮断弁の間に設けられたチェック弁およびチェック弁とパイロットポンプの間に設けられたパイロット圧を規定するパイロットリリーフ弁、ならびにチェック弁と電磁遮断弁の間に設けられたアキュムレータおよびその圧力を検出する圧力検出器と、該パイロットリリーフ弁の圧力設定を解除する設定圧解除手段と、コントローラと、を備え、該コントローラは、該回転数設定器で設定した回転数が規定回転数以下で該電磁遮断弁の閉状態が一定時間継続し、さらに圧力検出器の圧力がパイロットリリーフ弁により規定された圧力以上であると、該設定圧解除手段によってリリーフ弁の圧力設定を解除して、パイロットポンプをアンロードにする、ことを特徴とする油圧作業機の油圧回路が提供される。
【0010】
好適実施形態においては、上記の一局面と他の局面とを備えたことを特徴とする油圧作業機の油圧回路が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油圧回路によれば、従来の省エネ手段は待機時にエンジンの回転数をアイドリング状態に下げるのみであるが、メインポンプおよびパイロットポンプをアンロード状態にするので、エネルギーロスを減らし、省エネを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従って構成された油圧作業機の油圧回路図。
【図2】図1に示すコントローラの制御ブロック図。
【図3】コントローラの圧力判定器の特性線図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成された油圧作業機の油圧回路について、代表的な油圧作業機である油圧ショベルにおける好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0014】
なお、本実施の形態における油圧ショベルは、メインポンプを一対備え、それぞれの吐出回路に関連してネガコンリリーフ弁、シャトル弁等がそれぞれ備えられているが、メインポンプは1個の場合でも本発明の構成、またその作用は同じである。したがって、以下においては説明が煩雑になるのを避けて、例えばメインポンプは2,2のように同一の符号で示し、特に断りのない限り説明においては単にメインポンプ2と呼ぶこととする。
【0015】
図1を参照して説明する。全体を番号1で示す油圧作業機の油圧回路は、エンジンEにより駆動される可変容量型のメインポンプ2の容量を制御するためのネガコン圧を生成するネガコンリリーフ弁6に並列に設けられた常時閉の電磁バイパス弁7と、エンジンEの回転数を規定する回転数設定器としてのアクセルダイヤル25と、エンジンEによって駆動されるパイロットポンプ4のパイロット圧油が連結された常時は出力零の電磁比例減圧弁20と、ネガコンリーフ弁6の上流側をメインポンプの容量制御器2aに接続するネガコン油路3に設けられ、ネガコンリリーフ弁6のネガコン圧あるいは電磁比例減圧弁20の出力圧の高圧側を選択して容量制御器2aに供給するシャトル弁21を備えている。
【0016】
油圧回路1はさらに、エンジンEによって駆動されるパイロットポンプ4とその吐出油が供給されるパイロット回路19とを結ぶ油路に設けられた常時開の電磁遮断弁18と、パイロットポンプ4と電磁遮断弁18の間に設けられたチェック弁15およびチェック弁15とパイロットポンプ4の間に設けられたパイロット圧を規定するパイロットリリーフ弁13、ならびにチェック弁15と電磁遮断弁18の間に設けられたアキュムレータ16およびその圧力を検出する圧力検出器17と、パイロットリリーフ弁13の圧力設定を解除する設定圧解除手段としてのパイロットリリーフ弁13のベント回路に設けられた常時閉の電磁切換弁14と、コントローラ24を備えている。
【0017】
ネガコン圧を生成するネガコンリリーフ弁6は、メインコントロール弁5のセンタバイパス通路5aのタンク22につながる出口側に設けられている周知のものである。メインコントロール弁5も周知のものであり、複数の方向制御弁を備え、方向制御弁それぞれによってメインポンプ2,2の吐出油が、複数の油圧アクチュエータである、ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、旋回モータ11、走行モータ12a、12b等に給排される。
【0018】
ネガコンリリーフ弁6に並列に設けられた常時閉の電磁バイパス弁7は、コントローラ24からの出力信号によって開けられる開閉2位置の電磁弁である。
【0019】
パイロットポンプ4とその吐出油が供給されるパイロット回路19とを結ぶ油路に設けられた常時開の電磁遮断弁18は、例えばオペレータによって操作される油圧ロックスイッチ26の出力信号によって閉じられる開閉2位置の電磁弁である。パイロット回路19は、メインコントロール弁5の複数の方向制御弁を操作するパイロット油の流れを操作レバーなどによって制御する回路である。例えば作業待機時にオペレータが油圧ロックスイッチ26を操作し電磁遮断弁18を閉にすると、パイロット回路19へのパイロット油は遮断され、またパイロット回路19のパイロット油はタンク22に開放されるので、オペレータが操縦レバーなどを操作しても、あるいは万一触れても、メインコントロール弁5の方向制御弁は操作されない。
【0020】
パイロットポンプ4と電磁遮断弁18の間に設けられたチェック弁15は、電磁遮断弁18が閉じられ状態においてアキュムレータ16に蓄圧されたパイロットリリーフ弁13によって規定されたパイロット圧を保持している。
【0021】
パイロットリリーフ弁13の圧力設定を解除する設定圧解除手段としてのパイロットリリーフ弁13のベント回路に設けられた常時閉の電磁切換弁14は、コントローラ24からの出力信号によって開けられ圧力設定を解除する、開閉2位置の電磁弁である。
【0022】
エンジンEの回転数を規定する回転数設定器としてのアクセルダイヤル25は、ローアイドル、ハイアイドルなどを調整自在に設定し規定する周知のものである。
【0023】
図2を参照してコントローラ24について説明する。コントローラ24は、アクセルダイヤル25の出力が入力され、入力信号が規定値以下に下がっている場合にはON信号を出力するアクセル判定器27と、油圧ロックスイッチ26の出力が入力され、ロック状態である場合にはON信号を出力する油圧ロック判定器28と、アクセル判定器27と油圧ロック判定器28の信号の論理積演算を行い、両者の信号がONである場合にはON信号を出力する論理積演算器29と、論理積演算器29の出力が入力され、入力信号が一定時間ON信号を継続するとON信号を出力するタイマ30を備え、タイマ30の出力は電磁バイパス弁7に接続されている。
【0024】
タイマ30の時間設定は、油圧作業機の種類、作業の形態などによって、例えば数秒、あるいは数分のように設定される。
【0025】
コントローラ24はまた、最大流量ネガコン圧設定器31と、最小流量ネガコン圧設定器32と、信号切換器33を備え、信号切換器33は、常時は最大流量ネガコン圧設定器31の信号を電磁比例減圧弁20に出力し、タイマ30の出力のあるときには最小流量ネガコン圧設定器32の出力を電磁比例減圧弁20に出力する。
【0026】
コントローラ24はさらに、圧力検出器17の信号が入力され、アキュムレータ16の圧力を判定し圧力が規定圧以上である場合にはON信号を出力する圧力判定器34と、圧力判定器34とタイマ30の信号が入力され、両者の論理積を求め電磁切換弁14に出力する論理積演算器35を備えている。論理積演算器35は、アクセルダイヤル25の設定が規定値以下で油圧ロックスイッチ26のロック状態が規定時間継続し、かつアキュムレータ16の圧力が規定圧以上の場合にはON信号を出力する。なお、圧力判定器34は、図3に示すように、出力信号のチャタリングを防止するために、OFF信号時の圧力はON信号時の圧力よりも低く設定されている。
【0027】
図1、図2を参照して、油圧作業機の作業待機時におけるコントローラ24の作用について説明する。
【0028】
(1)オペレータがアクセルダイヤル25の設定を規定回転数以下に下げ、かつパイロット回路19の油圧ロックスイッチ26をロック状態のONにすると、油圧作業機は作業待機時のアイドリング状態になる。
【0029】
(2)アクセル判定器27は、信号が規定値以下に下がっているのでON信号を出力する。また、油圧ロック判定器28は、油圧ロックスイッチ26の信号がロック状態であるのでON信号を出力する。
【0030】
(3)論理積演算器29は、両者の信号がONであるのでON信号をタイマ30に出力する。タイマ30は、アイドリング状態で、入力信号が一定時間ON信号を継続しているとON信号を出力し電磁バイパスバルブ7を励磁する。同時に信号切換器33を切換え、最小流量ネガコン圧設定器32の信号を出力して、ネガコン圧を制御する電磁比例減圧弁20の出力を最小流量ネガコン圧に設定する。
【0031】
(4)圧力判定器34は、圧力センサ17の信号が規定圧以上であるのでON信号を出力する。
【0032】
(5)論理積演算器35は、圧力判定器34とタイマ30のON信号、かつ圧力センサ17の信号が規定圧以上のであるのでON信号を出力し、電磁切換バルブ14を励磁し、リリーフバルブ13をアンロードにする。
【0033】
(6)かくして、電磁バイパス弁7は励磁され、メインコントロールバルブ5のセンタバイパス回路5aはタンク22に導かれ、メインポンプ2はアンロード状態になる。同時に、電磁比例減圧弁20は最小流量ネガコン圧に設定されるので、シャトルバルブ21を介して、メインポンプ2のネガコン圧は最小流量ネガコン圧に保持され、メインポンプ2は最小流量に設定される。さらに、電磁切換弁14が励磁されリリーフバルブ13の圧力設定が解放されるので、パイロットポンプ4はアンロード状態になる。
【0034】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、下記のように変形あるいは修正ができるものである。
【0035】
すなわち、本発明の実施の形態においては、メインポンプをアンロード状態にするとともにメインポンプの吐出量を最小にし、さらにパイロットポンプをアンロード状態にしたが、詳述するまでもなく、メインポンプのアンロード、最小吐出量状態と、パイロットポンプのアンロード状態を別個に単独で実施してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1:油圧回路
2:メインポンプ
3:ネガコン油路
4:パイロットポンプ
6:ネガコンリリーフ弁
7:電磁バイパス弁
13:パイロットリリーフ弁
14:電磁切換弁(設定圧解除手段)
15:チェック弁
16:アキュムレータ
17:圧力検出器
18:電磁遮断弁
19:パイロット回路
20:電磁比例減圧弁
21:シャトル弁
24:コントローラ
25:アクセルダイヤル(回転数設定器)
E:エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動される可変容量型のメインポンプの容量を制御するためのネガコン圧を生成するネガコンリリーフ弁に並列に設けられた常時閉の電磁バイパス弁と、
該エンジンの回転数を規定する回転数設定器と、
該エンジンによって駆動されるパイロットポンプのパイロット圧油が連結された常時は出力零の電磁比例減圧弁と、
該ネガコンリーフ弁の上流側をメインポンプに接続するネガコン油路に設けられ、ネガコンリリーフ弁のネガコン圧あるいは電磁比例減圧弁の出力圧の高圧側を選択してメインポンプに供給するシャトル弁と、
コントローラと、を備え、
該コントローラは、
該回転数設定器で設定した回転数が規定回転数以下で一定時間継続すると、
該電磁バイパス弁を開にしてメインポンプをアンロードにするとともに、
該電磁比例減圧弁の出力を、該アンロード状態のネガコン圧よりも高い、メインポンプの最小流量を規定する圧力に設定し、メインポンプの吐出量を最小流量にする、
ことを特徴とする油圧作業機の油圧回路。
【請求項2】
可変容量型のメインポンプを駆動するエンジンの回転数を規定する回転数設定器と、
該エンジンによって駆動されるパイロットポンプとその吐出油が供給されるパイロット回路とを結ぶ油路に設けられた常時開の電磁遮断弁と、
該パイロットポンプと電磁遮断弁の間に設けられたチェック弁およびチェック弁とパイロットポンプの間に設けられたパイロット圧を規定するパイロットリリーフ弁、ならびにチェック弁と電磁遮断弁の間に設けられたアキュムレータおよびその圧力を検出する圧力検出器と、
該パイロットリリーフ弁の圧力設定を解除する設定圧解除手段と、
コントローラと、を備え、
該コントローラは、
該回転数設定器で設定した回転数が規定回転数以下で該電磁遮断弁の閉状態が一定時間継続し、さらに圧力検出器の圧力がパイロットリリーフ弁により規定された圧力以上であると、
該設定圧解除手段によってリリーフ弁の圧力設定を解除して、パイロットポンプをアンロードにする、
ことを特徴とする油圧作業機の油圧回路。
【請求項3】
請求項1記載の油圧回路と、請求項2記載の油圧回路と、を備えている、
ことを特徴とする油圧作業機の油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−169204(P2010−169204A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12960(P2009−12960)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】