説明

洗浄システム

【課題】SPM洗浄法を用いた半導体洗浄装置に組み込める簡易なシステムであって、過酸化水素に由来する洗浄液の硫酸濃度の低下を抑制することにより硫酸溶液寿命を延長し、これにより環境負荷低減を図ることができる洗浄システムを実現すること。
【解決手段】本発明の洗浄システムは、硫酸溶液と過酸化水素の混合液を洗浄液として半導体基板を洗浄する洗浄手段と、前記洗浄手段から洗浄液を排出して前記洗浄手段に還流させる循環ラインと、内部が分子ふるい型水分子選択性透過膜で隔てられた濃縮側と透過側の領域を有し、前記濃縮側の領域を前記循環ラインに介設した脱水モジュールを有する脱水手段と、前記脱水手段の透過側を減圧する真空ポンプと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI、超LSI等の半導体の製造、液晶パネルやTFTトランジスタ装置の製造等における、濃硫酸を用いた表面洗浄工程又はレジスト剥離除去工程の濃度が低下した硫酸から、高濃度の硫酸を再生し再使用する洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造におけるレジスト剥離工程では硫酸・過酸化水素の混合溶液を洗浄液として用いるSPM洗浄法が広く知られている。SPM洗浄は、濃硫酸中に過酸化水素を一定の割合で混合することにより酸化力の強いカロ酸(ペルオキシ一硫酸)を生成させ、このカロ酸の酸化力を用いて半導体基板に付着したレジストを剥離して酸化分解するというものである。
【0003】
洗浄液の洗浄能力(酸化力)は使用により低下するため、過酸化水素を補充して酸化力を一定範囲に保つ必要がある。しかし、濃硫酸への過酸化水素の添加を繰り返すと、過酸化水素の分解により生成した水によって、硫酸溶液が希釈される。低濃度の硫酸溶液に過酸化水素を添加しても、硫酸の解離状態が濃硫酸とは異なるため、強い酸化力を回復することはできない。
【0004】
このため、濃度が低下した使用済みの硫酸溶液を高濃度硫酸溶液に定期的に交換する必要がある。これにより、硫酸溶液の使用量が非常に多くなり、コストが高くなる。また、大量の廃硫酸が排出されるため、廃液処理における中和処理や脱塩処理の負荷が非常に大きくなるという問題がある。
【0005】
この様な理由から廃硫酸の再生に対するニーズは非常に高く、従来から使用済み硫酸溶液を再生して再使用する試みが行われている。特に半導体製造工程で用いる薬液には高濃度の塩が溶け込むことはなく、レジストに注入されたリンやホウ素、ヒ素などの不純物程度であるため、半導体への影響も少ない。そこで、塩の除去でなく水分の除去によって薬液寿命の延命や補充薬液の削減を図ることができるとされている。
【0006】
具体的な廃硫酸の再生方法として、従来から以下のような方法が考えられてきた。
(1)廃硫酸を減圧下で加熱して水分を蒸発させるとともに、溶出する塩類を晶出分離して硫酸を回収する真空濃縮法。
(2)廃硫酸を冷却し、溶解度の低下によって塩類を晶出分離して硫酸を回収する冷却法。
(3)廃硫酸を減圧下で加熱濃縮するとともに冷却して晶出分離を組み合わせる真空冷却濃縮法。
(4)廃硫酸を液中燃焼によって濃縮するとともに、塩類を晶出分離して硫酸を回収する液中燃焼法。
(5)アセチルアセトンやベンゼン等を溶媒として、溶解度の差を利用して廃硫酸中の塩類や有機物等を抽出除去する溶媒抽出法。
(6)陰イオン交換膜を介して廃硫酸と水を向流させ、濃度差による拡散と陰イオン交換膜の選択透過性により、水側に硫酸を移行して回収する拡散透析法。
(7)廃硫酸を熱分解炉で硫黄酸化物に分解後、水または硫酸に吸収して硫酸を回収する熱分解法。
(8)廃硫酸を300℃以下の温度で加熱し、大部分の有機物と水分を除去した後、300℃以上の温度で硫酸を蒸留し、塩類や高沸点化合物と硫酸を分離回収する二段蒸留法。
【0007】
【特許文献1】特開平9−251976号公報
【特許文献2】特開平10−284458号公報
【特許文献3】特開平6−183704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子工業用の硫酸の純度に対する要求は、半導体の微細化、高密度化に伴い厳しくなっている。例えば、金属成分については数pptレベルであることが求められている。
【0009】
ところが、(1)減圧下で加熱する真空濃縮法、(2)冷却により塩類を晶出させる冷却法、(3)減圧下での濃縮と冷却を行う真空冷却法、(4)液中燃焼によって塩類の晶出分離と濃縮を行う液中燃焼法、(5)有機溶媒による溶媒抽出法のいずれも、もともとビスコースレーヨン廃液、石油精製廃酸、アルマイト加工廃酸、ピクリング廃酸等の工業規模で多量に排出される廃硫酸に適用されている回収方法であって、これらの方法では塩類の除去が不完全なため高純度の硫酸は得られず、高純度の硫酸が要求される電子工業における濃硫酸を用いた表面洗浄工程又はレジスト剥離除去工程には採用できない方法であった。
【0010】
また、(6)拡散透析方法は比較的高純度な硫酸溶液が得られるが、得られる硫酸溶液の濃度が低いのでこのまま利用することはできなかった。一方、(7)高温で硫酸を分解または硫酸を蒸留する熱分解法、(8)二段蒸留法は、高温で硫酸を取り扱うために危険性があり、また装置の腐食等の恐れがあるため、メンテナンスコストが高いという問題があった。
【0011】
さらに、半導体の製造等に利用される硫酸は、フォトレジストの剥離力あるいは洗浄力を高めるために過酸化水素水と混合して用いられている。ところが、前記従来の方法では、単に硫酸を回収する方法としては装置が過大になり、エネルギーコストの増大も懸念され、耐酸性対策をとる必要もある。
【0012】
この他にも、特許文献1や特許文献2では、気体透過膜で廃硫酸から脱水する装置が提案されている。しかし使用する膜が疎水性の多孔質膜であり水の選択透過性が低く、また透過側で真空ポンプを用いていないことから十分な透過水量が期待できない。
【0013】
また、特許文献3では、硫酸電解による硫酸濃縮再生方法が提案されているが、硫酸濃縮電解槽構造が複雑であり、部品の耐久性も含めた装置価格が嵩む懸念がある。
【0014】
本発明は、SPM洗浄法を用いた半導体洗浄装置に組み込める簡易なシステムであって、過酸化水素に由来する洗浄液の硫酸濃度の低下を抑制することにより硫酸溶液寿命を延長し、これにより環境負荷低減を図ることができる洗浄システムを実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態によると、硫酸溶液と過酸化水素の混合液を洗浄液として半導体基板を洗浄する洗浄手段と、前記洗浄手段から洗浄液を排出して前記洗浄手段に還流させる循環ラインと、内部が分子ふるい型水分子選択性透過膜で隔てられた濃縮側と透過側の領域を有し、前記濃縮側の領域を前記循環ラインに介設した脱水モジュールを有する脱水手段と、前記脱水手段の透過側を減圧する真空ポンプと、を備える洗浄システムが提供される。
【0016】
また、本発明の一実施形態によると、硫酸溶液と過酸化水素の混合液を洗浄液として収容し、半導体基板を浸漬して洗浄する洗浄槽と、前記洗浄槽内に浸漬し、分子ふるい型水分子選択性透過膜で形成されたチューブラー膜を有する脱水手段と、前記脱水手段の透過側を減圧する真空ポンプと、を備える洗浄システムが提供される。
【0017】
また、本発明の一実施形態によると、硫酸溶液と過酸化水素の混合液を洗浄液として半導体を洗浄する洗浄手段と、前記洗浄手段から洗浄液を排出して前記洗浄手段に循環させる循環ラインと、循環ラインに介設する中継槽と、前記中継槽に浸漬し、分子ふるい型水分子選択性透過膜で形成されたチューブラー膜を有する脱水手段と、前記脱水手段の透過側を減圧する真空ポンプと、を備える洗浄システムが提供される。
【0018】
前記分子ふるい型水分子選択性透過膜が、微細孔を膜全体に略均一に備え、前記微細孔の90%以上が孔径0.3〜1.0nmであり、かつ膜全体が不規則なアモルファス構造を有するカーボン膜を主要部としてもよい。
【0019】
前記分子ふるい型水分子選択性透過膜が、微細孔を膜全体に略均一に備え、前記微細孔の90%以上が孔径0.3〜1.0nmであり、かつ膜を構成する一部の酸素原子をCHn基(n=1、2)に置換され、かつ膜全体が不規則なアモルファス構造を有する有機―無機ハイブリット型シリカ膜を主要部としてもよい。
【0020】
なお、本発明における洗浄手段は、バッチ式洗浄システムにおいては半導体基板を浸漬する洗浄槽を指し、枚葉式洗浄システムにおいては半導体基板を載置台において洗浄液を半導体基板に垂下する洗浄装置を指す。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、SPM洗浄法を用いた半導体洗浄装置に組み込める簡易なシステムであって、過酸化水素に由来する洗浄液の硫酸濃度の低下を抑制することにより硫酸溶液寿命を延長し、これにより環境負荷低減を図ることができる洗浄システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の洗浄システムの実施形態について説明する。本発明の洗浄システムは、以下の実施形態に限定されるわけではない。
【0023】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係る洗浄システム100の概要図である。本発明の一実施形態に係る洗浄システム100は、洗浄槽101(洗浄手段に相当)、脱水モジュール111(脱水手段に相当)、凝縮部121、加熱部131、送液ポンプ151及び真空ポンプ153を有し、洗浄槽101、脱水モジュール111と加熱部131との間に循環ラインが形成されている。
【0024】
洗浄槽101には送り管191及び戻り管198が接続されており、送液ポンプ151には送り管191及び配管192が接続されている。また、脱水モジュール111には配管192、配管193及び配管195が接続されており、前記真空ポンプ153には配管193及び配管194が接続されている。さらに、凝縮部121には配管194、配管196、配管197及び配管199が接続されており、加熱部131には配管195、配管196、配管197及び戻り管198が接続されている。送り管191、配管192、配管195及び戻り管198によって、洗浄槽101、脱水モジュール111及び加熱部131との間に循環ラインが形成されている。また、配管196、配管197によって、凝縮部121と加熱部131との間に熱媒介用の循環ラインが形成さている。
【0025】
実施形態1に係る洗浄槽1は半導体基板103のための洗浄装置で、SPM洗浄のために薬液として硫酸・過酸化水素混合液が入れられている。洗浄槽101や戻り管198に、硫酸や過酸化水素等を供給するための配管を別途接続することも可能である。
【0026】
洗浄槽101に接続された送り管191及び戻り管198は、それぞれの内面が洗浄液に耐性(耐熱性、耐酸性、耐酸化性)のある素材で形成される。本発明の洗浄液に耐性のある素材としては、テトラフルオロエチレン等があるが、何らこれに限定されるものではない。
【0027】
なお図示しないが、加熱部131内の流路内部もテトラフルオロエチレンのような薬液に耐性のある素材で形成される。上述のように、戻り管、送り管、送液ポンプ及び加熱部の流路を硫酸に対して耐性のあるテトラフルオロエチレンなどで形成することで、硫酸による損耗・腐食を回避することができる。
【0028】
また、凝縮部121は大気圧以下の任意の真空状態にすることで浸透気化する水分量を調整することが可能となる。洗浄システム100内の硫酸濃度をモニターすることにより、この水分透過量を調整して洗浄システム100内の硫酸濃度を安定にすることができる。
【0029】
また、本実施形態では、循環ラインに直接脱水手段を設置するが、循環ラインから一部をバイパスして、バイパスラインに脱水手段を設置して、その後段で循環ラインに合流させるようにしても構わない。
【0030】
図1の本実施形態1に係る脱水モジュール111には、分子ふるい型水分子選択性透過膜が配置される。前記分子ふるい型水分子選択性透過膜の外部の領域を硫酸溶液が通過する。前記分子ふるい型水分子選択性透過膜内部の領域は、真空ポンプ153に接続され、大気圧よりも減圧される。このとき、前記分子ふるい型水分子選択性透過膜を通して前記分子ふるい型水分子選択性透過膜内部へ、硫酸溶液中の水分のみが気化されて透過するように前記分子ふるい型水分子選択性透過膜は構成されている。前記分子ふるい型水分子選択性透過膜は、チューブラー状に成形されており、αアルミナの支持体の上にγアルミナの支持層を持ち、スキン層として分子ふるい型水分子選択性透過膜が成形されている。本実施形態1の本発明に係るスキン層として有機−無機ハイブリッド型シリカ膜を用いる。有機−無機ハイブリッド型シリカ膜で用いた素材は、上記支持体の表面に、(EtO)3Si−CH2CH2Si(OEt)3とメチルトリエトキシシランを混合したゾルゲル法により合成した。
【0031】
本実施形態1の脱水モジュールを構成するスキン層及び支持体は、何らこれらに限定されるものではなく、硫酸耐性があり、かつ脱水能力を保持できれば、他の素材で構成されてもよい。また、本実施形態1の脱水モジュールを構成する分子ふるい型水分子選択性透過膜は、硫酸溶液が外部を通るチューブラーや中空糸タイプの分子ふるい型水分子選択性透過膜に限定されず、モノリス型で管の内部に硫酸溶液を供する形態にしてもよい。
【0032】
水分子選択性と水透過性及び耐熱性を併せ持つ膜としては現在、本発明に係る前記2種類の膜が考えられる。
【0033】
【表1】

【0034】
濃硫酸は化学式1のように解離する。
【0035】
【化1】

【0036】
2SO4分子はSを中心とするひずんだ四面体の頂点に2個のOと2個のOHをもつ構造で、S−OとS=Oの長さはそれぞれ1.57Åと1.42Å、O−Hの長さは0.97Åである。硫酸分子は少なくともS−OとS=Oとの部分で、1.57+1.42=2.97Åの長さであると推定でき、O−Hまで含めた場合は3Å超となる。一方、水の分子径は2.65Åであるため、分子ふるい操作が可能となる。
【0037】
ここでSO42−の長さは3.14Åであり比較的小さい。しかし、硫酸イオンの解離状態は硫酸濃度80%では、H2SO4、HSO4、H3SO4での存在比がほとんどであり、SO42−はほとんど解離していないため、透過水量を上げるために膜表面の微細孔の孔径をある程度大きくしてもSO42−は透過側には透過せず、硫酸濃縮の効率は下がらない。これは硫酸を高濃度で使用するSPM洗浄法であるからこそ適用できるものである。しかし好ましくは確実に水のみを透過させるため3Å程度の孔径で制御することが望ましい。
【0038】
また、基本的には微細孔が所定孔径より大きいと、膜の分離性能が落ちるため好ましくはないが、本発明の場合は多少の硫酸が膜透過して排出されても、水分子が圧倒的に優先的に排出されていればその影響は小さい。そのような理由から微細孔の90%以上が所定孔径範囲でなければならない。また95%以上が所定孔径範囲であることがより望ましい。
【0039】
ゼオライトやシリカは熱を加えることでひびが入る。そして、ひびの部分からリークが生じる。原理的には、高温(例えば60℃)になると水を伴って以下の反応が起こる。これによりシリカのミクロ構造が破壊され、強度が低下する。ここでシリカは柔軟性が低いためひびが生じやすくなる。
【0040】
【化2】

【0041】
これに対して、シリカのO基をCHn基に置換すると、まずO基の割合が小さいため、水分子との接触確率が低くなり上記反応が進行しにくい。また置換されたCHn基により膜の柔軟性が高められるため、たとえ、膜の強度が低下してもひびが生じにくい。よって有機−無機ハイブリッド型シリカ膜は耐熱性が高い。
【0042】
一方、カーボン膜は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)を主に含む機能性膜の総称とされる。DLCの構造は通常水素を若干含有したアモルファス構造でありダイヤモンド結合やグラファイト結合などを持つものと言われている。つまり炭素を主成分としながらも若干の水素を含み、ダイヤモンド結合(sp3混成軌道結合)の立方晶を多く含み、グラファイト結合(sp2混成軌道結合)の六方晶と、水素が混在した不規則構造からなる準安定なアモルファス構造をとる。耐熱性・耐薬品性など多機能を持つことが知られている。
【0043】
ところで、水透過性は膜厚に依存し、膜厚が薄いほど膜透過性は高い。ただし、膜の物理強度を一定以上に維持する必要があるため、膜の種類により膜厚の薄さには限界がある。ゼオライト膜は結晶を重ねたような膜であるため、数μmである。しかし、本発明の有機−無機ハイブリッド型シリカ膜は100〜200nm、カーボン膜は100〜200nm程度である。
【0044】
洗浄槽101から排出された洗浄液は、送液ポンプ151により送り管191を通じて脱水モジュール111に供給され、脱水モジュール111と水分離側に設けた真空ポンプ153により、硫酸濃縮液と水蒸気とに分離される。
【0045】
このとき、前記分離に伴って気化熱が奪われるため、硫酸濃縮液の温度が下がる。水蒸気は凝縮部121において液化し、配管199から系外へ排出される。
【0046】
脱水モジュール111で洗浄液から水分を分離したときに利用された濃硫酸溶液中の熱量を、熱交換器の加熱部131で補うことができる。
【0047】
前記凝縮部121で発生する液化熱を内部循環水に伝熱し、内部循環水を加熱部131に送液して硫酸濃縮液と熱交換することにより硫酸濃縮液を昇温させることができる。また、再生した前記硫酸濃縮液は、過酸化水素の添加に伴う溶解熱もしくは別の加熱機器を用いた加熱により、洗浄槽に到達する前に所定の洗浄液温度(100〜170℃)まで昇温される。
【0048】
また、凝縮部121の水蒸気ラインを直接加熱部131にも受けて熱交換してもよいし、凝縮部121と加熱部131の循環ラインの中にヒートポンプを介設してもよい。熱伝達する熱媒体は水でなくてもよい。
【0049】
以上説明したとおり、本実施形態1の洗浄システム100は、SPM洗浄法を用いた半導体洗浄装置に組み込める簡易なシステムであって、過酸化水素に由来する洗浄液の硫酸濃度の低下を抑制することにより硫酸溶液寿命を延長させる優れた効果を奏する。また、環境負荷低減を図ることができることが出来る優れた洗浄システムを実現することができる。
【0050】
(実施形態2)
図2は、本発明の実施形態2の洗浄システム200の概略図である。洗浄システム200は、洗浄槽201(洗浄手段に相当)、凝縮部211及び真空ポンプ221を有する。
【0051】
洗浄増201は、脱水手段203を有し、配管251に接続する。また、凝縮部211は、配管251、配管252及び配管253に接続される。真空ポンプ221は、配管211に接続する。
【0052】
図3は、本実施形態2の脱水手段300を示した図である。脱水手段300は、チューブラー膜301を有し、配管303に接続する。配管303は図2に示した実施形態2の配管251に接続する。
【0053】
脱水手段300は、チューブラー膜301の一端を封止した構造で、もう一端から配管を通じて真空ポンプに接続する。
【0054】
また、洗浄槽201には、過酸化水素を適宜添加する手段が設けられている。さらに、洗浄槽201には、硫酸及び過酸化水素を導入するための配管を接続することが出来る。
【0055】
本実施形態2のチューブラー膜301の材質としては、スキン層はSi−CH2−CH2−Siのアモルファス状有機−無機ハイブリッド型シリカ膜、その内部は4nm孔径を有するγアルミナ、さらにその内部は120μm孔径を有するαアルミナを用いることができる。本実施形態2のチューブラー膜301の材質は何らこれらに限定されるものではない。
【0056】
図4は、本実施形態2に係る脱水手段の別の態様を示した図である。脱水手段400は、チューブラー膜401及び前記チューブラー膜401を固定する筒体405を有し、配管403に接続する。配管403は図2に示した実施形態2の配管251に接続する。
【0057】
脱水手段400は、複数のチューブラー膜401を束にした形態で、前記束は外側の筒体405に固定され、外側の筒体405とチューブラー束の間に硫酸溶液を流す点で、本発明に係る脱水手段300と異なる。
【0058】
図2に示したように、脱水手段300は洗浄槽201に浸漬され、脱水手段300と真空ポンプ221との間に凝縮部211を設置することにより、脱水手段300において気化した水分を液体に凝縮して、配管253から排水する。
【0059】
脱水手段400を本実施形態2に適用すると、図2に示したように、脱水手段203と真空ポンプ221との間に凝縮部211を設置することにより、前述の気化した水分を凝縮部211で液体に凝縮して、配管253から排水することができる。
【0060】
チューブラー膜401の材質に関する条件は、前記脱水モジュール300と同様であるため、省略する。
【0061】
なお、本実施形態2では、洗浄槽に脱水手段を浸漬したが、洗浄システムが洗浄液循環するものであれば、循環系内に中継槽を設けて、中継槽に脱水手段を浸漬しても構わない。
【0062】
本発明によると、従来と比較して硫酸溶液の交換頻度を低減することができる。しかし、レジストに注入された不純物が硫酸溶液中に残存するため、それら不純物による半導体製品への影響を避けるために、一定期間ごとに硫酸溶液を交換するか、または洗浄システム内にSS除去フィルタを備える必要がある。
【0063】
SPM洗浄法を用いたレジスト剥離工程における洗浄液の温度は100〜170℃前後であり、有機−無機ハイブリッド型シリカ膜のような高温耐性の膜を用いることにより、洗浄液を冷却することなく脱水処理を実現することが出来る。従来の有機膜やゼオライト膜は前記温度領域では利用不可能であるが、本発明の有機−無機ハイブリッド型シリカ膜は、従来の有機膜やゼオライト膜のように熱交換の前処理をすることなく、利用することができる。
【0064】
洗浄液中の硫酸濃度は過酸化水素の添加によって生じる水により少しずつ希釈されていくため、半導体製品の生産能力を一定にするためにも、厳正なる硫酸の濃度管理が必要となる。本発明は、硫酸希釈と同じ速さで硫酸濃縮を行って硫酸濃度を一定範囲にすることで、洗浄液の酸化力を一定に維持するものである。本発明における硫酸濃度の測定方法はいかなる手段を用いてもよく、硫酸濃度を常時測定可能な吸光度法などを用いたものが好ましい。
【0065】
真空ポンプの出力を変えることにより水透過流量を操作することができるため、半導体洗浄槽内の硫酸濃度を一定に管理することが可能となる。従来のSPM洗浄工程では過酸化水素を加える度に硫酸濃度が低下していたため、新たに調製した洗浄液と繰り返し使用した後の交換直前の洗浄液とでは生産能力が異なっていた。本発明では、過酸化水素添加により生成する水の生成速度に、分子ふるい型水分子選択性透過膜による水透過速度を合わせることで硫酸濃度を一定にすることが可能である。したがって、レジスト剥離能力を一定にすることができるため、半導体の生産能力を一定に管理することが可能となる。
【0066】
以上説明したとおり、本発明の洗浄システムは、SPM洗浄法を用いた半導体洗浄装置に組み込める簡易なシステムであって、過酸化水素に由来する洗浄液の硫酸濃度の低下を抑制することにより硫酸溶液寿命を延長させる優れた効果を奏する。また、環境負荷低減を図ることができることが出来る優れた洗浄システムを実現することができる。
【0067】
(実施例)
図1に示した本実施形態1の本発明の洗浄システムを用いて、以下の条件により連続運転を行った。
循環溶液:高濃度硫酸溶液(硫酸:超純水の体積比=5:1)、溶液量50L
洗浄槽:温度130℃、
脱水モジュール:脱水能力10kg/m2/hr、膜面積6m2
洗浄する半導体基板枚数:5インチ基板 300枚/hr
【0068】
前記洗浄システムを用いて連続運転を行ったところ、硫酸の交換頻度が従来の150L/dayから本願発明の洗浄システムでは、50L/dayとなり、1/3に低減することができた。さらに硫酸の交換頻度を減らすことも可能ではあるが、レジスト溶液中に含まれた不純物の残存量が増加することによる製品歩留まりへの悪影響を考慮して、この程度の交換頻度にとどめた。
【0069】
98%濃硫酸40Lに35%過酸化水素水10Lを混合して130℃に加熱した洗浄液を洗浄槽に収容し、洗浄槽に浸漬したヒーターを用いて液温度を維持した。洗浄槽には、レジストつきの5インチのシリコン基板を10分間浸漬するサイクルとして、50枚/サイクルで浸漬させ、レジスト溶解を行った。このレジストは洗浄槽内で直ちに分解し、希釈された硫酸溶液を、送り管を通じて脱水モジュールへと通液した。
【0070】
レジストを剥離するのに適切な硫酸濃度は10〜18Mであるため、初期の硫酸濃度は14Mに調整している。
【0071】
このような半導体基板洗浄を8時間(洗浄する半導体基板枚数は2,400枚)継続したが、高濃度硫酸溶液レジスト剥離効果は良好であり、半導体基板上の残留レジストも確認されなかった。
【0072】
そこで、さらに32時間(洗浄する半導体基板枚数は9,600枚、総処理枚数は12,000枚)継続したが、高濃度硫酸溶液のレジスト剥離効果は良好であり、洗浄槽内の硫酸濃度も14Mに維持することができた。
【0073】
(比較例1)
98%濃硫酸40Lに35%過酸化水素水10Lを混合した溶液を130℃に加熱した洗浄液を洗浄槽に収容し、ヒーターで液温度を維持した。この溶液に実施例1と同様の浸漬サイクルでレジストつきシリコン基板を浸漬させて、レジスト溶解を行った。
【0074】
最初の6サイクル(洗浄する半導体基板枚数は300枚)までは、半導体基板浸漬直後に溶液が茶褐色に着色したが、10分程度で無色透明となり、TOC濃度についても検出限界となった。
しかし、次の50枚については、浸漬直後から10分経過しても溶液は茶褐色を呈したままで、TOC濃度換算で30mg/Lの有機物の残存が検出され、レジスト剥離率が98%に止まった。
【0075】
新たに添加する硫酸溶液と過酸化水素の薬液量10Lを引き抜き、新液(硫酸、過酸化水素)を添加して、130℃まで加熱を保持したところ、新しいカロ酸が生成され、溶液は無色透明となった。
【0076】
再び半導体基板浸漬を継続したが、最初の2サイクル(洗浄する半導体基板枚数は100枚)までは、半導体基板浸漬直後に溶液が茶褐色に着色するが、10分程度で無色透明となり、TOC濃度についても検出限界以下となった。しかし、次の50枚については、上述した内容と同様に浸漬直後から10分経過しても溶液は茶褐色を呈したままで、TOC濃度換算で30mg/Lの有機物の残存が認められた。
【0077】
再度、洗浄槽内の溶液10Lを引き抜いて新液10Lを追加添加したが、50枚の半導体基板を浸漬したところで、レジスト剥離溶解効果が悪くなり、10分を経過してもレジストが半導体基板に残存した。半導体基板の総処理枚数は400枚のところで、全体の溶液の交換が必要となった。
【0078】
以上説明したとおり、本実施形態に係る本発明の洗浄システムは、SPM洗浄法を用いた半導体洗浄に適用できる簡易なシステムであって、過酸化水素に由来する洗浄液の硫酸濃度の低下を抑制することにより硫酸溶液寿命を延長させる優れた効果を奏する。また、環境負荷低減を図ることができることが出来る優れた洗浄システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態に係る洗浄システム100の概要図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る洗浄システム200の概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る脱水手段300を示した図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る脱水手段400を示した図である。
【符号の説明】
【0080】
100 実施形態1の洗浄システム
101 洗浄槽(洗浄手段)
103 半導体基板
111 脱水モジュール(脱水手段)
121 凝縮部
131 加熱部
151 送液ポンプ
152 真空ポンプ
191 送り管(循環ライン)
192 配管(循環ライン)
193 配管
194 配管
195 配管(循環ライン)
196 配管
197 配管
198 戻り管(循環ライン)
199 配管
200 実施形態2の洗浄システム
201 洗浄槽
203 脱水手段
205 半導体基板
211 凝縮部
221 真空ポンプ
251 配管
252 配管
253 配管
300 脱水手段
301 チューブラー膜
303 配管
400 脱水手段
401 チューブラー膜
403 配管
405 筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸溶液と過酸化水素の混合液を洗浄液として半導体基板を洗浄する洗浄手段と、
前記洗浄手段から洗浄液を排出して前記洗浄手段に還流させる循環ラインと、
内部が分子ふるい型水分子選択性透過膜で隔てられた濃縮側と透過側の領域を有し、前記濃縮側の領域を前記循環ラインに介設した脱水モジュールを有する脱水手段と、
前記脱水手段の透過側を減圧する真空ポンプと、
を備える洗浄システム。
【請求項2】
硫酸溶液と過酸化水素の混合液を洗浄液として収容し、半導体基板を浸漬して洗浄する洗浄槽と、
前記洗浄槽内に浸漬し、分子ふるい型水分子選択性透過膜で形成されたチューブラー膜を有する脱水手段と、
前記脱水手段の透過側を減圧する真空ポンプと、
を備える洗浄システム。
【請求項3】
硫酸溶液と過酸化水素の混合液を洗浄液として半導体を洗浄する洗浄手段と、
前記洗浄手段から洗浄液を排出して前記洗浄手段に循環させる循環ラインと、
循環ラインに介設する中継槽と、
前記中継槽に浸漬し、分子ふるい型水分子選択性透過膜で形成されたチューブラー膜を有する脱水手段と、
前記脱水手段の透過側を減圧する真空ポンプと、
を備える洗浄システム。
【請求項4】
前記分子ふるい型水分子選択性透過膜が、微細孔を膜全体に略均一に備え、
前記微細孔の90%以上が孔径0.3〜1.0nmであり、
かつ膜全体が不規則なアモルファス構造を有するカーボン膜を主要部とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の洗浄システム。
【請求項5】
前記分子ふるい型水分子選択性透過膜が、微細孔を膜全体に略均一に備え、
前記微細孔の90%以上が孔径0.3〜1.0nmであり、
かつ膜を構成する一部の酸素原子をCHn基(n=1、2)に置換され、
かつ膜全体が不規則なアモルファス構造を有する有機―無機ハイブリット型シリカ膜を主要部とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−74109(P2010−74109A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243349(P2008−243349)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】