説明

流体吐出装置

【課題】流体吐出装置のスループットを低下させることなく、受け部材が受けた流体を適切に除去する。
【解決手段】流体を媒体に吐出するためのノズルと、該媒体を保持するための保持領域と非保持領域とを周面に備え、該周面を前記ノズルに対向させながら回転する回転体であって、前記非保持領域が前記ノズルに対向した際にフラッシングのために該ノズルから吐出される流体、を受けるための受け部材と、該受け部材が受けた流体を該受け部材から除去するための除去部材と、を備えた回転体と、を有する流体吐出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体吐出装置に関する。特に、流体を媒体に吐出するノズルと、該媒体を保持するための保持領域と非保持領域とを周面に備え、該周面を前記ノズルに対向させながら回転する回転体、を有する流体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を媒体に吐出するためのノズルと、媒体を保持するための保持領域と非保持領域とを周面に備え、該周面を前記ノズルに対向させながら回転する回転体と、を有する流体吐出装置は既に知られている。また、流体吐出装置の中には、前記回転体に、前記非保持領域が前記ノズルに対向する際にフラッシングのために該ノズルから吐出される流体を受けるための受け部材、が備えられたものがある。さらに、前記受け部材が受けた流体を該受け部材から除去するための除去部材、を有するものもある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−8406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記受け部材が受けた流体は、前記除去部材により適切に除去される必要がある。かかる理由により、従来の流体吐出装置では、前記除去部材が前記受け部材から該受け部材が受けた流体を除去する際に、前記回転体の回転を停止させることがあった。
しかし、前記回転体の回転を停止させてしまうと、流体吐出装置のスループットを低下させてしまう虞がある。
【0004】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、流体吐出装置のスループットを低下させることなく、受け部材が受けた流体を適切に除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、主たる発明は、流体を媒体に吐出するためのノズルと、該媒体を保持するための保持領域と非保持領域とを周面に備え、該周面を前記ノズルに対向させながら回転する回転体であって、前記非保持領域が前記ノズルに対向した際にフラッシングのために該ノズルから吐出される流体、を受けるための受け部材と、該受け部材が受けた流体を該受け部材から除去するための除去部材と、を備えた回転体と、を有することを特徴とする流体吐出装置である。
【0006】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により少なくとも次のことが明らかにされる。
【0008】
先ず、流体を媒体に吐出するためのノズルと、該媒体を保持するための保持領域と非保持領域とを周面に備え、該周面を前記ノズルに対向させながら回転する回転体であって、前記非保持領域が前記ノズルに対向した際にフラッシングのために該ノズルから吐出される流体、を受けるための受け部材と、該受け部材が受けた流体を該受け部材から除去するための除去部材と、を備えた回転体と、を有する流体吐出装置。
かかる流体吐出装置では、受け部材及び除去部材の双方が回転体に備えられているため、該回転体の回転を停止させることなく、前記除去部材が前記受け部材から該受け部材が受けた流体を適切に除去する。つまり、流体吐出装置のスループットを低下させることなく、受け部材が受けた流体を適切に除去することが可能になる。
【0009】
また、上記の流体吐出装置において、前記回転体は、前記非保持領域に開口が形成された回転ドラムであり、前記受け部材は、前記回転ドラムの内部において2つのローラの間に張架された状態で回転しながら、フラッシングのために前記ノズルから吐出され、前記開口を通過する流体、を外周面にて受けるベルトであり、前記除去部材は、回転する前記ベルトの前記外周面に当接することにより、前記ベルトが受けた流体を掻き取る掻き取り部材であることとしてもよい。
かかる流体吐出装置であれば、例えば、複数回のフラッシングが行われ、該フラッシングのためにノズルから吐出する流体が大量に発生する場合であっても、ベルトが該流体を適切に受け、掻き取り部材が該流体を前記ベルトから適切に除去する。
【0010】
また、上記の流体吐出装置において、流体は紫外線硬化型インクであり、前記回転ドラムの回転方向において前記ノズルよりも下流側に位置する位置で該回転ドラムの周面に対向し、媒体に付着した紫外線硬化型インクに紫外線を照射するための照射部、を有し、前記ベルトは、前記回転ドラムの回転に伴い、前記開口を介して前記ノズルに対向する位置、から、前記開口を介して前記照射部に対向する位置、に移動し、前記ベルトが前記ノズルに対向する位置に位置するときに受けた紫外線硬化型インクに、該ベルトが前記照射部に対向する位置に移動した際に前記照射部が紫外線を照射し、該紫外線が照射された前記紫外線硬化型インクを前記掻き取り部材が掻き取ることとしてもよい。
紫外線硬化型インクは、硬化するほど掻き取り易くなるため、上記の構成の流体吐出装置であれば、ベルトが受けた紫外線硬化型インクを容易に除去することが可能になる。
【0011】
また、上記の流体吐出装置において、前記ベルトの外周面は、該ベルトが回転することにより、該外周面が前記開口により露出する露出位置と露出しない非露出位置との間を移動し、前記ベルトが紫外線硬化型インクを受けた際に該紫外線硬化型インクが付着した外周面が、前記ベルトの回転により前記露出位置から前記非露出位置へ移動してから、前記掻き取り部材が該外周面に付着した前記紫外線硬化型インクを掻き取ることとしてもよい。
かかる流体吐出装置であれば、紫外線硬化型インクに紫外線を照射する時間を長く確保することが可能になる。この結果、ベルトが受けた紫外線硬化型インクはより硬化するため、該紫外線硬化型インクをより容易に除去することが可能になる。
【0012】
また、上記の流体吐出装置において、前記ベルトは、回転しながら、前記回転ドラムの回転に伴い、前記開口を介して前記ノズルに対向する位置、から、前記開口を介して前記照射部に対向する位置、に移動し、その後、該照射部に対向する位置を通り過ぎ、前記ベルト及び前記回転ドラムの回転速度の相対関係は、前記回転ドラムが一回転する間に前記ドラムが一回転未満の回転のみしかしない関係であることとしてもよい。
かかる流体吐出装置であれば、ベルトが受けた紫外線硬化型インクは、より硬化した状態で掻き取られるため、該紫外線硬化型インクをより一層容易に除去することが可能になる。
【0013】
また、上記の流体吐出装置において、前記ベルトが、少なくとも、前記回転ドラムの回転に伴い前記開口を介して前記照射部に対向し始めてから前記開口を介して該照射部に対向し終えるまでの間に、前記照射部は紫外線を照射しており、前記ベルトが前記照射部に対向し終えた際に、前記ベルトが紫外線硬化型インクを受けた際に該紫外線硬化型インクが付着した外周面は、前記露出位置に位置したままであり、前記非露出位置には至っていないこととしてもよい。
かかる流体吐出装置であれば、ベルトが受けた紫外線硬化型インクは、さらに硬化した状態で掻き取られるため、該紫外線硬化型インクをさらに容易に除去することが可能になる。
【0014】
また、上記の流体吐出装置において、前記掻き取り部材は、前記ベルトの前記外周面から離間した待機位置と、該外周面に当接するための当接位置と、の間を移動し、前記ベルトは、フラッシング毎に、前記回転ドラムの回転に伴って前記開口を介して前記ノズルに対向する位置に移動するとともに、前記掻き取り部材が前記待機位置に位置する間に、あるフラッシング時に前記ベルトが前記開口を介して前記ノズルに対向する位置に位置した際に前記露出位置に位置する第一外周面、にて紫外線硬化型インクを受けてから、前記第一外周面と重なった、前記あるフラッシング後のフラッシング時に前記ベルトが前記開口を介して前記ノズルに対向する位置に位置した際に前記露出位置に位置する第二外周面、にて紫外線硬化型インクを受け、前記第一外周面及び前記第二外周面の双方に紫外線硬化型インクが付着してから、前記掻き取り部材が前記待機位置から前記当接位置まで移動して、該双方に付着した前記紫外線硬化型インクを掻き取ることとしてもよい。
かかる流体吐出装置であれば、ベルトが受けた紫外線硬化型インクは、さらに硬化した状態で掻き取られるため、該紫外線硬化型インクをさらに容易に除去することが可能になる。
【0015】
また、上記の流体吐出装置において、前記ベルトを回転させるために、前記回転ドラムから前記2つのローラのうちの一方のローラに駆動力を伝達する伝達機構、を有することとしてもよい。かかる流体吐出装置であれば、例えば、前記一方のローラを回転させるための駆動源を別途設ける必要がなく、流体吐出装置の小型化を図ることが可能になる。
【0016】
また、上記の流体吐出装置において、前記ベルトは、撥水材料からなるベルトであり、該ベルトの前記外周面にシリコーンオイルが塗布されていることとしてもよい。かかる流体吐出装置であれば、ベルトが受けた紫外線硬化型インクが、硬化しても該ベルトの外周面には固着し難くなるため、掻き取り易くなる。
【0017】
また、上記の流体吐出装置において、前記ベルト及び前記掻き取り部材は、回転ドラム本体に対して着脱可能であることとしてもよい。かかる流体吐出装置であれば、ベルトや掻き取り部材が劣化した場合にも、新品と交換して対応することが可能である。
【0018】
===プリンタについて===
以下、本発明に係る流体吐出装置として、インクジェットプリンタ(以下、プリンタ10と言う)を例に挙げて説明する。
【0019】
<<プリンタの構成例>>
先ず、図1及び図2を参照しながら、プリンタ10の構成例について説明する。
図1は、プリンタ10の構造を模式的に示す斜視図である。なお、図1には、プリンタ10の上下方向と、ヘッド31の移動方向(走査方向)が矢印にて示されている。図2は、回転ドラム20及びその周辺機器の構造を示す断面図である。図2は、その法線方向が回転ドラム20の回転軸21の軸方向と一致する断面を示している。
【0020】
本実施形態のプリンタ10は、不図示のホストコンピュータから印刷データを受信すると、該印刷データに基づき、流体の一例としての紫外線硬化型インク(以下、UVインク)を、媒体の一例としての紙に吐出して該紙に画像を印刷する装置である。なお、本実施形態のUVインクには、ラジカル補足能力を有してラジカル重合を阻害する化合物(所謂重合禁止剤)が添加されている。
【0021】
プリンタ10は、図1に示すように、回転ドラム20と、ヘッド部30と、照射部としてのUV照射部40とを有する。
回転ドラム20は、その周面22に紙を保持した状態で、回転軸21を中心に回転する回転体である。回転軸21は、図1に示すように、対面して直立した一対のフレーム12によって回転可能に支持されており、不図示の駆動モータからの駆動力が伝達されると回転する。これにより、回転ドラム20が回転軸21を中心にして、図1中、矢印にて示す方向に回転する。
【0022】
本実施形態では、図2に示すように、回転ドラム20の周面22に、紙を保持するための保持領域22aと、紙を保持しない非保持領域22bと、が備えられている。さらに、回転ドラム20の内部には、ベルトの一例としてのインク受けベルト200と、掻き取り部材の一例としてのスクレーパ220と、が備えられている。なお、インク受けベルト200及びスクレーパ220については後述する。
【0023】
ヘッド部30は、回転ドラム20の周面22(より正確には保持領域22a)に保持された紙にUVインクを吐出するためのものである。このヘッド部30は、図2に示すように、ヘッド31と、該ヘッド31を搭載するヘッドキャリッジ32と、を有する。
【0024】
ヘッド31は、回転ドラム20の周面22と対向し、ノズルが形成されたノズル面31aを有する。換言すると、回転ドラム20は、その周面22をノズルに対向させながら回転する。ノズルは、回転ドラム20の周面22に保持された紙にUVインクを吐出するためのノズルである。ヘッドキャリッジ32は、回転ドラム20の回転軸21に沿うガイド軸51、52に支持されており、ガイド軸51、52に沿って往復移動する。このため、ヘッド31は、ヘッドキャリッジ32の移動により、ガイド軸51、52の軸方向に沿って往復移動可能となる。なお、図2に示すように、ヘッドキャリッジ32には、UVインクを収容するインクカートリッジ33が着脱可能に取り付けられている。
【0025】
UV照射部40は、紙に付着したUVインクに紫外線を照射するためのものである。このUV照射部40は、回転ドラム20の回転方向においてヘッド部30よりも下流側に位置する(すなわち、前記ノズルよりも下流側に位置する)。また、UV照射部40は、回転ドラム20の回転方向に沿って整列された複数のランプユニット41と、当該複数のランプユニット41を搭載する照射部キャリッジ42と、を有する。
【0026】
複数のランプユニット41の各々には、回転ドラム20の周面22と対向する照射面が備えられている。そして、複数のランプユニット41の各々は、不図示の光源から発せられる紫外線を、前記照射面から回転ドラム20の周面22に向けて照射する。照射部キャリッジ42は、回転ドラム20の回転軸21に沿うガイド軸53、54に支持されており、ガイド軸53、54に沿って移動する。このため、複数のランプユニット41は、照射部キャリッジ42の移動により、ガイド軸53、54の軸方向に沿って移動する。
【0027】
<<ノズルについて>>
次に、図3及び図4を参照しながら、ヘッド31のノズル面31aに形成されたノズルについて説明する。図3は、ヘッド部30の斜視図である。図4は、ノズル面31aを示した図であり、ヘッド部30を、図3中、矢印にて示す方向から見た図である。なお、図3及び図4には、ヘッド31の走査方向が示されている。
【0028】
本実施形態のヘッド部30には、図3に示すように、複数のヘッド31(本実施形態では、5つのヘッド31)が、走査方向に並んだ状態で備えられている。これらのヘッド31の各々は、互いに種類が異なるUVインクを吐出する。具体的に説明すると、ブラック色のUVインクを吐出するヘッド31と、シアン色のUVインクを吐出するヘッド31と、マゼンタ色のUVインクを吐出するヘッド31と、イエロー色のUVインクを吐出するヘッド31と、ホワイト色のUVインクを吐出するヘッド31と、が備えられている。
【0029】
ヘッド31のノズル面31aには、図4に示すように、走査方向に沿って一定の間隔で整列した複数のノズルが形成されている。各ノズルには、インクチャンバー及びピエゾ素子(インクチャンバー及びピエゾ素子ともに不図示)が設けられており、ピエゾ素子の駆動によってインクチャンバーが伸縮・膨張することにより、ノズルからUVインクが滴状に吐出される。
【0030】
<<UV照射部について>>
次に、図5を参照しながら、UV照射部40について説明する。図5は、UV照射部40の斜視図である。なお、図5には、矢印にて、ヘッド31の走査方向に相当する方向(図5中、単に走査方向と示す)が示されている。
【0031】
本実施形態のUV照射部40には、回転ドラム20の回転方向に沿って整列された複数のランプユニット41(以下、ランプユニット列とも言う)が、ヘッド31の数に対応して複数備えられている。すなわち、本実施形態では、ブラック色のUVインク用のランプユニット列と、シアン色のUVインク用のランプユニット列と、マゼンタ色のUVインク用のランプユニット列と、イエロー色のUVインク用のランプユニット列と、ホワイト色のUVインク用のランプユニット列が備えられている。これらのランプユニット列は、図5に示すように、ヘッド31の走査方向に相当する方向に沿って並んだ状態で、共通のホルダー43に装着されている。
【0032】
以上のように、ランプユニット列がUVインクの種類毎に備えられているため、ランプユニット41から照射される紫外線の波長及び照射強度を、対応するUVインクの種類毎に設定することが可能である。なお、ランプユニット41が備える光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等が使用可能である。
【0033】
また、本実施形態では、各ランプユニット41の照射面の幅(ヘッド31の走査方向に相当する方向における長さ)が、各ヘッド31のノズル面31aの幅(走査方向における長さ)よりも長くなっている。
【0034】
<<制御ユニットの構成>>
次に、図6を参照しながら、制御ユニット100の構成について説明する。図6は、プリンタ10の制御ユニット100を示すブロック図である。
制御ユニット100のメインコントローラ101は、図6に示すように、ホストコンピュータと接続するためのインターフェイス102(図6中、I/Fと表記)と、ホストコンピュータから入力された画像信号を記憶するための画像メモリ103と、を備えている。
サブコントローラ104は、図6に示すように、プリンタ装置本体の各部(回転ドラム20、ヘッド部30、UV照射部40など)と電気的に接続されている。そして、当該各部が備えるセンサからの信号を受信することによって、当該各部の状態を検出しつつ、メインコントローラ101から入力される信号に基づいて当該各部を制御する。
【0035】
<<プリンタの動作>>
次に、以上のように構成されたプリンタ10の動作例について説明する。
先ず、ホストコンピュータからの画像信号がインターフェイス102を介してプリンタ10のメインコントローラ101に入力されると、このメインコントローラ101からの指令に基づいて、サブコントローラ104がプリンタ装置本体の各部を制御する。これにより、回転ドラム20が回転し、UV照射部40のランプユニット41が紫外線を照射する。
【0036】
一方、給紙部60から供給された紙が、回転ドラム20まで搬送され、該紙の紙幅方向が回転ドラム20の回転軸21に沿うように該回転ドラム20に巻きつけられる。そして、紙は、回転ドラム20の周面22の保持領域22aに設けられた保持機構(不図示)により、該保持領域22a上に保持される。
【0037】
紙が回転ドラム20の周面22に保持されて該回転ドラム20とともに回転するようになると、各ヘッド31のノズルからUVインクが吐出される。そして、紙の、ヘッド31のノズル面31aに対向する位置に至る部分に、UVインクが着弾する。このとき、紙が回転しているため、紙のヘッド31のノズル面31aに対向する位置に至る部分は、紙幅方向と交差する方向において変化する。この結果、紙には、紙幅方向と交差する方向に沿ったドットラインが形成される。
【0038】
また、紙の回転により、紙の、UVインクが付着した部分がランプユニット41の照射面に対向する位置に移動すると、ランプユニット41が、該UVインクに紫外線を照射する。これにより、ノズルから吐出されたUVインクは、紙に付着すると即座に紫外線が照射されて硬化する。そして、紙に形成されたドットラインが紙に定着する。
【0039】
なお、ランプユニット41がUVインクの種類毎に備えられているため、紙に付着したUVインクは、その種類に対応したランプユニット41からの紫外線を受けることとなる。
【0040】
また、本実施形態では、回転ドラム20の回転方向に沿って複数のランプユニット41が配置されているため、該紙に付着したUVインクに十分に紫外線を照射することが可能である。
【0041】
紙が更に回転して、紙の、既にUVインクが付着した部分が、再びノズルと対向する位置に至ると、各ヘッド31が走査方向に移動する。その後、上記と同様の動作が実行される。この結果、既に紙に硬化して付着しているUVインクに、該UVインクとは異なる色のUVインクを重ねて付着することとなる。したがって、未硬化のUVインクに他の色のUVインクが混ざり合うことが防止される。
【0042】
また、各ヘッド31が走査方向に移動することに伴い、各ランプユニット41も走査方向に移動する。これにより、各ヘッド31が移動した後にも、各ランプユニット41が、当該各ランプユニット41に対応した種類のUVインクに紫外線を照射するようになる。なお、各ランプユニット41の照射面の幅が、各ヘッド31のノズル面31aの幅よりも長いため、ヘッド31及びランプユニット41が移動するタイミングが多少ずれた場合であっても、紙に付着したUVインクに十分に紫外線を照射することが可能である。
【0043】
以上のような動作が繰り返し実行される結果、紙の画像印刷領域全域に亘って各色のドットラインが定着する。これにより、最終的に紙に画像が印刷される。そして、画像が印刷された紙は、回転ドラム20から剥離されて、排紙部62に搬送される。
【0044】
<<フラッシングについて>>
ヘッド31のノズル面31aに形成されたノズルの中に、UVインクを長時間吐出していないノズルがある場合、該ノズル近傍のUVインクの粘度が溶媒の蒸発によって上昇してしまう。このようなUVインクの粘度上昇が生じる結果、UVインクを長時間吐出していないノズルにおいて目詰まりが発生し、適切にUVインクを吐出することができなくなってしまう。このため、本実施形態のプリンタ10では、UVインクを長時間吐出しないノズルがある場合には、該ノズルからUVインクを強制的に吐出して該ノズルの目詰まりを解消するための動作(所謂フラッシング動作)が実施される。
【0045】
このフラッシング動作は、回転ドラム20が回転している期間中、ヘッド31のノズルが回転ドラム20の周面22の非保持領域22bに対向する際に実施される。すなわち、フラッシング動作は、回転ドラム20の周面22の保持領域22aにUVインクが付着しないように実施される。このため、本実施形態では、フラッシング動作が、保持領域22a上に紙が保持されている期間中(すなわち、印刷処理中)にも実施可能である。
【0046】
そして、フラッシングのためにノズルから吐出されたUVインク(以下、廃インクとも言う)は、回転ドラム20の内部に備えられたインク受けベルト200により受けられた後、同じく回転ドラム20の内部に備えられたスクレーパ220により掻き取られて、前記インク受けベルト200から除去される。以下、インク受けベルト200及びスクレーパ220について説明しつつ、廃インクを除去する手順について説明する。
【0047】
<<インク受けベルトとスクレーパについて>>
先ず、図7を参照しながら、インク受けベルト200及びスクレーパ220の構造について説明する。図7は、既出の図2のうち、インク受けベルト200及びスクレーパ220を拡大して示した図である。なお、図7には、説明の都合上、図2の断面に現れない部材(例えば、回転ドラム20の回転軸21、インク受けベルト200を張架する2つのローラ210、212の回転軸211、213、及び、プーリ214a、214b)が示されている。
【0048】
インク受けベルト200及びスクレーパ220は、図7に示すように、回転ドラム20の回転方向において、非保持領域22bが位置する部分に備えられている。より詳しく説明すると、前記非保持領域22bには開口23が形成されており、回転ドラム20の内部には、該開口23を介して回転ドラム20の外側と連通した収容部24が形成されている。この収容部24内に、インク受けベルト200とスクレーパ220とが収容されている。
【0049】
インク受けベルト200は、回転ドラム20の内部において2つのローラ210、212の間に張架された状態で回転するベルトであり、その外周面201にて廃インクを受ける。本実施形態のインク受けベルト200は、フッ素樹脂などの撥水材料からなるベルトであり、その外周面201にはシリコーンオイルが塗布されている。
【0050】
また、インク受けベルト200は、回転ドラム本体に対して着脱可能に取り付けられている。このため、インク受けベルト200が劣化した場合には、新品と交換することが可能になる。なお、回転ドラム本体とは、回転ドラム20のうち、インク受けベルト200及びスクレーパ220を除いた部分である。
【0051】
インク受けベルト200を張架するための2つのローラ210、212は、それぞれ、回転ドラム20の回転軸21に沿う回転軸211、213を有する。そして、前記2つのローラ210、212が回転軸211、213を中心に回転することにより、インク受けベルト200が、図7中、矢印にて示す方向に回転する。
【0052】
また、2つのローラ210、212のうちの一方のローラ210の回転軸211にはプーリ214bが軸支されている。このプーリ214bは、回転ドラム20の回転軸21に軸支されたプーリ214aと対をなし、駆動力伝達ベルト214cにて両プーリ214a、214bが連結している。すなわち、本実施形態では、インク受けベルト200を回転させるための伝達機構としてのベルト・プーリ機構が、回転ドラム20と前記一方のローラ210との間に設けられている。したがって、回転ドラム20が回転すると、ベルト・プーリ機構により回転ドラム20から前記一方のローラ210に駆動力が伝達する。この結果、該一方のローラ210が回転して、インク受けベルト200が回転するようになる。このように、本実施形態では、前記一方のローラ210を回転させるための駆動源を別途設けない結果、プリンタ10の小型化が図られている。
【0053】
スクレーパ220は、回転するインク受けベルト200の外周面201に当接することにより、該インク受けベルト200が受けた廃インクを掻き取る部材である。本実施形態のスクレーパ220は、ゴム等の弾性部材からなり、図7に示すように、前記開口23から見てインク受けベルト200の裏側にて該インク受けベルト200の外周面201に当接する。
【0054】
また、スクレーパ220は、インク受けベルト200と同様、回転ドラム本体に対して着脱可能に取り付けられているため、該スクレーパ220が劣化した場合には、新品と交換することが可能である。
【0055】
さらに、図7に示すように、スクレーパ220をインク受けベルト200側に付勢するための付勢機構222が備えられている。この付勢機構222がスクレーパ220を付勢するとき(つまり、付勢機構222が図7において実線にて示す位置にあるとき)、スクレーパ220の先端部はインク受けベルト200の外周面201に当接する。一方、付勢機構222がスクレーパ220を付勢しないとき(つまり、付勢機構222が図7において破線にて示す位置にあるとき)、スクレーパ220の先端部は前記外周面201から離間する。
【0056】
このように付勢機構222を制御することにより、スクレーパ220は、インク受けベルト200の外周面201から離間した待機位置と、該外周面201に当接するための当接位置と、の間を往復移動することが可能となる。なお、付勢機構222は、サブコントローラ104により制御される(図6参照)。
【0057】
<<廃インクの除去手順について>>
次に、図8A乃至図8Fを参照しながら、上記の構成の下で廃インクを除去する手順について説明する。図8A乃至図8Fは、廃インクの除去手順についての説明するための図である。そして、インク受けベルト200及びスクレーパ220の状態は、図8A、図8B、図8C、図8D、図8E、図8Fの順に遷移していく。
【0058】
廃インクを除去する処理は、図8Aに示すように、フラッシング動作が実行されるところから始まる。すなわち、回転ドラム20が回転することにより、該回転ドラム20の周面22のうち、非保持領域22bがヘッド31のノズルに対向する位置まで移動すると、該ノズルからUVインクが吐出される。このとき、回転ドラム20の回転に伴って、インク受けベルト200が、非保持領域22bに形成された開口23を介して前記ノズルに対向する位置まで移動する。
【0059】
この間、回転ドラム20からインク受けベルト200を張架するための一方のローラ210に駆動力が伝達される結果、インク受けベルト200自体も回転する。このため、インク受けベルト200の各外周面201が、該外周面201の回転方向に移動することになる。これにより、各外周面201は、開口23により露出する位置(露出位置)と、露出しない位置(非露出位置)との間を移動することになる。
【0060】
さらに、本実施形態では、インク受けベルト200の回転速度は、回転ドラム20の回転速度に比して十分小さい速度である。つまり、インク受けベルト200及び回転ドラム20の回転速度の相対関係は、該回転ドラム20が一回転する間に前記インク受けベルト200が一回転未満の回転のみしかしない関係となっている。なお、回転速度とは、単位時間当たりの回転数を意味する。
【0061】
そして、フラッシングのためにノズルから吐出されたUVインク(廃インク)が開口23を通過して収容部24内に進入すると、前記ノズルに対向する位置に位置するインク受けベルト200が、前記フラッシング時に露出位置に位置する外周面201にて廃インクを受けるようになる。この結果、当該外周面201には、図8Aに示すように、廃インクが付着する。
【0062】
その後、インク受けベルト200は、回転しながら、回転ドラム20の回転に伴い、開口23を介してノズルに対向する位置、から、UV照射部40に対向する位置(より正確には、ランプユニット41の照射面に対向する位置)に移動する。この間に、インク受けベルト200が廃インクを受けた際に該廃インクが付着した外周面201は、インク受けベルト200の回転により、該インク受けベルト200の回転方向に移動する。
【0063】
インク受けベルト200が開口23を介してUV照射部40に対向する際、図8Bに示すように、インク受けベルト200が廃インクを受けた際に該廃インクが付着した外周面201は、露出位置に位置したままであり、非露出位置には至っていない。
【0064】
そして、インク受けベルト200が開口23を介してUV照射部40に対向すると、UV照射部40が、該開口23を通じて、インク受けベルト200がノズルに対向する位置に位置するときに受けた廃インク、に紫外線を照射する。これにより、紫外線が照射された廃インクは硬化し始めるようになる。
【0065】
また、前述したように、回転ドラム20の回転方向に沿って複数のランプユニット41が配置されており、インク受けベルト200は、回転ドラム20の回転に伴って、開口23を介して当該複数のランプユニット41の各々の照射面に対向する。
【0066】
そして、本実施形態では、インク受けベルト200が、前記複数のランプユニット41のうち、最も上流側のランプユニット41の照射面に対向し始めてから、最も下流側のランプユニット41の照射面に対向し終えるまでの間、インク受けベルト200が廃インクを受けた際に該廃インクが付着した外周面201は、露出位置に位置し続ける。つまり、本実施形態では、インク受けベルト200がUV照射部40に対向し終えた際に、廃インクが付着した前記外周面201は、露出位置に位置したままであり、非露出位置には至っていない。
【0067】
一方、回転ドラム20が回転する期間中、UV照射部40(より正確には、前記複数のランプユニット41)は紫外線を照射し続けている。つまり、インク受けベルト200が、少なくとも、回転ドラム20の回転に伴って開口23を介してUV照射部40に対向し始めてから該UV照射部40に対向し終えるまでの間、該UV照射部40は紫外線を照射していることになる。
【0068】
したがって、図8B及び図8Cに示すように、インク受けベルト200が回転ドラム20の回転に伴って開口23を介してUV照射部40に対向し始めてから該UV照射部40に対向し終えるまでの間、該インク受けベルト200がノズルに対向する位置に位置するときに受けた廃インク、に紫外線が照射され続けることになる。
【0069】
その後、インク受けベルト200は、回転ドラム20の回転に伴い、開口23を介してUV照射部40に対向する位置を通り過ぎる。更に回転ドラム20が回転すると、インク受けベルト200は、再び、UV照射部40に対向する位置に移動する。この間、インク受けベルト200自体も回転しているため、インク受けベルト200が廃インクを受けた際に該廃インクが付着した外周面201も、該インク受けベルト200の回転方向に移動することになる。
【0070】
ここで、前述したように、インク受けベルト200及び回転ドラム20の回転速度の相対関係が、該回転ドラム20が一回転する間に前記インク受けベルト200が一回転未満の回転のみしかしない関係となっている。さらに、本実施形態では、インク受けベルト200が廃インクを受けた際に該廃インクが付着した外周面201、が露出位置に位置している期間に、インク受けベルト200が、回転ドラム20の回転に伴って、開口23を介してUV照射部40に対向する位置を複数回通過する。つまり、前記外周面201に付着した廃インクに紫外線を照射する回数は、該外周面201が露出位置に位置する間にインク受けベルト200が開口23を介してUV照射部40に対向する位置を通過する回数だけ確保されることになる。
【0071】
やがて、廃インクが付着した外周面201は、インク受けベルト200の回転により露出位置から非露出位置に移動するようになる。一方、前記外周面201に付着した廃インクは、上記のように紫外線を受け続ける結果、該廃インクが付着した外周面201上に硬化した状態で堆積する。
【0072】
そして、スクレーパ220が付勢機構222により付勢されて当接位置に位置している場合、廃インクが付着した外周面201は、非露出位置に移動してから、該スクレーパ220からの当接を受けるようになる。このとき、インク受けベルト200は、回転しながら、スクレーパ220からの当接を受ける。これにより、前記外周面201に付着した廃インクが、前記スクレーパ220により掻き取られ、該外周面201から剥離するようになる。そして、インク受けベルト200は、外周面201に付着していた廃インクが除去され、前記外周面201に廃インクが付着する前の状態に復帰する。前記外周面201から剥離した廃インクは、不図示の廃インク回収部に回収されて除去される。
【0073】
以上のように、本実施形態では、インク受けベルト200がノズルに対向する位置に位置するときに外周面201にて受けた廃インク、に紫外線を照射してから、該紫外線が照射された廃インクをスクレーパ220が掻き取って除去する。これは、廃インクであるUVインクは、紫外線を受けて硬化するほど、スクレーパ220により掻き取り易くなるためである。
【0074】
また、廃インクが付着した外周面201が露出位置から非露出位置に移動してから、スクレーパ220が前記廃インクを掻き取るため、該廃インクが付着した外周面201が露出位置に位置する間は、該廃インクに紫外線を照射し続けることが可能になる。特に、本実施形態では、インク受けベルト200が開口23を介してUV照射部40に対向し始めてから該UV照射部40に対向し終えるまでの間、廃インクが付着した外周面201が露出位置に位置したままになるため、該廃インクに紫外線が照射される時間がより長くなる。さらに、廃インクが付着した外周面201が露出位置に位置する間に、インク受けベルト200が、複数回、開口23を介してUV照射部40に対向する位置を通過するため、前記廃インクに紫外線を照射する時間がより一層長くなる。この結果、廃インクは、十分に硬化した状態で掻き取られるため、該廃インクをインク受けベルト200から除去し易くなる。
【0075】
また、前述したように、本実施形態のインク受けベルト200は、撥水材料からなり、その外周面201にはシリコーンオイルが塗布されている。このため、前記外周面201に付着した廃インクは、硬化しても該外周面201に固着し難くなる。この結果、外周面201に付着した廃インクは、スクレーパ220により掻き取られ易くなる。なお、シリコーンオイルに代えて、UVインクに対して撥水性を備える液体を前記外周面201に塗布した場合にも上記の効果と同様の効果を得ることが可能である。
【0076】
ところで、本実施形態において、スクレーパ220は、常に当接位置に位置するのではなく、待機位置と当接位置との間を往復移動する。そして、スクレーパ220が当接位置から待機位置へ移動してから再び当接位置に戻るまでの間に、複数回のフラッシング動作が実施される。つまり、本実施形態では、スクレーパ220が待機位置に位置する間に、インク受けベルト200が複数回のフラッシング動作の各々により発生する廃インク、を受ける。そして、インク受けベルト200が複数回のフラッシング動作の各々により発生する廃インク、を受けてから、スクレーパ220が待機位置から当接位置に移動して前記廃インクを掻き取る。したがって、本実施形態では、スクレーパ220は、複数回のフラッシング動作の各々により発生する廃インクをまとめて掻き取ることになる。
【0077】
上記の動作をより具体的に説明にするために、引き続き、本実施形態に係る廃インクの除去手順について説明する。
【0078】
スクレーパ220が当接位置から待機位置に移動して該待機位置に位置する間に、あるフラッシング動作(例えば、前記複数回のフラッシング動作のうち、最初のフラッシング動作)が実施されるとき、インク受けベルト200は、回転ドラム20の回転に伴って、開口23を介してノズルに対向する位置に移動する。そして、インク受けベルト200は、前記あるフラッシング動作時に開口23を介してノズルに対向する位置に位置した際に露出位置に位置する外周面201(以下、第一外周面201a)にて、あるフラッシング動作により発生する廃インクを受ける。当該廃インクは、第一外周面201aに付着した後、既述の手順により硬化して該第一外周面201a上に堆積する(図8B及び図8C参照)。
【0079】
その後、スクレーパ220が待機位置に位置したままの状態で、あるフラッシング動作後のフラッシング動作(例えば、前記複数回のフラッシング動作のうち、2回目のフラッシング動作であり、以下、後のフラッシング動作と言う)が実施されるとき、インク受けベルト200は、回転ドラム20の回転に伴って、開口23を介してノズルに対向する位置に再び移動する。そして、インク受けベルト200は、後のフラッシング動作時に開口23を介してノズルに対向する位置に位置した際に露出位置に位置する外周面201(以下、第二外周面201b)にて、後のフラッシング動作により発生する廃インクを受ける。
【0080】
ところで、あるフラッシング動作から後のフラッシング動作までの間に、インク受けベルト200は回転している。このため、前記あるフラッシング動作時に露出位置に位置する第一外周面201aと、前記後のフラッシング動作時に露出位置に位置する第二外周面201bとは、互いに異なる外周面201になり得る。
【0081】
一方、本実施形態では、第一外周面201aと第二外周面201bとが重なるように(本実施形態では、第一外周面201aの一部に第二外周面201bが重なるように)、あるフラッシング動作から後のフラッシング動作までの時間間隔を調整している。この結果、図8Dに示すように、あるフラッシング動作により発生した廃インクに、後のフラッシング動作により発生する廃インクが重ねられる。
【0082】
そして、後のフラッシング動作により発生する廃インクは、あるフラッシング動作により発生した廃インクに重ねられた状態で、第二外周面201bに付着し、硬化して該第二外周面201b上に堆積する。この結果、インク受けベルト200の外周面201(より正確には、第一外周面201aと第二外周面201bとが重なった部分)には、廃インクが積層状に堆積することになる。
【0083】
以降、スクレーパ220が待機位置に位置する間に、上記の一連の動作が繰り返し実施される。すなわち、スクレーパ220が待機位置に位置する間にフラッシング動作が複数回実施されると、インク受けベルト200は、フラッシング動作毎に、回転ドラム20の回転に伴って開口23を介してノズルに対向する位置に移動する。そして、インク受けベルト200は、各フラッシング動作時に開口23を介してノズルに対向する位置に位置した際に露出位置に位置する外周面201にて、当該各フラッシング動作により発生する廃インクを受けるようになる。
【0084】
以上のように、インク受けベルト200は、回転しながら、複数回のフラッシング動作の各々により発生する廃インクを受ける。この結果、インク受けベルト200の各外周面201に廃インクが堆積するようになる。一方、フラッシング動作間の時間間隔が調整される結果、図8Eに示すように、廃インクは積層状に堆積するようになる。
【0085】
そして、複数回のフラッシング動作の各々により発生する廃インクが各外周面201に付着した後、サブコントローラ104が付勢機構222にスクレーパ220を付勢させる。これにより、スクレーパ220は待機位置から当接位置まで移動する。つまり、本実施形態では、スクレーパ220が待機位置に位置する間に、第一外周面201a及び第二外周面201bの双方に廃インクが付着し、該双方に廃インクが付着した後にスクレーパ220が待機位置から当接位置に移動する。
【0086】
その後、各外周面201が、インク受けベルト200の回転により、スクレーパ220からの当接を受ける位置まで移動すると、図8Fに示すように、当該各外周面201上に積層状に堆積した廃インクがスクレーパ220により掻き取られ前記各外周面201から剥離する。つまり、本実施形態において、スクレーパ220は、第一外周面201a及び第二外周面201bの双方に廃インクが付着してから、該双方に付着した廃インクを掻き取ることになる。
【0087】
スクレーパ220が前記各外周面201に付着した廃インクを掻き取ると、サブコントローラ104が付勢機構222による付勢を解除し、スクレーパ220が当接位置から待機位置へ移動する。一方、外周面201に付着していた廃インクが除去される結果、インク受けベルト200は、廃インクを受ける前の状態に復帰して次のフラッシング動作により発生する廃インクを受けるために備える。
【0088】
===本実施形態のプリンタの有効性について===
本実施形態のプリンタ10では、フラッシングのためにノズルから吐出されるUVインク(すなわち、廃インク)を受けるためのインク受けベルト200と、該インク受けベルト200が受けた廃インクを該インク受けベルト200から除去するためのスクレーパ220と、が回転ドラム20に備えられている。このようなプリンタ10であれば、スループットを低下させることなく、前記インク受けベルト200が受けた廃インクを適切に除去することが可能になる。
【0089】
すなわち、『発明が解決しようとする課題』の項で説明したように、従来のプリンタでは、廃インクを受ける受け部材が受けた廃インクを除去部材により除去する際には、回転ドラム20の回転を停止させることがあった。
【0090】
具体的に説明すると、従来のプリンタでは、廃インクを受ける受け部材が回転ドラム20に備えられる一方で、該受け部材から廃インクを除去する除去部材がプリンタ本体(プリンタのうち、回転ドラム20を除いた部分)に備えられている場合があった。このようなプリンタでは、回転ドラム20の回転に伴って前記受け部材が前記除去部材に対向する位置に位置したときに限り、該除去部材が前記受け部材が受けた廃インクを除去することになる。そして、前記受け部材が受けた廃インクを十分に除去するために、前記受け部材と前記除去部材とが互いに対向した際に前記回転ドラム20の回転を停止させる場合があった。このように印刷処理中に回転ドラム20の回転を停止させてしまうと、当該印刷処理が中断するため、プリンタのスループットを低下させてしまうことになる。
【0091】
これに対し、本実施形態のプリンタ10では、受け部材としてのインク受けベルト200、及び、除去部材としてのスクレーパ220の双方が回転ドラム20の内部に備えられている。このため、回転ドラム20の内部において、スクレーパ220は、インク受けベルト200の外周面201に当接し、該インク受けベルト200が受けた廃インクを掻き取って除去する。
【0092】
したがって、スクレーパ220がインク受けベルト200から廃インクを除去する際に回転ドラムの回転を停止させる必要がなく、かつ、スクレーパ220をインク受けベルト200に当接させる時間も十分に確保することが可能である。この結果、プリンタ10のスループットを低下させることなく、インク受けベルト200が受けた廃インクを適切に除去することが可能になる。
【0093】
また、本実施形態では、インク受けベルト200が回転するため、該インク受けベルト200の各外周面201は、廃インクを付着させるための位置と、付着した廃インクをスクレーパ220に掻き取らせるための位置と、の間を循環することとなる。この結果、例えば、複数回のフラッシングが行われて廃インクが大量に発生する場合であっても、インク受けベルト200が前記各外周面201にて廃インクを適切に受け、スクレーパ220が前記各外周面201に付着した廃インクを適切に除去するようになる。
【0094】
===その他の実施形態===
以上、上記実施の形態に基づき、主として、流体吐出装置の一例であるプリンタについて説明したが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0095】
また、上記の実施形態では、流体の一例であるUVインクを吐出する流体吐出装置について説明したが、これに限られるものではない。UVインク以外の他の流体(UVインク以外のインク、インク以外の液体、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体、流体として流して吐出できる固体を含む)を吐出する装置に具体化することも可能である。
【0096】
例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料が分散または溶解した状態で含まれた液体を吐出する流体吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する流体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を吐出する流体吐出装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する流体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する流体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する流体吐出装置、ジェルを吐出する流体吐出装置、トナーなどの粉体を例とする固体を吐出する粉体吐出式記録装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体吐出装置に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】プリンタ10の構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】回転ドラム20と周辺機器の構造を示す断面図である。
【図3】ヘッド部30の斜視図である。
【図4】ノズル面31aを示した図である。
【図5】UV照射部40の斜視図である。
【図6】プリンタ10の制御ユニット100を示すブロック図である。
【図7】図2のうち、インク受けベルト200及びスクレーパ220を拡大して示した図である。
【図8A】廃インクの除去手順についての説明するための第一図である。
【図8B】廃インクの除去手順についての説明するための第二図である。
【図8C】廃インクの除去手順についての説明するための第三図である。
【図8D】廃インクの除去手順についての説明するための第四図である。
【図8E】廃インクの除去手順についての説明するための第五図である。
【図8F】廃インクの除去手順についての説明するための第六図である。
【符号の説明】
【0098】
10 プリンタ、12 フレーム、20 回転ドラム、21 回転軸、
22 周面、22a 保持領域、22b 非保持領域、23 開口、
24 収容部、30 ヘッド部、31 ヘッド、31a ノズル面、
32 ヘッドキャリッジ、33 インクカートリッジ、
40 UV照射部、41 ランプユニット、42 照射部キャリッジ、
43 ホルダー、51、52、53、54 ガイド軸、
60 給紙部、62 排紙部、
100 制御ユニット、101 メインコントローラ、
102 インターフェイス、103 画像メモリ、
104 サブコントローラ、200 インク受けベルト、
201 外周面、201a 第一外周面、201b 第二外周面、
210、212 ローラ、211、213 回転軸、
214a、214b プーリ、214c 駆動力伝達ベルト、
220 スクレーパ、222 付勢機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を媒体に吐出するためのノズルと、
該媒体を保持するための保持領域と非保持領域とを周面に備え、該周面を前記ノズルに対向させながら回転する回転体であって、
前記非保持領域が前記ノズルに対向した際にフラッシングのために該ノズルから吐出される流体、を受けるための受け部材と、該受け部材が受けた流体を該受け部材から除去するための除去部材と、を備えた回転体と、
を有することを特徴とする流体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体吐出装置において、
前記回転体は、前記非保持領域に開口が形成された回転ドラムであり、
前記受け部材は、
前記回転ドラムの内部において2つのローラの間に張架された状態で回転しながら、
フラッシングのために前記ノズルから吐出され、前記開口を通過する流体、
を外周面にて受けるベルトであり、
前記除去部材は、回転する前記ベルトの前記外周面に当接することにより、前記ベルトが受けた流体を掻き取る掻き取り部材であることを特徴とする流体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の流体吐出装置において、
流体は紫外線硬化型インクであり、
前記回転ドラムの回転方向において前記ノズルよりも下流側に位置する位置で該回転ドラムの周面に対向し、媒体に付着した紫外線硬化型インクに紫外線を照射するための照射部、を有し、
前記ベルトは、前記回転ドラムの回転に伴い、
前記開口を介して前記ノズルに対向する位置、から、前記開口を介して前記照射部に対向する位置、に移動し、
前記ベルトが前記ノズルに対向する位置に位置するときに受けた紫外線硬化型インクに、該ベルトが前記照射部に対向する位置に移動した際に前記照射部が紫外線を照射し、
該紫外線が照射された前記紫外線硬化型インクを前記掻き取り部材が掻き取ることを特徴とする流体吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の流体吐出装置において、
前記ベルトの外周面は、該ベルトが回転することにより、該外周面が前記開口により露出する露出位置と露出しない非露出位置との間を移動し、
前記ベルトが紫外線硬化型インクを受けた際に該紫外線硬化型インクが付着した外周面が、前記ベルトの回転により前記露出位置から前記非露出位置へ移動してから、前記掻き取り部材が該外周面に付着した前記紫外線硬化型インクを掻き取ることを特徴とする流体吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の流体吐出装置において、
前記ベルトは、回転しながら、
前記回転ドラムの回転に伴い、前記開口を介して前記ノズルに対向する位置、から、前記開口を介して前記照射部に対向する位置、に移動し、その後、該照射部に対向する位置を通り過ぎ、
前記ベルト及び前記回転ドラムの回転速度の相対関係は、前記回転ドラムが一回転する間に前記ベルトが一回転未満の回転のみしかしない関係であることを特徴とする流体吐出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の流体吐出装置において、
前記ベルトが、少なくとも、前記回転ドラムの回転に伴い前記開口を介して前記照射部に対向し始めてから前記開口を介して該照射部に対向し終えるまでの間に、前記照射部は紫外線を照射しており、
前記ベルトが前記照射部に対向し終えた際に、
前記ベルトが紫外線硬化型インクを受けた際に該紫外線硬化型インクが付着した外周面は、前記露出位置に位置したままであり、前記非露出位置には至っていないことを特徴とする流体吐出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の流体吐出装置において、
前記掻き取り部材は、前記ベルトの前記外周面から離間した待機位置と、該外周面に当接するための当接位置と、の間を移動し、
前記ベルトは、フラッシング毎に、前記回転ドラムの回転に伴って前記開口を介して前記ノズルに対向する位置に移動するとともに、
前記掻き取り部材が前記待機位置に位置する間に、あるフラッシング時に前記ベルトが前記開口を介して前記ノズルに対向する位置に位置した際に前記露出位置に位置する第一外周面、にて紫外線硬化型インクを受けてから、
前記第一外周面と重なった、前記あるフラッシング後のフラッシング時に前記ベルトが前記開口を介して前記ノズルに対向する位置に位置した際に前記露出位置に位置する第二外周面、
にて紫外線硬化型インクを受け、
前記第一外周面及び前記第二外周面の双方に紫外線硬化型インクが付着してから、前記掻き取り部材が前記待機位置から前記当接位置まで移動して、該双方に付着した前記紫外線硬化型インクを掻き取ることを特徴とする流体吐出装置。
【請求項8】
請求項2乃至請求項7のいずれかに記載の流体吐出装置において、
前記ベルトを回転させるために、前記回転ドラムから前記2つのローラのうちの一方のローラに駆動力を伝達する伝達機構、を有することを特徴とする流体吐出装置。
【請求項9】
請求項2乃至請求項8のいずれかに記載の流体吐出装置において、
前記ベルトは、撥水材料からなるベルトであり、
該ベルトの前記外周面にシリコーンオイルが塗布されていることを特徴とする流体吐出装置。
【請求項10】
請求項2乃至請求項9のいずれかに記載の流体吐出装置において、
前記ベルト及び前記掻き取り部材は、回転ドラム本体に対して着脱可能であることを特徴とする流体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【公開番号】特開2009−172797(P2009−172797A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11793(P2008−11793)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】