温調システム
【課題】電気自動車等において、寒冷地等においても自動車としての能力の低下を防ぐことができ、快適に走行等させることができるように自動車各部の温度を調節可能なシステムを提供する。
【解決手段】少なくとも、車輪をモーターで駆動させるための二次電池または燃料電池を搭載したモーター室と、車室を備えた自動車において、該自動車に組み込まれ、自動車各部の温度を調節する温調システムであって、前記温調システムは、少なくとも、触媒と該触媒に燃料を供給するための燃料タンクとを備えた1つ以上の触媒ヒーターと、液媒体を有しており、液媒体が、触媒ヒーターにより発生する熱を利用して加温されるとともに自動車各部に対して循環することにより、自動車各部の温度を調節するものである温調システム。
【解決手段】少なくとも、車輪をモーターで駆動させるための二次電池または燃料電池を搭載したモーター室と、車室を備えた自動車において、該自動車に組み込まれ、自動車各部の温度を調節する温調システムであって、前記温調システムは、少なくとも、触媒と該触媒に燃料を供給するための燃料タンクとを備えた1つ以上の触媒ヒーターと、液媒体を有しており、液媒体が、触媒ヒーターにより発生する熱を利用して加温されるとともに自動車各部に対して循環することにより、自動車各部の温度を調節するものである温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車やハイブリッド(ガソリンエンジン+電気)車、燃料電池自動車のように、二次電池や燃料電池を利用して車輪をモーターで駆動させる自動車の各部の温度を調節するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の一つとして二酸化炭素の増加が挙げられている。二酸化炭素は地球温暖化の要因の一つとして挙げられており、その発生、例えば自動車等から排出されるガス量を抑制しようとしている。
【0003】
そこで、二酸化炭素を排出しない、あるいは、従来品に比べて二酸化炭素の発生を抑制可能な電気自動車やハイブリッド車、燃料電池自動車など(以下、電気自動車等と呼ぶ)の開発に期待が寄せられている(特許文献1参照)。
【0004】
これらの電気自動車等は、上記のように環境問題への対策として有効なものであるが、一方で自動車自体の性能に関して問題点が挙げられている。
【0005】
例えば、寒冷地など気温が低くなると、その電気自動車等の始動が比較的スムーズに行われなくなってしまう。また、走行自体の能力も低下してしまう。
【0006】
また、寒冷地においては座席等が冷えてしまっている。そこで、この座席等を温めることが考えられるが、そのために二次電池に充電した電力をヒーター等で消費してしまうと、その分だけ、これらの電気自動車等の航続距離が落ちてしまう。そのため、二次電池であれば充電頻度も高くなり、電池自体のライフも短くなる。燃料電池においても燃料の消費が早くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−147138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、このような寒冷地等における問題の原因は、自動車各部の温度が低下していることにあると想到した。そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、電気自動車等において、寒冷地等においても自動車としての能力の低下を防ぐことができ、快適に走行等させることができるように自動車各部の温度を調節可能なシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも、車輪をモーターで駆動させるための二次電池または燃料電池を搭載したモーター室と、人が乗るための車室を備えた自動車において、該自動車に組み込まれ、自動車各部の温度を調節する温調システムであって、前記温調システムは、少なくとも、触媒と該触媒に燃料を供給するための燃料タンクとを備えた1つ以上の触媒ヒーターと、液媒体を有しており、前記液媒体が、前記触媒ヒーターにより発生する熱を利用して加温されるとともに前記自動車各部に対して循環することにより、自動車各部の温度を調節するものであることを特徴とする温調システムを提供する。
【0010】
このように、本発明の温調システムによって、電気自動車等において自動車各部の温度を簡便に調節することができる。それによって、寒冷地など外気温が低い場合においても、自動車としての能力が低下するのを防ぐことができるし、座席等を含めた車室内環境の改善を図ることが可能である。
【0011】
自動車各部の温度を調節するにあたっては、触媒ヒーターおよび液媒体だけで済むので、ヒーター等のために二次電池等の電力を消費する必要を極めて抑制することができる。そして、その分、従来よりも車輪の駆動に電力をまわすことができ、航続距離を伸ばすことができる。
【0012】
また、車輪の駆動に電力をより多くまわすことができるため、二次電池の充電の頻度を従来に比べて減らすことができ、電池自体のライフを延ばすことができるし、燃料電池においても、車輪駆動以外のための燃料の消費を抑制することができる。
【0013】
このとき、前記触媒ヒーターにより発生する熱を前記液媒体に伝えるための熱交換器をさらに備えたものとすることができる。
【0014】
このように、熱交換器をさらに備えていれば、触媒ヒーターにより発生する熱を効率良く液媒体に伝えて加温することができる。したがって、自動車各部を効率的に温めることが可能になる。
【0015】
また、特には、前記温度が調節される自動車各部は、少なくとも前記二次電池とするのが好ましい。
寒冷地等において二次電池自体の温度が低下すると、電圧が低くなり、車輪を駆動させるモーターへの電力が小さくなり効率が悪くなってしまう。しかしながら、本発明のように、加温された液媒体によって少なくとも二次電池の温度を調節可能な温調システムを備えていれば、二次電池の温度の低下を防ぐことができ、モーターへの十分な電力を確保することができ、スムーズな始動、走行を行うことが可能である。
【0016】
さらには、前記温度が調節される自動車各部には、人が座る座席が含まれているものとすることができる。
このようなものであれば、加温された液媒体によって、座席を個別に温めることができるので冬季においても快適であるとともに、これにより車の航続距離が短くなることもない。
【0017】
また、前記触媒ヒーターは、前記座席内に小型化されて配置されており、触媒ヒーターにより発生する熱によって、さらに前記座席が温められるものとすることができる。
このように、触媒ヒーターにより発生する熱自体で座席を温められるものであれば、一層効率良く温めることができる。
【0018】
また、前記燃料はメタノールとすることができる。
触媒ヒーターの燃料としてメタノールはよく用いられており、例えば従来の触媒ヒーターを用いることができる。
【0019】
また、前記自動車は、空調用ダクトと空調用ファンをさらに備えており、前記空調用ダクトは、車室に形成された、車室内の空気を吸気するための吸気口と車室内に空気を送風するための送風口につながれており、該空調用ダクト内に前記空調用ファンが配設されており、車室内の空気が空調用ファンにより前記吸気口から吸気されて、空調用ダクトを通して前記送風口から送風されて循環可能とされ、前記触媒ヒーターにより発生する熱を利用して、前記空調用ダクト内に吸気された空気を調和して車室内に送風することにより前記車室内の空気を調和するものとすることができる。
【0020】
従来では空調においてPTCヒーターに二次電池等の電力を消費する必要があったが、本発明ではその必要性を極力抑え、しかも外気温に左右されることなく効率良く、車室内の空気を調和することが可能である。このため、空調のヒーターのために二次電池等の電力を消費する必要を抑制することができ、その分、航続距離を伸ばすことができる。そして、二次電池の充電頻度や電池自体のライフ、燃料電池の燃料の消費を抑制することができる。
【0021】
このとき、前記空調用ダクト内に、前記触媒ヒーターの触媒が挿入されており、前記触媒ヒーターにより発生する熱によって、前記空調用ダクト内に吸気された空気が暖められて車室内に送風され、車室内が暖房されるものとすることができる。
【0022】
このようなものであれば、触媒ヒーターから発生した熱を効率良く空調用ダクト内に吸気された空気に伝えることができ、効果的に車室内を暖房することが可能である。
【0023】
あるいは、前記触媒ヒーターは、前記触媒に接続された熱伝導体をさらに有し、前記空調用ダクト内に、前記触媒ヒーターの熱伝導体が挿入されており、前記触媒ヒーターにより発生する熱によって、前記熱伝導体を介して、前記空調用ダクト内に吸気された空気が暖められて車室内に送風され、車室内が暖房されるものとすることができる。
【0024】
このようなものであれば、車室内が暖房されるに伴って、触媒ヒーターから排出されるもの(例えば水)が、直接、空調用ダクトを通して車室内に送られることを防止することができる。
【0025】
また、前記空調用ダクトは、人が座る座席内に通されており、前記触媒ヒーターにより発生する熱によって、前記空調用ダクト内に吸気された空気が暖められることで、さらに前記座席が個別に温められるものとすることができる。
【0026】
このようなものであれば、暖められた空調用ダクト内の空気で、座席をさらに温めることができるので好ましい。
【0027】
また、前記触媒ヒーターは、前記触媒を担持するセラミックスまたはステンレス製の担体をさらに有し、前記送風口を通して、前記担体から遠赤外線が輻射されることで人が暖められるものとすることができる。
【0028】
このようなものであれば、担体から輻射される遠赤外線によって人をさらに暖めることが可能となるので好ましい。
【0029】
また、前記自動車は、冷媒を収容する冷媒室をさらに有して前記車室内を冷房する機能を具備しており、前記空調用ダクトは前記冷媒室内を通っており、冷媒室内の冷媒が前記触媒ヒーターにより加熱され、ヒートポンプ方式によって、前記空調用ダクト内に吸気された空気が冷やされて車室内に送風され、車室内が冷房されるものとすることができる。
【0030】
このようなものであれば、触媒ヒーターにより加熱され気化した冷媒が、冷えて一旦凝結し、その後、ヒートポンプ方式で、その凝結した冷媒が空調用ダクト内の空気から熱を奪って再度気化することによって、空調用ダクト内の空気を冷やすことができる。そしてその結果、車室内を冷房することが可能である。
【0031】
このとき、前記冷媒はHFO−1234yf、HFO−1234zf、およびそれらの異性体、二酸化炭素のいずれかであるのが好ましい。
冷媒がこのようなものであれば、地球温暖化係数が低く環境にやさしい。
【0032】
このとき、前記自動車は、ダイレクトメタノール型燃料電池をさらに備えており、前記空調用ファンは、前記ダイレクトメタノール型燃料電池で駆動可能なものであるのが好ましい。
さらには、前記ダイレクトメタノール型燃料電池は、メタノールの供給源として、前記触媒ヒーターの前記燃料タンクを共用するものとすることができる。
【0033】
空調用ファンがダイレクトメタノール型燃料電池で駆動可能なものであれば、空調用ファンを駆動させるのに二次電池等の電力を消費する必要性をなくすことができるため、電池の充電頻度、さらには電池のライフ、航続距離の改善をより一層図ることが可能である。
さらにメタノールの供給源として、触媒ヒーターの燃料タンクを共用するのであれば、効率良く空調システムを作動させることができるし、ダイレクトメタノール型燃料電池のための新たな燃料タンクも設ける必要がないため、重量やスペースの面でより優れたものとなる。
【0034】
また、前記車室の屋根には、太陽電池をさらに備えており、前記空調用ファンは、前記太陽電池で駆動可能なものとすることができる。
このようなものであれば、空調用ファンを駆動させるための二次電池等の電力を必要とせず、太陽電池により空調用ファンを駆動させることができ、二次電池の充電頻度・ライフ、航続距離を改善することができる。
【0035】
さらに、前記自動車は、前記空調用ファンに回転を伝達する機構を有する外気用ファンと、外気が通過可能な外気用ダクトをさらに備えており、該外気用ダクト内に前記外気用ファンは配設されており、前記外気用ダクトを走行時に通過する外気によって前記外気用ファンが回転されて、該外気用ファンの回転が伝達されることで前記空調用ファンが回転可能なものとすることができる。
【0036】
このようなものであれば、空調用ファンを駆動させるための二次電池等の電力を必要とせず、走行時のラム圧により空調用ファンを駆動させることができ、二次電池の充電頻度・ライフ、航続距離を改善することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の温調システムであれば、電気自動車等において、寒冷地等においても自動車等の各部の温度を簡便に調節することができ、それによって自動車等の能力の低下を防止し、快適な環境下で走行等させることができる。また、自動車各部を温めるにあたって二次電池等の電力の消費を極力抑えることができ、自動車の航続距離を伸ばしたり、電池のライフを伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の温調システムの一例を示す概略図である。
【図2】触媒ヒーターから発生する熱を利用して液媒体を加温する仕組みの一例を示す説明図である。
【図3】触媒ヒーターから発生する熱を利用して液媒体を加温する仕組みの他の一例を示す説明図である。
【図4】二次電池を温める仕組みの一例を示す説明図である。
【図5】座席を温める仕組みの一例を示す説明図である。
【図6】本発明の温調システムの他の一例を示す概略図である。
【図7】触媒ヒーターを用いた車室内の暖房の仕組みの一例を示す説明図である。
【図8】触媒ヒーターを用いた車室内の暖房の仕組みの他の一例を示す説明図である。
【図9】触媒ヒーターを用いた車室内の冷房の仕組みの一例を示す説明図である。
【図10】ラム圧を利用した空調用ファンの回転の仕組みの一例を示す説明図である。
【図11】実施例、比較例における電池の放電温度特性を示すグラフである。
【図12】電池の放電温度特性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来における電気自動車等では、寒冷地など気温が低い場合において始動が比較的スムーズに行われなかったり、走行自体の能力に低下がみられていた。
本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、まず、この自動車としての能力の低下は、その外気温の低さにより二次電池自体の温度が低下していることに原因があることを見出した。
【0040】
ここで電池の放電温度特性について説明する。
図12に電池の放電温度特性の一例を示す。縦軸が電圧、横軸が放電容量を表しており、充電後に一定の電流値で放電を行い続けた場合の電圧と放電容量の関係が示されている。環境温度が−20℃、0℃、20℃の場合についてそれぞれ示した。
【0041】
環境温度が低いほど当然電池の温度も低く、また、図12からわかるように、環境温度が低い(電池の温度が低い)ほど放電中におけるセル電圧が低いことがわかる。
【0042】
したがって、電気自動車等の二次電池において、寒冷地などの外気温が低く二次電池の温度も低い状況だと、外気温が高い状況に比べて十分な電圧を得られにくくなり、そのため十分な電力をモーターに供給しにくくなる。すなわち、このように寒冷地等においては、始動時や走行時において能力が低下すると考えられる。
また、寒冷地等においては車室内や座席等も冷えており、車室内の環境も良いとは言えない。
【0043】
一方、上記の二次電池の温度や車室内の環境を改善するため、それらの各部を温める際に、二次電池自体からの電力を用いてしまっては航続距離等に影響が出てしまう。
【0044】
そこで本発明者らは、二次電池からの電力に大きくたよることなく、特には二次電池や座席等の自動車各部の温度を調節可能な温調システムを電気自動車等に組み込めば、寒冷地等での自動車としての性能の低下の防止や、運転時等の車室内環境の改善を図ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に本発明の温調システム1の一例の概略を示す。なお、図1では、本発明の温調システム1が組み込まれた自動車2を合わせて図示している。
また、ここでは自動車2は二次電池を搭載した電気自動車を例に挙げて説明するが、その他ハイブリッド車(特には電気で駆動させる割合が高いもの)、燃料電池(および二次電池)を搭載した燃料電池自動車とすることもできる。
【0046】
自動車2は人が乗るための車室3の他、モーター室4、車輪5を備えており、モーター室4内には二次電池6およびモーター7が搭載されている。車輪5は、二次電池6によってモーター7を回転させることで駆動させることができる。
なお、図1では、モーター室4は自動車2の下部に設けられているが、これに限定されず、他の条件に応じて適切な位置に設けることができる。
【0047】
そして、このような自動車2に組み込まれた本発明の温調システム1の構成としては、送液管8、ポンプ9、触媒ヒーター10、液媒体11が挙げられる。
送液管8は環状になっており、温調する自動車各部(二次電池6や座席12(図5参照)等)を経由して配設されている。該送液管8内には液媒体11が収容されており、送液管8を通じて、ポンプ9によって自動車各部を液媒体11が循環可能になっている。
【0048】
また、触媒ヒーター10が配設されており、該触媒ヒーター10によって発生する熱を利用して、送液管8内の液媒体11が加温されるよう構成されている。そして、このように循環可能に送液管8内を流れる液媒体11が加温されることにより、加温された液媒体11が二次電池6や座席12等の自動車各部を循環し、それらの温度を調節することができる。
【0049】
以下、本発明の温調システム1の各部についてさらに詳述する。
まず、触媒ヒーター10についてさらに説明する。
図2は、触媒ヒーターから発生する熱を利用して液媒体を加温する仕組みの一例を示すものである。
【0050】
触媒ヒーター10は、触媒13が担持された担体(触媒体14)と燃料タンク15を有している。触媒体14と燃料タンク15の間には、燃料供給管16と、燃料の他に酸化性ガス(例えば空気)が透過可能な燃料透過膜17が配設されており、これらを通して燃料タンク15内の燃料を触媒13を有する触媒体14へ供給可能になっている。
【0051】
触媒13としては、例えば、プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、鉄、ルテニウム、モリブデン、タングステン、スズ、ニオブ系あるいはチタン系の酸化物に炭素および窒素を配合したもの、及びそれらの組合せからなるものが挙げられるが、特にこれらに限定されない。この他、一般的に触媒ヒーターで用いられる触媒を用いることができる。
また、形状も特に限定されないが、表面積を大きくし、反応効率を上げるために、例えば1〜100nmの微粒子のものを用いると好ましい。
【0052】
担体としては、例えば、アルミナ、シリカ、ゼオライト等のセラミック系、アルミニウム、ステンレス等の金属系、または、硝子繊維、ポリイミド、PTFE等のものが挙げられるが、特にこれらに限定されない。この他、一般的に触媒ヒーターで用いられる担体を用いることができる。
なお、特には、例えばアルミナ系やジルコニア系のファインセラミックス、ステンレス、炭化珪素、カーボン等を担体とすることで、後述するような遠赤外線を輻射するものとすることができる。
また、形状も特に限定されないが、例えば、効率を考慮してハニカム状のものを用いることができる。
【0053】
これらの触媒13、担体は、使用する燃料等に応じて適宜決定することができる。条件に応じて、触媒13、担体を選択し、例えば触媒13を担体に均一にコーティングすることにより、適切な触媒体14を用意することができる。
【0054】
また、燃料タンク15は使用する燃料を適切に貯蔵することができるものであれば良い。大きさや形状等は、自動車2の内部のスペースに応じて適宜決定することができる。
【0055】
そして、燃料は、例えば、水素やメタノール、エタノール等のアルコール類、プロパン、ブタン等の炭化水素類などが挙げられるが、これらに限定されず、その都度、適切なものを用意することができる。特にはメタノールであれば、触媒ヒーターの燃料としてよく用いられているので好ましい。
【0056】
また、燃料供給管16の形状、数等は特に限定されない。適切に燃料を触媒体14に供給することができれば良い。
燃料透過膜17としては、触媒ヒーター10の温度が高温になるため、例えば、耐熱温度の高いセラミックフィルターやグラスウール、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、シリコーンゴムなどが挙げられる。これ以外にも、その都度適切なものを用意することができる。このような燃料透過膜17を配設すれば、燃料は燃料透過膜17を浸透して拡散するため、触媒体14に均一に燃料を供給することができる。
【0057】
ここで、触媒ヒーターから発生する熱を利用して液媒体を加温する仕組み(熱交換器18)は特に限定されず、触媒ヒーターから液媒体へ効率良く熱を伝えることができれば良い。例えば一般的な熱交換器を用いることができる。
図2に示す形態では、触媒体14に空気等の酸化性ガスを供給するための酸化性ガス供給管19が配設されており、触媒ヒーター10の触媒13を有する触媒体14は酸化性ガス供給管19内に配設されている。
【0058】
なお、酸化性ガス供給管19は触媒体14の上流および下流で例えば車外へ通じており、触媒体14に供給する空気等の酸化性ガスは、ファン等を用いて、例えば車外から取り入れることができる。また、触媒13上での反応に使用されなかった酸化性ガスや、反応で生成された水(発生した熱により水蒸気となっている)は車外へ排出することができる。
【0059】
そして、触媒体14の下流付近において、酸化性ガス供給管19に対して送液管8を巻回するように設けられている。あるいは逆に、送液管8に対して酸化性ガス供給管19を巻回することもできる。
【0060】
自動車各部を温めるとき、酸化性ガス供給管19内を通る空気が、触媒体14中の触媒13上へ供給されて、燃料タンク15から供給された燃料と反応する。これによって熱が発生する。そして、触媒ヒーター10から発生した熱や、それによって温められた酸化性ガス供給管19内の空気からの熱により、巻回された送液管8を通して液媒体11が加温される。
このようにして加温された液媒体11が自動車各部へと送液されることにより、自動車各部を温め、温度調節することができる。
【0061】
また、図3に、熱交換器の他の一例を示す。図3に示すように、この熱交換機18の形態では、触媒ヒーター10はさらに熱伝導体20を有している。該熱伝導体20は触媒13を有する触媒体14に接続されており、送液管8内に挿入されている。この熱伝導体20は材質や形状等、特に限定されず、触媒13上で発生した熱を効率良く送液管8内の液媒体11に伝えることができるものを用いれば良い。
一方、触媒体14は送液管8の外に配設されており、触媒体14に空気等の酸化性ガスを供給するための酸化性ガス供給管19が別個に設けられている。
【0062】
自動車各部を温めるとき、燃料タンク15から燃料を、酸化性ガス供給管19から空気等を触媒体14に供給して反応させ、熱を発生させる。この発生した熱が熱伝導体20に伝熱され、この熱伝導体20を介して送液管8内の液媒体11が温められ、それによって自動車各部が温められる。
【0063】
次に、液媒体11について説明する。
液媒体11は、例えば、シリコーンオイル、フッ素系オイル、エチレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されない。凝固等しにくく、効率良く、触媒ヒーター10により発生する熱を受け取り、自動車各部に伝えることができるものであれば良い。
【0064】
また、ポンプ9も特に限定されず、例えば従来からある一般的なものを用いることができる。液媒体11を適切に自動車各部に送液することができればよく、配置位置、数等に関しても限定されず、その都度決定することが可能である。
【0065】
次に、送液管8について述べる。
送液管8は、温度調節が必要な自動車各部に配設されていれば良く、その形状、本数等は特に限定されない。どこに送液管8を配設するかは、適宜決定することができる。
【0066】
なお、二次電池6に対して配設されていると特に好ましい。このとき、送液管8の配設の仕方としては、二次電池6の周囲を巻回するようにして配設することができる。図1、4に二次電池に対して送液管8を配設した場合の一例を示す。当然これに限定されず、二次電池6自体の温度を効率良く、適切に調節できる他の配設の仕方とすることができる。
【0067】
このように二次電池6に対して送液管8を配設し、加温された液媒体11で二次電池6の温度を調節(加温)できるのであれば、寒冷地等においても二次電池6の温度をある程度の温度(例えば20℃)に維持することができ、図12の−20℃、0℃のグラフのように見られるような電圧の低下、電力の低下を防ぐことができる。したがって、モーターに対して十分に電力を与えることができ、スムーズな始動や走行を行うことができ、自動車としての性能の低下を防ぐことが可能である。
【0068】
また、座席12内に送液管8を配設した場合の例を図5に示す。このように座席12内に配設することで、加温された液媒体11によって座席12を温めることができる。弁等を適切に設けることで、各々の座席12を個別に温めることが可能である。
【0069】
また、図5に示すように、触媒ヒーター10を上記座席12内に配設することで、その触媒ヒーター10により発生した熱自体により座席を温めることも可能である。例えば、小型化した触媒ヒーター10を座席12内に複数配設することで、座席12の各位置をより効率的に温めることができる。座席12内に配設する触媒ヒーター10の数、大きさ等は特に限定されない。
なお、この例では、酸化性ガス供給管19内に触媒体14が配設されており、該酸化性ガス供給管19に対して送液管8が巻回されている。
【0070】
また、図6に本発明の温調システムの他の一例を示す。
図6に示すように、液媒体11で温調するのに加えて、さらに、触媒ヒーターを利用して車室3内の空調を行う仕組みを設けることもできる。この場合、自動車2内に空調用ダクト21や空調用ファン22が配設されている。車室3には、車室3内の空気を吸気するための吸気口23や、車室3内に空気を送風するための送風口24が形成されており、これらの吸気口23や送風口24は空調用ダクト21とつながっている。
【0071】
また、空調用ファン22は空調用ダクト21内に配設されており、この空調用ファン22を回転させることで、吸気口23から車室3内の空気を吸気し、空調用ダクト21を通して送風口24から車室3内に空気を送風可能になっている。
このような仕組みにより、車室3内の空気を循環することができる。
【0072】
また、触媒ヒーター10によって発生する熱を利用して、空調用ダクト21内の空気が調和されるよう構成されている。そして、このように循環可能に空調用ダクト21内を流れる空気が調和されることにより、車室3内の空気を調和することができる。
【0073】
ここで、触媒ヒーター10を用いた車室3内の暖房の仕組みについて例を挙げて説明する。なお、当然、本発明はこれに限定されず、触媒ヒーター10を用いた他の車室3内の暖房の仕組みとすることができる。
図7に示すように、この例では、触媒ヒーター10の触媒13を有する触媒体14は空調用ダクト21内に配設されている。この場合、酸化性ガスは空調用ダクト21内を流れる車室3内からの空気である。なお、このとき、送液管8は、空調用ダクト21に対して巻回するように配設することができる(図6参照)が、当然これに限定されない。
車室3内を暖房する場合、空調用ファン22によって吸気口23から吸気され、空調用ダクト21内を通る空気が、触媒体14中の触媒13上へ供給されて、燃料タンク15から供給された燃料と反応する。これによって熱が発生する。そして、発生した熱により、空調用ダクト21内の空気が暖められ、送風口24から送風されて車室3内が暖房される。
【0074】
図8に、触媒ヒーターを用いた車室内の暖房の仕組みの他の一例を示す。図8に示すように、この例では、触媒ヒーター10はさらに熱伝導体20を有しており、空調用ダクト21内に挿入されている。上記熱伝導体20は材質や形状等、特に限定されず、触媒13上で発生した熱を効率良く空調用ダクト21内の空気に伝えることができるものを用いれば良い。
【0075】
一方、触媒体14は空調用ダクト21の外に配設されており、触媒体14に空気等の酸化性ガスを供給するための酸化性ガス供給管19が別個に設けられている。なお、酸化性ガス供給管19は触媒体14の上流および下流で例えば車外へ通じており、触媒体14に供給する空気等の酸化性ガスは、別個に配設したファン等を用いて車外から取り入れることができる。また、触媒13上での反応に使用されなかった酸化性ガスや、反応で生成された水(発生した熱により水蒸気となっている)は車外へ排出される。
なお、このとき、送液管8は、酸化性ガス供給管19や空調用ダクト21に対して巻回するように配設することができるが、当然これに限定されない。
【0076】
暖房の際には、燃料タンク15から燃料を、酸化性ガス供給管19から空気等を触媒体14に供給して反応させ、熱を発生させる。この発生した熱が熱伝導体20に伝熱され、この熱伝導体20を介して空調用ダクト21内の空気が暖められ、それによって車室3内を暖房することができる。
【0077】
また、例えば、図7に示すような場合に担体をセラミックスまたはステンレス製等のものとし、触媒ヒーター10を送風口24の近傍に配置することによって、暖房時に、触媒ヒーター10により発生した熱で空調用ダクト21内の空気を暖めるとともに、上記担体から送風口24を通して輻射される遠赤外線によって、車室3内の人をさらに暖めることが可能である。
【0078】
次に、触媒ヒーター10を用いた車室3内の冷房の仕組みについて一例を挙げて説明する。
図9に示すように、自動車2には、冷媒25を収容する冷媒室26がさらに配設されており、該冷媒室26内を空調用ダクト21が挿通している。また、触媒ヒーター10(特に触媒体14)が、冷媒室26の近傍に配置されている。
【0079】
冷媒25としては、地球温暖化係数の低いフッ素系冷媒HFO−1234yfやHFO−1234zf、およびそれらの異性体、R−134aなどのフッ素系冷媒、二酸化炭素、アンモニア、炭化水素系などが挙げられる。この他、一般的に使用される冷媒を用いることができる。
また、冷媒室26の大きさや形状、冷媒室26を挿通する空調用ダクト21の配置等は特に限定されないが、後述するように、ヒートポンプ方式によって空調用ダクト21内の空気が冷やされるように適宜決定することができる。
さらには、触媒ヒーター10の配置も特に限定されないが、例えば、冷媒25が溜まっている冷媒室26の底付近に配置することができる。このような位置であれば、触媒ヒーター10によって効率良く冷媒25を加熱し、気化させることができる。
【0080】
冷房の際には、触媒ヒーター10の触媒体14に燃料および酸化性ガスが供給され、反応により熱が発生する。この熱によって冷媒室26内の冷媒25が気化する。気化した冷媒25は、その後冷えて、例えば冷媒室26内上方に配置された空調用ダクト21付近で凝結するものの、空調用ダクト21内の空気から熱を奪い、再度気化する。このようなヒートポンプ方式によって、空調用ダクト21内の空気を冷やして車室3内を冷房することができる。
なお、当然この例に限定されず、触媒ヒーター10を用いた他の冷房の仕組みとすることができる。
【0081】
なお、暖房および冷房の空調に使用する触媒ヒーター10は、全体で複数の触媒ヒーター10を、暖房用あるいは冷房用として、それぞれ別個独立して配設することができる。
また、逆に、1つ(あるいは複数)の触媒ヒーター10を用意し、暖房用および冷房用として兼用して配設することも可能である。例えば、図8、9に示す例を組み合わせ、1つの触媒ヒーター10を、熱伝導体20を介して空調用ダクト21内の空気を暖めるのに使用することができる一方で、冷媒25を加熱し、ヒートポンプ方式によって空調用ダクト21内の空気を冷やすのに使用することもできる。この場合、暖房とするか冷房とするかは、空調用ダクト21を分岐しておき、いずれのダクトを流通するかを切り換えるようにすれば良い。
さらには、触媒ヒーター10は、液媒体11を加温するのにも、空調用と兼用することも、別個独立して有するようにすることもできる。
【0082】
次に、空調用ダクト21についてさらに説明する。
空調用ダクト21は、吸気口23と送風口24とつながれて、車室3内の空気が循環可能となっており、触媒ヒーター10により、内部の空気が調和されるように配設されていれば良い。
吸気口23や送風口24の数や配置は特に限定されない。空調用ダクト21の形状や本数等も特に限定されず、車室3内の空気の循環・調和が効率良く行われるように、条件に応じて適宜決定することができる。
【0083】
例えば、暖房のための空調用ダクトと冷房のための空調用ダクトを別個に用意し、吸気口23や送風口24の付近でこれらが合流するよう配設することができる。弁等を用いて、暖房時あるいは冷房時に適切な方向へ空気が流れるようにすることができる。
あるいは、暖房用と冷房用とで1本の空調用ダクトを共有することもできる。この場合、省スペースとすることができる。
また、さらに車外とつなげて、外気と車室3内とで空気のやり取りを行うことも可能である。
【0084】
さらには、空調用ダクト21を座席内に通すことができる。この場合、例えば、図5において、酸化性ガス供給管19の代わりに空調用ダクト21を設ければ良い。
【0085】
次に、空調用ファンについてさらに説明する。
車室3内の空気が、吸気口23から吸気され、空調用ダクト21を通して送風口24から送風されるように、他の各部の条件に応じて、適切な形状、数の空調用ファン22を空調用ダクト21内の適切な位置に配設することができる。例えば、従来と同様の形状のものを用いることができる。
【0086】
この空調用ファン22を回転駆動させる手段は特に限定されず、二次電池6を用いることもできるが、好ましくは、例えば以下に示す例のような別個の手段を具備することにより、二次電池6の電力を空調のために消費させることを防ぐことができる。すなわち、二次電池6の電力を、車輪5の駆動のためにより多く費やすことができ、走行距離を一層伸ばすことが可能になる。
【0087】
まず、図6に示すように、例えば自動車2の車室3の屋根に太陽電池27を配設し、該太陽電池27から空調用ファン22に電力を供給することができる。この太陽電池27の大きさ、配置等は必要な電力に応じて適宜決定することができる。
【0088】
また、図6に示すように、ダイレクトメタノール型燃料電池28をさらに配設し、これを用いて空調用ファン22を回転駆動させることができる。この場合、触媒ヒーター10の燃料としてメタノールを用いるのであれば、ダイレクトメタノール型燃料電池28のメタノールの供給源として、触媒ヒーター10の燃料タンク15を共用させることも可能である。ダイレクトメタノール型燃料電池28と触媒ヒーター10とで燃料タンク15を共用することで、新たな燃料タンクを用意する必要がなくなり、その分、重量を軽くすることができるし、省スペースとすることが可能である。
【0089】
さらには、走行時(特に高速走行時)には外気のラム圧を利用して空調用ファン22を回転駆動させる方法が挙げられる。図10に、ラム圧を利用した空調用ファンの回転の仕組みの一例を示す。
図10に示す回転の仕組みは、空調用ファン22の他、外気用ファン29と、該外気用ファン29が内部に配設された外気用ダクト30を有している。外気用ダクト30は車外につながっており、外気が内部を通過可能になっている。また、外気用ファン29は、傘歯車等を用いて自身の回転を空調用ファン22に伝達する機構を有している。
すなわち、走行時には外気が外気用ダクト30内に入り込み、外気用ダクト内を通過し、内部の外気用ファン29がラム圧によって回転し、この外気用ファン29の回転が伝達機構で伝達されることで、空調用ファン22が回転する仕組みになっている。
【0090】
外気用ファン29の、空調用ファン22に回転を伝達する機構は特に限定されず、空調用ファン22に回転を伝達できるものであれば良い。
例えば、図10では単純に傘歯車を用いて外気用ファン29の回転を空調用ファン22に伝達している。また、空調用ファン22および外気用ファン29は共に水車状のファンであり、互いに軸心を共有した同軸とすることもできる。すなわち、外気用ファン29がラム圧で回転することで、同軸の空調用ファン22が回転可能な機構である。
【0091】
あるいは、別個に蓄電池が配設され、該蓄電池に外気用ファン29が接続されており、外気用ファン29がラム圧で回転することにより蓄電池に蓄電され、これを用いて空調用ファン22を回転させるような機構とすることも可能である。
当然、これらに限定されず、その都度、適切な回転機構を用意することができる。
【0092】
本発明においては、停車時や低速走行時には、太陽電池27やダイレクトメタノール型燃料電池28を用いて空調用ファン22を回転駆動させ、高速走行時には外気用ファン29等からなる上記仕組みを用いて空調用ファン22を回転駆動させることができる。また、これらを適宜組み合わせて同時に用いることで、より安定的に空調用ファン22を回転駆動させることも可能である。
【0093】
以上のように、このような空調機構をさらに備えていれば、触媒ヒーター10によって発生する熱を利用することによって、車室3内の空気を調和(暖房および冷房)することも可能である。
触媒ヒーター10を用いるので、従来の電気自動車等のPTCヒーターのように二次電池6の電力を空調に消費させることを防ぎ、航続距離を従来に比べて格段に伸ばすことが可能である。したがって、二次電池の充電頻度を低減させることができ、電池自体のライフも延ばすことができる。
燃料電池自動車であれば、空調に費やす電力をなくすことができるので、車輪駆動以外のために燃料電池の燃料が減少するのを防ぎ、航続距離を伸ばすことができる。
【0094】
また、外気から熱をくみ上げるヒートポンプ方式の空調システムでは、例えば寒冷地での暖房は効率が著しく低い。しかし、上記空調機構を備えた触媒ヒーター10を用いた本発明の温調システム1であれば、外気温に左右されず、効率良く、安定して車室3内の暖房等の空調も行うことができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
二次電池について、外気温が−20℃、0℃の環境下でそれぞれ放電して放電特性を調べた。
このとき、図1に示す触媒ヒーター10を有する本発明の温調システム1を用い、触媒ヒーターからの熱を利用して液媒体を加温し、二次電池を予め温めておいた。さらには同様に温めながら所定の電流を放電させ続けて放電特性を調べた。
なお、外気温が20℃のときと同じ温度になるように二次電池を温めた。また、触媒ヒーター10の燃料としてメタノールを用いた。
このようにして得られた、外気温が−20℃、0℃の場合の放電特性を図11に示す。
【0096】
なお、比較のために外気温が20℃の場合の放電特性を一緒に示す。この外気温が20℃の場合の放電特性の調査方法は、二次電池の温度の調節を行わなかったこと以外は上記と同様の手順である。
【0097】
図11から分かるように、本発明の温調システムによって二次電池を温めることにより、外気温が−20℃や0℃といった場合であっても、外気温が20℃のときとほぼ同様の電圧、そして電力を得ることが可能である。
【0098】
この結果、本発明の温調システム1を備えた電気自動車等であれば、寒冷地等であっても外気温が20℃のときのようにモーターに十分な電力を簡便に供給することができ、従来のような始動時や走行時の能力の低下を防止することができる。しかも、この場合、二次電池を温めるのに、一切、二次電池の電力を使用していないので、航続距離への影響はない。
【0099】
(比較例1)
本発明の温調システム1を用いることなく二次電池を温めないまま、それ以外は実施例と同様にして、二次電池について、外気温が−20℃、0℃の環境下でそれぞれ放電して放電特性を調べた。
【0100】
この結果、図12と同様の放電特性が得られた。すなわち、外気温が20℃の場合と比較して0℃では電圧の低下が見られた。−20℃の場合はさらに電圧が低くなっている。したがって、十分な電圧が得られにくくなる。
そのため、本発明の温調システム1を備えていない電気自動車等では、寒冷地など外気温が低い場合、十分な電力が比較的得られにくくなり、始動や走行がスムーズに行われなくなってしまう。
【0101】
(実施例2)
図6に示すような本発明の温調システム1を用意し(なお、図5のように、別個に用意した座席内に送液管を通した)、外気0℃の環境下で、本発明の温調システム1を用い、二次電池および座席を温めるとともに車室と同程度の空間を所定時間暖房して一定温度(20℃)に保つ実験を行った。
【0102】
この結果、実施例1と同様に二次電池を温めることができ、また座席も十分に温めることができた。さらには、空調用ファンの回転駆動のため二次電池の電力を少量使用したが、上記空間を20℃の一定温度に32時間保つことができた。
【0103】
(比較例2)
実施例2と同様の二次電池を用意し、本発明の温調システム1を使用せず、従来法のように二次電池を利用したPTCヒーターを用いる以外は、実施例2と同様にして暖房を行った。
【0104】
この結果、20℃一定に6時間保つことができたが、暖房するにあたってPTCヒーターに二次電池の電力が3割程度使用された。
【0105】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0106】
1…本発明の温調システム、 2…自動車、 3…車室、 4…モーター室、
5…車輪、 6…二次電池、 7…モーター、 8…送液管、
9…ポンプ、 10…触媒ヒーター、 11…液媒体、 12…座席、
13…触媒、 14…触媒体、 15…燃料タンク、 16…燃料供給管、
17…燃料透過膜、 18…熱交換器、
19…酸化性ガス供給管、 20…熱伝導体、
21…空調用ダクト、 22…空調用ファン、 23…吸気口、
24…送風口、 25…冷媒、 26…冷媒室、 27…太陽電池、
28…ダイレクトメタノール型燃料電池、 29…外気用ファン、
30…外気用ダクト。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車やハイブリッド(ガソリンエンジン+電気)車、燃料電池自動車のように、二次電池や燃料電池を利用して車輪をモーターで駆動させる自動車の各部の温度を調節するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の一つとして二酸化炭素の増加が挙げられている。二酸化炭素は地球温暖化の要因の一つとして挙げられており、その発生、例えば自動車等から排出されるガス量を抑制しようとしている。
【0003】
そこで、二酸化炭素を排出しない、あるいは、従来品に比べて二酸化炭素の発生を抑制可能な電気自動車やハイブリッド車、燃料電池自動車など(以下、電気自動車等と呼ぶ)の開発に期待が寄せられている(特許文献1参照)。
【0004】
これらの電気自動車等は、上記のように環境問題への対策として有効なものであるが、一方で自動車自体の性能に関して問題点が挙げられている。
【0005】
例えば、寒冷地など気温が低くなると、その電気自動車等の始動が比較的スムーズに行われなくなってしまう。また、走行自体の能力も低下してしまう。
【0006】
また、寒冷地においては座席等が冷えてしまっている。そこで、この座席等を温めることが考えられるが、そのために二次電池に充電した電力をヒーター等で消費してしまうと、その分だけ、これらの電気自動車等の航続距離が落ちてしまう。そのため、二次電池であれば充電頻度も高くなり、電池自体のライフも短くなる。燃料電池においても燃料の消費が早くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−147138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、このような寒冷地等における問題の原因は、自動車各部の温度が低下していることにあると想到した。そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、電気自動車等において、寒冷地等においても自動車としての能力の低下を防ぐことができ、快適に走行等させることができるように自動車各部の温度を調節可能なシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも、車輪をモーターで駆動させるための二次電池または燃料電池を搭載したモーター室と、人が乗るための車室を備えた自動車において、該自動車に組み込まれ、自動車各部の温度を調節する温調システムであって、前記温調システムは、少なくとも、触媒と該触媒に燃料を供給するための燃料タンクとを備えた1つ以上の触媒ヒーターと、液媒体を有しており、前記液媒体が、前記触媒ヒーターにより発生する熱を利用して加温されるとともに前記自動車各部に対して循環することにより、自動車各部の温度を調節するものであることを特徴とする温調システムを提供する。
【0010】
このように、本発明の温調システムによって、電気自動車等において自動車各部の温度を簡便に調節することができる。それによって、寒冷地など外気温が低い場合においても、自動車としての能力が低下するのを防ぐことができるし、座席等を含めた車室内環境の改善を図ることが可能である。
【0011】
自動車各部の温度を調節するにあたっては、触媒ヒーターおよび液媒体だけで済むので、ヒーター等のために二次電池等の電力を消費する必要を極めて抑制することができる。そして、その分、従来よりも車輪の駆動に電力をまわすことができ、航続距離を伸ばすことができる。
【0012】
また、車輪の駆動に電力をより多くまわすことができるため、二次電池の充電の頻度を従来に比べて減らすことができ、電池自体のライフを延ばすことができるし、燃料電池においても、車輪駆動以外のための燃料の消費を抑制することができる。
【0013】
このとき、前記触媒ヒーターにより発生する熱を前記液媒体に伝えるための熱交換器をさらに備えたものとすることができる。
【0014】
このように、熱交換器をさらに備えていれば、触媒ヒーターにより発生する熱を効率良く液媒体に伝えて加温することができる。したがって、自動車各部を効率的に温めることが可能になる。
【0015】
また、特には、前記温度が調節される自動車各部は、少なくとも前記二次電池とするのが好ましい。
寒冷地等において二次電池自体の温度が低下すると、電圧が低くなり、車輪を駆動させるモーターへの電力が小さくなり効率が悪くなってしまう。しかしながら、本発明のように、加温された液媒体によって少なくとも二次電池の温度を調節可能な温調システムを備えていれば、二次電池の温度の低下を防ぐことができ、モーターへの十分な電力を確保することができ、スムーズな始動、走行を行うことが可能である。
【0016】
さらには、前記温度が調節される自動車各部には、人が座る座席が含まれているものとすることができる。
このようなものであれば、加温された液媒体によって、座席を個別に温めることができるので冬季においても快適であるとともに、これにより車の航続距離が短くなることもない。
【0017】
また、前記触媒ヒーターは、前記座席内に小型化されて配置されており、触媒ヒーターにより発生する熱によって、さらに前記座席が温められるものとすることができる。
このように、触媒ヒーターにより発生する熱自体で座席を温められるものであれば、一層効率良く温めることができる。
【0018】
また、前記燃料はメタノールとすることができる。
触媒ヒーターの燃料としてメタノールはよく用いられており、例えば従来の触媒ヒーターを用いることができる。
【0019】
また、前記自動車は、空調用ダクトと空調用ファンをさらに備えており、前記空調用ダクトは、車室に形成された、車室内の空気を吸気するための吸気口と車室内に空気を送風するための送風口につながれており、該空調用ダクト内に前記空調用ファンが配設されており、車室内の空気が空調用ファンにより前記吸気口から吸気されて、空調用ダクトを通して前記送風口から送風されて循環可能とされ、前記触媒ヒーターにより発生する熱を利用して、前記空調用ダクト内に吸気された空気を調和して車室内に送風することにより前記車室内の空気を調和するものとすることができる。
【0020】
従来では空調においてPTCヒーターに二次電池等の電力を消費する必要があったが、本発明ではその必要性を極力抑え、しかも外気温に左右されることなく効率良く、車室内の空気を調和することが可能である。このため、空調のヒーターのために二次電池等の電力を消費する必要を抑制することができ、その分、航続距離を伸ばすことができる。そして、二次電池の充電頻度や電池自体のライフ、燃料電池の燃料の消費を抑制することができる。
【0021】
このとき、前記空調用ダクト内に、前記触媒ヒーターの触媒が挿入されており、前記触媒ヒーターにより発生する熱によって、前記空調用ダクト内に吸気された空気が暖められて車室内に送風され、車室内が暖房されるものとすることができる。
【0022】
このようなものであれば、触媒ヒーターから発生した熱を効率良く空調用ダクト内に吸気された空気に伝えることができ、効果的に車室内を暖房することが可能である。
【0023】
あるいは、前記触媒ヒーターは、前記触媒に接続された熱伝導体をさらに有し、前記空調用ダクト内に、前記触媒ヒーターの熱伝導体が挿入されており、前記触媒ヒーターにより発生する熱によって、前記熱伝導体を介して、前記空調用ダクト内に吸気された空気が暖められて車室内に送風され、車室内が暖房されるものとすることができる。
【0024】
このようなものであれば、車室内が暖房されるに伴って、触媒ヒーターから排出されるもの(例えば水)が、直接、空調用ダクトを通して車室内に送られることを防止することができる。
【0025】
また、前記空調用ダクトは、人が座る座席内に通されており、前記触媒ヒーターにより発生する熱によって、前記空調用ダクト内に吸気された空気が暖められることで、さらに前記座席が個別に温められるものとすることができる。
【0026】
このようなものであれば、暖められた空調用ダクト内の空気で、座席をさらに温めることができるので好ましい。
【0027】
また、前記触媒ヒーターは、前記触媒を担持するセラミックスまたはステンレス製の担体をさらに有し、前記送風口を通して、前記担体から遠赤外線が輻射されることで人が暖められるものとすることができる。
【0028】
このようなものであれば、担体から輻射される遠赤外線によって人をさらに暖めることが可能となるので好ましい。
【0029】
また、前記自動車は、冷媒を収容する冷媒室をさらに有して前記車室内を冷房する機能を具備しており、前記空調用ダクトは前記冷媒室内を通っており、冷媒室内の冷媒が前記触媒ヒーターにより加熱され、ヒートポンプ方式によって、前記空調用ダクト内に吸気された空気が冷やされて車室内に送風され、車室内が冷房されるものとすることができる。
【0030】
このようなものであれば、触媒ヒーターにより加熱され気化した冷媒が、冷えて一旦凝結し、その後、ヒートポンプ方式で、その凝結した冷媒が空調用ダクト内の空気から熱を奪って再度気化することによって、空調用ダクト内の空気を冷やすことができる。そしてその結果、車室内を冷房することが可能である。
【0031】
このとき、前記冷媒はHFO−1234yf、HFO−1234zf、およびそれらの異性体、二酸化炭素のいずれかであるのが好ましい。
冷媒がこのようなものであれば、地球温暖化係数が低く環境にやさしい。
【0032】
このとき、前記自動車は、ダイレクトメタノール型燃料電池をさらに備えており、前記空調用ファンは、前記ダイレクトメタノール型燃料電池で駆動可能なものであるのが好ましい。
さらには、前記ダイレクトメタノール型燃料電池は、メタノールの供給源として、前記触媒ヒーターの前記燃料タンクを共用するものとすることができる。
【0033】
空調用ファンがダイレクトメタノール型燃料電池で駆動可能なものであれば、空調用ファンを駆動させるのに二次電池等の電力を消費する必要性をなくすことができるため、電池の充電頻度、さらには電池のライフ、航続距離の改善をより一層図ることが可能である。
さらにメタノールの供給源として、触媒ヒーターの燃料タンクを共用するのであれば、効率良く空調システムを作動させることができるし、ダイレクトメタノール型燃料電池のための新たな燃料タンクも設ける必要がないため、重量やスペースの面でより優れたものとなる。
【0034】
また、前記車室の屋根には、太陽電池をさらに備えており、前記空調用ファンは、前記太陽電池で駆動可能なものとすることができる。
このようなものであれば、空調用ファンを駆動させるための二次電池等の電力を必要とせず、太陽電池により空調用ファンを駆動させることができ、二次電池の充電頻度・ライフ、航続距離を改善することができる。
【0035】
さらに、前記自動車は、前記空調用ファンに回転を伝達する機構を有する外気用ファンと、外気が通過可能な外気用ダクトをさらに備えており、該外気用ダクト内に前記外気用ファンは配設されており、前記外気用ダクトを走行時に通過する外気によって前記外気用ファンが回転されて、該外気用ファンの回転が伝達されることで前記空調用ファンが回転可能なものとすることができる。
【0036】
このようなものであれば、空調用ファンを駆動させるための二次電池等の電力を必要とせず、走行時のラム圧により空調用ファンを駆動させることができ、二次電池の充電頻度・ライフ、航続距離を改善することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の温調システムであれば、電気自動車等において、寒冷地等においても自動車等の各部の温度を簡便に調節することができ、それによって自動車等の能力の低下を防止し、快適な環境下で走行等させることができる。また、自動車各部を温めるにあたって二次電池等の電力の消費を極力抑えることができ、自動車の航続距離を伸ばしたり、電池のライフを伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の温調システムの一例を示す概略図である。
【図2】触媒ヒーターから発生する熱を利用して液媒体を加温する仕組みの一例を示す説明図である。
【図3】触媒ヒーターから発生する熱を利用して液媒体を加温する仕組みの他の一例を示す説明図である。
【図4】二次電池を温める仕組みの一例を示す説明図である。
【図5】座席を温める仕組みの一例を示す説明図である。
【図6】本発明の温調システムの他の一例を示す概略図である。
【図7】触媒ヒーターを用いた車室内の暖房の仕組みの一例を示す説明図である。
【図8】触媒ヒーターを用いた車室内の暖房の仕組みの他の一例を示す説明図である。
【図9】触媒ヒーターを用いた車室内の冷房の仕組みの一例を示す説明図である。
【図10】ラム圧を利用した空調用ファンの回転の仕組みの一例を示す説明図である。
【図11】実施例、比較例における電池の放電温度特性を示すグラフである。
【図12】電池の放電温度特性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来における電気自動車等では、寒冷地など気温が低い場合において始動が比較的スムーズに行われなかったり、走行自体の能力に低下がみられていた。
本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、まず、この自動車としての能力の低下は、その外気温の低さにより二次電池自体の温度が低下していることに原因があることを見出した。
【0040】
ここで電池の放電温度特性について説明する。
図12に電池の放電温度特性の一例を示す。縦軸が電圧、横軸が放電容量を表しており、充電後に一定の電流値で放電を行い続けた場合の電圧と放電容量の関係が示されている。環境温度が−20℃、0℃、20℃の場合についてそれぞれ示した。
【0041】
環境温度が低いほど当然電池の温度も低く、また、図12からわかるように、環境温度が低い(電池の温度が低い)ほど放電中におけるセル電圧が低いことがわかる。
【0042】
したがって、電気自動車等の二次電池において、寒冷地などの外気温が低く二次電池の温度も低い状況だと、外気温が高い状況に比べて十分な電圧を得られにくくなり、そのため十分な電力をモーターに供給しにくくなる。すなわち、このように寒冷地等においては、始動時や走行時において能力が低下すると考えられる。
また、寒冷地等においては車室内や座席等も冷えており、車室内の環境も良いとは言えない。
【0043】
一方、上記の二次電池の温度や車室内の環境を改善するため、それらの各部を温める際に、二次電池自体からの電力を用いてしまっては航続距離等に影響が出てしまう。
【0044】
そこで本発明者らは、二次電池からの電力に大きくたよることなく、特には二次電池や座席等の自動車各部の温度を調節可能な温調システムを電気自動車等に組み込めば、寒冷地等での自動車としての性能の低下の防止や、運転時等の車室内環境の改善を図ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に本発明の温調システム1の一例の概略を示す。なお、図1では、本発明の温調システム1が組み込まれた自動車2を合わせて図示している。
また、ここでは自動車2は二次電池を搭載した電気自動車を例に挙げて説明するが、その他ハイブリッド車(特には電気で駆動させる割合が高いもの)、燃料電池(および二次電池)を搭載した燃料電池自動車とすることもできる。
【0046】
自動車2は人が乗るための車室3の他、モーター室4、車輪5を備えており、モーター室4内には二次電池6およびモーター7が搭載されている。車輪5は、二次電池6によってモーター7を回転させることで駆動させることができる。
なお、図1では、モーター室4は自動車2の下部に設けられているが、これに限定されず、他の条件に応じて適切な位置に設けることができる。
【0047】
そして、このような自動車2に組み込まれた本発明の温調システム1の構成としては、送液管8、ポンプ9、触媒ヒーター10、液媒体11が挙げられる。
送液管8は環状になっており、温調する自動車各部(二次電池6や座席12(図5参照)等)を経由して配設されている。該送液管8内には液媒体11が収容されており、送液管8を通じて、ポンプ9によって自動車各部を液媒体11が循環可能になっている。
【0048】
また、触媒ヒーター10が配設されており、該触媒ヒーター10によって発生する熱を利用して、送液管8内の液媒体11が加温されるよう構成されている。そして、このように循環可能に送液管8内を流れる液媒体11が加温されることにより、加温された液媒体11が二次電池6や座席12等の自動車各部を循環し、それらの温度を調節することができる。
【0049】
以下、本発明の温調システム1の各部についてさらに詳述する。
まず、触媒ヒーター10についてさらに説明する。
図2は、触媒ヒーターから発生する熱を利用して液媒体を加温する仕組みの一例を示すものである。
【0050】
触媒ヒーター10は、触媒13が担持された担体(触媒体14)と燃料タンク15を有している。触媒体14と燃料タンク15の間には、燃料供給管16と、燃料の他に酸化性ガス(例えば空気)が透過可能な燃料透過膜17が配設されており、これらを通して燃料タンク15内の燃料を触媒13を有する触媒体14へ供給可能になっている。
【0051】
触媒13としては、例えば、プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、鉄、ルテニウム、モリブデン、タングステン、スズ、ニオブ系あるいはチタン系の酸化物に炭素および窒素を配合したもの、及びそれらの組合せからなるものが挙げられるが、特にこれらに限定されない。この他、一般的に触媒ヒーターで用いられる触媒を用いることができる。
また、形状も特に限定されないが、表面積を大きくし、反応効率を上げるために、例えば1〜100nmの微粒子のものを用いると好ましい。
【0052】
担体としては、例えば、アルミナ、シリカ、ゼオライト等のセラミック系、アルミニウム、ステンレス等の金属系、または、硝子繊維、ポリイミド、PTFE等のものが挙げられるが、特にこれらに限定されない。この他、一般的に触媒ヒーターで用いられる担体を用いることができる。
なお、特には、例えばアルミナ系やジルコニア系のファインセラミックス、ステンレス、炭化珪素、カーボン等を担体とすることで、後述するような遠赤外線を輻射するものとすることができる。
また、形状も特に限定されないが、例えば、効率を考慮してハニカム状のものを用いることができる。
【0053】
これらの触媒13、担体は、使用する燃料等に応じて適宜決定することができる。条件に応じて、触媒13、担体を選択し、例えば触媒13を担体に均一にコーティングすることにより、適切な触媒体14を用意することができる。
【0054】
また、燃料タンク15は使用する燃料を適切に貯蔵することができるものであれば良い。大きさや形状等は、自動車2の内部のスペースに応じて適宜決定することができる。
【0055】
そして、燃料は、例えば、水素やメタノール、エタノール等のアルコール類、プロパン、ブタン等の炭化水素類などが挙げられるが、これらに限定されず、その都度、適切なものを用意することができる。特にはメタノールであれば、触媒ヒーターの燃料としてよく用いられているので好ましい。
【0056】
また、燃料供給管16の形状、数等は特に限定されない。適切に燃料を触媒体14に供給することができれば良い。
燃料透過膜17としては、触媒ヒーター10の温度が高温になるため、例えば、耐熱温度の高いセラミックフィルターやグラスウール、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、シリコーンゴムなどが挙げられる。これ以外にも、その都度適切なものを用意することができる。このような燃料透過膜17を配設すれば、燃料は燃料透過膜17を浸透して拡散するため、触媒体14に均一に燃料を供給することができる。
【0057】
ここで、触媒ヒーターから発生する熱を利用して液媒体を加温する仕組み(熱交換器18)は特に限定されず、触媒ヒーターから液媒体へ効率良く熱を伝えることができれば良い。例えば一般的な熱交換器を用いることができる。
図2に示す形態では、触媒体14に空気等の酸化性ガスを供給するための酸化性ガス供給管19が配設されており、触媒ヒーター10の触媒13を有する触媒体14は酸化性ガス供給管19内に配設されている。
【0058】
なお、酸化性ガス供給管19は触媒体14の上流および下流で例えば車外へ通じており、触媒体14に供給する空気等の酸化性ガスは、ファン等を用いて、例えば車外から取り入れることができる。また、触媒13上での反応に使用されなかった酸化性ガスや、反応で生成された水(発生した熱により水蒸気となっている)は車外へ排出することができる。
【0059】
そして、触媒体14の下流付近において、酸化性ガス供給管19に対して送液管8を巻回するように設けられている。あるいは逆に、送液管8に対して酸化性ガス供給管19を巻回することもできる。
【0060】
自動車各部を温めるとき、酸化性ガス供給管19内を通る空気が、触媒体14中の触媒13上へ供給されて、燃料タンク15から供給された燃料と反応する。これによって熱が発生する。そして、触媒ヒーター10から発生した熱や、それによって温められた酸化性ガス供給管19内の空気からの熱により、巻回された送液管8を通して液媒体11が加温される。
このようにして加温された液媒体11が自動車各部へと送液されることにより、自動車各部を温め、温度調節することができる。
【0061】
また、図3に、熱交換器の他の一例を示す。図3に示すように、この熱交換機18の形態では、触媒ヒーター10はさらに熱伝導体20を有している。該熱伝導体20は触媒13を有する触媒体14に接続されており、送液管8内に挿入されている。この熱伝導体20は材質や形状等、特に限定されず、触媒13上で発生した熱を効率良く送液管8内の液媒体11に伝えることができるものを用いれば良い。
一方、触媒体14は送液管8の外に配設されており、触媒体14に空気等の酸化性ガスを供給するための酸化性ガス供給管19が別個に設けられている。
【0062】
自動車各部を温めるとき、燃料タンク15から燃料を、酸化性ガス供給管19から空気等を触媒体14に供給して反応させ、熱を発生させる。この発生した熱が熱伝導体20に伝熱され、この熱伝導体20を介して送液管8内の液媒体11が温められ、それによって自動車各部が温められる。
【0063】
次に、液媒体11について説明する。
液媒体11は、例えば、シリコーンオイル、フッ素系オイル、エチレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されない。凝固等しにくく、効率良く、触媒ヒーター10により発生する熱を受け取り、自動車各部に伝えることができるものであれば良い。
【0064】
また、ポンプ9も特に限定されず、例えば従来からある一般的なものを用いることができる。液媒体11を適切に自動車各部に送液することができればよく、配置位置、数等に関しても限定されず、その都度決定することが可能である。
【0065】
次に、送液管8について述べる。
送液管8は、温度調節が必要な自動車各部に配設されていれば良く、その形状、本数等は特に限定されない。どこに送液管8を配設するかは、適宜決定することができる。
【0066】
なお、二次電池6に対して配設されていると特に好ましい。このとき、送液管8の配設の仕方としては、二次電池6の周囲を巻回するようにして配設することができる。図1、4に二次電池に対して送液管8を配設した場合の一例を示す。当然これに限定されず、二次電池6自体の温度を効率良く、適切に調節できる他の配設の仕方とすることができる。
【0067】
このように二次電池6に対して送液管8を配設し、加温された液媒体11で二次電池6の温度を調節(加温)できるのであれば、寒冷地等においても二次電池6の温度をある程度の温度(例えば20℃)に維持することができ、図12の−20℃、0℃のグラフのように見られるような電圧の低下、電力の低下を防ぐことができる。したがって、モーターに対して十分に電力を与えることができ、スムーズな始動や走行を行うことができ、自動車としての性能の低下を防ぐことが可能である。
【0068】
また、座席12内に送液管8を配設した場合の例を図5に示す。このように座席12内に配設することで、加温された液媒体11によって座席12を温めることができる。弁等を適切に設けることで、各々の座席12を個別に温めることが可能である。
【0069】
また、図5に示すように、触媒ヒーター10を上記座席12内に配設することで、その触媒ヒーター10により発生した熱自体により座席を温めることも可能である。例えば、小型化した触媒ヒーター10を座席12内に複数配設することで、座席12の各位置をより効率的に温めることができる。座席12内に配設する触媒ヒーター10の数、大きさ等は特に限定されない。
なお、この例では、酸化性ガス供給管19内に触媒体14が配設されており、該酸化性ガス供給管19に対して送液管8が巻回されている。
【0070】
また、図6に本発明の温調システムの他の一例を示す。
図6に示すように、液媒体11で温調するのに加えて、さらに、触媒ヒーターを利用して車室3内の空調を行う仕組みを設けることもできる。この場合、自動車2内に空調用ダクト21や空調用ファン22が配設されている。車室3には、車室3内の空気を吸気するための吸気口23や、車室3内に空気を送風するための送風口24が形成されており、これらの吸気口23や送風口24は空調用ダクト21とつながっている。
【0071】
また、空調用ファン22は空調用ダクト21内に配設されており、この空調用ファン22を回転させることで、吸気口23から車室3内の空気を吸気し、空調用ダクト21を通して送風口24から車室3内に空気を送風可能になっている。
このような仕組みにより、車室3内の空気を循環することができる。
【0072】
また、触媒ヒーター10によって発生する熱を利用して、空調用ダクト21内の空気が調和されるよう構成されている。そして、このように循環可能に空調用ダクト21内を流れる空気が調和されることにより、車室3内の空気を調和することができる。
【0073】
ここで、触媒ヒーター10を用いた車室3内の暖房の仕組みについて例を挙げて説明する。なお、当然、本発明はこれに限定されず、触媒ヒーター10を用いた他の車室3内の暖房の仕組みとすることができる。
図7に示すように、この例では、触媒ヒーター10の触媒13を有する触媒体14は空調用ダクト21内に配設されている。この場合、酸化性ガスは空調用ダクト21内を流れる車室3内からの空気である。なお、このとき、送液管8は、空調用ダクト21に対して巻回するように配設することができる(図6参照)が、当然これに限定されない。
車室3内を暖房する場合、空調用ファン22によって吸気口23から吸気され、空調用ダクト21内を通る空気が、触媒体14中の触媒13上へ供給されて、燃料タンク15から供給された燃料と反応する。これによって熱が発生する。そして、発生した熱により、空調用ダクト21内の空気が暖められ、送風口24から送風されて車室3内が暖房される。
【0074】
図8に、触媒ヒーターを用いた車室内の暖房の仕組みの他の一例を示す。図8に示すように、この例では、触媒ヒーター10はさらに熱伝導体20を有しており、空調用ダクト21内に挿入されている。上記熱伝導体20は材質や形状等、特に限定されず、触媒13上で発生した熱を効率良く空調用ダクト21内の空気に伝えることができるものを用いれば良い。
【0075】
一方、触媒体14は空調用ダクト21の外に配設されており、触媒体14に空気等の酸化性ガスを供給するための酸化性ガス供給管19が別個に設けられている。なお、酸化性ガス供給管19は触媒体14の上流および下流で例えば車外へ通じており、触媒体14に供給する空気等の酸化性ガスは、別個に配設したファン等を用いて車外から取り入れることができる。また、触媒13上での反応に使用されなかった酸化性ガスや、反応で生成された水(発生した熱により水蒸気となっている)は車外へ排出される。
なお、このとき、送液管8は、酸化性ガス供給管19や空調用ダクト21に対して巻回するように配設することができるが、当然これに限定されない。
【0076】
暖房の際には、燃料タンク15から燃料を、酸化性ガス供給管19から空気等を触媒体14に供給して反応させ、熱を発生させる。この発生した熱が熱伝導体20に伝熱され、この熱伝導体20を介して空調用ダクト21内の空気が暖められ、それによって車室3内を暖房することができる。
【0077】
また、例えば、図7に示すような場合に担体をセラミックスまたはステンレス製等のものとし、触媒ヒーター10を送風口24の近傍に配置することによって、暖房時に、触媒ヒーター10により発生した熱で空調用ダクト21内の空気を暖めるとともに、上記担体から送風口24を通して輻射される遠赤外線によって、車室3内の人をさらに暖めることが可能である。
【0078】
次に、触媒ヒーター10を用いた車室3内の冷房の仕組みについて一例を挙げて説明する。
図9に示すように、自動車2には、冷媒25を収容する冷媒室26がさらに配設されており、該冷媒室26内を空調用ダクト21が挿通している。また、触媒ヒーター10(特に触媒体14)が、冷媒室26の近傍に配置されている。
【0079】
冷媒25としては、地球温暖化係数の低いフッ素系冷媒HFO−1234yfやHFO−1234zf、およびそれらの異性体、R−134aなどのフッ素系冷媒、二酸化炭素、アンモニア、炭化水素系などが挙げられる。この他、一般的に使用される冷媒を用いることができる。
また、冷媒室26の大きさや形状、冷媒室26を挿通する空調用ダクト21の配置等は特に限定されないが、後述するように、ヒートポンプ方式によって空調用ダクト21内の空気が冷やされるように適宜決定することができる。
さらには、触媒ヒーター10の配置も特に限定されないが、例えば、冷媒25が溜まっている冷媒室26の底付近に配置することができる。このような位置であれば、触媒ヒーター10によって効率良く冷媒25を加熱し、気化させることができる。
【0080】
冷房の際には、触媒ヒーター10の触媒体14に燃料および酸化性ガスが供給され、反応により熱が発生する。この熱によって冷媒室26内の冷媒25が気化する。気化した冷媒25は、その後冷えて、例えば冷媒室26内上方に配置された空調用ダクト21付近で凝結するものの、空調用ダクト21内の空気から熱を奪い、再度気化する。このようなヒートポンプ方式によって、空調用ダクト21内の空気を冷やして車室3内を冷房することができる。
なお、当然この例に限定されず、触媒ヒーター10を用いた他の冷房の仕組みとすることができる。
【0081】
なお、暖房および冷房の空調に使用する触媒ヒーター10は、全体で複数の触媒ヒーター10を、暖房用あるいは冷房用として、それぞれ別個独立して配設することができる。
また、逆に、1つ(あるいは複数)の触媒ヒーター10を用意し、暖房用および冷房用として兼用して配設することも可能である。例えば、図8、9に示す例を組み合わせ、1つの触媒ヒーター10を、熱伝導体20を介して空調用ダクト21内の空気を暖めるのに使用することができる一方で、冷媒25を加熱し、ヒートポンプ方式によって空調用ダクト21内の空気を冷やすのに使用することもできる。この場合、暖房とするか冷房とするかは、空調用ダクト21を分岐しておき、いずれのダクトを流通するかを切り換えるようにすれば良い。
さらには、触媒ヒーター10は、液媒体11を加温するのにも、空調用と兼用することも、別個独立して有するようにすることもできる。
【0082】
次に、空調用ダクト21についてさらに説明する。
空調用ダクト21は、吸気口23と送風口24とつながれて、車室3内の空気が循環可能となっており、触媒ヒーター10により、内部の空気が調和されるように配設されていれば良い。
吸気口23や送風口24の数や配置は特に限定されない。空調用ダクト21の形状や本数等も特に限定されず、車室3内の空気の循環・調和が効率良く行われるように、条件に応じて適宜決定することができる。
【0083】
例えば、暖房のための空調用ダクトと冷房のための空調用ダクトを別個に用意し、吸気口23や送風口24の付近でこれらが合流するよう配設することができる。弁等を用いて、暖房時あるいは冷房時に適切な方向へ空気が流れるようにすることができる。
あるいは、暖房用と冷房用とで1本の空調用ダクトを共有することもできる。この場合、省スペースとすることができる。
また、さらに車外とつなげて、外気と車室3内とで空気のやり取りを行うことも可能である。
【0084】
さらには、空調用ダクト21を座席内に通すことができる。この場合、例えば、図5において、酸化性ガス供給管19の代わりに空調用ダクト21を設ければ良い。
【0085】
次に、空調用ファンについてさらに説明する。
車室3内の空気が、吸気口23から吸気され、空調用ダクト21を通して送風口24から送風されるように、他の各部の条件に応じて、適切な形状、数の空調用ファン22を空調用ダクト21内の適切な位置に配設することができる。例えば、従来と同様の形状のものを用いることができる。
【0086】
この空調用ファン22を回転駆動させる手段は特に限定されず、二次電池6を用いることもできるが、好ましくは、例えば以下に示す例のような別個の手段を具備することにより、二次電池6の電力を空調のために消費させることを防ぐことができる。すなわち、二次電池6の電力を、車輪5の駆動のためにより多く費やすことができ、走行距離を一層伸ばすことが可能になる。
【0087】
まず、図6に示すように、例えば自動車2の車室3の屋根に太陽電池27を配設し、該太陽電池27から空調用ファン22に電力を供給することができる。この太陽電池27の大きさ、配置等は必要な電力に応じて適宜決定することができる。
【0088】
また、図6に示すように、ダイレクトメタノール型燃料電池28をさらに配設し、これを用いて空調用ファン22を回転駆動させることができる。この場合、触媒ヒーター10の燃料としてメタノールを用いるのであれば、ダイレクトメタノール型燃料電池28のメタノールの供給源として、触媒ヒーター10の燃料タンク15を共用させることも可能である。ダイレクトメタノール型燃料電池28と触媒ヒーター10とで燃料タンク15を共用することで、新たな燃料タンクを用意する必要がなくなり、その分、重量を軽くすることができるし、省スペースとすることが可能である。
【0089】
さらには、走行時(特に高速走行時)には外気のラム圧を利用して空調用ファン22を回転駆動させる方法が挙げられる。図10に、ラム圧を利用した空調用ファンの回転の仕組みの一例を示す。
図10に示す回転の仕組みは、空調用ファン22の他、外気用ファン29と、該外気用ファン29が内部に配設された外気用ダクト30を有している。外気用ダクト30は車外につながっており、外気が内部を通過可能になっている。また、外気用ファン29は、傘歯車等を用いて自身の回転を空調用ファン22に伝達する機構を有している。
すなわち、走行時には外気が外気用ダクト30内に入り込み、外気用ダクト内を通過し、内部の外気用ファン29がラム圧によって回転し、この外気用ファン29の回転が伝達機構で伝達されることで、空調用ファン22が回転する仕組みになっている。
【0090】
外気用ファン29の、空調用ファン22に回転を伝達する機構は特に限定されず、空調用ファン22に回転を伝達できるものであれば良い。
例えば、図10では単純に傘歯車を用いて外気用ファン29の回転を空調用ファン22に伝達している。また、空調用ファン22および外気用ファン29は共に水車状のファンであり、互いに軸心を共有した同軸とすることもできる。すなわち、外気用ファン29がラム圧で回転することで、同軸の空調用ファン22が回転可能な機構である。
【0091】
あるいは、別個に蓄電池が配設され、該蓄電池に外気用ファン29が接続されており、外気用ファン29がラム圧で回転することにより蓄電池に蓄電され、これを用いて空調用ファン22を回転させるような機構とすることも可能である。
当然、これらに限定されず、その都度、適切な回転機構を用意することができる。
【0092】
本発明においては、停車時や低速走行時には、太陽電池27やダイレクトメタノール型燃料電池28を用いて空調用ファン22を回転駆動させ、高速走行時には外気用ファン29等からなる上記仕組みを用いて空調用ファン22を回転駆動させることができる。また、これらを適宜組み合わせて同時に用いることで、より安定的に空調用ファン22を回転駆動させることも可能である。
【0093】
以上のように、このような空調機構をさらに備えていれば、触媒ヒーター10によって発生する熱を利用することによって、車室3内の空気を調和(暖房および冷房)することも可能である。
触媒ヒーター10を用いるので、従来の電気自動車等のPTCヒーターのように二次電池6の電力を空調に消費させることを防ぎ、航続距離を従来に比べて格段に伸ばすことが可能である。したがって、二次電池の充電頻度を低減させることができ、電池自体のライフも延ばすことができる。
燃料電池自動車であれば、空調に費やす電力をなくすことができるので、車輪駆動以外のために燃料電池の燃料が減少するのを防ぎ、航続距離を伸ばすことができる。
【0094】
また、外気から熱をくみ上げるヒートポンプ方式の空調システムでは、例えば寒冷地での暖房は効率が著しく低い。しかし、上記空調機構を備えた触媒ヒーター10を用いた本発明の温調システム1であれば、外気温に左右されず、効率良く、安定して車室3内の暖房等の空調も行うことができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
二次電池について、外気温が−20℃、0℃の環境下でそれぞれ放電して放電特性を調べた。
このとき、図1に示す触媒ヒーター10を有する本発明の温調システム1を用い、触媒ヒーターからの熱を利用して液媒体を加温し、二次電池を予め温めておいた。さらには同様に温めながら所定の電流を放電させ続けて放電特性を調べた。
なお、外気温が20℃のときと同じ温度になるように二次電池を温めた。また、触媒ヒーター10の燃料としてメタノールを用いた。
このようにして得られた、外気温が−20℃、0℃の場合の放電特性を図11に示す。
【0096】
なお、比較のために外気温が20℃の場合の放電特性を一緒に示す。この外気温が20℃の場合の放電特性の調査方法は、二次電池の温度の調節を行わなかったこと以外は上記と同様の手順である。
【0097】
図11から分かるように、本発明の温調システムによって二次電池を温めることにより、外気温が−20℃や0℃といった場合であっても、外気温が20℃のときとほぼ同様の電圧、そして電力を得ることが可能である。
【0098】
この結果、本発明の温調システム1を備えた電気自動車等であれば、寒冷地等であっても外気温が20℃のときのようにモーターに十分な電力を簡便に供給することができ、従来のような始動時や走行時の能力の低下を防止することができる。しかも、この場合、二次電池を温めるのに、一切、二次電池の電力を使用していないので、航続距離への影響はない。
【0099】
(比較例1)
本発明の温調システム1を用いることなく二次電池を温めないまま、それ以外は実施例と同様にして、二次電池について、外気温が−20℃、0℃の環境下でそれぞれ放電して放電特性を調べた。
【0100】
この結果、図12と同様の放電特性が得られた。すなわち、外気温が20℃の場合と比較して0℃では電圧の低下が見られた。−20℃の場合はさらに電圧が低くなっている。したがって、十分な電圧が得られにくくなる。
そのため、本発明の温調システム1を備えていない電気自動車等では、寒冷地など外気温が低い場合、十分な電力が比較的得られにくくなり、始動や走行がスムーズに行われなくなってしまう。
【0101】
(実施例2)
図6に示すような本発明の温調システム1を用意し(なお、図5のように、別個に用意した座席内に送液管を通した)、外気0℃の環境下で、本発明の温調システム1を用い、二次電池および座席を温めるとともに車室と同程度の空間を所定時間暖房して一定温度(20℃)に保つ実験を行った。
【0102】
この結果、実施例1と同様に二次電池を温めることができ、また座席も十分に温めることができた。さらには、空調用ファンの回転駆動のため二次電池の電力を少量使用したが、上記空間を20℃の一定温度に32時間保つことができた。
【0103】
(比較例2)
実施例2と同様の二次電池を用意し、本発明の温調システム1を使用せず、従来法のように二次電池を利用したPTCヒーターを用いる以外は、実施例2と同様にして暖房を行った。
【0104】
この結果、20℃一定に6時間保つことができたが、暖房するにあたってPTCヒーターに二次電池の電力が3割程度使用された。
【0105】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0106】
1…本発明の温調システム、 2…自動車、 3…車室、 4…モーター室、
5…車輪、 6…二次電池、 7…モーター、 8…送液管、
9…ポンプ、 10…触媒ヒーター、 11…液媒体、 12…座席、
13…触媒、 14…触媒体、 15…燃料タンク、 16…燃料供給管、
17…燃料透過膜、 18…熱交換器、
19…酸化性ガス供給管、 20…熱伝導体、
21…空調用ダクト、 22…空調用ファン、 23…吸気口、
24…送風口、 25…冷媒、 26…冷媒室、 27…太陽電池、
28…ダイレクトメタノール型燃料電池、 29…外気用ファン、
30…外気用ダクト。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、車輪をモーターで駆動させるための二次電池または燃料電池を搭載したモーター室と、人が乗るための車室を備えた自動車において、該自動車に組み込まれ、自動車各部の温度を調節する温調システムであって、
前記温調システムは、少なくとも、触媒と該触媒に燃料を供給するための燃料タンクとを備えた1つ以上の触媒ヒーターと、液媒体を有しており、
前記液媒体が、前記触媒ヒーターにより発生する熱を利用して加温されるとともに前記自動車各部に対して循環することにより、自動車各部の温度を調節するものであることを特徴とする温調システム。
【請求項2】
前記触媒ヒーターにより発生する熱を前記液媒体に伝えるための熱交換器をさらに備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の温調システム。
【請求項3】
前記温度が調節される自動車各部は、少なくとも前記二次電池であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の温調システム。
【請求項4】
前記温度が調節される自動車各部には、人が座る座席が含まれていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項5】
前記触媒ヒーターは、前記座席内に小型化されて配置されており、触媒ヒーターにより発生する熱によって、さらに前記座席が温められるものであることを特徴とする請求項4に記載の温調システム。
【請求項6】
前記燃料はメタノールであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項7】
前記自動車は、空調用ダクトと空調用ファンをさらに備えており、
前記空調用ダクトは、車室に形成された、車室内の空気を吸気するための吸気口と車室内に空気を送風するための送風口につながれており、該空調用ダクト内に前記空調用ファンが配設されており、車室内の空気が空調用ファンにより前記吸気口から吸気されて、空調用ダクトを通して前記送風口から送風されて循環可能とされ、
前記触媒ヒーターにより発生する熱を利用して、前記空調用ダクト内に吸気された空気を調和して車室内に送風することにより前記車室内の空気を調和するものであることを特徴とする請求項1から請求項6に記載の温調システム。
【請求項8】
前記空調用ダクト内に、前記触媒ヒーターの触媒が挿入されており、前記触媒ヒーターにより発生する熱によって、前記空調用ダクト内に吸気された空気が暖められて車室内に送風され、車室内が暖房されるものであることを特徴とする請求項7に記載の温調システム。
【請求項9】
前記触媒ヒーターは、前記触媒に接続された熱伝導体をさらに有し、前記空調用ダクト内に、前記触媒ヒーターの熱伝導体が挿入されており、前記触媒ヒーターにより発生する熱によって、前記熱伝導体を介して、前記空調用ダクト内に吸気された空気が暖められて車室内に送風され、車室内が暖房されるものであることを特徴とする請求項7に記載の温調システム。
【請求項10】
前記空調用ダクトは、人が座る座席内に通されており、前記触媒ヒーターにより発生する熱によって、前記空調用ダクト内に吸気された空気が暖められることで、さらに前記座席が個別に温められるものであることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項11】
前記触媒ヒーターは、前記触媒を担持するセラミックスまたはステンレス製の担体をさらに有し、前記送風口を通して、前記担体から遠赤外線が輻射されることで人が暖められるものであることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項12】
前記自動車は、冷媒を収容する冷媒室をさらに有して前記車室内を冷房する機能を具備しており、前記空調用ダクトは前記冷媒室内を通っており、冷媒室内の冷媒が前記触媒ヒーターにより加熱され、ヒートポンプ方式によって、前記空調用ダクト内に吸気された空気が冷やされて車室内に送風され、車室内が冷房されるものであることを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項13】
前記冷媒はHFO−1234yf、HFO−1234zf、およびそれらの異性体、二酸化炭素のいずれかであることを特徴とする請求項12に記載の温調システム。
【請求項14】
前記自動車は、ダイレクトメタノール型燃料電池をさらに備えており、前記空調用ファンは、前記ダイレクトメタノール型燃料電池で駆動可能なものであることを特徴とする請求項7から請求項13のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項15】
前記ダイレクトメタノール型燃料電池は、メタノールの供給源として、前記触媒ヒーターの前記燃料タンクを共用するものであることを特徴とする請求項14に記載の温調システム。
【請求項16】
前記車室の屋根には、太陽電池をさらに備えており、前記空調用ファンは、前記太陽電池で駆動可能なものであることを特徴とする請求項7から請求項15のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項17】
前記自動車は、前記空調用ファンに回転を伝達する機構を有する外気用ファンと、外気が通過可能な外気用ダクトをさらに備えており、該外気用ダクト内に前記外気用ファンは配設されており、
前記外気用ダクトを走行時に通過する外気によって前記外気用ファンが回転されて、該外気用ファンの回転が伝達されることで前記空調用ファンが回転可能なものであることを特徴とする請求項7から請求項16のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項1】
少なくとも、車輪をモーターで駆動させるための二次電池または燃料電池を搭載したモーター室と、人が乗るための車室を備えた自動車において、該自動車に組み込まれ、自動車各部の温度を調節する温調システムであって、
前記温調システムは、少なくとも、触媒と該触媒に燃料を供給するための燃料タンクとを備えた1つ以上の触媒ヒーターと、液媒体を有しており、
前記液媒体が、前記触媒ヒーターにより発生する熱を利用して加温されるとともに前記自動車各部に対して循環することにより、自動車各部の温度を調節するものであることを特徴とする温調システム。
【請求項2】
前記触媒ヒーターにより発生する熱を前記液媒体に伝えるための熱交換器をさらに備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の温調システム。
【請求項3】
前記温度が調節される自動車各部は、少なくとも前記二次電池であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の温調システム。
【請求項4】
前記温度が調節される自動車各部には、人が座る座席が含まれていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項5】
前記触媒ヒーターは、前記座席内に小型化されて配置されており、触媒ヒーターにより発生する熱によって、さらに前記座席が温められるものであることを特徴とする請求項4に記載の温調システム。
【請求項6】
前記燃料はメタノールであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項7】
前記自動車は、空調用ダクトと空調用ファンをさらに備えており、
前記空調用ダクトは、車室に形成された、車室内の空気を吸気するための吸気口と車室内に空気を送風するための送風口につながれており、該空調用ダクト内に前記空調用ファンが配設されており、車室内の空気が空調用ファンにより前記吸気口から吸気されて、空調用ダクトを通して前記送風口から送風されて循環可能とされ、
前記触媒ヒーターにより発生する熱を利用して、前記空調用ダクト内に吸気された空気を調和して車室内に送風することにより前記車室内の空気を調和するものであることを特徴とする請求項1から請求項6に記載の温調システム。
【請求項8】
前記空調用ダクト内に、前記触媒ヒーターの触媒が挿入されており、前記触媒ヒーターにより発生する熱によって、前記空調用ダクト内に吸気された空気が暖められて車室内に送風され、車室内が暖房されるものであることを特徴とする請求項7に記載の温調システム。
【請求項9】
前記触媒ヒーターは、前記触媒に接続された熱伝導体をさらに有し、前記空調用ダクト内に、前記触媒ヒーターの熱伝導体が挿入されており、前記触媒ヒーターにより発生する熱によって、前記熱伝導体を介して、前記空調用ダクト内に吸気された空気が暖められて車室内に送風され、車室内が暖房されるものであることを特徴とする請求項7に記載の温調システム。
【請求項10】
前記空調用ダクトは、人が座る座席内に通されており、前記触媒ヒーターにより発生する熱によって、前記空調用ダクト内に吸気された空気が暖められることで、さらに前記座席が個別に温められるものであることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項11】
前記触媒ヒーターは、前記触媒を担持するセラミックスまたはステンレス製の担体をさらに有し、前記送風口を通して、前記担体から遠赤外線が輻射されることで人が暖められるものであることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項12】
前記自動車は、冷媒を収容する冷媒室をさらに有して前記車室内を冷房する機能を具備しており、前記空調用ダクトは前記冷媒室内を通っており、冷媒室内の冷媒が前記触媒ヒーターにより加熱され、ヒートポンプ方式によって、前記空調用ダクト内に吸気された空気が冷やされて車室内に送風され、車室内が冷房されるものであることを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項13】
前記冷媒はHFO−1234yf、HFO−1234zf、およびそれらの異性体、二酸化炭素のいずれかであることを特徴とする請求項12に記載の温調システム。
【請求項14】
前記自動車は、ダイレクトメタノール型燃料電池をさらに備えており、前記空調用ファンは、前記ダイレクトメタノール型燃料電池で駆動可能なものであることを特徴とする請求項7から請求項13のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項15】
前記ダイレクトメタノール型燃料電池は、メタノールの供給源として、前記触媒ヒーターの前記燃料タンクを共用するものであることを特徴とする請求項14に記載の温調システム。
【請求項16】
前記車室の屋根には、太陽電池をさらに備えており、前記空調用ファンは、前記太陽電池で駆動可能なものであることを特徴とする請求項7から請求項15のいずれか一項に記載の温調システム。
【請求項17】
前記自動車は、前記空調用ファンに回転を伝達する機構を有する外気用ファンと、外気が通過可能な外気用ダクトをさらに備えており、該外気用ダクト内に前記外気用ファンは配設されており、
前記外気用ダクトを走行時に通過する外気によって前記外気用ファンが回転されて、該外気用ファンの回転が伝達されることで前記空調用ファンが回転可能なものであることを特徴とする請求項7から請求項16のいずれか一項に記載の温調システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−5159(P2012−5159A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134810(P2010−134810)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(593145766)美浜株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(593145766)美浜株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]