説明

減圧容器および減圧処理装置

【課題】 容器の変形によるパーティクルの発生を確実に防止することが可能な減圧容器および減圧処理装置を提供する。
【解決手段】 ロードロック室20の内部空間を囲繞する容器本体21の上端面21aに形成された溝26内には、シール部材としてのOリング90が挿入され、その外側には、略L字形をした断面形状を有するスペーサー91が、その一部を溝26内に挿入し、L字形に屈曲した内角側の面を溝26の内壁面から容器本体21の上端面21aにかけて密着させた状態で配備される。スペーサー91によって、容器本体21と天板22を離間させることにより、ロードロック室20内が高真空状態にまで減圧された状態で天板22に撓みが生じても、容器本体21の内周側の角部21bと天板22との接触が回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧容器および減圧処理装置に関し、特に、液晶表示装置(LCD)やプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板等に対して減圧下でドライエッチングや成膜、搬送、位置合わせ等の減圧処理を施す際に使用される減圧容器および減圧処理装置に適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、LCD製造プロセスにおいては、被処理基板であるLCDガラス基板に対して、ドライエッチングやスパッタリング、CVD(化学気相成長)等の減圧処理が多用されている。
【0003】
このような減圧処理を行う減圧処理装置においては、減圧状態、例えば真空に保持されて上記処理を行う真空処理室に隣接して真空予備室が設けられており、被処理基板の搬入出時に真空処理室内の雰囲気変動を極力小さくする構造となっている。
【0004】
具体的には、例えば、大気中に配置されたカセットとエッチング処理等を行う真空処理室との間に、真空予備室として、大気側と真空側とのインターフェイスの役割を有するロードロック室が設けられている。このロードロック室では、被処理基板を通過させる都度、大気開放と、真空処理室と同等の高真空までの排気とが繰り返される。ロードロック室に用いる減圧容器では、構成部材の連結部位、例えば容器本体と蓋体との接合部分には、その気密性を確保するために、例えばOリングなどのシール部材を用いてシールされている。
【0005】
ところで、近時、LCDガラス基板に対する大型化の要求が強く、一辺が2mを超えるような大型基板も使用されており、このように巨大化した基板を収容して処理するため、減圧容器も大型化が進んでいる。減圧容器が大型化すると、真空時に減圧容器内外の圧力差により該減圧容器を構成する部材、例えば蓋体の撓み量も大きくなる。そして、この撓みによって、蓋体と容器本体との接合面の角度が変化すると、容器本体と蓋体とが直接接触し、両部材を構成する金属材料などによるパーティクルが発生する。特に、前記真空予備室のように真空状態と大気開放状態とが繰り返される場合には、蓋体の撓みとその回復によって、蓋体と容器本体との間が繰り返し摺接する結果、それらの一部が剥離したり、擦り取られたりするなどして、パーティクルがさらに発生しやすくなる。
【0006】
上記のような理由によるパーティクルの発生を防止する目的で、二つの容器構成部材(例えば容器本体と蓋体)の接合面におけるシール材より内側の部分に、減圧状態での撓み量を考慮して空隙を持たせた減圧容器が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−273095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の提案は、パーティクル抑制という点で優れた技術であるが、二つの容器構成部材の接合面に空隙を持たせるためには、いずれか片方の端面を切削加工などによって削り、段差を設ける必要があるため、減圧容器の製造工数が増加することや、容器が大型化するほど精度よく加工することが困難になるなどの加工上の制約があった。
【0008】
また、特許文献1の減圧容器の場合、シール材よりも外側では、二つの容器構成材が直接接触する構成であるため、減圧と大気開放を繰り返す間に、該外側部分が摺接し、パーティクルを発生させることも懸念される。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、容器の変形によるパーティクルの発生を確実に防止することが可能な減圧容器および減圧処理装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点は、容器内部を減圧可能に構成した減圧容器であって、
前記減圧容器を構成する一つの部材と他の部材との連結面の少なくとも一方側に溝を設け、該溝内にシール部材を配備することにより連結部の気密性を保つとともに、
前記溝内にその一部分が挿入されて前記シール部材と密着しつつ、前記溝外において前記一つの部材と他の部材との間に介在して離間させるスペーサーを配備したことを特徴とする、減圧容器を提供する。
【0011】
本発明の第2の観点は、容器内部を減圧可能に構成した減圧容器であって、
前記減圧容器を構成する複数の部材と、
前記複数の部材のうちの一つの部材と、該部材に連結される他の部材との連結面の少なくとも一方側に形成された溝と、
前記溝内に配備されたシール部材と、
前記溝内にその一部分が挿入されて前記シール部材と密着しつつ、前記溝外において前記一つの部材と他の部材との間に介在して離間させるスペーサーと、
を備えたことを特徴とする、減圧容器を提供する。
【0012】
上記第1の観点または第2の観点において、前記スペーサーを、前記減圧容器の内部からみて前記シール部材よりも外側に配備することが好ましい。また、前記スペーサーの断面は、略L字形をしていることが好ましい。また、前記シール部材は、断面が略三角形をしたOリングであることが好ましい。また、前記スペーサーおよび前記シール部材の密着面に、凹凸を形成することが好ましい。
【0013】
また、前記スペーサーは、前記シール部材よりも硬い材質で形成されていることが好ましい。この場合、前記スペーサーの硬度(JIS K6253 ショア硬さD)が、50〜70であることが好ましく、前記Oリングの硬度(JIS K6253 ショア硬さA)が、70〜90であることが好ましい。また、前記一つの部材と前記他の部材は、減圧容器本体と蓋体、または減圧容器本体と底板であることが好ましい。
【0014】
本発明の第3の観点は、被処理体に対して減圧処理を行なう減圧処理装置であって、
上記第1の観点または第2の観点の減圧容器を備えたことを特徴とする、減圧処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、減圧容器を構成する二つの部材の連結面の間に、シール部材と、このシール部材と密着しつつ両部材間に介在するスペーサーを配備することにより、気密性を保ちながら二つの部材を任意の間隔で離間させることができる。
従って、減圧容器内が真空状態に減圧された状態で容器構成部材に撓みが発生した場合でも、容器構成部材どうしの接触が回避される。よって、例えば、減圧容器内の圧力が真空と大気開放との間で繰り返されても、容器構成部材の接合部分の摩擦に起因するパーティクルが抑制される。
また、前記スペーサーを用いることにより、高精度の切削加工などを必要とせずに二つの容器構成部材を離間させることができるので、減圧容器の加工が容易であり、その加工工数も増加させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る真空処理装置の外観を示す斜視図、図2は、図1の真空処理装置の水平断面図、図3は、真空処理装置における真空予備室の縦断面図、図4は、真空予備室に配備された基板搬送装置の基板搬送機構の構成例を示す斜視図、である。
【0017】
本実施形態の真空処理装置100は、真空雰囲気でLCDガラス基板等の基板Gに対してプラズマエッチング処理や薄膜形成処理等の所望の真空処理を行う真空処理室10と、この真空処理室10に連設され、真空予備室として機能するロードロック室20と、真空処理室10とロードロック室20との間に設けられたゲートバルブ30と、ロードロック室20と外部の大気側搬送機構50とを隔てるゲートバルブ40を備えている。
【0018】
真空処理室10には、排気制御弁61を介して真空ポンプ60が接続されており、基板Gの所定の真空処理に必要な真空度までの真空排気が可能になっている。また、真空処理室10には、ガス制御弁11を介して処理ガス供給部12が接続されており、真空処理室10の内部を、所定圧力の処理ガス雰囲気を形成することが可能になっている。真空処理室10の内部には処理ステージ13が設けられ、そこに処理対象の基板Gが載置される。
【0019】
ロードロック室20には、排気制御弁62を介して真空ポンプ60が接続されており、真空処理室10と同等の真空度まで真空排気が可能になっている。
【0020】
ゲートバルブ30には、真空処理室10とロードロック室20とを連通させ、後述の基板搬送機構70に支持された基板Gが通過可能な大きさの開口部31と、この開口部31の開閉動作を行う弁体32が設けられている。
【0021】
ゲートバルブ40には、ロードロック室20と外部の大気側とを連通させ、前記大気側搬送機構50に支持された基板Gが通過可能な大きさの開口部41と、この開口部41の開閉動作を行う弁体42が設けられている。
【0022】
ロードロック室20は、アルミニウムなどの材質で形成され、該ロードロック室20の内部空間を囲繞する平面視矩形の容器本体21と、この容器本体21に上下から接合される天板22および底板23と、により構成されている。容器本体21の上端面と天板22との接合面、および容器本体21の下端面と底板23との接合面には、シール部24および25が配設され、連結部の気密性が確保されている。なお、シール部24および25の構成については後で詳しく説明する。
【0023】
ロードロック室20の内部には、直動式の基板搬送機構70が設けられている。この基板搬送機構70は、ロードロック室20の底部に固定されたベースプレート71と、このベースプレート71の上に多段に積層された第1のスライドプレート72、第2のスライドプレート73および基板支持台を兼ねた第3のスライドプレート74を備えている。これらベースプレート71および第1〜第3のスライドプレート74により基板搬送機構本体が構成される。ベースプレート71には、直上の第1のスライドプレート72を支持して水平方向に滑動自在に案内する一対のスライドレール71aと、スライドプレート72に水平方向の推力を与えてスライドレール71a上を往復動させるスライド駆動機構71bが設けられている。第1のスライドプレート72には、直上の第2のスライドプレート73を支持して水平方向に滑動自在に案内する一対のスライドレール72aと、スライドプレート73に水平方向の推力を与えてスライドレール72a上を往復動させるスライド駆動機構72bが設けられている。第2のスライドプレート73には、直上の第3のスライドプレート74を支持して水平方向に滑動自在に案内する一対のスライドレール73aと、スライドプレート74に水平方向の推力を与えてスライドレール73a上を往復動させるスライド駆動機構73bが設けられている。最上部の第3のスライドプレート74には、載置される基板Gの下面を支持する基板支持部として機能する略コ字形のスライドピック74aが設けられている。
【0024】
ロードロック室20の内部には基板受け渡し機構80が設けられている。基板受け渡し機構80は、基板搬送機構70を挟む位置に設けられたバッファプレート81および82と、このバッファプレート81および82を昇降させるバッファ昇降機構83および84と、ベースプレート71の底部中央に設けられた支持ピン85と、この支持ピン85を昇降させるピン昇降機構86とを備えている。そして、バッファプレート81および82と、バッファ昇降機構83および84とで第1支持部が構成され、支持ピン85と、ピン昇降機構86とで第2支持部が構成される。
【0025】
基板受け渡し機構80は、基板搬送機構70の第3のスライドプレート74上のスライドピック74aに支持された基板Gの周辺部をバッファプレート81および82にて下方から支持して、当該スライドピック74aから基板Gを浮上させる動作、および大気側搬送機構50から受け取った基板Gをスライドピック74a上に降下させる動作等の基板受け渡し動作を行う。また、この際に、支持ピン85により基板Gの中央を支持する。
【0026】
上述の基板搬送機構70を構成するベースプレート71、第1〜第3のスライドプレート72〜74の中央部には、前記支持ピン85が通過可能なピン貫通孔71c、ピン貫通孔72c,ピン貫通孔73c,ピン貫通孔74cがそれぞれ設けられている。そして、第1〜第3のスライドプレート72〜74がロードロック室20内に引き込まれた積層状態(縮退状態)において、ピン貫通孔71cおよびピン貫通孔72c〜74cが垂直方向に連通状態となり、このピン貫通孔71c,72c〜74cを通過することで、支持ピン85は、最上部のスライドプレート74の上に突出して、当該スライドプレート74に載置された基板Gの底部中央(本実施形態の場合には、一例として基板Gのほぼ重心位置)に当接して支持する動作が可能になっている。すなわち、支持ピン85は、ロードロック室20内における上述の基板受け渡し動作におけるバッファプレート81および82と同期して昇降し、周辺部をバッファプレート81および82にて支持された基板Gの中央部が自重で下方に撓まないように水平に支持する働きをする。
【0027】
大気側搬送機構50は、旋回および伸縮が可能な搬送アーム51を備えており、複数の基板Gが収納された基板ラック55から未処理の1枚の基板Gを取り出し、ゲートバルブ40を介してロードロック室20内の基板搬送機構70に渡す動作、および処理済の基板Gを、ロードロック室20内の基板搬送機構70から受け取ってゲートバルブ40を介して大気側に取り出し、基板ラック55に収納する動作を行う。搬送アーム51には、基板Gのロードロック室20内における受け渡しに際して、支持ピン85と干渉しないように切欠部52が設けられている。
【0028】
次に、真空処理装置100における基板処理の動作について説明する。
まず、基板搬送機構70は、ロードロック室20内に縮退状態とされ、ゲートバルブ30の弁体32が閉じられ、真空処理室10の内部は真空ポンプ60にて必要な真空度に排気される。
【0029】
大気側搬送機構50は、搬送アーム51にて、未処理の基板Gを基板ラック55から取り出し、ゲートバルブ40の開口部41を通じてロードロック室20内に搬入し、基板搬送機構70の第3のスライドプレート74の直上部に位置決めする。
【0030】
次に、バッファプレート81および82が上昇して基板Gの周辺部を両側から持ち上げるとともに、支持ピン85がピン貫通孔71c〜74cを通過して上昇し、搬送アーム51の切欠部52を通過して基板Gの底部中央に当接して持ち上げることで、図3に示されるように、基板Gは撓むことなくほぼ水平な姿勢で搬送アーム51から浮上する。
【0031】
その後、搬送アーム51を大気側に引き抜いてロードロック室20の外部に退避させた後、バッファプレート81および82、支持ピン85を下降させることで、基板Gは、基板搬送機構70における第3のスライドプレート74のスライドピック74a上に移行して載置される。
【0032】
そして、ゲートバルブ40の弁体42を閉じてロードロック室20を密閉状態にし、排気制御弁62を開いて真空処理室10と同程度の真空度まで排気した後、ゲートバルブ30の弁体32を開く。この時、ロードロック室20は真空排気されているため、真空処理室10の真空度や雰囲気が損なわれることはない。そして、ゲートバルブ30の開口部31を通じて、基板搬送機構70の第1〜第3のスライドプレート72〜74を真空処理室10の内部に向けて多段に伸長させ、基板Gを真空処理室10の処理ステージ13の直上部に搬入し、処理ステージ13に設けられた図示しない突き上げピン等を介して処理ステージ13上に載置する。その後、第1〜第3のスライドプレート72〜74はロードロック室20内に縮退して退避し、ゲートバルブ30の弁体32を閉じて、真空処理室10を密閉する。
【0033】
その後、密閉された真空処理室10内に、処理ガス供給部12から必要なガスを導入して処理ガス雰囲気を形成し、基板Gに必要な処理を施す。
【0034】
所定時間経過後、処理ガスの導入を停止して、ゲートバルブ30の弁体32を開き、ロードロック室20内の基板搬送機構70の第1〜第3のスライドプレート72〜74を真空処理室10の内部に多段に伸長させ、上述の搬入動作と逆の手順で、真空処理室10の処理済の基板Gを処理ステージ13上から第3のスライドプレート74のスライドピック74a上に移行させて第1〜第3のスライドプレート72〜74を縮退させ、ロードロック室20内に搬出した後、ゲートバルブ30の弁体32を閉じ、真空処理室10を密閉する。
【0035】
その後、ロードロック室20の排気を停止するとともに、Nガス等を導入して大気圧に近い圧力とし、バッファプレート81,82および支持ピン85を上昇させて、基板Gの周辺部および中央部を支持してほぼ水平な姿勢で浮上させたのち、ゲートバルブ40の弁体42を開いて、大気側搬送機構50の搬送アーム51を浮上した基板Gの下側に挿入し、その状態でバッファプレート81,82および支持ピン85を降下させることで、基板Gを搬送アーム51に移行させる。
【0036】
そして、搬送アーム51を大気側に引き出すことで、処理済の基板Gをロードロック室20から大気側に搬出し、基板ラック55に収納する。
【0037】
次に、ロードロック室20における容器本体21と天板22との接合部の封止構造について、図5〜図7を参照しながら説明する。図5は、ロードロック室20の天板22を取外した状態の概要を示す平面図、図6はそのVI-VI線矢視の要部断面図、図7は、容器本体21と天板22とを接合した状態の連結部位を示す要部拡大図である。なお、図7中、符号92は、容器本体21と天板22との接合に用いる連結具(ボルト)である。
【0038】
ロードロック室20の内部空間を囲繞する容器本体21の上端面21aには、溝26が形成されており、該溝26内には、シール部材としてのOリング90が挿入されている。また、ロードロック室20の室内に対してOリング90よりも外側(外周側)には、スペーサー91がその一部を溝26内に挿入した状態で配備されている。Oリング90およびスペーサー91としては、それぞれ一本の環状をした部材を使用してもよく、2本以上の分断された部材を隙間なく連続的に溝26内に配備して用いてもよい。
【0039】
Oリング90は、上方を頂点とし、底部が拡大した略三角形の断面形状を持つ異形Oリングである。Oリング90の形状は、溝26の内面形状への適合性と、溝26内に挿入されるスペーサー91との密着性を保てるように、拡大した底部を有する形状となっている。これによって、溝26から抜け難く、かつ十分なシール性を発揮できるようになっている。
【0040】
Oリング90は、その底部が溝26内に挿入された状態で、その頂部が容器本体21の上端面21aに対して所定量、例えば1.5〜2.0mm程度高くなるように配備されており、これにより容器本体21と天板22とを接合した際には、図7に示すように天板22によってOリング90が押しつぶされてシール機能を確実に発揮できるようになっている。Oリング90の材質としては、例えば硬度(JIS K 6253 ショア硬さA)が70〜90であるものを好適に使用することができる。より具体的には、例えば、上記硬度を有するフッ素ゴム[例えばバイトン、カルレッツ(いずれも商品名;デュポン社製)、シリコーン]などを挙げることができる。
【0041】
スペーサー91は、略L字形をした断面形状を有している。スペーサー91の断面をL字型とすることによって、スペーサー91の一端側(挿入部)を溝26内に挿入し、L字形に屈曲した内角側の面を溝26の内壁面から容器本体21の上端面21aにかけて密着させた状態で配備することが可能になり、溝26から抜け難い形状となっている。
【0042】
スペーサー91の溝26内に挿入される部分と反対側の部分(介在部)は、Oリング90の外側(外周側)を囲むように容器本体21の上端面21aに張り出して延在し、容器本体21と天板22との間に介在してその厚み分(図7において符号Dで示す)、例えば0.5〜1.0mmの間隔で両部材を離間させるように機能する。そして、Oリング90の外側に配備されたスペーサー91によって、容器本体21と天板22を離間させることにより、ロードロック室20内が高真空状態にまで減圧された状態で、図7中に破線で示すように天板22に撓みが生じても、容器本体21の内周側の角部21bと天板22との接触が回避される。従って、真空状態と大気開放状態とが繰り返されるロードロック室20において、容器本体21の内周側の角部21bと天板22とが擦り合わされることによって生じるアルミニウム粉などのパーティクルを防止できる。
【0043】
スペーサー91の材質としては、Oリング90よりも硬い材質、例えば、(JIS K6253 ショア硬さD)が、50〜70であるものを好適に使用することができる。また、スペーサー91に使用する材質の他の物性として、ロードロック室20の内部を真空にした際の真空差圧から、その際にスペーサー91に加わる力を考慮すると、圧縮強さ(JIS K6251)が11MPa以上である材質を選定することが好ましい。スペーサー91には、溝26のコーナー部(図5中、符号Rで示す)への装着時の十分な屈曲性を確保する観点から、伸び(JIS K6251)が300%以上の材質を用いることが好ましい。
以上のような物性を備えた材質として、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、高分子量ポリエチレン(PE)などを例示することができる。
【0044】
図8は、シール部24に配備されるOリングとスペーサーの別の実施形態を示している。本実施形態では、Oリング93とスペーサー94が互いに当接する部位に、それぞれ凹凸面93a,94aが形成されている。凹凸面93a,94aは、Oリング93とスペーサー94の摩擦抵抗を高め、両部材が滑って溝26内での位置がずれたり、溝26から抜け落ちたりすることを防止するように作用する。すなわち、凹凸面93a,94aは、Oリング93とスペーサー94との位置ずれを防止する、位置ずれ防止作用部として機能する。
【0045】
図9は、本発明の減圧容器の別の実施形態に関するものであり、容器本体21の上端面に段差を設けている。すなわち、Oリング90を配備した溝26よりも内側(内周側)の上端面21dを切削し、溝26の外側(外周側)の上端面21cよりも低く形成している。このように、スペーサー91を配備しつつ、容器本体21の上端面に段差を形成することによって、ロードロック室20の天板22の撓み量が大きくなっても、容器本体21の内周側に上端面21dと天板22との間隔Dを十分にとることができるので、角部21bと天板22との接触が回避される。また、同じ撓み量に対しては、相対的にスペーサー91の厚みDを小さくし、もしくは内周側の上端面21dの切削量を少なくすることができるので、Oリング90による気密性の確保をより確実なものとすることができる。
【0046】
以上、容器本体21と天板22との接合部におけるシール部24の構造について説明したが、容器本体21と底板23との接合部におけるシール部25の構造についても同様であるため説明を省略する。
【0047】
本発明の封止構造は、図1の真空処理装置100におけるロードロック室20のように基板搬送機構70を備えたものに限らず適用可能である。さらに本発明の封止構造は、真空と大気開放を繰り返すロードロック室に限らず、基板搬送機構を備え、主として真空状態で真空処理室への基板の搬送を行なう基板搬送室や真空処理室にも適用できる。本発明の封止構造を適用可能な基板搬送室およびロードロック室としては、例えば図10にその水平断面図を示すようなマルチチャンバータイプの真空処理装置200における搬送室220およびロードロック室230を例示できる。この真空処理装置200では、その中央部に搬送室220とロードロック室230とが連設されている。搬送室220の周囲には、3つのプロセスチャンバ210a,210b,210cが配設されている。搬送室220とロードロック室230との間、搬送室220と各プロセスチャンバ210a,210b,210cとの間、およびロードロック室230と外側の大気雰囲気とを連通する開口部には、これらの間を気密にシールし、かつ開閉可能に構成されたゲートバルブ222がそれぞれ介挿されている。
【0048】
ロードロック室230の外側には、2つのカセットインデクサ241が設けられており、その上にそれぞれ基板Gを収容するカセット240が載置されている。これらカセット240の一方には、例えば未処理基板を収容し、他方には処理済み基板を収容できる。これらカセット240は、図示しない昇降機構により昇降可能となっている。
【0049】
これら2つのカセット240の間には、支持台244上に搬送機構243が設けられており、この搬送機構243は上下2段に設けられたピック245,246、ならびにこれらを一体的に進出退避および回転可能に支持するベース247を具備している。
【0050】
真空処理室であるプロセスチャンバ210a,210b,210cは、その内部空間が所定の減圧雰囲気に保持されることが可能であり、その内部でプラズマ処理、例えばエッチング処理やアッシング処理が行なわれる。このように3つのプロセスチャンバを有しているため、例えばそのうち2つのプロセスチャンバをエッチング処理室として構成し、残りの1つのプロセスチャンバをアッシング処理室として構成したり、3つのプロセスチャンバ全てを、同一の処理を行なうエッチング処理室やアッシグ処理室として構成することができる。なお、プロセスチャンバの数は3つに限らず、4つ以上であってもよい。
【0051】
搬送室220は、プロセスチャンバ210a,210b,210と同様に所定の減圧雰囲気に保持することが可能であり、その中には、搬送装置250が配設されている。そして、この搬送装置250により、ロードロック室230および3つのプロセスチャンバ210a,210b,210cの間で基板Gが搬送される。
【0052】
ロードロック室230は、各プロセスチャンバ210および搬送室220と同様に所定の減圧雰囲気に保持することが可能である。また、ロードロック室230は、大気雰囲気にあるカセット240と減圧雰囲気のプロセスチャンバ210a,210b,210cとの間で基板Gの授受を行うためのものであり、大気雰囲気と減圧雰囲気とを繰り返す関係上、極力その内容積が小さく構成されている。
【0053】
ロードロック室230は基板収容部231が上下2段に設けられており(上段のみ図示)、各基板収容部231には、基板Gを支持する複数のバッファ232が設けられ、これらバッファ232の間には、搬送アームの逃げ溝232aが形成されている。また、ロードロック室230内には、矩形状の基板Gの互いに対向する角部付近において位置合わせを行なうポジショナー233が設けられている。
【0054】
説明は省略するが、以上のような構成の搬送室220およびロードロック室230においても、例えば天板または底板と容器本体との接合部分に、図5〜図9と同様の封止構造を適用することができる。そして、搬送室220およびロードロック室230を構成する容器構成部材どうしの摩擦によるパーティクルの発生を防止することができる。
【0055】
また、本発明は上記実施形態に限定されることなく本発明の思想の範囲内で種々変形が可能である。例えば、基板としては、LCD用基板にかぎらず、他のFPD用基板や半導体ウエハなどにも適用できる。ここで、他のFPD用基板としては、例えば発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、蛍光表示管(Vacuum Fluorescent Display;VFD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等に用いる基板が例示される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、FPD等を製造するための基板を収容する減圧容器および前記基板を処理する減圧処理装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態に係る真空処理装置の外観を示す斜視図。
【図2】図1の真空処理装置の水平断面図。
【図3】図1の真空処理装置におけるロードロック室の縦断面図。
【図4】基板搬送機構の構成例を示す斜視図。
【図5】天板を取外した状態のロードロック室の平面図。
【図6】図5のVI-VI線矢視の要部断面図。
【図7】ロードロック室の本体と天板との連結部位を示す要部断面図。
【図8】シール部の別の実施形態を説明するための図面。
【図9】別の実施形態に係るロードロック室の本体と天板との連結部位を示す要部断面図。
【図10】本発明の第2実施形態に係る真空処理装置の水平断面図。
【符号の説明】
【0058】
10…真空処理室
20…ロードロック室
21…本体
22…天板
23…底板
30…ゲートバルブ
40…ゲートバルブ
50…大気側搬送機構
51…搬送アーム
52…切欠部
55…基板ラック
60…真空ポンプ
70…基板搬送機構
70a…スライドモータ
71…ベースプレート
71c…ピン貫通孔
72〜74…第1〜第3のスライドプレート
72c〜74c…ピン貫通孔
80…基板受け渡し機構
81,82…バッファプレート
83,84…バッファ昇降機構
85…支持ピン
86…ピン昇降機構
90,93…Oリング
91,94…スペーサー
100,200…真空処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内部を減圧可能に構成した減圧容器であって、
前記減圧容器を構成する一つの部材と他の部材との連結面の少なくとも一方側に溝を設け、該溝内にシール部材を配備することにより連結部の気密性を保つとともに、
前記溝内にその一部分が挿入されて前記シール部材と密着しつつ、前記溝外において前記一つの部材と他の部材との間に介在して離間させるスペーサーを配備したことを特徴とする、減圧容器。
【請求項2】
容器内部を減圧可能に構成した減圧容器であって、
前記減圧容器を構成する複数の部材と、
前記複数の部材のうちの一つの部材と、該部材に連結される他の部材との連結面の少なくとも一方側に形成された溝と、
前記溝内に配備されたシール部材と、
前記溝内にその一部分が挿入されて前記シール部材と密着しつつ、前記溝外において前記一つの部材と他の部材との間に介在して離間させるスペーサーと、
を備えたことを特徴とする、減圧容器。
【請求項3】
前記スペーサーを、前記減圧容器の内部からみて前記シール部材よりも外側に配備したことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の減圧容器。
【請求項4】
前記スペーサーの断面は、略L字形をしていることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の減圧容器。
【請求項5】
前記シール部材は、断面が略三角形をしたOリングであることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の減圧容器。
【請求項6】
前記スペーサーおよび前記シール部材の密着面に、凹凸を形成したことを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の減圧容器。
【請求項7】
前記スペーサーは、前記シール部材よりも硬い材質で形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の減圧容器。
【請求項8】
前記スペーサーの硬度(JIS K6253 ショア硬さD)が、50〜70であることを特徴とする、請求項7に記載の減圧容器。
【請求項9】
前記Oリングの硬度(JIS K6253 ショア硬さA)が、70〜90であることを特徴とする、請求項7または請求項8に記載の減圧容器。
【請求項10】
前記一つの部材と前記他の部材は、減圧容器本体と蓋体、または減圧容器本体と底板であることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の減圧容器。
【請求項11】
被処理体に対して減圧処理を行なう減圧処理装置であって、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載された減圧容器を備えたことを特徴とする、減圧処理装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−187289(P2007−187289A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7330(P2006−7330)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】