説明

液状樹脂組成物および半導体装置

【課題】フリップチップ方式の半導体装置においてフィラー高充填化が可能で、高い信頼性を有し、狭ギャップへの充填性に優れる液状樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)アミン硬化剤、(C)フィラー、(D)ルイス塩基またはその塩、及び(E)酸化処理されたカーボンブラックを含有する液状樹脂組成物であって、(C)フィラーの含有量が液樹脂組成物全体の60重量%以上80重量%以下であり、(C)フィラーの最大粒子径が25μm以下で平均粒子径が0.1μm以上2μm以下であることを特徴とする液状樹脂組成物、および該液状樹脂組成物を用いて作製された半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状樹脂組成物および半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ方式の半導体装置では半導体素子と基板とを半田バンプで電気的に接続している。このフリップチップ方式の半導体装置は、接続信頼性を向上するために半導体素子と基板との間にアンダーフィル材と呼ばれる液状樹脂組成物を充填して半田バンプの周辺を補強している。このようなアンダーフィル充填型のフリップチップパッケージにおいては、近年のLow−Kチップの採用や半田バンプの鉛フリー化に伴い、熱応力によるLow−K層の破壊や半田バンプのクラックを防ぐためにアンダーフィル材にはより一層の低熱膨張化が求められる。
アンダーフィル材を低熱膨張化するにはフィラーの高充填化が必須であるが、フィラーの充填率の上昇に伴って粘度も増加し、半導体素子と基板の間隙へのアンダーフィル材の充填性が低下し、生産性が著しく悪くなるという問題がある。
例えば大粒径のフィラーを適用すれば高充填化に伴う粘度上昇は抑えられるが、フィラーの沈降や狭ギャップでのフィラー詰まりによる充填性の低下が問題となる。またこれまでフィラー充填率の上昇に伴う充填性の低下を解決するための多くの手法が提案されたが(例えば、特許文献1−3参照)、いずれも問題を解決するには不十分であり、狭ギャップ充填性を損なうことなくフィラー高充填化可能な画期的な手法が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−119929号公報
【特許文献2】特開2003−137529号公報
【特許文献3】特許第2921717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、フリップチップ方式の半導体装置においてフィラー高充填化が可能で、高い信頼性を有し、狭ギャップへの充填性に優れる液状樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記[1]〜[6]に記載の本発明により達成される。
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)アミン硬化剤、(C)フィラー、(D)ルイス塩基またはその塩、及び(E)酸化処理されたカーボンブラックを含有する液状樹脂組成物であって、(C)フィラーの含有量が液樹脂組成物全体の60重量%以上80重量%以下であり、(C)フィラーの最大粒子径が25μm以下で平均粒子径が0.1μm以上2μm以下であることを特徴とする液状樹脂組成物。
[2]前記ルイス塩基が、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−または1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5である[1]項に記載の液状樹脂組成物。
[3](C)フィラーの含有量が、液状樹脂組成物全体に対して、70重量%以上80重量%以下である[1]または[2]項に記載の液状樹脂組成物。
[4]前記液状樹脂組成物が、更に(F)コアシェルゴム粒子を含有する[1]〜[3]のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物
[5]前記液状樹脂組成物が、更に(G)反応性希釈剤を含有する[1]〜[4]のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物
[6][1]〜[5]のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物を用いて、半導体素子と基板を封止して作製されたことを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フリップチップ実装方式の半導体装置においてフィラー高充填化が可能で、高い信頼性を有し、狭ギャップへの充填性に優れる液状樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の液状樹脂組成物および半導体装置について説明する。
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)アミン硬化剤、(C)フィラー、(D)ルイス塩基またはその塩、及び(E)酸化処理されたカーボンブラックを含有する液状樹脂組成物であって、(C)フィラーの含有量が液樹脂組成物全体の60重量%以上80重量%以下であり、(C)フィラーの最大粒子径が25μm以下で平均粒子径が0.1μm以上2μm以下である液状樹脂組成物である。
以下に本発明の液状樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0008】
本発明で用いる(A)エポキシ樹脂は、一分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に分子量や構造は限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンなどの芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイドなどの脂環式エポキシなどの脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0009】
さらに本発明の場合、芳香族環にグリシジル構造またはグリシジルアミン構造が結合した構造を含むエポキシ樹脂が耐熱性、機械特性、耐湿性が高くなる点からより好ましく、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂は信頼性、特に接着性が低くなる点から使用する量を制限するほうがさらに好ましい。これらは単独でも2種以上混合して使用してもよい。
【0010】
本発明の液状樹脂組成物は、室温で液状であるので、(A)エポキシ樹脂として、1種の(A)エポキシ樹脂のみを含む場合は、その1種の(A)エポキシ樹脂は、室温で液状であり、また、2種以上の(A)エポキシ樹脂を含む場合は、それら2種以上の(A)エポキシ樹脂全部の混合物が、室温で液状である。そのため、(A)エポキシ樹脂が、2種以上の(A)エポキシ樹脂の組合せの場合、(A)エポキシ樹脂は、全てが室温で液状のエポキシ樹脂の組合せであってもよく、あるいは、一部が室温で固形のエポキシ樹脂あっても他の室温で液状のエポキシ樹脂と混合することにより、混合物が室温で液状となるのであれば、室温で液状のエポキシ樹脂と室温で固形のエポキシ樹脂との組合せであってもよい。なお、(A)エポキシ樹脂が、2種以上のエポキシ樹脂が組合せの場合、必ずしも、使用する全てのエポキシ樹脂を混合してから、他の成分と混合して、液状樹脂組成物を製造する必要はなく、使用するエポキシ樹脂を別々に混合して、液状樹脂組成物を製造してもよい。本発明で、(A)エポキシ樹脂が、室温で液状であるとは、エポキシ樹脂成分(A)として使用する全てのエポキシ樹脂を混合した場合に、その混合物が室温で液状になるということである。
本発明において、室温とは25℃を指し、また、液状とは樹脂組成物が流動性を有していることを指す。
【0011】
(A)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、液状樹脂組成物全体の5〜30重量%が好ましく、特に5〜20重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、反応性や組成物の耐熱性や機械的強度、封止時の流動特性に優れる。
【0012】
本発明に用いる(B)アミン硬化剤とは、エポキシ樹脂を硬化し得るものであれば特に構造は限定されない。前記アミン硬化剤としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−P−アミノベンゾエートなどの芳香族ポリアミン類などが挙げられる。
これらのアミン硬化剤は、1種単独で用いても、2種以上の組合せでも良く、さらに半導体装置の封止用途を考慮すると、耐熱性、電気的特性、機械的特性、密着性、耐湿性が高くなる点から芳香族ポリアミン型硬化剤が一層好ましい。さらに本発明の液状樹脂組成物がアンダーフィルとして用いられることを踏まえると、室温(25℃)で液状を呈するものがより好ましい。
【0013】
(B)アミン硬化剤の含有量は、特に限定されないが、液状樹脂組成物全体の5〜30重量%が好ましく、特に5〜20重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、反応性や組成物の機械的特性や耐熱性などに優れる。
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量に対する(B)アミン硬化剤の活性水素当量の比は0.6〜1.4が好ましく、特に0.7〜1.3が好ましい。(B)アミン硬化剤の活性水素当量が前記範囲内であると、反応性や樹脂組成物の耐熱性が特に向上する。
【0014】
本発明で用いる(C)フィラーは、破壊靭性などの機械的強度、熱時寸法安定性、耐湿性を向上することから、液状樹脂組成物が(C)フィラーを含有することにより、半導体装置の信頼性を特に向上することができる。
(C)フィラーとしては、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、合成シリカ、結晶シリカなどのシリカ粉末などの酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素などの窒化物などを用いることができる。
これらの(C)フィラーは、1種単独でも2種以上の組合せでもよい。これらの中でも樹脂組成物の耐熱性、耐湿性、強度などを向上できることから溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ粉末が好ましい。(C)フィラーの形状は、特に限定されないが、粘度・流動特性の観点から形状は球状であることが好ましい。
【0015】
(C)フィラーの最大粒子径は25μm以下、平均粒子径は0.1μm以上2μm以下であることが好ましい。最大粒子径および平均粒径を前記上限値以下とすることにより液状樹脂組成物が半導体装置へ流動する際のフィラー詰まりによる部分的な未充填や充填不良を抑制する効果が高くなる。また平均粒子径を前記下限値以上にすることにより、液状樹脂組成物の粘度が適度に低下し、充填性が向上する。
(C)フィラーの平均粒径を測定する方法としては、例えばレーザー回折光散乱法によって求めた粒度分布から算術計算によって得られた数値などを用いることができる。また最大粒径を測定する方法は、前述のような粒度分布計測によって得られた累積分布において累積値99%に達する粒径値、あるいは湿式篩法によって所定サイズの目開きの篩いで篩った際の篩い上残渣の割合が0.1%以下となる粒径値などを用いることができるが、後者のほうが実質的に過大な粒径の無機充填材を含まないので、詰まり防止の観点からいっそう好ましい。
本願の実施例では、平均粒径はレーザー回折光散乱法によって測定し、最大粒径は湿式篩法によって測定した。
(C)フィラーの含有量は、液状樹脂組成物全体の60重量%以上80重量%以下であり、70重量%以上80重量%以下であることが好ましい。含有量が前記下限値以上であることにより半導体装置の信頼性を向上させる効果が高くなり、前記上限値以下であることにより狭ギャップへの充填性と信頼性のバランスに優れる。
【0016】
本発明に用いる(D)ルイス塩基またはその塩は、フリップチップ実装方式の半導体装置における半導体素子および基板に対する濡れ性を向上させ、狭ギャップ充填性を向上させる効果がある。(D)ルイス塩基またはその塩を含有することにより、狭ギャップ充填性を損なうことなくフィラーを高充填させることが可能となる。(D)ルイス塩基またはその塩としては例えば、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5、1,4−ジアザジシクロ(2.2.2)オクタン、イミダゾール類、ジエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチルフェノール)2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのアミン化合物またはそれらの塩、トリフェニルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物などが挙げられ、これらの中でも三級アミン化合物であるベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチルフェノール)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、イミダゾール類、1,8ジアザビシクロ[5.4.0.]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5、および1,4−ジアザジシクロ(2.2.2)オクタンまたはこれらの塩などが好ましく、とりわけ1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、および1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5またはそれらの塩が好ましい。
また、(D)がルイス塩基の塩の場合、具体的には、ルイス塩基のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩などが挙げられる
【0017】
(D)ルイス塩基およびその塩の含有量は特に限定されないが、液状樹脂組成物全体の0.005重量%以上0.3重量%以下が好ましく、0.01重量%以上0.2重量%以下が特に好ましく、0.02重量%以上0.1重量%以下が更に好ましい。含有量が前記下限値未満では、濡れ性を向上が不十分となり狭ギャップ充填性が低下する恐れがある。また含有量が前記上限値を超えると、液状樹脂組成物の増粘を招き、充填性が低下する恐れがある。
【0018】
(D)前記ルイス塩基またはその塩は、液状樹脂組成物を製造する前に、予め、(A)エポキシ樹脂および/または(B)アミン硬化剤と混合されていることが好ましい。これにより、(D)ルイス塩基またはその塩の、(A)エポキシ樹脂および/または(B)アミン硬化剤への分散性が向上し、特に濡れ性を向上させる効果が高まる。予め混合とは、室温で攪拌混合することであり、特に攪拌混合時間に上限はないが、1時間以上攪拌混合することが(D)ルイス塩基またはその塩を(A)エポキシ樹脂および/または(B)アミン硬化剤に均一に分散させる点から好ましい。
(D)ルイス塩基またはその塩を予め、(A)エポキシ樹脂および/または(B)アミン硬化剤と混合した場合、特に(C)フィラーを高充填した場合での狭ギャップ充填性の向上効果に優れる。すなわち、(A)エポキシ樹脂および/または(B)アミン硬化剤への分散性を向上させることにより、フリップチップ実装方式の半導体装置における半導体素子および基板に対する濡れ性を向上させ、狭ギャップへの充填性を一層向上することができる。
【0019】
本発明に用いる(E)酸化処理されたカーボンブラックは液状樹脂組成物の着色剤として用いる。前記(D)ルイス塩基またはその塩は液状樹脂組成物の狭ギャップ充填性を向上させる一方で、カーボンブラックの分散性を悪化させ、カーボンブラックの凝集物を発生させるという欠点があった。導電性物質であるカーボンブラックの凝集物が存在すると、フリップチップ方式の半導体装置において半導体素子と基板とを電気的に接続する半田バンプ間でショートやリーク不良を発生させる要因となるため、好ましくない。一方でカーボンブラックの中でも、酸化処理されたカーボンブラックを含む液状樹脂組成物は、前記(D)ルイス塩基またはその塩を含有する場合でも良好なカーボンブラックの分散性を示す。
【0020】
カーボンブラックの酸化処理の方法としては、高温空気、オゾン、硝酸、NO、H、低温プラズマによる処理等が挙げられるが、限定されるものではない。酸化処理されているかどうかは、そのpH値から判断できる。具体的には、カーボンブラック10gに蒸留水100mlを加えホットプレート上で15分間煮沸し室温まで冷却後、遠心分離機で上澄み液を取り除き泥状物のpHをガラス電極pHメーターで測定する。(E)酸化処理されたカーボンブラックのpH値は2以上、5以下であることが好ましい。(E)酸化処理されたカーボンブラックの含有量は、特に限定されないが、液状樹脂組成物全体の0.05重量%〜0.3重量%が好ましく、特に0.05重量%〜0.2重量%が好ましい。上記範囲内であれば、良好な着色性が得られ、カーボンブラックの分散不良によるカーボンブラックの凝集の発生を抑えることができる。
【0021】
その他の成分としては、樹脂組成物を低弾性化するために、本発明の液状樹脂組成物は(F)コアシェルゴム粒子を含むことが好ましい。(F)コアシェルゴム粒子は、樹脂組成物を低弾性化させることができれば、成分は、限定されるものではない。
例えば、アクリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブタジエンゴムなどが選択できる。これらの中でより好ましいのは、シリコーンゴムである。シリコーンゴムを用いたコアシェル粒子については、シリコーンゴム粒子の表面をシリコーンレジンにて被覆したコアシェル粒子が挙げられる。
【0022】
(F)コアシェルゴム粒子のコア部のガラス転移温度は、シェル部のガラス転移温度に比べて低く、室温よりも低いことが好ましい。その際にコア部とシェル部が同一種のゴムである必要は無く、コア部がシリコーンゴムでシェル部がアクリルゴムや、コア部がブタジエンゴムでシェル部にアクリルゴムなどを組み合わせても可能である。
【0023】
(F)コアシェルゴム粒子について、凝集しにくいという点で球状または略球状であることが好ましい。また(F)コアシェルゴム粒子の平均粒子径は、好ましくは、0.01μm以上20μm以下であり、より好ましくは、0.1μm以上5μm以下である。平均粒子径が前記下限値未満では凝集力が強くなり、粘度が上昇し流動性が維持できない。また前記上限値を超えると狭ギャップに対して、樹脂詰まりを起こしてしまう可能性がある。
【0024】
(F)コアシェルゴム粒子の添加量は、特に制限されるものではないが、液状樹脂組成物の(C)フィラーおよび(F)コアシェル粒子を合わせた含有量に対して、好ましくは1重量%以上15重量%以下であり、より好ましくは3重量%以上10重量%以下である。(F)コアシェル粒子の添加量が前記下限値未満の場合は低弾性の効果が得られない。一方、添加量が前記上限値を超える場合は均一分散させることが困難となり、樹脂組成物全体が脆くなる。
【0025】
また、液状樹脂組成物の反応性を損なうことなく液状樹脂組成物を低粘度化させることから、本発明の液状樹脂組成物は(G)反応性希釈剤を含有することが好ましい。(G)によりフィラー高充填による液状樹脂組成物の粘度の上昇を抑え、狭ギャップ充填性を向上することができる。(G)反応性希釈剤としては、例えばフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどの1官能の芳香族グリシジルエーテル類、脂肪族グリシジルエーテル類などが挙げられる。(G)反応性希釈剤の含有量は、特に限定されないが、液状樹脂組成物全体の0.5〜5重量%が好ましく、特に0.5〜3.5重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、反応性や組成物の耐熱性や機械的強度、封止時の流動特性に優れる。
【0026】
本発明の液状樹脂組成物には、前記(A)エポキシ樹脂、(B)アミン硬化剤などの上述した各成分以外に、必要に応じてカップリング剤、難燃剤、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を用いることができる。
【0027】
本発明の液状樹脂組成物は、上述した各成分、添加剤などをプラネタリーミキサー、三本ロール、二本熱ロール、ライカイ機などの装置を用いて分散混練したのち、真空下で脱泡処理して製造することができる。
【0028】
本発明の半導体装置は、本発明の液状樹脂組成物を用いて製造される。
具体的にはフリップチップ型半導体装置が挙げられる。このフリップチップ型半導体装置に関しては、半田電極が具備された半導体素子を基板に接続し、該半導体素子と該基板の間隙を封止する。この場合一般的に基板側の半田電極が接合する部位以外の領域は半田が流れないようにソルダーレジストが形成されている。
次に、半導体素子と基板との間隙に本発明の液状樹脂組成物を充填する。充填する方法としては、毛細管現象を利用する方法が一般的である。具体的には、半導体素子の一辺に液状樹脂組成物を塗布した後、半導体素子と基板との間隙に毛細管現象で流し込む方法、半導体素子の2辺に液状樹脂組成物を塗布した後、半導体素子と基板との間隙に毛細管現象で流し込む方法、半導体素子の中央部にスルーホールを開けておき、半導体素子の周囲に液状樹脂組成物を塗布した後、半導体素子と基板との間隙に毛細管現象で流し込む方法などが挙げられる。また、一度に全量を塗布するのではなく、2度に分けて塗布する方法なども行われる。また、ポッテッィング、印刷などの方法を用いることもできる
次に、充填した本発明の液状樹脂組成物を硬化させる。硬化条件は、特に限定されないが、例えば100℃〜170℃の温度範囲で1〜12時間加熱を行うことにより硬化できる。さらに、例えば100℃で1時間加熱した後、引き続き150℃で2時間加熱するような、段階的に温度を変化させながら加熱硬化を行ってもよい。
このようにして、半導体素子と基板との間が、本発明の液状樹脂組成物の硬化物で封止されている半導体装置を得ることができる。
【0029】
このような半導体装置としては、フリップチップ方式の半導体装置、キャビティーダウン型BGA(Ball Grid Array)、POP(Package on Package)型BGA(Ball Grid Array)、TAB(Tape Automated Bonding)型BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Scale Package)などが挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
(A)エポキシ樹脂として(DIC(株)製 EXA−830LVP)20.6重量%と、(B)アミン硬化剤として(日本化薬(株)製 カヤハードAA)8.2重量%と、(C)フィラーとして((株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3、最大粒子径が24μm以下、かつ平均粒子径が1μm)71重量%と、(D)ルイス塩基として1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下DBU)0.1重量%と、(E)酸化処理されたカーボンブラックとして(三菱化学(株)製 MA7、pH3.0)0.1重量%を3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。なお、(A)エポキシ樹脂とDBUとは予め室温で1時間攪拌混合したものを用いた。
【0031】
(実施例2)
(A)エポキシ樹脂として(DIC(株)製 EXA−830LVP)19.3重量%と(B)エポキシ樹脂硬化剤として、アミン硬化剤(日本化薬(株)製 カヤハードAA)7.5重量%と、(C)フィラーとして((株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3、最大粒子径が24μm以下、かつ平均粒子径が1μm)73重量%と、(D)ルイス塩基として1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下DBU)0.1重量%と、(E)酸化処理されたカーボンブラックとして(三菱化学(株)製 MA100、pH値3.5)0.1重量%を3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。なお、(B)エポキシ樹脂硬化剤とDBUとは予め室温で1時間攪拌混合したものを用いた。
【0032】
(実施例3)
DBUの代わりに、DBU−フェノール塩(サンアプロ(株)製 U−CAT SA1)を用いた以外は、実施例1と同様に液状樹脂組成物を作製した。なお、(A)エポキシ樹脂とDBU−フェノール塩とは予め室温で1時間攪拌混合したものを用いた。
【0033】
(実施例4)
(A)エポキシ樹脂として(DIC(株)製 EXA−830LVP)19.7重量%と(B)エポキシ樹脂硬化剤として、アミン硬化剤(日本化薬(株)製 カヤハードAA)8.1重量%と、(C)フィラーとして((株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3、最大粒子径が24μm以下、かつ平均粒子径が1μm)66重量%と、(D)ルイス塩基として1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下DBU)0.1重量%と、(E)酸化処理されたカーボンブラックとして(三菱化学(株)製 MA230、pH3.0)0.1重量%と、(F)コアシェルゴム粒子として(信越化学工業(株)製 KMP−605)5重量%と、(G)反応性希釈剤として(新日鐵化学(株)製 ZX−1658GS)1重量%を3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。なお、(B)エポキシ樹脂硬化剤とDBUとは予め室温で1時間攪拌混合したものを用いた。
【0034】
(比較例1)
(A)エポキシ樹脂として(DIC(株)製 EXA−830LVP)21.3重量%と、(B)エポキシ樹脂硬化剤として、アミン系硬化剤(日本化薬(株)製 カヤハードAA)8.4重量%と、(C)フィラーとして((株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3、最大粒子径が24mμ以下、かつ平均粒子径が1μm)70重量%と、(E)酸化処理されたカーボンブラックとして(三菱化学(株)製 MA230、pH3.0)0.1重量%を3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。
【0035】
(比較例2)
(A)エポキシ樹脂として(DIC(株)製 EXA−830LVP)20.6重量%と、(B)エポキシ樹脂硬化剤として、アミン系硬化剤(日本化薬(株)製 カヤハードAA)8.2重量%と、(C)フィラーとして((株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3、最大粒子径が24μm以下、かつ平均粒子径が1μm)71重量%と、(D)ルイス塩基として1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下DBU)0.1重量%と、酸化処理されていないカーボンブラック(三菱化学(株)製 MA600、pH値7.0)0.1重量%を3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。
【0036】
(比較例3)
(A)エポキシ樹脂として(DIC(株)製 EXA−830LVP)21.5重量%と、(B)エポキシ樹脂硬化剤として、アミン系硬化剤(日本化薬(株)製 カヤハードAA)8.4重量%と、(C)フィラーとして((株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3、最大粒子径が24μm以下、かつ平均粒子径が1μm)70重量%と、酸化処理されていないカーボンブラック(三菱化学(株)製 MA600、pH値7.0)0.1重量%を3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。
【0037】
[評価項目]
得られた液状樹脂組成物について、以下の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
1.充填性
18mm×18mmのガラス板(上)とガラス板(下)とを70±10μmの間隔が空くように張り合わせて、隙間のある平行平面を持つガラスセルを作製した。このガラスセルをホットプレートの上に置き、ガラス板(上)の上面温度が110±1℃になるよう温度調整しながら5分間静置した。その後、ガラスセルの一辺に、液状樹脂組成物を適量塗布し、18mm流れきる時間(流動時間)を測定した。各符号は、以下の通りである。
◎:流動時間が、100s以上、150s未満であったもの。
○:流動時間が、150s以上、250s未満であったもの。
△:流動時間が、250s以上、300s未満であったもの。
×:流動時間が、300s以上であったもの。
【0038】
2.カーボンブラックの凝集物の観察
1.充填性の評価に使用した、液状樹脂組成物が充填されたガラスセルを150℃のオーブンで120分間液状樹脂組成物を加熱硬化した後、実体顕微鏡にてカーボンブラックの凝集物の有無を観察した。
【0039】
3.半導体装置の評価
実施例1〜4および比較例1〜3で得られた液状樹脂組成物を半田バンプで接合された回路基板と半導体チップとの隙間に流動、封止し半導体装置を作製し、樹脂充填試験、リフロー試験、温度サイクル試験を実施した。試験、評価に使用した半導体装置の構成部材は以下のとおりである。
半導体チップとしては、日立超LSI社製PHASE−2TEGウエハーに半導体チップの回路保護膜としてポリイミドを用い、半田バンプとしてSn/Ag/Cu組成の無鉛半田を形成したものを15mm×15mm×0.8mmtに切断し使用した。
回路基板には、住友ベークライト(株)製FR5相当の0.8mmtのガラスエポキシ基板をベースとして用い、その両面に太陽インキ製造(株)製ソルダーレジストPSR4000/AUS308を形成し、片面に上記の半田バンプ配列に相当する金メッキパッドを形成したものを50mm×50mmの大きさに切断し使用した。
接続用のフラックスにはTSF−6502(Kester製、ロジン系フラックス)を使用した。
半導体装置の組立は、まず充分平滑な金属またはガラス板にドクターブレードを用いてフラックスを50μm厚程度に均一塗布し、次にフリップチップボンダーを用いてフラックス膜に半田バンプが搭載された半導体チップの半田バンプ搭載面側を軽く接触させたのちに離し、半田バンプにフラックスを転写させ、次に半導体チップを回路基板上に圧着させた。次に、IRリフロー炉で加熱処理し半田バンプを溶融接合して作製した。溶融接合後に洗浄液を用いて洗浄を実施した。液状樹脂組成物の充填、封止方法は、作製した半導体装置を110℃の熱板上で加熱し、半導体チップの一辺に調製した液状樹脂組成物を塗布し隙間充填させた後、150℃のオーブンで120分間液状樹脂組成物を加熱硬化し、評価試験用の半導体装置を得た。
【0040】
3.1 充填試験
液状樹脂組成物の充填試験としては、作製した半導体装置の硬化終了後、超音波探傷装置を用いて充填性を確認した。
良好 :隙間を液状樹脂組成物が完全に充填しているもの
未充填:隙間を液状樹脂組成物が完全に充填できなかったもの
【0041】
3.2 リフロー試験
リフロー試験の試験方法としては、上記の半導体装置をJEDECレベル3の吸湿処理(30℃相対湿度60%で168時間処理)を行った後、IRリフロー処理(ピーク温度260℃)を3回行い、超音波探傷装置にて半導体装置内部での液状樹脂組成物の剥離の有無を確認し、さらに光学顕微鏡を用いて半導体チップ側面部の液状樹脂組成物表面を観察し亀裂の有無を観測した。
【0042】
3.3 温度サイクル試験
温度サイクル試験としては、上記のリフロー試験を行った半導体装置に(−55℃/30分)と(125℃/30分)の冷熱サイクル処理を施し、250サイクル毎に超音波探傷装置にて半導体装置内部の半導体チップと液状樹脂組成物界面の剥離の有無を確認し、さらに光学顕微鏡を用いてチップ側面部の液状樹脂組成物表面を観察し、亀裂の有無を観測した。上記温度サイクル試験は最終的に1000サイクルまで実施した。
以上の結果を表1に詳細にまとめた。
比較例1および3は、作製した半導体装置の充填性に問題があったため、リフロー試験と温度サイクル試験は実施しなかった。
実施例1〜4、比較例2の半導体装置は、問題なく作動した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)アミン硬化剤、(C)フィラー、(D)ルイス塩基またはその塩、及び(E)酸化処理されたカーボンブラックを含有する液状樹脂組成物であって、(C)フィラーの含有量が液樹脂組成物全体の60重量%以上80重量%以下であり、(C)フィラーの最大粒子径が25μm以下で平均粒子径が0.1μm以上2μm以下であることを特徴とする液状樹脂組成物。
【請求項2】
前記ルイス塩基が、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−または1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5である請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項3】
(C)フィラーの含有量が、液状樹脂組成物全体に対して、70重量%以上80重量%以下である請求項1または2に記載の液状樹脂組成物。
【請求項4】
前記液状樹脂組成物が、更に(F)コアシェルゴム粒子を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物
【請求項5】
前記液状樹脂組成物が、更に(G)反応性希釈剤を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物を用いて、半導体素子と基板を封止して作製されたことを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2012−12431(P2012−12431A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147653(P2010−147653)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】