説明

液体供給装置、液体吐出装置及び画像記録装置

【課題】可撓膜の影響を抑え、圧力緩衝部の性能を維持したまま、圧力緩衝部を小型化する。
【解決手段】複数のノズルが配置された記録ヘッドに連通する液体供給流路と、前記液体供給流路に設けられ、液体に所定の圧力を付与する液体圧力付与手段と、前記液体供給流路の途中に設けられた圧力緩衝部であって、前記液体供給流路を流れる液体を流出入させる供給口及び排出口を有する液体室と、前記液体室と可撓膜を挟んで対設された気体室と、を含んで構成される圧力緩衝部とを備え、前記可撓膜は、予め初期撓みが与えられている液体供給装置によって上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体供給装置、液体吐出装置及び画像記録装置に係り、特にインクジェットヘッド等に液体を供給する圧力制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドを安定動作させるため、また、インクジェットヘッドへインクを安定して供給するために、インクジェットヘッドの内部圧力やインク流路の圧力を一定に制御する必要がある。かかる圧力を制御する手段として、インク流路に設けられたポンプが用いられる。一方、ポンプを用いてインクジェットヘッドの内部圧力やインク流路の圧力を制御すると、ポンプの脈流などに起因する圧力変動が生じることがある。この圧力変動は安定したインク供給の障害となるだけでなく、インクジェットヘッドの安定動作を妨げることがある。
【0003】
他方、インク流路にダンパを備え、インク流路の圧力変動やインクジェットヘッドの内部圧力の変動を抑制する技術が知られている。例えば、インク流路と連通するサブタンクの容量を可変させて、インク流路の圧力変動を抑制するダンパとして機能させる技術が知られている。
【0004】
特許文献1には、記録ヘッドと、記録ヘッドに連通する第1及び第2液体室と、第1及び第2液体室と液体バッファ室をそれぞれ連通する第1及び第2連通流路と、第1及び第2液体室の内部圧力をそれぞれ検出する第1及び第2圧力検出手段と、第1液体室、第2液体室、及び液体バッファ室間で液体を移動させる液体移動手段と、第1及び第2圧力検出手段の検出結果に応じて、第1及び第2液体室の内部がそれぞれ所定の圧力となるように液体移動手段を制御するとともに、前記第1液体室及び前記第2液体室間に所定の圧力差が設定され、且つ、記録ヘッドのノズル内部の液体に所定の背圧が付与されるように、液体移動手段を制御して第1液体室及び前記第2液体室の内部の圧力を調整する圧力制御手段とを備えたインクジェット記録装置において、密閉容器内を可撓膜によって仕切られた液体室及び気体室を有する2つのサブタンクが設けられ、前記2つのサブタンクのうち、一方のサブタンクの液体室が前記第1液体室であり、他方の液体室が前記第2液体室であるインクジェット記録装置が開示されている。
【0005】
特許文献1によれば、可撓膜及び気体室によって液体移動に伴う圧力変動を減衰させることができる。これにより、記録ヘッドに圧力変動が伝達されないため、良好な印刷品質を確保することができ、また、高精度な圧力調整が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−101516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
長尺ヘッドを用いた記録装置では大流量の液供給が必要となり、圧力緩衝部である液体バッファ室は大型化が必要となる一方、圧損低減のために液体バッファ室はヘッドの近くに置く必要があり、小型化が求められる。また、液体バッファ室を小型化すると、液室と気室を分ける可撓膜の影響が出てくる。膜は厚みばらつきや経時での特性変化があるため、圧力制御性に問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、可撓膜の影響を抑え、圧力緩衝部の性能を維持したまま、圧力緩衝部を小型化することができる液体供給装置、液体吐出装置及び画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、液体供給装置の一の態様は、記録ヘッドに連通する液体供給流路と、前記液体供給流路に設けられ、液体に所定の圧力を付与する液体圧力付与手段と、前記液体供給流路の途中に設けられた圧力緩衝部であって、前記液体供給流路を流れる液体を流出入させる供給口及び排出口を有する液体室と、前記液体室と可撓膜を挟んで対設された気体室と、を含んで構成される圧力緩衝部とを備え、前記可撓膜は、予め初期撓みが与えられている。
【0010】
本態様によれば、圧力緩衝部の可撓膜に予め初期撓みが与えられているので、可撓膜の影響を抑え、圧力緩衝部の性能を維持したまま、圧力緩衝部を小型化することができる。
【0011】
前記可撓膜は、前記気体室の内壁の形状にならう三次元形状を有していてもよい。これにより、可撓膜への負荷が減り、可撓膜の寿命を延ばすことができる。
【0012】
この場合、前記気体室の大気に対する開放又は遮断を切り換える大気連通路切換手段を備え、前記気体室を大気開放した状態で前記液体圧力付与手段により前記可撓膜の撓み量を変更し、所望の撓み量となったときに前記気体室と大気とを遮断することで前記初期撓みを与えることが好ましい。これにより、三次元形状を有する可撓膜に対し、適切に初期撓みを与えることができる。
【0013】
また、前記気体室の内壁が曲面であることが好ましい。これにより、可撓膜が変形して気体室の内壁に接触しても可撓膜が破損することがなく、可撓膜の耐久性を確保することができる。
【0014】
さらに、前記液体室内の圧力を検知する圧力検知手段と、前記記録ヘッドに配置されたノズルに所定の背圧が作用するように前記液体圧力付与手段の圧力値を設定する制御手段とを備えることが好ましい。これにより、記録ヘッドのノズルの背圧を適切の値にして液体を供給することができる。
【0015】
上記目的を達成するために、液体供給装置の一の態様は、記録ヘッドに連通する液体供給流路と、前記液体供給流路に設けられ、液体に所定の圧力を付与する第1の液体圧力付与手段と、前記液体供給流路の途中に設けられた第1の圧力緩衝部であって、前記液体供給流路を流れる液体を流出入させる供給口及び排出口を有する液体室と、前記液体室と可撓膜を挟んで対設された気体室と、を含んで構成される第1の圧力緩衝部と、前記記録ヘッドに連通する液体回収流路と、前記液体回収流路に設けられ、液体に所定の圧力を付与する第2の液体圧力付与手段と、前記液体回収流路の途中に設けられた第2の圧力緩衝部であって、前記液体回収流路を流れる液体を流出入させる供給口及び排出口を有する液体室と、前記液体室と可撓膜を挟んで対設された気体室と、を含んで構成される第2の圧力緩衝部とを備え、前記第1の圧力緩衝部の可撓膜及び前記第2の圧力緩衝部の可撓膜は、予め初期撓みが与えられている。
【0016】
本態様によれば、第1の圧力緩衝部の可撓膜及び第2の圧力緩衝部の可撓膜に予め初期撓みが与えられているので、第1の圧力緩衝部及び第2の圧力緩衝部の性能を維持したまま、第1の圧力緩衝部及び第2の圧力緩衝部を小型化することができる。
【0017】
前記第1の圧力緩衝部の可撓膜及び前記第2の圧力緩衝部の可撓膜は、それぞれ前記第1の圧力緩衝部の気体室及び前記第2の圧力緩衝部の気体室の内壁の形状にならう三次元形状を有していてもよい。これにより、可撓膜への負荷が減り、可撓膜の寿命を延ばすことができる。
【0018】
この場合、前記第1の圧力緩衝部の気体室の大気に対する開放又は遮断を切り換える第1の大気連通路切換手段と、前記第2の圧力緩衝部の気体室の大気に対する開放又は遮断を切り換える第2の大気連通路切換手段とを備え、前記第1の圧力緩衝部の気体室を大気開放した状態で前記第1の液体圧力付与手段により前記可撓膜の撓み量を変更し、所望の撓み量となったときに前記気体室と大気とを遮断することで前記第1の圧力緩衝部の可撓膜に前記初期撓みを与えるとともに、前記第2の圧力緩衝部の気体室を大気開放した状態で前記第2の液体圧力付与手段により前記可撓膜の撓み量を変更し、所望の撓み量となったときに前記気体室と大気とを遮断することで前記第2の圧力緩衝部の可撓膜に前記初期撓みを与えることが好ましい。これにより、三次元形状を有する可撓膜に対し、適切に初期撓みを与えることができる。
【0019】
また、前記第1の圧力緩衝部の気体室の内壁及び前記第2の圧力緩衝部の気体室の内壁が曲面であることが好ましい。これにより、可撓膜が変形して気体室の内壁に接触しても可撓膜が破損することがなく、可撓膜の耐久性を確保することができる。
【0020】
さらに、前記第1の圧力緩衝部の液体室内の圧力を検知する圧力検知手段と、前記第1の液体圧力付与手段と前記第2の液体圧力付与手段との間に所定の圧力差を設けるとともに、前記記録ヘッドに配置されたノズルに所定の背圧が作用するように前記第1の液体圧力付与手段の圧力値と前記第2の液体圧力付与手段の圧力値とを設定する制御手段とを備えた。これにより、記録ヘッドのノズルの背圧を適切の値にして液体を供給及び回収することができる。
【0021】
上記目的を達成するために、液体吐出装置の一の態様は、上記の態様の液体供給装置と、ノズルから液体を吐出する記録ヘッドと、前記液体供給流路に連通し、前記ノズルから吐出される液体を貯留する液体貯留部とを備えた。
【0022】
このように、上記の態様の液体供給装置は、液体吐出装置に適用することができる。
【0023】
上記目的を達成するために、画像記録装置の一の態様は、上記の態様の液体吐出装置と、前記記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動する走査手段とを備えた。
【0024】
このように、上記の態様の液体吐出装置は、画像記録装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、圧力緩衝部の性能を維持したまま、圧力緩衝部を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る非循環型インク供給装置の概略構成を示すブロック図
【図2】図1に示す非循環型インク供給装置に適用されるサブタンクの構造を示す断面図
【図3】弾性膜、気室、及び系全体の負圧特性を示すグラフ
【図4】弾性膜のそれぞれの大きさにおける弾性膜、気室、及び系全体の負圧特性を示すグラフ
【図5】弾性膜の各撓ませ量における弾性膜及び気室の負圧特性を示すグラフ
【図6】弾性膜の撓ませ量を説明するための図
【図7】気室の内面の形状にならう三次元形状を有する弾性膜を示す図
【図8】図1に示すインク供給装置に適用される制御部の構成を示すブロック図
【図9】図1に示すインク供給装置をインクジェットヘッドのインク供給装置として適用した構成例を示すブロック図
【図10】図1に示す弾性膜の初期位置調整の制御の流れを示すフローチャート
【図11】図1に示す弾性膜の初期位置調整における弾性膜の変形状態を説明する図
【図12】図1に示す液室の体積と圧力センサの検出圧力との関係を示す図
【図13】加圧パージの制御の流れを示すフローチャート
【図14】図13に示す加圧パージ制御における膜位置固定工程に制御の流れを示すフローチャート
【図15】図13に示す加圧パージ制御における圧力貯留工程に制御の流れを示すフローチャート
【図16】図13に示す加圧パージ制御におけるインク排出工程に制御の流れを示すフローチャート
【図17】本発明の第2実施形態に係る循環型インク供給装置の概略構成を示すブロック図
【図18】図17に示す循環型インク供給装置における加圧パージの制御の流れを示すフローチャート
【図19】図18に示す加圧パージ制御における圧力貯留工程に制御の流れを示すフローチャート
【図20】図18に示す加圧パージ制御におけるインク排出工程に制御の流れを示すフローチャート
【図21】本発明に係る液体供給装置が適用されるインクジェット記録装置の概略構成を示す全体構成図
【図22】図21に示すインクジェット記録装置に搭載されるインクジェットヘッドの構成例を示す平面透視図
【図23】図22に示すインクジェットヘッドのノズル配置を説明する平面図
【図24】図22示すインクジェットヘッドの立体構造を示す断面図
【図25】図21に示すインクジェット記録装置に適用される制御部の構成を示す要部ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0028】
〔第1実施形態〕
(非循環型インク供給装置の全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るインク供給装置の全体構成を示すブロック図であり、図1に示すインク供給装置10は、液体の供給対象であるインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」と記載することがある。)50へインクタンク52からインクを供給し、ヘッド50の内部圧力(背圧)をインクの送液量によって制御する非循環型のインク供給装置である。
【0029】
図1に示すように、インク供給装置10は、ヘッド50と連通する供給流路12と、ヘッド50と供給流路12との連通、非連通を切り換える供給バルブ14と、供給流路12の内部圧力を検出する圧力センサ16と、供給流路12の内部圧力の変動を抑制するように圧力調整を行う供給サブタンク18と、供給サブタンク18のヘッド50と反対側に接続され(供給サブタンク18とインクタンク52との間の供給流路12に接続され)、供給流路12の内部に圧力を付与する供給ポンプ20と、を含んで構成される。
【0030】
供給バルブ14は、制御信号により開閉が制御されるノーマルオープン型(または、ラッチ型)の電磁バルブが適用される。圧力センサ16は、供給流路12の内部圧力を電気信号に変換して出力する。圧力センサ16には、半導体ピエゾ抵抗方式や静電容量方式、シリコンレゾナント方式などのセンサを適用することができる。供給バルブ14が開かれるとともに供給ポンプ20を正転動作させると、インクタンク52から供給流路12へインクが流れ込み、供給サブタンク18内を通過して、インクがヘッド50へ送られる。
【0031】
また、インク供給装置10は、供給サブタンク18と、供給サブタンク18の気室26と連通可能に構成されるエアタンク36と、を含んで構成される圧力緩衝部を有する。
【0032】
供給サブタンク18は、初期撓みを有する可撓性の弾性膜(可撓膜)22によって液室24と気室26に区画される構造を有し、液室24のインク流出口24Aは、供給流路12及び供給バルブ14を介してヘッド50と連通し、インク流入口24Bは、供給ポンプ20を介してインクタンク52と連通している。さらに、液室24の気泡排出口27は、ドレイン流路28及びドレインバルブ30を介してインクタンク52と連通している。
【0033】
インク流入口24Bから液室24へインクが流入すると、流入したインクの体積に応じて弾性膜22が気室26側へ変形する。一方、インク流出口24Aから流出するインクの体積は変動しないので、供給流路12に圧力変動が生じたとしても、供給サブタンク18の作用によって当該圧力変動が抑制される。すなわち、供給サブタンク18は、ヘッド50の内圧変動や、供給ポンプ20の動作による脈流による供給流路12の内部圧力の変動を抑制する圧力緩衝機能を有している。
【0034】
ドレイン流路28は、気泡排出口27を介して液室24と連通しており、液室24内の液を強制的に排出させる際の流路であり、ドレインバルブ30が開かれると、液室24内のインクが所定の流路を介してインクタンク52へ送られる。
【0035】
気室26は、エア流路32、エアコネクトバルブ34を介してエアタンク36と連通し、エアタンク36は大気連通路38に設けられたエアバルブ40を介して大気と連通可能に構成されている。すなわち、気室26はエアコネクトバルブ34を開くことでエアタンク36と連通させることができ、インク送液の圧力制御に応じて気室26の容積を増加させることができる。さらに、エアバルブ40を開くことで、エアタンク36及び気室26を大気連通させることができる。
【0036】
気室26のバッファタンクとして機能するエアタンク36は、気室26の最大体積の3倍の体積を有している。なお、「気室26の最大体積」とは、弾性膜22が初期位置(詳細後述)に位置する状態の気室26の体積である。また、圧力緩衝機能の観点から気室26の体積は大きい方が好ましい。しかし、弾性膜22の変形量は有限であるため、気室26の体積は弾性膜22の変形量により制限される。
【0037】
圧力緩衝機能を確保すること、及び弾性膜22に過度のストレスをかけないことを両立するために、気室26の他にエアタンク36が設けられている。エアタンク36は、気室26の最大体積を超える体積を有していればよく、好ましくは気室26の最大体積の3倍以上である。一方、エアタンク36の体積を大きくしすぎると、圧力制御の応答性が落ちるため、気室26の体積とエアタンク36の体積の総量には最適値が存在する。
【0038】
エアコネクトバルブ34はノーマルオープン型の電磁バルブが適用され、エアバルブ40はノーマルクローズ型の電磁バルブが適用され、非常停止機能が作動した場合などに電源が遮断されても、ヘッド50からインクが漏れ出さないよう構成されている。
【0039】
液室24の弾性膜22と反対側の面には、液室24に溜まった気泡を排出させるための気泡排出口27が設けられるとともに、気泡排出口27を介してドレイン流路28(図1参照)と連通している。気泡排出口27は気泡が上部から抜け易いため一番上部に設けられており、インク流出口24Aはヘッドに気泡が流れないように気泡が流れにくい一番下部に設けられている。
【0040】
また、気室26の対向面(図2に符号26Aを付して図示する)を構成する壁にはエア流路32(図1参照)と連通するエア流路連通口26Bが設けられている。
【0041】
(供給サブタンクの構成)
図2は、供給サブタンク18の構造例を示す断面図である。同図に示すように、供給サブタンク18は、弾性膜22を用いて密閉容器の内部を仕切り、弾性膜22の一方側を液室24とし、他方側を気室26としている。インク流入口24Bからインクが流入すると、液室24の圧力(インクの送液量)と気室26内の圧力がつり合うように弾性膜22が気室26側へ変形する。かかる構造によって、供給流路12に圧力変動が生じても供給サブタンク18がダンパとして機能する。
【0042】
なお、供給サブタンク18の気室26は、弾性膜22と対向する内壁の面(対向面)26Aが曲面で構成される、おわん型(ドーム型)形状を有しているので、弾性膜22が変形して対向面26Aに接触しても角が当たって弾性膜22が破損することがなく、弾性膜22の耐久性が確保されている。
【0043】
供給サブタンク18のインク流入量に対する圧力変化を負圧特性という。図3は、弾性膜22、気室26、及び系全体の負圧特性を示すグラフであり、気室26の体積を700mL、弾性膜22の大きさ(液室24の大きさ)をφ80mmとし、液室24を密閉した上で液室24内に流入/排出したインクの量を横軸に[単位:mL]、それぞれの圧力を縦軸に[単位:Pa]プロットしたものである。例えば、図1の例では、供給バルブ14とドレインバルブ30とを閉じ、供給ポンプ20の回転方向を正逆に制御することで、液室24内にインクを流入/排出させることができる。図3におけるインク量は、液室24内にインクが流入した場合を正、液室24からインクが排出した場合を負として表している。
【0044】
同図に示すように、弾性膜22の負圧特性は、インクの流入量(排出量)が小さい間は弾性膜22の弛み領域(図3の弾性膜曲線のフラット領域)で圧力変化はほとんど無いが、弾性膜22が張りだすと急激に圧力変化が起こる。この弾性膜22の負圧特性は、膜の種類や厚み等によって変化する。
【0045】
これに対し、気室26の負圧特性は、気室26及びエアタンク36の容量が決めれば一様に決まる。さらに、系全体の負圧特性は、弾性膜22の負圧特性と気室26及びエアタンク36の負圧特性の和となる。したがって、気室26及びエアタンク36の容量は、弾性膜22の弛み領域における圧力制御性能を考慮して決定すればよい。すなわち、容量の下限値は圧力制御の安定性及び圧力緩衝性から決まり、上限値は圧力制御の応答性から決まるため容量には最適値が存在する。また、気室26の容量の下限値は弾性膜22の初期撓ませ量で決まり、上限値は弾性膜22の最大変形量により決まるため最適値が存在する。
【0046】
ここで、供給サブタンク18は、圧損低減のためにヘッド50(図1参照)の近傍に配置することが好ましく、液室24の小型化が求められる。図4は、弾性膜22のそれぞれの大きさにおける弾性膜22、気室26、及び系全体の負圧特性を示すグラフであり、図4(a)はφ80mm、図4(b)はφ60mm、図4(c)はφ40mm、図4(d)はφ20mmの場合を示している。
【0047】
図4に示すように、供給サブタンク18(液室24)の大きさを小型化し、弾性膜22の大きさが小さくなると、弾性膜22の弛み領域が狭くなり、圧力制御領域(ここでは±3kPaの範囲)で弾性膜22の影響が支配的となる。
【0048】
このため、本実施形態における弾性膜22には、予め初期撓みが設けられている。ここでいう撓みとは、塑性変形等によって形成した撓みではなく、膜の弛みにより生じた撓みを指す。図5は、液室24の大きさがφ40mmの時の、弾性膜22の各撓ませ量における弾性膜22及び気室26の負圧特性を示すグラフであり、図5(a)は初期撓み無し(撓ませ量0mm)、図5(b)は撓ませ量5mm、図5(c)は撓ませ量15mmの場合を示している。なお、撓ませ量とは、図6に示すように、初期撓みが設けられた弾性膜22を、弛みがなくなるまで気室26側(または液室24側)へ寄せておわん型(ドーム型)形状にした場合の頂点の位置と、初期撓みが設けられていない場合の位置(図6において破線で表した位置)との差をいう。
【0049】
図5に示すように、撓ませ量が大きいほど、圧力制御領域(±3kPaの範囲)において、弾性膜22の負圧特性の影響を低減することができる。すなわち、撓ませ量が大きいほど、弾性膜22の弛み領域が拡大して制御性能が向上する。しかし、弾性膜22と気室26の壁とのクリアランスが必要なため、撓ませ量を大きくすると、気室26が大型化してしまう。したがって、弾性膜22の撓ませ量は、負圧特性の制御性能と気室26の大きさにより最適値が求められる。
【0050】
このような弾性膜22の初期撓みは、液室24(気室26)の径よりも大きい膜を用いて、膜を弛ませた状態で固定して与えればよい。
【0051】
また、図7に示すように、気室26の対向面26Aの形状にならう三次元形状を有する弾性膜22’を用いてもよい。弾性膜22’であれば、撓ませ量は三次元形状によって決まる。この場合は、弾性膜22’を固定した後、後述する初期位置調整を行うことにより、図2に示す初期撓み状態を実現する。このような弾性膜22’を用いることで、後述する加圧パージ時において弾性膜22’が気室26の対向面26Aにならいやすくなり、弾性膜22’への負荷が少なくなる。その結果、弾性膜22’の寿命を延ばすことができる。
【0052】
なお、図7の例では、気室26側が三次元形状の凸となるように撓ませて弾性膜22’を固定しているが、耐久性のある膜であれば、液室24側が三次元形状の凸となるように撓ませて弾性膜22’を固定する態様も可能である。
【0053】
(非循環型インク供給装置の制御系の構成)
図8は、本例に示すインク供給装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すインク供給装置10は、制御系を統括制御するシステム制御部70と、システム制御部70から送られる制御信号に基づいて供給ポンプ20の制御を行うポンプ制御部72と、供給バルブ14、及びドレインバルブ30、エアコネクトバルブ34、エアバルブ40等のバルブ類の開閉を制御するバルブ制御部74と、装置各部に異常が発生した場合にその旨を報知する表示装置75と、を具備している。
【0054】
図8に示すパラメータ記憶部80は、インク供給装置10の制御に用いられる各種パラメータや、制御の際に参照されるデータテーブルが格納されている。例えば、後述する液室24の体積と圧力センサ16の検出圧力との関係を示すデータテーブルが格納される。
【0055】
プログラム格納部82は、インク供給装置10の制御に使用されるプログラムが格納されている。システム制御部70は、プログラム格納部82に格納されている各種制御プログラムを読み出して実行し、パラメータ記憶部80に格納されている各種パラメータやデータテーブルを参照して、インク供給装置10を統括して制御する。
【0056】
本例に示すインク供給装置10は、圧力センサ16から得られた供給流路12(図1参照)内の圧力情報に基づいて、供給バルブ14等のバルブ類の動作を制御するとともに、供給ポンプ20の動作が制御される。
【0057】
具体的には、システム制御部70は、圧力センサ16の検出結果に基づいて、供給流路12の内部圧力が所定の圧力に調整されるように、供給ポンプ20の駆動を制御する。圧力センサ16から得られた圧力情報(後述する圧力上昇値)は、所定のメモリへ逐次書き込まれ、更新される。
【0058】
また、本例に示すインク供給装置10は不図示のタイマーを具備し、圧力制御の切換タイミングからの経過時間や、バルブの開閉からの経過時間が計測され、当該計測結果は不図示のメモリに逐次書き込まれる。
【0059】
次に、非循環型インク供給装置10をマルチタイプのインクジェットヘッドのインク供給装置として適用した場合の構成例について説明する。図9に示す構成例は、非循環型インク供給装置10’からインクジェットヘッド50’へインクを供給する例を示している。なお、図9中、図1と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0060】
図9に示すヘッド50’は、n個のヘッドモジュール51‐1〜51‐nをつなぎ合わせて構成されている。ヘッド50’を構成するヘッドモジュール51は、供給流路12と連通する供給側マニホールド54から各ヘッドモジュール51に対応して個別に分岐された流路を介してインクが供給される。該個別流路のそれぞれには、供給バルブ14‐1〜14‐nが設けられるとともに、ダンパ15‐1〜15−nが設けられている。
【0061】
以上説明したインク供給装置10,10’は、供給サブタンク18に設けられる弾性膜22の位置初期化時(初期位置調整時)、及びヘッド50(50’)の加圧パージ時において、供給バルブ14、エアコネクトバルブ34、エアバルブ40の開閉が制御されるとともに、供給ポンプ20の回転方向の切換が行われる。次に、供給バルブ14、エアコネクトバルブ34、エアバルブ40の制御及び供給ポンプ20の制御について詳細に説明する。
【0062】
(弾性膜の初期位置調整)
図10は、弾性膜22の初期位置調整の制御の流れを示すフローチャートである。本例に示す供給サブタンク18(図1、図2参照)は、経時により弾性膜22の変形量(位置)が変化してしまい、弾性膜22の位置が変化すると、供給流路12の圧力制御にバラつきが生じてしまう。したがって、弾性膜22の初期位置調整が適宜実行され、供給流路12の圧力制御のバラつきが回避されている。弾性膜22の初期位置調整が実行されるタイミングとして、装置の立ち上げ時、加圧パージの実行後、供給ポンプ20の異常等により供給流路12内の圧力が大きく変化したときなどが挙げられる。
【0063】
図10に示すように、弾性膜22の初期位置調整が開始されると(ステップS10)、供給バルブ14が閉じられ(ステップS12)、供給流路12とヘッド50は非連通とされる。その後、エアコネクトバルブ34が開かれるとともに(ステップS14)、エアバルブ40が開かれ(ステップS16)、気室26とエアタンク36が連通するとともに、気室26及びエアタンク36が大気解放される。この状態で供給ポンプ20を正転させて液室24内を加圧して液室24内にインクが送液され(ステップS18)、圧力センサ16により検出される圧力が監視される。
【0064】
ステップS20において、圧力センサ16の検出圧力が指定圧力に達するか否かが監視され、圧力センサ16の検出圧力が指定圧力に達していない場合は(No判定)、加圧及び圧力監視が継続される。一方、圧力センサ16の検出圧力が指定圧力に達すると(Yes判定)、供給ポンプ20の回転方向が減圧方向に切り換えられる(ステップS22)。なお、「指定圧力」とは、液室24の体積と圧力が比例関係を保つ範囲の中で、予め決められた圧力を意味している。
【0065】
図11(a)は、指定圧力に達した状態の供給サブタンク18が模式的に図示されている。同図に示すように、液室24内を加圧すると弾性膜22(初期位置の弾性膜を破線により図示)が気室26側へ変形して、時間経過とともに変形量が大きくなり、符号22’を付して実線により図示した状態となる。
【0066】
図11(a)に図示した指定圧力に達した状態から、供給ポンプ20を一定速度で減圧動作させて、液室24から単位時間あたり一定量のインクを排出させると、弾性膜22は液室24側へ変形する。弾性膜22の変形量はインクの排出量に比例する。
【0067】
図10に戻り、ステップS24において減圧開始からの経過時間が監視され、減圧開始から所定時間経過していない場合は(No判定)、供給ポンプ20の減圧動作及び経過時間の監視が継続される。一方、減圧動作開始から所定時間が経過すると(Yes判定)、エアバルブ40が閉じられる(ステップS26)。すなわち、液室24の符号22’を付して実線により図11に示した状態から所定量のインクが排出されると、弾性膜22はインクの排出量に対応して液室24を収縮させる方向に所定量変形して、決められた初期位置に調整される。その後、気室26とエアタンク36が連通した状態を維持しつつ大気と遮断され、弾性膜22の初期位置調整が終了される(ステップS28)。
【0068】
図11(b)は、液室24を指定圧力の状態から減圧して、減圧開始から所定時間経過したときの供給サブタンク18の状態が模式的に図示されている。同図は、指定圧力の状態における位置の弾性膜が符号22’を付して破線により図示され、初期位置の弾性膜が符号22を付して実線により図示されている。
【0069】
図12は、液室24の体積(インクの流入量)と圧力センサ16(図1参照)の検出圧力との関係を示している。同図に示す圧力センサ16の検出圧力は、液室24の内部圧力と等価である。同図に示すように、圧力センサ16の検出圧力として把握される液室24の内部圧力は、弾性膜22の弛み領域(弾性変形可能な領域)を抜けるまで液室24に流入するインクの体積に比例する。一方、液室24の体積が増加して弾性膜22の弛み領域を抜けると、弾性膜22の影響で液室24の内部圧力とインクの流入体積との比例関係が成り立たなくなり、液室24の体積が最大になると、液室の内部圧力は急激に上昇する。なお、弾性膜22の弛み領域が液室24の体積が最大となる領域となる場合もありうる。
【0070】
予め液室24の内部圧力と液室24の体積との関係を求めておき、所定のメモリに記憶しておくことで、圧力センサ16の検出圧力から液室24の内部圧力を把握し、該メモリを参照して液室24の体積が把握される。図12に示す指定圧力に対応する液室24の体積V1は、液室24の指定圧力の状態に対応している(図11(a)参照)。
【0071】
また、一定の流速で液室24からインクを排出させると、液室24から流出したインクの体積は、単位時間あたりの排出量に排出時間を乗じて求めることができる。したがって、供給ポンプ20を一定回転数で逆転動作(減圧動作)させて、その動作時間から液室24から排出させたインクの体積を把握することができる。図12に示す液室24の体積V2は、弾性膜22の位置が初期位置に調整されたときの液室24の体積を示している。
【0072】
このようにして、弾性膜22の初期位置調整が適宜実行されることで、経時による圧力制御のバラつきを回避することでき、安定した液体供給が実現される。
【0073】
(加圧パージ)
次に、ヘッド50(図1参照)の内部圧力を正圧としてヘッド50内のインクをノズルから強制的に排出させる加圧パージ実行時における、供給バルブ14、エアコネクトバルブ34、エアバルブ40の制御及び供給ポンプ20の制御について説明する。
【0074】
図13は、加圧パージの制御の流れを示すフローチャートである。同図に示すように、加圧パージは、膜位置固定工程(ステップS120)、圧力貯留工程(ステップS140)、及びインク排出工程(ステップS140)から構成されている。
【0075】
図14は、膜位置固定工程(ステップS120)のフローチャートである。膜位置固定工程は、弾性膜22を変形させて気室26の対向面26Aに貼り付けた状態とする工程である。膜位置固定工程が開始されると、供給バルブ14及びドレインバルブ30が閉じられ(ステップS121)、エアコネクトバルブ34が開かれるとともに(ステップS122)、エアバルブ40が開かれ(ステップS124)、気室26とエアタンク36が連通されるとともに大気連通される。この状態で供給ポンプ20を正転動作させて液室24内を加圧して、弾性膜22が気室26の対向面26Aに張り付いた状態とする(ステップS126)。
【0076】
弾性膜22が気室26の対向面26Aに張り付いた状態になると、エアコネクトバルブ34が閉じられるとともに(ステップS128)、エアバルブ40が閉じられ(ステップS130)、膜位置固定工程は終了される(ステップS132)。膜位置固定工程によって、弾性膜22は気室26の対向面26Aに張り付いた状態で固定されるとともに、気室26とエアタンク36は非連通とされ、気室26は大気とも遮断される。
【0077】
図15は、圧力貯留工程のフローチャートである。図14に示す膜位置固定工程により、弾性膜22は気室26の対向面26Aに張り付いた状態で固定されると、圧力貯留工程が開始される。圧力貯留工程は、最大体積状態の液室24にインクを充填してパージに要する圧力を供給サブタンク18(及び供給流路12)に溜める工程である。すなわち、圧力貯留工程では、供給バルブ14が閉じられた状態で、圧力センサ16の検出圧力を監視しながら液室24を加圧して、圧力センサ16の検出圧力が指定圧力になるまで加圧を続ける(ステップS142)。圧力センサ16の検出圧力が指定圧力になると、液室24及び供給流路12はインクで満たされるととともに、供給サブタンク18内及び供給流路12内に所定の圧力が貯留され、圧力貯留工程は終了される(ステップS144)。
【0078】
図16は、インク排出工程のフローチャートである。インク排出工程は、圧力貯留工程により溜められた圧力を利用して、ヘッド50のノズルからインクを排出(パージ)させる工程である。まず、供給バルブ14が開かれる(ステップS162)。そうすると、圧力貯留工程によって溜められたインクがヘッド50内に流れ込むことで、ヘッド50の内部圧力が正圧となり、ヘッド50からインクが排出される。この時、ヘッド50の内部圧
力が落ちないように、供給ポンプ20を加圧方向に動作させる(ステップS163)。
【0079】
インクの排出が開始されると、供給バルブ14が開かれてからの経過時間が監視され(ステップS164)、所定時間が経過すると(Yes判定)、供給バルブ14が閉じられ(ステップS166)、供給ポンプ20を停止させて(ステップS168)、インク排出工程が終了される(ステップS170)。図13〜図16に示す加圧パージが終了すると、バルブ制御及びポンプ制御は所定の状態へ遷移する。
【0080】
加圧パージを実行する際に、液室の容積が最大となる状態(圧力緩衝による圧力損失が発生しない状態)に弾性膜22を固定し、かかる状態において供給サブタンク18及び供給流路12に圧力が貯留される。これにより、供給サブタンク18に圧力を貯留する時間が短縮されるとともに、加圧パージの圧力波がシャープになり(シャープな加圧曲線に基づく加圧特性を得ることができ)、気泡や異物をノズルから除去しやすくなるといった効果を得ることができる。
【0081】
上記の如く構成されたインク供給装置10によれば、供給サブタンク18内において液室24と気室26とを隔離させる弾性膜22の初期位置が適宜調整されるので、経時により弾性膜22の変形量(位置)が変化せず、圧力制御のバラつきが回避される。
【0082】
また加圧パージ実行時において、液室の容積が最大となる状態に弾性膜22が固定され、供給サブタンク18及び供給流路12に圧力が貯留されるので、供給サブタンク18に圧力を貯留する時間が短縮されるとともに、加圧パージの圧力波がシャープになり、気泡や異物をノズルから除去しやすくなるといった効果を得ることができる。
【0083】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るインク供給装置について説明する。図17に示すインク供給装置100は、循環系を備えた循環型である点で図1に示す非循環型インク供給装置と相違している。なお、以下の説明では、主として先に説明した第1実施形態に係るインク供給装置10と相違する構成について説明する。
【0084】
(全体構成)
図17に示すインク供給装置100は、供給流路12と回収流路112とを有し、供給流路12は供給流路圧力センサ16(図1に示す圧力センサ16と等価)が設けられ、回収流路112は回収流路圧力センサ116が設けられている。また、供給流路12には供給サブタンク18が設けられるとともに、回収流路112には回収サブタンク118が設けられている。供給サブタンク18は、供給ポンプ20及び所定のインク流路を介してインクタンク52と連通され、回収サブタンク118は回収ポンプ120及び所定のインク流路を介してインクタンク52と連通される。
【0085】
図17に示すヘッド50は、n個のヘッドモジュール51‐1,51‐2,…,51‐nがつなぎ合わせられた構造を有するヘッドであり、ヘッドモジュール51のそれぞれが供給バルブ14‐1,14‐2,…,14‐nを介して供給流路12と連通されるとともに、回収バルブ114‐1,114‐2,…,114‐nを介して回収流路112と連通される。
【0086】
供給側マニホールド54及び回収側マニホールド154は、供給流路12及び回収流路112とヘッド50との間に設けられるインクの一時貯留部である。供給側マニホールド54と回収側マニホールド154とは、バイパス流路190,192により連通され、バイパス流路190,192はそれぞれ、バイパス流路バルブ194,196が設けられている。
【0087】
供給ポンプ20及び回収ポンプ120はチューブポンプが適用される。図17に示す供給ポンプ20は、インクタンク(バッファタンク)52からヘッド50へインクを供給する供給流路12の圧力(送液量)を制御し、回収ポンプ120はヘッド50からインクタンク52へインクを回収する(循環させる)回収流路112の圧力(送液量)を制御する。供給ポンプ20と回収ポンプ120は同一の性能(容量)を有するポンプを適用することができる。
【0088】
供給ポンプ20及び回収ポンプ120は、ヘッド50が動作を停止している期間(すなわち、インクが安定して流れている期間)は、一方向にのみ回転し、ヘッド50が吐出動作をしている期間に内部圧力が減少すると、供給ポンプ20は回転速度を増加させるとともに、回収ポンプ120は逆転してヘッド50の内部圧力を上昇させる。
【0089】
すなわち、供給流路12の内部圧力が回収流路112の内部圧力よりも相対的に高くなるように、かつ、ヘッド50のノズル内部のインクに所定の背圧(負圧)が付与されるように、供給ポンプ20及び回収ポンプ120の駆動が制御される。
【0090】
供給サブタンク18及び回収サブタンク118は、図2に図示した供給サブタンク18と同一の構造を有しているので、ここでの説明は省略する。すなわち、供給サブタンク18の気室は、弾性膜と対向する内壁の面が曲面で構成されている。また、供給サブタンク18及び回収サブタンク118の可撓膜には、予め初期撓みが設けられている。
【0091】
また、供給サブタンク18及び回収サブタンク118は、図7に図示した供給サブタンク18と同一の構造を有していてもよい。すなわち、供給サブタンク18及び回収サブタンク118の可撓膜は、気室26の対向面26Aの形状にならう三次元形状を有していてもよい。
【0092】
なお、図17に図示した循環系(回収側)のドレイン流路128、ドレインバルブ130、気体流路132、エアコネクトバルブ134、エアタンク136、大気連通路138、エアバルブ140はそれぞれ、供給系のドレイン流路28、ドレインバルブ30、エア流路32、エアコネクトバルブ34、エアタンク36、大気連通路38、エアバルブ40に対応している。
【0093】
なお、ドレインバルブ130は、ラッチタイプの電磁バルブが適用され、エアコネクトバルブ134はノーマルオープン型の電磁バルブが適用され、供給バルブ14、回収バルブ114、エアバルブ140はノーマルクローズ型の電磁バルブが適用される。
【0094】
図17に示すインク供給装置100は、インクタンク52と供給ポンプ20との間に脱気モジュール160及びインクの逆流を防止するための一方向弁162が設けられるとともに、供給ポンプ20と供給サブタンク18の間には、フィルタ164及び熱交換器(冷却加熱装置)166が設けられている。インクタンク52から送り出されたインクは脱気モジュール160によって脱気処理が施され、フィルタ164によって気泡や異物が除去され、熱交換器166による温度調整処理が施された後に供給サブタンク18へ送られる。
【0095】
また、脱気モジュール160と回収ポンプ120との間には、インクの逆流防止のための一方向弁170が設けられるとともに、フィルタ172が設けられ、インクタンク52から回収サブタンク118へインクが送られる場合にも、所定の脱気処理及びフィルタ処理が施される。
【0096】
さらに、インク供給装置100は、安全弁(リリーフバルブ)174,176が設けられており、供給ポンプ20及び回収ポンプ120に異常が発生して供給流路12及び回収流路112の内部圧力が所定値よりも上昇した場合には、安全弁174,176が動作して供給流路12及び回収流路112の内部圧力を降下させる。また、供給ポンプ20及び回収ポンプ120を逆転動作させたときにインクの逆流を防止するための一方向弁178,180が設けられている。
【0097】
図17に示すメインタンク56は、バッファタンク52へ供給されるインクが貯留されている。バッファタンク52内のインク量が減少すると、補充ポンプ182を動作させてメインタンク56内のインクがバッファタンク52へ送られる。メインタンク56は、内部にフィルタ184が設けられている。
【0098】
(循環の説明)
かかる構成を有するインク供給装置100は、供給ポンプ20と回収ポンプ120とを動作させて、供給側マニホールド54と回収側マニホールド154との間に差圧を設けてインクを循環させる。例えば、供給バルブ14及び回収バルブ114を開いた状態で、供給ポンプ20を正転動作させて供給側マニホールド54に負圧を発生させ、一方、回収ポンプ120を逆転動作させて回収側マニホールド154に供給側より低い負圧を発生させると、供給側マニホールド54からヘッド50を介して回収側マニホールド154へインクを流し、さらに回収流路112、回収サブタンク118等を介してインクを循環させることができる。
【0099】
インクを循環させるときは、第2のバイパス流路192に設けられた第2のバイパス流路バルブ196を開き、供給側マニホールド54と回収側マニホールド154とを第2のバイパス流路192を介して連通させるとよい。なお、第1のバイパス流路190,192が加圧時における圧力損失が発生しない直径を有するものであれば、いずれか一方を備えていればよい。
【0100】
(弾性膜の初期位置調整)
図17に示すインク供給装置100は、供給側の供給バルブ14、エアコネクトバルブ34、エアバルブ40、及び供給ポンプ20と、回収側の回収バルブ114、エアコネクトバルブ134、エアバルブ140、及び回収ポンプ120と、を独立に動作させることができるので、図10〜図12を用いて説明した弾性膜22の初期位置調整を、回収サブタンク118の弾性膜の初期調整にも適用することができる。
【0101】
(加圧パージ)
図17に示すインク供給装置100における加圧パージは、図18に示す各工程が含まれる。すなわち、加圧パージが開始されると(ステップS200)、膜位置固定工程(ステップS220)、圧力貯留工程(ステップS240)、インク排出工程(ステップS260)の順に各工程が実行され、加圧パージが終了される(ステップS290)。膜位置固定工程(ステップS220)は、回収バルブ114、エアコネクトバルブ134、エアバルブ140、回収ドレインバルブ130及び回収ポンプ120に対して、図14に示す膜位置固定工程(ステップS120)の各工程(ステップS120〜ステップS132)を適用することができる。
【0102】
圧力貯留工程(図18のステップS240)の詳細を図19に示す。図19に示す圧力貯留工程は、第1のバイパス流路バルブ194及び第2のバイパス流路バルブ196、回収バルブ114を閉じた後に(ステップS242〜246)、回収ポンプ120を加圧方向に動作させ(ステップS248)、回収圧力センサ116を監視しながら、指定圧力に達するまで回収サブタンク118に圧力を貯留する(ステップS250)。
【0103】
また、インク排出工程(図18のステップS260)の詳細を図20に示す。図20に示すインク排出工程は、加圧パージを行う流路の供給バルブ14を開いた後に(ステップS262)、第1のバイパス流路バルブ194及び第2のバイパス流路バルブ196を開く(ステップS264〜ステップS266)。この時、圧力が落ちないように供給ポンプ20及び回収ポンプ120を加圧方向に動作させる(ステップS268〜ステップS270)。
【0104】
インクの排出が開始されてから所定時間経過すると(ステップS272のYes判定)、第2のバイパス流路バルブ196が閉じられ(ステップS274)、第1のバイパス流路バルブ194(ステップS276)、供給バルブ14が閉じられる(ステップS278)。そして、回収ポンプ120が停止されるとともに(ステップS280)、供給ポンプ20が停止され(ステップS282)、インク排出工程は終了される(ステップS284)。
【0105】
なお、供給系のバルブ制御部及ポンプ制御部(図8参照)と、回収側のバルブ制御部及びポンプ制御部は、それぞれ個別に設けられてもよいし、共通化されてもよい。
【0106】
〔応用例〕
次に、上述したインク供給装置の応用例として、インクジェットヘッドのインク供給部に上述したインク供給装置10,100を適用したインクジェット記録装置について説明する。
【0107】
(インクジェット記録装置の全体構成)
図21は、本発明の実施形態に係る液体供給装置を具備するインクジェット記録装置の全体構成を示した構成図である。同図に示すインクジェット記録装置200は、色材を含有するインクと該インクを凝集させる機能を有する凝集処理液を用いて、所定の画像データに基づいて記録媒体214の記録面に画像を形成する二液凝集方式の記録装置である。
【0108】
インクジェット記録装置200は、主として、給紙部220、処理液塗布部230、描画部240、乾燥処理部250、定着処理部260、及び排出部270を備えて構成される。また、図21では図示を省略されているが、描画部240へインク供給を行うインク供給装置が設けられている。
【0109】
処理液塗布部230、描画部240、乾燥処理部250、定着処理部260の前段に搬送される記録媒体214の受け渡しを行う手段として渡し胴232,242,252,262が設けられるとともに、処理液塗布部230、描画部240、乾燥処理部250、定着処理部260のそれぞれに記録媒体214を保持しながら搬送する手段として、ドラム形状を有する圧胴234,244,254,264が設けられている。
【0110】
渡し胴232〜262及び圧胴234〜264は、外周面の所定位置に記録媒体214の先端部を挟んで保持するグリッパー280A,280Bが設けられている。グリッパー280Aとグリッパー280Bにおける記録媒体214の先端部を挟んで保持する構造、及び他の圧胴又は渡し胴に備えられるグリッパーとの間で記録媒体214の受け渡しを行う構造を同一であり、かつ、グリッパー280Aとグリッパー280Bは、圧胴234の外周面の圧胴234の回転方向について180°移動させた対称位置に配置されている。
【0111】
グリッパー280A,280Bにより記録媒体214の先端部を狭持した状態で渡し胴232〜262及び圧胴234〜264を所定の方向に回転させると、渡し胴232〜262及び圧胴234〜264の外周面に沿って記録媒体214が回転搬送される。
【0112】
なお、図21中、圧胴234に備えられるグリッパー280A,280Bのみ符号を付し、他の圧胴及び渡し胴のグリッパーの符号は省略する。
【0113】
給紙部220に収容されている記録媒体(枚葉紙)214が処理液塗布部230に給紙されると、圧胴234の外周面に保持された記録媒体214の記録面に、凝集処理液(以下、単に「処理液」と記載することがある。)が付与される。なお、「記録媒体214の記録面」とは、圧胴234〜264の保持された状態における外側面であり、圧胴234〜264に保持される面と反対面である。
【0114】
その後、凝集処理液が付与された記録媒体214は描画部240に送出され、描画部240において記録面の凝集処理液が付与された領域に色インクが付与され、所望の画像が形成される。
【0115】
さらに、該色インクによる画像が形成された記録媒体214は乾燥処理部250に送られ、乾燥処理部250において乾燥処理が施されるとともに、乾燥処理後に定着処理部260に送られ、定着処理が施される。乾燥処理及び定着処理が施されることで、記録媒体214上に形成された画像が堅牢化される。このようにして、記録媒体214の記録面に所望の画像が形成され、該画像が記録媒体214の記録面に定着した後に、排出部270から装置外部に搬送される。
【0116】
以下、インクジェット記録装置200の各部(給紙部220、処理液塗布部230、描画部240、乾燥処理部250、定着処理部260、排出部270)について詳細に説明する。
【0117】
(給紙部)
給紙部220は、給紙トレイ222と不図示の送り出し機構が設けられ、記録媒体214は給紙トレイ222から一枚ずつ送り出されるように構成されている。給紙トレイ222から送り出された記録媒体214は、渡し胴(給紙胴)232のグリッパー(不図示)の位置に先端部が位置するように不図示のガイド部材によって位置決めされて一旦停止する。そして、グリッパー(不図示)が記録媒体214の先端部を挟んで保持し、処理液胴234に備えられるグリッパーとの間で記録媒体214の受け渡しを行う。
【0118】
(処理液塗布部)
処理液塗布部230は、給紙胴232から受け渡された記録媒体214を外周面に保持して記録媒体214を所定の搬送方向へ搬送する処理液胴(処理液ドラム)234と、処理液胴234の外周面に保持された記録媒体214の記録面に処理液を付与する処理液塗布部230と、含んで構成されている。処理液胴234を図21における反時計回りに回転させると、記録媒体214は処理液胴234の外周面に沿って反時計回り方向に回転搬送される。
【0119】
図21に示す処理液塗布部230は、処理液胴234の外周面(記録媒体保持面)と対向する位置に設けられている。処理液塗布部230の構成例として、処理液が貯留される処理液容器と、処理液容器の処理液に一部が浸漬され、処理液容器内の処理液を汲み上げる汲み上げローラと、汲み上げローラにより汲み上げられた処理液を記録媒体214上に移動させる塗布ローラ(ゴムローラ)と、を含んで構成される態様が挙げられる。
【0120】
なお、該塗布ローラを上下方向(処理液胴234の外周面の法線方向)に移動させる塗布ローラ移動機構を備え、記録媒体214以外の部分に処理液の塗布を行わないように構成する態様が好ましい。また、記録媒体214の先端部を挟持するグリッパー280A,280Bは、周面から突出しないように配置されている。
【0121】
処理液塗布部230により記録媒体214に付与される処理液は、描画部240で付与されるインク中の色材(顔料)を凝集させる色材凝集剤を含有し、記録媒体214上で処理液とインクとが接触すると、インク中の色材と溶媒との分離が促進される。
【0122】
処理液塗布部230は、記録媒体214に塗布される処理液量を計量しながら塗布することが好ましく、記録媒体214上の処理液の膜厚は、描画部240から打滴されるインク液滴の直径より十分に小さくすることが好ましい。
【0123】
(描画部)
描画部240は、記録媒体214を保持して搬送する描画胴(描画ドラム)244と、記録媒体214を描画胴244に密着させるための用紙押さえローラ246と、記録媒体214にインクを付与するインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yを備えている。描画胴244の基本構造は先に説明した処理液胴234と共通している。
【0124】
用紙押さえローラ246は、描画胴244の外周面に記録媒体214を密着させるためのガイド部材であり、描画胴244の外周面に対向し、渡し胴242と描画胴244との記録媒体214の受渡位置よりも記録媒体214の搬送方向下流側であり、且つ、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yよりも記録媒体214の搬送方向上流側に配置される。
【0125】
また、用紙押さえローラ246と記録媒体214の搬送方向における最上流側のインクジェットヘッド248Yとの間には、用紙浮き検出センサ(不図示)が配置されている。該用紙浮き検出センサは、記録媒体214がインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの直下に進入する直前の浮き量を検出している。本例に示すインクジェット記録装置200は、用紙浮き検出センサにより検出された記録媒体214の浮き量が所定のしきい値を超える場合には、その旨を報知するとともに記録媒体214の搬送を中断させるように構成されている。
【0126】
渡し胴242から描画胴244に受け渡された記録媒体214は、グリッパー(符号省略)によって先端が保持された状態で回転搬送される際に、用紙押さえローラ246によって押圧され、描画胴244の外周面に密着する。このようにして、記録媒体214を描画胴244の外周面に密着させた後に、描画胴244の外周面から浮き上がりのない状態で、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの直下の印字領域に送られる。
【0127】
インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yはそれぞれ、マゼンダ(M)、黒(K)、シアン(C)、イエロー(Y)の4色のインクに対応しており、描画胴244の回転方向(図21における反時計回り方向)に上流側から順に配置されるとともに、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yのインク吐出面(ノズル面)が描画胴244に保持された記録媒体214の記録面と対向するように配置される。なお、「インク吐出面(ノズル面)」とは、記録媒体214の記録面と対向するインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの面であり、後述するインクが吐出されるノズル(図22に符号308を付して図示する)が形成される面である。
【0128】
また、図21に示すインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yは、描画胴244の外周面に保持された記録媒体214の記録面とインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yのノズル面が略平行となるように、水平面に対して傾けられて配置されている。
【0129】
インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yは、記録媒体214における画像形成領域の最大幅(記録媒体214の搬送方向と直交する方向の長さ)に対応する長さを有するフルライン型のヘッドであり、記録媒体214の搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。また、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yのそれぞれは、詳細を後述するインク供給装置からインクが供給される。
【0130】
インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yのノズル面(液体吐出面)には、記録媒体214の画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルがマトリクス配置されて形成されている。
【0131】
記録媒体214がインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの直下の印字領域に搬送されると、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yから記録媒体214の凝集処理液が付与された領域に画像データに基づいて各色のインクが吐出(打滴)される。
【0132】
インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yから、対応する色インクの液滴が、描画胴244の外周面に保持された記録媒体214の記録面に向かって吐出されると、記録媒体214上で処理液とインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料系色材)又は不溶化する色材(染料系色材)の凝集反応が発現し、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体214上に形成された画像における色材の移動(ドットの位置ずれ、ドットの色ムラ)が防止される。
【0133】
また、描画部240の描画胴244は、処理液塗布部230の処理液胴234に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yに処理液が付着することがなく、インクの吐出異常の要因を低減することができる。
【0134】
なお、本例では、MKCYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0135】
(乾燥処理部)
乾燥処理部250は、画像形成後の記録媒体214を保持して搬送する乾燥胴(乾燥ドラム)254と、該記録媒体214上の水分(液体成分)を蒸発させる乾燥処理を施す乾燥処理装置256を備えている。なお、乾燥胴254の基本構造は、先に説明した処理液胴234及び描画胴244と共通しているので、ここでの説明は省略する。
【0136】
乾燥処理装置256は、乾燥胴254の外周面に対向する位置に配置され、記録媒体214に存在する水分を蒸発させる処理部である。描画部240により記録媒体214にインクが付与されると、処理液とインクとの凝集反応により分離したインクの液体成分(溶媒成分)及び処理液の液体成分(溶媒成分)が記録媒体214上に残留してしまうので、かかる液体成分を除去する必要がある。
【0137】
乾燥処理装置256は、ヒータによる加熱、ファンによる送風、又はこれらを併用して記録媒体214上に存在する液体成分を蒸発させる乾燥処理を施し、記録媒体214上の液体成分を除去するための処理部である。記録媒体214に付与される加熱量及び送風量は、記録媒体214上に残留する水分量、記録媒体214の種類、及び記録媒体214の搬送速度(乾燥処理時間)等のパラメータに応じて適宜設定される。
【0138】
乾燥処理装置256による乾燥処理が行われる際に、乾燥処理部250の乾燥胴254は、描画部240の描画胴244に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yにおいて、熱又は送風によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの吐出異常の要因を低減することができる。
【0139】
記録媒体214のコックリングの矯正効果を発揮させるために、乾燥胴254の曲率を0.002(1/mm)以上とするとよい。また、乾燥処理後の記録媒体の湾曲(カール)を防止するために、乾燥胴254の曲率を0.0033(1/mm)以下とするとよい。
【0140】
また、乾燥胴254の表面温度を調整する手段(例えば、内蔵ヒータ)を備え、該表面温度を50℃以上に調整するとよい。記録媒体214の裏面から加熱処理を施すことによって乾燥が促進され、次段の定着処理時における画像破壊が防止される。かかる態様において、乾燥胴254の外周面に記録媒体214を密着させる手段を具備するとさらに効果的である。記録媒体214を密着させる手段の一例として、真空吸着、静電吸着などが挙げられる。
【0141】
なお、乾燥胴254の表面温度の上限については、特に限定されるものではないが、乾燥胴254の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75℃以下(より好ましくは60℃以下)に設定されることが好ましい。
【0142】
このように構成された乾燥胴254の外周面に、記録媒体214の記録面が外側を向くように(すなわち、記録媒体214の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥処理を施すことで、記録媒体214のシワや浮きに起因する乾燥ムラが確実に防止される。
【0143】
(定着処理部)
定着処理部260は、記録媒体214を保持して搬送する定着胴(定着ドラム)264と、画像形成がされ、さらに、液体が除去された記録媒体214に加熱処理を施すヒータ266と、該記録媒体214を記録面側から押圧する定着ローラ268と、を備えて構成される。なお、定着胴264基本構造は処理液胴234、描画胴244、及び乾燥胴254と共通しているので、ここでの説明は省略する。ヒータ266及び定着ローラ268は、定着胴264の外周面に対向する位置に配置され、定着胴264の回転方向(図21において反時計回り方向)の上流側から順に配置される。
【0144】
定着処理部260では、記録媒体214の記録面に対してヒータ266による予備加熱処理が施されるとともに、定着ローラ268による定着処理が施される。ヒータ266の加熱温度は記録媒体の種類、インクの種類(インクに含有するポリマー微粒子の種類)などに応じて適宜設定される。例えば、インクに含有するポリマー微粒子のガラス転移点温度や最低造膜温度とする態様が考えられる。
【0145】
定着ローラ268は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体214を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ268は、定着胴264に対して圧接するように配置されており、定着胴264との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体214は、定着ローラ268と定着胴264との間に挟まれ、所定のニップ圧でニップされ、定着処理が行われる。
【0146】
定着ローラ268の構成例として、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成する態様が挙げられる。かかる加熱ローラで記録媒体214を加熱することによって、インクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度以上の熱エネルギーが付与されると、該ポリマー微粒子が溶融して画像の表面に透明の被膜が形成される。
【0147】
この状態で記録媒体214の記録面に加圧を施すと、記録媒体214の凹凸に溶融したポリマー微粒子が押し込み定着されるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、好ましい光沢性を得ることができる。なお、画像層の厚みやポリマー微粒子のガラス転移点温度特性に応じて、定着ローラ268を複数段設けた構成も好ましい。
【0148】
また、定着ローラ268の表面硬度は71°以下であることが好ましい。定着ローラ268の表面をより軟質化することで、コックリングにより生じた記録媒体214の凹凸に対して追随効果を期待でき、記録媒体214の凹凸に起因する定着ムラがより効果的に防止される。
【0149】
図21に示すインクジェット記録装置200は、定着処理部260の処理領域の後段(記録媒体搬送方向の下流側)には、インラインセンサ282が設けられている。インラインセンサ282は、記録媒体214に形成された画像(又は記録媒体214の余白領域に形成されたチェックパターン)を読み取るためのセンサであり、CCDラインセンサが好適に用いられる。
【0150】
本例に示すインクジェット記録装置200は、インラインセンサ282の読取結果に基づいてインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの吐出異常の有無が判断される。また、インラインセンサ282は、水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段を含む態様も可能である。かかる態様において、水分量、表面温度、光沢度の読取結果に基づいて、乾燥処理部250の処理温度や定着処理部260の加熱温度及び加圧圧力などのパラメータを適宜調整し、装置内部の温度変化や各部の温度変化に対応して、上記制御パラメータが適宜調整される。
【0151】
(排出部)
図21に示すように、定着処理部260に続いて排出部270が設けられている。排出部270は、張架ローラ272A,272Bに巻きかけられた無端状の搬送チェーン274と、画像形成後の記録媒体214が収容される排出トレイ276と、を備えて構成されている。
【0152】
定着処理部260から送り出された定着処理後の記録媒体214は、搬送チェーン274によって搬送され、排出トレイ276に排出される。
【0153】
〔インクジェットヘッドの構造〕
次に、描画部240に具備されるインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの構造の一例について説明する。なお、各色に対応するインクジェットヘッド248M,248K,248C,248Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号300によってインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)を示すものとする。
【0154】
図22は、インクジェットヘッド300の概略構成図であり、同図はインクジェットヘッド300から記録媒体の記録面を見た図(ヘッドの平面透視図)となっている。同図に示すヘッド300は、n個のヘッドモジュール302‐i(iは1からnの整数)をヘッド300の長手方向に沿って一列につなぎ合わせてマルチヘッドを構成している。また、各ヘッドモジュール302‐iは、ヘッド300の短手方向の両側からヘッドカバー304,306によって支持されている。なお、ヘッドモジュール302を千鳥状に配置してマルチヘッドを構成することも可能である。
【0155】
複数のサブヘッドにより構成されるマルチヘッドの適用例として、記録媒体の全幅に対応したフルライン型ヘッドが挙げられる。フルライン型ヘッドは、記録媒体の移動方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)について、記録媒体の主走査方向における長さ(幅)に対応して、複数のノズル(図23に符号308を付して図示する)が並べられた構造を有している。かかる構造を有するヘッド300と記録媒体とを相対的に一回だけ走査させて画像記録を行う、いわゆるシングルパス画像記録方式により、記録媒体の全面にわたって画像を形成し得る。
【0156】
ヘッド300を構成するヘッドモジュール302‐iは、略平行四辺形の平面形状を有し、隣接するサブヘッド間にオーバーラップ部が設けられている。オーバーラップ部とは、サブヘッドのつなぎ部分であり、ヘッドモジュール302‐iの並び方向について、隣接するドットが異なるサブヘッドに属するノズルによって形成される。なお、図22に示すヘッド300は図9に示したヘッド50’と等価であり、ヘッドモジュール302はヘッドモジュール51と等価である。
【0157】
図23は、ヘッドモジュール302‐iのノズル配列を示す平面図である。同図に示すように、各ヘッドモジュール302‐iは、ノズル308が二次元状に並べられた構造を有し、かかるヘッドモジュール302‐iを備えたヘッドは、いわゆるマトリクスヘッドと呼ばれるものである。図23に図示したヘッドモジュール302‐iは、副走査方向Yに対して角度αをなす列方向W、及び主走査方向Xに対して角度βをなす行方向Vに沿って多数のノズル308が並べられた構造を有し、主走査方向Xの実質的なノズル配置密度が高密度化されている。図23では、行方向Vに沿って並べられたノズル群(ノズル行)は符号310を付し、列方向Wに沿って並べられたノズル群(ノズル列)は符号312を付して図示されている。
【0158】
なお、ノズル308のマトリクス配置の他の例として、主走査方向Xに沿う行方向、及び主走査方向Xに対して斜め方向の列方向に沿って複数のノズル308を配置する構成が挙げられる。
【0159】
図24は、記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル308に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図である。同図に示すように、本例のヘッド300(ヘッドモジュール302)は、ノズル308が形成されたノズルプレート314と、圧力室316や共通流路318等の流路が形成された流路板320等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート314は、ヘッド300のノズル面314Aを構成し、各圧力室316にそれぞれ連通する複数のノズル308が2次元的に形成されている。
【0160】
流路板320は、圧力室316の側壁部を構成するとともに、共通流路318から圧力室316にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口322を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図24では簡略的に図示しているが、流路板320は一枚又は複数の基板を積層した構造である。
【0161】
ノズルプレート314及び流路板320は、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
【0162】
共通流路318はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路318を介して各圧力室316に供給される。
【0163】
圧力室316の一部の面(図24における天面)を構成する振動板324には、個別電極326及び下部電極328を備え、個別電極326と下部電極328との間に圧電体330が挟まれた構造を有するピエゾアクチュエータ332が接合されている。振動板324を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、ピエゾアクチュエータ332の下部電極328に相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
【0164】
個別電極326に駆動電圧を印加することによってピエゾアクチュエータ332が変形して圧力室316の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル308からインクが吐出される。インク吐出後、ピエゾアクチュエータ332が元の状態に戻る際、共通流路318から供給口322を通って新しいインクが圧力室316に再充填される。
【0165】
かかる構造を有するインク室ユニットを図23に示す如く、主走査方向Xと角度βをなす行方向V及び副走査方向Yに対して角度αをなす列方向Wに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向Yの隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向Xについては実質的に各ノズル308が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
【0166】
本例では、ヘッド300に設けられたノズル308から吐出させるインクの吐出力発生手段としてピエゾアクチュエータ332を適用したが、圧力室316内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
【0167】
〔制御系の説明〕
図25は、インクジェット記録装置200の制御系の概略構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置200は、通信インターフェース340、システム制御部342、搬送制御部344、画像処理部346、ヘッド駆動部348を備えるとともに、画像メモリ350、ROM352を備えている。
【0168】
通信インターフェース340は、ホストコンピュータ354から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース340は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース340は、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0169】
システム制御部342は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置200の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能し、さらに、画像メモリ350及びROM352のメモリコントローラとして機能する。すなわち、システム制御部342は、通信インターフェース340、搬送制御部344等の各部を制御し、ホストコンピュータ354との間の通信制御、画像メモリ350及びROM352の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
【0170】
ホストコンピュータ354から送出された画像データは通信インターフェース340を介してインクジェット記録装置200に取り込まれ、画像処理部346によって所定の画像処理が施される。
【0171】
画像処理部346は、画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した印字データをヘッド駆動部348に供給する制御部である。画像処理部346において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッド駆動部348を介してヘッド300の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図25に示すヘッド駆動部348には、ヘッド300の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0172】
搬送制御部344は、画像処理部346により生成された印字制御用の信号に基づいて記録媒体214(図21参照)の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。図25における搬送駆動部356は、図21の圧胴234〜264を回転させるモータや、渡し胴232〜62を回転させるモータ、給紙部220における記録媒体214の送出機構のモータ、排出部270の張架ローラ272A(272B)を駆動するモータなどが含まれ、搬送制御部344は上記のモータのドライバーとして機能している。
【0173】
画像メモリ(一次記憶メモリ)350は、通信インターフェース340を介して入力された画像データを一旦格納する一次記憶手段としての機能や、ROM352に記憶されている各種プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域(例えば、画像処理部346の作業領域)としての機能を有している。画像メモリ350には、逐次読み書きが可能な揮発性メモリ(RAM)が用いられる。
【0174】
ROM352は、システム制御部342のCPUが実行するプログラムや、装置各部の制御に必要な各種データ、制御パラメータなどが格納されており、システム制御部342を通じてデータの読み書きが行われる。ROM352は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、着脱可能な記憶媒体を用いてもよい。
【0175】
さらに、このインクジェット記録装置200は、処理液付与制御部360、乾燥処理制御部362、及び定着処理制御部364を備えており、システム制御部342からの指示に従って、それぞれ、処理液塗布部230、乾燥処理部250、及び定着処理部260の各部の動作を制御する。
【0176】
処理液付与制御部360は、画像処理部346から得られた印字データに基づいて、処理液付与のタイミングの制御を制御するとともに、処理液の付与量を制御する。また、乾燥処理制御部362は、乾燥処理装置256における乾燥処理のタイミングを制御するとともに、処理温度、送風量等を制御し、定着処理制御部364は、ヒータ266の温度を制御するとともに、定着ローラ268の押圧を制御する。
【0177】
図21に示したインラインセンサ282を含むインライン検出部466は、インラインセンサ282から出力される読取信号にノズル除去や増幅、波形整形などの所定の信号処理を施す信号処理部を含む処理ブロックである。システム制御部342は、当該インライン検出部により得られた検出信号に基づいて、ヘッド300の吐出異常の有無を判断する。
【0178】
インク供給制御部386は、インク供給部388によるヘッド300へのインク供給の制御を行う。インク供給制御部386の具体例として、図9に示す構成が挙げられる。また、図25に示すインク供給部388は、上述したインク供給装置10,100が適用される。
【0179】
本例に示すインクジェット記録装置200は、ユーザインターフェース370を具備し、該ユーザインターフェース370は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置372と、表示部(ディスプレイ)374を含んで構成される。入力装置372には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置372を操作することにより、印刷条件の入力、画質モードの選択、付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果など等の各種情報は表示部374の表示を通じて確認することができる。この表示部374はエラーメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。なお、図25の表示部374は、図9に図示した制御系における報知手段としてのディスプレイに適用することができる。
【0180】
脱気制御部378は、インクタンク52(図1参照)からヘッド300へ送られる液に脱気処理を施す脱気モジュール160の動作を制御する。
【0181】
パラメータ記憶部380は、インクジェット記録装置200の動作に必要な各種制御パラメータが記憶されている。システム制御部342は、制御に必要なパラメータを適宜読み出すとともに、必要に応じて各種パラメータの更新(書換)を実行する。
【0182】
圧力センサ381(図17に図示した圧力センサ16、116と等価)は、インク流路の圧力を計測するための圧力検出素子を含み、計測された圧力情報を電気信号に変換してシステム制御部342へ提供する。システム制御部342は、当該圧力情報に基づいてインク供給部388に含まれるポンプの動作(回転速度)を補正するようにインク供給制御部386へ指令信号を送出する。
【0183】
プログラム格納部384は、インクジェット記録装置200を動作させるための制御プログラムが格納されている記憶手段である。この制御プログラムにはインク供給部388に含まれる供給ポンプ20、回収ポンプ120や脱気モジュール160、熱交換器166等の制御プログラムが含まれる。
【0184】
(他の装置構成への適用例)
本変形例では、画像形成装置の例として、インクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲は写真プリントやポスター印刷などのいわゆるグラフィック印刷の用途に限定されず、レジスト印刷装置、電子回路基板の配線描画装置、微細構造物形成装置など、画像として把握できるパターンを形成し得る工業用途の装置も包含する。
【0185】
本発明の技術的範囲は、上記実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合せることができる。
【符号の説明】
【0186】
10,10’,100…インク供給装置、12…供給流路、16,116,381…圧力センサ、18,118…サブタンク、20,120…ポンプ、22,22’…弾性膜、24…液室、26…気室、30,34,40,130,134,140…バルブ、50,50’,248M,248K,248C,248Y,300…ヘッド、70,342…システム制御部、72…ポンプ制御部、74…バルブ制御部、80,380…パラメータ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドに連通する液体供給流路と、
前記液体供給流路に設けられ、液体に所定の圧力を付与する液体圧力付与手段と、
前記液体供給流路の途中に設けられた圧力緩衝部であって、前記液体供給流路を流れる液体を流出入させる供給口及び排出口を有する液体室と、前記液体室と可撓膜を挟んで対設された気体室と、を含んで構成される圧力緩衝部と、
を備え、
前記可撓膜は、予め初期撓みが与えられていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記可撓膜は、前記気体室の内壁の形状にならう三次元形状を有することを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記気体室の大気に対する開放又は遮断を切り換える大気連通路切換手段を備え、
前記気体室を大気開放した状態で前記液体圧力付与手段により前記可撓膜の撓み量を変更し、所望の撓み量となったときに前記気体室と大気とを遮断することで前記初期撓みを与えることを特徴とする請求項2に記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記気体室の内壁が曲面であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項5】
前記液体室内の圧力を検知する圧力検知手段と、
前記記録ヘッドに配置されたノズルに所定の背圧が作用するように前記液体圧力付与手段の圧力値を設定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項6】
記録ヘッドに連通する液体供給流路と、
前記液体供給流路に設けられ、液体に所定の圧力を付与する第1の液体圧力付与手段と、
前記液体供給流路の途中に設けられた第1の圧力緩衝部であって、前記液体供給流路を流れる液体を流出入させる供給口及び排出口を有する液体室と、前記液体室と可撓膜を挟んで対設された気体室と、を含んで構成される第1の圧力緩衝部と、
前記記録ヘッドに連通する液体回収流路と、
前記液体回収流路に設けられ、液体に所定の圧力を付与する第2の液体圧力付与手段と、
前記液体回収流路の途中に設けられた第2の圧力緩衝部であって、前記液体回収流路を流れる液体を流出入させる供給口及び排出口を有する液体室と、前記液体室と可撓膜を挟んで対設された気体室と、を含んで構成される第2の圧力緩衝部と、
を備え、
前記第1の圧力緩衝部の可撓膜及び前記第2の圧力緩衝部の可撓膜は、予め初期撓みが与えられていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項7】
前記第1の圧力緩衝部の可撓膜及び前記第2の圧力緩衝部の可撓膜は、それぞれ前記第1の圧力緩衝部の気体室及び前記第2の圧力緩衝部の気体室の内壁の形状にならう三次元形状を有することを特徴とする請求項6に記載の液体供給装置。
【請求項8】
前記第1の圧力緩衝部の気体室の大気に対する開放又は遮断を切り換える第1の大気連通路切換手段と、
前記第2の圧力緩衝部の気体室の大気に対する開放又は遮断を切り換える第2の大気連通路切換手段と、
を備え、
前記第1の圧力緩衝部の気体室を大気開放した状態で前記第1の液体圧力付与手段により前記可撓膜の撓み量を変更し、所望の撓み量となったときに前記気体室と大気とを遮断することで前記第1の圧力緩衝部の可撓膜に前記初期撓みを与えるとともに、前記第2の圧力緩衝部の気体室を大気開放した状態で前記第2の液体圧力付与手段により前記可撓膜の撓み量を変更し、所望の撓み量となったときに前記気体室と大気とを遮断することで前記第2の圧力緩衝部の可撓膜に前記初期撓みを与えることを特徴とする請求項7に記載の液体供給装置。
【請求項9】
前記第1の圧力緩衝部の気体室の内壁及び前記第2の圧力緩衝部の気体室の内壁が曲面であることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項10】
前記第1の圧力緩衝部の液体室内の圧力を検知する圧力検知手段と、
前記第1の液体圧力付与手段と前記第2の液体圧力付与手段との間に所定の圧力差を設けるとともに、前記記録ヘッドに配置されたノズルに所定の背圧が作用するように前記第1の液体圧力付与手段の圧力値と前記第2の液体圧力付与手段の圧力値とを設定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の液体供給装置と、
ノズルから液体を吐出する記録ヘッドと、
前記液体供給流路に連通し、前記ノズルから吐出される液体を貯留する液体貯留部と、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の液体吐出装置と、
前記記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動する走査手段と、
を備えたことを特徴とする画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−71359(P2013−71359A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212936(P2011−212936)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】