説明

液圧発生装置

【課題】回生協調ブレーキに適用した場合に、回生制動力を十分に機能させることのできる液圧発生装置の提供。
【解決手段】シリンダ511には、プライマリピストン52aおよびセカンダリピストン52bが液密的に嵌合し、セカンダリピストン52bの前方には、作動ピストン57が摺動可能に嵌合している。プライマリピストン52aとセカンダリピストン52bとの間にはプライマリ室56aが形成され、セカンダリピストン52bと作動ピストン57との間にはセカンダリ室56bが形成されている。また、作動ピストン57とシリンダ511の底部515との間には、リザーバタンク24と連通した作動室59が形成されている。プライマリピストン52aへの入力があると、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bを縮小させる以前に、作動ピストン57が作動スプリング58を圧縮させながらシリンダ511内を前進し、作動室59を縮小させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキペダルの操作によりブレーキ液圧を発生して車輪ブレーキに供給する液圧発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用ブレーキ装置として、ブレーキペダルの踏み込みに応じて基礎液圧をマスタシリンダにて発生し、発生した基礎液圧を液圧制御弁を介在した油経路によって、当該マスタシリンダと連結された各車輪のホイールシリンダに直接付与することにより、各車輪に上述した基礎液圧に対応した基礎液圧制動力を発生させる液圧ブレーキ装置と、回生制動力を車輪の何れかに発生させる回生ブレーキ装置とを備えており、液圧ブレーキ装置と回生ブレーキ装置とを協調動作させて、ブレーキペダルの操作状態に対応した目標車両制動力を車両に付与する車両用ブレーキ装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この車両用ブレーキ装置は、ブレーキペダルの操作量に対応する目標車両制動力から、ブレーキペダルの操作量に対応する液圧ブレーキ装置の最小制動力を差し引いた差分を割振制動力とし、この割振制動力から、実際の回生制動力を差し引いた差分を、液圧ブレーキ装置の配分制動力としている。さらに、最小制動力と配分制動力との和を目標液圧制動力として、液圧ブレーキ装置に含まれるブースタの倍力比を制御している。
【0004】
これにより、特許文献1に記載された従来技術による車両用ブレーキ装置においては、目標車両制動力を達成する場合に、液圧ブレーキ装置の制動力が必ず働くことになる。したがって、液圧ブレーキ装置を作動させたり作動させなかったりするための協調制御系バルブを用いることなく、協調制御を実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001―63540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらその反面、上述した従来技術による車両用ブレーキ装置においては、常時、液圧ブレーキ装置の制動力をベースとし、さらに目標車両制動力を達成するために必要な場合に、回生制動力が働くことになる。したがって、回生制動力に余力があるにも拘らず、回生制動力が十分に機能しない場合が起こりうる。そのため、回生効率が低下し、車両の燃費が悪化するという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回生協調ブレーキに適用した場合に、回生制動力を十分に機能させることのできる液圧発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る液圧発生装置の発明の構成上の特徴は、シリンダ部が形成されたハウジングと、シリンダ部に対し液密的に嵌合され、ブレーキ操作を入力するための入力部材の操作によりシリンダ部内を摺動可能なマスタピストンと、マスタピストンの前端部とシリンダ部との間に形成され、ホイールシリンダと接続される液圧室と、マスタピストンの前端部に設けられ、マスタピストンを後方に付勢するリタンスプリングと、を備え、入力部材の操作量の増大に伴って、マスタピストンがリタンスプリングを圧縮させながらシリンダ部内を前進し、液圧室を縮小させることによりブレーキ液圧を発生させる液圧発生装置において、マスタピストンの前方において、シリンダ部に対し摺動可能に嵌合されているアイドルピストンと、アイドルピストンの前端部とシリンダ部との間に形成され、大気リザーバに接続されているアイドル室と、アイドルピストンの前端部に設けられ、アイドルピストンを後方に付勢するアイドルスプリングと、を有するアイドル機構を備え、液圧室は、マスタピストンとアイドルピストンとの間に形成され、リタンスプリングは、マスタピストンとアイドルピストンとの間に設けられ、入力部材の操作量が所定量に達するまでは、アイドルピストンがマスタピストンと共に操作量に応じて移動して、アイドル室が縮小され、入力部材の操作量が所定量よりも大きくなると、アイドルピストンの移動が制限され、マスタピストンの移動に伴って液圧室が縮小されるように構成されていることである。
ここで、本発明による液圧発生装置は、制動時にマスタピストンおよびアイドルピストンが移動する方向を前方としている。
【0008】
請求項2に係る液圧発生装置の発明の構成上の特徴は、シリンダ部が形成されたハウジングと、シリンダ部に対し液密的に嵌合され、ブレーキ操作を入力するための入力部材の操作によりシリンダ部内を摺動可能なマスタピストンと、マスタピストンの前端部とシリンダ部との間に形成され、ホイールシリンダと接続される液圧室と、マスタピストンの前端部に設けられ、マスタピストンを後方に付勢するリタンスプリングと、を備え、入力部材の操作量の増大に伴って、マスタピストンがリタンスプリングを圧縮させながらシリンダ部内を前進し、液圧室を縮小させることによりブレーキ液圧を発生させる液圧発生装置において、マスタピストンの後方において、シリンダ部に対し摺動可能に嵌合され、入力部材の操作により、シリンダ部内を摺動可能なアイドルピストンと、アイドルピストンとマスタピストンとの間に形成され、大気リザーバに接続されているアイドル室と、アイドルピストンとマスタピストンとの間に設けられ、アイドルピストンを後方に付勢するアイドルスプリングと、を有するアイドル機構を備え、入力部材の操作量が所定量に達するまでは、操作量に応じてアイドルピストンがアイドルスプリングを圧縮させながら移動して、アイドル室が縮小され、入力部材の操作量が所定量よりも大きくなると、操作量に応じてマスタピストンがアイドルピストンと共に移動して、液圧室が縮小されるように構成されていることである。
ここで、本発明による液圧発生装置は、制動時にマスタピストンおよびアイドルピストンが移動する方向を前方としている。
【0009】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または2の液圧発生装置において、シリンダ部またはマスタピストンの後端部には、入力部材の操作量が所定量である状態において、アイドルピストンの前端部に当接する当接部が形成され、入力部材の非操作状態でアイドルスプリングに発生するセット荷重は、アイドルピストンのシリンダ部に対する摺動抵抗と、マスタピストンのシリンダ部に対する摺動抵抗との和よりも大きく、アイドルピストンが当接部に当接している状態において、アイドルスプリングに発生する荷重は、入力部材の非操作状態でリタンスプリングに発生する初期荷重よりも小さく設定されていることである。
【0010】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至3のうちのいずれかの液圧発生装置において、アイドル室と大気リザーバとの間には、双方の間の流体の流れを制御するバルブ手段が設けられたことである。
【0011】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項4の液圧発生装置において、バルブ手段は、通電時には、アイドル室と大気リザーバとの間を連通し、非通電時には、アイドル室と大気リザーバとの間を遮断する電磁弁としたことである。
【0012】
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項4または5の液圧発生装置において、アイドル室と大気リザーバとの間には、大気リザーバからアイドル室への流体の流れを許容するとともに、アイドル室から大気リザーバへの流体の流れを遮断する一方向弁がバルブ手段と並列に設けられたことである。
【0013】
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至6のうちのいずれかの液圧発生装置において、マスタピストンとアイドルピストンは、シリンダ部に嵌合する互いに等しい外径を有し、シリンダ部は、一定の径による円筒形状を呈することである。
【0014】
請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至3のうちのいずれかの液圧発生装置において、アイドル室と大気リザーバとの間には、流体の流れを制限するオリフィスが設けられたことである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る液圧発生装置によれば、入力部材の操作量が所定量に達するまでは、アイドルピストンがマスタピストンと共に操作量に応じて移動して、アイドル室が縮小されるため、液圧室の容積変化が抑制され、ホイールシリンダに供給される液圧が低減される。
よって、請求項1に係る液圧発生装置を回生ブレーキシステムに適用した場合、入力部材の操作開始からその操作量が所定量に達するまでは、液圧発生装置による制動力が低減されるため、その分だけ回生制動力を増大させることにより、回生効率の向上を図ることができる。
【0016】
請求項2に係る液圧発生装置によれば、入力部材の操作量が所定量に達するまでは、操作量に応じてアイドルピストンがアイドルスプリングを圧縮させながら移動して、アイドル室が縮小されるため、液圧室の容積変化が抑制され、ホイールシリンダに供給される液圧が低減される。
よって、請求項2に係る液圧発生装置を回生ブレーキシステムに適用した場合、入力部材の操作開始からその操作量が所定量に達するまでは、液圧発生装置による制動力が低減されるため、その分だけ回生制動力を増大させることにより、回生効率の向上を図ることができる。
【0017】
請求項3に係る液圧発生装置によれば、アイドルピストンが当接部に当接している状態において、アイドルスプリングに発生する荷重は、入力部材の非操作状態でリタンスプリングに発生する初期荷重よりも小さいことにより、入力部材からの入力があっても、液圧室を縮小させる前に、アイドル室を確実に縮小させることができるとともに、アイドルピストンが最大移動位置に到達するまで、液圧室が縮小することを防ぐことができる。
【0018】
また、入力部材の非操作状態でアイドルスプリングに発生するセット荷重は、アイドルピストンのシリンダ部に対する摺動抵抗と、マスタピストンのシリンダ部に対する摺動抵抗との和よりも大きいことにより、入力部材からの入力が解除された場合に、アイドルピストンのシリンダ部に対する摺動抵抗およびマスタピストンのシリンダ部に対する摺動抵抗に抗して、アイドルピストンが確実に戻り位置に復帰することができる。
【0019】
請求項4に係る液圧発生装置によれば、アイドル室と大気リザーバとの間には、双方の間の流体の流れを制御するバルブ手段が設けられたことにより、車両における回生制動装置の失陥時に、アイドル室と大気リザーバとの連通を遮断してアイドルピストンの前進を禁止し、マスタピストンを前進させてブレーキ液圧を迅速に発生させ、車輪ブレーキに供給することができる。
【0020】
請求項5に係る液圧発生装置によれば、バルブ手段は、通電時には、アイドル室と大気リザーバとの間を連通し、非通電時には、アイドル室と大気リザーバとの間を遮断する電磁弁としたことにより、車両の電気系統が失陥して回生制動装置が機能しない場合に、電磁弁により自動的にアイドル室と大気リザーバとの間を遮断して、液圧発生装置によるブレーキ液圧を発生させることができる。
【0021】
請求項6に係る液圧発生装置によれば、アイドル室と大気リザーバとの間には、大気リザーバからアイドル室への流体の流れを許容するとともに、アイドル室から大気リザーバへの流体の流れを遮断する一方向弁がバルブ手段と並列に設けられたことにより、入力部材からの入力が解除された場合に、一方向弁を介して大気リザーバからアイドル室へと流体が急速に戻ることができるため、アイドルピストンを遅滞なく戻すことができる。
【0022】
請求項7に係る液圧発生装置によれば、マスタピストンとアイドルピストンは、シリンダ部に嵌合する互いに等しい外径を有し、シリンダ部は、一定の径による円筒形状を呈することにより、ハウジングにおけるシリンダ部の形成が容易で、低コストの液圧発生装置にすることができる。また、液圧発生装置において、必要な部品点数を最小限にすることができる。
【0023】
請求項8に係る液圧発生装置によれば、アイドル室と大気リザーバとの間には、流体の流れを制限するオリフィスが設けられたことにより、ブレーキが急操作された場合に、アイドル室から大気リザーバへの流体の流れがオリフィスにより妨げられ、アイドル室が縮小されることが抑制されるため、初期制動時(入力部材の操作量が所定量に達するまでの間)において、液圧室にブレーキ液圧を発生させ、車輪ブレーキに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態1による車両用制御システムを示したブロック図
【図2】図1に示した液圧ブレーキ装置を示した図
【図3】図1に示したブレーキペダルおよび負圧式ブースタの一部を示した拡大図
【図4】図1に示したマスタシリンダを示した断面図
【図5】図4に示したマスタシリンダの作動ピストンが最大移動位置まで前進した状態を示した図
【図6】図5に示したマスタシリンダにおいて、さらにプライマリピストンおよびセカンダリピストンが前進した状態を示した図
【図7】図4に示したマスタシリンダにおいて、初期制動時にプライマリピストンおよびセカンダリピストンが前進した状態を示した図
【図8】図1に示した車両用制御システムにおいて、回生協調ブレーキを行う場合の制御フローチャートを示した図
【図9】図1に示した車両用制御システムにおけるブレーキ操作量と制動力の相関関係図
【図10】実施形態2によるマスタシリンダの一部を示した断面図
【図11】図10に示したマスタシリンダにおけるブレーキ操作量と制動力の相関関係図
【図12】変形実施形態1によるマスタシリンダを示した断面図
【図13】変形実施形態2によるマスタシリンダを示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態1>
図1乃至図9に基づき、本発明の実施形態1による車両用ブレーキ装置をハイブリッド車に適用した実施形態1を説明する。図1はそのハイブリッド車の構成を示す概要図であり、図2は車両用ブレーキ装置の液圧ブレーキ装置Bの構成を示す概要図である。
ハイブリッド車は、図1に示すように、ハイブリッドシステムによって駆動輪例えば左右前輪FL,FRを駆動させる車両である。ハイブリッドシステムは、エンジン11およびモータ12の2種類の動力源を組み合わせて使用するパワートレーンである。本実施形態の場合、エンジン11およびモータ12の双方で車輪を直接駆動する方式であるパラレルハイブリッドシステムである。なお、これ以外にシリアルハイブリッドシステムがあるが、これはモータ12によって車輪が駆動され、エンジン11はモータ12への電力供給源として作用する。
【0026】
このパラレルハイブリッドシステムを搭載したハイブリッド車は、エンジン11およびモータ12を備えている。エンジン11の駆動力は、動力分割機構13および動力伝達機構14を介して駆動輪(本実施形態では左右前輪FL,FR)に伝達されるようになっており、モータ12の駆動力は、動力伝達機構14を介して駆動輪に伝達されるようになっている。
【0027】
動力分割機構13は、エンジン11の駆動力を車両駆動力と発電機駆動力に適切に分割するものである。動力伝達機構14は、走行条件に応じてエンジン11およびモータ12の駆動力を適切に統合して駆動輪に伝達するものである。動力伝達機構14はエンジン11とモータ12の伝達される駆動力比を0:100〜100:0の間で調整している。この動力伝達機構14は変速機能を有している。
【0028】
モータ12は、エンジン11の出力を補助し駆動力を高めるものであり、一方車両の制動時には発電を行いバッテリ17を充電するものである。発電機15は、エンジン11の出力により発電を行うものであり、エンジン始動時のスタータの機能を有する。これらモータ12および発電機15は、インバータ16にそれぞれ電気的に接続されている。インバータ16は、直流電源としてのバッテリ17に電気的に接続されており、モータ12および発電機15から入力した交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ17に供給したり、逆にバッテリ17からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ12および発電機15へ出力したりするものである。
【0029】
本実施形態においては、これらモータ12、インバータ16およびバッテリ17から回生ブレーキ装置Aが構成されており、この回生ブレーキ装置Aは、ペダルストロークセンサ21a(または圧力センサP)によって検出されたブレーキ操作状態(後述する)に基づいた回生制動力を各車輪FL,FR,RL,RRの何れか(本実施形態では駆動源であるモータ12によって駆動される左右前輪FL,FR)に発生させるものである。
【0030】
エンジン11はエンジンECU(電子制御ユニット)18によって制御されており、エンジンECU18は後述するハイブリッドECU(電子制御ユニット)19からのエンジン出力要求値に従って電子制御スロットルに開度指令を出力し、エンジン11の回転数を調整する。
【0031】
ハイブリッドECU19には、インバータ16が相互通信可能に接続されている。ハイブリッドECU19は、アクセル開度およびシフトポジション(図示しないシフトポジションセンサから入力したシフト位置信号から算出する)から必要なエンジン出力、電気モータトルクおよび発電機トルクを導出し、その導出したエンジン出力要求値をエンジンECU18に送信してエンジン11の駆動力を制御し、また導出した電気モータトルク要求値および発電機トルク要求値に従って、インバータ16を通してモータ12および発電機15を制御する。
【0032】
また、ハイブリッドECU19はバッテリ17が接続されており、バッテリ17の充電状態、充電電流などを監視している。さらに、ハイブリッドECU19は、アクセルペダル(図示省略)に組み付けられて車両のアクセル開度を検出するアクセル開度センサ(図示省略)も接続されており、アクセル開度センサからアクセル開度信号を入力している。
【0033】
また、ハイブリッド車は、直接各車輪FL,FR,RL,RRに液圧制動力を付与して車両を制動させる液圧ブレーキ装置Bを備えている。液圧ブレーキ装置Bは、図2に示すように、ブレーキペダル21の踏み込みによるブレーキ操作状態に対応した基礎液圧をマスタシリンダ5(本発明の液圧発生装置に該当する)にて発生し、同発生した基礎液圧を当該マスタシリンダ5と液圧制御弁31,41をそれぞれ介在した油経路Lf,Lrによって連結された各車輪FL,FR,RL,RRのホイールシリンダWC1,WC2,WC3,WC4に直接付与することにより、同各車輪FL,FR,RL,RRに基礎液圧に対応した基礎液圧制動力を発生させるとともに、ブレーキ操作状態に対応して発生される基礎液圧とは独立してポンプ37,47の駆動と液圧制御弁31,41の制御によって形成される制御液圧を各車輪FL,FR,RL,RRのホイールシリンダWC1,WC2,WC3,WC4に付与することにより各車輪FL,FR,RL,RRに制御液圧制動力を発生可能に構成されたものである。
【0034】
この液圧ブレーキ装置Bは、エンジン11の吸気負圧をダイヤフラムに作用させてブレーキペダル21の踏み込み操作により生じるブレーキ操作力を助勢して倍力(増大)する倍力装置である負圧式ブースタ22と、負圧式ブースタ22により倍力されたブレーキ操作力(すなわちブレーキペダル21の操作状態)に応じた基礎液圧である液圧(油圧)のブレーキ液(油)を生成してホイールシリンダWC1〜WC4に供給するマスタシリンダ5と、ブレーキ液を貯蔵してマスタシリンダ5にそのブレーキ液を補給するリザーバタンク24(本発明の大気リザーバに該当する)と、マスタシリンダ5とホイールシリンダWC1〜WC4との間に設けられて制御液圧を形成するブレーキアクチュエータ25を備えている。なお、ブレーキペダル21、負圧式ブースタ22、マスタシリンダ5、リザーバタンク24によって基礎液圧制動力発生装置が構成されている。
【0035】
図3および図4に示すように、ブレーキペダル21はオペレーティングロッド26を介して負圧式ブースタ22に接続され、負圧式ブースタ22はプッシュロッド27(本発明の入力部材に該当する)を介してマスタシリンダ5に接続されており、ブレーキペダル21に作用されたブレーキ操作力はオペレーティングロッド26を介して負圧式ブースタ22に入力され、倍力されてプッシュロッド27を介してマスタシリンダ5に入力されるようになっている。
【0036】
ブレーキペダル21には、ブレーキペダル21の踏み込みによるブレーキペダルストロークを検出するペダルストロークセンサ21aが設けられている。このペダルストロークセンサ21aはブレーキECU60に接続されており、検出信号がブレーキECU60に送信されるようになっている。
【0037】
さらに、ブレーキペダル21は、ブレーキ操作状態が所定状態(後述する)となるまでのブレーキペダル21のペダル反力を形成するペダル反力形成手段である反力用スプリング21bが備えられている。反力用スプリング21bは、一端が車両の車体に固定されたブラケット10aに接続されたものであり、ブレーキペダル21を踏み込み方向に対して逆方向である踏み込み解除方向(ブレーキペダル21が踏み込み前の元の位置に戻る方向)に付勢するようになっている。この反力用スプリング21bの付勢力は、マスタシリンダ5のシリンダ511の内径、負圧式ブースタ22の倍力比などを考慮して設定されるのが望ましい。
負圧式ブースタ22は、一般によく知られているものであり、負圧取入れ口22a(図1示)がエンジン11の吸気マニホールドに連通しており、この吸気マニホールドの負圧を倍力源としている。
【0038】
次に、ブレーキアクチュエータ25について図2を参照して詳述する。このブレーキアクチュエータ25は、一般的によく知られているものであり、液圧制御弁31,41、ABS制御弁を構成する増圧制御弁32,33,42,43および減圧制御弁35,36,45,46、調圧リザーバ34,44、ポンプ37,47、開閉弁39,49、モータMなどを一つのケースにパッケージすることにより構成されている。
【0039】
まず、ブレーキアクチュエータ25の前輪系統の構成について説明する。油経路Lfには、差圧制御弁から構成される液圧制御弁31が備えられている。この液圧制御弁31は、ブレーキECU60により連通状態と差圧状態を切り替え制御されるものである。液圧制御弁31は通常連通状態とされているが、差圧状態にすることによりホイールシリンダWC1,WC2側の油経路Lf2をマスタシリンダ5側の油経路Lf1よりも所定の差圧分高い圧力に保持することができる。この差圧はブレーキECU60により制御電流に応じて調圧されるようになっている。
【0040】
油経路Lf2は2つに分岐しており、一方にはABS制御の増圧モード時においてホイールシリンダWC1へのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁32が備えられ、他方にはABS制御の増圧モード時においてホイールシリンダWC2へのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁33が備えられている。これら増圧制御弁32,33は、ブレーキECU60により連通・遮断状態を制御できる2位置弁として構成されている。そして、これら増圧制御弁32,33が連通状態に制御されているときには、マスタシリンダ5の基礎液圧または/およびポンプ37の駆動と液圧制御弁31の制御によって形成される制御液圧を各ホイールシリンダWC1,WC2に加えることができる。また、増圧制御弁32,33は減圧制御弁35,36およびポンプ37とともにABS制御を実行することができる。
【0041】
なお、ABS制御が実行されていないノーマルブレーキの際には、これら増圧制御弁32,33は常時連通状態に制御されている。また、増圧制御弁32,33には、それぞれチェック弁32a,33aが並列に設けられており、ABS制御時においてブレーキペダル21を離したとき、それに伴ってホイールシリンダWC1,WC2側からのブレーキ液をリザーバタンク24に戻すようになっている。
【0042】
また、増圧制御弁32,33と各ホイールシリンダWC1,WC2との間における油経路Lf2は、油経路Lf3を介して調圧リザーバ34に連通されている。油経路Lf3には、ブレーキECU60により連通・遮断状態を制御できる減圧制御弁35,36がそれぞれ配設されている。これらの減圧制御弁35,36はノーマルブレーキ状態(ABS非作動時)では常時遮断状態とされ、また、適宜連通状態として油経路Lf3を通じて調圧リザーバ34へブレーキ液を逃がすことにより、ホイールシリンダWC1,WC2におけるブレーキ液圧を制御し、車輪がロック傾向にいたるのを防止できるように構成されている。
【0043】
さらに、液圧制御弁31と増圧制御弁32,33との間における油経路Lf2と、調圧リザーバ34とを結ぶ油経路Lf4にはポンプ37がチェック弁37a,37bおよびチェック弁34aと共に配設されている。また、経路Lf4上のチェック弁37aとチェック弁34aとの間を、油経路Lf1を介してマスタシリンダ5と接続するように油経路Lf5が設けられている。油経路Lf5上には、常閉型の電磁弁である開閉弁39が設けられている。開閉弁39は、ノーマルブレーキ時およびABS作動時には閉状態とされ、トラクションコントロール時、VSC制御時等には開状態とされる。ポンプ37は、ブレーキECU60の指令によりモータMによって駆動されるものである。ポンプ37は、ABS制御の減圧モード時においては、ホイールシリンダWC1,WC2内のブレーキ液または調圧リザーバ34に貯められているブレーキ液を吸い込んで連通状態である液圧制御弁31を介してマスタシリンダ5に戻している。
【0044】
また、ポンプ37は、VSC制御、トラクションコントロール、ブレーキアシストなどの車両の姿勢を安定に制御するための制御液圧を形成する際においては、差圧状態に切り替えられている液圧制御弁31に差圧を発生させるべく、マスタシリンダ5内のブレーキ液を連通状態である開閉弁39および油経路Lf1,Lf5を介して吸い込んで、油経路Lf4,Lf2および連通状態である増圧制御弁32,33を介して各ホイールシリンダWC1,WC2に吐出して制御液圧を付与している。なお、ポンプ37が吐出したブレーキ液の脈動を緩和するために、油経路Lf4のポンプ37の上流側にはアキュムレータ38が配設されている。
【0045】
また、油経路Lf1には、マスタシリンダ5内のブレーキ液圧であるマスタシリンダ圧を検出する圧力センサPが設けられており、この検出信号はブレーキECU60に送信されるようになっている。なお、圧力センサPは油経路Lr1に設けるようにしてもよい。
さらに、ブレーキアクチュエータ25の後輪系統も前述した前輪系統と同様な構成であり、後輪系統を構成する油経路Lrは油経路Lfと同様に油経路Lr1〜Lr5から構成されている。油経路Lrには液圧制御弁31と同様な液圧制御弁41、および調圧リザーバ34と同様な調圧リザーバ44が備えられている。ホイールシリンダWC3,WC4に連通する分岐した油経路Lr2,Lr2には増圧制御弁32,33と同様な増圧制御弁42,43が備えられ、油経路Lr3には減圧制御弁35,36と同様な減圧制御弁45,46が備えられている。油経路Lr4には、ポンプ37、チェック弁37a,37b、チェック弁34aおよびアキュムレータ38と同様なポンプ47、チェック弁47a,47b、チェック弁44aおよびアキュムレータ48が備えられている。油経路Lr5には、開閉弁39と同様な開閉弁49が備えられている。なお、増圧制御弁42,43には、それぞれチェック弁32a,33aと同様なチェック弁42a,43aが並列に設けられている。
【0046】
これにより、ポンプ37,47の駆動と液圧制御弁31,41の制御によって形成された制御液圧を各車輪FL,FR,RL,RRのホイールシリンダWC1,WC2,WC3,WC4に付与することにより各車輪FL,FR,RL,RRに制御液圧制動力を発生させることができる。
【0047】
そして、車両用ブレーキ装置は、主として図1に示すように、ペダルストロークセンサ21a、各車輪FL,FR,RL,RRの車輪速度をそれぞれ検出する各車輪速センサSfl,Sfr,Srl,Srr、圧力センサP、各制御弁31,32,33,35,36,41,42,43,45,46,モータMに接続されたブレーキECU(電子制御ユニット)60を備えている。ブレーキECU60は、これら各センサによる検出及びシフトスイッチの状態に基づき、液圧ブレーキ装置Bの各制御弁31,32,33,35,36,39,41,42,43,45,46,49の状態を切り換え制御または通電電流制御し、ホイールシリンダWC1〜WC4に付与する制御液圧すなわち各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制御液圧制動力を制御する。
【0048】
さらに、ブレーキECU60はハイブリッドECU19に対し相互通信可能に接続されており、車両の全制動力が油圧ブレーキだけの車両と同等となるようにモータ12が行う回生ブレーキと油圧ブレーキの協調制御を行っている。具体的には、ブレーキECU60は運転者の制動要求すなわち制動操作状態に対して、ハイブリッドECU19に全制動力のうち回生ブレーキ装置の負担分である回生要求値を回生ブレーキ装置の目標値すなわち目標回生制動力として出力する。ハイブリッドECU19は、入力した回生要求値(目標回生制動力)に基づいて車速やバッテリ充電状態等を考慮して実際に回生ブレーキとして作用させる実回生実行値を導出しその実回生実行値に相当する回生制動力を発生させるようにインバータ16を介してモータ12を制御するとともに、導出した実回生実行値をブレーキECU60に出力している。
【0049】
さらに、ブレーキECU60は、基礎液圧がホイールシリンダWC1,WC2,WC3,WC4に供給されたとき、ブレーキ手段BK1,BK2,BK3,BK4が車輪FL,FR,RL,RRに付与する基礎液圧制動力をマップ、テーブルまたは演算式にしてメモリに予め記憶している。また、ブレーキECU60は、ブレーキペダル21のストローク(またはマスタシリンダ圧)であるブレーキ操作状態に応じて車輪FL,FR,RL,RRに付与する目標回生制動力をマップ、テーブルまたは演算式にしてメモリに予め記憶している。また、ブレーキECU60には、図8に示す協調制御プログラム(車両用ブレーキ制御プログラム)が記憶されている。
【0050】
次に、図4乃至図7に基づき、本実施形態によるマスタシリンダ5について説明する。尚、以下、図4乃至図7における左方を、マスタシリンダ5の前方として説明する。マスタシリンダ5は、2系統のブレーキ配管用のタンデムマスタシリンダである。鋳鉄あるいはアルミニウム合金により形成されたマスタシリンダボデー51(本発明のハウジングに該当する)には、シリンダ511(本発明のシリンダ部に該当する)が形成されている。シリンダ511は、一定の内径を有する円筒形状を呈している。
【0051】
シリンダ511内には、プライマリピストン52a(本発明のマスタピストンに該当する)が摺動可能に嵌合している。プライマリピストン52aの後端部には、上述した負圧式ブースタ22のプッシュロッド27が係合する凹部521が形成されている。また、プライマリピストン52aの前方部は、円筒状に刳り抜かれ収容部522aが形成されている。さらに、収容部522aを取り囲む側壁には、プライマリピストン52aの外周側を収容部522aと接続する連通孔523aが形成されている。連通孔523aの機能については、後述する。
【0052】
プライマリピストン52aに形成された収容部522aの底部524aには、連結ネジ53aが螺合している。連結ネジ53aは、プライマリピストン52aにねじ込まれた本体部531aと、本体部531aの前端に形成された大径の頭部532aとを有している。
【0053】
スプリングリテーナ54aは金属製の板材をプレス成形して形成されており、前端部に形成された円板状のフランジ部541aと、後端部の平坦な底面部542aとがテーパ状の延在部543aにより前後方向に接続されており、略ハット状に形成されている。スプリングリテーナ54aの底面部542aには、連結孔544aが貫通しており、連結孔544aには連結ネジ53aの本体部531aが挿通されている。連通孔544aの内径は連結ネジ53aの頭部532aの外径よりも小さく形成されており、これにより、スプリングリテーナ54aの連結ネジ53aから前方への抜け止めが行われている。スプリングリテーナ54aの底面部542aは、連結ネジ53aの頭部532aとプライマリピストン52aの底部524aとの間で、前後方向に移動可能に形成されている。
【0054】
スプリングリテーナ54aのフランジ部541aには、プライマリ側のリタンスプリング55a(以下、単にリタンスプリング55aという場合がある)の前端部が係合している。また、リタンスプリング55aはプライマリピストン52aの収容部522aに挿入されており、その後端部はプライマリピストン52aの底部524aに対し当接している。
これにより、図4に示したように非作動時のリタンスプリング55aは、スプリングリテーナ54aのフランジ部541aとプライマリピストン52aの底部524aとの間で、図4に示した状態からは、軸方向(前後方向)に伸長不能なように、両端同士が吊られた状態(以下、中吊り状態という)で弾発的に保持されている。リタンスプリング55aは円筒形を呈したコイルバネであり、上述した中吊り状態において、所定量圧縮されて初期荷重Taを発生させている。
【0055】
図4に示すように、シリンダ511には一対のプライマリシール512a1,512a2が装着されている。各々のプライマリシール512a1,512a2は合成ゴム材料にてリング状に形成され、互いにシリンダ511の前後方向に所定距離だけ離れて設けられている。プライマリシール512a1,512a2はプライマリピストン52aの外周面に液密的に係合している。
後方のプライマリシール512a1は、プライマリピストン52aの外周面に対して摺動抵抗R1を有し、前方のプライマリシール512a2は、プライマリピストン52aの外周面に対して摺動抵抗R2を有している。
【0056】
シリンダボデー51には、シリンダ511の軸方向においてプライマリシール512a1,512a2同士の間に開口するように、プライマリ側のサプライポート513a(以下、単にサプライポート513aという場合がある)が形成されている。サプライポート513aは、シリンダ511への開口部から上方へと延び、シリンダボデー51の上端に形成されたプライマリ側のリザーバボス514a(以下、単にリザーバボス514aという場合がある)内に開口している。
【0057】
シリンダ511内において、プライマリピストン52aの前方には、セカンダリピストン52b(本発明のマスタピストンに該当する)が摺動可能に嵌合している。セカンダリピストン52bの後端部は、プライマリ側のスプリングリテーナ54aのフランジ部541aに対し当接している。セカンダリピストン52bは円筒状に刳り抜かれ、収容部522bが形成されており、その底部524bには、上述したプライマリ側と同様に、連結ネジ53bが螺合している。また、連結ネジ53bには、スプリングリテーナ54bが係合している。
【0058】
図4に示したように、スプリングリテーナ54bのフランジ部541bとセカンダリピストン52bの底部524bとの間には、セカンダリ側のリタンスプリング55b(以下、単にリタンスプリング55bという場合がある)が設けられている。上述したプライマリ側と同様に、リタンスプリング55bは、非作動時においてスプリングリテーナ54bのフランジ部541bとセカンダリピストン52bの底部524bとの間で、図4に示した状態から、軸方向(前後方向)に伸長不能なように、中吊り状態に保持されている。リタンスプリング55bは、中吊り状態において所定量圧縮されて初期荷重Tbを発生させている。
【0059】
シリンダ511には一対のセカンダリシール512b1,512b2が装着されている。各々のセカンダリシール512b1,512b2は、互いにシリンダ511の前後方向に所定距離だけ離れて設けられており、セカンダリピストン52bの外周面に液密的に係合している。
後方のセカンダリシール512b1は、セカンダリピストン52bの外周面に対して摺動抵抗R3を有し、前方のセカンダリシール512b2は、セカンダリピストン52bの外周面に対して摺動抵抗R4を有している。
【0060】
上述したように、前方のプライマリシール512a2により、シリンダ511とプライマリピストン52aとの間がシールされ、後方のセカンダリシール512b1により、シリンダ511とセカンダリピストン52bとの間がシールされるため、プライマリピストン52a、セカンダリピストン52bおよびシリンダ511とにより、プライマリ室56a(本発明の液圧室に該当する)が形成されている。プライマリ室56aは、プライマリピストン52aの前方に形成され、シリンダボデー511に形成されたプライマリポート518aおよび油経路Lrを介して後輪RL,RRに取り付けられたホイールシリンダWC3,WC4と接続されている。
【0061】
シリンダボデー51には、シリンダ511の軸方向においてセカンダリシール512b1,512b2同士の間に開口するように、セカンダリ側のサプライポート513b(以下、単にサプライポート513bという場合がある)が形成されている。サプライポート513bは、シリンダ511への開口部から上方へと延び、シリンダボデー51の上端に形成されたセカンダリ側のリザーバボス514b(以下、単にリザーバボス514bという場合がある)内に開口している。
セカンダリピストン52b、セカンダリシール512b1,512b2、セカンダリ側の連結ネジ53b、スプリングリテーナ54b、リタンスプリング55b等の構成については、プライマリ側と同様であるため、これ以上の説明は省略する。
【0062】
さらに、シリンダ511内において、セカンダリピストン52bの前方には、作動ピストン57(本発明のアイドルピストンに該当する)が摺動可能に嵌合している。図4に示したように、シリンダ511と嵌合する作動ピストン57の外径と、プライマリピストン52aおよびセカンダリピストン52bの外径とは、互いに等しく形成されている。作動ピストン57の後端部は、セカンダリ側のスプリングリテーナ54bのフランジ部541bに対し当接している。
【0063】
作動ピストン57は、前方に突出したバネ保持部571を有している。バネ保持部571はシリンダ511の底部515(本発明の当接部に該当する)と対向しており、作動ピストン57は、バネ保持部571の前端とシリンダ511の底部515との間に形成された隙間である最大移動ストロークSだけ、シリンダ511内を前進することができる。
【0064】
バネ保持部571には作動スプリング58(本発明のアイドルスプリングに該当する)の一端が装着されている。作動スプリング58は円筒形を呈したコイルバネであり、後述する作動室59内に配設される。マスタシリンダ5の非作動時において、作動スプリング58は、シリンダ部の底部515と戻り位置にある作動ピストン57との間で圧縮され、セット荷重Tcを発生させた状態で弾発的に保持されている。
作動ピストン57の外周面には、作動シール572が装着されている。作動シール572は合成ゴム材料にてリング状に形成され、シリンダ511の内周面に液密的に係合している。作動シール572は、シリンダ511に対し摺動抵抗R5を有している。
【0065】
上述したように、前方のセカンダリシール512b2により、シリンダ511とセカンダリピストン52bとの間がシールされ、作動シール572により、シリンダ511と作動ピストン57との間がシールされるため、セカンダリピストン52b、作動ピストン57およびシリンダ511とにより、セカンダリ室56b(本発明の液圧室に該当する)が形成されている。また、作動ピストン57およびシリンダ511の底部515とにより、作動室59(本発明のアイドル室に該当する)が形成されている。
したがって、換言すれば、作動ピストン57は、作動室59とセカンダリ室56bとを液密的に分離している。セカンダリ室56bは、シリンダボデー511に形成されたセカンダリポート518bおよび油経路Lfを介して前輪FL,FRに取り付けられたホイールシリンダWC1,WC2と接続されている。
【0066】
上述した作動室59は、シリンダボデー51に設けられたソレノイドバルブ516(本発明のバルブ手段に該当する)を介して、作動室59用のリザーバボス514cに接続されている。ソレノイドバルブ516は、非通電時に閉状態となり、通電時に開状態となる常閉型の電磁弁である。ソレノイドバルブ516は、ブレーキECU60と接続されており、ブレーキECU60により作動制御されている。尚、作動ピストン57、作動スプリング58および作動室59を包括した構成が、本発明のアイドル作動機構に該当する。
また、シリンダボデー51には、チェック弁517(本発明の一方向弁に該当する)がソレノイドバルブ516に対し並列に設けられている。チェック弁517は、リザーバボス514c側から作動室59へのブレーキ液の流れを許容するが、作動室59からリザーバボス514c側へのブレーキ液の流れを遮断している。
【0067】
上述したリザーバボス514a,514b,514cには、リザーバタンク24が取り付けられている。これにより、マスタシリンダ5の非作動時においては、プライマリ室56aは、プライマリピストン52aの連通孔523aおよびサプライポート513aを介して、リザーバタンク24と連通しており、セカンダリ室56bは、セカンダリピストン52bの連通孔523bおよびサプライポート513bを介して、リザーバタンク24と連通している。
また、作動室59は、ソレノイドバルブ516が開状態にある時、リザーバタンク24と連通し、ソレノイドバルブ516が閉状態にある時、リザーバタンク24から遮断される。これにより、ソレノイドバルブ516は作動室59とリザーバタンク24との間のブレーキ液の流れを制御している。
【0068】
上述したように、マスタシリンダ5の構成において、プライマリ側のリタンスプリング55aの初期荷重をTa、セカンダリ側のリタンスプリング55bの初期荷重をTb、作動スプリング58のセット荷重をTc、プライマリシール512a1のプライマリピストン52aの外周面に対する摺動抵抗をR1、プライマリシール512a2のプライマリピストン52aの外周面に対する摺動抵抗をR2、セカンダリシール512b1のセカンダリピストン52bの外周面に対する摺動抵抗をR3、セカンダリシール512b2のセカンダリピストン52bの外周面に対する摺動抵抗をR4、作動シール572のシリンダ511に対する摺動抵抗をR5、作動スプリング58のバネ定数をk、作動ピストン57の最大移動ストロークをSとすると、
【0069】
Tc+k・S<Ta ・・・・・・・・・ (1)
且つ、
Tc+k・S<Tb ・・・・・・・・・ (2)
となるように、作動スプリング58のセット荷重Tcが設定されている。
したがって、当然のことながら、
Tc<Ta ・・・・・・・・・ (3)
且つ
Tc<Tb ・・・・・・・・・ (4)
となる。
また、
Tc>R1+R2+R3+R4+R5 ・・・・・ (5)
となるように、作動スプリング58のセット荷重Tcが設定されている。
【0070】
次に、図4乃至図7に基づいて、上述したマスタシリンダ5の作動方法について説明する。図4に示したマスタシリンダ5の非作動状態(ブレーキペダル21の非操作状態)において、プライマリ側のリタンスプリング55aは、プライマリピストン52aとスプリングリテーナ54aとの間で中吊り状態にある。すなわちリタンスプリング55aは、初期荷重Taを発生させた状態で保持されており、これ以上に伸長することはない。
また、セカンダリ側のリタンスプリング55bも、セカンダリピストン52bとスプリングリテーナ54bとの間で中吊り状態にある。すなわちリタンスプリング55bは、初期荷重Tbを発生させた状態で保持されており、これ以上に伸長することはない。
【0071】
さらに、作動スプリング58はシリンダ511の底部515と作動ピストン57との間で弾発的に保持されており、作動ピストン57をセット荷重Tcで後方に付勢している。したがって、作動スプリング58による付勢力が、作動ピストン57、スプリングリテーナ54b、リタンスプリング55b、セカンダリピストン52b、スプリングリテーナ54aおよびリタンスプリング55aを介してプライマリピストン52aへと伝達される。
【0072】
一方、プライマリピストン52aは、後端部において負圧式ブースタ22のプッシュロッド27に当接しており、後方への移動が規制されている。したがって、非作動状態において、マスタシリンダ5の各部材は、作動スプリング58から後方への付勢力を受けた状態で図4に示したように位置決めされている。
【0073】
図4に示したように、この状態において、プライマリ室56aは連通孔523aおよびサプライポート513aを介してリザーバタンク24と連通しており、プライマリ室56a内に液圧は発生していない。また、セカンダリ室56bは連通孔523bおよびサプライポート513bを介してリザーバタンク24と連通しており、セカンダリ室56b内に液圧は発生していない。
また、この時、車両のイグニションスイッチ(図示省略)がオフ状態にある場合、ソレノイドバルブ516は非通電とされており、図4に示したように閉状態にあるため、作動室59はリザーバタンク24から遮断されている。
【0074】
車両のイグニションスイッチがオン操作されると、回生ブレーキ装置Aが作動可能となる。この時、車両の電気系統が正常に機能する場合、ブレーキECU60はソレノイドバルブ516に通電して開状態とし、作動室59とリザーバタンク24とを連通する。
この状態において、ブレーキペダル21が操作されると、オペレーティングロッド26を介してペダル踏力が負圧式ブースタ22に入力され、負圧式ブースタ22により倍力されてプッシュロッド27に出力される。これにより、プライマリピストン52aはプッシュロッド27によって前方に付勢される。
【0075】
ここで、上述した(3)式および(4)式から、リタンスプリング55a,55bの初期荷重Ta,Tbは、それぞれ作動スプリング58のセット荷重Tcよりも大きいため、作動スプリング58の圧縮される以前に、リタンスプリング55a,55bが圧縮されることはない。したがって、プッシュロッド27による付勢により、プライマリピストン52aがセカンダリピストン52bに対して相対移動することがなく、且つ、セカンダリピストン52bが作動ピストン57に対して相対移動することもなく、プライマリピストン52a、リタンスプリング55a、セカンダリピストン52b、およびリタンスプリング55bを介して、作動ピストン57が付勢されてシリンダ511内を前進し、作動スプリング58の圧縮が開始する(図5参照)。
【0076】
この時、作動室59とリザーバタンク24とが連通しているため、作動ピストン57の前進にともなって作動室59内のブレーキ液はリザーバタンク24へと排出され、作動室59の縮小が滞りなく行われる。これにより、プライマリピストン52a、セカンダリピストン52b、リタンスプリング55a,55b、スプリングリテーナ54a,54b、作動ピストン57は、互いに相対的な位置関係を変化させずに一体となってシリンダ511内を前進する。
【0077】
したがって、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bは、連通孔523a,523bの前進により、それぞれプライマリシール512a2およびセカンダリシール512b2よってリザーバタンク24との連通が断たれ、液圧の発生が可能な状態となる。しかしながら、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bは縮小されていないため、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bには液圧は発生していない。
【0078】
ここで、上述した(1)式および(2)式から、作動スプリング58が最大移動ストロークSだけ前進した時の作動スプリング58に発生する荷重(Tc+k・S)は、リタンスプリング55a,55bの初期荷重Ta,Tbよりも小さいため、バネ保持部571がシリンダ511の底部515に当接するまで作動ピストン57が前進する場合、その途中において、リタンスプリング55a,55bが圧縮されることはない。
【0079】
図5に示したように、作動ピストン57がシリンダ511内を最大移動ストロークSだけ前進し、バネ保持部571がシリンダ511の底部515に当接すると、作動ピストン57は停止し、これ以上の前進はできなくなる(この時の作動ピストン57の位置が、本発明の最大移動位置に該当する)。
【0080】
したがって、これ以降、負圧式ブースタ22のプッシュロッド27から、プライマリピストン52aに対し、リタンスプリング55a,55bの初期荷重Ta,Tbよりも大きい荷重が入力された場合、プライマリピストン52aがセカンダリピストン52bに対して相対移動(前進)し、プライマリピストン52aとセカンダリピストン52bとの間において、リタンスプリング55aの圧縮が開始するとともに、セカンダリピストン52bも作動ピストン57に対して相対移動(前進)して、セカンダリピストン52bと作動ピストン57との間において、リタンスプリング55bの圧縮が開始する(図6示)。これにより、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bが縮小され、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bにそれぞれ液圧が発生し、ホイールシリンダWC1〜WC4へと供給される。
【0081】
ブレーキペダル21の操作が解除されると、プッシュロッド27からプライマリピストン52aへの付勢力が解消される。したがって、プライマリピストン52aまたはセカンダリピストン52bを後方に付勢するリタンスプリング55a,55bの復元(伸長)によって、プライマリピストン52aおよびセカンダリピストン52bが後退し、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bが元の容積に復帰する。
【0082】
また、それとともに、作動ピストン57を後方に付勢する作動スプリング58の復元(伸長)によって作動ピストン57が後退し、作動室59も元の容積に復帰する。この時、上述した(5)式から、作動スプリング58のセット荷重Tcは、各シール部材512a1,512a2,512b1,512b2,572の相手側部材に対する摺動抵抗の総和(R1+R2+R3+R4+R5)よりも大きいため、作動スプリング58の付勢力により、プライマリピストン52a、セカンダリピストン52bおよび作動ピストン57は、摺動抵抗の総和に抗して、支障なく戻り位置に復帰することができる。さらに、チェック弁517によってリザーバタンク24から作動室59へブレーキ液が急速に補償されるため、作動ピストン57が早期に後退でき、作動室59の拡大は支障なく行われる。
【0083】
一方、車両の電気系統に失陥が発生した場合、ブレーキECU60はソレノイドバルブ516を非通電にして閉状態とし、作動室59とリザーバタンク24とを遮断する。この状態において、作動室59は閉じられた室となり、負圧式ブースタ22のプッシュロッド27からプライマリピストン52aへ付勢力が入力されても、作動ピストン57は前進することができなくなる。
【0084】
したがって、作動室59は縮小されずに、プライマリピストン52aがセカンダリピストン52bに対して相対移動(前進)するとともに、セカンダリピストン52bも作動ピストン57に対して相対移動(前進)して、リタンスプリング55a,55bが圧縮される。これにより、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bが縮小され、ブレーキペダル21の操作が開始された直後から、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bにそれぞれ液圧が発生し、ホイールシリンダWC1〜WC4へと供給される(図7示)。
【0085】
次に、上記のように構成した車両用ブレーキ装置の作動を図8のフローチャートに沿って説明する。ブレーキECU60は、例えば車両のイグニションスイッチがオン状態にあるとき、上記フローチャートに対応したプログラムを所定の短時間毎に実行する。ブレーキECU60は、車両の電気系統が正常に機能する場合、ソレノイドバルブ516に通電して開状態としている。
【0086】
ブレーキECU60は、ブレーキペダル21の操作状態であるペダルストロークをペダルストロークセンサ21aから入力し(ステップS801)、入力したペダルストロークに応じた目標回生制動力を演算する(ステップS802)。このとき、ブレーキECU60は、予め記憶しておいたペダルストロークすなわちブレーキ操作状態と車輪FL,FR,RL,RRに付与する目標回生制動力との関係を示すマップ、テーブルまたは演算式を使用する。
【0087】
目標回生制動力が0より大きいと判定された場合には(ステップS803)、ステップS802にて演算した目標回生制動力をハイブリッドECU19に出力するとともに(ステップS804)、ブレーキアクチュエータ25に対して制御を行わない。したがって、ブレーキペダル21が踏まれている場合、前述した場合と同様に、液圧ブレーキ装置Bは車輪FL,FR,RL,RRに基礎液圧制動力(静圧ブレーキ)のみを付与する。
【0088】
また、ハイブリッドECU19は、目標回生制動力を示す回生要求値を入力し、その値に基づいて車速やバッテリ充電状態等を考慮して回生制動力を発生させるようにインバータ16を介してモータ12を制御するとともに、実回生実行値をブレーキECU60に出力している。したがって、ブレーキ操作がされて、かつ目標回生制動力が0より大きい場合には、車輪FL,FR,RL,RRには、マスタシリンダ5による基礎液圧制動力に回生制動力が上乗せされて付与される。このように回生協調制御が実行されるが、このとき基礎液圧制動力と回生制動力はブレーキ操作力に応じているので、その一例が図9に示されている。図9には、回生協調制御時のブレーキ操作力と、基礎液圧制動力と回生制動力との総和を示す制動力との相関関係が示されている。
【0089】
すなわち、本実施形態によるマスタシリンダ5によれば、ブレーキペダル21の操作時(踏み込み時)に、ブレーキ操作状態が操作開始時点の状態である操作開始状態から所定状態となるまでの間は基礎液圧制動力が所定値以下(ほぼ0)となるようにその発生を制限する。ここで、所定状態とは、作動ピストン57が最大移動ストロークSだけ前進し、バネ保持部571がシリンダ511の底部515に当接した状態をいう。これにより、運転者がブレーキペダル21を操作すると、図9の破線で示すように、操作開始状態から所定状態までの間は基礎液圧制動力が所定値以下に強制的に制限されるので、この間回生制動力のみがブレーキ操作状態に応じて付与される。
【0090】
また、作動ピストン57がシリンダ511の底部515に当接し、ブレーキ操作状態が所定状態となった場合においては、基礎液圧制動力の発生の制限を解除するとともに、回生ブレーキ装置Aは最大回生制動力を発生するので、最大回生制動力のみが付与される。図9に示したように、ブレーキ操作状態が所定状態となった時点において、回生ブレーキ装置Aが最大回生制動力に到達するように最大移動ストロークSを設定することが望ましい。
【0091】
さらに、ブレーキ操作状態が所定状態を超えた操作状態となった場合においては、基礎液圧制動力の発生の制限の解除が維持されて、液圧ブレーキ装置Bと回生ブレーキ装置Aとを協調動作させて基礎液圧制動力と回生制動力(基本的には最大回生制動力である。)に基づいてブレーキ操作状態に対応した車両制動力が付与される(図9において、実線にて示す)。
【0092】
ブレーキECU60は、回生ブレーキ装置Aによって実際に生成された回生制動力の変動を検出する(ステップS807)。具体的には、ブレーキECU60は、ステップS802にて演算された目標回生制動力に対して回生ブレーキ装置Aが実際に車輪FL,FR,RL,RRに付与した実回生制動力を示す実回生実行値を入力し(ステップS805)、ステップS802にて演算された目標回生制動力とステップS805にて入力された実回生制動力の差を演算し(ステップS806)、この演算された差が所定値aより大きければ、回生制動力が変動したことを検出する(ステップS807)。
【0093】
そして、ブレーキECU60は、回生制動力の変動を検出すると、ステップS807にてYESと判定し、液圧ブレーキ装置Bのポンプ37,47を駆動させるとともに液圧制御弁31,41を制御することによって制御液圧を形成して車輪FL,FR,RL,RRに制御液圧に基づく制御液圧制動力を付与することにより、上述のように検出された回生制動力の変動による制動力の不足を補償する(ステップS808)。具体的には、ブレーキECU60は、ステップS802にて演算された目標回生制動力と、ステップS805にて入力された実回生制動力との差、すなわちステップS806にて演算された差に相当する液圧となるように制御液圧を制御する。
【0094】
ブレーキECU60は、モータMを起動してポンプ37,47を駆動し、ポンプ37,47からホイールシリンダWC1,WC2,WC3,WC4に供給されるブレーキ液の液圧が制御液圧となるように差圧制御弁31,41のリニアソレノイドに電流を印加する。このとき、リニアソレノイドは液圧センサ(図示せず)により検出されたホイールシリンダWC1,WC2,WC3,WC4の液圧が制御液圧となるようにフィードバック制御されるのがより好ましい。一方、ブレーキECU60は、回生制動力の変動を検出しない場合には、ステップS807にてNOと判定し、ブレーキアクチュエータ25の制御を停止する(ステップS809)。
【0095】
一方、車両の電気系統に失陥が発生した場合、ブレーキECU60はソレノイドバルブ516を非通電にして閉状態としている。この場合は、上述したように、ブレーキ操作状態が所定状態となるのを待たずして、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bにブレーキ液圧が発生するため、回生ブレーキ装置Aが機能しなくても、マスタシリンダ5による基礎液圧制動力のみで、図9の実線で示した車両制動力を発生することができる。
【0096】
本実施形態によれば、セカンダリ室56bの前方に作動室59を設け、負圧式ブースタ22のプシュロッド27からの入力があると、プライマリピストン52aおよびセカンダリピストン52bが前進してプライマリ室56aおよびセカンダリ室56bを縮小させる以前に、作動ピストン57が作動スプリング58を圧縮させながらシリンダ部511内を前進し、作動室59を縮小させる。
【0097】
これにより、プシュロッド27からの入力があっても、初期制動時において、シリンダ部511内を作動ピストン57が前進し作動室59が縮小するのみで、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bが縮小することがないため、この間、マスタシリンダ5による基礎液圧制動力が発生せず、回生ブレーキ装置Aによる回生制動力を十分に機能させることができる。
【0098】
そのため、回生効率を増大させ、車両の燃費を向上させることができる。
また、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bにおいて、ブレーキ液圧が発生していない間も、作動ピストン57が作動スプリング58を圧縮させながらシリンダ511内を前進するため、反力用スプリング21bによる付勢力と相俟って、正常なブレーキ操作フィーリングを維持することができ、運転者に違和感を与えることがない。
【0099】
また、シリンダ511内を作動ピストン57が最大移動ストロークSだけ前進して、作動室59が最大限に縮小した後には、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bが縮小してブレーキ液圧を発生させるため、車両制動力をさらに増大させて、ホイールシリンダWC1〜WC4に供給することができる。
【0100】
また、作動室59をセカンダリ室56bの前方において同軸上に設けているため、作動室59をマスタシリンダ5に一体化でき、小型、軽量で、製造の容易なマスタシリンダ5にすることができる。
また、負圧式ブースタ22、オペレーティングロッド26、プッシュロッド27等は、従前のものを使用することが可能なため、低コストの液圧ブレーキ装置Bにすることができる。
【0101】
また、作動ピストン57が最大移動ストロークSだけ前進した位置にある時に、作動スプリング58に発生する荷重(Tc+k・S)は、リタンスプリング55a,55bのそれぞれの初期荷重Ta,Tbよりも小さく設定されていることにより、プッシュロッド27からの入力があっても、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bが縮小する前に、作動室59を確実に縮小させることができるとともに、作動ピストン57が最大移動ストロークSだけ移動するまで、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bが縮小することを防ぐことができる。
【0102】
また、作動スプリング58のセット荷重Tcは、各シール部材512a1,512a2,512b1,512b2,572の相手側部材に対する摺動抵抗の総和(R1+R2+R3+R4+R5)よりも大きいため、プッシュロッド27からの入力が解除された場合に、摺動抵抗の総和に抗して、作動ピストン57が確実に戻り位置に復帰することができる。
【0103】
また、作動室59とリザーバタンク24との間には、双方の間の連通と遮断とを選択可能なソレノイドバルブ516が設けられたことにより、車両において電気系統が失陥し、回生ブレーキ装置Aが正常に機能しない時に、作動室59とリザーバタンク24との連通を遮断して作動ピストン57の前進を禁止し、プライマリピストン52aおよびセカンダリピストン52bを前進させてブレーキ液圧を迅速に発生させ、ホイールシリンダWC1〜WC4に供給することができる。
【0104】
また、ソレノイドバルブ516は、通電時には、作動室59とリザーバタンク24との間を連通し、非通電時には、作動室59とリザーバタンク24との間を遮断する電磁弁としたことにより、車両の電気系統が失陥して回生ブレーキ装置Aが機能しない場合に、電磁弁により自動的に作動室59とリザーバタンク24との間を遮断して、マスタシリンダ5によるブレーキ液圧を発生させることができる。
【0105】
また、作動室59とリザーバタンク24との間には、リザーバタンク24から作動室59へのブレーキ液の流れを許容するとともに、作動室59からリザーバタンク24へのブレーキ液の流れを遮断するチェック弁517がソレノイドバルブ516と並列に設けられたことにより、プッシュロッド27からの入力が解除された場合に、チェック弁517を介してリザーバタンク24から作動室59へとブレーキ液が急速に戻ることができるため、作動ピストン57を遅滞なく戻すことができる。
【0106】
また、プライマリピストン52aおよびセカンダリピストン52bと作動ピストン57は、シリンダ511に嵌合する互いに等しい外径を有し、シリンダ511は、一定の径による円筒形状を呈することにより、シリンダボデー51におけるシリンダ511の形成が容易で、低コストのマスタシリンダ5にすることができる。また、マスタシリンダ5において、必要な部品点数を最小限にすることができる。
【0107】
<実施形態2>
図10および図11に基づき、本発明の実施形態2によるマスタシリンダ5Aについて説明する。本実施形態によるマスタシリンダ5Aは、実施形態1によるマスタシリンダ5に対し、シリンダボデー51において、ソレノイドバルブ516に代えてオリフィス519が形成されている点のみが異なる。オリフィス519は、作動室59とリザーバタンク24との間に設けられ、双方の間のブレーキ液の流れを制限している。また、シリンダボデー51において、チェック弁517が形成されていることは、実施形態1によるマスタシリンダ5と同様である。チェック弁517は、オリフィス519に対して並列に形成されている。
【0108】
本実施形態によるマスタシリンダ5Aにおいて、ブレーキペダル21が操作されると、その操作が非急速度の場合(非急踏み時)、実施形態1によるマスタシリンダ5において、ソレノイドバルブ516が開状態とされた場合と同様に、プライマリピストン52aはセカンダリピストン52bに対して相対移動(前進)せず、また、セカンダリピストン52bも作動ピストン57に対して相対移動(前進)しないため、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bが縮小することはない。
【0109】
一方、作動ピストン57は、プライマリピストン52aおよびセカンダリピストン52bと一体となって、シリンダ511内を最大移動ストロークSだけ前進して作動室57を縮小させる。この時、作動室59内のブレーキ液はオリフィス519を介してリザーバタンク24に滞りなく排出される。
したがって、この場合のブレーキ操作力に対する基礎液圧制動力は、図11の破線に示したようになる。これは、実施形態1によるマスタシリンダ5における、正常時の特性と同じものである。
【0110】
ブレーキペダル21の操作が急速度の場合(急踏み時)、オリフィス519により作動室59からリザーバタンク24へのブレーキ液の排出が、所定量だけ制限されるため、作動ピストン57が前進する以前に、プライマリピストン52aがセカンダリピストン52bに対して相対移動(前進)し、また、セカンダリピストン52bも作動ピストン57に対して相対移動(前進)するため、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bが縮小してブレーキ液圧を発生させる。
したがって、この場合のブレーキ操作力に対する基礎液圧制動力は、図11の二点鎖線に示したようになり、ブレーキペダル21の操作が非急速度の場合よりも、立ち上がりが早くなる。
【0111】
本実施形態によるマスタシリンダ5Aにおいて、ブレーキペダル21の操作が解除されると、チェック弁517を介して、リザーバタンク24から作動室59へブレーキ液が補償されるため、オリフィス519の存在にかかわらず、作動ピストン57の戻り動作に支障は発生しない。本実施形態によるマスタシリンダ5Aのその他の構成については、実施形態1によるマスタシリンダ5と同様であるため、説明は省略する。
【0112】
本実施形態によれば、作動室59とリザーバタンク24との間には、ブレーキ液の流れを制限するオリフィス519が設けられたことにより、ブレーキペダル21の操作が急速度の場合に、作動室59からリザーバタンク24へのブレーキ液の流れがオリフィス519により妨げられ、作動室59が縮小されることが抑制されるため、初期制動時において、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bにおいてブレーキ液圧を発生させ、ホイールシリンダWC1〜WC4に供給することができる。
【0113】
<変形実施形態1>
図12に基づき、本発明の変形実施形態1によるマスタシリンダ5Bについて説明する。本実施形態によるマスタシリンダ5Bは、実施形態1によるマスタシリンダ5に対し、プライマリピストン52aの後方に作動室59が形成されている点のみが異なる。
マスタシリンダ5Bの作動ピストン57は、プライマリピストン52aの後方においてシリンダ511に対し液密的に嵌合し、プライマリピストン52aとの間に作動室59を形成している。作動ピストン57は、負圧式ブースタ22のプッシュロッド27からの入力により、シリンダ511内を摺動可能に形成されている。作動ピストン57は、プライマリピストン52aに対して、最大移動ストロークSだけ相対移動(前進)できるように形成されている。
また、マスタシリンダ5Bの作動スプリング58は、作動室59内に配置され、戻り位置にある作動ピストン57とプライマリピストン52aの後端との間で圧縮され、セット荷重Tcを発生させた状態で保持されている。
【0114】
本実施形態によるマスタシリンダ5Bにおいても、作動ピストン57が最大移動ストロークSだけ前進した位置にある時に、作動スプリング58に発生する荷重(Tc+k・S)は、リタンスプリング55a,55bのそれぞれの初期荷重Ta,Tbよりも小さく設定されている。また、作動スプリング58のセット荷重Tcは、作動シール572のシリンダ511に対する摺動抵抗R5よりも大きく設定されている。本実施形態によるマスタシリンダ5Bのその他の構成については、実施形態1によるマスタシリンダ5と同様であるため、説明は省略する。
【0115】
本実施形態によれば、プライマリピストン52aの後方に作動室59を設け、負圧式ブースタ22のプシュロッド27からの入力があると、プライマリピストン52aおよびセカンダリピストン52bが前進してプライマリ室56aおよびセカンダリ室56bを縮小させる以前に、作動ピストン57が作動スプリング58を圧縮させながらシリンダ部511内を前進し、作動室59を縮小させる。
【0116】
<変形実施形態2>
図13に基づき、本発明の変形実施形態2によるマスタシリンダ5Cについて説明する。本実施形態によるマスタシリンダ5Cは、実施形態1によるマスタシリンダ5に対し、セカンダリピストン52bの後方に作動室59が形成されている点のみが異なる。
マスタシリンダ5Cの作動ピストン57は、プライマリピストン52aとセカンダリピストン52bとの間においてシリンダ511に対し液密的に嵌合し、セカンダリピストン52bとの間に作動室59を形成している。作動ピストン57は、セカンダリピストン52bに対して、最大移動ストロークSだけ相対移動(前進)できるように形成されている。
また、マスタシリンダ5Cの作動スプリング58は、作動室59内に配置され、戻り位置にある作動ピストン57とセカンダリピストン52bの後端との間で圧縮され、セット荷重Tcを発生させた状態で保持されている。
【0117】
本実施形態によるマスタシリンダ5Cにおいても、作動ピストン57が最大移動ストロークSだけ前進した位置にある時に、作動スプリング58に発生する荷重(Tc+k・S)は、リタンスプリング55a,55bのそれぞれの初期荷重Ta,Tbよりも小さく設定されている。
したがって、プッシュロッド27からの入力により、プライマリピストン52aが作動ピストン57に対して相対移動(前進)し、セカンダリピストン52bがシリンダ511の底部515に対して前進して、プライマリ室56aおよびセカンダリ室56bを縮小させる以前に、作動ピストン57が、セカンダリピストン52bとの間で作動スプリング58を圧縮させながらシリンダ511内を最大移動ストロークSまで前進し、作動室59を縮小させることができる。
【0118】
<他の実施形態>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。
作動ピストン57の最大移動ストロークSを設定するためには、必ずしも、バネ保持部571をシリンダ511の底部515に当接させる方法に依らなければならないわけではない。例えば、作動ピストン57が最大移動ストロークSだけ前進した時に、作動スプリング58に発生する荷重(Tc+k・S)が、リタンスプリング55a,55bの初期荷重Ta,Tbよりも大きくなるようにし、これ以降は、作動ピストン57が前進せずに、プライマリピストン52aおよびセカンダリピストン52bのみが前進するようにしてもよい。
【0119】
また、シリンダボデー51において、作動室59とリザーバタンク24との間にソレノイドバルブ516を設け、さらに、作動室59とソレノイドバルブ516との間、または、リザーバタンク24とソレノイドバルブ516との間に、実施形態2によるオリフィス519を直列配置してもよい。
また、プライマリシール512a1,512a2およびセカンダリシール512b1,512b2は、それぞれプライマリピストン52aおよびセカンダリピストン52bに装着され、シリンダ511に対し摺動するようにしてもよい。また、作動シール572は、シリンダ511に設けられ、作動ピストン57に対し摺動するようにしてもよい。
【0120】
また、ブレーキ操作状態は、マスタシリンダ5のプライマリピストン52aのストロークを検出するマスタシリンダストロークセンサ5z(図1および図2示)によって検出してもよい。
また、本発明は、タンデムマスタシリンダのみではなく、シングルマスタシリンダに適用してもよい。
また、本発明による液圧ブレーキ装置Bにおいて、負圧式ブースタ22は必ずしも必要ではない。
【符号の説明】
【0121】
図面中、5,5A,5B,5Cはマスタシリンダ(液圧発生装置)、27はプッシュロッド(入力部材)、51はシリンダボデー(ハウジング)、52aはプライマリピストン(マスタピストン)、52bはセカンダリピストン(マスタピストン)、55a,55bはリタンスプリング、56aはプライマリ室(液圧室)、56bはセカンダリ室(液圧室)、57は作動ピストン(アイドルピストン、アイドル作動機構)、58は作動スプリング(アイドルスプリング、アイドル作動機構)、59は作動室(アイドル室、アイドル作動機構)、511はシリンダ(シリンダ部)、515はシリンダの底部(当接部)、516はソレノイドバルブ(バルブ手段)、517はチェック弁(一方向弁)、519はオリフィス、WC1,WC2,WC3,WC4はホイールシリンダを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ部が形成されたハウジングと、
前記シリンダ部に対し液密的に嵌合され、ブレーキ操作を入力するための入力部材の操作により当該シリンダ部内を摺動可能なマスタピストンと、
前記マスタピストンの前端部と前記シリンダ部との間に形成され、ホイールシリンダと接続される液圧室と、
前記マスタピストンの前端部に設けられ、同マスタピストンを後方に付勢するリタンスプリングと、
を備え、
前記入力部材の操作量の増大に伴って、前記マスタピストンが前記リタンスプリングを圧縮させながら前記シリンダ部内を前進し、前記液圧室を縮小させることによりブレーキ液圧を発生させる液圧発生装置において、
前記マスタピストンの前方において、前記シリンダ部に対し摺動可能に嵌合されているアイドルピストンと、
前記アイドルピストンの前端部と前記シリンダ部との間に形成され、大気リザーバに接続されているアイドル室と、
前記アイドルピストンの前端部に設けられ、同アイドルピストンを後方に付勢するアイドルスプリングと、
を有するアイドル機構を備え、
前記液圧室は、前記マスタピストンと前記アイドルピストンとの間に形成され、前記リタンスプリングは、前記マスタピストンと前記アイドルピストンとの間に設けられ、
前記入力部材の操作量が所定量に達するまでは、前記アイドルピストンが前記マスタピストンと共に前記操作量に応じて移動して、前記アイドル室が縮小され、前記入力部材の操作量が前記所定量よりも大きくなると、前記アイドルピストンの移動が制限され、前記マスタピストンの移動に伴って前記液圧室が縮小されるように構成されていることを特徴とする液圧発生装置。
【請求項2】
シリンダ部が形成されたハウジングと、
前記シリンダ部に対し液密的に嵌合され、ブレーキ操作を入力するための入力部材の操作により当該シリンダ部内を摺動可能なマスタピストンと、
前記マスタピストンの前端部と前記シリンダ部との間に形成され、ホイールシリンダと接続される液圧室と、
前記マスタピストンの前端部に設けられ、同マスタピストンを後方に付勢するリタンスプリングと、
を備え、
前記入力部材の操作量の増大に伴って、前記マスタピストンが前記リタンスプリングを圧縮させながら前記シリンダ部内を前進し、前記液圧室を縮小させることによりブレーキ液圧を発生させる液圧発生装置において、
前記マスタピストンの後方において、前記シリンダ部に対し摺動可能に嵌合され、前記入力部材の操作により、前記シリンダ部内を摺動可能なアイドルピストンと、
前記アイドルピストンと前記マスタピストンとの間に形成され、大気リザーバに接続されているアイドル室と、
前記アイドルピストンと前記マスタピストンとの間に設けられ、前記アイドルピストンを後方に付勢するアイドルスプリングと、
を有するアイドル機構を備え、
前記入力部材の操作量が所定量に達するまでは、当該操作量に応じて前記アイドルピストンが前記アイドルスプリングを圧縮させながら移動して、前記アイドル室が縮小され、前記入力部材の操作量が前記所定量よりも大きくなると、当該操作量に応じて前記マスタピストンが前記アイドルピストンと共に移動して、前記液圧室が縮小されるように構成されていることを特徴とする液圧発生装置。
【請求項3】
前記シリンダ部または前記マスタピストンの後端部には、前記入力部材の操作量が前記所定量である状態において、前記アイドルピストンの前端部に当接する当接部が形成され、
前記入力部材の非操作状態で前記アイドルスプリングに発生するセット荷重は、前記アイドルピストンの前記シリンダ部に対する摺動抵抗と、前記マスタピストンの前記シリンダ部に対する摺動抵抗との和よりも大きく、
前記アイドルピストンが前記当接部に当接している状態において、前記アイドルスプリングに発生する荷重は、前記入力部材の非操作状態で前記リタンスプリングに発生する初期荷重よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液圧発生装置。
【請求項4】
前記アイドル室と前記大気リザーバとの間には、双方の間の流体の流れを制御するバルブ手段が設けられたことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の液圧発生装置。
【請求項5】
前記バルブ手段は、
通電時には、前記アイドル室と前記大気リザーバとの間を連通し、非通電時には、前記アイドル室と前記大気リザーバとの間を遮断する電磁弁であることを特徴とする請求項4記載の液圧発生装置。
【請求項6】
前記アイドル室と前記大気リザーバとの間には、前記大気リザーバから前記アイドル室への流体の流れを許容するとともに、前記アイドル室から前記大気リザーバへの流体の流れを遮断する一方向弁が、前記バルブ手段と並列に設けられたことを特徴とする請求項4または5に記載の液圧発生装置。
【請求項7】
前記マスタピストンと前記アイドルピストンは、前記シリンダ部に嵌合する互いに等しい外径を有し、
前記シリンダ部は、一定の径による円筒形状を呈することを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の液圧発生装置。
【請求項8】
前記アイドル室と前記大気リザーバとの間には、流体の流れを制限するオリフィスが設けられたことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の液圧発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−245927(P2011−245927A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119307(P2010−119307)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】