説明

流体動圧軸受装置及びスピンドルモータ

【課題】小型で高さの低い流体動圧軸受装置で、かつ、軸損が小さく、潤滑液の不足や漏れなどのトラブルが起きにくい製品を実現する。
【解決手段】スラスト動圧軸受を内周寄りの位置に形成し、その外側にやや間隙の広がった領域を設けて、潤滑液を保持させる。加えて、オイル循環路をこの間隙の広がった領域に開口させる。この領域の間隙は、スラスト動圧軸受部の間隙よりも、動圧溝深さ分以上大きくなるように設定される。この間隙の広がった領域には、潤滑液を中心に向って掻き込むための溝列を設けても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ装置などに用いられる流体動圧軸受装置、及び、その流体動圧軸受装置によってディスク搭載部分を回転可能に支持する、ハードディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンの小型化、或は、小型携帯機器へのハードディスク搭載が進んでおり、ハードディスク自体も、従来の3.5インチサイズから、より小型2.5インチサイズ、更には、1.0インチ以下へと小型化が進んでいる。このようなトレンドの中で、ハードディスクのハブ部を支持する流体動圧軸受装置に対しても、小型化が求められている。
【0003】
特許文献1には、スリーブの上端面にハブの下面を微小間隙を介して対向させ、ここをスラスト動圧軸受とするとともに、テーパシール部をスリーブ側面に配置した、流体動圧軸受装置が開示されている。この様な構成とする事で、スラストプレートを省き、軸受装置の高さを低く押さえている。
【0004】
特許文献2には、スラスト動圧発生溝をヘリングボーン形状のものとし、更に、その外周側に潤滑液を軸受中心に向けて送り込む為の溝を設けた機構が開示されている。この様に構成する事で、軸受を高速回転させた場合においても、潤滑液の漏れ出しが防止される。
【0005】
これらの軸受装置は、それぞれに良好な特性を有しては居るものの、必ずしも十分に満足の行く特性を有しているわけではない。
【0006】
例えば、特許文献1では、シャフト先端部とスラスト軸受部分の間で潤滑液が循環できないため、シャフト先端部とスラスト軸受側との間に過大な圧力差が生ずる場合がある。特許文献2では、オイルを送り込む為に、スラスト動圧軸受面に余分の溝列を配置しているため、軸受を回転させる際の抵抗を十分に小さくする事が出来ない。
【0007】
また、特許文献3では、スラスト動圧軸受部をスリーブ端面に形成したため、その外側において潤滑液の断絶が起き易い。加えて、回転するハブの影響を受けてオイルが外側に排出されてしまう事故も起きるため、信頼性を確保できなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2001−065552号公報
【特許文献2】特開2003−148457号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0091187号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、小型で軸受の高さが低い流体動圧軸受装置において、軸損が小さく、しかも、潤滑液の不足や漏れなどのトラブルが置きにくい、信頼性の高い製品を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を達成する為の本願第1の発明は、
シャフトと、
シャフトの一端部から半径方向外方に広がるスラスト軸受面、及び、スラスト軸受面に対して更に半径方向外方に広がる環状面、及び、シャフトを囲み他端側に延長する周壁面を有し、シャフトの一端部に固定されてシャフトと一体に回転する、ハブ部と、
円筒型の内周面を有する穴部を有し、穴部にはシャフトが回転自在に挿通され、穴部の一端側における開口部を囲んで形成されたスラスト軸受面と、スラスト軸受面の外周側において環状面と対向するフランジ面を有する、固定部と、
ハブ部のスラスト軸受面及び固定部のスラスト軸受面の、何れか一方或は両方に形成されたスラスト動圧発生溝と、
シャフトの外周面及び穴部の内周面の何れか一方或は両方に形成されたラジアル動圧発生溝と、
ハブ部のスラスト軸受面とこれに対向する固定部のスラスト軸受面、との間に確保されたスラスト微小間隙と、
シャフトの外周面とこれに対向する穴部の内周面、との間に確保され、その一端においてスラスト微小間隙に接続する、ラジアル微小間隙と、
フランジ面と環状面との間に定格回転時において確保され、その内周縁においてスラスト微小間隙の外周縁に接続し、スラスト微小間隙の大きさにスラスト動圧発生溝の平均的な深さを加えて得られる間隙よりも大きな間隙を有する、環状間隙と、
固定部の外周面とこれに対向する周壁面との間に形成され、環状間隙の外周部に接続するシール間隙と、
スラスト微小間隙、及び、ラジアル微小間隙、及び、環状間隙を、実質的に途切れる箇所無く満たし、更に、シール間隙の少なくとも一部を満たす、潤滑液と、
スラスト微小間隙、及び、間隙に保持される潤滑液、及び、潤滑液に動圧を発生させるスラスト動圧発生溝、からなるスラスト動圧軸受と、
ラジアル微小間隙、及び、間隙に保持される潤滑液、及び、潤滑液に動圧を発生させるラジアル動圧発生溝、からなるラジアル動圧軸受と、
からなる流体動圧軸受装置を提供する。
【0011】
前記の課題を達成する為の本願第2の発明は、更に、フランジ面及び環状面の何れか一方或は両方に形成され、ハブと固定部が相対的に回転する際に、環状間隙に保持されたオイルに対して、半径方向内方に向かう流れを生ずる、掻き込み溝を有する。
【0012】
前記の課題を達成する為の本願第3の発明は、更に、固定部に形成されており、ラジアル微小間隙の他端側とスラスト微小間隙の外周部とを連通し、その内部は潤滑液によって実質的に連続して満たされている、連通路を有する。
【0013】
前記の課題を達成する為の本願第4の発明において、固定部は、他端側が閉塞された有底の孔部を有し、孔部の一端側開口の周囲にフランジ面を有する、ハウジングと、穴部を有し、穴部の一端側開口の周囲にスラスト軸受面を有し、ハウジングの有底の孔部内周側に嵌合される、スリーブと、から構成され、連通路は、スリーブの外周面、及び/又は、ハウジングの内周面に形成され、スリーブがハウジング内周に嵌合される事で開放側が閉塞されて、スリーブの一端側と他端側を連通する貫通孔となる、連絡溝と、スリーブの他端面とハウジングの内周側閉塞面との間に確保され、ラジアル微小間隙の他端側及び貫通孔の他端と連通した、他端部間隙と、を有する。
【0014】
前記の課題を達成する為の本願第5の発明では、軸受の一端側において固定部の外周面は、半径方向外方に拡大した、膨大部と、その内周縁が膨大部の外周縁よりも内周側に位置し、内周縁は膨大部の外周縁に対して軸方向他端側に位置し、ハブ部に固定された、膨大部に係合して抜け留めを構成する、環状の抜け留め部材と、を有し、かつ、抜け留め部材の内周縁における一端側端面と膨大部外周縁の他端側端面との間には、流体動圧軸受装置の軸方向遊びに相当する間隙が確保されている。
【0015】
前記の課題を達成する為の本願第6の発明では、シール間隙を構成する周壁面の少なくとも一部が、円筒形若しくは円錐形の内周面を有する抜け留め部材の内周面によって構成され、内周面とこれに半径方向に対向する固定部外周面の間の間隙は、環状間隙から離間するに従って拡大し、潤滑液の界面が位置する、テーパシール部を構成する。
【0016】
前記の課題を達成する為の本願第7の発明では、環状間隙の少なくとも一部は、軸受の中心側から外周側に向かって離れるに従って間隔が拡大している。
【0017】
前記の課題を達成する為の本願第8の発明では、環状間隙は、流体動圧軸受装置の実使用状態において、シール間隙よりも小さい。
【0018】
前記の課題を達成する為の本願第9の発明では、ハブ部のスラスト軸受面と環状面は、軸方向に異なった位置に形成されている。
【0019】
前記の課題を達成する為の本願第10の発明では、スラスト動圧軸受は、シャフトと固定部が相対的に回転する際に、スラスト動圧軸受の半径方向外側に対して半径方向内側における潤滑液の圧力が高まるように構成されている。
【0020】
前記の課題を達成する為の本願第11の発明では、スラスト動圧軸受はシャフトと固定部が相対的に回転する際に、軸受中心に向けて潤滑液の圧力を高めるよう構成されたスラスト動圧発生溝が、軸受中心を取り囲んで配置された、第一の領域と、シャフトと固定部が相対的に回転する際に、軸受中心から遠ざかる方向に潤滑液の圧力を高めるよう構成されたスラスト動圧発生溝が、第一の領域の内周側に、軸受中心を取り囲んで配置された、第二の領域と、からなる。
【0021】
前記の課題を達成する為の本願第12の発明では、流体動圧軸受装置は、ラジアル動圧軸受をシャフトの延長方向に沿った2ヶ所に有し、二つのラジアル動圧軸受の内の少なくとも一方は、他方に向けて、ラジアル動圧軸受を構成する潤滑液の圧力を高めるように構成されている。
【0022】
前記の課題を達成する為の本願第13の発明では、スリーブの少なくとも一部が、オイルを含浸した多孔質体から構成されている。
【0023】
前記の課題を達成する為の本願第14の発明では、本願の流体動圧軸受装置を搭載するスピンドルモータを提供する。
【0024】
前記の課題を達成する為の本願第15の発明は、直径1.8インチ以下の大きさの磁気記録ディスクをを、本願のスピンドルモータに搭載するハードディスクドライブ装置を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本願の請求項1の発明においては、潤滑液の界面を軸受の側面に配置し、軸受間隙と界面との間を環状間隙で接続している。この構造においては、環状間隙部分もオイルバッファとして機能するため、オイル量の確保が容易である一方、軸受の径方向に広がる構造であるため、軸受装置の高さは低く抑える事ができる。
【0026】
従来の流体動圧軸受装置では、この環状間隙部分にスラスト動圧軸受を構成していたが、軸受の径方向外側に位置するため、軸損増大の原因となっていた。特に、小型の軸受では、相対的にこのスラスト動圧軸受おける損失が大きくなる。この問題を解決するために、スラスト動圧溝を径方向の内側に移動させることは容易である。しかしその場合でも、後に環状間隙が残って粘性抵抗が働くため、十分に軸損を低減させる事が出来ない。
【0027】
本発明においては、環状間隙部分における抵抗を低減する為に、環状間隙の大きさを、スラスト動圧軸受部分の間隙(以下、スラスト微小間隙)よりも大きく取る。間隙の大きさの違いは、スラスト動圧発生溝の平均的な深さと同等以上とする。こうすることで、抵抗を下げる事が可能となり、軸受損失が低減される。
【0028】
本願の請求項2の発明においては、環状間隙部分にスパイラル等の溝を形成して、潤滑液を軸受け内方に向けて掻き込む構成とする。この結果、掻き込み溝に沿って内方に向かう、潤滑液の流れが生ずる。潤滑液中に気泡が含まれている場合は、潤滑液が内方に向かう反作用として、環状間隙の外側に向かって押し出される。この様にして、潤滑液中の気泡が効率的に排出される。環状間隙部分に気泡が蓄積されると、熱膨張によって潤滑液を押し出し、潤滑液が漏れる等のトラブルを生ずる事がある。本発明によって、そのような気泡は排出されるため、軸受の信頼性が高まる。
【0029】
本願の請求項3の発明においては、連通路を固定部材側に設けて、スラスト微小間隙の外周側とラジアル微小間隙の端部を接続する。この連通路を潤滑液が流通する事で、ラジアル微小間隙先端部における圧力の過剰な上昇若しくは低下を回避するができる。また、ラジアル軸受内部で生じた気泡が、排出されやすくなる。
【0030】
本願の請求項4の発明においては、予め、スリーブ外周かハウジング内周に溝を形成し、その上で、ハウジング内周にスリーブを内挿して軸受の固定部を構成する。内挿する事で、溝の開放側が閉塞されて、スリーブとハウジングの境界部に沿って伸びる連通路が形成される。細長い孔を開ける加工に比して、遥かに容易に連通路を形成する事が出来る。また、連通路の形状も、直線のみならず、螺旋形状などを選択できる。
【0031】
本願の請求項5の発明においては、ハブ側に環状の抜け留め部材を取り付け、スリーブ膨大部に軸方向の逆側から係合させる配置とする事で、抜け留めを形成する。抜け留めを軸受の側方に形成できるため、軸受装置の高さを低く抑える事ができる。
【0032】
本願の請求項6の発明においては、抜け留め部材の内周面とスリーブ外周面の間の間隙を、次第に間隙が広がるテーパ形状として、潤滑液を保持させる。抜け留めの下側から潤滑液の位置を確認できるため、特に量産時に、潤滑液の注入状態の確認作業の能率が高まる。
【0033】
本願の請求項7の発明においては、環状間隙の大きさが、外側ほど大きくなっている。或は、部分的にその様な部位が形成されている。このような構造は、潤滑液中の気泡が、環状間隙の外縁、すなわちシール部側に向けて排出される事を助ける。
【0034】
環状間隙は、フランジ面と環状面に挟まれた間隙であるが、軸受回転時には、環状面とフランジ面は相対的に回転する。よって、環状間隙に保持された潤滑液には、周方向の剪断流が生ずる。剪断流の中の気泡は、その流れの影響を受けて変形する。これは気泡表面積の増大を招く。剪断流が弱ければ、各気泡はより球形に近い形状となって気泡の表面積は減少する。各気泡の表面積の増減は、表面エネルギーの増減を意味するので、場所によって剪断流の強さに差のある液体の中では、気泡は、剪断流が弱く表面エネルギーを低下させられる場所に集積する傾向を示す。
【0035】
回転の周速は外側ほど大きくなるため、環状間隙の間隔を一定とした場合、気泡は間隙の内側に集積する傾向を持つ。環状間隙の大きさを外周側ほど大とする事で、少なくとも部分的には、この傾向を打ち消す事ができる。より確実には、回転中心からの距離rとその場所における間隙の大きさgとの比、r/gが外側ほど小となる様に、間隙の大きさgを半径方向に変化させれば良い。
【0036】
この、間隙の大きさを変化させる構成は、環状間隙部分に掻き込み溝を設ける請求項2と組み合わせると、より効果的である。
【0037】
本願の請求項8の発明においては、潤滑液の界面側に位置するシール間隙の大きさが、軸受装置の内部側に位置する環状間隙の大きさよりも大きいため、前述した剪断流はシール間隙側、すなわち、潤滑液の気液界面に近い側で小さくなる。潤滑液中の気泡に対して、界面側に向けて排出する力が働くため、流体動圧軸受装置から気泡が効率的に排出される。
【0038】
本願の請求項9の発明においては、ハブ部のスラスト軸受面とその外側に位置する環状面が別平面上にある。例えば、ハブ部の底面が段付きの構造となっており、段の内側をスラスト軸受面とし外側を環状面とする、構造はこの発明の一例である。或は、環状面を、
スラスト軸受面に対して傾けた構造としても良い。この発明は、ハブの形状の設計の自由度を高め、より小型のスピンドルモータの実現を可能にする。
【0039】
本願の請求項10の発明においては、スラスト動圧軸受における潤滑液の圧力が、軸受の中心側で高く、外側で低くなるため、潤滑液中の気泡はスラスト動圧軸受の外側に向けて排出される作用が生じる。このため、軸受装置内の気泡が効率的に排出される。
【0040】
本願の請求項11の発明においては、スラスト動圧軸受に大きな支持力を発生させる事ができる。
【0041】
本願の請求項12の発明における、ラジアル動圧軸受の動圧発生溝は、典型的には、潤滑液をシャフト端部離れる方向に排出するようにアンバランスに構成された、ヘリングボーン型の動圧発生溝である。この様に構成する事で、二つあるラジアル動圧軸受の間の軸受間隙において潤滑液の圧力が大気圧よりも高まり、負圧に起因する気泡を防止できる。また、二つのラジアル動圧軸受において、潤滑液の圧力を高める程度が異なっていれば、潤滑液を一方向に循環させることも出来る。
【0042】
この発明について、更に、請求項10の構成も盛り込んで、スラスト動圧軸受は、ラジアル動圧軸受に向けて潤滑液の圧力を高める構成としても良い。その場合は、ラジアル動圧軸受が誘起する潤滑液の流れを打ち消す方向となる様に、スラスト動圧軸受を構成する事が好ましい。
【0043】
本願の請求項13の発明においては、スリーブが多孔質体から構成される。このため、軸受装置のオイル保持量が増す。プレス可能などによって、スリーブ内周面に動圧発生溝を形成することも容易になる。
【0044】
本願の請求項14の発明においては、軸損が小さく、信頼性の高い流体動圧軸受装置によって、スピンドルモータの回転軸を支持できるため、電流値が小さく、信頼性の高いスピンドルモータを実現できる。
【0045】
本願の請求項15の発明においては、ディスクの重量が小さな、小型のハードディスクを搭載するハードディスクドライブに、請求項14のスピンドルモータを適用する。請求項14のスピンドルモータが搭載する軸受は、特に、ディスクの重量が小さい場合に良好な特性を示すため、信頼性の高いハードディスクドライブが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明に係る流体動圧軸受装置の例、及び、その流体動圧軸受装置を搭載した、スピンドルモータ及びハードディスクドライブの例について、以下で解説する。
【実施例1】
【0047】
図1は、本発明例のスピンドルモータ1の断面図である。スピンドルモータ1は、本発明例の流体動圧軸受装置2を搭載しており、この流体軸受装置を介して、ロータ6は固定部4に対して回転自在に支持されている。
【0048】
固定部4は、ベースプレートとその上に固定されたステータ7を構成要素とし、流体動圧軸受装置2も固定部の中心部に設置されている。ステータの外周は、ロータ6に取り付けられたロータマグネット8と半径方向に対向しており、適切な位相でステータに通電する事により、ロータマグネット8には軸受装置を中心とする回転駆動力が加わり、ロータは回転する。
【0049】
図2は、流体動圧軸受装置2の細部を説明する図であり、(a)は断面図、(b)はハブ部3をシャフト9共に取り除いて、上側から見たばあいの平面図である。固定部4は、ハウジング11とその内周に内挿されたスリーブ10とからなっている。スリーブ10には、シャフト9が回転自在に挿通されている。
【0050】
図2(a)において、シャフト9の延長方向に沿って、ラジアル動圧軸受17,18が構成されており、半径方向の荷重を支持する。スリーブ10の上端面は固定部のスラスト軸受面15となっている。ハブ部3の下面には、ハブ部のスラスト軸受面13が形成されており、固定部のスラスト軸受面15と併せて、スラスト動圧軸受19が構成される。
【0051】
ハブ部のスラスト軸受面13の半径方向外方には、環状面14が存在する。ハウジングの上端は、半径方向外方に広がる、平坦なフランジ面16となっており、環状面14と軸方向に対向する。環状面とフランジ面に挟まれた空間は、外周においてシール間隙24に接続している。シール間隙24は、ハウジング11の外周面と抜け留め部材23の内周面の間に形成された、下方に向かって間隙が拡大する空間である。このシール間隙部分に潤滑液の界面が形成され、これよりも内側は、潤滑液によって実質的に途切れることなく満たされている。
【0052】
ラジアル動圧軸受18の下端部と、スラスト動圧軸受19とは、スリーブ10外周面に形成された、連通路12によって接続されている。ラジアル動圧軸受下端部付近で気泡が生じた場合、この連通路12を通じて排出される。また、ラジアル軸受下端部とスラスト動圧軸受側とで、潤滑液の圧力が大きく異なってしまう場合でも、この連通路12を通じて潤滑液が流通する事により、圧力が平均化される。
【0053】
図2(b)には、溝パターンが開示されている。スラスト動圧発生溝25は、固定部のスラスト軸受面15に形成されており、スパイラル形状となっている。フランジ面16上には、掻き込み溝21が形成されている。この掻き込み溝もスパイラル形状をしており、シャフト回転時には、オイルを軸受の中心に向って掻き込み、オイル中の気泡は、その逆に軸受の係方向外方に向けて排出される傾向を持つ。
【0054】
図1及び図2(a)において、ラジアル動圧軸受17,18、及びスラスト動圧軸受は、軸受面に対して斜めに傾いた線で表されている。これらの線の傾きは、その動圧軸受に沿った潤滑液の圧力の変化の概略を示している。
【0055】
スラスト動圧軸受19を表す線は、軸受の中心側で軸受面から離れるように傾いている。これは、軸受回転時に、スラスト動圧軸受の外周側から中心側に向って、潤滑液の圧力が高められる事を意味する。スラスト動圧発生溝25はスパイラル形状をしており、図2(a)の図と一致する。
【0056】
ラジアル動圧軸受17,18を表す線は、両側で軸受面に近く、中央で軸受面から遠い。これは、動圧軸受の両端で圧力が低く、中央に向って圧力が高まる事を意味する。ラジアル動圧軸受が、ヘリングボーン形状の動圧発生溝を備えている場合、潤滑液の圧力は、概略この様に変化する。なお、図2において、掻き込み溝21は、溝が形成されているフランジ面16に対して、ほぼ平行に描かれている。これは、掻き込み溝が形成される部分では、間隙が大きく、溝が生ずる圧力差が小さい事を示している。
【0057】
図3は、スラスト動圧発生溝の他の例を示している。スラスト動圧発生溝25bは、内側に向うスパイラル溝の内側に外側に向うスパイラル溝が配置された構成を有する。この場合、二つのスパイラルの間で最も高い動圧が発生し、大きな支持力が得られる。なお、スラスト動圧発生溝25bは、外側のスパイラルが生ずる圧力が大きく、動圧発生溝全体としては、内側に向けて圧力を高めるように作用する。
【0058】
図4(a)は、図2(a)の向って右半分を拡大したものであり、この図の点線で囲んだ部位を更に拡大したものが図4(b)である。
【0059】
図4(b)において、ラジアル微小間隙30、スラスト微小間隙31、環状間隙33はこの順に繋がっており、潤滑液26によって満たされている。環状間隙33の外周部分は、シール間隙24に繋がっており、シール間隙はその途中までが潤滑液で満たされ、潤滑液/大気界面27を形成している。
【0060】
スラスト微小間隙31の大きさg1に比して、環状間隙33の大きさg2は大きくなる様に構成されている。
【0061】
図5は、g1とg2の大きさの違いを更に詳しく説明した図である。図5(a)中の点線で囲まれた部分を拡大して、図5(b)に示した。
【0062】
スラスト微小間隙の大きさg1は、スラスト動圧発生溝25の岡部分とハブ部のスラスト軸受面13との間の距離である。同様に、環状間隙の大きさg2は掻き込み溝の岡部分と、環状面14との間の距離である。本発明の流体動圧軸受装置において、環状間隙33は、軸受の支持の為ではなく、連通路12を通る潤滑液の循環を容易ならしめるために確保されている。このため、この部分では動圧を発生させる必要はない。その為には、g1にスラスト動圧発生溝25の深さd1を加えた大きさよりも、g2が大きくなる様に設計すれば、ほぼ目的は達せられる。更に、d2の大きさをd1の2倍未満としておけば、より確実になる。
【0063】
g1、d1、g2に関するこの条件は、言い換えれば、スラスト動圧発生溝25の底よりも、フランジ面16が低くなっている事と同じである。ただし、ハブ部のスラスト軸受面13と環状面14は、一般的には間に段差を設けて、異なる高さにする事ができる。そのような場合も含めた一般的な条件は、g2>g1+d1である。図5に示した例では、d1=7μm、g1=11μm、g2=23μmである。また、d2=7μmである。
【実施例2】
【0064】
図6は、実施例1の流体動圧軸受装置に、一部変形を加えた変形例である。図6(a)の点線で囲んだ部分を拡大して、(b)に示している。
【0065】
この流体動圧軸受装置では、フランジ面16が軸受の径方向外側に向って傾いている。このため、環状間隙の大きさは、フランジ面内周縁付近ではg2であるのに対して、外周縁付近ではそれよりも大きなg3となっている。また、フランジ面の外周縁と円筒周壁22の内周面との間の間隔w1は、g3と同等以上であり、シール間隙27の基部における間隔w2は、w1と同等以上の大きさに設定されている。
【0066】
このような構成とする事で、潤滑液中の周方向の剪断流の大きさは、常に外側に行くほど小さくなる。このため、潤滑液中の気泡は容易にシール間隙へ向けて排出され、軸受の外部に出てゆく。
【0067】
各部の具体的な間隔は、g1=11μm、g2=15μm、g3=29μm、w1=0.11mm、w2=0.13mmである。また、フランジ面内周縁の半径r2は2.4mm、フランジ面外周縁の半径r3は3.7mmである。r2/g2の値は、r3/g3の値よりも大きく、潤滑液中の気泡は外方向に排出される力を受ける。また、g3<w1<w2も成り立っており、環状間隙から排出された気泡は、逆流しにくくなっている。なお、通常の設計では、w1はg3に比べて遥かに大きく、剪断流の流速はw1より外側では非常に小さくなる。このため、この位置から潤滑液界面27にかけては、剪断流速の差による気泡の排出効果は小さく、気泡は主に、間隙の大きさの差が原因となって排出される。
【0068】
なお、この際、フランジ面内周縁付近において、局部的にg2>g1+d1が成り立っていない場合も、本発明の効果は得られる。g2>g1+d1が成立していない部位は、軸受の損失を増すが、それは、フランジ面全体のごく一部に留まる。その外側においては、g2>g1+d1が成り立つため、軸受の損失増大は回避され、また、オイルバッファとしても機能するからである。
【実施例3】
【0069】
図7は、シャフト先端にスラストプレート35を備えた流体動圧軸受装置の他の実施例1である。この流体動圧軸受装置2bは、発生する支持力が互いに対向する2つのスラスト動圧軸受19,20を備えている。環状間隙33は、上側のスラスト動圧軸受19の外側に配置され、シール間隙24と軸受間隙を接続している。
【0070】
スラスト動圧軸受19、20は、共にラジアル軸受に向けて潤滑液の圧力を高めるように構成されている。一対の動圧軸受が、支持力の発生する方向のみ上下逆となって、上下に一つづつ配置されている。これらのスラスト動圧軸受は、動圧を発生してスラスト方向の支持力を発生すると同時に、ラジアル微小間隙30内部の圧力を高める。潤滑液はシール間隙部分において大気と接しており、溶解する空気の濃度は大気圧に平衡する濃度である。このため、ラジアル微小間隙部分においては、圧力に平衡する濃度よりも低い濃度の空気しか溶解していない状態になり、ラジアル微小間隙における気泡の発生が抑制される。スラスト動圧軸受19,20は、上下とも同一であるため、積極的に潤滑液を循環させる作用機能は有していない。
【0071】
なお、スラスト動圧軸受を構成するスラスト動圧発生溝は、図2(b)に示したようなスパイラル形状の動圧溝に限らない。いわゆるヘリングボーン形状の動圧発生溝でも良い。スラスト支持力を高める事が出来る。但しその場合は、スラスト動圧軸受全体でみて、内側に向う圧力上昇が大きくなるように、アンバランスなヘリングボーン形状とする必要がある。
【0072】
一対のラジアル動圧軸受17,18bは、各軸受の上下端から中心に向って、潤滑液の圧力を高めるように構成されている。例えば、ヘリングボーン形状の動圧発生溝を用いると、このような動圧軸受けを構成できる。
【0073】
これらラジアル動圧軸受の内、上側に配置された17は、潤滑液に対しては上下方向に対称に作用し、積極的に潤滑液を循環させる作用は持たない。軸受下側に配置された18bは、上に向けて潤滑液の圧力を高める作用が大きくなる様に構成されている。このため、ラジアル動圧軸受17、18b、及びスラスト動圧軸受19、20の全体としては、潤滑液を一方向に循環させるように作用する。潤滑液は、ラジアル微小間隙30を下から上に向い、スラスト微小間隙31に達し、連通路12を通って下側のスラスト微小間隙32に達する。
【0074】
ラジアル微小間隙の圧力を高めていても、僅かに気泡は発生するが、そのような気泡も、この潤滑液の循環によって排出される。ラジアル微小間隙30から送り出されてきた潤滑液に含まれていた気泡は、スラスト微小間隙に押し出される。スラスト微小間隙にたどり着いた気泡は、スラスト動圧軸受の作用によって環状間隙33に向けて排出される。ここで、潤滑液は連通路12に戻るが、気泡は剪断流速の差によって環状間隙を外側に向けて押し出され、シール間隙へと排出される。また、潤滑液の循環は、軸受面の接触等によって生ずる磨耗粉の排出も容易にする。
【0075】
図7(b)は、図7(a)の点線で囲った部分の拡大図である。図6に示した実施例2と同様に、フランジ面は外側に向けて傾斜している。この例において、g1、g2、g3、w1、及び、d1の値は、実施例2とほぼ同一である。また、フランジ面内周縁の半径r2も同一であるが、外周縁の半径r3は3.25mmである。実施例2よりもr3が小さくなるため、r2/g2の値とr3/g3の値の差は、更に大きくなる。
【0076】
本実施例においては、スラストプレート35がシャフトの抜け留めとして作用する。このため、フランジ面の裏側で抜け留めを構成する必要が無く、フランジ面の外形を小さくする事ができる。無論、本実施例においても、オイルバッファとしての機能を更に高めるために、フランジ面の径を大きくとる事は自由である。
【実施例4】
【0077】
図8は、図7に示した他の実施例1の変形例に当たる流体動圧軸受装置を示している。この実施例においては、スリーブとハウジングは別体ではなく、一つの部材10bから構成されている。連通路12は、この一体のスリーブ10bに、軸方向に貫通する孔を開けて形成されている。固定部側のスラスト軸受面15とフランジ面16bは、共に、スリーブ10bの一端面である。この例では、スラスト軸受面15側にスラスト動圧発生溝19が形成されている一方、フランジ面側には、掻き込み溝などの溝構造はない。
【0078】
一方で、ハブ部のスラスト軸受面13と、環状面14bは、同一面上にはない。環状面14bは上に向って傾いており、これによって環状間隙33の大きさは、外周側ほど大きくなっている。この実施例において、g1、g2、g3、w1、及び、d1は、実施例3とほぼ同一である。
【0079】
なお、ラジアル動圧軸受の内、上側に配置された17bは、下側に向けて潤滑液の圧力を高めるように構成されている。このため、潤滑液は、ラジアル軸受間隙を下に向い、次いで、連通路12を通って環状間隙33に戻る経路で、流体動圧軸受装置内を循環する。この循環方向は、図7の動圧軸受装置とは、逆方向になるが、気泡や磨耗粉の排出の効果が得られる点では同一である。
【0080】
この実施例の流体動圧軸受装置は、ハウジングを別部材として用意する必要がない為、軸受の部品点数を減らす事が出来る。
【実施例5】
【0081】
図9は、本発明に属する他の実施例2を示す。軸受間隙を満たす潤滑液は、二つのラジアル動圧軸受の間で、環状の空隙部34によって分断されている。分断された潤滑液の上側は、ラジアル微小間隙30b、スラスト微小間隙31、環状間隙33を連続して満たしている。環状空隙部34とスリーブ側面は、連通路12bによって繋がっているが、ここは潤滑液では満たされていない。軸受製造の際に、この連通路12bを通して、潤滑液を軸受に注入する事ができる。
【0082】
スラスト微小間隙の大きさg1、環状間隙の大きさg2、スラスト動圧発生溝の深さd1は、共に、実施例2と同一の値に設定されており、本発明の条件を満足する。
【0083】
この動圧軸受装置は、これまでに説明した他の実施例の軸受装置と同じく、スラスト動圧軸受が内周寄りにあって周速が小さいため、軸受損失が小さい。また、シール間隙24に加えて、環状間隙部分がオイルバッファとして機能するため、潤滑液の枯渇が起きにくい。
【実施例6】
【0084】
図10は、本発明に属する1インチハードディスクドライブの模式図である。本発明のスピンドルモータ1bを搭載しており、磁気ディスク72を回転駆動する。
【0085】
本発明の流体動圧軸受装置は、スラスト動圧軸受が比較的内周よりの位置に形成されており、スラスト方向の支持力は必ずしも強くはない。しかし、このような小型の磁気ディスクを駆動する場合は、ロータ部分が軽くなるため、必ずしも大きなスラスト支持力は必要ない。むしろ、軸損を低減できる本発明の構造は、消費電力を低減できるという利点がある。1インチハードディスクのような超小型のハードディスクは、モバイル用途に使用される事が多い為、スピンドルモータの消費電力が小さいことは、大きなメリットとなる。
【0086】
なお、上記した1から6の実施例で紹介されている流体動圧軸受装置のうち、スリーブをハウジングに内挿する構成を有するものは、スリーブを焼結金属などの、多孔質体で構成する事ができる。通常の金属材料でスリーブを作る場合に比べて、コストを低減できるだけでなく、多孔質部分が微細な磨耗紛を捉えるため、磨耗粉に起因するトラブルが一層生じにくくなる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る軸受及びスピンドルモータは、ハードディスクドライブ以外にも、ポリゴンスキャナ、更には、DVDドライブなどのリムーバブルメディアを回転駆動させる用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明例のスピンドルモータの断面図
【図2】本発明例の流体動圧軸受装置の説明図
【図3】スラスト動圧発生溝の他の例
【図4】本発明例の流体動圧軸受装置の拡大説明図
【図5】間隙の大きさの説明図
【図6】本発明例の流体動圧軸受装置の変形例1
【図7】本発明例の流体動圧軸受装置の他の実施例1
【図8】図7の実施例の変形例
【図9】本発明例の流体動圧軸受装置の他の実施例2
【図10】本発明例のハードディスクドライブ
【符号の説明】
【0089】
1、1b スピンドルモータ
2、2b 流体動圧軸受装置
3 ハブ部
4 固定部
5 ベースプレート
6 ロータ
7 ステータ
8 ロータマグネット
9 シャフト
10、10b スリーブ
11 ハウジング
12、12b 連通路
13 ハブ部のスラスト軸受面
14、14b 環状面
15 固定部のスラスト軸受面
16、16b フランジ面
17、17b、18 ラジアル動圧軸受
19、20 スラスト動圧軸受
21 掻き込み溝
22 円筒周壁
23、23b 抜け留め部材
24 シール間隙
25、25b スラスト動圧発生溝
26 潤滑液
27 潤滑液/大気界面
30、30b ラジアル微小間隙
31、32 スラスト微小間隙
33 環状間隙
34 環状空隙部
35 スラストプレート
36 カバー部材
40 フランジ部
g1 スラスト微小間隙の大きさ
g2、g3 環状間隙の大きさ
r2、r3 環状間隙部までの軸受中心からの距離
d1 スラスト動圧発生溝の深さ
d2 掻き込み溝の深さ
w1 フランジ面外周縁と円筒周壁の間の間隔
w2 シール間隙基部の間隔
72 磁気ディスク
73 磁気ヘッド
74 アーム
75 アクチュエータ
76 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
シャフトの一端部から半径方向外方に広がるスラスト軸受面、及び、該スラスト軸受面に対して更に半径方向外方に広がる環状面、及び、前記シャフトを囲み他端側に延長する周壁面を有し、シャフトの一端部に固定されてシャフトと一体に回転する、ハブ部と、
円筒型の内周面を有する穴部を有し、該穴部には前記シャフトが回転自在に挿通され、該穴部の一端側における開口部を囲んで形成されたスラスト軸受面と、該スラスト軸受面の外周側において前記環状面と対向するフランジ面を有する、固定部と、
前記ハブ部のスラスト軸受面及び前記固定部のスラスト軸受面の、何れか一方或は両方に形成されたスラスト動圧発生溝と、
前記シャフトの外周面及び前記穴部の内周面の何れか一方或は両方に形成されたラジアル動圧発生溝と、
前記ハブ部のスラスト軸受面とこれに対向する前記固定部のスラスト軸受面、との間に確保されたスラスト微小間隙と、
前記シャフトの外周面とこれに対向する前記穴部の内周面、との間に確保され、その一端において前記スラスト微小間隙に接続する、ラジアル微小間隙と、
前記フランジ面と前記環状面との間に定格回転時において確保され、その内周縁において前記スラスト微小間隙の外周縁に接続し、前記スラスト微小間隙の大きさに前記スラスト動圧発生溝の平均的な深さを加えて得られる間隙よりも大きな間隙を有する、環状間隙と、
前記固定部の外周面とこれに対向する前記周壁面との間に形成され、前記環状間隙の外周部に接続するシール間隙と、
前記スラスト微小間隙、及び、前記ラジアル微小間隙、及び、前記環状間隙を、実質的に途切れる箇所無く満たし、更に、前記シール間隙の少なくとも一部を満たす、潤滑液と、
前記スラスト微小間隙、及び、該間隙に保持される前記潤滑液、及び、該潤滑液に動圧を発生させる前記スラスト動圧発生溝、からなるスラスト動圧軸受と、
前記ラジアル微小間隙、及び、該間隙に保持される前記潤滑液、及び、該潤滑液に動圧を発生させる前記ラジアル動圧発生溝、からなるラジアル動圧軸受と、
からなる、流体動圧軸受装置。
【請求項2】
前記フランジ面及び前記環状面の何れか一方或は両方に形成され、前記ハブと前記固定部が相対的に回転する際に、前記環状間隙に保持された前記オイルに対して、半径方向内方に向かう流れを生ずる、掻き込み溝を有する、
請求項1に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項3】
前記固定部に形成されており、前記ラジアル微小間隙の他端側と前記スラスト微小間隙の外周部とを連通し、その内部は前記潤滑液によって実質的に連続して満たされている、連通路を有する、
請求項1又は2に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項4】
前記固定部は、
他端側が閉塞された有底の孔部を有し、該孔部の一端側開口の周囲に前記フランジ面を有する、ハウジングと、
前記穴部を有し、該穴部の一端側開口の周囲に前記スラスト軸受面を有し、前記ハウジングの前記有底の孔部内周側に嵌合される、スリーブと、
から構成され、
前記連通路は、
前記スリーブの外周面、及び/又は、前記ハウジングの内周面に形成され、該スリーブが該ハウジング内周に嵌合される事で開放側が閉塞されて、該スリーブの一端側と他端側を連通する貫通孔となる、連絡溝と、
前記スリーブの他端面と前記ハウジングの内周側閉塞面との間に確保され、前記ラジアル微小間隙の他端側及び前記貫通孔の他端と連通した、他端部間隙と、
から構成されている、
請求項3に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項5】
軸受の一端側において前記固定部の外周面は、半径方向外方に拡大した、膨大部と、
その内周縁が前記膨大部の外周縁よりも内周側に位置し、該内周縁は前記膨大部の外周縁に対して軸方向他端側に位置し、前記ハブ部に固定された、前記膨大部に係合して抜け留めを構成する、環状の抜け留め部材と、
を有し、かつ、
該抜け留め部材の内周縁における一端側端面と前記膨大部外周縁の他端側端面との間には、流体動圧軸受装置の軸方向遊びに相当する間隙が確保されている、
請求項1乃至4に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項6】
前記シール間隙を構成する周壁面の少なくとも一部は、円筒形若しくは円錐形の内周面を有する前記抜け留め部材の内周面によって構成され、
該内周面とこれに半径方向に対向する固定部外周面の間の間隙は、前記環状間隙から離間するに従って拡大し、前記潤滑液の界面が位置する、テーパシール部を構成する、
請求項5に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項7】
前記環状間隙の少なくとも一部は、軸受の中心側から外周側に向かって離れるに従って間隔が拡大している、
事を特徴とする請求項1乃至6に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項8】
前記環状間隙は、流体動圧軸受装置の実使用状態において、前記シール間隙よりも小さい、
事を特徴とする請求項1乃至7に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項9】
前記ハブ部のスラスト軸受面と前記環状面は、軸方向に異なった位置に形成されている、
事を特徴とする請求項1乃至8に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項10】
前記スラスト動圧軸受は、前記シャフトと前記固定部が相対的に回転する際に、該スラスト動圧軸受の半径方向外側に対して半径方向内側における前記潤滑液の圧力が高まるように構成されている、
事を特徴とする請求項1乃至9に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項11】
前記スラスト動圧軸受は
前記シャフトと前記固定部が相対的に回転する際に、軸受中心に向けて前記潤滑液の圧力を高めるよう構成されたスラスト動圧発生溝が、軸受中心を取り囲んで配置された、第一の領域と、
前記シャフトと前記固定部が相対的に回転する際に、軸受中心から遠ざかる方向に前記潤滑液の圧力を高めるよう構成されたスラスト動圧発生溝が、前記第一の領域の内周側に、軸受中心を取り囲んで配置された、第二の領域と、
からなる、
事を特徴とする請求項1乃至10に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項12】
前記流体動圧軸受装置は、
前記ラジアル動圧軸受を前記シャフトの延長方向に沿った2ヶ所に有し、
該二つのラジアル動圧軸受の内の少なくとも一方は、他方に向けて、該ラジアル動圧軸受を構成する前記潤滑液の圧力を高めるように構成されている、
事を特徴とする請求項1乃至11に記載の流体動圧軸受装置。
【請求項13】
前記スリーブの少なくとも一部は、オイルを含浸した多孔質体から構成されている、
請求項1乃至12に記載の流体動圧軸受装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至13に記載された流体動圧軸受装置を搭載する事を特徴とする、
スピンドルモータ。
【請求項15】
請求項14に記載されたスピンドルモータを備え、
直径1.8インチ以下の大きさの磁気記録ディスクをただ1枚のみ搭載する、
事を特徴とする、ハードディスクドライブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−77872(P2006−77872A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261975(P2004−261975)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】