説明

液体吐出検査方法、液体吐出検査装置、および印刷装置

【課題】短い検査時間でも液体吐出検査の誤検出率を減らして検出精度を向上させることが可能な液体吐出検査方法、液体吐出検査装置、および印刷装置を提供する。
【解決手段】インク滴を吐出するインクノズルが形成された印刷ヘッド14と、印刷ヘッド14に対向して隙間をあけて配置させたヘッドキャップ63と、の間で電位差を生じさせた状態で、印刷ヘッド14のインクノズルからインク滴を吐出させてヘッドキャップ63での電流変化量に基づいてインクノズルからのインク滴の吐出の有無を検査する方法であって、複数のインクノズルの検査を実施した後、「非吐出」と判定されたインクノズルのみを3回再検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドのノズルから液滴を吐出させてヘッドキャップ内での電流変化量に基づいてノズルからの液滴の吐出の有無を検査する液体吐出検査方法、液体吐出検査装置、およびそれを備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタ等の印刷装置は、往復移動可能なキャリッジに搭載された印刷ヘッドが複数のノズルからインク滴を所望の位置に吐出することによって印刷を行うように構成されている。
この種のインクジェットプリンタにおいて、正常にインク滴が吐出されているか否かを検査する方法としては、ノズルから吐出された帯電インクにより生じる電流変化を検出することによって吐出の有無を判定する液体吐出検査方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−264243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような液体吐出検査方法では、検出した電流変化の大きさが所定の閾値を越えたか否かで「吐出」または「非吐出」を判断することができるが、吐出しているのにも関わらず「非吐出」と判定されることや、非吐出にも関わらず「吐出」と判定されることが確率的に発生しうる。
このような誤検出率を低くするために、再度全ノズルの検査を行うことによって検出精度を上げる方法が考えられるが、この方法を実施すると検査時間が大幅に長くなってしまう。
【0004】
そこで、本発明の目的は、短い検査時間でも液体吐出検査の誤検出率を減らして検出精度を向上させることが可能な液体吐出検査方法、液体吐出検査装置、および印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することのできる本発明に係る液体吐出検査方法は、液滴を吐出するノズルが複数形成された液体吐出部と、前記液体吐出部に対向して隙間をあけて配置させた液体受け部と、の間で電位差を生じさせた状態で、前記ノズルから液滴を吐出させて前記液体受け部での電流変化量に基づいて前記ノズルからの液滴の吐出の有無を検査する液体吐出検査方法であって、
複数の前記ノズルの検査を実施した後、「非吐出」と判定されたノズルのみを再検査することを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る液体吐出検査装置は、液滴を吐出するノズルが複数形成された液体吐出部と、
前記液体吐出部に対向して隙間をあけて配置可能な液体受け部と、
前記液体受け部での電流変化を検出する検出部と、を備え、
前記液体吐出部と前記液体受け部との間で電位差を生じさせた状態で、前記ノズルから液滴を吐出させて前記検出部により検出した電流変化量に基づいて前記ノズルからの液滴の吐出の有無を検査する液体吐出検査装置であって、
複数の前記ノズルの検査が実施された後、「非吐出」と判定されたノズルのみが再検査されることを特徴とする。
【0007】
この構成の液体吐出検査方法および液体吐出検査装置によれば、液体吐出部の複数のノズルの検査を実施した後、「非吐出」と判定されたノズルのみを再検査するため、全ノズルを再検査する場合と比較して、再検査に要する時間が極めて短くなる。したがって、再検査を実施しない場合と略同等の検査時間で液体吐出検査の誤検出率を減らして検出精度を向上させ、液体吐出部の不良を精度良く検出することで、液体吐出部のノズルの状態を良好に保つことができる。また、全てのノズルを再検査する場合より液体の消費量も大幅に減らすことができる。
【0008】
本発明に係る液体吐出検査方法において、前記「非吐出」と判定されたノズルのみを複数回再検査することが好ましい。
再検査に要する時間が極めて短いため、再検査を複数回行っても検査時間は殆ど長くならず、しかも検査精度をさらに向上させることができる。
【0009】
本発明に係る液体吐出検査方法において、前記「非吐出」と判定されたノズルのみを3回再検査することが好ましい。
再検査を3回行うことで、少ない回数で十分な検査精度を得ることができ、再検査の回数として好ましい。
【0010】
また、本発明に係る印刷装置は、本発明に係る上記液体吐出検査装置を備え、
前記液体としてインクが使用され、
前記液体吐出部がインク滴を吐出する印刷ヘッドであり、
前記液体受け部が前記印刷ヘッドに接離可能なヘッドキャップであることを特徴とする。
【0011】
この構成の印刷装置によれば、印刷ヘッドのインク吐出検査を行うに際し、検査時間を殆ど長くすることなく精度良く検査を行うことができる。したがって、インク吐出検査の誤検出率を減らして検出精度を向上させ、印刷ヘッドのドット抜け等の不良を精度良く検出することで、印刷品質を良好に保つことができる。また、再検査のインク消費量も極めて少なく抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る液体吐出検査方法、液体吐出検査装置、および印刷装置の実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施形態に係る印刷装置であるロール紙プリンタの外観斜視図であり、図2は図1に示したロール紙プリンタのロール紙カバーを開いた状態の外観斜視図であり、図3は図1に示したロール紙プリンタの内部構成を示す概略側面図であり、図4は図1に示したロール紙プリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図である。
【0013】
本実施形態のロール紙プリンタ1は、複数種のカラーインク液を使用してインクジェット方式によりロール紙にカラー印刷するものであり、図1に示すように、プリンタ本体2の外装をなすプリンタケース2aの前面には、ロール紙カバー3及びインクカートリッジカバー7が開閉自在に設けられている。また、プリンタケース2aの前面には、ロール紙の幅に対応した所定幅の記録紙排出口4が形成されている。記録紙排出口4の下側には排紙ガイド5が前方に突出しており、当該排紙ガイド5の側方にはロール紙カバー3を開くための開閉レバー6が配置されている。プリンタケース2aにおける排紙ガイド5および開閉レバー6の下側には、ロール紙を出し入れするための矩形の開口部2bが形成されており、この開口部2bがロール紙カバー3によって封鎖されている。
【0014】
開閉レバー6を操作するとロール紙カバー3のロックが解除される。ロック解除後、排紙ガイド5を前方に引くと、図2に示すように、ロール紙カバー3が下端部を中心として前方にほぼ水平になるまで開く。ロール紙カバー3が開くと、プリンタ内部に形成されているロール紙収納部11が開放状態となるとともに、ロール紙収納部11から記録紙排出口4に至る記録紙搬送経路が開放状態となり、プリンタ前方からロール紙の交換作業などを簡単に行うことができるようになっている。なお、図2においては、ロール紙カバー3の外装部分および開閉レバー6の図示を省略している。
【0015】
図3に示すように、ロール紙プリンタ1の内部には、本体フレーム10における幅方向の中央部分にロール紙収納部11が形成されている。ロール紙収納部11にはロール紙12がプリンタ幅方向にロール紙幅方向を沿わせた向きで収納される。
【0016】
ロール紙収納部11の上側には、本体フレーム10の上端にヘッドユニットフレーム13が水平に取り付けられている。ヘッドユニットフレーム13には、インクジェットヘッドである印刷ヘッド14、印刷ヘッド14の位置を検出するためのリニアスケール15およびエンコーダセンサ16、印刷ヘッド14およびエンコーダセンサ16を搭載しているキャリッジ17、キャリッジ17のプリンタ幅方向への移動をガイドするキャリッジガイド軸18が配置されている。また、キャリッジ17をキャリッジガイド軸18に沿って往復移動させるためのキャリッジモータ19およびタイミングベルト20を備えたキャリッジ搬送機構が配置されている。
【0017】
印刷ヘッド(液体吐出部)14はインク滴を吐出するノズル形成面14aが下向きになるようにキャリッジ17に搭載されている。エンコーダセンサ16は印刷ヘッド14の上端面14bに配置されている。キャリッジガイド軸18はプリンタ幅方向に水平に掛け渡されており、リニアスケール15は、印刷ヘッド14の上方においてキャリッジガイド軸18と平行に掛け渡されている。
【0018】
印刷ヘッド14の下側には一定のギャップを設けてプリンタ幅方向に水平に延びるプラテン21が配置されている。プラテン21によって印刷ヘッド14の印刷位置が規定されている。プラテン21の後端には下方に湾曲しているテンションガイド22が取り付けられている。テンションガイド22はバネによって上方に付勢されており、ロール紙収納部11に収納されているロール紙12から引き出された記録紙12aは、テンションガイド22によって所定の張力が付与された状態で印刷位置を経由する記録紙搬送経路に沿って引き出される。
【0019】
プラテン21の後側には、後側紙送りローラ23がプリンタ幅方向に水平に掛け渡されている。後側紙送りローラ23には所定幅の後側紙押さえローラ24が記録紙12aを介して、所定の押圧力で押し付けられている。プラテン21における前端側の部位には、前側紙送りローラ25が配置されている。前側紙送りローラ25には、上側から前側紙押さえローラ26が記録紙12aを介して、押し付けられている。後側紙送りローラ23および前側紙送りローラ25は、本体フレーム10に搭載されている紙送りモータ27によって駆動される。
【0020】
キャリッジ17をキャリッジガイド軸18に沿って往復移動させながら、キャリッジ17に搭載されている印刷ヘッド14により、ロール紙12から繰り出されて印刷位置に位置している記録紙12aの部分の表面に印刷が行われる。印刷位置はエンコーダセンサ16の検出信号に基づいて制御されている。記録紙12aの幅方向への一連の行印刷が終了した後は、後側紙送りローラ23および前側紙送りローラ25が回転駆動されて、所定ピッチだけ記録紙12aが送り出される。この後に、次の行の印刷が行われる。このように、記録紙12aは、所定ピッチで間欠的に送り出されながら印刷ヘッド14によって印刷が施される。印刷後の記録紙12aが排出される記録紙排出口4には、例えば鋏式の記録紙切断装置28が配置されている。記録紙切断装置28によって、これらの間に位置する記録紙12aが幅方向に切断される。
【0021】
なお、プラテン21、テンションガイド22、後側紙送りローラ23、前側紙送りローラ25は、ロール紙カバー3と一緒に開閉するようになっている。
【0022】
また、図1および図2に示したインクカートリッジカバー7を開くと、その内側のカートリッジ装着部9(図4参照)が開放状態になり、このカートリッジ装着部9へのインクカートリッジ8の着脱が可能になる。
【0023】
インクカートリッジ8は、カートリッジケース内に複数個のカラーインクパックを収容したものである。本実施形態のロール紙プリンタ1の場合は、インクカートリッジカバー7を開く動作に連動して、カートリッジ装着部9の前方にインクカートリッジ8が所定距離だけ引き出される構成になっている。
【0024】
インクカートリッジ8内の各インクパックは、インクカートリッジ8をカートリッジ装着部9に装着した際に、カートリッジ装着部9側に設けられたインク供給針がインクパックのインク供給口に差込接続される。カートリッジ装着部9のインク供給針には、プリンタケース2a内に固定されたインク流路31が接続され、このインク流路31には、可撓性のインク供給チューブ33の一端が接続されている。
インク供給チューブ33の他端は、キャリッジ17に接続され、ダンパユニットや背圧調整ユニットを介して印刷ヘッド14に連通している。
【0025】
図4に示すように、印刷領域から外れたカートリッジ装着部9の上方が、往復移動するキャリッジ17の待機位置(メンテナンス領域)となっている。そして、この待機位置の下方には、キャリッジ17の下面に露出する印刷ヘッド14の保守動作を行うヘッドメンテナンス機構40が配置されている。
【0026】
ヘッドメンテナンス機構40は、図5に示すように、印刷ヘッド14のノズル形成面を封止するためのヘッドキャップ機構60と、このノズル形成面を払拭するためのワイパ機構50と、ヘッドキャップ機構60から残留インクを吸引するためのインク吸引機構70とを備えている。
【0027】
ヘッドキャップ機構60、ワイパ機構50及びインク吸引機構70は、動力伝達機構80を介してポンプモータ(図示省略)により駆動される。これらの各部分は、プリンタ本体に着脱可能なハウジング41に取り付けられている。
【0028】
ワイパ機構50及びヘッドキャップ機構60は、キャリッジ17の往復動方向に併設されており、インク吸引機構70は、ヘッドキャップ機構60のプリンタ後方側(図5中右奥側)に併設されている。
そして、ヘッドキャップ機構60とワイパ機構50とインク吸引機構70とが連動可能なように動力伝達機構80が配設されている。
【0029】
動力伝達機構80は、複数の歯車からなる歯車列で構成され、ポンプモータからの駆動力及びハウジング41の案内によりヘッドキャップ機構60及びワイパ機構50を印刷ヘッド14の往復動方向に沿う方向及び上下方向に進退動させると共に、インク吸引機構70を動作させるように構成されている。
【0030】
インク吸引機構70は、チューブ72の一端がヘッドキャップ機構60と接続され、他端がインクカートリッジ17の廃インク導入部に接続されたチューブポンプであり、このインク吸引機構70が駆動されると、ヘッドキャップ機構60を介して印刷ヘッド14のノズルからインクを吸引し、インクカートリッジ8の廃インク貯留室に排出される。
【0031】
ヘッドキャップ機構60は、スライダ64と、キャップホルダ62に固定されたヘッドキャップ(液体受け部)63とを備えている。スライダ64は、ケース状に形成されたもので、印刷ヘッド14のノズル形成面に対して接近又は離間するように、ハウジング41に支持されている。
スライダ64の上端凹部には、先端部分にヘッドキャップ63が固定されたキャップホルダ62がスライダ64に対し進退移動できるように保持されている。
【0032】
ワイパ機構50は、スライダ52と、ワイパ51とを備えている。スライダ52は、箱型状に形成されたもので、ヘッドキャップ機構60のスライダ64と同じ方向にスライドするように、スライド部53がハウジング41に設けられたガイド部44に支持案内されている。スライダ52の先端部分には、弾性材であるゴム製の板材からなるワイパ51が埋め込まれている。
【0033】
そして、スライダ52は、最もワイパ51がヘッドメンテナンス機構40の内側に引っ込んだ位置(退避位置)と、ワイパ51によってノズル形成面の汚れを払拭する処理を行うためのワイピング位置との間を移動できるようになっている。ワイピング位置は、ワイパ51の先端が印刷ヘッド14のノズル形成面に対し接触して擦れるようになっている。これにより、ワイパ51はノズル形成面に付着しているインク等の異物を払拭することができる。尚、インクの種類によっては、ワイパ51を軟質のプラスチック等により形成しても良い。
【0034】
図6に示すように、ヘッドキャップ63は、印刷ヘッド14のノズル形成面14aを封止可能な大きさの開口を有する箱型状のゴムで形成されたもので、上端縁部は、ノズル形成面14aに密着可能なリップ部96とされている。
【0035】
このヘッドキャップ63は、収納凹部94を有し、この収納凹部94内に、廃インクを吸収する多層構造の吸収材95が収納され、この吸収材95は、図示しない押さえ部材によって保持され、その上面が、リップ部96の先端位置よりも下がった位置とされている。
【0036】
このヘッドキャップ63には、インク吸引機構70からのチューブの一端が接続されており、ノズル形成面14aにリップ部96が密着した状態にて、インク吸引機構70のポンプモータが駆動されることにより、ヘッドキャップ63内を減圧して印刷ヘッド14のインクノズルからインクが吸引され、インクカートリッジ8の廃インク貯留室に排出される。
【0037】
また、このヘッドキャップ63の収納凹部94内には、電流検査用の検出部である金属軸97が立設されており、この金属軸97は、吸収材95と導通可能とされている。この金属軸97には、その下端にリード線98が接続されており、このリード線98を介して信号が取り出し可能とされている。
【0038】
そして、上記ロール紙プリンタ1では、ヘッドメンテナンス機構40によって印刷ヘッド14のクリーニングが行われる。なお、このクリーニングは、予め設定された所定のタイミングあるいはユーザの操作時に行われるもので、印刷ヘッド14のノズル形成面14aにヘッドキャップ63を密着させてインク吸引機構70によって内部を吸引して印刷ヘッド14のインクノズルから増粘状態のインクを吸引するインク吸引処理及び印刷ヘッド14のノズル形成面14aの汚れをワイパ51によって払拭するワイピング処理が行われる。
【0039】
また、上記ヘッドメンテナンス機構40を備えたロール紙プリンタ1では、印刷ヘッド14のインクノズルでのインクのメニスカスを形成するために、印刷開始前あるいは定期的に印刷ヘッド14のインクノズルから所定量のインクをヘッドキャップ63内に吐出するフラッシング処理、インクノズルの詰まりを防止するために印刷休止後にて印刷ヘッド14のノズル形成面14aにヘッドキャップ63を密着させて保護するキャッピング処理を行う。
【0040】
さらに、上記ロール紙プリンタ1では、ヘッドメンテナンス機構40によって、印刷ヘッド14のノズル形成面14aに形成された複数のインクノズルから正常にインク滴が吐出されるかを検査するインク吐出検査が行われる。すなわち、ヘッドメンテナンス機構40はインク吐出検査装置(液体吐出検査装置)の機能も兼ね備えたものである。
【0041】
次に、このヘッドメンテナンス機構40を用いたインク吐出検査方法(液体吐出検査方法)について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
インク吐出検査が開始されると、ヘッドキャップ63が上昇し、印刷ヘッド14のノズル形成面14aに対して僅かな隙間をあけた位置となる高さに配置されるとともに、そのヘッドキャップ63の真上に印刷ヘッド14が移動する(ステップS01)。
この状態では、印刷ヘッド14のノズル形成面14aとヘッドキャップ63のリップ部96の先端との間に所定寸法Aの隙間が形成され、また、印刷ヘッド14のノズル形成面14aとヘッドキャップ63の吸収材95の上面との隙間が、インク吐出検査を良好に行うのに十分狭い所定寸法Bとされる(図6参照)。
【0042】
この状態にて、印刷ヘッド14とヘッドキャップ63との間に所定の電位差にて電圧を印加する(ステップS02)。
そして、電圧を印加した状態にて、インク吐出検査の実行処理(ステップS03)に移行する。
【0043】
インク吐出検査では、印刷ヘッド14の全てのインクノズルから、順番に帯電したインク滴(液滴)を吐出させる(ステップS03)。このようにすると、帯電インクが吸収材95に着弾することにより生じる電流変化の信号が、電流検査用の金属軸97からリード線98を介して取り出され、その電流変化に基づいて、各インクノズルからのインク滴の吐出状態を検査することができる。なお、インク滴の吐出の有無を判定するには、検出した電流変化の信号の大きさが所定の閾値より大きいか否かで判定する。
【0044】
ノズル形成面14aにおける全てのインクノズルの検査を一通り実施した後、「非吐出」と判定されたノズルがあるか無いかを判定(ステップS04)し、ない場合(ステップS04:No)には、インク吐出検査を正常終了する(ステップ05)。ステップS04で「非吐出」のノズルがあると判定された場合(ステップS04:Yes)には、その「非吐出」と判定されたノズルが本当に吐出できない異常を抱えたノズルであるのか、それとも正常に吐出しているのにも関わらず「非吐出」と判定された誤検出であるのかを判断するために、再検査を実施する。
【0045】
本発明においては、「非吐出」と判定されたノズルのみを複数回(本実施形態では3回)再検査する(ステップS06)。再検査は1回でも構わない。また、「非吐出」と判定されたノズルが複数ある場合には、それらを順に1回ずつ検査するか、または一つのノズルにつき複数回検査を行ってから他のノズルについて複数回検査を行なうようにしても良い。本実施形態では、一つのノズル毎に複数回の再検査を実施する。
【0046】
ステップS06で複数回行った再検査のうち、「非吐出」と判定された回数が過半数であるか否かを判定する(ステップS07)。過半数を確実に判定するために、ステップS06の再検査回数は奇数回とすることが好ましい。本実施形態では、3回行った再検査のうち、2回以上「非吐出」と判定されたか否かで判定できる。3回行った再検査のうち、その判定が2回以上「非吐出」と判定されなかった場合(ステップS07:No)には、そのノズルが「吐出」のノズル(すなわち正常)であるとの判定が確定する(ステップ08)。3回行った再検査のうち、その判定が2回以上「非吐出」と判定された場合(ステップS07:Yes)には、そのノズルが「非吐出」のノズル(すなわち異常)であるとの判定が確定する(ステップ09)。
【0047】
再検査したノズルについて何れかの判定が確定した後は、ステップS03において「非吐出」と判定されたノズルが複数あり、そのうち再検査未実施のノズルがあるか否かを判定する(ステップ10)。再検査未実施のノズルがある場合には(ステップS10:Yes)、その再検査未実施のノズルを再検査すべく、再検査対象のノズルをシフトして、そのノズルに対してステップS06〜S10の工程を実施する。再検査未実施のノズルがない場合には(ステップS10:No)、インク吐出検査を正常終了する(ステップ12)。
【0048】
以上のインク吐出検査を実施した結果、「非吐出」の判定が確定したノズルがあった場合には、適宜クリーニング動作を行うと良い。これにより、インク滴の吐出が行えずドット抜けの要因となるノズルを正常な状態に戻し、印刷ヘッド14を良好な状態に回復させることができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のインク吐出検査方法およびインク吐出検査装置によれば、印刷ヘッド14の複数のインクノズルの検査を実施した後、「非吐出」と判定されたインクノズルのみを再検査するため、印刷ヘッド14における全インクノズルを再検査する場合と比較して、再検査に要する時間が極めて短くなる。したがって、再検査を実施しない場合と略同等の検査時間でインク吐出検査の誤検出率を減らして検出精度を向上させ、印刷ヘッド14の不良を精度良く検出することで、印刷ヘッド14のインクノズルの状態を良好に保つことができる。また、全てのインクノズルを再検査する場合よりインクの消費量も大幅に減らすことができる。
【0050】
そして、上記のインク吐出検査方法を実施するインク吐出検査装置(ヘッドメンテナンス機構40)を備えたロール紙プリンタ1は、印刷ヘッド14のインク吐出検査の誤検出率を減らして検出精度を向上させ、印刷ヘッド14のドット抜け等の不良を精度良く検出することで、印刷品質を良好に保つことができる。また、再検査のインク消費量も極めて少なく抑えることができる。
なお、インク吐出検査を実施する頻度は適宜設定されるものであるが、頻度が高い例としては、一片の記録紙12aに対する印刷毎、すなわち記録紙切断装置28を動作させる毎とすることができ、これによれば常に良好な印刷品質を保つことができる。
【0051】
なお、本発明に係る液体吐出検査方法および液体吐出検査装置は、上記実施形態で例示したインクジェット式のプリンタをはじめとして、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材吐出ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材吐出ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物吐出ヘッド等の液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置、精密ピペットとしての試料吐出装置等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷装置であるロール紙プリンタの外観斜視図である。
【図2】図1に示したロール紙プリンタのロール紙カバーを開いた状態の外観斜視図である。
【図3】図1に示したロール紙プリンタの内部構成を示す概略側面図である。
【図4】図1に示したロール紙プリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図である。
【図5】ヘッドメンテナンス機構の斜視図である。
【図6】ヘッドメンテナンス機構の一部の断面図である。
【図7】インク吐出検査方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1…ロール紙プリンタ(印刷装置)、14…印刷ヘッド、14a…ノズル形成面、40…ヘッドメンテナンス機構、63…ヘッドキャップ(液体受け部)、97…金属軸(検出部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルが複数形成された液体吐出部と、前記液体吐出部に対向して隙間をあけて配置させた液体受け部と、の間で電位差を生じさせた状態で、前記ノズルから液滴を吐出させて前記液体受け部での電流変化量に基づいて前記ノズルからの液滴の吐出の有無を検査する液体吐出検査方法であって、
複数の前記ノズルの検査を実施した後、「非吐出」と判定されたノズルのみを再検査することを特徴とする液体吐出検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出検査方法において、
前記「非吐出」と判定されたノズルのみを複数回再検査することを特徴とする液体吐出検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の液体吐出検査方法において、
前記「非吐出」と判定されたノズルのみを3回再検査することを特徴とする液体吐出検査方法。
【請求項4】
液滴を吐出するノズルが複数形成された液体吐出部と、
前記液体吐出部に対向して隙間をあけて配置可能な液体受け部と、
前記液体受け部での電流変化を検出する検出部と、を備え、
前記液体吐出部と前記液体受け部との間で電位差を生じさせた状態で、前記ノズルから液滴を吐出させて前記検出部により検出した電流変化量に基づいて前記ノズルからの液滴の吐出の有無を検査する液体吐出検査装置であって、
複数の前記ノズルの検査が実施された後、「非吐出」と判定されたノズルのみが再検査されることを特徴とする液体吐出検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体吐出検査装置を備え、
前記液体としてインクが使用され、
前記液体吐出部がインク滴を吐出する印刷ヘッドであり、
前記液体受け部が前記印刷ヘッドに接離可能なヘッドキャップであることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−190281(P2009−190281A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33802(P2008−33802)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】