液相成長装置
【課題】 冷却過程において原料溶液を撹拌する機構を備えることによって原料溶液の温度を均質化し、これにより、大面積の基板上でも、その上に成長されるエピタキシャル層の膜厚が周辺と中央とで差が生じないようにした液相成長装置を提供することにある。
【解決手段】 基板ホルダ1を有するスライダー2と、原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダ3を有する原料溶液ホルダ保持体11とを、互いに対向させて相対的に摺動可能とし、所定の温度から冷却しながら原料溶液6又は7に基板5を接触させて、基板5上に半導体のエピタキシャル層を成長する液相成長装置において、上記原料溶液ホルダ3に、原料溶液を基板5に接触させた後の冷却過程において原料溶液6、7を撹拌する羽根9を原料溶液溜中に有する撹拌機構10を設ける。
【解決手段】 基板ホルダ1を有するスライダー2と、原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダ3を有する原料溶液ホルダ保持体11とを、互いに対向させて相対的に摺動可能とし、所定の温度から冷却しながら原料溶液6又は7に基板5を接触させて、基板5上に半導体のエピタキシャル層を成長する液相成長装置において、上記原料溶液ホルダ3に、原料溶液を基板5に接触させた後の冷却過程において原料溶液6、7を撹拌する羽根9を原料溶液溜中に有する撹拌機構10を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル層の膜厚の面内均一性に優れたスライドボート法による液相成長装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、AlGaAsを用いた赤色発光ダイオードの輝度が向上し、ディスプレイパネルや自動車用ハイマウントストップランプとして用いられるようになってきた。
【0003】
これらの用途に用いるためには白昼でも認識できる程度に輝度が高いことが要求される。この要求に応えるために、構造面では、シングルヘテロ構造(SH構造)、ダブルヘテロ構造(DH構造)、裏面反射型DH構造などの発光ダイオード(LED)が開発されてきた。
【0004】
LEDは、pn界面近傍で発光し、上述したように高出力LEDのpn界面はヘテロ接合で構成されている。しかし、SH構造やDH構造ではGaAs基板側に発光した光の大部分はGaAs基板に吸収されてしまう。一方、裏面反射型DH構造では、発光した光を透過するように発光波長を十分透過、反射するようにして高出力化を実現している。これらのLED用エピタキシャルウェハは、(1)結晶性の優れたエピタキシャル層が得られる、(2)数十μmの厚いエピタキシャル層を容易に得ることができることから、液相エピタキシャル法で製造されることが多い。
【0005】
また、成長条件の面からは成長温度や成長速度などについて高出力化の検討が行われている。
【0006】
さらに、高出力化と共に重要な特性は、各エピタキシャル層の膜厚の面内均一性である。各エピタキシャル層の膜厚にばらつきがあると、面内の結晶性・電気特性等にばらつきができて、特性の面内不均一を引き起こし、デバイス製造工程での素子の歩留が低下するからである。
【0007】
図2にGaAs薄膜を液相エピタキシャル成長させる従来のスライドボートから成る液相成長装置の概略図を示す。グラファイトで作られたスライドボートは、原料溶液6を入れる原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダ3を摺動方向に2以上(図2では代表的に1個のみ示す)有する原料溶液ホルダ保持体11と、表面の一部を掘り込んでGaAs基板5を載置する基板ホルダ1を形成したスライダー2とから構成される。
【0008】
これら原料溶液ホルダ3と基板ホルダ1とは、相互に水平方向に移動させることができるようになっている。このスライドボートを炉に入れて昇温し、原料溶液ホルダ3に入ったGa融液をGaAsで飽和させて原料溶液を作成した後、冷却して原料溶液を過冷却状態にする。その後、徐冷しながらGaAs基板5上に原料溶液6の入った原料溶液ホルダ3が来るようにスライダー2を移動させ、原料溶液をGaAs基板5と接触させる。これによりGaAs基板5上にGaAsエピタキシャル層が成長する。所定の厚さの薄膜が成長した後、スライダー2を移動させることにより原料溶液6の入った原料溶液ホルダ3をGaAs基板5の上から移動させ、成長を停止させる。
【0009】
従来法で成長したエピタキシャルウェハのエピタキシャル層の膜厚は、炉およびスライドボートの構造にもよるが、一般的に、周辺が厚く、中央が薄くなりやすい。これは冷却そのものが、スライドボートの外側から輻射と伝熱により行われるためであり、冷却過程でGaAs基板5上の外周部と中心部で温度差が生じるためである。
【0010】
そこで、スライダー2の材質の熱伝導度よりも基板ホルダ1の材質の熱伝導度を高くすることで、GaAs基板5上の面内の温度の不均一を改善することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
なお、スライド方向が水平面内において直線方向ではなく回転方向である点で上記したスライドボートとは構造が異なるが、原料溶液を強制的に撹拌することによって原料溶液の濃度を迅速に均質化する機構を備えたものとして、エピタキシャル成長を行う直前まで原料溶液を撹拌しておく縦型ディップ法の液相成長装置が知られている(特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開平9−221388号公報
【特許文献2】特開平3−2585894号公報
【特許文献3】特開平7−69784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、近年、発光素子を製造するコストの低減のために基板の大面積化が進んでいる。そのため、基板が大面積化することで、冷却過程で基板上の外周部と中心部の温度差がより大きくなる。特許文献1の如く、スライダー2の材質の熱伝導度よりも基板ホルダ1の材質の熱伝導度を高くするだけでは、使用できる材質の熱伝導度にも限界があり、エピタキシャル層の膜厚を均一にすることが困難である。
【0013】
また特許文献2、3は、縦型ディップ法の液相成長装置においてエピタキシャル成長を行う直前まで原料溶液を撹拌しておく技術を開示したものであり、上記の冷却過程で基板上の外周部と中心部の温度差がより大きくなる問題については触れるところがない。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、冷却過程において原料溶液を撹拌する機構を備えることによって原料溶液の温度を均質化し、これにより、大面積の基板上でも、その上に成長されるエピタキシャル層の膜厚が周辺と中央とで差が生じないようにした液相成長装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0016】
請求項1の発明に係る液相成長装置は、基板ホルダを有するスライダーと、原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダを有する原料溶液ホルダ保持体とを、互いに対向させて相対的に摺動可能とし、所定の温度から冷却しながら原料溶液に基板を接触させて基板上に半導体のエピタキシャル層を成長する液相成長装置において、上記原料溶液ホルダに、原料溶液を基板に接触させた後の冷却過程において原料溶液を撹拌する羽根を原料溶液溜中に有する撹拌機構を設けたことを特徴とする。
【0017】
ここで上記基板ホルダを有するスライダーと、原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダとの相対的な摺動は、その摺動方向が、直線的である場合の他、共通中心軸線の周りに回転する回転方向である場合も含まれる。また原料溶液ホルダ保持体に形成される原料溶液ホルダは、多くの場合は摺動方向に2以上であるが、1個の原料溶液ホルダを有する形態も本発明に含まれる。
【0018】
この液相成長装置の代表的な形態は、上記スライダーと上記原料溶液ホルダ保持体とを互いに直線的に摺動可能とし、上記原料溶液ホルダ保持体に、原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダを摺動方向に2以上設けたスライドボート法による液相成長装置の形態である。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1記載の液相成長装置において、上記基板が最大外径50mm〜150mmの大面積の化合物半導体基板であることを特徴とする。このような大面積の化合物半導体基板においても、上でも形成されるエピタキシャル層の膜厚が周辺と中央とで差が生じなくなる、という点に特色がある。この場合、最大外径とは、基板が矩形の場合はその一辺の大きさを、基板が円形の場合にはその直径の大きさを指すものとする。
【0020】
<発明の要点>
本発明の代表的形態は、成長用基板を収容する基板ホルダを有するスライダーと、原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダを摺動方向に2以上有する原料溶液ホルダ保持体とを、互いに対向させて相対的に直線的に摺動可能とし、所定の温度から冷却しながら原料溶液に基板を接触させて基板上に化合物半導体のエピタキシャル層を成長するスライドボート法による液相成長装置において、上記原料溶液ホルダに、原料溶液を基板に接触させた後の冷却過程において原料溶液を撹拌する羽根を原料溶液溜中に有する撹拌機構を設けた形態である。
【0021】
このような形態の液相成長装置において、基板ホルダと原料溶液ホルダとを冷却して、原料溶液を基板と接触させることにより基板上にエピタキシャル層を成長させるに際し、冷却過程において上記羽根を回転させることにより、原料溶液内の中心部と外周部の温度を均一にすることができ、大面積の基板上でも形成されるエピタキシャル層の膜厚が周辺と中央とで差が生じないようにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板ホルダを有するスライダーと互いに対向させて相対的に摺動可能される原料溶液ホルダ保持体の原料溶液ホルダに撹拌機構を設け、その原料溶液溜中に位置する羽根が、原料溶液を基板に接触させた後の冷却過程において、原料溶液を撹拌するように構成したので、最大外径50〜150mmの大面積の基板上であっても、その上に成長されるエピタキシャル半導体層について、基板の周辺の膜厚と中央の膜厚との差を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0024】
図1は本実施形態に係る液相成長装置を示したもので、従来のものと基本的に同じ構成のグラファイトで作られたスライドボートから成る。すなわち、このスライドボートは、原料溶液6又は7を入れる原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダ3を摺動方向に2以上(図1では3A、3Bの2個)有する原料溶液ホルダ保持体11と、表面の一部を掘り込んで成長用基板たるGaAs基板5を載置する基板ホルダ1を形成したスライダー2とから構成される。
【0025】
これら原料溶液ホルダ3A、3Bの原料溶液ホルダ保持体11と基板ホルダ1のスライダー2とは、相互に水平方向に移動させることができるようになっている。
【0026】
各原料溶液ホルダ3A、3Bには、原料溶液を強制的に撹拌して原料溶液の温度を均質化する撹拌機構10が設けられている。この撹拌機構10は、具体的には、各原料溶液ホルダ3A、3B内に配置された原料溶液を撹拌する羽根9と、この羽根9の中心に一端が固定され他端が原料溶液ホルダ保持体11の外部に導出された駆動棒8と、該駆動棒8を回転させるモータ(図示せず)とにより構成されている。
【0027】
このスライドボートを炉に入れて昇温し、例えば原料溶液ホルダ3Aに入ったGa融液をGaAsで飽和させて原料溶液を作成した後、冷却して原料溶液を過冷却状態にする。その後、徐冷しながらGaAs基板5上に原料溶液6の入った原料溶液ホルダ3Aが来るようにスライダー2を移動させ、原料溶液をGaAs基板5と接触させる。これによりGaAs基板5上にGaAsエピタキシャル層が成長する。原料溶液ホルダ3Bについても同様に操作される。それぞれにつき所定の厚さの薄膜が成長した後、スライダー2を移動させることにより原料溶液6又は7の入った原料溶液ホルダ3A又は3BをGaAs基板の5上から移動させ、成長を停止させる。
【0028】
ただし、本実施形態の場合、原料溶液を基板と接触させることにより基板上にエピタキシャル層を成長させるに際し、すなわち上記の冷却過程において、モータにより駆動棒8を介して撹拌機構10の羽根9を回転させる。これにより原料溶液の温度の均質化が図られて、原料溶液溜の直下のGaAs基板5上に成長されるエピタキシャル層の膜厚が、GaAs基板5の周辺と中央とで差が生じないようになっている。
【0029】
本発明の液相成長装置の効果を確認するため、次の実施例1、2及び比較例1、2のような成長装置による試作を行った。
【0030】
<実施例1>
実施例1として、図4に示すようなグラファイト製のスライドボートを作製し、これを用いてシングルヘテロ構造のAlGaAsのエピタキシャル成長を行った。ここで基板ホルダ1の凹部は一辺が50mmの正方形とした。また原料溶液ホルダ3A、3Bは、それぞれ底面が50mm正方の角柱状とした。そして、撹拌機構10には、羽根9に、グラファイト製で、直径が40mmで厚さが20mmの円板状のものを用い、その中心にグラファイト製の駆動棒8の先端を固定し、この駆動棒8を上方に延在させて原料溶液ホルダ保持体11の蓋体(図示せず)を貫通させ、外部に導出した。
【0031】
また比較例1として、図3に示すような一辺が50mmの正方形の凹部を備えた基板ホルダ1、及び底面が50mm正方である角柱状の原料溶液ホルダ3A、3Bを有するグラファイト製のスライドボートを作製し、これを用いてシングルヘテロ構造のAlGaAsのエピタキシャル成長を行った。
【0032】
上記実施例1により試作した成長条件は次の通りである。基板ホルダ1に50mm×50mmのGaAs基板5をセットする。原料溶液ホルダ3AにGa、GaAs、Al、Teをチャージし、また原料溶液ホルダ3BにGa、GaAs、Al、Znをチャージした。このスライドボート(図4)を炉内に入れ、水素ガス雰囲気中で、原料溶液ホルダ3内の羽根9を5rpmで回転させ、原料溶液を撹拌しながら、900℃から650℃まで徐冷することにより、エピタキシャル成長させ、その後急冷し、炉から取り出した。
【0033】
一方、上記比較例1により試作した成長条件は次の通りである。基板ホルダ1に50mm×50mmのGaAs基板5をセットする。原料溶液ホルダ3AにGa、GaAs、Al、Teをチャージし、また原料溶液ホルダ3BにGa、GaAs、Al、Znをチャージした。このスライドボート(図3)を炉内に入れ、水素ガス雰囲気中で、900℃から650℃まで徐冷することにより、エピタキシャル成長させ、その後急冷し、炉から取り出した。
【0034】
得られたエピタキシャルウェハをスクライブし、図5に示すように、10mm間隔で16点エピタキシャル層の膜厚を測定した。エピタキシャル層の膜厚測定結果を図6、図7に示す。
【0035】
図6に示すように、図3のスライドボート(従来例1の液相成長装置)を用いたときの測定結果は、原料溶液ホルダ3Aにより成長したエピタキシャルの膜厚のばらつきが11%、原料溶液ホルダ3Bにより成長したエピタキシャルの膜厚のばらつきが12%であった。これに対し、図7に示すように、図4のスライドボート(実施例1の液相成長装置)を用いたときの測定結果は、原料溶液ホルダ3Aにより成長したエピタキシャルの膜厚のばらつきが4.2%、原料溶液ホルダ3Bにより成長したエピタキシャルの膜厚のばらつきが4.5%であった。
【0036】
よって、図4(実施例1の液相成長装置)に示すような、グラファイト製の羽根9を回転させて、原料溶液を撹拌させることで、基板の膜厚のばらつきが少なくなった。
【0037】
<実施例2>
実施例2として、図9に示すようなグラファイト製のスライドボート(実施例2の液相成長装置)を用いて、シングルヘテロ構造のAlGaAsのエピタキシャル成長を行った。ここで基板ホルダ1の凹部は一辺が150mmの正方形とした。また原料溶液ホルダ3A、3Bは、それぞれ底面が150mm正方の角柱状とした。そして、撹拌機構10には、羽根9に、グラファイト製で、直径が120mmで厚さが20mmの円板状のものを用い、その中心にグラファイト製の駆動棒8の先端を固定し、この駆動棒8を上方に延在させて原料溶液ホルダ保持体11の蓋体(図示せず)を貫通させ、外部に導出した。
【0038】
また比較例2として、図8に示すような一辺が150mmの正方形の凹部を有する基板ホルダ1、及び底面が150mm正方である角柱状の原料溶液ホルダ3A、3Bを有するグラファイト製のスライドボートを作製し、これを用いてシングルヘテロ構造のAlGaAsのエピタキシャル成長を行った。
【0039】
上記実施例2により試作した成長条件は次の通りである。基板ホルダ1に150mm×150mmのGaAs基板5をセットする。原料溶液ホルダ3AにGa、GaAs、Al、Teをチャージし、また原料溶液ホルダ3BにGa、GaAs、Al、Znをチャージした。このスライドボート(図9)を炉内に入れ、水素ガス雰囲気中で、原料溶液ホルダ3内の羽根9を5rpmで回転させ、原料溶液を撹拌しながら、900℃から650℃まで徐冷することにより、エピタキシャル成長させ、その後急冷し、炉から取り出した。
【0040】
一方、上記比較例2により試作した成長条件は次の通りである。基板ホルダ1に150mm×150mmのGaAs基板5をセットする。原料溶液ホルダ3AにGa、GaAs、Al、Teをチャージし、また原料溶液ホルダ3BにGa、GaAs、Al、Znをチャージした。このスライドボート(図8)を炉内に入れ、水素ガス雰囲気中で、900℃から650℃まで徐冷することにより、エピタキシャル成長させ、その後急冷し、炉から取り出した。
【0041】
得られたエピタキシャルウェハをスクライブし、図10の如く30mm間隔で16点エピタキシャル層の膜厚を測定した。エピタキシャル層の膜厚測定結果を図11、図12に示す。
【0042】
図8に示すスライドボート(従来例2の液相成長装置)を用いたときの測定結果は、図11(a)(b)に示すように、原料溶液ホルダ3Aにより成長したエピタキシャル層の膜厚のばらつきが18%、原料溶液ホルダ3Bにより成長したエピタキシャル層の膜厚のばらつきが17%であった。これに対し図9に示すスライドボート(実施例2の液相成長装置)を用いたときの測定結果は、図12(a)(b)に示すように、原料溶液ホルダ3Aにより成長したエピタキシャルの膜厚のばらつきが5.3%、原料溶液ホルダ3Bにより成長したエピタキシャルの膜厚のばらつきが6.4%であった。
【0043】
よって図9(実施例2の液相成長装置)に示すような、グラファイト製の羽根9を回転させて、原料溶液を撹拌させることで膜厚のばらつきが少なくなった。
【0044】
上述した実施形態では、回転の方法や条件、つまり羽根の構造や羽根の駆動方式や速度、回転数、方向などの条件については述べないが、これは個々の液相エピタキシャル成長方法の条件により最適条件が変わるためであり、それらの最適条件は本発明の目的を満足するように最適化すれば良い。つまり、本発明は、原料溶液を基板に接触させた後、温度を下げて成長させる時に、基板面内で均一に温度が下がるように、エピタキシャル成長中に羽根を回転させて原料溶液を撹拌させること自体に意味があり、羽根の構造や回転させる駆動方法などは任意である。
【0045】
また上述の実施形態では、GaAs基板上にGa1-xAlxAsエピタキシャル層を二層成長させるシングルヘテロ構造の成長例について述べたが、本発明はこれに限らず、ダブルヘテロ構造や裏面反射型ダブルヘテロ構造を成長する場合にも用いることができ、素材の種類、組成はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の液相成長装置(スライドボート)を説明するための概略図である。
【図2】従来技術の液相成長装置(スライドボート)を説明するための概略図である。
【図3】比較例1に係る従来の液相成長装置(スライドボート)の概略図である。
【図4】本発明の実施例1に係る液相成長装置(スライドボート)の概略図である。
【図5】実施例1及び比較例1においてエピタキシャル層の膜厚を測定した位置(10mm間隔で16点)を示した図である。
【図6】比較例1の液相成長装置(スライドボート)で成長したエピタキシャル層の膜厚の測定結果を示す図である。
【図7】実施例1の液相成長装置(スライドボート)で成長したエピタキシャル層の膜厚の測定結果を示す図である。
【図8】比較例2に係る従来の液相成長装置(スライドボート)の概略図である。
【図9】本発明の実施例2に係る液相成長装置(スライドボート)の概略図である。
【図10】実施例2及び比較例2においてエピタキシャル層の膜厚を測定した位置(30mm間隔で16点)を示した図である。
【図11】比較例2の液相成長装置(スライドボート)で成長したエピタキシャル層の膜厚の測定結果を示す図である。
【図12】本発明の実施例2に係る液相成長装置(スライドボート)で成長したエピタキシャル層の膜厚の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 基板ホルダ
2 スライダー
3 原料溶液ホルダ
3A 原料溶液ホルダ
3B 原料溶液ホルダ
4 操作棒
5 GaAs基板
6、7 原料溶液
8 駆動棒
9 羽根
10 撹拌機構
11 原料溶液ホルダ保持体
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル層の膜厚の面内均一性に優れたスライドボート法による液相成長装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、AlGaAsを用いた赤色発光ダイオードの輝度が向上し、ディスプレイパネルや自動車用ハイマウントストップランプとして用いられるようになってきた。
【0003】
これらの用途に用いるためには白昼でも認識できる程度に輝度が高いことが要求される。この要求に応えるために、構造面では、シングルヘテロ構造(SH構造)、ダブルヘテロ構造(DH構造)、裏面反射型DH構造などの発光ダイオード(LED)が開発されてきた。
【0004】
LEDは、pn界面近傍で発光し、上述したように高出力LEDのpn界面はヘテロ接合で構成されている。しかし、SH構造やDH構造ではGaAs基板側に発光した光の大部分はGaAs基板に吸収されてしまう。一方、裏面反射型DH構造では、発光した光を透過するように発光波長を十分透過、反射するようにして高出力化を実現している。これらのLED用エピタキシャルウェハは、(1)結晶性の優れたエピタキシャル層が得られる、(2)数十μmの厚いエピタキシャル層を容易に得ることができることから、液相エピタキシャル法で製造されることが多い。
【0005】
また、成長条件の面からは成長温度や成長速度などについて高出力化の検討が行われている。
【0006】
さらに、高出力化と共に重要な特性は、各エピタキシャル層の膜厚の面内均一性である。各エピタキシャル層の膜厚にばらつきがあると、面内の結晶性・電気特性等にばらつきができて、特性の面内不均一を引き起こし、デバイス製造工程での素子の歩留が低下するからである。
【0007】
図2にGaAs薄膜を液相エピタキシャル成長させる従来のスライドボートから成る液相成長装置の概略図を示す。グラファイトで作られたスライドボートは、原料溶液6を入れる原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダ3を摺動方向に2以上(図2では代表的に1個のみ示す)有する原料溶液ホルダ保持体11と、表面の一部を掘り込んでGaAs基板5を載置する基板ホルダ1を形成したスライダー2とから構成される。
【0008】
これら原料溶液ホルダ3と基板ホルダ1とは、相互に水平方向に移動させることができるようになっている。このスライドボートを炉に入れて昇温し、原料溶液ホルダ3に入ったGa融液をGaAsで飽和させて原料溶液を作成した後、冷却して原料溶液を過冷却状態にする。その後、徐冷しながらGaAs基板5上に原料溶液6の入った原料溶液ホルダ3が来るようにスライダー2を移動させ、原料溶液をGaAs基板5と接触させる。これによりGaAs基板5上にGaAsエピタキシャル層が成長する。所定の厚さの薄膜が成長した後、スライダー2を移動させることにより原料溶液6の入った原料溶液ホルダ3をGaAs基板5の上から移動させ、成長を停止させる。
【0009】
従来法で成長したエピタキシャルウェハのエピタキシャル層の膜厚は、炉およびスライドボートの構造にもよるが、一般的に、周辺が厚く、中央が薄くなりやすい。これは冷却そのものが、スライドボートの外側から輻射と伝熱により行われるためであり、冷却過程でGaAs基板5上の外周部と中心部で温度差が生じるためである。
【0010】
そこで、スライダー2の材質の熱伝導度よりも基板ホルダ1の材質の熱伝導度を高くすることで、GaAs基板5上の面内の温度の不均一を改善することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
なお、スライド方向が水平面内において直線方向ではなく回転方向である点で上記したスライドボートとは構造が異なるが、原料溶液を強制的に撹拌することによって原料溶液の濃度を迅速に均質化する機構を備えたものとして、エピタキシャル成長を行う直前まで原料溶液を撹拌しておく縦型ディップ法の液相成長装置が知られている(特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開平9−221388号公報
【特許文献2】特開平3−2585894号公報
【特許文献3】特開平7−69784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、近年、発光素子を製造するコストの低減のために基板の大面積化が進んでいる。そのため、基板が大面積化することで、冷却過程で基板上の外周部と中心部の温度差がより大きくなる。特許文献1の如く、スライダー2の材質の熱伝導度よりも基板ホルダ1の材質の熱伝導度を高くするだけでは、使用できる材質の熱伝導度にも限界があり、エピタキシャル層の膜厚を均一にすることが困難である。
【0013】
また特許文献2、3は、縦型ディップ法の液相成長装置においてエピタキシャル成長を行う直前まで原料溶液を撹拌しておく技術を開示したものであり、上記の冷却過程で基板上の外周部と中心部の温度差がより大きくなる問題については触れるところがない。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、冷却過程において原料溶液を撹拌する機構を備えることによって原料溶液の温度を均質化し、これにより、大面積の基板上でも、その上に成長されるエピタキシャル層の膜厚が周辺と中央とで差が生じないようにした液相成長装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0016】
請求項1の発明に係る液相成長装置は、基板ホルダを有するスライダーと、原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダを有する原料溶液ホルダ保持体とを、互いに対向させて相対的に摺動可能とし、所定の温度から冷却しながら原料溶液に基板を接触させて基板上に半導体のエピタキシャル層を成長する液相成長装置において、上記原料溶液ホルダに、原料溶液を基板に接触させた後の冷却過程において原料溶液を撹拌する羽根を原料溶液溜中に有する撹拌機構を設けたことを特徴とする。
【0017】
ここで上記基板ホルダを有するスライダーと、原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダとの相対的な摺動は、その摺動方向が、直線的である場合の他、共通中心軸線の周りに回転する回転方向である場合も含まれる。また原料溶液ホルダ保持体に形成される原料溶液ホルダは、多くの場合は摺動方向に2以上であるが、1個の原料溶液ホルダを有する形態も本発明に含まれる。
【0018】
この液相成長装置の代表的な形態は、上記スライダーと上記原料溶液ホルダ保持体とを互いに直線的に摺動可能とし、上記原料溶液ホルダ保持体に、原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダを摺動方向に2以上設けたスライドボート法による液相成長装置の形態である。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1記載の液相成長装置において、上記基板が最大外径50mm〜150mmの大面積の化合物半導体基板であることを特徴とする。このような大面積の化合物半導体基板においても、上でも形成されるエピタキシャル層の膜厚が周辺と中央とで差が生じなくなる、という点に特色がある。この場合、最大外径とは、基板が矩形の場合はその一辺の大きさを、基板が円形の場合にはその直径の大きさを指すものとする。
【0020】
<発明の要点>
本発明の代表的形態は、成長用基板を収容する基板ホルダを有するスライダーと、原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダを摺動方向に2以上有する原料溶液ホルダ保持体とを、互いに対向させて相対的に直線的に摺動可能とし、所定の温度から冷却しながら原料溶液に基板を接触させて基板上に化合物半導体のエピタキシャル層を成長するスライドボート法による液相成長装置において、上記原料溶液ホルダに、原料溶液を基板に接触させた後の冷却過程において原料溶液を撹拌する羽根を原料溶液溜中に有する撹拌機構を設けた形態である。
【0021】
このような形態の液相成長装置において、基板ホルダと原料溶液ホルダとを冷却して、原料溶液を基板と接触させることにより基板上にエピタキシャル層を成長させるに際し、冷却過程において上記羽根を回転させることにより、原料溶液内の中心部と外周部の温度を均一にすることができ、大面積の基板上でも形成されるエピタキシャル層の膜厚が周辺と中央とで差が生じないようにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板ホルダを有するスライダーと互いに対向させて相対的に摺動可能される原料溶液ホルダ保持体の原料溶液ホルダに撹拌機構を設け、その原料溶液溜中に位置する羽根が、原料溶液を基板に接触させた後の冷却過程において、原料溶液を撹拌するように構成したので、最大外径50〜150mmの大面積の基板上であっても、その上に成長されるエピタキシャル半導体層について、基板の周辺の膜厚と中央の膜厚との差を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0024】
図1は本実施形態に係る液相成長装置を示したもので、従来のものと基本的に同じ構成のグラファイトで作られたスライドボートから成る。すなわち、このスライドボートは、原料溶液6又は7を入れる原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダ3を摺動方向に2以上(図1では3A、3Bの2個)有する原料溶液ホルダ保持体11と、表面の一部を掘り込んで成長用基板たるGaAs基板5を載置する基板ホルダ1を形成したスライダー2とから構成される。
【0025】
これら原料溶液ホルダ3A、3Bの原料溶液ホルダ保持体11と基板ホルダ1のスライダー2とは、相互に水平方向に移動させることができるようになっている。
【0026】
各原料溶液ホルダ3A、3Bには、原料溶液を強制的に撹拌して原料溶液の温度を均質化する撹拌機構10が設けられている。この撹拌機構10は、具体的には、各原料溶液ホルダ3A、3B内に配置された原料溶液を撹拌する羽根9と、この羽根9の中心に一端が固定され他端が原料溶液ホルダ保持体11の外部に導出された駆動棒8と、該駆動棒8を回転させるモータ(図示せず)とにより構成されている。
【0027】
このスライドボートを炉に入れて昇温し、例えば原料溶液ホルダ3Aに入ったGa融液をGaAsで飽和させて原料溶液を作成した後、冷却して原料溶液を過冷却状態にする。その後、徐冷しながらGaAs基板5上に原料溶液6の入った原料溶液ホルダ3Aが来るようにスライダー2を移動させ、原料溶液をGaAs基板5と接触させる。これによりGaAs基板5上にGaAsエピタキシャル層が成長する。原料溶液ホルダ3Bについても同様に操作される。それぞれにつき所定の厚さの薄膜が成長した後、スライダー2を移動させることにより原料溶液6又は7の入った原料溶液ホルダ3A又は3BをGaAs基板の5上から移動させ、成長を停止させる。
【0028】
ただし、本実施形態の場合、原料溶液を基板と接触させることにより基板上にエピタキシャル層を成長させるに際し、すなわち上記の冷却過程において、モータにより駆動棒8を介して撹拌機構10の羽根9を回転させる。これにより原料溶液の温度の均質化が図られて、原料溶液溜の直下のGaAs基板5上に成長されるエピタキシャル層の膜厚が、GaAs基板5の周辺と中央とで差が生じないようになっている。
【0029】
本発明の液相成長装置の効果を確認するため、次の実施例1、2及び比較例1、2のような成長装置による試作を行った。
【0030】
<実施例1>
実施例1として、図4に示すようなグラファイト製のスライドボートを作製し、これを用いてシングルヘテロ構造のAlGaAsのエピタキシャル成長を行った。ここで基板ホルダ1の凹部は一辺が50mmの正方形とした。また原料溶液ホルダ3A、3Bは、それぞれ底面が50mm正方の角柱状とした。そして、撹拌機構10には、羽根9に、グラファイト製で、直径が40mmで厚さが20mmの円板状のものを用い、その中心にグラファイト製の駆動棒8の先端を固定し、この駆動棒8を上方に延在させて原料溶液ホルダ保持体11の蓋体(図示せず)を貫通させ、外部に導出した。
【0031】
また比較例1として、図3に示すような一辺が50mmの正方形の凹部を備えた基板ホルダ1、及び底面が50mm正方である角柱状の原料溶液ホルダ3A、3Bを有するグラファイト製のスライドボートを作製し、これを用いてシングルヘテロ構造のAlGaAsのエピタキシャル成長を行った。
【0032】
上記実施例1により試作した成長条件は次の通りである。基板ホルダ1に50mm×50mmのGaAs基板5をセットする。原料溶液ホルダ3AにGa、GaAs、Al、Teをチャージし、また原料溶液ホルダ3BにGa、GaAs、Al、Znをチャージした。このスライドボート(図4)を炉内に入れ、水素ガス雰囲気中で、原料溶液ホルダ3内の羽根9を5rpmで回転させ、原料溶液を撹拌しながら、900℃から650℃まで徐冷することにより、エピタキシャル成長させ、その後急冷し、炉から取り出した。
【0033】
一方、上記比較例1により試作した成長条件は次の通りである。基板ホルダ1に50mm×50mmのGaAs基板5をセットする。原料溶液ホルダ3AにGa、GaAs、Al、Teをチャージし、また原料溶液ホルダ3BにGa、GaAs、Al、Znをチャージした。このスライドボート(図3)を炉内に入れ、水素ガス雰囲気中で、900℃から650℃まで徐冷することにより、エピタキシャル成長させ、その後急冷し、炉から取り出した。
【0034】
得られたエピタキシャルウェハをスクライブし、図5に示すように、10mm間隔で16点エピタキシャル層の膜厚を測定した。エピタキシャル層の膜厚測定結果を図6、図7に示す。
【0035】
図6に示すように、図3のスライドボート(従来例1の液相成長装置)を用いたときの測定結果は、原料溶液ホルダ3Aにより成長したエピタキシャルの膜厚のばらつきが11%、原料溶液ホルダ3Bにより成長したエピタキシャルの膜厚のばらつきが12%であった。これに対し、図7に示すように、図4のスライドボート(実施例1の液相成長装置)を用いたときの測定結果は、原料溶液ホルダ3Aにより成長したエピタキシャルの膜厚のばらつきが4.2%、原料溶液ホルダ3Bにより成長したエピタキシャルの膜厚のばらつきが4.5%であった。
【0036】
よって、図4(実施例1の液相成長装置)に示すような、グラファイト製の羽根9を回転させて、原料溶液を撹拌させることで、基板の膜厚のばらつきが少なくなった。
【0037】
<実施例2>
実施例2として、図9に示すようなグラファイト製のスライドボート(実施例2の液相成長装置)を用いて、シングルヘテロ構造のAlGaAsのエピタキシャル成長を行った。ここで基板ホルダ1の凹部は一辺が150mmの正方形とした。また原料溶液ホルダ3A、3Bは、それぞれ底面が150mm正方の角柱状とした。そして、撹拌機構10には、羽根9に、グラファイト製で、直径が120mmで厚さが20mmの円板状のものを用い、その中心にグラファイト製の駆動棒8の先端を固定し、この駆動棒8を上方に延在させて原料溶液ホルダ保持体11の蓋体(図示せず)を貫通させ、外部に導出した。
【0038】
また比較例2として、図8に示すような一辺が150mmの正方形の凹部を有する基板ホルダ1、及び底面が150mm正方である角柱状の原料溶液ホルダ3A、3Bを有するグラファイト製のスライドボートを作製し、これを用いてシングルヘテロ構造のAlGaAsのエピタキシャル成長を行った。
【0039】
上記実施例2により試作した成長条件は次の通りである。基板ホルダ1に150mm×150mmのGaAs基板5をセットする。原料溶液ホルダ3AにGa、GaAs、Al、Teをチャージし、また原料溶液ホルダ3BにGa、GaAs、Al、Znをチャージした。このスライドボート(図9)を炉内に入れ、水素ガス雰囲気中で、原料溶液ホルダ3内の羽根9を5rpmで回転させ、原料溶液を撹拌しながら、900℃から650℃まで徐冷することにより、エピタキシャル成長させ、その後急冷し、炉から取り出した。
【0040】
一方、上記比較例2により試作した成長条件は次の通りである。基板ホルダ1に150mm×150mmのGaAs基板5をセットする。原料溶液ホルダ3AにGa、GaAs、Al、Teをチャージし、また原料溶液ホルダ3BにGa、GaAs、Al、Znをチャージした。このスライドボート(図8)を炉内に入れ、水素ガス雰囲気中で、900℃から650℃まで徐冷することにより、エピタキシャル成長させ、その後急冷し、炉から取り出した。
【0041】
得られたエピタキシャルウェハをスクライブし、図10の如く30mm間隔で16点エピタキシャル層の膜厚を測定した。エピタキシャル層の膜厚測定結果を図11、図12に示す。
【0042】
図8に示すスライドボート(従来例2の液相成長装置)を用いたときの測定結果は、図11(a)(b)に示すように、原料溶液ホルダ3Aにより成長したエピタキシャル層の膜厚のばらつきが18%、原料溶液ホルダ3Bにより成長したエピタキシャル層の膜厚のばらつきが17%であった。これに対し図9に示すスライドボート(実施例2の液相成長装置)を用いたときの測定結果は、図12(a)(b)に示すように、原料溶液ホルダ3Aにより成長したエピタキシャルの膜厚のばらつきが5.3%、原料溶液ホルダ3Bにより成長したエピタキシャルの膜厚のばらつきが6.4%であった。
【0043】
よって図9(実施例2の液相成長装置)に示すような、グラファイト製の羽根9を回転させて、原料溶液を撹拌させることで膜厚のばらつきが少なくなった。
【0044】
上述した実施形態では、回転の方法や条件、つまり羽根の構造や羽根の駆動方式や速度、回転数、方向などの条件については述べないが、これは個々の液相エピタキシャル成長方法の条件により最適条件が変わるためであり、それらの最適条件は本発明の目的を満足するように最適化すれば良い。つまり、本発明は、原料溶液を基板に接触させた後、温度を下げて成長させる時に、基板面内で均一に温度が下がるように、エピタキシャル成長中に羽根を回転させて原料溶液を撹拌させること自体に意味があり、羽根の構造や回転させる駆動方法などは任意である。
【0045】
また上述の実施形態では、GaAs基板上にGa1-xAlxAsエピタキシャル層を二層成長させるシングルヘテロ構造の成長例について述べたが、本発明はこれに限らず、ダブルヘテロ構造や裏面反射型ダブルヘテロ構造を成長する場合にも用いることができ、素材の種類、組成はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の液相成長装置(スライドボート)を説明するための概略図である。
【図2】従来技術の液相成長装置(スライドボート)を説明するための概略図である。
【図3】比較例1に係る従来の液相成長装置(スライドボート)の概略図である。
【図4】本発明の実施例1に係る液相成長装置(スライドボート)の概略図である。
【図5】実施例1及び比較例1においてエピタキシャル層の膜厚を測定した位置(10mm間隔で16点)を示した図である。
【図6】比較例1の液相成長装置(スライドボート)で成長したエピタキシャル層の膜厚の測定結果を示す図である。
【図7】実施例1の液相成長装置(スライドボート)で成長したエピタキシャル層の膜厚の測定結果を示す図である。
【図8】比較例2に係る従来の液相成長装置(スライドボート)の概略図である。
【図9】本発明の実施例2に係る液相成長装置(スライドボート)の概略図である。
【図10】実施例2及び比較例2においてエピタキシャル層の膜厚を測定した位置(30mm間隔で16点)を示した図である。
【図11】比較例2の液相成長装置(スライドボート)で成長したエピタキシャル層の膜厚の測定結果を示す図である。
【図12】本発明の実施例2に係る液相成長装置(スライドボート)で成長したエピタキシャル層の膜厚の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 基板ホルダ
2 スライダー
3 原料溶液ホルダ
3A 原料溶液ホルダ
3B 原料溶液ホルダ
4 操作棒
5 GaAs基板
6、7 原料溶液
8 駆動棒
9 羽根
10 撹拌機構
11 原料溶液ホルダ保持体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板ホルダを有するスライダーと、原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダを有する原料溶液ホルダ保持体とを、互いに対向させて相対的に摺動可能とし、所定の温度から冷却しながら原料溶液に基板を接触させて基板上に半導体のエピタキシャル層を成長する液相成長装置において、
上記原料溶液ホルダに、原料溶液を基板に接触させた後の冷却過程において原料溶液を撹拌する羽根を原料溶液溜中に有する撹拌機構を設けたことを特徴とする液相成長装置。
【請求項2】
請求項1記載の液相成長装置において、
上記基板が最大外径50mm〜150mmの大面積の化合物半導体基板であることを特徴とする液相成長装置。
【請求項1】
基板ホルダを有するスライダーと、原料溶液溜を形成する原料溶液ホルダを有する原料溶液ホルダ保持体とを、互いに対向させて相対的に摺動可能とし、所定の温度から冷却しながら原料溶液に基板を接触させて基板上に半導体のエピタキシャル層を成長する液相成長装置において、
上記原料溶液ホルダに、原料溶液を基板に接触させた後の冷却過程において原料溶液を撹拌する羽根を原料溶液溜中に有する撹拌機構を設けたことを特徴とする液相成長装置。
【請求項2】
請求項1記載の液相成長装置において、
上記基板が最大外径50mm〜150mmの大面積の化合物半導体基板であることを特徴とする液相成長装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−315908(P2006−315908A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140103(P2005−140103)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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