説明

洗眼剤

【課題】 (i)実用上十分な洗浄効果が得られる洗眼剤、(ii)化粧料を眼球又はその周囲から効果的に洗浄し、再付着を防止して十分に洗浄、除去できる化粧料洗浄用洗眼剤、(iii)花粉を眼球又はその周囲から効果的に洗浄し、再付着を防止して十分に洗浄、除去できる花粉洗浄用洗眼剤を提供する。
【解決手段】 (i)カルボキシビニルポリマー、及びモノテルペンを含み、1回使用量が500μl以上である洗眼剤。(ii)カルボキシビニルポリマー、及びモノテルペンを含む化粧料洗浄用洗眼剤。(iii)カルボキシビニルポリマー、及びモノテルペンを含む花粉洗浄用洗眼剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗眼剤、特に、眼球や眼瞼に付着した化粧料を洗浄除去するための洗眼剤、及び眼球や眼瞼に付着した花粉を洗浄除去するための洗眼剤に関する。
【背景技術】
【0002】
目の洗浄、目に入った埃や汗を除去して眼病を予防するために、洗眼剤が用いられている。
例えば、特許文献1は、水溶性高分子、エタノール、0.005〜0.040w/v%メントール、及びクロロブタノールを含み、25℃における絶対粘度が1.3〜15mPa・sである眼科用剤を開示している。特許文献1には、水溶性高分子の1例としてカルボキシビニルポリマーが記載されており、また、この眼科用剤には洗眼液が含まれることが記載されている。
また、特許文献2は、テルペノイド類と、水溶性高分子化合物と、局所麻酔剤とを含有する眼科用組成物を開示している。特許文献2には、水溶性高分子の1例としてカルボキシビニルポリマーが記載されており、また、眼科用組成物の用途の一つとして洗眼剤が記載されている。
しかし、これらの文献に記載された洗眼剤では、実用上、十分な洗眼効果が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−176501号(請求項1、段落0014、段落0022など)
【特許文献2】特開2003−183157号(請求項1、段落0012、段落0028など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、実用上十分な洗浄効果が得られる洗眼剤を提供することを課題とする。また、本発明は、化粧料を眼球又はその周囲から効果的に洗浄し、眼球又はその周囲への再付着を防止して十分に洗浄、除去できる化粧料洗浄用洗眼剤、及び花粉を眼球又はその周囲から効果的に洗浄し、眼球又はその周囲への再付着を防止して十分に洗浄、除去できる花粉洗浄用洗眼剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために研究を重ね、以下の知見を得た。
(i) カルボキシビニルポリマーとモノテルペンとを含む洗眼剤は、眼球やその周囲に付着した化粧料を効果的に洗浄し、眼球(特に角膜)やその周囲への再付着を防止して、十分に洗浄、除去することができる。
(ii) カルボキシビニルポリマーとモノテルペンとを含む洗眼剤は、眼球やその周囲に付着した花粉を効果的に洗浄し、眼球(特に角膜)やその周囲への再付着を防止して、十分に洗浄、除去することができる。
(iii) カルボキシビニルポリマーとモノテルペンとを含む洗眼剤は、特に、一度に被洗浄部位に接触させる使用量(1回使用量)が500μl以上であることにより、化粧料、花粉、埃などの汚れを効果的に洗浄し、眼球(特に角膜)やその周囲への再付着を防止して、十分に洗浄、除去することができる。
(iv) カルボキシビニルポリマーとモノテルペンとを併用することにより、各成分を単独で使用する場合に比べて、洗眼作用について相乗効果が認められる。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記の洗眼剤を提供する。
【0006】
項1. カルボキシビニルポリマー、及びモノテルペンを含み、一度に被洗浄部位に接触させる使用量が500μl以上である洗眼剤。
項2. カルボキシビニルポリマーの含有量が、洗眼剤に対して、0.001〜10w/v%である項1に記載の洗眼剤。
項3. モノテルペンの含有量が、洗眼剤に対して、0.0001〜0.2w/v%である項1又は2に記載の洗眼剤。
項4. モノテルペンが、メントール、ボルネオール、ゲラニオール、及びベルガモット油からなる群より選ばれる少なくとも1種である項1〜3のいずれかに記載の洗眼剤。
項5. カルボキシビニルポリマー、及びモノテルペンを含む化粧料洗浄用洗眼剤。
項6. カルボキシビニルポリマーの含有量が、洗眼剤に対して、0.001〜10w/v%である項5に記載の洗眼剤。
項7. モノテルペンの含有量が、洗眼剤に対して、0.0001〜0.2w/v%である項5又は6に記載の洗眼剤。
項8. モノテルペンが、メントール、ボルネオール、ゲラニオール、及びベルガモット油からなる群より選ばれる少なくとも1種である項5〜7のいずれかに記載の洗眼剤。
項9. 一度に被洗浄部位に接触させる使用量が500μl以上である項5〜8のいずれかに記載の洗眼剤。
項10. カルボキシビニルポリマー、及びモノテルペンを含む花粉洗浄用洗眼剤。
項11. カルボキシビニルポリマーの含有量が、洗眼剤に対して、0.001〜10w/v%である項10に記載の洗眼剤。
項12. モノテルペンの含有量が、洗眼剤に対して、0.0001〜0.2w/v%である項10又は11に記載の洗眼剤。
項13. モノテルペンが、メントール、ボルネオール、ゲラニオール、及びベルガモット油からなる群より選ばれる少なくとも1種である項10〜12のいずれかに記載の洗眼剤。
項14. 一度に被洗浄部位に接触させる使用量が500μl以上である項10〜13のいずれかに記載の洗眼剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の洗眼剤は、眼球(特に角膜)に付着した花粉、埃、化粧料(マスカラ、アイライナー、アイシャドウ、ローション、乳液、アイクリームなど)のような汚れを効果的に除去し、再付着を防止して、十分に洗浄、除去することができる。
汚れを眼球から洗眼剤中に移行させても、一般に、洗眼剤に移行した汚れが逆に眼球や眼瞼に再付着し易いが、本発明の洗眼剤は、このような再付着を防止して、汚れを効果的に除去することができる。
また、眼の周囲には、花粉が付着していたり、マスカラ、アイライナー、アイシャドウなどの化粧料が塗られている場合があり、洗眼液を使用することにより洗眼液中に移行した汚れが却って眼球に付着する場合があったが、本発明の洗眼剤を用いて洗眼すれば、洗眼剤中に移行した多量の化粧料等の眼球への付着も抑制できる。
また、本発明の洗眼剤は、カルボキシビニルポリマー及びモノテルペンを含むことにより、化粧料の洗浄用途、又は花粉の洗浄用途に特に適したものである。
また、本発明の洗眼剤は、カルボキシビニルポリマーとモノテルペンとを含むことにより、各成分を単独使用する場合に比べて、相乗的な洗眼効果が認められる。
さらに、本発明の洗眼剤は、眼に対して安全なものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ウサギ角膜細胞からの化粧料の洗浄作用について、カルボキシビニルポリマーとメントールとの相乗効果を示す図である。
【図2】ウサギ角膜細胞からの化粧料の洗浄作用に及ぼす洗眼剤の1回使用量の影響を示す図である。
【図3】ウサギ角膜細胞からの花粉の洗浄作用について、カルボキシビニルポリマーとメントールとの相乗効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の洗眼剤は、カルボキシビニルポリマー、及びモノテルペンを含み、一度に被洗浄部位に接触させる1回使用量が500μl以上である洗眼剤である。被洗浄部位は、目(眼球)、その他の眼球周辺部位から選ばれる部位である。
【0010】
カルボキシビニルポリマー
カルボキシビニルポリマー(Carboxyvinyl polymer:本明細書中、「CVP」と略記することもある。)は、アクリル酸を主成分として重合して得られる親水性ポリマーであり、ポリアクリル酸、又はポリアクリル酸塩の何れであってもよい。
各成分の混合時にポリアクリル酸を使用する場合でも、pHを調整すると、結果として得られる組成物中では、その一部又は全部がポリアクリル酸塩になっている場合がある。好ましくは、カルボキシビニルポリマーとその他の成分とを混合する時に低粘度のポリアクリル酸を使用し、pH調整により、場合によりその一部又は全部をポリアクリル酸塩として洗眼剤の組成物の粘度を上げてもよい。また、混合時からポリアクリル酸塩を使用するのも好ましい。
ポリアクリル酸塩としては、ポリアクリル酸のナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;ポリアクリル酸のモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩のようなアミン塩;ポリアクリル酸のアンモニウム塩などを使用できる。中でも、アルカリ金属塩が好ましい。
【0011】
また、ポリアクリル酸またはその塩は架橋型、又は非架橋型のいずれであってもよいが、本願発明の効果を発揮し易い点で架橋型ポリマーが好ましい。
カルボキシビニルポリマーは市販品を利用できる。市販品としては、カーボポール(商品名)(Noveon社、ルーブリゾール社)、シンタレン(商品名)、ハイビスワコー(商品名)(共に和光純薬社)、アクペック(商品名)(住友精化)、ジュンロン(商品名)(日本純薬)等を使用することができる。
カルボキシビニルポリマーは1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
カルボキシビニルポリマーの含有比率は、洗眼剤全体に対して、カルボキシビニルポリマーの総量として0.001〜10(w/v)%程度が好ましく、0.05〜5(w/v)%程度がより好ましく、0.1〜1(w/v)%程度がさらにより好ましい。上記含有比率の範囲であれば、充分な洗浄効果、再付着抑制効果が得られる。また、上記含有比率の範囲であれば、良好な使用感が得られ、眼球周辺に洗眼剤が付着し難く、モノテルペンの刺激感を効果的に抑えることができる。
【0012】
モノテルペン
モノテルペンとしては、メントール、アネトール、オイゲノールのような単環式モノテルペン;ボルネオール、イソボルネオール、シネオール、ピネンのような二環式モノテルペン;ゲラニオール、ネロール、ミルセノール、リナロール、酢酸リナロール、ラバンジュロールのような非環式モノテルペンなどが挙げられる。モノテルペンは、d体、l体又はdl体の何れでもよい。
モノテルペンとしては、それを含む精油を用いてもよい。このような精油としては、ハッカ油、ユーカリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、スペアミント油、ローズ油などが挙げられる。
中でも、メントール、ボルネオール、ゲラニオール、及びベルガモット油が好ましく、メントール、ゲラニオール、及びベルガモット油がより好ましく、メントールがさらに好ましく、l-メントールが特に好ましい。
モノテルペンは、市販品を使用できる。市販品としては、例えば、高砂香料工業社製、長岡実業社製、日本精化製等のl−メントール、dl−メントール、d−ボルネオール、dl−ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、ユーカリ油、ベルガモット油、ハッカ油等が挙げられる。
【0013】
また、精油は、植物から、公知の方法で採取することができる。このような公知の精油採油方法として、水蒸気蒸留法、脱臭した動物油脂に植物を添加して精油を吸着させた後、エタノールで精油を抽出する油脂吸着法、植物をヘキサンやベンゼンのような有機溶媒又は超臨界流体で抽出し、抽出溶媒をエタノールに溶解させた後、エタノールを蒸発させて残渣を採取する溶剤抽出法、圧搾法などが挙げられる。モノテルペンは、精油から、各種クロマトグラフィーにより回収することもできる。
モノテルペンは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
【0014】
モノテルペンの含有比率は、洗眼剤全体に対して、モノテルペンの総量として0.0001〜0.2(w/v)%程度が好ましく、0.001〜0.15(w/v)%程度がより好ましく、0.003〜0.1(w/v)%程度がさらにより好ましい。
また、中でもメントールの含有比率として特に好ましい範囲について述べれば、洗眼剤全体に対して、メントールの総量として0.0001〜0.08 (w/v)%程度が好ましく、0.001〜0.05(w/v)%程度がより好ましく、0.003〜0.03(w/v)%程度がさらにより好ましい。
上記含有比率の範囲であれば、充分な洗浄効果、再付着抑制効果が得られる。また、上記含有比率の範囲であれば、良好な使用感が得られ、洗眼剤に含まれる他成分による不快な使用感を抑制して十分な清涼感が得られる。
【0015】
任意成分
本発明の洗眼剤には、上記の成分に加えて、眼科用組成物において汎用される有効成分(薬理活性成分や生理活性成分等)を配合することができる。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分又は収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬成分又は殺菌薬成分、糖類、高分子化合物又はその誘導体、セルロース又はその誘導体、局所麻酔薬成分、緑内障治療成分、白内障治療成分等が例示できる。本発明において好適な薬理活性成分及び生理活性成分としては、例えば、次のような成分が挙げられる。
【0016】
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0017】
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピンなど。
【0018】
抗炎症薬成分又は収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
【0019】
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、ジフェンヒドラミン又はその塩酸塩などの塩、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸ケトチフェン、レボカバスチン又はその塩酸塩などの塩、アンレキサノクス、イブジラスト、タザノラスト、トラニラスト、オキサトミド、スプラタスト又はそのトシル酸塩などの塩、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウムなど。
【0020】
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム、ユビキノン誘導体など。
【0021】
アミノ酸類:例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、クレアチニン、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸マグネシウム、イプシロン−アミノカプロン酸、グリシン、アラニン、アルギニン、リジン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ吉草酸、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0022】
抗菌薬成分又は殺菌薬成分:例えば、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウム、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、アシクロビルなど。
【0023】
糖類:例えば単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、マルトース、トレハロース、スクロース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
【0024】
高分子化合物又はその誘導体:例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、デキストラン、ペクチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリビニルアルコール(完全、または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴールおよびその薬学上許容される塩類など。
【0025】
セルロース又はその誘導体:例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロースなど。
【0026】
局所麻酔薬成分:例えば、クロロブタノール、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなど。
【0027】
洗眼剤の分野において各種成分の配合割合は既知であり、本発明の洗眼剤の上記成分の配合割合は、薬理活性成分又は生理活性成分の種類等に応じて適宜設定される。例えば、薬理活性成分又は生理活性成分の配合割合は、洗眼剤の総量に対して0.0001〜30重量%程度、好ましくは0.001〜10重量%程度の範囲から選択できる。
【0028】
また、本発明の洗眼剤には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して含有させることができる。それらの成分または添加物として、例えば、液剤の調製に一般的に使用される担体(水性溶媒、水性又は油性基剤など)、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、等張化剤、キレート剤、緩衝剤、安定化剤等の各種添加剤を挙げることができる。
【0029】
以下に本発明の洗眼剤に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性溶媒。
【0030】
界面活性剤:例えば、ポリオキシエチレン(以下、POEと略す)−ポリオキシプロピレン(以下、POPと略す)ブロックコポリマー (具体的には、ポロクサマー407など)、エチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物(具体的には、ポロキサミンなど)、POEソルビタン脂肪酸エステル(具体的には、ポリソルベート80など)、POE硬化ヒマシ油(具体的には、POE(60)硬化ヒマシ油など)、ステアリン酸ポリオキシルなどの非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)などの陽イオン界面活性剤など。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0031】
香料又は清涼化剤:例えば、精油(ウイキョウ油、ケイヒ油など)など。
【0032】
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩化ポリドロニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド又はその塩酸塩など)、グローキル(ローディア社製 商品名)など。
【0033】
pH調節剤:例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、リン酸など。
【0034】
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコールなど。
【0035】
キレート剤:例えば、アスコルビン酸、エデト酸四ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸など。
【0036】
緩衝剤:クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤など。具体的には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂 、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなど。
【0037】
安定化剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリンなど。
【0038】
任意成分は1種を単独で、又は2種以上を組合わせて使用できる。
【0039】
その他
本発明の洗眼剤の剤型は特に制限されず、液剤、懸濁剤、乳剤等の剤型が挙げられる。これらの場合、水の含有量は、通常、約90重量%以上、好ましくは約95重量%以上とすればよい。好ましくは液剤である。
また、本発明の洗眼剤のpHは、約3〜9とすればよく、約5〜8.5が好ましく、約5.5〜8がより好ましい。
また、本発明の洗眼剤の浸透圧比は、約0.6〜1.6とすればよく、約0.7〜1.5が好ましく、更に好ましくは約0.8〜1.4、特に好ましくは約0.8〜1.2となる範囲が挙げられる。浸透圧比は、第十五改正日本薬局方に基づき0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧(286mOsm)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。浸透圧比測定用標準液は、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)などを用いることができる。
【0040】
また、本発明の洗眼剤の粘度は、約2〜1100mPa・sとすればよく、約4〜400mPa・sが好ましく、約10〜100mPa・sがより好ましい。なお、粘度の測定は、第15改正日本薬局方の一般試験法に記載の粘度測定法に準拠し、(3)円すい−平板形回転粘度計(コーンプレート型粘度計)にて行う。具体的には、コーンプレート型粘度計としてTV-20(東機産業)を使用することができる。ロータや回転速度等の条件の選定は、本機の取扱説明書に準拠し、25℃における粘度を測定する。
本発明の洗眼剤を保存する為の容器の材質としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンナフタレートを含有する容器が好ましい。また、本発明の洗眼剤は遮光された容器に充填されることが好ましく、上記の容器材質に着色剤などを混ぜることにより、遮光してもよいし、あるいはシュリンクフィルム、外箱などで覆うことにより、遮光してもよい。遮光容器に入れることにより、本発明の洗眼剤を長期間安定に保つことができる。
【0041】
製造方法
本発明の洗眼剤は、慣用の方法で調製できる。例えば、各成分(カルボキシビニルポリマー、モノテルペン、及び任意に配合してもよいその他の薬理活性成分や生理活性成分、添加物等)を水などの担体に分散させた後、ホモジナイザーなどを用いて均一化、溶解又は乳化させ、pH調整剤でpHを調整することにより調製すればよい。また、製剤の滅菌方法としては、オートクレーブ滅菌、ろ過滅菌等の方法が選択される。
【0042】
使用方法
本発明の洗眼剤は、被洗浄部位に一度に接触させる使用量(片眼の洗浄に使用する一回の使用量を意味する)が、通常500μL以上であり、好ましくは1mL〜10mL程度、より好ましくは2mL〜8mL程度、特に好ましくは3〜7mL程度である。上記範囲であれば、眼球や眼瞼に付着した汚れを十分に除去し、かつ眼球(角膜、結膜、眼粘膜)、及びその周囲への再付着を防止するなど、本願発明の効果を充分に発揮することができる。また、極端に多いと洗浄効果が低下する場合もあるが、上記範囲であれば実用上十分な洗浄効果が得られる。
洗浄は、眼やその周囲(眼瞼等)に、1回使用量の洗眼剤を一度に接触させることにより行えばよい。具体的には、例えばカップ状の容器に1回使用量の洗眼剤を入れて、眼の周囲にカップの端部を押し当てて、眼やその周囲(眼瞼等)に、1回使用量の洗眼剤を一度に接触させることにより行えばよい。この場合、柔軟性を有するカップを用いて、カップを押すことにより、カップ内の洗眼剤を撹拌しながら洗浄することが好ましい。このような方法で使用しても、本願の洗眼剤は、一旦除去された汚れが、再付着し難い。
洗浄は必要時に行えばよく、1日の洗浄回数は特に限定されないが、1日約3〜6回が好ましい。
また、使用対象となるヒトは特に限定されない。健常人の他、ドライアイ、眼精疲労、その他の眼疾患を有する患者にも使用できる。
【0043】
用途
本発明の洗眼剤の洗浄対象は特に限定されず、眼球やその周囲に付着したあらゆる汚れ落としに使用できる。特に、化粧料洗浄用、すなわちメイク汚れ落とし用の洗眼剤、又は花粉洗浄用の洗眼剤として好適である。化粧料洗浄用、又は花粉洗浄用とする場合、1回使用量は特に限定されないが、500μL以上が好ましい。1回使用量は、1mL〜10mL程度がより好ましく、2mL〜8mL程度がさらにより好ましく、3〜7mL程度が特に好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
試験1(カルボキシビニルポリマーとモノテルペンとの相乗効果)
(1)方法
(1) 培養プレート(24ウェル、日本コーニング社)に、ウサギ角膜細胞株(SIRC)を播種し、37℃、5% CO2、湿度90%の条件下でコンフルエントになるまで培養した。増殖培地としては、Medium199(日本インビトロジェン社)にウシ胎児血清をMedium199全量の10v/v%となるよう添加したものを用いた。なお、この培養プレートの底面積は、片眼球の表面積に近い。
(2) 各ウェルの増殖培地を吸引除去した後、マスカラ商品1(資生堂社;マキアージュ フルビジョンマスカラ)(注1)、マスカラ商品2(資生堂社;マジョリカマジョルカ マスカラ)(注2)、又はマスカラ商品3(エヌ・エル・オー社;メイベリンボリュームエクスプレスマグナム マスカラ)(注3)を1 w/v% Tween20水溶液で30分間分散させた後、マスカラの濃度が0.1w/v%になるようHBSSバッファーに溶解したものを500μL加え、37℃、5%CO2下で5分間インキュベートして、マスカラを細胞に吸着させた。
(3) 各ウェルから上清を吸引除去した後、各ウェルに、後掲の表1〜6に示す各被験液500μLを加え、400回転/分の速さで30秒間振とうさせた。
(4) 各ウェルの各被験液を吸引除去した後、各ウェルから任意に5点顕微鏡写真を撮影し、画像解析ソフト(WinROOF)で残存マスカラの総面積を算出した。
【0045】
(注1)成分:水添ポリイソブテン、シクロメチコン、パルミチン酸デキストリン、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、ジステアルジモニウムヘクトライト、マイクロクリスタリンワックス、酢酸ステアリン酸スクロース、PEG−10ジメチコン、BG、トリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸プルラン、水、ポリエチレン、ナイロン−12、テトライソステアリン酸スクロース、アルギニン、トリイソステアリン酸PEG−20水添ヒマシ油、トリエトキシカプリリルシラン、シリカ、トコフェロール、BHT、酸化鉄、マイカ
(注2)成分:水添ポリイソブテン、シクロメチコン、パルミチン酸デキストリン、酢酸ステアリン酸スクロース、ジステアルジモニウムヘクトライト、トリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸プルラン、キャンデリラロウ、PEG-10ジメチコン、ナイロン-6、BG、水、トリイソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油、酢酸トコフェロール、マカデミアナッツ油、トリエトキシカプリリルシラン、シリカ、テトライソステアリン酸スクロース、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、トコフェロール、BHT、酸化鉄、カーボンブラック
(注3)成分:イソドデカン、ミツロウ、カルナウバロウ、ジステアルジモニウムヘクトライト、水、(ステアリン酸アリル/VA)コポリマー、コメヌカロウ、パラフィン、変性アルコール、ポリラウリン酸ビニル、(VP/エイコセン)コポリマー、炭酸プロピレン、タルク、(エチレンジアミン/ダイマージリノール酸ステアリル)コポリマー、ステアリン酸PEG-30グリセリル、プロピルパラベン、メチルパラベン、水添ホホバ油、水溶性コラーゲン、[+/-]酸化鉄、グンジョウ、酸化チタン、マイカ、酸化クロム、水酸化クロム、マンガンバイオレット、コンジョウ、シリカ
【0046】
なお、後掲の表1に示す各被験液を用いた試験では、以上の(1)〜(4)の操作を3回繰り返した。
各被験液について測定した残存マスカラ総面積から、下記式に従い洗浄率を算出した。後掲の表1に示す各被験液を用いた実験では、残存マスカラ総面積の平均値を用いて洗浄率を算出した。
【0047】
洗浄率(%)
=(1 − 実施例又は比較例の残存マスカラ総面積/
コントロールの残存マスカラ総面積) × 100
【0048】
(2)結果
(2-1)メントール・マスカラ商品1・CVP商品1
各被験液の組成を以下の表1に示す。また、マスカラは、資生堂社のマキアージュ フルビジョンマスカラを用いた。
【表1】

メントールは、長岡実業社製のl-メントールを用いた。カルボキシビニルポリマーは、住友精化株式会社製のAQUPEC HV-505E(架橋型)を用いた。PBSバッファーは、コージンバイオ株式会社製のD-PBS(code:16220015)を用いた。一般的なD-PBSの組成は、0.2g/L 塩化カリウム、0.2g/L リン酸二水素カリウム、8g/L塩化ナトリウム、1.15g/L リン酸一水素二ナトリウム(無水物)である。
【0049】
結果を図1に示す。図1から明らかなように、メントール、及びカルボキシビニルポリマーをそれぞれ単独で使用する場合に比べて、両者を併用することより、マスカラの洗浄率は格段に高かった。両者を併用することにより、化粧料が充分に洗浄され、角膜への再付着が効果的に防止されて、洗浄作用に相乗効果が認められたことが分かる。
(2-2)ベルガモット油・マスカラ商品1・CVP商品1
各被験液の組成、及び洗浄率を以下の表2に示す。また、マスカラは、資生堂社のマキアージュ フルビジョンマスカラを用いた。
【表2】

ベルガモット油は、高砂香料工業株式会社製のベルガモット油を用いた。カルボキシビニルポリマーは、住友精化株式会社製のAQUPEC HV-505E(架橋型)を用いた。PBSバッファーは、コージンバイオ株式会社製のD-PBS(code:16220015)を用いた。
表2から、ベルガモット油とカルボキシビニルポリマーとを併用することによっても、角膜細胞に付着した化粧料に対して、優れた洗浄効果及び再付着抑制効果が得られることが分かる。
(2-3)ベルガモット油又はゲラニオール・マスカラ商品2・CVP商品1
各被験液の組成、及び洗浄率を以下の表3に示す。また、マスカラは、資生堂社のマジョリカマジョルカ マスカラを用いた。
【表3】

ベルガモット油は、高砂香料工業株式会社製のベルガモット油を用いた。ゲラニオールは、高砂香料工業株式会社製のゲラニオールピュアを用いた。カルボキシビニルポリマーは、住友精化株式会社製のAQUPEC HV-505E(架橋型)を用いた。PBSバッファーは、コージンバイオ株式会社製のD-PBS(code:16220015)を用いた。
表3から、ベルガモット油又はゲラニオールとカルボキシビニルポリマーとを併用することによっても、角膜細胞に付着した化粧料に対して、優れた洗浄効果及び再付着抑制効果が得られることが分かる。また、本発明の洗眼剤は、マスカラ化粧料の種類にかかわらず、優れた洗浄作用及び再付着抑制作用を有することが確認された。
(2-4)メントール・マスカラ商品1・CVP商品2
各被験液の組成、及び洗浄率を以下の表4に示す。また、マスカラは、資生堂社のマキアージュ フルビジョンマスカラを用いた。
【表4】

メントールは、長岡実業社製のl-メントールを用いた。カルボキシビニルポリマーは、ルーブリゾール社製のカーボポール981(架橋型)を用いた。PBSバッファーは、コージンバイオ株式会社製のD-PBS(code:16220015)を用いた。
表4から、本発明の洗眼剤は、カルボキシビニルポリマーの種類にかかわらず、角膜細胞に付着した化粧料に対して、優れた洗浄作用及び再付着抑制作用を有することが分かる。
(2-5)ベルガモット油又はゲラニオール・マスカラ商品1・CVP商品2
各被験液の組成、及び洗浄率を以下の表5に示す。また、マスカラは、資生堂社のマキアージュ フルビジョンマスカラを用いた。
【表5】

ベルガモット油は、高砂香料工業製のベルガモット油を用いた。ゲラニオールは、高砂香料工業製のゲラニオールピュアを用いた。カルボキシビニルポリマーは、ルーブリゾール社製のカーボポール981(架橋型)を用いた。PBSバッファーは、コージンバイオ株式会社製のD-PBS(code:16220015)を用いた。
表5から、本発明の洗眼剤は、カルボキシビニルポリマーの種類にかかわらず、角膜細胞に付着した化粧料に対して、優れた洗浄作用及び再付着抑制作用を有することが分かる。
(2-6)メントール・マスカラ商品3・CVP商品1又は2
各被験液の組成、及び洗浄率を以下の表6に示す。また、マスカラは、エヌ・エル・オー社のメイベリンボリュームエクスプレスマグナム マスカラを用いた。
【表6】

メントールは、長岡実業社製のl-メントールを用いた。カルボキシビニルポリマー1)は、住友精化株式会社製のAQUPEC HV-505E(架橋型)を用いた。カルボキシビニルポリマー2)は、ルーブリゾール社製のカーボポール981(架橋型)を用いた。PBSバッファーは、コージンバイオ株式会社製のD-PBS(code:16220015)を用いた。
表6から、本発明の洗眼剤は、マスカラの種類や、カルボキシビニルポリマーの種類にかかわらず、角膜細胞に付着した化粧料に対して、優れた洗浄作用及び再付着抑制作用を有することが分かる。
【0050】
試験2(使用量の評価)
(1) 培養プレート(12ウェル、日本コーニング社)に、ウサギ角膜細胞株(SIRC)を播種し、37℃、5% CO2、湿度90%の条件下でコンフルエントになるまで培養した。増殖培地としては、Medium199(日本インビトロジェン社)にウシ胎児血清をMedium199全量の10v/v%となるよう添加したものを用いた。
(2) 各ウェルの増殖培地を吸引除去した後、マスカラ(資生堂社、マキアージュ フルビジョンマスカラを1 w/v% Tween20水溶液で30分間分散させた後、マスカラの濃度が0.1w/v%になるようHBSSバッファーに溶解したものを500μL加え、37℃、5%CO2下で5分間インキュベートして、マスカラを細胞に吸着させた。
(3) 各ウェルから上清を吸引除去した後、各ウェルに、前掲の表1に示す実施例処方1をそれぞれ100μL、500μL、5mLの分量加え、400回転/分の速さで30秒間振とうさせた(テスト液)。
コントロールは、1ウェルに、上記表1の比較処方例1の被験液を500μL加え、400回転/分の速さで30秒間振とうさせた。
(4) 各ウェルの各被験液を吸引除去した後、各ウェルから任意に5点顕微鏡写真を撮影し、画像解析ソフト(WinROOF)で残存マスカラの総面積を算出した。
【0051】
以上の(1)〜(4)の操作を3回繰り返した。
各被験液(実施例処方1(100μL、500μL、5mL)、比較例処方1(500μL))について測定した残存マスカラ総面積の平均値から、下記式に従い、テスト液についての洗浄率を算出した。さらに、洗浄率から、実施例処方1の500μLを用いて洗浄した場合の洗浄率に対する比率(洗浄度)を算出した。

洗浄率(%)=
(1− 実施例処方1(100μL、500μL、5mL)の残存マスカラ総面積/
比較例処方1(500μL)の残存マスカラ総面積)×100

洗浄度=(実施例処方1(100μL、500μL、5mL)の洗浄率/
実施例処方1(500μL)の洗浄率)×100
【0052】
結果を図2に示す。図2から明らかなように、本発明の実施例処方1の剤は、使用量500μL、5mLの双方で、高い洗浄効果を示した。
【0053】
試験3(花粉に対する効果の評価)
(1) 培養プレート(24ウェル、日本コーニング社)に、ウサギ角膜細胞株(SIRC)を播種し、37℃、5% CO2、湿度90%の条件下でコンフルエントになるまで培養した。増殖培地としては、Medium199(日本インビトロジェン社)にウシ胎児血清をMedium199全量の10v/v%となるよう添加したものを用いた。
(2) 各ウェルの増殖培地を吸引除去した後、ヨモギ花粉(SIGMA、Cat.P9395-1G)を2mg/mlになるよう分散させたHBSSバッファー500μLを加え、37℃、5%CO2下で5分間インキュベートして、花粉を細胞に吸着させた。
(3) 各ウェルから上清を吸引除去した後、各ウェルに、前掲の表1に示す各被験液500μLを加え、400回転/分の速さで30秒間振とうさせた。
(4) 各ウェルの各被験液を吸引除去した後、各ウェルから任意に5点顕微鏡写真を撮影し、画像解析ソフト(WinROOF)で残存花粉の総面積を算出した。
【0054】
以上の(1)〜(4)の操作を3回繰り返した。
各被験液(実施例処方1、比較例処方1、比較例処方2、コントロール処方)について測定した残存花粉総面積の平均値から、下記式に従い、実施例処方1及び比較例処方1、2についての洗浄率を算出した。
【0055】
洗浄率(%)
=100-100×(実施例又は比較例の残留花粉総面積/コントロールの残留花粉総面積)
【0056】
結果を図3に示す。メントール単独使用の場合は、PBSバッファーのみのコントロールより花粉洗浄効果が悪かったが、カルボキシビニルポリマーにメントールを併用することで、カルボキシビニルポリマー単独使用の場合より高い花粉洗浄効果が得られた。このことから、花粉洗浄についても、メントールとカルボキシビニルポリマーとの併用により相乗効果が認められたことが分る。
【0057】
本発明の洗眼剤の処方例を、以下の表7〜10に示す。各表中のカルボキシビニルポリマーである、カーボマー940としてはAQUPEC HV−505Eを用い、カーボマー934としてはAQUPEC HV−504E(2984)を用い、カーボマー941としてはカーボポール981NFを用いた。
【0058】
【表7】

【0059】
【表8】

【0060】
【表9】

【0061】
【表10】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の洗眼剤は、メイク汚れ落とし、花粉洗浄などに好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシビニルポリマー、及びモノテルペンを含み、一度に被洗浄部位に接触させる使用量が500μl以上である洗眼剤。
【請求項2】
カルボキシビニルポリマーの含有量が、洗眼剤に対して、0.001〜10w/v%である請求項1に記載の洗眼剤。
【請求項3】
モノテルペンの含有量が、洗眼剤に対して、0.0001〜0.2w/v%である請求項1又は2に記載の洗眼剤。
【請求項4】
モノテルペンが、メントール、ボルネオール、ゲラニオール、及びベルガモット油からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の洗眼剤。
【請求項5】
カルボキシビニルポリマー、及びモノテルペンを含む化粧料洗浄用洗眼剤。
【請求項6】
カルボキシビニルポリマー、及びモノテルペンを含む花粉洗浄用洗眼剤。
【請求項7】
カルボキシビニルポリマーの含有量が、洗眼剤に対して、0.001〜10w/v%である請求項5又は6に記載の洗眼剤。
【請求項8】
モノテルペンの含有量が、洗眼剤に対して、0.0001〜0.2w/v%である請求項5〜7のいずれかに記載の洗眼剤。
【請求項9】
モノテルペンが、メントール、ボルネオール、ゲラニオール、及びベルガモット油からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項5〜8のいずれかに記載の洗眼剤。
【請求項10】
一度に被洗浄部位に接触させる使用量が500μl以上である請求項5〜9のいずれかに記載の洗眼剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−93889(P2011−93889A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217666(P2010−217666)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】