説明

温度補償型圧電発振器

【課題】起動時の発熱による初期周波数ドリフトを低減させる温度補償型圧電発振器を提供する。
【解決手段】温度補償型圧電発振器は、圧電振動素子搭載部を有した凹部、及び外部に形成された表面実装用電極を備えたパッケージ(容器)と、パッケージを閉止するリッド(蓋部材)と、発振回路及び温度補償回路を集積化したICチップ1と、を備えた圧電発振器であって、ICチップ1は、シリコン基板(チップ本体)3と、シリコン基板3の一面に形成されたIC電極2と、この一面の反対面に形成された放熱板(放熱用導体膜)5と、を備え、シリコン基板3のグランド電位部と放熱板5とが少なくとも1つ以上のVIAホール4を介して接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度補償型圧電発振器(TCXO)に関し、さらに詳しくは、表面実装用の
温度補償型圧電発振器において、起動時の発熱による初期周波数ドリフトを低減させる温
度補償型圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面実装用の温度補償型圧電発振器は、小型、軽量であって温度変化に対する周波数安
定度が高いことから、特に温度環境が厳しい携帯電話等の周波数源として内蔵されている
。この温度補償型圧電発振器の一つとして、図6に示すように、温度補償回路51及び発
振回路54をICチップ50内に収容して圧電振動素子53とともに密封した温度補償型
圧電発振器が知られている。
しかしながら昨今、電源印加から周波数が安定するまでの、時間に対する周波数変化(
周波数ドリフト)の規格が厳しくなる中、仕様を満足することが難しくなっている。これ
は、温度補償型圧電発振器の起動時すなわち電源印加直後には、ICチップ50内に生ず
る回路電流に起因した発熱、特に発振用増幅器や緩衝増幅器等の能動素子に流れる電流に
よって、ICチップ50自体の温度が変動する。この熱は圧電振動素子53にも配線やパ
ッケージを伝って、遅れて伝達されることになる。本来、温度補償型圧電発振器はICチ
ップ50の温度と圧電振動子53の温度が平衡状態であるときが定常状態である。
温度補償型圧電発振器は、圧電振動子が持つ温度特性を、補償電圧発生回路が打ち消す
ような電圧を生成し、それを可変容量素子に印加することで、発振器の出力(Vout)
周波数を温度に対して変化の小さな安定した値にすることができる。
ICチップ50に集積化された補償電圧発生回路51内の温度センサーは、ICの温度
に応じた補償電圧Vcを可変容量素子52に印加する。ここで電源印加直後の動きとして
例えば、周囲温度が25℃であれば、圧電振動素子53は25℃であるのに対し、温度セ
ンサーはIC自身の発熱によりこれより高い例えば26℃を検出する。そして、補償電圧
発生回路51は検出温度26℃に基づく補償電圧Vcを可変容量素子52に印加する。発
振回路は補償電圧に追随して周波数が変化する構成になっていることから、その間、補償
電圧の変動により、発振周波数が変動することになる。また圧電振動子にはICの熱が時
間差をもって伝達され振動子の温度が遅れて上昇する。これによっても圧電振動子の温度
特性により、発振回路の周波数が変化することになる。やがて熱的平衡状態が保たれると
周波数は安定する。このように電源印加直後は、IC自身の発熱による補償電圧変化と、
それが圧電素子に伝達されることによる圧電素子の周波数変化の、双方により発振周波数
fが時間に対して変化をすることになる。
周波数ドリフトを抑えるためには、ICと圧電素子の温度差を完全になくすか、ICの
発熱を抑える方法がある。前者での対応はICに直接圧電素子を実装するなど考えられる
が、実用化するには課題が多い。後者についてはいくつか既に検討されている。
【0003】
従来技術として特許文献1には、ICチップの発熱源が発振回路とバッファ回路である
という前提のもと、温度センサーと発振回路、バッファ回路の距離を離してレイアウトし
て発熱の影響を抑えた温度補償型水晶発振器について開示されている。また、特許文献2
には、ICチップの発熱を抑えて放熱性を高めるために、ICチップの側面に熱伝導の良
い接着剤を塗布した構造を有する表面実装用の温度補償水晶発振器について開示されてい
る。また、特許文献3には、ICチップの発熱を抑えるためにICチップの裏面に放熱板
を接着した構造を有する表面実装用の温度補償水晶発振器について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−67967公報
【特許文献2】特開2007−295159公報
【特許文献3】特開2007−324851公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術は、ICチップが小型になると温
度センサーと発振回路、バッファ回路を離す距離にも限度があり、それほど発熱の影響を
軽減する効果が得られないといった問題がある。また、特許文献2及び3に開示されてい
る従来技術は、構造的に複雑となるため、それに伴って製造工程が複雑となり、小型化す
ると更に製造が困難になるといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、ICチップの回路面と反対側の面
に放熱板を設け、回路内のグランド電位部と放熱板とをVIAホールを介して接続し、電
源印加時に発生するICチップ内の発熱を放熱板で放熱することにより、起動時の発熱に
よる初期周波数ドリフトを低減させる温度補償型圧電発振器を提供することを目的とする

【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]圧電振動素子搭載部を有した凹部、及び外部に形成された表面実装用電極
を備えた容器と、該容器を閉止する蓋部材と、発振回路及び温度補償回路を集積化したI
Cチップと、を備えた温度補償型圧電発振器であって、前記ICチップは、チップ本体と
、該チップ本体の一面に形成されたIC電極と、該一面の反対面に形成された放熱用導体
膜と、を備え、前記チップ本体のグランド電位部と前記放熱用導体膜とが少なくとも1つ
以上のVIAホールを介して接続されていることを特徴とする。
【0008】
温度補償型圧電発振器の起動時には、ICチップ内に生ずる回路電流に起因した発熱、
特に発振用増幅器や緩衝増幅器等の能動素子による発熱によって、ICチップ自体の温度
が周囲温度よりも高くなる。その結果、起動時に周波数ドリフトという現象が発生する。
この原因は、ICチップと圧電振動素子の温度の立ち上がりが異なるために発生する現象
である。即ち、ICチップの方が温度の立ち上がりが早いため、ICチップ内の温度セン
サーが周囲温度より高い温度データに基づいて発振周波数を補正しようとするためである
。言い換えると、起動時にICチップと圧電振動素子の温度差を可能な限り少なくするか
、またはICの発熱量を抑えることによって、周波数ドリフトを低減することができる。
そこで本発明では、ICチップの発熱量を抑えて、圧電振動素子との温度差を小さくする
ことで周波数ドリフトを低減するものであり、ICに放熱用導体膜を備えてICチップ内
で発生した熱を放熱するものである。これにより、起動時の発熱による初期周波数ドリフ
トを低減させることができる。
【0009】
[適用例2]前記容器の凹部は、内壁に前記圧電振動素子搭載部を有すると共に内底部
にICチップ搭載部を有し、該ICチップ搭載部に前記ICチップの放熱用導体膜を接触
させて搭載したことを特徴とする。
【0010】
ICチップがワイヤーボンディング型の場合、IC電極を備えた一面が上向きとなる。
その結果、放熱用導体膜を備えた面は下向きとなるので、必然的に放熱用導体膜は、IC
チップ搭載部の内底部と接触させて搭載される。そしてIC電極にバンプを形成してボン
ディングワイヤーによりICチップ搭載部の配線パターンと接続する。これにより、放熱
用導体膜から発生した熱がICチップ搭載部の内底部から放熱され、放熱効果を高めるこ
とができる。
【0011】
[適用例3]前記容器は、前記凹部と、該凹部の底板によって隔てられて配置されたI
Cチップ収容空所と、を備え、該ICチップ収容空所の内底面又は天井面に前記ICチッ
プの放熱用導体膜を接触させて搭載したことを特徴とする。
【0012】
圧電振動素子がICチップから発生する熱の影響を低減するために、本発明では、圧電
振動素子を搭載した容器とICチップ収容空所とを別体として2段構造とし、ICチップ
収容空所の内底面又は天井面にICチップの放熱用導体膜を接触させて搭載する。これに
より、ICチップから発生する熱が直接圧電振動素子に伝達するのを防止することができ
る。
【0013】
[適用例4]前記容器、前記圧電振動素子搭載部に搭載した圧電振動素子、及び前記凹
部を閉止する前記蓋部材を備えた圧電振動子と、前記ICチップと、該圧電振動子及び該
ICチップを近接配置した状態で前記表面実装用電極及び前記IC電極を配線パターンと
接続したプリント配線基板と、を備え、 前記圧電振動子と前記ICチップをモールド樹
脂により被覆一体化したことを特徴とする。
【0014】
圧電振動素子搭載部とICチップ収容空所を縦方向に構成すると、圧電発振器全体の高
さが高くなってしまう。そこで本発明では、プリント配線基板上に圧電振動子とICチッ
プを並行に実装し、圧電振動子とICチップをモールド樹脂により被覆一体化する。これ
により、圧電発振器の高さ方向を低く構成することができ、且つ圧電振動子とICチップ
を外部環境から保護することができる。
【0015】
[適用例5]前記ICチップを前記プリント配線基板にフリップチップ実装した場合、
前記ICチップの放熱用導体膜に接触するように該ICチップを覆う金属ケースを備えた
ことを特徴とする。
【0016】
ICチップをプリント配線基板にフリップチップ実装した場合、IC電極を備えた一面
が下向きとなる。その結果、放熱用導体膜を備えた面は上向きとなるので、必然的に放熱
用導体膜は、何処とも接触しない状態で、放熱用導体膜から発生した熱は空気を介して放
熱される。しかし、これだけでは放熱の効率が良くないので、本発明ではICチップを覆
う金属性のケースを設け、この金属ケースに放熱用導体膜を密着させる。これにより、放
熱用導体膜から発生した熱が金属ケースを介して放熱され、放熱効率を高めることができ
る。
【0017】
[適用例6]前記放熱用導体膜は、導電性接着剤又は金属ペーストにより前記ICチッ
プ収容空所の内底面又は天井面又は前記金属性のケースと接着されることを特徴とする。
【0018】
放熱用導体膜は、アルミ又は銅等の熱伝導率が比較的高い金属により構成される。しか
し、放熱用導体膜から発生した熱をICチップ収容空所の内底面や天井面又は金属ケース
に密着させても、平面性が悪いと接触面での熱の伝達効率が悪くなる。そこで本発明では
、接触面に導電性接着剤又は金属ペーストを塗布する。これにより、接触性を高めて更に
放熱効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の構造を示す断面図、(b)は本発明の第2の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の構造を示す断面図、(c)、(d)は本発明の第3の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るICチップの構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は裏面から見た平面図、(c)は裏面から見た他の平面図である。
【図3】図2(a)のA部を拡大した図である。
【図4】ICチップをパッケージに実装した状態を示す図であり、(a)はICチップをボンディングワイヤーによりパッケージに実装した場合、(b)はICチップをパッケージにフリップチップ実装した場合を示す図である。
【図5】起動時の圧電発振器のICチップと圧電素子の温度の立ち上がりを示す図である。
【図6】一般的な温度補償型圧電発振器の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記
載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限
り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0021】
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の構造を示す断面図
である。この温度補償型圧電発振器(以下、単に圧電発振器と呼ぶ)40は、圧電振動素
子搭載部を有した凹部27、及び外部に形成された表面実装用電極23を備えたパッケー
ジ(容器)12と、パッケージ12を閉止するリッド(蓋部材)20と、発振回路54及
び温度補償回路51を集積化したICチップ1と、を備えた圧電発振器40であって、I
Cチップ1は、シリコン基板(チップ本体)3と、シリコン基板3の一面に形成されたI
C電極2と、この一面の反対面に形成された放熱板(放熱用導体膜)5と、を備え、シリ
コン基板3のグランド電位部と放熱板5とが少なくとも1つ以上のVIAホール4を介し
て接続されている(詳細は後述する)。尚、圧電振動素子21とICチップ1を接続する
ためにパッケージ12には配線パターンが形成されている。また、ICチップ1と表面実
装用電極23もパッケージ12に形成された配線パターンにより接続されている。
即ち、圧電発振器の起動時(図5の電源ON時)には、ICチップ1内に生ずる回路電
流に起因した発熱、特に発振用増幅器や緩衝増幅器等の能動素子による発熱によって、I
Cチップ1自体の温度が周囲温度よりも高くなる。その結果、起動時に周波数ドリフトと
いう現象が発生する。この原因は、ICチップ1と圧電振動素子21の温度の立ち上がり
が異なるために発生する現象である(図5の時間tだけXtalの発熱が遅れる)。即ち
、ICチップ1の方が温度の立ち上がりが早いため、ICチップ1内の温度センサーが周
囲温度より高い温度データに基づいて発振周波数を補正しようとするためである。言い換
えると、起動時にICチップ1と圧電振動素子21の温度差を可能な限り少なくするか、
またはICの発熱量を抑えることによって、周波数ドリフトを低減することができる。そ
こで本実施形態では、ICチップ1の発熱量を抑えて、圧電振動素子21との温度差を小
さくすることで周波数ドリフトを低減するものであり、ICに放熱板5を備えてICチッ
プ1内で発生した熱を放熱するものである。これにより、起動時の発熱による初期周波数
ドリフトを低減させることができる。
【0022】
また、パッケージ12の凹部27は、内壁に圧電振動素子搭載部を有すると共に内底部
12aにICチップ搭載部を有し、このICチップ搭載部にICチップ1の放熱板5を接
触させて搭載した。即ち、ICチップ1がワイヤーボンディング型の場合、IC電極2を
備えた一面が上向きとなる。その結果、放熱板5を備えた面は下向きとなるので、必然的
に放熱板5は、ICチップ搭載部の内底部12aと接触させて搭載される。そしてIC電
極2にバンプを形成してボンディングワイヤー10によりICチップ搭載部の配線パター
ンと接続する。これにより、放熱板5から発生した熱がICチップ搭載部の内底部12a
から放熱され、放熱効果を高めることができる。
【0023】
図1(b)は本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器の構造を示す断面図である。同
じ構成要素には図1(a)と同じ参照番号を付して説明する。この圧電発振器41は、圧
電振動素子搭載部25と、凹部27と、凹部27の底板を介して下方に配置されたICチ
ップ収容空所24と、を備え、ICチップ収容空所24の内底面又は天井面にICチップ
1の放熱板5を接触させて搭載した。即ち、圧電振動素子21がICチップ1から発生す
る熱の影響を低減するために、本実施形態では、圧電振動素子21を搭載したパッケージ
25とICチップ収容空所24とを別体として2段構造とし、ICチップ収容空所24の
内底面にICチップ1の放熱板5を接触させて搭載する。これにより、ICチップ1から
発生する熱が直接圧電振動素子21に伝達するのを防止することができる。
図1(c)、(d)は本発明の第3の実施形態に係る圧電発振器の構造を示す断面図で
ある。同じ構成要素には図1(a)と同じ参照番号を付して説明する。この圧電発振器4
2/43は、パッケージ25、圧電振動素子搭載部に搭載した圧電振動素子21、及び凹
部27を閉止するリッド20を備えた圧電振動子31と、ICチップ1と、圧電振動子3
1及びICチップ1を近接配置した状態で表面実装用電極30及びIC電極2を配線パタ
ーン10と接続したプリント配線基板28と、を備え、圧電振動子31とICチップ1を
モールド樹脂26により被覆一体化した。即ち、圧電振動素子搭載部とICチップ収容空
所24を縦方向に構成すると、圧電発振器全体の高さが高くなってしまう。そこで本実施
形態では、プリント配線基板28上に圧電振動子31とICチップ1を並行に実装し、圧
電振動子31とICチップ1をモールド樹脂26により被覆一体化する。これにより、圧
電発振器の高さ方向を小さくでき、且つ圧電振動子31とICチップ1を外部環境から保
護することができる。
【0024】
また、図1(d)のように、ICチップ1をプリント配線基板28にフリップチップ実
装した場合、ICチップ1の放熱用導体膜5に接触するようにICチップ1を覆う金属ケ
ース29を備えた。即ち、ICチップ1をプリント配線基板28にフリップチップ実装し
た場合、バンプ9を備えた一面が下向きとなる。その結果、放熱板5を備えた面は上向き
となるので、必然的に放熱板5は、何処とも接触しない状態で、放熱板5から発生した熱
は空気を介して放熱される。しかし、これだけでは放熱の効率が良くないので、本実施形
態ではICチップ1を覆う金属性のケース29を設け、この金属ケース29に放熱板5を
密着させる。これにより、放熱板5から発生した熱が金属ケース29を介して放熱され、
放熱効率を高めることができる。
【0025】
図2は本発明の実施形態に係るICチップの構成を示す図である。図2(a)は断面図
、(b)は裏面から見た平面図、(c)は裏面から見た他の平面図である。図2(a)よ
り、ICチップ1は、シリコン基板(チップ本体)3と、シリコン基板3の一面(半導体
素子面)に形成されたIC電極2と、この一面の反対面に形成された放熱板(放熱用導体
膜)5と、を備え、シリコン基板3の半導体素子面のグランド電位部と放熱板5とが少な
くとも1つ以上のVIAホール4を介して接続されている。
図2(b)では、VIAホール4は放熱板5の略中央に1つ形成されている。ICチッ
プ1から発生した熱は、VIAホール4を介して放熱板5により放熱されるが、それと共
に、シリコン基板3から伝達される熱も放熱板5から放熱される。しかし、VIAホール
4の熱伝導率の方がシリコン基板3の熱伝導率より大きいので、可能な限りVIAホール
4の数を増やした方が有利である。図2(c)はVIAホール4の数を増加した場合の放
熱板を示す図であり、この例では、VIAホールが4の他に4a、4b、4cと複数形成
され、更に放熱効果を高めるような構成となっている。
図3は図2(a)のA部を拡大した図である。同じ構成要素には図2(a)と同じ参照
番号を付して説明する。放熱板5は熱伝導率の高いアルミ又は銅等で構成されてグランド
に接続される。そのため、VIAホール4及び放熱板5は、シリコン基板内の回路とのシ
ョートを防止するために、絶縁膜8により境界面が絶縁されている。
【0026】
図4はICチップをパッケージに実装した状態を示す図であり、図4(a)はICチッ
プ1をボンディングワイヤー10によりパッケージ12に実装した場合、図4(b)はI
Cチップ1をパッケージ12にフリップチップ実装した場合を示す。ICチップ1をボン
ディングワイヤー10によりパッケージ12に実装した場合、放熱板5は、パッケージ1
2の内底面12aと接触して搭載される。即ち、ICチップ1をボンディングワイヤー1
0によりパッケージ12に実装した場合、電極2を備えた面が上向きとなる。その結果、
放熱板5を備えた面は下向きとなるので、必然的に放熱板5は、パッケージ12の内底面
12aと接触して搭載される。そして電極パッド2にバンプ9を形成してボンディングワ
イヤー10によりパッケージ12の回路と接続される。これにより、放熱板5から発生し
た熱がパッケージ12の内底面12aから放熱され、放熱効果を高めることができる。尚
、パッケージ12の内底面12aにランド11を形成することにより、更に放熱効果を高
めることができる。
【0027】
また、ICチップ1をパッケージ12にフリップチップ実装した場合(図4(b))、
放熱板5は、ICチップ1を覆う金属性のケース13と接触して搭載される。即ち、IC
チップ1をパッケージ12にフリップチップ実装した場合、電極2を備えた面が下向きと
なる。その結果、放熱板5を備えた面は上向きとなるので、必然的に放熱板5は、何処と
も接触しない状態で、放熱板5から発生した熱は空気を介して放熱される。しかし、これ
だけでは放熱の効率が良くないので、本実施形態ではICチップ1を覆う金属性のケース
13を設け、この金属ケース13に放熱板5を密着させる。これにより、放熱板5から発
生した熱が金属ケース13を介して放熱され、放熱効果を高めることができる。
尚、図示は省略するが、放熱板5は、導電性接着剤又は金属ペーストによりパッケージ
12又は金属ケース13と接着される。即ち、放熱板5は、アルミ又は銅等の熱伝導率が
比較的高い金属により構成される。しかし、放熱板5から発生した熱をパッケージ12の
内底面12aや金属ケース13に密着させても、平面性が悪いと接触面での熱の伝達効率
が悪くなる。そこで本実施形態では、接触面に導電性接着剤又は金属ペーストを塗布する
。これにより、接触性を高めて更に放熱効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ICチップ、2 電極パッド、3 シリコン基板、4 VIAホール、5 放熱板
、6 回路面、7 反対側の面、8 絶縁膜、9 バンプ、10 ボンディングワイヤー
、11 ランド、12 パッケージ、13 金属ケース、31 圧電振動子、40、41
、42、43 圧電発振器、50 ICチップ、51 温度補償回路、52 可変容量素
子、53 圧電振動素子、54 発振回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子搭載部を有した凹部、及び外部に形成された表面実装用電極を備えた容器
と、該容器を閉止する蓋部材と、発振回路及び温度補償回路を集積化したICチップと、
を備えた温度補償型圧電発振器であって、
前記ICチップは、チップ本体と、該チップ本体の一面に形成されたIC電極と、該一
面の反対面に形成された放熱用導体膜と、を備え、
前記チップ本体のグランド電位部と前記放熱用導体膜とが少なくとも1つ以上のVIA
ホールを介して接続されていることを特徴とする温度補償型圧電発振器。
【請求項2】
前記容器の凹部は、内壁に前記圧電振動素子搭載部を有すると共に内底部にICチップ
搭載部を有し、該ICチップ搭載部に前記ICチップの放熱用導体膜を接触させて搭載し
たことを特徴とする請求項1に記載の温度補償型圧電発振器。
【請求項3】
前記容器は、前記凹部と、該凹部の底板によって隔てられて配置されたICチップ収容
空所と、を備え、該ICチップ収容空所の内底面又は天井面に前記ICチップの放熱用導
体膜を接触させて搭載したことを特徴とする請求項1に記載の温度補償型圧電発振器。
【請求項4】
前記容器、前記圧電振動素子搭載部に搭載した圧電振動素子、及び前記凹部を閉止する
前記蓋部材を備えた圧電振動子と、前記ICチップと、該圧電振動子及び該ICチップを
近接配置した状態で前記表面実装用電極及び前記IC電極を配線パターンに接続したプリ
ント配線基板と、を備え、
前記圧電振動子と前記ICチップをモールド樹脂により被覆一体化したことを特徴とす
る請求項1に記載の温度補償型圧電発振器。
【請求項5】
前記ICチップを前記プリント配線基板にフリップチップ実装し、前記ICチップの放
熱用導体膜に接触するように該ICチップを覆う金属ケースを備えたことを特徴とする請
求項4に記載の温度補償型圧電発振器。
【請求項6】
前記放熱用導体膜は、導電性接着剤又は金属ペーストにより前記ICチップ収容空所の
内底面又は天井面又は前記金属性のケースと接着されることを特徴とする請求項1乃至5
の何れか一項に記載の温度補償型圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−252210(P2010−252210A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101647(P2009−101647)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】