説明

波長可変光フィルタ、波長可変レーザ、および波長可変レーザアレイ

【課題】広帯域で反射率のピーク波長が可変であり、かつ長さが短い波長可変光フィルタ、ならびに広帯域でレーザ光の波長が可変であり、かつレーザ光の強度が安定した波長可変レーザおよび波長可変レーザアレイを提供すること。
【解決手段】マルチモード干渉型導波路と、前記マルチモード干渉型導波路の長さ方向の一端に設けられた第1光入出力部と、前記マルチモード干渉型導波路の他の一端に設けられた反射手段と、前記マルチモード干渉型導波路の屈折率を変化させる手段と、を備え、前記マルチモード干渉型導波路の長さおよび幅は、前記第1光入出力部から入力した光を、前記反射手段により反射した後に、該第1光入出力部において所望の分岐比で結像させるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変光フィルタならびにこれを用いた波長可変レーザおよび波長可変レーザアレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
波長分割多重(WDM)技術を用いた光通信において、信号光源として波長可変レーザが使用されている。波長可変レーザを実現する方式としては、レーザ発振波長が互いに異なる複数の半導体レーザとマルチモード干渉型(Multi Mode Interference、MMI)光合流器(非特許文献1参照)とを組み合わせて、駆動するDFBレーザを切り換えて、出力するレーザ光の波長を可変とする方式がある(特許文献1参照)。一方、半導体レーザと波長可変光フィルタとを組み合わせて、出力するレーザ光の波長を可変とする方式がある。
【0003】
大容量のWDM通信においては広い波長範囲を使用するので、波長可変レーザにおいてもレーザ光の波長の可変の範囲がより広帯域であることが要求されている。波長可変レーザにおいて広帯域で波長可変を行なう代表的な方法の一つに、反射率の波長依存性が周期的にピークを示し、かつ互いに周期の異なる2つのグレーティング素子をミラーとして組み合わせて光共振器を構成する方法がある。この方法では、グレーティング素子のピークが重なり合った波長において光共振器が形成されるが、一方のグレーティング素子のピーク波長を変化させることによって、その重なり合うピーク波長をバーニア効果によって大きく動かせるという原理を用いて、広帯域での波長可変を実現している。たとえば、非特許文献2では、2つのサンプルドグレーティング(Sampled Grating:SG)を組み合わせて光共振器を構成している。一方、非特許文献3では、2つの超周期構造グレーティング(Super-Structure Grating:SSG)を組み合わせて光共振器を構成している。
【0004】
一方、別の方法として、反射率の波長依存性が周期的にピークを示すグレーティング素子と、比較的半値全幅がひろい反射率のピークを有し、このピークを変化させることができる波長可変光フィルタとを組み合わせて光共振器を構成する方法がある。たとえば、非特許文献4では、サンプルドグレーティングと、波長可変光フィルタとしてのグレーティングアシスト方向性結合器光フィルタとを組み合わせて光共振器を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−250889号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Pierre A. Besse, et al., Journal of Lightwave Technology, vol.12, No.6, pp.1004-1009, 1994
【非特許文献2】Vijaysekhar Jayaraman, et al., IEEE Journal of Quantum Electronics, vol.29, No.6, pp.1824-1834, 1993
【非特許文献3】Yuichi Tohmori, et al., IEEE Journal of Quantum Electronics, vol.29, No.6, pp.1817-1823, 1993
【非特許文献4】M. Oberg, et al., IEEE Photonics Technology Letters, vol.5, No.7, pp.735-738, 1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の波長可変レーザにおいては、光共振器のミラーとなる素子の長さが、いずれも500μm以上と長いため、光共振器の共振器長も長くなる。したがって、光共振器の縦モードの波長間隔が狭くなり、複数の縦モードにおいてレーザ発振が可能な状態となる。その結果、レーザ発振をさせた場合に縦モード間でのモードホップが発生し、出力するレーザ光の強度が不安定になるという問題があった。ゆえに、広帯域で反射率のピーク波長が可変であり、かつ長さが短い波長可変光フィルタが求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、広帯域で反射率のピーク波長が可変であり、かつ長さが短い波長可変光フィルタ、ならびに広帯域でレーザ光の波長が可変であり、かつレーザ光の強度が安定した波長可変レーザおよび波長可変レーザアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る波長可変光フィルタは、マルチモード干渉型導波路と、前記マルチモード干渉型導波路の長さ方向の一端に設けられた第1光入出力部と、前記マルチモード干渉型導波路の他の一端に設けられた反射手段と、前記マルチモード干渉型導波路の屈折率を変化させる手段と、を備え、前記マルチモード干渉型導波路の長さおよび幅は、前記第1光入出力部から入力した光を、前記反射手段により反射した後に、該第1光入出力部において所望の分岐比で結像させるように設定されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る波長可変光フィルタは、上記の発明において、前記マルチモード干渉型導波路の長さおよび幅は、前記第1光入出力部から入力した所定の波長を有するシングルモードの光をマルチモードで導波し、前記反射手段により反射した後に、前記第1光入出力部においてシングルモードの状態で結像させるように設定されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る波長可変光フィルタは、上記の発明において、前記反射手段は半導体のへき開面であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る波長可変光フィルタは、上記の発明において、前記反射手段は半導体のエッチング面であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る波長可変レーザは、前記マルチモード干渉型導波路の前記一端に設けられ、前記第1光入出力部から入力し前記反射手段により反射した光の一部が結像される第2光入出力部をさらに備える上記の発明のいずれか一つの波長可変光フィルタと、反射率の波長依存性が周期的にピークを示す周期性反射手段と、前記波長可変光フィルタと前記周期性反射手段との間に配置した光増幅手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る波長可変レーザは、上記の発明において、半導体光増幅器をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る波長可変レーザアレイは、上記の発明のいずれか一つの波長可変レーザを複数備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、マルチモード干渉型導波路と反射手段とを組み合わせることによって、広帯域で反射率のピーク波長が可変であり、かつ長さが短い波長可変光フィルタ、ならびに広帯域でレーザ光の波長が可変であり、かつレーザ光の強度が安定した波長可変レーザおよび波長可変レーザアレイを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施の形態1に係る波長可変レーザの模式的な平面図である。
【図2】図2は、図1に示す波長可変レーザのA−A線要部断面図である。
【図3】図3は、図1に示す波長可変レーザのB−B線要部断面図である。
【図4】図4は、図1に示す波長可変レーザのC−C線要部断面図である。
【図5】図5は、図1に示す波長可変光フィルタの構成および動作について説明するための模式的な平面図である。
【図6】図6は、波長可変光フィルタの反射率の波長特性を模式的に示す図である。
【図7】図7は、サンプルドグレーティング導波路部の反射率の波長特性の一例を模式的に示す図である。
【図8】図8は、図1に示す波長可変レーザの発振波長について説明する図である。
【図9】図9は、図1に示す波長可変レーザの発振波長と縦モードとの関係について説明する図である。
【図10】図10は、図1に示す波長可変レーザの製造方法の一例を説明する図である。
【図11】図11は、実施の形態1の変形例に係る波長可変レーザの模式的な要部断面図である。
【図12】図12は、実施の形態2に係る波長可変レーザアレイの模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明に係る波長可変光フィルタ、波長可変レーザ、および波長可変レーザアレイの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各層の厚みと幅との関係、各層の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0019】
(実施の形態1)
はじめに、本発明の実施の形態1に係る波長可変レーザについて説明する。以下では、はじめに本実施の形態1に係る波長可変レーザの構造について説明し、つぎに、その動作について説明し、最後に、その製造方法の一例について説明する。
【0020】
(構造)
図1は、本発明の実施の形態1に係る波長可変レーザ100の模式的な平面図である。図1に示すように、この波長可変レーザ100は、周期性反射手段としてのDBR(Distributed Bragg Reflector)ミラーであるサンプルドグレーティング導波路部1と、光増幅手段としての光増幅導波路部2と、位相調整導波路部3と、MMI導波路部4と、曲がり導波路部5と、半導体光増幅器としての光増幅導波路部6と、レーザ光50を出力すべき曲がり導波路部7とを備え、これらの光導波路は、この順番で光学的に接続し、かつMMI導波路部4を基点として折り返すように配置している。また、この波長可変レーザ100の上面は、後述するp側電極とコンタクト層とのコンタクト部分以外が、たとえばSiNxからなる厚さ数十〜数百nm程度の保護膜11によって覆われている。
【0021】
つぎに、図2〜図4を用いて波長可変レーザ100の積層構造について説明する。はじめに、図2は、図1に示す波長可変レーザ100のA−A線要部断面図である。図2に示すように、サンプルドグレーティング導波路部1は、裏面にn側電極21を形成したn−InPからなる基板22上に、バッファ層としての役割も果たしているn−InPからなる下部クラッド層23と、InGaAsPからなるコア層24と、p−InPからなる上部クラッド層25と、InGaAsPからなり、短周期のグレーティングが形成されたグレーティング領域26aが所定の周期で配置されたグレーティング層26と、p−InPからなる上部クラッド層27、28と、InGaAsからなるコンタクト層29とが順次積層した構造を有している。また、コンタクト層29上にはp側電極12が形成されている。ここで、コア層24の組成は1.4Q、グレーティング層26の組成は1.5Qに調整されている。なお、1.4Qとは、バンドギャップ波長が1.4μmという意味である。
【0022】
また、光増幅導波路部2は、サンプルドグレーティング導波路部1と共通の基板22および下部クラッド層23と、InGaAsPからなるSCH(Separate confinement heterostructures)層30aと、InGaAsPからなる多重量子井戸(MQW)構造を有する活性層30と、SCH層30bと、p−InPからなる上部クラッド層31、28と、コンタクト層29とが順次積層した構造を有している。また、コンタクト層29上にはp側電極13が形成されている。
【0023】
また、位相調整導波路部3およびMMI導波路部4は、共通の基板22および下部クラッド層23と、コア層24と、p−InPからなる上部クラッド層32、28と、コンタクト層29とが順次積層した構造を有している。また、コンタクト層29上にはp側電極14、15が形成されている。
【0024】
また、サンプルドグレーティング導波路部1、光増幅導波路部2、位相調整導波路部3、およびMMI導波路部4の間には、これらを電気的に分離するための分離溝18〜20が形成されている。なお、保護膜11は、各分離溝18〜20内の表面も覆っている。
【0025】
また、光増幅導波路部6は、光増幅導波路部2と同様の積層構造を有しており、そのコンタクト層29上にはp側電極16が形成されている。また、曲がり導波路部5、7は、p側電極を有していない点以外は、位相調整導波路部3と同様の積層構造を有している。
【0026】
以上のように、この波長可変レーザ100は、波長1.55μm帯のレーザ光を出力するために、InGaAsP系の半導体材料を使用している。また、サンプルドグレーティング導波路部1、光増幅導波路部2、位相調整導波路部3、MMI導波路部4、曲がり導波路部5、光増幅導波路部6、および曲がり導波路部7が、同一基板22上にモノリシックに集積した構成を有している。
【0027】
また、図1に示すように、波長可変レーザ100の曲がり導波路部7側の積層構造の端面には反射防止膜8が形成されている。一方、図1、2に示すように、MMI導波路部4側の積層構造の端面には、反射手段として、反射率がたとえば90%以上の高光反射膜9が形成されている。このMMI導波路部4と高光反射膜9とが後述する波長可変光フィルタ10を構成している。
【0028】
つぎに、図3は、図1に示す波長可変レーザ100のB−B線要部断面図である。図3に示すように、サンプルドグレーティング導波路部1および光増幅導波路部6は、埋め込みメサ構造を有している。具体的には、サンプルドグレーティング導波路部1においては、下部クラッド層23の一部から上部クラッド層27までがメサ構造を有している。そして、このメサ構造がp−InPからなる埋め込み層33とn−InPからなる電流阻止層34とによって埋め込まれた構造をしており、さらにその上に上部クラッド層28、コンタクト層29、p側電極12が順次積層している。一方、光増幅導波路部6においては、下部クラッド層23の一部から上部クラッド層31までがメサ構造を有している。そして、このメサ構造が埋め込み層33と電流阻止層34とによって埋め込まれた構造をしており、さらにその上に上部クラッド層28、コンタクト層29、p側電極16が順次積層している。これらの電流阻止層34は電流を効率的に注入させる機能を有する。また、サンプルドグレーティング導波路部1と光増幅導波路部6との間には、これらを電気的に分離するための分離溝17が形成されている。また、保護膜11は、分離溝17内の表面も覆っている。なお、光増幅導波路部2、位相調整導波路部3、および曲がり導波路部7も同様の埋め込みメサ構造を有している。これらの埋め込みメサ構造の光導波路のメサ幅は、所定の波長の光をシングルモードで導波するように設定されており、所定の波長が1.55μm帯の場合は、たとえば2μmである。
【0029】
一方、図4は、図1に示す波長可変レーザ100のC−C線要部断面図である。図4に示すように、MMI導波路部4は、ハイメサ構造を有している。具体的には、下部クラッド層23の一部からコンタクト層29までがハイメサ構造を有しており、このハイメサ構造の側面および下部クラッド層23の表面は保護膜11によって覆われており、さらにコンタクト層29の上を覆うようにp側電極15が形成されている。なお、曲がり導波路部5も同様のハイメサ構造を有している。曲がり導波路部5のメサ幅は、所定の波長の光をシングルモードで導波するように設定されており、所定の波長が1.55μm帯の場合は、たとえば0.7μmである。また、図1に示すように、保護膜11は埋め込みメサ構造以外の領域の表面を覆うように形成されている。
【0030】
(動作)
つぎに、本実施の形態1に係る波長可変レーザ100の動作について説明する。以下では、はじめに波長可変光フィルタ10について説明し、つぎにサンプルドグレーティング導波路部1について説明し、つぎに波長可変レーザ100の動作について説明する。
【0031】
はじめに波長可変光フィルタ10について説明する。図5は、図1に示す波長可変光フィルタ10の構成および動作について説明するための模式的な平面図である。なお、説明のためにp側電極15等は記載を省略している。図5に示すように、この波長可変光フィルタ10は、MMI導波路部4と反射手段としての高光反射膜9とを備えている。
【0032】
MMI導波路部4は、光をマルチモードで導波させるMMI導波路4aと、MMI導波路4aの長さ方向の一端に設けられた第1光入出力部としての光入出力部4b、および第2光入出力部としての光入出力部4cとを備えている。また、高光反射膜9は、MMI導波路4aの他の一端に設けられている。また、MMI導波路4aは、長さL1と、幅Wとを有している。なお、光入出力部4bと光入出力部4cとは、MMI導波路4aの長さL1方向の中心軸に対して略対称の位置に設けられている。
【0033】
この波長可変光フィルタ10においては、MMI導波路4aの長さL1および幅Wは、光入出力部4bから入力したシングルモードの光を、マルチモードで導波させ、高光反射膜9により反射した後に、光入出力部4b、4cにおいて分岐比1:1で結像させるように設定されている。
【0034】
以下、具体的に説明する。まず、仮に、MMI導波路4aの長さを、図5の破線で示すような長さL2であると想定する。この想定された長さL2は、幅Wとの関係で、MMI導波路4aが所定の光の波長に対して分岐比が1:1の2×2カプラとして機能するように設定されているとする。この場合、光入出力部4bから入力された所定の波長のシングルモードの光51は、MMI導波路4aを長さL2だけマルチモードで導波し、光入出力部4b、4cと対向する位置にある点P1、P2において、その光強度比(分岐比)が1:1のシングルモードの光52、53として結像する。
【0035】
これに対して、この波長可変光フィルタ10においては、MMI導波路4aの長さL1を、上述した想定された長さL2の1/2の長さに設定しており、さらに高光反射膜9を備えている。すると、光入出力部4bと点P1、および光入出力部4cと点P2は、高光反射膜9の反射面に対して面対称の位置関係となる。その結果、光入出力部4bから入力された光51は、長さL1だけ導波してマルチモード状態の光54として高光反射膜9により反射した後に、点P1、P2と面対称の位置にある光入出力部4b、4cにおいて、ちょうど分岐比1:1がシングルモードの光55、56として結像することとなる。
【0036】
すなわち、この波長可変光フィルタ10は、所定の波長の光に対しては、光入出力部4bから入力した光を略1:1の光強度で分岐して光入出力部4bおよび光入出力部4cにそれぞれ出力するので、少なくとも光入出力部4bに対しては反射型の1:1分岐素子として機能する。一方、上記所定の波長以外の波長の光を入力させると、MMI導波路4a内での光の干渉状態が変化するので、分岐比も変化する。この波長可変光フィルタ10は、所定の波長においては分岐比が略1:1となり、それ以外の波長においては光入出力部4bへの光の分岐比が小さくなるように設定してあるので、所定の波長を反射率のピークとした波長特性を有する反射型光フィルタとして機能する。
【0037】
図6は、波長可変光フィルタ10の反射率の波長特性の一例を模式的に示す図である。なお、図6においては、コア層24の特性については、組成を1.4Q、厚さを700nm、長さL1の値を185μm、幅Wの値を10μm、光入出力部4bと光入出力部4cとの間隔を5.6μmに設定している。また、コア層24の等価屈折率は3.44である。図6に示すように、この波長可変光フィルタ10は、波長1.55μm付近を反射率のピークとした波長依存性を有する反射型光フィルタとして機能する。
【0038】
ここで、屈折率を変化させる手段としてのn側電極21とp側電極15との間に電圧を印加し、コア層24に電流を注入すると、プラズマ効果によってコア層24の屈折率が変化する。コア層24の屈折率が変化すると、MMI導波路4a内での光の干渉状態が変化するため、光の分岐比が1:1となる波長も変化することとなるので、反射率のピーク波長も変化する。したがって、上記の電流注入によって、反射率のピーク波長を変化させることができるので、波長可変光フィルタ10は波長可変光フィルタとして機能するのである。なお、反射率のピーク波長を変化させた場合に、そのピーク反射率が変化しないようにするために、使用する波長帯域において高光反射膜9の反射率が略一定であることが好ましい。
【0039】
なお、上記のように、所定の波長におけるMMI導波路4aの長さL1および幅Wの設定方法としては、たとえば非特許文献1に記載される方法で、導波路の等価屈折率等の設計パラメータを用いてまず2×2カプラとして機能するための長さL2および幅Wを設計し、その後長さL1を長さL2の1/2の値として設定すればよい。このとき、たとえば、所定の波長におけるMMI導波路4aの0次モード、1次モードの伝搬定数をそれぞれβ、βとすると、長さL1の値Lは、L=3π/{4(β−β)}となる。
【0040】
また、上述したように、この波長可変光フィルタ10は、図6に示す例のように長さL1の値は185μmとでき、従来よりも大幅に短くできる。
【0041】
つぎに、サンプルドグレーティング導波路部1について説明する。サンプルドグレーティング導波路部1は、反射率の波長依存性が周期的にピークを示す特性を有している。この反射率のピークの波長および周期は、積層した下部クラッド層23から上部クラッド層27までの各層の屈折率、グレーティング領域26aにおける短周期グレーティングの周期、およびグレーティング領域26aの配置の周期を調整することで設定できる。
【0042】
図7は、サンプルドグレーティング導波路部1の反射率の波長特性の一例を模式的に示す図である。なお、図7においては、グレーティング層26の特性については、組成を1.5Q、厚さを50nm、グレーティング領域26aにおける短周期グレーティングの周期を241nm、グレーティング領域26aの配置の周期を37.4μmに設定している。また、グレーティング層26の屈折率は3.49である。また、サンプルドグレーティング導波路部1の長さは600μmである。図7に示すように、このサンプルドグレーティング導波路部1は、その反射率が、波長1.55μm付近にピークを有し、さらに約60nmの帯域にわたって約10nmの周期でピークを示す波長依存性を有するものとなる。また、各ピークの半値全幅は1nm程度となる。
【0043】
なお、このサンプルドグレーティング導波路部1についても、波長可変光フィルタ10と同様に、n側電極21とp側電極12との間に電圧を印加し、グレーティング層26に電流を注入すると、電気光学効果によってグレーティング層26の等価屈折率が変化する。これによって、反射率のピーク波長を変化させることができる。たとえば、図7に示す場合において、電流注入によって反射率のピーク波長を10nm変化させるようにすれば、1.515〜1.585μmの全域にわたって反射率のピークをすきまなく配置させることができる。
【0044】
つぎに、図1、図8を用いて波長可変レーザ100の動作について説明する。図8は、図1に示す波長可変レーザ100の発振波長について説明する図である。まず、波長可変光フィルタ10が、図8に示す反射スペクトル60のような反射率の波長依存性を有しているとする。この場合、サンプルドグレーティング導波路部1の反射率のピークのうち、反射スペクトル60との重なりが最も大きい反射ピーク61の波長において、サンプルドグレーティング導波路部1と波長可変光フィルタ10とによって光共振器が形成される。
【0045】
ここで、n側電極21とp側電極13との間に電圧を印加し、光増幅導波路部2の活性層30に電流を注入すると、光増幅導波路部2は発光する。すると、光増幅導波路部2の誘導放出による光増幅機能と、サンプルドグレーティング導波路部1と波長可変光フィルタ10とが形成する光共振器の作用によって、反射ピーク61にほぼ対応するピーク波長の強度スペクトル62を有するレーザ光が発振する。つぎに、曲がり導波路部5は発振したレーザ光を導波する。一方、光増幅導波路部6については、n側電極21とp側電極16との間に電圧を印加し、光増幅導波路部6の活性層30に電流を注入することによって、半導体光増幅器として機能する。そして、光増幅導波路部6は、曲がり導波路部5が導波したレーザ光を受け付けてこれを光増幅し、曲がり導波路部7に出力する。曲がり導波路部7は、光増幅されたレーザ光を導波し、レーザ光50として出力する。なお、曲がり導波路部7は、反射防止膜8が形成された端面に対して角度を有する光導波路となっているので、レーザ光50の一部が端面反射によって戻り光として波長可変レーザ100内に戻ることが抑制されるため、レーザ光50の強度はさらに安定する。なお、光増幅導波路部6の出力側に窓構造を採用すれば、戻り光はさらに抑制されるので好ましい。
【0046】
つぎに、電流注入によって、波長可変光フィルタ10の反射率の波長依存性を、図8に示す反射スペクトル63のように変化させたとする。この場合、サンプルドグレーティング導波路部1の反射率のピークのうち、反射スペクトル63との重なりが最も大きい反射ピーク64の波長において、サンプルドグレーティング導波路部1と波長可変光フィルタ10とによって光共振器が形成される。その結果、光増幅導波路部2の活性層30に電流を注入すると、反射ピーク64にほぼ対応するピーク波長の強度スペクトル65を有するレーザ光が発振する。その後、曲がり導波路部5は、発振したレーザ光を導波し、光増幅導波路部6は、曲がり導波路部5が導波したレーザ光を受け付けてこれを光増幅し、曲がり導波路部7は、光増幅されたレーザ光を導波し、レーザ光50として出力する。
【0047】
このように、波長可変レーザ100は、波長可変光フィルタ10への電流注入によって、サンプルドグレーティング導波路部1の反射率のピークのうちのいずれかに対応する波長のレーザ光50を出力することができる。さらに、上述したように、サンプルドグレーティング導波路部1は、電流注入によって、反射率のピーク波長をすきまなく変化させることができる。したがって、この波長可変レーザ100は、広帯域にわたって波長可変なレーザとなる。
【0048】
ところで、上述したように、たとえば発振するレーザ光の強度スペクトル62は、反射ピーク61にほぼ対応するピーク波長を有しているが、厳密には、強度スペクトル62のピーク波長は、反射ピーク61の近傍に存在する光共振器の縦モードに対応する波長となっている。以下具体的に説明する。
【0049】
図9は、波長可変レーザ100の発振波長と縦モードとの関係について説明する図である。図9において、符号66は、波長可変光フィルタ10の反射スペクトル60とサンプルドグレーティング導波路部1の反射ピーク61との重ね合わせスペクトルを示している。一方、符号67は、光共振器の縦モードを示している。これらの縦モード67は、波長軸上において所定の波長間隔68で配列している。厳密には、レーザ発振波長は、重ね合わせスペクトル66のピーク近傍の波長であって、縦モード67のいずれかの波長となる。
【0050】
この波長可変レーザ100では、位相調整導波路部3によって、光共振器の縦モードの波長を調整し、レーザ発振波長を調整できる。すなわち、位相調整導波路部3において、n側電極21とp側電極14との間に電圧を印加し、コア層24に電流を注入すると、電気光学効果によってコア層24の等価屈折率が変化する。これによって、光共振器の光学長を変化させて、縦モードの波長を調整し、最終的なレーザ発振波長を調整することができる。
【0051】
ここで、光共振器の共振器長が長い場合は、縦モード67の波長間隔68も狭くなるため、重ね合わせスペクトル66のピーク近傍に複数の縦モード67が含まれることとなるため、レーザ発振をさせた場合に縦モード間でのモードホップが発生し、出力するレーザ光の強度が不安定になる。
【0052】
これに対して、この波長可変レーザ100では、MMI導波路を用いた波長可変光フィルタ10を光共振器のミラーとして用いているので、共振器長が短くなる。その結果、重ね合わせスペクトル66のピーク近傍の縦モード67の数が減少するので、モードホップの問題の発生が抑制され、出力するレーザ光50の強度は安定したものとなる。
【0053】
たとえば、サンプルドグレーティング導波路部1の長さを600μm、光増幅導波路部2の長さを250μm、位相調整導波路部3の長さを100μm、MMI導波路部4の長さを185μmとすると、光共振器の光学長は約700μmと短くなる。この場合、縦モード67の波長間隔68は約0.5nm程度となる。一方、重ね合わせスペクトル66の半値全幅は、サンプルドグレーティング導波路部1の反射ピークの半値全幅と同程度の1nm程度である。したがって、位相調整導波路部3によって、或る縦モード67の波長と重ね合わせスペクトル66のピーク波長とを一致させるようにすれば、一致させた縦モード67の両側の縦モードへのモードホップはほぼ抑制されるので、出力するレーザ光50の強度はきわめて安定したものとなる。
【0054】
ちなみに、この波長可変レーザ100では、MMI導波路部4の長さが短く、さらに、サンプルドグレーティング導波路部1から曲がり導波路部7までの光導波路がMMI導波路部4を基点として折り返すように配置しているので、各光導波路の長さを上記のように設定した場合に、その全体の長さが約1.25mm程度のきわめて小型のものとなり、かつ小型のため1枚の基板から多数製造できるので、低コストのものとなる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態1に係る波長可変レーザ100は、広帯域で反射率のピーク波長が可変であり、かつ長さが短い波長可変光フィルタ10を用いることによって、広帯域でレーザ光の波長が可変であり、かつレーザ光の強度が安定した波長可変レーザとなる。
【0056】
(製造方法)
つぎに、本実施の形態1に係る波長可変レーザ100の製造方法について説明する。図10は、図1に示す波長可変レーザの製造方法の一例を説明する図である。
【0057】
まず、MOCVD結晶成長装置を用い、基板22上に、下部クラッド層23の一部23a、SCH層30a、活性層30、SCH層30b、および上部クラッド層31の一部31aを順次結晶成長する。つぎに、光増幅導波路部2および光増幅導波路部6を形成する領域A1を保護するためのSiNx膜からなるマスクを形成し、このマスクを用いて、領域A1以外の領域のSCH層30a、活性層30、SCH層30b、および上部クラッド層31の一部31aをエッチングにより除去する。つぎに、領域A1以外の領域において、エッチングにより除去した部分の下部クラッド層23の一部23a上に、下部クラッド層23を形成する残部23b、コア層24、上部クラッド層25、グレーティング層26を形成するためのInGaAsPからなるグレーティング形成層35をバットジョイント成長により形成する。
【0058】
つぎに、全面にSiNx膜を形成した後、サンプルドグレーティング導波路部1を形成する領域に、グレーティング領域26aのパターンニングを施す。また、位相調整導波路部3、MMI導波路部4、曲がり導波路部5、および曲がり導波路部7を形成すべき領域にもパターンニングを施す。そして、このSiNx膜をマスクとしてエッチングして、サンプルドグレーティング導波路部1を形成する領域のグレーティング形成層35にグレーティング領域26aを形成するとともに、その他の領域のグレーティング形成層35を全て取り除く。つぎに、SiNx膜のマスクを除去した後に、全面にp−InP層を再び結晶成長する。これによって、上部クラッド層27、31、32が形成される。
【0059】
つぎに、SiNx膜のマスクを形成し、ドライエッチングによって曲がり導波路部5、MMI導波路部4以外の光導波路のメサ構造を形成する。その後、埋め込み層33と電流阻止層34とによって埋め込んで、埋め込みメサ構造を形成する。つぎに、SiNxのマスクを除去した後に、全面に上部クラッド層28、コンタクト層29を形成する。つぎに、SiNx膜のマスクを形成し、ドライエッチングによって曲がり導波路部5、MMI導波路部4の光導波路のハイメサ構造を形成する。つぎに、埋め込みメサ構造の領域にパターニングしたマスクを形成し、ドライエッチングにより分離溝17〜20を形成する。その後、全面に保護膜11を形成し、保護膜11上にパターニングしたマスクを形成し、保護膜11の所定の領域を除去して開口部を設け、リフトオフ法によってたとえばAuZn/Au構造のp側電極12〜16を形成し、基板22の裏面を研磨した後に裏面全体にたとえばAuGeNi/Au構造のn側電極21を形成する。その後、反射防止膜8と高光反射膜9とを形成すべき端面をへき開により形成し、たとえば誘電体多層膜からなる反射防止膜8と高光反射膜9を形成し、波長可変レーザ100が完成する。
【0060】
なお、波長可変レーザ100において、高反射膜9を形成せずに、へき開により形成した端面すなわちへき開面を、反射手段としてのへき開ミラーとして利用してもよい。
【0061】
(変形例)
つぎに、本発明の実施の形態1の変形例について説明する。図11は、実施の形態1の変形例に係る波長可変レーザの模式的な要部断面図である。この波長可変レーザ200は、実施の形態1に係る波長可変レーザ100において、MMI導波路部4、高光反射膜9を、それぞれMMI導波路部4´、高光反射膜9´に置き換えた構成を有している。そして、MMI導波路部4´と高光反射膜9´とが波長可変光フィルタ10´を構成している。
【0062】
この波長可変レーザ200においては、位相調整導波路部3とは反対側のMMI導波路部4´の端部に溝36が形成されており、高光反射膜9´は溝36内に形成されている。なお、溝36内の表面も保護膜11によって覆われている。この波長可変レーザ200は、紙面右側に位置するMMI導波路部4´側の端面を使用しないので、たとえばこの端面側に他の光素子等を集積することができる。なお、このような溝36は、p側電極を電気的に分離する分離溝を形成する工程において、ドライエッチングによって同時に形成することができる。
【0063】
なお、この波長可変レーザ200において、反射手段としての高光反射膜9´の代わりに、溝36に誘電体多層膜フィルタやグレーティングミラー等の反射フィルタを挿入してもよい。また、高光反射膜9´を形成せずに、エッチング面である溝36の側壁をエッチドミラーとして利用してもよい。
【0064】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態2に係る波長可変レーザアレイは、実施の形態1に係る波長可変レーザ100と同様の材質および構造を有する2つの波長可変レーザをアレイ状に集積したものである。
【0065】
図12は、実施の形態2に係る波長可変レーザアレイの模式的な平面図である。図12に示すように、この波長可変レーザアレイ300は、共通の基板上にアレイ状に集積した波長可変レーザ100A、100Bを備えている。波長可変レーザ100Aは、波長可変レーザ100と同様に、サンプルドグレーティング導波路部1Aと、光増幅導波路部2Aと、位相調整導波路部3Aと、MMI導波路部4Aと高光反射膜9Aとが構成する波長可変光フィルタ10Aと、曲がり導波路部5Aとを備えている。さらに、波長可変レーザ100Aは、各光導波路に電流を注入するためのp側電極12A〜15Aと、分離溝18A〜20Aとを備えている。同様に、波長可変レーザ100Bは、サンプルドグレーティング導波路部1Bと、光増幅導波路部2Bと、位相調整導波路部3Bと、MMI導波路部4Bと高光反射膜9Aとが構成する波長可変光フィルタ10Bと、曲がり導波路部5Bと、p側電極12B〜15Bと、分離溝18B〜20Bとを備えている。なお、波長可変レーザ100A、100Bの積層構造およびメサ構造は、波長可変レーザ100と同様である。また、この波長可変レーザ200の上面は、p側電極12A〜15A、12B〜15Bとコンタクト層とのコンタクト部分以外が、たとえばSiNxからなる保護膜11Aで覆われている。
【0066】
また、曲がり導波路部5A、5Bは、埋め込みメサ型の導波路構造を有するMMI合流器37に接続している。また、MMI合流器37には、光増幅導波路部6A、曲がり導波路部7Aが順次接続している。また、曲がり導波路部7A側の積層構造の端面には反射防止膜8Aが形成されている。また、光増幅導波路部6A上にはp側電極16Aが形成されている。このp側電極6Aは、p側電極12A、12B等とは分離溝17A、17Bにより電気的に分離している。
【0067】
この波長可変レーザアレイ300においては、MMI合流器37が、波長可変レーザ100Aおよび波長可変レーザ100Bのいずれか一方から出力したレーザ光を合流して出力し、光増幅導波路部6AがMMI合流器37から出力したレーザ光を光増幅し、曲がり導波路部7Aが光増幅されたレーザ光を導波し、レーザ光57として出力する。
【0068】
この波長可変レーザアレイ300は、2つの波長可変レーザ100A、100Bの出力するレーザ光の波長可変範囲をずらすことによって、実施の形態1に係る波長可変レーザ100よりも、いっそう広帯域で波長が可変する波長可変レーザとなる。
【0069】
また、この波長可変レーザアレイ300において、たとえば2つの波長可変レーザ100A、100Bの波長可変範囲の合計が、波長可変レーザ100の波長可変範囲と同一になるようにしてもよい。この場合、個々の波長可変レーザ100A、100Bの波長可変範囲は波長可変レーザ100の波長可変範囲の1/2でよいので、たとえばサンプルドグレーティング導波路部1A、1Bや、波長可変光フィルタ10A、10Bについて、所望に光学特性を実現するための光学設計のマージンが増加する等という効果がある。
【0070】
なお、この波長可変レーザアレイ300においては、2つの波長可変レーザ100A、100Bをアレイ状に集積しているが、さらに多数の波長可変レーザを集積してもよい。
【0071】
また、上記実施の形態では、光共振器を構成するDBRミラーとしてサンプルドグレーティング導波路を用いているが、反射率の波長依存性が周期的にピークを示すものであれば特に限定されず、たとえば超周期構造グレーティング等の他のDBRミラーを用いてもよい。また、たとえばサンプルドグレーティングはコア層や下部クラッド層などに形成してもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、波長可変レーザを波長1.55μm帯で使用するために、InGaAsP系の半導体材料を使用しているが、使用する半導体材料は使用する波長帯に応じて適宜選択することができる。
【0073】
また、上記実施の形態では、各光導波路の構造として、たとえばサンプルドグレーティング導波路部1については埋め込みメサ構造を採用し、MMI導波路部4についてはハイメサ構造を採用している。しかしながら、いずれの光導波路についても、その構造については上記実施の形態において採用したものに限定されず、たとえば要求される特性に応じて埋め込みメサ構造、ハイメサ構造、またはローメサ構造等を任意に採用することができる。
【0074】
また、上記実施の形態において、半導体光増幅器として機能する光増幅導波路部6、6A等の導波路構造を、テーパ構造やフレア構造とすれば、利得飽和が抑制され、より高出力のレーザ光を出力できるので好ましい。
【0075】
また、上記実施の形態に係る波長可変光フィルタ10において、MMI導波路4aおよび光入出力部4b、4cは、光入出力部4bからシングルモードの光が入力した場合に、光入出力部4b、4cから分岐比1:1のシングルモードの光が出力するように構成されている。しかしながら、本発明に係る波長可変光フィルタはこれに限定されない。すなわち、本発明に係る波長可変光フィルタは、所定の波長のシングルモードまたはマルチモードの光を入力させた場合に、各光入出力部から、所望のシングルモードまたはマルチモードの光を所望の分岐比で出力させるように構成してもよい。このように、入出力させる光のモード、および分岐比については、MMI導波路の幅、長さ、および等価屈折率等、ならびに光入出力部の位置等を調整することで設定できる。
【0076】
また、上記実施の形態では、波長可変光フィルタ10は、波長可変レーザ100の光共振器として使用されるので、光入出力部4bと、発振したレーザ光を出力するための光入出力部4cとを備えている。しかしながら、本発明はこれに限られない。すなわち、波長可変光フィルタ10から光入出力部4cが削除され光入出力部4bのみを備えるような構造の波長可変光フィルタも、広帯域で反射率のピーク波長が可変であり、かつ長さが短いという本発明の効果を奏するものとなる。
【符号の説明】
【0077】
1、1A、1B サンプルドグレーティング導波路部
2、2A、2B 光増幅導波路部
3、3A、3B 位相調整導波路部
4、4A、4B MMI導波路部
4a MMI導波路
4b、4c 光入出力部
5、5A、5B 曲がり導波路部
6、6A、6B 光増幅導波路部
7、7A 曲がり導波路部
8、8A 反射防止膜
9、9A 高光反射膜
10、10A、10B 波長可変光フィルタ
11、11A 保護膜
12〜16、12A〜16A、12B〜15B p側電極
17〜20、17A〜20A、17B〜20B 分離溝
21 n側電極
22 基板
23 下部クラッド層
23a 下部クラッド層の一部
23b 下部クラッド層を形成する残部
24 コア層
25 上部クラッド層
26 グレーティング層
26a グレーティング領域
27、28、31、32 上部クラッド層
29 コンタクト層
30 活性層
30a、30b SCH層
31a 上部クラッド層の一部
33 埋め込み層
34 電流阻止層
35 グレーティング形成層
36 溝
37 MMI合流器
50、57 レーザ光
51〜56 光
60、63 反射スペクトル
61、64 反射ピーク
62、65 強度スペクトル
66 重ね合わせスペクトル
67 縦モード
68 波長間隔
100、100A、100B 波長可変レーザ
200 波長可変レーザ
300 波長可変レーザアレイ
A1 領域
L1、L2 長さ
P1、P2 位置
W 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモード干渉型導波路と、
前記マルチモード干渉型導波路の長さ方向の一端に設けられた第1光入出力部と、
前記マルチモード干渉型導波路の他の一端に設けられた反射手段と、
前記マルチモード干渉型導波路の屈折率を変化させる手段と、
を備え、前記マルチモード干渉型導波路の長さおよび幅は、前記第1光入出力部から入力した光を、前記反射手段により反射した後に、該第1光入出力部において所望の分岐比で結像させるように設定されていることを特徴とする波長可変光フィルタ。
【請求項2】
前記マルチモード干渉型導波路の長さおよび幅は、前記第1光入出力部から入力した所定の波長を有するシングルモードの光をマルチモードで導波し、前記反射手段により反射した後に、前記第1光入出力部においてシングルモードの状態で結像させるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の波長可変光フィルタ。
【請求項3】
前記反射手段は半導体のへき開面であることを特徴とする請求項1または2に記載の波長可変光フィルタ。
【請求項4】
前記反射手段は半導体のエッチング面であることを特徴とする請求項1または2に記載の波長可変光フィルタ。
【請求項5】
前記マルチモード干渉型導波路の前記一端に設けられ、前記第1光入出力部から入力し前記反射手段により反射した光の一部が結像される第2光入出力部をさらに備える請求項1〜4のいずれか一つに記載の波長可変光フィルタと、
反射率の波長依存性が周期的にピークを示す周期性反射手段と、
前記波長可変光フィルタと前記周期性反射手段との間に配置した光増幅手段と、
を備えることを特徴とする波長可変レーザ。
【請求項6】
前記周期性反射手段はDBRミラーであることを特徴とする請求項5に記載の波長可変レーザ。
【請求項7】
半導体光増幅器をさらに備えることを特徴とする請求項5または6に記載の波長可変レーザ。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一つに記載の波長可変レーザを複数備えることを特徴とする波長可変レーザアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−109048(P2011−109048A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265677(P2009−265677)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】