説明

清涼化合物

清涼効果を皮膚または粘膜に提供する方法であって、式I:


(a)式中、Bは、H、CH、C、OCH、OC、およびOHから選択され、ならびに
(b)式中、Aは、式−CO−Dで表される部位であって、式中、Dは、以下の部位から選択される:
(i)−NR、式中、RおよびRは、独立して、H、ならびにC〜Cの直鎖または分枝鎖の、脂肪族、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール脂肪族およびシクロアルキル基、または、RおよびRは、それらが結合する窒素原子とともに、随意に置換される、5員環または6員環の複素環の一部を形成する、
(ii)−NHCHCOOCHCH、−NHCHCONH、−NHCHCHOCH、−NHCHCHOH、−NHCHCH(OH)CHOH、
ならびに
(iii)からなる群から選択される部位、
で表される化合物の少なくとも1つを、皮膚または粘膜に適用することによる、前記方法。かかる化合物は、さまざまな製品、例えば、食材、菓子、タバコ生成物、飲料、化粧品、歯磨き剤、医薬製剤、うがい薬およびトイレタリー用品などにおいて、清涼効果を提供するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清涼化合物(cooling compounds)に関する。
【背景技術】
【0002】
清涼化合物、つまり体の皮膚または粘膜に清涼感(cooling sensation)を賦与する化学化合物は、業界で周知であり、およびさまざまな製品、たとえば、食材、菓子、タバコ製品、飲料、化粧品、歯磨き剤、医薬製剤、うがい薬およびトイレタリー用品などに広く用いられている。
【0003】
大きな成功を享受してきた清涼化合物の一類は、N−置換 p−メンタンカルボキサミドからなる。
【発明の開示】
【0004】
現在、ある化合物が、驚くほど強く、また長期持続もする清涼効果(cooling effect)を呈することが、見出されている。それゆえ、清涼効果を皮膚または粘膜に提供する方法であって、式I:
【化1】

【0005】
(a)式中、Bは、H、CH、C、OCH、OC、およびOHから選択され、ならびに
(b)式中、Aは、式−CO−Dで表される部位であって、式中、Dは、以下の部位から選択される:
(i)−NR、式中、RおよびRは、独立して、H、ならびにC〜Cの直鎖または分枝鎖の、脂肪族、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール脂肪族およびシクロアルキル基、または、RおよびRは、それらが結合する窒素原子とともに、随意に置換される、5員環または6員環の複素環の一部を形成する、
(ii)−NHCHCOOCHCH、−NHCHCONH、−NHCHCHOCH、−NHCHCHOH、−NHCHCH(OH)CHOH、
ならびに
【0006】
(iii)
【化2】

からなる群から選択される部位、
で表される化合物の少なくとも1つを、皮膚または粘膜に適用することを含む、前記方法を提供する。
【0007】
清涼効果を皮膚または粘膜に提供する製品であって、式I:
【化3】

【0008】
(a)式中、Bは、H、CH、C、OCH、OC、およびOHから選択され、ならびに
(b)式中、Aは、式−CO−Dで表される部位であって、式中、Dは、以下の部位から選択される:
(i)−NR、式中、RおよびRは、独立して、H、ならびにC〜Cの直鎖または分枝鎖の、脂肪族、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール脂肪族およびシクロアルキル基、または、RおよびRは、それらが結合する窒素原子とともに、随意に置換される、5員環または6員環の複素環の一部を形成する、
(ii)−NHCHCOOCHCH、−NHCHCONH、−NHCHCHOCH、−NHCHCHOH、−NHCHCH(OH)CHOH、
ならびに
【0009】
(iii)
【化4】

からなる群から選択される部位、
で表される化合物を少なくとも1つ含む、前記製品を提供する。
【0010】
式I:
【化5】

【0011】
(a)式中、Bは、H、CH、C、OCH、OC、およびOHから選択され、ならびに
(b)式中、Aは、式−CO−Dで表される部位であって、式中、Dは、以下の部位から選択される:
(i)−NR、式中、RおよびRは、独立して、H、ならびにC〜Cの直鎖または分枝鎖の、脂肪族、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール脂肪族およびシクロアルキル基、または、BがHであり、およびAが−CONHである場合に、Aがフェニル環の2位または6位に結合するという条件において、RおよびRは、それらが結合する窒素原子とともに、随意に置換される、5員環または6員環の複素環の一部を形成する、
(ii)−NHCHCOOCHCH、−NHCHCONH、−NHCHCHOCH、−NHCHCHOH、−NHCHCH(OH)CHOH、
ならびに
【0012】
(iii)
【化6】

からなる群から選択される部位、
で表される化合物を提供する。
【0013】
ある態様によると:
− Aは−CONHである、ならびに
− Aは4位にあり、およびAは−CONHRであり、式中、Rは、C〜Cの直鎖または分枝鎖の、脂肪族、アルコキシアルキルまたはヒドロキシアルキル部位から選択される。
【0014】
他の態様によると:
− Aは−CONHである、
− Aは4位にあり、およびAは−CONHRであり、式中、Rは、C〜Cの直鎖または分枝鎖の、脂肪族、アルコキシアルキルまたはヒドロキシアルキル部位から選択される、ならびに
− BはHである。
【0015】
かかる化合物を簡便に生成し、および業界で認められる方法で分離してもよい。
上記の化合物のいくつかは、さまざまな立体化学的な形態で入手可能である。上述の化合物の全ての可能な立体化学的な形態を、本発明の範囲に包含する。
【0016】
それらを、先行技術の他の化合物と、驚くべきほど高い清涼効果(公知化合物のものより最大10倍高い)および清涼効果の持続期間で区別し、それにより、多様多種の製品においてその魅力を付加する。
例えば、少人数の被験者が清涼化合物のさまざまな溶液の味見をし、およびどの溶液が、2ppmのメントールの溶液の清涼強度(cooling intensity)と同等、またはわずかに高い清涼強度を有するかを指し示すように依頼した。結果を表1に示す。
【0017】
表1 清涼強度および持続期間に関する実験
【表1】

【0018】
表1より、式Iで表される化合物は、対照清涼化合物であるメントールよりも、最大10倍強いということが分かる。式Iで表される化合物はまた、先行技術での最高の清涼化合物であるWS−3よりもずっと強い。
【0019】
提供する化合物を、口または皮膚に適用し清涼感を与える、多様多種の製品で用いてもよい。かかる製品としては、限定こそしないが、食材、菓子、タバコ製品、飲料、化粧品、歯磨き剤、医薬製剤、うがい薬またはトイレタリー用品が挙げられる。「適用」に関しては、接触させる任意の形態を意味し、例えば、経口摂取、タバコ製品の場合は吸入を意味する。皮膚への適用の場合、例えば、化合物を、クリームまたは軟膏、スプレー可能な組成物、または同類の組成物中に化合物を含むことによってでもよい。それゆえ、清涼効果を皮膚または粘膜へと提供する製品をまた提供し、その製品は上記の少なくとも1つの化合物を含む。
【0020】
さらなる態様において、新規の化合物を提供する。それゆえ、式I:
【化7】

【0021】
(a)式中、Bは、H、CH、C、OCH、OC、およびOHから選択され、ならびに
(b)式中、Aは、式−CO−Dで表される部位であって、式中、Dは、以下の部位から選択される:
(i)−NR、式中、RおよびRは、独立して、H、ならびにC〜Cの直鎖または分枝鎖の、脂肪族、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール脂肪族およびシクロアルキル基、または、BがHであり、およびAが−CONHである場合に、Aがフェニル環の2位または6位に結合するという条件において、RおよびRは、それらが結合する窒素原子とともに、随意に置換される、5員環または6員環の複素環の一部を形成する、
(ii)−NHCHCOOCHCH、−NHCHCONH、−NHCHCHOCH、−NHCHCHOH、−NHCHCH(OH)CHOH、
ならびに
【0022】
(iii)
【化8】

からなる群から選択される部位、
で表される化合物を提供する。
【0023】
実験
以下に一覧するものは非限定の例であり、さまざまな態様を記載する。
【0024】
例1
N−(4−カルボキサミドフェニル)p−メンタンカルボキサミドの調製
4Lのフラスコ中で、256gのp−アミノベンズアミドおよび156gのピリジンを、2.5Lのトルエン中に溶解した。激しい攪拌下で、586gの塩化p−メンタンカルボキシルの〜65%でのトルエン中の溶液を添加した。ベージュ色の懸濁液を一晩室温で激しく攪拌した。かかる懸濁液をろ過して、固体物をMTBE(tert−ブチルメチルエーテル)および温水で洗浄した。生成物をエタノール中で再結晶し、以下の分光学的特性を有する、所望の生成物の290gの白色結晶を得た:
【0025】
【表2】

39ppm近辺の1つのピークは、DMSOの信号中に消失した。
【0026】
例2
N−(3−カルボキサミドフェニル)p−メンタンカルボキサミドの調製
例1に記載のものと同様の調製により、以下の分光学的特性を有する所望の生成物を得た:
【表3】

【0027】
例3
N−(2−カルボキサミドフェニル)p−メンタンカルボキサミドの調製
例1に記載のものと同様の調製により、以下の分光学的特性を有する所望の生成物を得た:
【表4】

【0028】
例4
4−[p−メンタンカルボニル−アミノ]−N−(2−メトキシ−エチル)−ベンズアミドの調製
例1に記載のものと同様の調製により、以下の分光学的特性を有する所望の生成物を得た:
【表5】

【0029】
例5
N−(4−(4−メチルピペラジン−1−カルボニル)フェニル)p−メンタンカルボキサミドの調製
例1に記載のものと同様の調製により、以下の分光学的特性を有する所望の生成物を得た:
【表6】

【0030】
例6
チューイングガムにおける適用
【表7】

【0031】
全ての材料を予熱したガム基礎剤中に混合した。かかる混合物を厚膜上に広げ、冷却して、棒状に切断した。被験者が15分間、板ガムをそしゃくし、吐き出した。そしゃくしたとき、気持ちの良い清涼感を口の全ての領域で感じた。吐き出すとき、かかる清涼感が極めて強くなり、数時間持続した。
【0032】
例7
練り歯磨きにおける適用
(表3)
不透明な歯磨き用のゲル 99.500 g
ペパーミントオイル中の
5%ゲルとしての例3の化合物 0.500g
【0033】
化学物質を歯磨き用のゲル中に混ぜ合わせ、歯磨き用のゲルの一部分を歯ブラシ上に付けて、被験者の歯をブラシした。口を水ですすぎ、そして、その水を吐き出した。被験者は極めて強い清涼感を口の全ての領域で感じた。清涼な知覚が数時間持続した。
【0034】
当然のことながら、ここに記載する1つまたは2つ以上の態様は単なる例示であり、当業者は、変形および修飾を、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、為しえるものである。かかる変形および修飾の全てを、上記の発明の範囲内に含めることを目的とする。さらに、開示される全ての態様は必ずしも選択的なものではなく、本発明のさまざまな態様を組み合わせ、所望の結果を提供してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清涼効果を皮膚または粘膜に提供する方法であって、式I:
【化1】

(a)式中、Bは、H、CH、C、OCH、OC、およびOHから選択され、ならびに
(b)式中、Aは、式−CO−Dで表される部位であって、式中、Dは、以下の部位から選択される:
(i)−NR、式中、RおよびRは、独立して、H、ならびにC〜Cの直鎖または分枝鎖の、脂肪族、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール脂肪族およびシクロアルキル基、または、RおよびRは、それらが結合する窒素原子とともに、随意に置換される、5員環または6員環の複素環の一部を形成する、
(ii)−NHCHCOOCHCH、−NHCHCONH、−NHCHCHOCH、−NHCHCHOH、−NHCHCH(OH)CHOH、
ならびに
(iii)
【化2】

からなる群から選択される部位、
で表される化合物の少なくとも1つを皮膚または粘膜に適用することを含む、前記方法。
【請求項2】
Aが、以下より選択される、請求項1に記載の方法:
− Aは−CONHである、ならびに
− Aは4位にあり、およびAは−CONHRであり、式中、Rは、C〜Cの直鎖または分枝鎖の、脂肪族、アルコキシアルキルまたはヒドロキシアルキル部位から選択される。
【請求項3】
BがHである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
清涼効果を皮膚または粘膜に提供する製品であって、式I:
【化3】

(a)式中、Bは、H、CH、C、OCH、OC、およびOHから選択され、ならびに
(b)式中、Aは、式−CO−Dで表される部位であって、式中、Dは、以下の部位から選択される:
(i)−NR、式中、RおよびRは、独立して、H、ならびにC〜Cの直鎖または分枝鎖の、脂肪族、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール脂肪族およびシクロアルキル基、または、RおよびRは、それらが結合する窒素原子とともに、随意に置換される、5員環または6員環の複素環の一部を形成する、
(ii)−NHCHCOOCHCH、−NHCHCONH、−NHCHCHOCH、−NHCHCHOH、−NHCHCH(OH)CHOH、
ならびに
(iii)
【化4】

からなる群から選択される部位、
で表される化合物を少なくとも1つ含む、前記製品。
【請求項5】
Aが、以下より選択される、請求項4に記載の製品:
− Aは−CONHである、ならびに
− Aは4位にあり、およびAは−CONHRであり、式中、Rは、C〜Cの直鎖または分枝鎖の、脂肪族、アルコキシアルキルまたはヒドロキシアルキル部位から選択される。
【請求項6】
BがHである、請求項5に記載の製品。
【請求項7】
製品が、食材、菓子、タバコ製品、飲料、化粧品、歯磨き剤、医薬製剤、うがい薬またはトイレタリー用品の少なくとも1つである、請求項4に記載の製品。
【請求項8】
式I:
【化5】

(a)式中、Bは、H、CH、C、OCH、OC、およびOHから選択され、ならびに
(b)式中、Aは、式−CO−Dで表される部位であって、式中、Dは、以下の部位から選択される:
(i)−NR、式中、RおよびRは、独立して、H、ならびにC〜Cの直鎖または分枝鎖の、脂肪族、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アリール脂肪族およびシクロアルキル基、または、BがHであり、およびAが−CONHである場合に、Aがフェニル環の2位または6位に結合するという条件において、RおよびRは、それらが結合する窒素原子とともに、随意に置換される、5員環または6員環の複素環の一部を形成する、
(ii)−NHCHCOOCHCH、−NHCHCONH、−NHCHCHOCH、−NHCHCHOH、−NHCHCH(OH)CHOH、
ならびに
(iii)
【化6】

からなる群から選択される部位、
で表される化合物。
【請求項9】
Aが、以下より選択される、請求項8に記載の化合物:
− Aは−CONHである、ならびに
− Aは4位にあり、およびAは−CONHRであり、式中、Rは、C〜Cの直鎖または分枝鎖の、脂肪族、アルコキシアルキルまたはヒドロキシアルキル部位から選択される。
【請求項10】
BがHである、請求項9に記載の化合物。

【公表番号】特表2009−501132(P2009−501132A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512666(P2008−512666)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000270
【国際公開番号】WO2006/125334
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】