説明

深穴明機および深穴明ガイド装置

【課題】建築現場でのコンクリート製の床に対して、小径ドリルによる垂直穴および傾斜穴の穴明け作業を安定して確実に行うことのできる深穴明機を提供することにある。
【解決手段】深穴明機100は、床上面に配置された基台11と、支柱14と、固定機構40と、案内部材15と、回転工具17と、工具回転駆動部16と、昇降機構50と、ガイド基台60と、工具ガイド機構30とを備え、建築現場でのコンクリートに垂直穴および傾斜穴の穴明け作業を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の床面に深穴の垂直穴および傾斜穴を明けることができる深穴明機および深穴明ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリートの建物の耐震強度を向上させるためにフレーム枠をボルトで固定する工事が行われ、コンクリートにナットを埋め込む際や、あるいは、コンクリートの内部を診断するため、コンクリートの穴明作業が必要となる。
一般に、コンクリートの穴明作業には、ダイヤモンドコアビットが使用されている。
しかし、現状では、直径は45mm〜25mmの大径のコアビットが標準として使用されているが、コアビットの直径が45mm〜25mmと大きいものを使用すると、コンクリート内部の鉄筋が損傷してコンクリートの強度を逆に低下させる結果となることがあった。そのため、ドリルビットの直径を、例えば10mm以下の小径にし、深さを80mm以上として、穴数を多くしてもコンクリート躯体側として全体の強度が損なわれない状態を維持したいが、小径ドリルを使用した場合、シャフト強度が足りないために、深穴加工するのは困難であった。
【0003】
従来のコンクリートへの穴明け技術としては、例えば、コンクリート製の枕木の穴明専用機として提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この穴明専用機は、軌道走行台車の枠体に垂直昇降可能なモータドリルを搭載し、この単一のモータドリルの回転軸に穿孔用コアビットまたはアダプターを介して削孔用ドリルビットを装着可能としている。そして、この深穴専用機は、モータドリルの昇降を案内する支柱を立設したスライドテーブルを基台の枠体に回動可能に軸設し、このスライドテーブルの回動によって前記モータドリルの先端に装着する前記穿孔用コアビットまたは前記削孔用ドリルビットの位置を調節し、軌道レールの外側・内側への位置合わせを行うとともに該スライドテーブルが前後左右に移動可能に構成されている。
そして、モータドリルは、軌道走行台車の枠体に垂直昇降可能に搭載されている。この単一のモータドリルの回転軸に穿孔用コアビットまたはアダプターを介して削孔用ドリルビットを装着可能とした構成である。
【0004】
【特許文献1】特開2006−045832号公報(段落番号0018〜0031、 図1〜図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小径ドリルを使用してコンクリート製の床に垂直穴および傾斜穴の深穴を明けるに際し、長尺のシャフトになっても振れることなく、確実にガイドできる剛性の高い工具ガイド機構が望まれていた。しかし、従来の特許文献1に開示する埋込栓補修台車の技術では、垂直方向の穴加工専用機であり、傾斜穴の加工を行うことができず、また、台車による移動であるため、ビルの補修工事には不向きである。
本発明は、従来の技術的課題に鑑みて成されたもので、その課題とするところは、建築現場でのコンクリート製の床に対して、小径ドリルによる垂直穴および傾斜穴の穴明け作業を安定して確実に行うことのできる工具ガイド機構を備えた深穴明機および深穴明ガイド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る深穴明機は前記課題を解決するため以下のような構成とした。
すなわち、深穴明機は、コンクリート製の作業面に配置され、固定手段を介して前記作業面に着脱自在に固定される基台と、前記基台上面にピンを介して回動自在に支持部材に支持された支柱と、前記基台に設けられ前記支柱を任意の角度で固定する固定機構と、前記支柱に沿って案内される案内部材と、削穴工具を先端に着脱自在に締結した長尺のシャフト部からなる回転工具と、前記案内部材に着脱自在に固定され、前記回転工具を回転駆動する回転駆動機構と、前記案内部材を前記支柱に沿って移動させる昇降機構と、前記作業面に対して平行に前記基台に支持されたガイド基台と、前記ガイド基台に支持され、前記回転工具の傾斜角度に合わせて、前記回転工具のシャフト部をガイドする工具ガイド機構と、を備える構成とした。
【0007】
さらに、深穴明機は、コンクリート製の作業面に設置されて穿孔直径に対して10倍以上の深穴を形成する深穴明機であって、前記作業面に固定手段を介して着脱自在に固定される基台と、前記基台に設けた支持部材に支軸を介して傾斜自在に支持される支柱と、前記支柱の所定傾斜位置で固定する固定機構と、前記深穴を穿孔する削穴工具を、シャフト部を有する回転工具の先端に着脱自在に締結して、前記回転工具を支持して回転駆動する回転駆動機構と、前記回転駆動機構を前記支柱に沿って案内すると共に保持する案内部材と、前記案内部材を前記支柱に沿って移動させる昇降機構と、前記回転駆動機構が支持する前記シャフト部の延長線上に配置され、前記固定手段を介して前記作業面に着脱自在に固定されるガイド基台と、前記ガイド基台の水平なカイド面に沿って水平移動すると共に、前記回転工具の傾斜角度に合わせて、前記回転工具のシャフト部を穿孔方向にガイドする工具ガイド機構と、を備え構成とした。
【0008】
このように構成したことにより、深穴明機は、コンクリート製の作業面上に基台を配置して固定手段により固定する。そして、案内部材に固定される回転駆動機構に回転工具を設置し、支柱の傾斜角度を調整して、固定機構により調整した支柱の傾斜角度の位置で固定し、回転工具のシャフト部の傾斜角度を設定する。さらに、シャフト部の傾斜角度に対応させ、工具ガイド機構をガイド基台に沿って水平移動させ、シャフト部をガイドした状態とする。そして、回転駆動機構を駆動させることにより回転工具を回転させ、また、昇降機構により案内部材を支柱に沿って降下させることでコンクリート製の床面に穴明作業を行う。深穴明機は、穴明作業を行っているときには、シャフト部が穿孔方向において工具ガイド機構にガイドされた状態となる。なお、深穴明機においてガイド基台は、基台と独立して固定手段により作業面に固定させることにより、基台とガイド基台とがそれぞれ固定される場所の自由度を広げることができる。
【0009】
また、前記深穴明機において、前記支柱を回動自在に搭載した前記基台に支持され、前記工具ガイド機構を支持する前記ガイド基台の配置は、前記支柱の回動中心線と前記工具ガイド機構の傾斜中心線が異なる垂直平面上に平行に位置するように構成した。
このような構成により、前記支柱を回動自在に搭載した前記基台と、前記工具ガイド機構を案内する前記ガイド基台の配置は直列になり、垂直の深穴、傾斜角度のついた深穴を穴明けすることができる。
【0010】
また、前記深穴明機において、前記支柱を回動自在に搭載した前記基台に支持され、前記工具ガイド機構を支持する前記ガイド基台の配置は、前記支柱の回動中心線と前記工具ガイド機構の傾斜中心線が同一垂直平面上に位置するように構成した。
このような構成により、前記支柱を回動自在に搭載した前記基台と、前記工具ガイド機構を案内する前記ガイド基台の配置は並列となり、前記回転駆動機構に支持された前記回転工具と、前記ガイド基台に係合する前記工具ガイド機構の位置の接近性が図れるため、前記シャフト部の長さが短くできたので、前記シャフト部の剛性を高めることができ、切削送りを上げることができる。
【0011】
前記深穴明機において、工具ガイド機構は、前記シャフト部を回転自在に支持するガイドブッシュと、このガイドブッシュを着脱自在に固定すると共に前記支柱の傾斜方向に沿ってガイド基台に傾動自在に支持される工具ガイド基台と、この工具ガイド基台を所定傾斜位置で固定するガイド固定手段とを備える構成とした。
このように構成したことにより、深穴明機は、シャフト部を回転自在に支持するガイドブッシュをガイド基台に固定した状態でシャフト部と同じ角度に傾斜し、その傾斜した位置のガイド基台をガイド固定手段により固定し、シャフト部を作業面の近傍でガイドする。
【0012】
また、前記深穴明機において、前記工具ガイド機構は、前記ガイド基台のガイド面に沿って水平移動可能とし、中央部に貫通穴を形成した工具ガイド基台と、この工具ガイド基台の前記貫通穴に嵌合した球面ガイド部材と、この球面ガイド部材の球面部に回動自在に嵌挿され、中央に貫通穴を有する球面軸受と、この球面軸受の前記貫通穴に嵌合し、中心部にブッシュ穴を設けた工具ガイド部材と、この工具ガイド部材のブッシュ穴に着脱自在に取付けられ、前記回転工具のシャフト部をガイドするガイドブッシュと、このガイドブッシュを前記工具ガイド部材に固定する固定具を備える構成とした。
【0013】
このように構成したことにより、深穴明機は、回転工具のシャフト部にはじめにガイドブッシュを嵌合させた状態とし、球面ガイド部材および球面軸受により工具ガイド部材の傾斜角度を調整して固定ボルトにより固定する。そして、前記シャフト部に嵌合させたガイドブッシュを工具ガイド部材のブッシュ穴に嵌合させて固定具により固定する。なお、工具ガイド部材の傾斜角度を調整する場合に、シャフト部を嵌合したガイドブッシュを工具ガイド部材に嵌合して行っても構わない。
【0014】
さらに、前記深穴明機において、前記工具ガイド機構は、前記ガイド基台のガイド面に沿って水平移動可能とし、中央部に貫通穴を形成した工具ガイド基台と、この工具ガイド基台の前記貫通穴に一対のガイドピンで軸支され、中央にブッシュ穴を形成した工具ガイド部材と、この工具ガイド部材の所定角度の位置で固定する固定ボルトと、前記工具ガイド部材のブッシュ穴に着脱自在に取付けられ、前記回転工具のシャフト部をガイドするガイド穴を形成したガイドブッシュと、このガイドブッシュを前記工具ガイド部材に固定する固定具と、を備える構成とした。
【0015】
このように構成したことにより、深穴明機は、回転工具のシャフト部にはじめにガイドブッシュを嵌合させた状態とし、ガイドピンにより工具ガイド部材の傾斜角度を調整して固定ボルトにより固定する。そして、前記シャフト部に嵌合させたガイドブッシュを工具ガイド部材のブッシュ穴に嵌合させて固定具により固定する。なお、工具ガイド部材の傾斜角度を調整する場合に、シャフト部を嵌合したガイドブッシュを工具ガイド部材に嵌合して行っても構わない。
【0016】
また、前記深穴明機において、前記回転駆動機構の工具把持部に設けた前記回転工具を経由して前記回転工具先端に冷却水を供給し、かつ使用済みの冷却水を前記工具ガイド機構の工具ガイド基台から排出し、元に戻すように接続した給排水装置を備える構成とした。
【0017】
このように構成したことにより、深穴明機は、冷却水は給排水装置により、前記回転駆動部に設けられた給水室から回転工具を経由して前記回転工具先端に供給し、かつ使用済みの切り粉の混ざった冷却水を前記工具ガイド機構の工具ガイド基台から排出することができる。そのため、作業場所を汚すことがなく、一回充填した冷却水で作業を行うことができる。
【0018】
前記深穴明機において、前記案内部材は、前記回転工具の軸線方向に形成した貫通穴に連通して前記削穴工具に冷却水を供給する給水機構を支持する支持凹部を備え、前記回転駆動機構に前記回転工具を回転自在に把持する工具把持部の軸部が前記給水機構を貫通した位置に配置され、前記給水機構は、前記支持凹部に支持される筒体と、この筒体の内側に所定間隔で配置され前記冷却水の供給空間を形成すると共に、前記工具把持部の軸部が回転自在に設置される環状の第1オイルシールおよび第2オイルシールと、この第1オイルシールおよび第2オイルシールにより形成される前記供給空間に、前記筒体の側面から供給ホースを介して冷却水を供給するホース接続部と、を有し、前記工具把持部の軸部は、前記供給空間に対応する側面に前記貫通穴に連通する連通穴を形成した構成とした。
【0019】
このように構成したことにより、深穴明機は、供給ホースから冷却水が供給されると、第1オイルシールおよび第2オイルシールおよび筒体内壁で囲まれた供給空間に冷却水が送られる。そのため、深穴明機では、給水室の供給空間に供給された冷却水が、給水機構を貫通して配置される工具把持部の軸部に形成した連通穴から、回転工具の貫通孔を介して削穴工具に供給される。
【0020】
さらに、前記深穴明機において、前記工具把持部は、前記回転駆動機構の駆動シャフトに着脱自在に接続される第1接続部材と、この第1接続部材に一端側を着脱自在に支持されると共に、他端側に前記シャフト部を着脱自在に支持する第2接続部材と、を有し、前記第2接続部材の一端と前記第1接続部材の他端とを前記軸部としてその一方の側面に前記連通穴が形成され、前記第1接続部材が前記第1オイルシールと前記筒体の一端側の間に設置される第1軸受を介して回動自在に支持されると共に、前記第2接続部材が前記第2オイルシールと前記筒体の他端との間に設置される第2軸受を介して回転自在に支持される構成とした。
【0021】
このように構成したことにより、深穴明機は、工具把持部の第1接続部材を第1オイルシールおよび第1軸受を介して筒体の一端側から配置し、さらに、工具把持部の第2接続部材を第2オイルシールおよび第2軸受を介して筒体の他端側から配置し、第1接続部材の他端と第2接続部材の一端となる軸部を螺合することにより連結する。そのため、深穴明機は、給水機構に工具把持部の軸部を液密な状態で貫通させ、かつ、回動自在な状態とし、冷却水が供給される供給空間に位置する工具把持部の軸部となる第1接続部材または第2接続部材の側面に形成した連通穴に冷却水を供給することができる。
【0022】
また、前記深穴明機において、前記支柱は、基柱と、この基柱の上方に連結手段により連結して当該支柱の軸線周りに所定角度回転自在となる回転支柱とを有し、前記回転支柱の下端および前記基柱の上端には、前記支柱の軸線周りに前記回転自在に係合する係合機構を有する構成とした。
このように構成したことにより、深穴明機は、案内部材を昇降機構により回転支柱の位置に移動させ、案内部材が保持している回転駆動機構からシャフト部を外した状態で、回転支柱を所定角度回転させる。そして、深穴明機は、シャフト部の長い回転工具を、形成した深穴に差し込んだ状態とし、再び回転支柱を元の状態にして、回転工具を工具把持部に接続することでき、シャフト部の長い回転工具を深穴から上方にスムーズに抜き出すことができると共に、シャフト部の長い回転工具をスムーズに工具把持部に接続できる。
【0023】
また、深穴明ガイド装置は、コンクリート製の作業面に設置されて穿孔直径に対して10倍以上の深穴を形成する深穴明ガイド装置であって、前記作業面に固定手段を介して着脱自在に固定される基台と、前記基台に設けた支持部材に支軸を介して傾斜自在に支持される支柱と、前記支柱の所定傾斜位置で固定する固定機構と、前記深穴を穿孔する削穴工具を、シャフト部を有する回転工具の先端に着脱自在に締結して、前記回転工具を支持して回転駆動させる回転駆動機構を、前記支柱に沿って案内すると共に保持する案内部材と、前記案内部材を前記支柱に沿って移動させる昇降機構と、前記基台に支持され前記作業面に設置されるガイド基台と、前記ガイド基台の水平なカイド面に沿って水平移動すると共に、前記回転工具の傾斜角度に合わせて、前記回転工具のシャフト部を穿孔方向にガイドする工具ガイド機構と、を備えた構成とした。
【0024】
さらに、深穴明ガイド装置は、コンクリート製の作業面に設置されて穿孔直径に対して10倍以上の深穴を形成する深穴明ガイド装置であって、前記作業面に固定手段を介して着脱自在に固定される基台と、前記基台に設けた支持部材に支軸を介して傾斜自在に支持される支柱と、前記支柱の所定傾斜位置で固定する固定機構と、前記深穴を穿孔する削穴工具を、シャフト部を有する回転工具の先端に着脱自在に締結して、前記回転工具を支持して回転駆動する回転駆動機構を、前記支柱に沿って案内すると共に保持する案内部材と、前記案内部材を前記支柱に沿って移動させる昇降機構と、前記回転駆動機構が支持する前記シャフト部の延長線上に配置され、前記固定手段を介して前記作業面に着脱自在に固定されるガイド基台と、前記ガイド基台の水平なカイド面に沿って水平移動すると共に、前記回転工具の傾斜角度に合わせて、前記回転工具のシャフト部を穿孔方向にガイドする工具ガイド機構と、を備えた構成とした。
【0025】
このように構成したことで、深穴明ガイド装置は、案内部材に回転駆動機構を保持して、垂直な深穴および斜め方向の深穴を、作業面の近い位置で回転工具をガイドして作業することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る深穴明機および深穴明ガイド装置は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
深穴明機は、工具ガイド機構を用いて、回転工具の傾斜角度に合わせて、回転工具のシャフト部を工具ガイド機構にガイドすることで振れを生じることなく、コンクリートに深い垂直穴および傾斜穴の穴明け作業を安全、確実に行うことができる。
【0027】
深穴明機は、工具ガイド機構がシャフト部をガイドするガイドブッシュが工具ガイド部材から着脱自在となるため、工具ガイド部材の傾斜角度を支柱の傾斜角度に調整することが容易となる。また、工具ガイド部材をガイドピンにより傾斜自在にすることで、構造が球面ガイド部材および球面軸受により形成する場合に比較して簡易な構成となる。
【0028】
深穴明機は、給排水装置により作業部位に冷却水を供給してかつ回収するようにしているため、深穴明加工に際し、作業現場を汚すことがなく、水の供給場所から離れていても一回の冷却水の補充で作業を行うことができる。また、冷却水の供給により、工具の加熱による損傷が回避でき、工具の寿命を延ばすことができる。
【0029】
深穴明機は、支柱を回動自在に搭載した基台と、工具ガイド機構を支持するガイド基台との配置が、支柱の回動中心線と工具ガイド機構の傾斜中心線が同一垂直平面上に位置するように構成したことにより、回転工具とコンクリート床との接近性の向上が図れるため、工具長を短くでき、剛性が高く、切削能力の向上を図ることができる。
【0030】
深穴明機は、削穴工具の作業部位に冷却水を供給する給水機構が、工具把持部の軸部を回転自在に貫通して液密な状態で構成されるため、案内部材に設置することが容易となる。また、深穴明機は、工具把持部を第1接続部材および第2接続部材とすることで、回転駆動機構および回転工具との接続作業を容易とし、かつ、給水室および工具把持部のメンテナンスを容易とする。
【0031】
深穴明機は、回転支柱を設けることで、回転工具を順次長さの長いものに取り替えるときに、スムーズに作業を行うことができる。
【0032】
深穴明ガイド装置は、案内部材に固定駆動機構を設置して使用すると、シャフト部が作業面の近傍となる工具ガイド機構により穿孔方向にガイドされるため、作業面に垂直な深穴および作業面に対して傾斜した深穴を、安全かつ確実に形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明を実施するための最良の形態について、以下、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、深穴明機の全体構成を示し、垂直穴を明ける状態を表わす斜視図、図2は、深穴明機の全体構成を示し、傾斜穴の穴明け状態を表わす斜視図、図3は、深穴明機の全体構成を示し、垂直穴を明ける状態を表わす縦断面図、図4は、深穴明機の全体構成を示し、傾斜穴を明ける状態を表わす縦断面図である。
(実施形態1)
図1および図2に示すように、深穴明機100は、コンクリート床面(作業面)10上に配置された基台11と、支柱14と、固定機構40と、案内部材15と、回転工具17を取り付ける工具回転駆動部(回転駆動機構)16と、昇降機構50と、ガイド基台60と、工具ガイド機構30とを基本構成としている。なお、ここでは、工具回転駆動部16を案内部材15から取り外した構成を深穴明ガイド装置90とする。
【0034】
図1、図3に示すように、基台11は、その底面に凹状に形成された凹部11aと、この凹部11aの上部に取り付けられるフレーム11bと、凹部11aを囲むように設けた弾性変形自在なバキュームパット12とを備えている。そして、凹部11aは、基台11を貫通して穴明けされた導通孔12aに、フレキシブルホース12bを介して真空吸引装置13に接続されている。そのため、基台11は、コンクリートのように表面に凹凸のある加工対象物にも気密性を保持できる。また、凹部11aは、そのほぼ中央の上面に上方に立設した固定ボルト11dを有している。
【0035】
フレーム11bは、その上面に支柱14の下端部をピン14aで軸支し傾斜自在に支持する固定機構40を一体に備えている。このフレーム11bは、凹部11aに対して、移動可能に載置されている。すなわち、フレーム11bは、凹部11aに立設した固定ボルト11dに対応する位置に長穴11cを形成しており、長穴11cに固定ボルト11dが係合したときに、その長穴11cに沿って移動できるように構成されている。そして、凹部11aとフレーム11bは、ナット11eと固定ボルト11dが締結されることで固定されている。したがって、図示省略するが、コンクリート面にヒビ割れ等があり、真空吸引装置13を用いることができない場合、コンクリートに予めアンカーボルトを打ち込み、凹部11aを外した状態で、フレーム11bの長穴11cにアンカーボルトを差し込みナットすることで、フレーム11bを基台11として固定している。したがって、凹部11aを用いない場合は、フレーム11bおよび長穴11cがアンカーボルトに対する固定手段となる。
【0036】
固定機構40は、一対の扇形の角度割出板41,41と、この角度割出板41,41に形成した円弧状の円弧溝42に設けた固定ボルト43とを備えている。
そして、支柱14は、フレーム11b上に設けた角度割出板41,41の間に配置され、角度割出板41,41に貫通して軸支するピン(支軸)14aにより所定傾斜角度に自在に設定できるように支持されており、かつ、固定ボルト43により所定傾斜角度の位置で固定されるように構成されている。この支柱14は、金属製の中空な角中空体形状に形成され、柱面に昇降機構50の一部であるラック14cが設けられ、後記する工具回転駆動部16を搭載した案内部材15が移動自在に摺動(移動)するように構成されている。
【0037】
図3および図4に示すように、案内部材15の内側には、支柱14に設けたラック14cに噛合するピニオン51を昇降機構50の一部として設けている。なお、昇降機構50は、ここでは、支柱14に設けたラック14cと、このラック14cに噛合するピニオン51と、このピニオン51を操作するためのハンドル21とを備えている。
【0038】
案内部材15は、ピニオン51を収納する空間を有すると共に、ラック14cが形成されていない支柱14の他の柱面に当接してスライドするように形成された筐体部分と、この筐体部分に連続して工具回転駆動部16を着脱自在に設置する設置部分とを備えている。また、図1ないし図4に示すように、案内部材15で工具回転駆動部16を保持している所定位置には、後記する給排水装置20の給水室18が設置可能に設けられている。なお、案内部材15には図示省略した蝶ボルトを螺合し、支柱14に対して押圧し、案内部材15の移動を固定することができる。
【0039】
工具回転駆動部16は、モータ16aと、このモータ16aの回転軸に連続する駆動シャフト19aと、この駆動シャフト19aの先端に設けた工具把持部19とを備えている。そして、駆動シャフト19aは、その側面に貫通する給水用の孔17eが形成されており、駆動シャフト19aの孔17eが形成されている部分が、給水室18内に位置するように配置されている。
【0040】
また、回転工具17は、工具把持部19に把持されるシャフト(シャフト部)17bと、このシャフト17bの先端に着脱自在に設けた削穴工具17aとを備えている。なお、回転工具17は、シャフト17bの先端に削穴工具17aを交換可能に螺合するようにネジが形成されている。また、削穴工具17aは、例えば、ダイヤモンドドリルビットまたは超硬金属をロウ付けしたロングドリル等が用いられる。
【0041】
さらに、回転工具17には、冷却水を刃先まで案内する貫通孔17cを形成し、後記する給排水装置20から送られる冷却水が、給排水装置20内のポンプ24から供給ホース22aにより給水室18を介して、シャフト17b側面に設けた孔17e(図3参照)および貫通孔17cを経て、回転工具17の先端に供給するようにしている。
【0042】
図1および図2に示すように、ガイド基台60は、基台11に設けたアリ溝14dに沿って垂直方向に移動可能に設けられている。このガイド基台60は、その中央にガイド基台60の水平(作業面に平行)なガイド面に沿って水平移動可能な工具ガイド機構30を備えている。また、図3に示すように、工具ガイド機構30は、ガイド基台60の下方に突出する高さに形成されており、下端部分が床上面に当接するように形成されている。なお、ガイド基台60がアリ溝14dにより上下に移動できることで、作業床面に段差があっても作業できるように構成されている。
【0043】
図1および図7、図8に示すように、工具ガイド機構30は、ガイド基台60の両端側に形成した直線案内溝38,38に沿って、案内されるボルト付ガイドピン30c,30cが取り付けられ、蝶ナット30d,30dを締め上げることにより、当該工具ガイド機構30が、ガイド基台60に固定される。
【0044】
そして、工具ガイド機構30は、工具ガイド基台31と、この工具ガイド基台31に嵌合した球面ガイド部材32b(図8参照)と、この球面ガイド部材32bの球面部に回動自在に嵌挿される球面軸受32aと、この球面軸受32aに嵌合し、中心部にブッシュ穴33を設けた工具ガイド部材32と、この工具ガイド部材32のブッシュ穴33に着脱自在に取付けられ、回転工具17のシャフト17bをガイドするガイドブッシュ52と、このガイドブッシュ52を固定する固定具39aとを備えている。この工具ガイド機構30は、回転工具17のシャフト17bをコンクリート床面10の近傍で回動自在に支持することで穿孔方向にガイドするものである。
【0045】
工具ガイド基台31は、中央部に凹部31a(図8参照)を設けている。そのため、切削を終えたコンクリート粉の混ざった汚水はこの凹部31aにより形成される排水室37に一時プールされ、排水ホース22bを経て給排水装置20に戻される。戻された汚水は、給排水装置20内のフィルタで濾過され、再び冷却水として使用されるように構成されている。
【0046】
図6に示すように、工具ガイド基台31には、工具ガイド基台31の中央に設けた球面ガイド部材32bが設置され、この球面ガイド部材32bの球面部に回動自在に嵌挿される球面軸受32aを傾斜自在に支持している。そして、球面軸受32aは、中心部にブッシュ穴33を設けた工具ガイド部材32を嵌合して支持している。また工具ガイド部材32のブッシュ穴33には、回転工具17のシャフト17bをガイドするガイド穴52aを形成したガイドブッシュ52が着脱自在に取付けられている。さらに、ガイドブッシュ52は、側面(上面)から固定具39aにより押圧されて工具ガイド部材32に固定するように設置されている。固定具39aは、例えば、偏芯ボルトであり、ボルト頭がボルトを締めるときに偏心してガイドブッシュ52の側面を押圧するように構成されている。
【0047】
また、工具ガイド部材32は,図7、図8および図9に示すように、ここでは、径の異なる環状部材が同心円状に形成されており、中央に設けた貫通穴の部分でその貫通穴の外側から内側に向かって球面ガイド部材32b、球面軸受32a、および、ガイドブッシュ52が設置されるように構成されている。そして球面軸受32aは、左右からボルト35,35により軸支されて傾斜できるように設置されている。また、ボルト35,35の周囲には、リング35a,35aが設けられており、リング35a,35aの周面には、角度を示す目盛35bが設けられている。リング35aの上面には、ボルト36を介して移動レバー34が掛け渡すように設けられている。
【0048】
このような構成により、図7に示すように、球面軸受32aは、ボルト35,35のネジで押圧して傾斜角度を固定できる。工具ガイド機構30は移動レバー34を手で持ち上げ、水平方向に移動するとき、および球面軸受32aの角度を調整する場合に用いられる。球面軸受32aの角度を調整する場合には、ボルト35を緩め、移動レバー34を持ち上げ、リング35aに付した目盛35bを指針35cに合わせるようにして行う。工具ガイド基台31は、工具ガイド部材32が所定傾斜角度で設定されたときに、ボルト35によりその傾斜位置を固定している。
なお、ボルト35の設置位置は、工具ガイド基台31がガイド基台60の直線案内溝38,38に沿って移動したいずれの位置であっても外部から操作できる位置であることが好ましい。
【0049】
図8に示すように、工具ガイド基台31の上部には、その円筒部に、矩形のガイドプレート30fを載せ、このガイドプレート30fと工具ガイド基台31をボルト30gで4箇所締結し、ガイドプレート30fの左右の上面にはそれぞれ、ボルト付きのボルト付ガイドピン30cが2箇所固定されている。ボルト付ガイドピン30c、30cは図1、図2に示すようにガイド基台60に設けた直線案内溝38,38にそれぞれ挿入され、直線ガイドされる。工具ガイド基台31を取付けたガイドプレート30fをガイド基台60に固定する場合は、蝶ナット30dを締め上げることにより行われる。
【0050】
工具ガイド基台31は、図8、図9に示すように、その底面に凹状に形成された凹部31aと、この凹部31aを囲むように設けた弾性変形自在なリング状のスポンジ31gとを備えている。そして、凹部31aは、工具ガイド基台31を貫通した導通孔22cに、フレキシブルホースである排水ホース22bを介して接続されている。そのため、工具ガイド基台31は、コンクリートのように表面に凹凸のある加工対象物にも気密性を保持できる。
【0051】
工具ガイド基台31は、工具ガイド部材32が所定傾斜角度で設定されたときに、ボルト35によりその傾斜位置を固定している。なお、ボルト35の設置位置は、工具ガイド基台31がガイド基台60の直線案内溝38,38に沿って移動したいずれの位置であっても外部から操作できる位置であることが好ましい。
【0052】
また、ガイドブッシュ52は、図6に示すように中央に予め回転工具17のシャフト17bを嵌合するためのガイド穴52aが形成されている。そして、削穴工具17aの直径はガイド穴52aより大きいため、このガイドブッシュ52は、シャフト17bから削穴工具17aを取り外した状態で嵌合させておき、シャフト17bに嵌合した状態で工具ガイド部材32のブッシュ穴33に嵌合される。そして、工具ガイド部材32に設置されたガイドブッシュ52は、固定具(偏芯ボルト)39aにより押圧されて固定される。この固定具は、工具ガイド部材32の上面に取り付けられることにより、ガイドブッシュ52の側面を当該固定具の一部で押圧して、ガイドブッシュ52を固定している。なお、削穴工具17aの直径は、ガイド穴52aの直径より小さい。
【0053】
工具ガイド部材32は、単独で傾斜角度を設定する場合と、回転工具17側と連動して傾斜角度を設定する場合とがある。単独で傾斜角度を設定する場合は、移動レバー34を介してガイド基台60に沿って工具ガイド部材32を移動させ、リング35aの目盛35bに指針35cを合わせて傾斜角度を設定しボルト35を締めて固定する。
【0054】
また、回転工具17側と連動して工具ガイド部材32の傾斜角度の設定を行う場合は、以下のようにしている。すわなち、シャフト17bにガイドブッシュ52を嵌合した状態で、支柱14(図2参照)を操作して設定する。このとき、シャフト17bの直径が細くて曲がる可能性がある場合には、図6に示すように、中空スリーブ55を工具回転駆動部16に取り付け、工具ガイド部材32のブッシュ穴33に中空スリーブ55の一端側を差し込んだ状態で、ガイド基台60(図1参照)に沿って工具ガイド部材32を移動させる。そして、支柱14の傾斜に連動して傾斜角度の位置を決定する構成にすると都合がよい。中空スリーブ55は、工具ガイド部材32が所定位置に移動したとき、または、傾斜角度が決定して工具ガイド部材32がボルト35により固定されたら、工具回転駆動部16から取り外され、ガイドブッシュ52と取り替えられることになる。なお、中空スリーブ55は、その先端が尖っており、ブッシュ穴33に挿通し易いように構成されている。
【0055】
中空スリーブ55は、コンクリート床面10に傾斜した深穴を穿孔するときに、そのコンクリート床面10の深穴位置を位置決めするときに用いると都合がよい。つまり、ガイド基台60を基台11から外した状態で、中空スリーブ55を工具回転駆動部16に取付け、支柱14を所定傾斜角度に固定した状態とする。そして、ハンドル21(図4参照)を操作して中空スリーブ55の先端が当接するコンクリート床面10の位置を、穴明位置として作業者が目視しながら決めることができる。このとき、基台11のナット11e(図4参照)を緩めてフレーム11bの位置を微調整して、基台11に取付けるガイド基台60の位置を設定する。そして、基台11にガイド基台60が取付けられると、中空スリーブ55の先端をブッシュ穴33に差し込んで、穴中心としてガイド基台60の工具ガイド部材32の位置および角度を設定する。
【0056】
図1ないし図4に示すように、給排水装置20は、供給ホース22aおよび給水室18を介して冷却水を回転工具17に供給し、かつ、工具ガイド基台31の排水室37に溜まった汚水を、排水ホース22bを介して給排水装置20に戻し、濾過して再度冷却水にして循環させるものである。この給排水装置20は、その装置本体内にポンプ24および図示しないフィルタ等の濾過機構を備えており、作業現場を水浸しにすることなく、冷却水を供給して排水を濾過することが可能となる。なお、この給排水装置20は、給水室18に冷却水を供給すると共に、排水室37から強制的に吸引している。そのため、冷却水は、給排水装置20から供給ホース22a、給水室18、孔17e、回転工具17の貫通孔17c、削穴工具17a、深穴、排水室37、排水ホース22bの間を循環することとなり、削穴工具17aにより削られたコンクリート粉は、冷却水に混ざった混濁水として、形成されている深穴から排水室37に吸引されて引き上げられ排水ホース22bを介して給排水装置20に送られ、図示しないフィルタ等により濾過される。
【0057】
なお、深穴明機100において、支柱14を回動自在に搭載した基台11と工具ガイド機構30を案内(支持)するガイド基台60の配置は、垂直方向の穴明の状態のときに、支柱14の回動中心線と工具ガイド機構30の傾斜中心線が異なる垂直平面上に平行に位置するように構成している。
そして、工具ガイド機構30はコンクリート床面10上面に対して平行に基台11に支持され、中央部にガイド面を形成したガイド基台60と、ガイド基台60のガイド面に沿って水平移動可能とし、かつ、前記回転工具の傾斜角度に合わせて、回転工具17のシャフト17bを支持するようにしている。
【0058】
図12(a)は、本実施形態における回転工具17の傾斜角度と工具ガイド機構30の工具ガイド部材32の傾斜角度の関係を示す説明図である。
コンクリート床面10の上面から支柱14の回動中心C1までの距離をhとし、同じく工具ガイド機構30の傾斜中心G1までの距離をh1とし、傾斜角度をθ1とすると、回転工具17の中心線に対して水平方向の移動量はw1となる。そして、傾斜角度θ1が45度のとき、移動量w1の変位は、h−h1の変位に比例した大きさの数値になり、工具ガイド機構30の傾斜中心G0からG1に移動した移動量w1で傾斜穴明けを行うことができる。
【0059】
次に、この深穴明機100の使用方法について述べる。なお、下記の作業方法は、これに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
<垂直穴の加工手順>(図1、図3、図6参照)(1)コンクリート床面10上の指定された穴位置に、工具先端が合うように深穴明機100を仮置きする。
(2)真空吸引装置13を作動して、基台11をコンクリート床面10に固定する。
【0060】
(3)基台11上のフレーム11bに設けた固定ボルト11dを緩めて、フレーム11bを移動し、工具先端位置を調整する。
(4)指定された穴位置に、中空スリーブ55を使用して、工具ガイド機構30の芯出しを行う。
(5)工具ガイド機構30を蝶ナット30dで固定する。
(6)中空スリーブ55に代えて回転工具17をセットする。
(7)シャフト17bの先端の削穴工具17aを外し、ガイドブッシュ52をシャフト17bに挿通した状態で削穴工具17aを取り付ける。
(8)ハンドル21を操作して、工具ガイド部材32の真上に位置させ、工具ガイド部材32のブッシュ穴33にガイドブッシュ52を挿入して、固定具(偏芯ボルト)39aで固定する。
【0061】
(9)工具回転駆動部16のモータ16aを駆動し、回転工具17を回転させる。
(10)給排水装置20のポンプ24を作動し、回転工具17に冷却水を供給する。
(11)冷却水は、ポンプ24により供給ホース22aから給水室18に送られ、給水室18内に送られた冷却水は、駆動シャフト19aの孔17e、貫通孔17cから削穴工具17aまで送られ、作業位置に冷却水を供給する。
(11)ハンドル21を操作して送りをかけながら、削穴工具17aを送り込む。
(12)必要に応じて、長さの異なる回転工具17を交換しながら、所定の深さまで送り込む。
【0062】
このとき、削穴工具17aで削穴されることにより排出されるコンクリート粉の混ざった汚水は、工具ガイド基台31の排水室37から給排水装置20のポンプ24により排水ホース22bを介して再び給排水装置20に送り戻される。そして、給排水装置20に、回収された排水は、フィルタで濾過され、再び冷却水として再循環して使用される。
また、削穴工具17aがコンクリート床面10に深穴を形成するときに、シャフト17bはガイドブッシュ52によりガイドされているため、削穴工具17aは振れることなく安定して切削することができる。そして、所定の加工深さに達したら給水を停止すると共に、回転工具17をコンクリート床面10から抜き、元に戻し加工を終了する。
【0063】
つぎに、傾斜穴の穴明け手順を説明する。
<傾斜穴の加工手順>(図2、図4、図5、図6参照)(1)支柱14を所定の角度に傾斜させて固定ボルト43を締めて支柱14を角度割出板41に固定する。なお、支柱14は、角度割出板41に形成されている目盛りに、支柱14に設けられた矢印に合わせることで正確な傾斜角度に設定することができる。
(2)コンクリート床面10の指定された穴位置に、工具先端が合うように深穴明機100を仮置きする。
(3)真空吸引装置13を作動して、基台11をコンクリート床面10に固定する。
【0064】
(4)工具ガイド部材32を所定の角度に傾斜させてボルト35で固定する。なお、工具ガイド部材32は、目盛35bを指針35cに合わせることで、正確な傾斜角度を設定することができる。
(5)図5(a)に示すように、回転工具17の代わりに中空スリーブ55を工具回転駆動部16に取り付ける。そして、中空スリーブ55の一端側を工具ガイド部材32のブッシュ穴33に差し込む。そのとき、ガイド基台60の直線案内溝38,38(図1参照)に沿って所定位置に工具ガイド基台31を水平移動させる。
(6)工具ガイド機構30を蝶ナット30dでガイド基台60に固定する。
【0065】
(7)図5(d)に示すように、工具回転駆動部16のモータ16aを駆動し、回転工具17を回転させる。そのとき、回転工具17を冷却するために、給排水装置20(図1参照)のポンプ24を作動し、冷却水を供給ホース22a、給水室18(図3参照)から回転工具17の駆動シャフト19aの孔17eを通して、削穴工具17aに送り出してコンクリート床面10に穴明作業を行う。
【0066】
(8)ハンドル21を操作して送りをかけながら、コンクリート床面10の所定の深さまで送り込む。このとき、回転工具17のシャフト17bは、ガイドブッシュ52により穿孔方向にガイドされているため、安定して穴明作業を行うことができる。
(9)必要に応じて、長さの異なる複数の回転工具17を用意し、回転工具17を交換しながら所定の深さまで送り込む。
(10)所定の深さに達したら給水を停止すると共に、回転工具17をコンクリート床面10から抜き、工具回転駆動部16のモータ16aを停止する。
【0067】
穴明作業により発生するコンクリート粉の混ざった汚水は、ポンプ24により排水ホース22b(図3参照)を介して給排水装置20に送られ、回収されフィルタで濾過して、再循環して使用される。
穴明作業は、傾斜角度が決まっているので、予め、支柱14と工具ガイド部材32の角度を設定して固定し、工具ガイド基台31の固定位置を中空スリーブ55で決めるだけにすると、作業が簡単にできる。
【0068】
以上説明したように、深穴明機100は、支柱14が傾斜することと、工具ガイド機構30を有するため、垂直穴から傾斜穴まで傾斜角度を自在に設定して穴明作業を行うことができる。また、深穴明機100は、垂直穴あるいは傾斜穴を開ける場合に、ガイドブッシュ52が回転工具17のシャフト17bをガイドした状態で作業できるため、安定した穴明作業を行うことができる。
【0069】
なお、工具ガイド機構30は、傾斜自在に設定できるものであればよく、例えば、図10に示すような構成であっても構わない。図10に示すように、球面ガイド部材32bおよび球面軸受32aに換えて、ブッシュ穴33を設けた工具ガイド基台31′に一対のガイドピン35Aを軸支して工具ガイド部材32を傾斜自在に支持するように構成すれば、同様の効果が得られる。なお、図10では、工具ガイド部材32の固定は、側面からボルト39(ガイド固定手段)により行う構成としている。
【0070】
(実施形態2) 本発明の実施の形態2は、図11の斜視図に示す。なお、実施の形態1と同一機構、同一部材に関しては、同一符号、名称を使用し、説明は省略する。
本実施形態の特徴は、図11に示すように、支柱14を回動自在に搭載した基台11と、工具ガイド機構30を案内するガイド基台60の配置は、支柱14の回動中心線と工具ガイド機構30の傾斜中心線が同一垂直平面上に位置するように構成した。
工具ガイド機構30はコンクリート床面10の上面に対して平行に基台11に支持され、一対のガイド面を形成したガイド基台60と、ガイド基台60のガイド面に沿って水平移動可能とし、かつ、回転工具17の傾斜角度に合わせて、回転工具17のシャフト17bをガイドする工具ガイド部材32を設けている。
【0071】
図12(b)は、本実施の形態2における回転工具17の傾斜角度と工具ガイド機構30の工具ガイド部材32の傾斜角度の関係を示す説明図である。
コンクリート床面10の上面から支柱14の回動中心C1までの距離をhとし、同じく工具ガイド機構30の傾斜中心G0までの距離をh1とし、傾斜角度を中心線に対して、θ1とすると、回転工具17の中心線に対して水平方向の移動量w1はゼロとなる。そのため、工具ガイド機構30を水平移動させることなく傾斜させて回転工具17により傾斜孔を穿孔することが可能となる。これは、支柱14の回動中心C1と工具ガイド機構30の傾斜中心G0とが同じ高さ(h=h1=h2)となっていることと、回動中心C1の中心線上に傾斜中心G0に直列にならんでいるからである。
【0072】
また、図12(c)に示すように、垂直孔を穿孔するときを基準として、支柱14の回動中心C1と、工具ガイド機構30の傾斜中心G0とが同一垂直面内に位置し、回動中心C1と傾斜中心G0との高さが異なる場合は、傾斜角度θ1が45度のとき、移動量w1の変位は、h−h1の変位に比例した大きさの数値になる。この場合、実施の形態1の構成と比較すると、わずかな工具ガイド機構30の移動量w1で傾斜穴明けを行うことができる。
その結果、実施の形態2は、実施の形態1と比較し、回転工具とコンクリート床との接近性の向上が図れるため、工具長を短くでき、剛性が高く、切削能力の向上を図ることができる。
【0073】
なお、給水室18の構成、工具把持部19Aの構成、回転工具17の構成、削穴工具17aの構成、ガイド基台60の構成、支柱14の構成は、図13ないし図16で示すような構成であっても構わない。以下、各構成について説明する。図13(a)、(b)は給水室および工具把持部の他の構成を示す分解斜視図、図14は回転工具の他の構成を示す分解斜視図、図15はガイド基台の他の構成を一部切欠いて示す斜視図、図16(a)、(b)、(c)は支柱の他の構成を示す斜視図である。なお、すでに説明した同じ構成の部材は同じ符号を付して説明を省略する。
【0074】
図13(a)、(b)に示すように、給水室18である給水機構18Aは、ここでは、階段状に形成されている案内部材15の最下段となる位置に工具把持部19Aの軸部となる接続軸部19dおよび軸本体19eが回動自在に貫通した状態で着脱自在に設置されている。なお、案内部材15は、給水機構18Aを支持する位置に支持凹部15aを有し、その支持凹部15aの上端には、後記する工具把持部19Aの第1接続部材9Aが挿通でき、後記する筒体18aの直径より小さく形成された開口部15bが形成されている。
【0075】
この給水機構18Aは、筒体18aと、この筒体18aの側面に給排水装置20の供給ホース22aが接続するように突出して設けたホース接続部18bと、このホース接続部18bから供給される冷却水を収納して、筒体18a内において設定されたエリアを冷却水の供給空間としてシールする第1オイルシール18c,第2オイルシール18dと、を備えている。
図13(b)に示すように、筒体18aは、その内側に両端のそれぞれから中央に向かって段状に軸受設置部8a,8bおよびシール設置部8c,8dが形成されている。また、筒体18aは、その側面で高さ方向の中央にネジ穴8eが形成されており、ホース接続部18bが着脱自在に設置される。
【0076】
図13(a)に示すように、ホース接続部18bは、筒体18aのネジ穴8eに螺合して筒体18aに設置され、外部から接続される冷却水の供給ホース22aを着脱自在に接続するものである。このホース接続部18bの設置される案内部材15の位置には、切欠溝15cが形成されている。
第1オイルシール18cおよび第2オイルシール18dは、同じ構成のものであり、筒体18aのシール設置部8c,8dにそれぞれ設置される。この第1オイルシール18cおよび第2オイルシール18dは、中央に工具把持部19Aが回動自在にかつ液密に設置できるように環状な形状の公知の構成のものが使用されている。
【0077】
図13(b)に示すように、工具把持部19Aは、工具回転駆動部16の駆動シャフト16bに着脱自在に接続される第1接続部材9Aと、この第1接続部材9Aに一端側を着脱自在に接続され、かつ、他端側に回転工具17を接続する第2接続部材9Bとを備えている。
第1接続部材9Aは、工具回転駆動部16の駆動シャフト16bに螺合する雌ネジが形成されたボルト頭状のドリル接続部19cと、このドリル接続部19cに連続して設けられ当該ドリル接続部19cより縮径した軸状の接続軸部19dと、を備えている。なお、ドリル接続部19cおよび接続軸部19dには連通して雌ネジが形成されている。また、ドリル接続部19cには、その側面に外部からレンチあるいはスパナ等により螺合操作ができるようにスパナカット面が形成されている。
【0078】
第2接続部材9Bは、軸本体19eの一端側に形成され第1接続部材9Aの接続軸部19dに着脱自在に螺合する雄ネジ部19fと、軸本体19eの他端側に形成され、回転工具の接続部分に着脱自在に螺合する工具接続部19gと、この工具接続部19gより軸中央側の位置で軸本体19eに設けられ、外部からレンチあるいはスパナ等により螺合操作を行うための工具操作部19hと、この工具操作部19hより軸中央側の位置で、軸本体19eの側面に形成した連通穴19jと、を備えている。
【0079】
なお、軸本体19eは、連通穴19jから工具接続部19gまで連続して貫通する貫通穴が形成されている。そして、工具接続部19gは、その外周に回転工具17の雌ネジ部分が螺合するように雄ネジが形成されている。
【0080】
この工具把持部19Aは、図13(a)、(b)に示すように、給水室18の筒体18aのシール設置部8c,8dにそれぞれ第1オイルシール18c,第2オイルシール18dを設置し、筒体18aの軸受設置部8a,8bにそれぞれ第1軸受19k,第2軸受19mを設置した状態で、第2接続部材9Bを第2軸受19m側から第1軸受19kに向かって連通させる。そして、第1軸受19kから突出している雄ネジ部19fに、第1接続部材9Aの接続軸部19dを螺合することで、工具把持部19Aは、給水機構18Aを貫通して回動自在でかつ冷却液に対して液密な状態として設置される。なお、給水機構18Aは、第1オイルシール18c、第2オイルシール18dおよび筒体18aで囲繞されるエリアが冷却水の供給空間となり、工具把持部19Aの連通穴19jの周りに冷却水を供給することとなる。
【0081】
さらに、工具把持部19Aは、第1接続部材9Aのドリル接続部19cを工具回転駆動部16の駆動シャフト16bに接続する。この工具把持部19Aが駆動シャフト16bに接続されるときには、給水室18の筒体18aが案内部材15の支持凹部15aに嵌合さて支持された状態となる。給水室18は、案内部材15に支持されると、ホース接続部18bが案内部材15の切欠溝15cから突出した状態となる。
【0082】
そして、工具把持部19Aの他端となる第2接続部材9Bの工具接続部19gに回転工具17Aの雌ネジ部分が螺合することで、回転工具17Aを接続している。
回転工具17Aは、図14に示すように、後記する削穴工具7と、シャフト17bとして、延長シャフト17Lと、係合シャフト17Kとを備える構成としてもよい。延長シャフト17Lは、その両端に設けたネジ部(ここでは雄ネジおよび雌ネジ)17j,17fを有しており、内部に貫通して貫通孔17cが形成されている。また、係合シャフト17Kは、一端に工具把持部19と係合するネジ部17g(ここでは雌ネジ)と、他端にシャフト17bのネジ部17jと係合するネジ部17h(ここでは雄ネジ)とを有しており、内部に貫通して貫通孔17cが形成されている。このシャフト17bは、形成する深穴が、100cmを超える寸法である場合に使用されると都合がよい。
【0083】
なお、給水機構18Aは、第1オイルシール18c、第2オイルシール18dおよび筒体18aで囲繞されるエリアが冷却水の供給空間となり、工具把持部19Aの連通穴19jの周りに冷却水を供給することとなる。そして、工具把持部19Aの連通穴19jから、シャフト17bの軸線方向に貫通して形成された貫通孔17cを介して、給水室18から供給される冷却水を、削穴工具7に供給している。
【0084】
削穴工具7は、図14に示すように、中空にして流路7gを有する回転軸7aと、この回転軸7aの先端面に取り付けられ、流路7gに連通する溝部7cを有する研削部7bとを備えている。そして、溝部7cは、研削部7bの軸方向に直交する断面の円周の少なくとも一部が開放されるように、当該研削部7bの中心軸を含む深さで先端面から基端面まで形成されている。さらに、溝部7cの基端面近傍には、当該研削部7bの先端面から見たとき、当該溝部7cの底部から回転軸7aの流路7gを隠す高さまで当該溝部7c内に突出する突出部7dを有している。この突出部7dは、基端面側に、流路7gに向かって傾斜する傾斜面7eが形成されている。なお、回転軸7aは、研削部7b側に、径の異なる異径部7fが形成され、その外周面に、外部からレンチあるいはスパナ等の操作工具により操作するためのスパナカット面(図示せず)が施されている構成としても構わない。
【0085】
なお、溝部7cの溝幅は、研削部7bの円周方向に向けて拡大するように形成されている構成であってもよい。また、研削部7bの軸方向に平行する断面において、溝部7cの溝深さが、研削部7bの先端面から基端面に向かって縮小するように形成される構成であっても構わない。
【0086】
この削穴工具7が回転してコンクリートに削穴を形成する場合、給水室18(18A)からシャフト17bの貫通孔17cを介して供給される冷却水は、中空の流路7gから突出部7dの傾斜面7eに向かって放出される。そして、放出された冷却水は、突出部7dの傾斜面7eから溝部7cを介して切削作業部分に供給される。また、研削部7bにより研削されたコンクリートの削粉は、供給された冷却水と共に、シャフト17bとコンクリート孔の側壁の間から上方に強制的に給排水装置20の吸引機構により吸引される。この削穴工具7を使用することで、穴明の作業効率がより向上する。なお、削穴工具7は、ここでは、直径7mmおよび9mmとなる構成のものが使用されている。
【0087】
また、図15に示すように、ガイド基台60Aは、基台11に支持されることなく、単独でコンクリート床面10に真空吸引装置13を介して固定フレーム70により固定される構成としても構わない。
固定フレーム70は、ガイド基台60Aを固定したときに、真空吸引装置13の吸引操作によりコンクリート床面10に吸着して固定されるものである。この固定フレーム70は、コ字形状のフレーム材を、そのコ字形状の開放部分を下面として四角環状に形成したフレーム体71と、このフレーム体71の内周面側で、下端から所定高さ上方となる位置に設けた支持枠72と、を備えている。
【0088】
そして、フレーム体71は、その上面の所定位置に真空吸引装置13からのフレキシブルホース12bが着脱自在に接続できる接続口73を設けている。また、支持枠72は、その所定位置にガイド基台60Aを支持するネジ孔が形成されている。なお、フレーム体71のコンクリート床面10に当接する下端には、合成ゴム、ゴム材等の柔軟な部材を設置することで、コンクリート床面10に凹凸があっても固定フレーム70を固定することが可能となる。
【0089】
この固定フレーム70は、ガイド基台60Aをネジにより支持枠72に固定した状態で、作業面に配置される。そして、真空吸引装置13の作動によりフレキシブルホース12bを介して真空吸引されフレーム体71がコンクリート床面10に固定される。固定フレーム70が基台11に支持されていない状態とすることで、基台11を設置するコンクリート床面10と固定フレーム70を設置するコンクリート床面10とがそれぞれ異なる傾斜面である場合であっても対応できる。
【0090】
さらに、図16(a)、(b)、(c)に示すように、支柱14は、基柱14Aと、この基柱14Aの上方に連結手段14Cを介して柱軸周りに回転する回転支柱14Bとを備える構成であっても構わない。この回転支柱14Bは、基柱14Aと同様に一方の面にラック14cを設けている。基柱14Aは、その上端に回転支柱14Bと柱軸周りに回転できるように係合機構14Dの一方の係合部(凸部)14eが形成されている。また、回転支柱14Bの下端には、一方の係合部14eに柱軸周りに回転できる他方の係合部(凹部)14fが形成されている。なお、係合機構14Dは、後記するボルト14gが上方から螺合できるように内側に雌ネジが形成されている。連結手段14Cは、回転支柱14Bの上端から係合機構14Dに連結されるボルト14gと、このボルト14gを回転支柱14Bの上端面に係合するナット14hとを備えている。なお、ナット14hは、ここでは、2つが使用されている。
【0091】
支柱14は、回転支柱14Bを備えることで、穴明作業を行って、回転工具17Aのシャフト17bを長いものに取り替える場合、つぎのような動作をすることができる。すなわち、ハンドル21を操作して案内部材15を回転支柱14Bの位置に移動させて、図示しない蝶ボルトを締めて案内部材15を回転支柱14Bの位置に保持する。そして、回転工具17Aを工具把持部19から取り外した後に、回転支柱14Bを90度柱軸周りに回転させた状態とする。そして、さらに長い新たな回転工具17Aを、形成している穴に差し込む。その後、回転支柱14Bを90度回転させ元の位置に戻して、図示しない蝶ボルトを緩めた状態でハンドル21を操作し、穴に差し込んだ回転工具17Aの上端部分まで、工具把持部19を下げて、その工具把持部19に回転工具17Aを螺合する。
【0092】
なお、回転工具17Aは、例えば、シャフト17bの長さが40cmごとに長くなるように取り替えることで、一例として、220cmまで深穴を形成している。ここでは、削穴工具7を使用することで、直径9mmあるいは7mmの穴径の深穴を明けることができる。回転工具17Aは、100cmを超える長さのものは、シャフト17bを、図14に示すように、継ぎ足して長くしたものを使用している。ここでは、削穴工具17a,7で形成した穴径に対して10倍以上の穴深さを掘る場合に有効であり、特に、20倍以上である場合により有効となり、さらに、30倍以上であるときにさらに有効となり、50倍以上である場合に最も有効となる。
【0093】
また、図13に示すように、ここでは、案内部材15には、開口部15bの近傍に固定ネジ穴15dが形成されている。この固定ネジ穴15dは、棒状に形成された支持ロッド16cを着脱自在に螺合している。支持ロッド16cは、その上端部を工具回転駆動部16の支持部にナットを介して係合して、工具回転駆動部16が回転することを防止している。なお、この支持ロッド16cが、工具回転駆動部16全体を支持し、かつ、回転防止を行う構成としても構わない。さらに、図面では記載はしていないが、工具回転駆動部16の回転防止および支持する構成は、案内部材15から工具回転駆動部16の側部を支持する水平に突出して設置した支持片により行う構成としてもよく、特に限定されるものではない。
【0094】
そして、図示していないが、第1接続部材の接続軸部19dを、給水機構18Aを貫通する長さとして、接続軸部19dの側面に連通穴19jを形成してシャフト17bの貫通孔17cに冷却水を送るように構成してもよい。
また、回転工具17,17Aを使用する場合には、あらかじめ支柱14の傾斜角度に合わせて工具ガイド部材32を所定角度に固定しておけば、中空スリーブ55を使用しなくても構わない。
【0095】
また、図17(a)〜(c)に示すように、深穴明作業は、すでに穿設した深穴に回転工具17Aの一部を差し込んだ状態で係合シャフト17Kの駆動シャフト16bに係合する部分と、シャフト部分とを着脱自在に螺合できるように構成し、深穴を穿孔している部分を抜き取ることなく、シャフト部分を追加して作業を行うようにしても構わない。
また、係合シャフト17Kの駆動シャフト16bに係合する部分と、シャフト部分とを着脱自在に螺合する構成とすることで、以下のような深穴明作業を行うことが可能となる。
図17(a)に示すように、初めに工具回転駆動部16に取り付けられる回転工具17Aにより深穴を穿孔するように、支柱14の下端側までハンドル21により工具回転駆動部16を降下させる。
図17(b)に示すように、工具回転駆動部16をスイッチ等の操作で停止させ回転工具の回転を停止する。さらに、係合シャフト17Kのシャフト部分と、駆動シャフト16bに係合している係合部分とを、スパネ等によりシャフト部分を回転させることで取り外す。そして、ハンドル21の操作により案内部材を支柱14に沿って上昇させ、新たな延長シャフト17Lを配置し、そのスパナカット面17sをスパナ等の操作により回転させることで、駆動シャフト16bに係合している係合部分と、工具ガイド機構30にガイドされているシャフト部分とに、新たな延長シャフト17Lを螺合して取り付ける。
図17(c)に示すように、新たな延長シャフト17Lが取り付けられたら、再び、工具回転駆動部16をスイッチ等の操作により作動させ、延長した回転工具17Aにより深穴を穿孔する作業を行う。
これらの図17(a)〜(c)で示す操作を繰り返し行うことで、回転工具17Aは、工具ガイド機構から取り外すことなく目的の深さとなる深穴を穿孔する作業を行うことができる。そのため、図17で示す作業は、深穴を穿孔する作業中に回転工具17Aを穴から抜き取る操作に比較して、作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の(実施形態1)にかかる深穴明機の全体構成を示し、垂直穴を明ける状態を表わす斜視図である。
【図2】本発明の(実施形態1)にかかる深穴明機の全体構成を示し、傾斜穴を明ける状態を表わす斜視図である。
【図3】本発明の(実施形態1)にかかる深穴明機の全体構成を示し、垂直穴を明ける状態を表わす縦断面図である。
【図4】本発明の(実施形態1)にかかる深穴明機の全体構成を示し、傾斜穴を明ける状態を表わす縦断面図である。
【図5】(a)は、本発明の(実施形態1)にかかる深穴明機で、中空スリーブを装着した状態を示す深穴明機の側面図、(b)は本発明にかかる深穴明機で、傾斜穴を加工するときの工具ガイド部材の傾斜状態を示す深穴明機の側面図、(c)は本発明の(実施の形態1)にかかる深穴明機で、工具ガイド部材にガイドブッシュを装着し、削穴工具を装着した状態を示す深穴明機の側面図、(d)は本発明の(実施形態1)にかかる深穴明機で、傾斜穴の加工状態を示す深穴明機の側面図である。
【図6】本発明の(実施形態1)および(実施形態2)にかかる深穴明機における工具ガイド機構の全体構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の(実施形態1)および(実施形態2)にかかる深穴明機における工具ガイド機構を示す斜視図である。
【図8】本発明の(実施形態1)および(実施形態2)にかかる深穴明機におけ る工具ガイド機構を示す7図のA−A縦断面図である。
【図9】本発明の(実施形態1)および(実施形態2)にかかる深穴明機における工具ガイド機構を示す7図のB−B縦断面図である。
【図10】本発明の(実施形態1)および(実施形態2)にかかる深穴明機の工具ガイド機構における他の形態の全体構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の(実施形態2)にかかる深穴明機における構成を示す斜視図である。
【図12】(a)は、(実施形態1)における回転工具の傾斜角度と工具ガイド部材の傾斜角度の関係を示す説明図、(b)、(c)は、(実施形態2)における回転工具の傾斜角度と工具ガイド部材の傾斜角度の関係を示す説明図である。
【図13】(a)、(b)は本発明の給水室および工具把持部の他の構成を示す分解斜視図である。
【図14】本発明の回転工具の他の構成を示す分解斜視図である。
【図15】本発明のガイド基台の他の構成を一部切欠いて示す斜視図である。
【図16】(a)、(b)、(c)は本発明の支柱の他の構成を示す一部を切欠いて示す斜視図である。
【図17】(a)、(b)、(c)は本発明の深穴明機の作業手順を模式的に示す一部を断面とした断面図である。
【符号の説明】
【0097】
7 削穴工具
7a 回転軸
7b 研削部
7c 溝部
7d 突出部
7e 傾斜面
7e 斜面
7f 異径部
8a 軸受設置部
8c シール設置部
8e ネジ穴
9A 第1接続部材
9B 第2接続部材
10 コンクリート床面(作業面)
11 基台
11a 凹部(固定手段)
11b フレーム
12 バキュームパット
12a 導通孔
12b フレキシブルホース
13 真空吸引装置(固定手段)
14 支柱
14A 基柱
14B 回転支柱
14C 連結手段
14D 係合機構
14a ピン
14c ラック
14d アリ溝
15 案内部材
15a 支持凹部
15b 開口部
15c 切欠溝
15d 固定ネジ穴
16 工具回転駆動部(回転駆動機構)
16a モータ
16c 支持ロッド
17 回転工具
17a 削穴工具
17b シャフト(シャフト部)
17c 貫通孔
17e 孔
18、18A 給水室
18a 筒体
18b ホース接続部
18c 第1オイルシール
18d 第2オイルシール
19、19A 工具把持部
19a 駆動シャフト
19d 接続軸部(軸部)
19e 軸本体(軸部)
20 給排水装置
21 ハンドル
22a 供給ホース
22b 排水ホース
24 ポンプ
30 工具ガイド機構
30c ボルト付ガイドピン
30d 蝶ナット
30f ガイドプレート
30g スポンジ
31 工具ガイド基台
32 工具ガイド部材
32a 球面軸受
32b 球面ガイド部材
33 ブッシュ穴
35 ボルト(固定ボルト)
35a リング
35b 目盛
36 ボルト
37 排水室
38 直線案内溝
35 ボルト(ガイド固定手段)
39 ボルト(ガイド固定手段)
39a 固定具(偏芯ボルト)
40 固定機構
41 角度割出板(支持部材)
42 円弧溝
43 固定ボルト
50 昇降機構
51 ピニオン
52 ガイドブッシュ
52a ガイド穴
55 中空スリーブ
60 ガイド基台
70 固定フレーム
71 フレーム体
72 支持枠
73 接続口
90 深穴明ガイド装置
100 深穴明機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の作業面に配置され、固定手段を介して前記作業面に着脱自在に固定される基台と、
前記基台上面にピンを介して回動自在に支持部材に支持された支柱と、
前記基台に設けられ前記支柱を任意の角度で固定する固定機構と、
前記支柱に沿って案内される案内部材と、
削穴工具を先端に着脱自在に締結した長尺のシャフト部からなる回転工具と、
前記案内部材に着脱自在に固定され、前記回転工具を回転駆動する回転駆動機構と、
前記案内部材を前記支柱に沿って移動させる昇降機構と、
前記作業面に対して平行に前記基台に支持されたガイド基台と、
前記ガイド基台に支持され、前記回転工具の傾斜角度に合わせて、前記回転工具のシャフト部をガイドする工具ガイド機構と、を備えたことを特徴とする深穴明機。
【請求項2】
コンクリート製の作業面に設置されて穿孔直径に対して10倍以上の深穴を形成する深穴明機であって、
前記作業面に固定手段を介して着脱自在に固定される基台と、
前記基台に設けた支持部材に支軸を介して傾斜自在に支持される支柱と、
前記支柱の所定傾斜位置で固定する固定機構と、
前記深穴を穿孔する削穴工具を、シャフト部を有する回転工具の先端に着脱自在に締結して、前記回転工具を支持して回転駆動する回転駆動機構と、
前記回転駆動機構を前記支柱に沿って案内すると共に保持する案内部材と、
前記案内部材を前記支柱に沿って移動させる昇降機構と、
前記回転駆動機構が支持する前記シャフト部の延長線上に配置され、前記固定手段を介して前記作業面に着脱自在に固定されるガイド基台と、
前記ガイド基台の水平なカイド面に沿って水平移動すると共に、前記回転工具の傾斜角度に合わせて、前記回転工具のシャフト部を穿孔方向にガイドする工具ガイド機構と、を備えたことを特徴とする深穴明機。
【請求項3】
前記支柱を回動自在に搭載した前記基台に支持され、前記工具ガイド機構を支持する前記ガイド基台の配置は、前記支柱の回動中心線と前記工具ガイド機構の傾斜中心線が異なる垂直平面上に平行に位置するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の深穴明機。
【請求項4】
前記支柱を回動自在に搭載した前記基台に支持され、前記工具ガイド機構を支持する前記ガイド基台の配置は、前記支柱の回動中心線と前記工具ガイド機構の傾斜中心線が同一垂直平面上に位置するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の深穴明機。
【請求項5】
前記工具ガイド機構は、前記回転工具のシャフト部を回転自在に支持するガイドブッシュと、このガイドブッシュを着脱自在に固定すると共に前記支柱の傾斜方向に沿ってガイド基台に傾動自在に支持される工具ガイド基台と、この工具ガイド基台を所定傾斜位置で固定するガイド固定手段とを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の深穴明機。
【請求項6】
前記工具ガイド機構は、前記ガイド基台のガイド面に沿って水平移動可能とし、中央部に貫通穴を形成した工具ガイド基台と、この工具ガイド基台の前記貫通穴に嵌合した球面ガイド部材と、この球面ガイド部材の球面部に回動自在に嵌挿され、中央に貫通穴を有する球面軸受と、この球面軸受の前記貫通穴に嵌合し、中心部にブッシュ穴を設けた工具ガイド部材と、この工具ガイド部材のブッシュ穴に着脱自在に取付けられ、前記回転工具のシャフト部をガイドするガイドブッシュと、このガイドブッシュを前記工具ガイド部材に固定する固定具を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の深穴明機。
【請求項7】
前記工具ガイド機構は、前記ガイド基台のガイド面に沿って水平移動可能とし、中央部に貫通穴を形成した工具ガイド基台と、この工具ガイド基台の前記貫通穴に一対のガイドピンで軸支され、中央にブッシュ穴を形成した工具ガイド部材と、この工具ガイド部材の所定角度の位置で固定する固定ボルトと、前記工具ガイド部材のブッシュ穴に着脱自在に取付けられ、前記回転工具のシャフト部をガイドするガイド穴を形成したガイドブッシュと、このガイドブッシュを前記工具ガイド部材に固定する固定具を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の深穴明機。
【請求項8】
前記回転駆動機構の工具把持部に設けた前記回転工具を経由して前記回転工具先端に冷却水を供給し、かつ使用済みの冷却水を前記工具ガイド機構の工具ガイド基台から排出し、元に戻すように接続した給排水装置を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の深穴明機。
【請求項9】
前記案内部材は、前記回転工具の軸線方向に形成した貫通穴に連通して前記削穴工具に冷却水を供給する給水機構を支持する支持凹部を備え、前記回転駆動機構に前記回転工具を回転自在に把持する工具把持部の軸部が前記給水機構を貫通した位置に配置され、
前記給水機構は、前記支持凹部に支持される筒体と、この筒体の内側に所定間隔で配置され前記冷却水の供給空間を形成すると共に、前記工具把持部の軸部が回転自在に設置される環状の第1オイルシールおよび第2オイルシールと、この第1オイルシールおよび第2オイルシールにより形成される前記供給空間に、前記筒体の側面から供給ホースを介して冷却水を供給するホース接続部と、を有し、
前記工具把持部の軸部は、前記供給空間に対応する側面に前記貫通穴に連通する連通穴を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の深穴明機。
【請求項10】
前記工具把持部は、前記回転駆動機構の駆動シャフトに着脱自在に接続される第1接続部材と、この第1接続部材に一端側を着脱自在に支持されると共に、他端側に前記シャフト部を着脱自在に支持する第2接続部材と、を有し、
前記第2接続部材の一端と前記第1接続部材の他端とを前記軸部としてその一方の側面に前記連通穴が形成され、
前記第1接続部材が前記第1オイルシールと前記筒体の一端側の間に設置される第1軸受を介して回動自在に支持されると共に、前記第2接続部材が前記第2オイルシールと前記筒体の他端との間に設置される第2軸受を介して回転自在に支持されることを特徴とする請求項9に記載の深穴明機。
【請求項11】
前記支柱は、基柱と、この基柱の上方に連結手段により連結して当該支柱の軸線周りに所定角度回転自在となる回転支柱とを有し、前記回転支柱の下端および前記基柱の上端には、前記支柱の軸線周りに回転自在に係合する係合機構を有することを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の深穴明機。
【請求項12】
コンクリート製の作業面に設置されて穿孔直径に対して10倍以上の深穴を形成する深穴明ガイド装置であって、
前記作業面に固定手段を介して着脱自在に固定される基台と、
前記基台に設けた支持部材に支軸を介して傾斜自在に支持される支柱と、
前記支柱の所定傾斜位置で固定する固定機構と、
前記深穴を穿孔する削穴工具を、シャフト部を有する回転工具の先端に着脱自在に締結して、前記回転工具を支持して回転駆動させる回転駆動機構を、前記支柱に沿って案内すると共に保持する案内部材と、
前記案内部材を前記支柱に沿って移動させる昇降機構と、
前記基台に支持され前記作業面に設置されるガイド基台と、
前記ガイド基台の水平なカイド面に沿って水平移動すると共に、前記回転工具の傾斜角度に合わせて、前記回転工具のシャフト部を穿孔方向にガイドする工具ガイド機構と、を備えたことを特徴とする深穴明ガイド装置。
【請求項13】
コンクリート製の作業面に設置されて穿孔直径に対して10倍以上の深穴を形成する深穴明ガイド装置であって、
前記作業面に固定手段を介して着脱自在に固定される基台と、
前記基台に設けた支持部材に支軸を介して傾斜自在に支持される支柱と、
前記支柱の所定傾斜位置で固定する固定機構と、
前記深穴を穿孔する削穴工具を、シャフト部を有する回転工具の先端に着脱自在に締結して、前記回転工具を支持して回転駆動する回転駆動機構を、前記支柱に沿って案内すると共に保持する案内部材と、
前記案内部材を前記支柱に沿って移動させる昇降機構と、
前記回転駆動機構が支持する前記シャフト部の延長線上に配置され、前記固定手段を介して前記作業面に着脱自在に固定されるガイド基台と、
前記ガイド基台の水平なカイド面に沿って水平移動すると共に、前記回転工具の傾斜角度に合わせて、前記回転工具のシャフト部を穿孔方向にガイドする工具ガイド機構と、を備えたことを特徴とする深穴明ガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−261203(P2008−261203A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254067(P2007−254067)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000142919)株式会社呉英製作所 (21)
【Fターム(参考)】