説明

測位組み合わせ決定システム

【課題】目標とする測位精度を達成可能な走行環境に合わせた好適な測位組み合わせを、対象とする走行環境内での実機実験なしに選択可能とする、即ち、低コストで目標とする測位精度を達成可能な測位組み合わせを決定する。
【解決手段】ビークルで用いる複数測位手段の組み合わせを決定するシステム(1)であって、走行環境中の場所毎に決定される測位精度影響パラメータを記憶する手段(7)と、測位精度影響パラメータと複数測位手段の測位精度との関係を記憶する手段(9)と、測位精度影響パラメータと複数測位手段との対応情報を記憶する手段(6)と、走行環境における測位精度影響パラメータを取得する手段(8)と、その測位精度影響パラメータの対応情報を取得し、その対応情報に基づいて前記関係を参照して走行環境中の各位置における複数測位手段の測位精度を予測する手段(10)と、を備え、複数測位手段の組み合わせに対する測位精度を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動車や物流搬送ロボットなどのビークルにおいて、複数の測位手段を組み合わせて自己位置推定を行う技術に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、以下の特許文献1や非特許文献1、非特許文献2などに示されるように、自動車やロボットなどのビークル(移動体。人や物等を搭載するものやしないものを含む。)において自己位置推定を行う場合に、GPS(Global Positioning System)や各種ランドマークなどの複数の測位手段を組み合わせることが高精度化や信頼性向上に有効であることが知られている。この中で、対象とする走行環境毎に有効性の高い測位手段は異なるため、何らかの方法によって走行環境に合った測位手段の組み合わせを決定する必要があることも知られている。
【0003】
また、以下の特許文献2などに示されるように、測位手段を組み合わせることなくGPSのみを用いた測位に関しては、対象とする走行環境における測位精度をシミュレーションする技術が提案されている。
【0004】
なお、前述した各種ランドマークを用いた測位とは、走行環境中に存在する目印(即ちランドマーク)として利用可能な、位置が既知である静止物体、即ち、木、電柱、建物壁などを基準として用いた測位である。また、GPSによる測位は、即ち、GPS衛星をランドマークとして用いた測位であると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−219332号公報「位置情報処理装置」
【特許文献2】特開2004−163424号公報「GPSシミュレーションシナリオを用いて、所定の道程に沿った現実の走行実験をシミュレーションするためにGPSシミュレーションシナリオを生成する方法及びGPSシミュレーションシナリオを用いて、所定の道程に沿った現実の走行実験をシミュレーションするために、GPSシミュレーションシナリオを生成する方法を実施する装置」
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「ビークル」、金井 喜美雄 ほか、コロナ社、2003年
【非特許文献2】「Probabilistic Robotics」、Sebastian Thrun, Wolfram Burgard, and Dieter Fox、The MIT Press、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来においては、いかにして走行環境に対して好適な測位組み合わせを選択するかという課題がある。前述した先行技術文献では、測位組み合わせが既知であった場合の自己位置推定技術に関する詳細な記述があるが、好適な測位組み合わせを決定する方法は明記されていない。あるいは、GPSを用いた場合の測位精度予測を可能とする技術が記載されているが、複数の測位手段を組み合わせた際の測位精度予測を実現するための明確な方法は示されていない。
【0008】
即ち、従来の測位組み合わせの決定方法は、測位組み合わせを仮決定した後に、当該測位手段の組み合わせを搭載したビークルを構築し、対象とする走行環境内で実機実験をして初めて測位精度での評価ができるものであった。よって、実機実験で目標とする測位精度を達成できない場合には、測位組み合わせを仮決定する時点から再度やり直す必要があり、費用と時間のコストが高いことが課題となっていた。
【0009】
そこで本発明では、前述した課題に鑑み、低コストで目標とする測位精度を達成可能な測位組み合わせを決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
対象とする走行環境における各測位手段の測位精度が事前に予測できれば、実機実験を行うことなく、低コストで目標とする測位精度を達成するのに好適な測位手段の組み合わせを決定できる。しかしながら、各測位手段の測位精度は走行環境毎に異なるため事前に知ることは困難であり、従来は当該測位手段を搭載したビークルを構築した後に、実際に走行環境内で測位を行って初めて測位精度が判明する、という状況であった。そこで、本発明では、以下に述べる本発明者の知見に基づくことで、当該課題を解決する。
【0011】
即ち、各測位手段の測位精度は、各測位手段が用いるランドマークの配置やランドマーク位置検出精度に依存しており、これらは数値パラメータとして表現できる。また、当該パラメータは実機を用いて実際に測位を行うことなく調査可能である。更に、当該パラメータと各測位手段の測位精度の関係をデータベースとして保持しておくことによって、実際に測位を行うことなく、事前に当該データベースを参照することで、対象とする走行環境における各測位手段の測位精度を予測することが可能である。もって、各測位手段の予測精度から、目標とする測位精度を達成するのに好適な測位手段の組み合わせを決定することができる。
【0012】
以上より、本発明によれば、前述した目的を達成するため、ビークルで用いる複数測位手段の組み合わせを決定する測位組み合わせ決定システムであって、走行環境中の場所毎に決定される測位精度影響パラメータを記憶する測位精度影響パラメータ地図記憶手段と、前記測位精度影響パラメータと前記複数測位手段の測位精度との関係を記憶する測位精度データベース記憶手段と、前記測位精度影響パラメータと前記複数測位手段との対応情報を記憶する測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段と、を備えており、更に、前記走行環境における前記測位精度影響パラメータを前記測位精度影響パラメータ地図記憶手段から取得する測位精度影響パラメータ取得手段と、前記測位精度影響パラメータ取得手段から得る前記測位精度影響パラメータの対応情報を前記測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段から取得し、前記対応情報に基づいて前記測位精度データベース記憶手段を参照することで、前記走行環境中の各位置における前記複数測位手段の測位精度を予測する測位精度予測手段と、を備えており、前記測位精度予測手段は、前記複数測位手段の組み合わせに対する測位精度を予測することを特徴とする。
詳細は、後記する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低コストで目標とする測位精度を達成可能な測位組み合わせを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係わる複数測位手段の組み合わせを決定するシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】GPSを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータを示す図である。
【図3】GPSを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータを示す図である。
【図4】木ランドマークを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータを示す図である。
【図5】電柱ランドマークを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータを示す図である。
【図6】建物壁ランドマークを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータを示す図である。
【図7】建物壁ランドマークを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータを示す図である。
【図8】対象とする走行環境を示す平面地図である。
【図9】GPSを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータを記憶する測位精度影響パラメータ地図のデータ形式を示す図である。
【図10】GPSを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータを記憶する測位精度影響パラメータ地図のデータ形式を示す図である。
【図11】木ランドマークを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータを記憶する測位精度影響パラメータ地図のデータ形式を示す図である。
【図12】電柱ランドマークを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータを記憶する測位精度影響パラメータ地図のデータ形式を示す図である。
【図13】建物壁ランドマークを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータを記憶する測位精度影響パラメータ地図のデータ形式を示す図である。
【図14】測位精度影響パラメータと測位精度の関係を表す測位精度データベースのデータ形式を示す図である。
【図15】測位精度影響パラメータと測位精度の関係を表す測位精度データベースのデータ形式を示す図である。
【図16】測位手段と測位精度影響パラメータとの対応情報の内容を示す図である。
【図17】測位精度データベース作成手段の詳細と測位精度データベース作成手段を搭載するプローブ車両の構成を示すブロック図である。
【図18】本実施形態に係わる複数測位手段の組み合わせを決定するシステムにおける準備段階の処理手順を示すフローチャートである。
【図19】本実施形態に係わる複数測位手段の組み合わせを決定するシステムにおける運用段階の処理手順を示すフローチャートである。
【図20】本実施形態の変形例に係わる複数測位手段の組み合わせを決定するシステムの構成を示すブロック図である。
【図21】本実施形態の変形例に係わる測位精度データベース作成手段の詳細と測位精度データベース作成手段を搭載するプローブ車両の構成を示すブロック図である。
【図22】本実施形態の変形例に係わる複数測位手段の組み合わせを決定するシステムにおける準備段階の処理手順を示すフローチャートである。
【図23】本実施形態の変形例に係わる複数測位手段の組み合わせを決定するシステムにおける運用段階の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態(「実施形態」という場合がある。)について、適宜、添付の図を参照しながら、詳細に説明する。
まず、本発明の実施形態となる測位組み合わせ決定システムの構成について、図1を参照して説明する。
【0016】
〔構成〕
測位組み合わせ決定システム1は、測位精度影響パラメータ地図作成手段2、測位精度データベース作成手段3、対象走行環境入力手段4、測位組み合わせ候補提示手段5、測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段6、測位精度影響パラメータ地図記憶手段7、測位精度影響パラメータ取得手段8、測位精度データベース記憶手段9、測位精度予測手段10、目標精度入力手段11、予測測位精度評価手段12から構成する。
【0017】
測位組み合わせ決定システム1は、入力部(入力デバイス(例:キーボード、センサ))、出力部(例:ディスプレイ)、制御部(例:CPU(Central Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration))、記憶部(例:ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive))といったハードウェア資源を備え、1または2以上のコンピュータから構成される。前記した手段(後記するときに説明する他の手段も含む)は、測位組み合わせ決定システム1の機能を構成し、前記ハードウェア資源と協働することで所望の情報処理を実行する。コンピュータが2以上存在する場合、各コンピュータは、前記した手段の一部(場合によっては全部)を備えるようにして測位組み合わせ決定システム1を構成することができる。また、そのようなコンピュータを搭載したビークルを構成することができる。
【0018】
続いて、以上の構成要素(手段)の機能を個別に説明する。
測位精度影響パラメータ地図作成手段2は、測位精度影響パラメータ地図記憶手段7が記憶する測位精度影響パラメータ地図101を作成する手段である。なお、測位精度影響パラメータ地図101とは、所定の方法で外部の装置(例:通信可能に接続した装置)から読み込んだ地図データに測位精度影響パラメータを含ませた地図データである。また、測位精度影響パラメータとは、各測位手段の測位精度に影響する走行環境のパラメータであり、環境を観測することによって数値として求める。これらの詳細については後述する。
【0019】
測位精度データベース作成手段3は、測位精度データベース記憶手段9が記憶する測位精度データベース102を作成する手段である。詳細については、図17を参照して後述する。
【0020】
対象走行環境入力手段4は、使用者が対象とする走行環境を入力するための手段である。例えばディスプレイを用いて使用者に対して地図を表示し、使用者が対象としている走行環境の範囲、あるいは経路の少なくともどちらか一方を、タッチパネルなどの入力デバイスを用いて入力する機能を持つ。当該機能は、カーナビゲーションシステムなどで用いられている公知の技術で実現される。
【0021】
測位組み合わせ候補提示手段5は、GPSや木、電柱、建物壁などの各種ランドマークを用いた測位手段の組み合わせ候補を提示する。使用可能な全測位手段の項目を内部(例:記憶部)に記憶しており、その中から組み合わせ数学を用いて起こり得る全組み合わせを算出し、測位組み合わせ候補として使用者に提示する機能を持つ。また、提示された測位組み合わせ候補から使用者が任意の測位組み合わせ候補を選択することで、選択された測位組み合わせ候補を測位精度影響パラメータ取得手段8に入力する機能を持つ。使用者への測位組み合わせ候補の提示はディスプレイなどの出力デバイスを用いる。また、使用者による測位組み合わせ候補の選択は、タッチパネルやキーボードなどの入力デバイスを用いる。
【0022】
測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段6は、各測位手段と測位精度影響パラメータとの対応情報を記憶する。即ち、ある測位手段に影響を与える測位精度影響パラメータは何かを表す対応関係、及び、測位精度影響パラメータと測位精度の関係式を対応情報として記憶する。詳細については、図16を参照して後述する。
【0023】
測位精度影響パラメータ地図記憶手段7は、測位精度影響パラメータ地図作成手段2が作成した測位精度影響パラメータ地図101を記憶する。測位精度影響パラメータ地図101のデータ形式については、図8から図13を参照して後述する。
【0024】
測位精度影響パラメータ取得手段8は、測位組み合わせ候補提示手段5から入力される測位組み合わせ候補の各測位手段に対応する測位精度影響パラメータの項目を、測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段6から取得し、対象走行環境入力手段4から入力される対象走行環境における当該測位精度影響パラメータの値を、測位精度影響パラメータ地図記憶手段7から取得する。
【0025】
測位精度データベース記憶手段9は、測位精度データベース作成手段3が作成した、各測位精度影響パラメータにおける各測位手段の測位精度を格納した測位精度データベース102を記憶する。測位精度データベース102のデータ形式については、図14及び図15を参照して後述する。
【0026】
測位精度予測手段10は、測位精度影響パラメータ取得手段8から入力される測位精度影響パラメータと、測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段6から入力される測位精度影響パラメータと測位精度の関係式を用いて、測位精度データベース記憶手段9が記憶している測位精度データベース102を参照することにより、入力された測位組み合わせ候補の測位精度を予測する。
【0027】
目標精度入力手段11は、目標とする測位精度を使用者が入力する手段である。入力デバイスとしては、キーボードなどを用いる。
【0028】
予測測位精度評価手段12は、測位精度予測手段10が予測した当該測位手段の測位精度と、目標精度入力手段11から取得した目標とする測位精度を比較することで、入力された測位組み合わせ候補によって目標とする測位精度を達成可能かどうか評価する。即ち、入力された測位組み合わせ候補が、目標とする測位精度を達成するのに好適な測位手段の組み合わせとなっているかどうかを評価する手段である。
【0029】
次に、図2から図7を用いて、測位精度影響パラメータの詳細な定義について説明する。
【0030】
図2及び図3に、GPSを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータの例を示す。GPSによる測位は、図示しないGPS衛星からの電波信号を用いた測位である。よって、GPSによる測位精度は、GPS衛星からの電波信号の観測しやすさの程度、即ち、地上の自己位置からGPS衛星までの間に遮蔽物があるかどうかに強く依存している。もって、地上から見た空の可視具合、即ち、開空率sを測位精度影響パラメータとして用いる。具体的には、開空率sを求める図2に示す注目地点p1において、GPS信号受信アンテナをビークルに設置する高さh(例えば1m)から、GPS衛星有効仰角θ(例えば10deg)以上の範囲内において、空が可視である面積の割合を開空率sとして定める。即ち、注目地点p1から上空を見上げた場合、図3に示すように、円がGPS衛星有効仰角θ以上の領域cを示しており、その中でハッチングを施してある部分が、空が可視である領域bである。もって、“領域bの面積”/“領域cの面積”によって開空率sを測位精度影響パラメータとして求めることができる。なお、GPS信号受信アンテナをビークルに設置する高さhの値は、ビークルの仕様に合わせて決定する。また、GPS衛星有効仰角θは、用いるGPS受信機の設定に合わせて決定する。
【0031】
続いて図4には、木をランドマークとして用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータの例を示す。木ランドマークtによる測位は、位置が既知である木を基準として用いるため、木ランドマークtの近辺では測位精度が高く、木ランドマークtがない(または遠方にある)と測位精度が悪化するという特性を持つ。よって、木ランドマークtによる測位精度は、対象とする走行環境内における木ランドマークtの配置に強く依存している。もって、木ランドマークtの間隔距離を測位精度影響パラメータとして用いる。具体的には、図4に示すように木ランドマーク間隔距離xを求める注目地点p2において、注目地点p2が含まれる経路r1から検出可能距離d1(例えば20m)以内にあり、かつ注目地点p2の両側にある木同士の木ランドマーク間隔距離xを測位精度影響パラメータとして用いる。ここで検出可能距離d1の数値には、当該測位手段の木ランドマークtに対する最大測定距離を用いる。また、検出可能距離d1は、測位組み合わせ決定システム1の性能や目標精度などに応じて任意に(例えば、入力部から)設定可能である。
【0032】
同様に図5には、電柱をランドマークとして用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータの例を示す。電柱ランドマークuによる測位は、木ランドマークtによる測位と同様に、位置が既知である電柱を基準として用いるため、電柱ランドマークuの近辺では測位精度が高く、電柱ランドマークuがない(または遠方にある)と測位精度が悪化するという特性を持つ。よって、電柱ランドマークuによる測位精度は、対象とする走行環境内における電柱ランドマークuの配置に強く依存している。もって、電柱ランドマークuの間隔距離を測位精度影響パラメータとして用いる。具体的には、図5に示すように電柱ランドマーク間隔距離yを求める注目地点p3において、注目地点p3が含まれる経路r2から検出可能距離d2(例えば20m)以内にあり、かつ注目地点p3の両側にある電柱同士の電柱ランドマーク間隔距離yを測位精度影響パラメータとして用いる。ここで検出可能距離d2の数値には、当該測位手段の電柱ランドマークuに対する最大測定距離を用いる。また、検出可能距離d2は、測位組み合わせ決定システム1の性能や目標精度などに応じて任意に(例えば、入力部から)設定可能である。
【0033】
なお、本実施形態では用いないが、前述の木ランドマークtと電柱ランドマークuの他にも、街灯や道路標識、信号機なども同じくランドマークとして使用可能であり、同様の測位精度影響パラメータを定義できる。
【0034】
また図6及び図7には、建物壁をランドマークとして用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータの例を示す。建物壁ランドマークwによる測位は、位置が既知である建物の壁を基準として用いる。ただし建物の壁は、水平面で見た場合に、木や電柱のような点とは異なり、線分となる。このため、木ランドマークtや電柱ランドマークuなどとは多少特性が異なる。しかしながら、建物壁ランドマークwの近辺では測位精度が高く、建物壁ランドマークwがない(または遠方にある)と測位精度が悪化するという特性は同様である。よって、建物壁ランドマークwによる測位精度は、対象とする走行環境内における建物壁ランドマークwの配置に強く依存している。もって、建物壁ランドマークwの間隔距離を測位精度影響パラメータとして用いる。具体的には、図6に示すように建物壁ランドマーク間隔距離zを求める注目地点p4において、注目地点p4が含まれる経路r3から検出可能距離d3(例えば25m)以内にあり、かつ注目地点p4の両側にある建物壁同士の建物壁ランドマーク間隔距離zを測位精度影響パラメータとして用いる。ここで検出可能距離d3の数値には、当該測位手段の建物壁ランドマークwに対する最大測定距離を用いる。また、検出可能距離d3は、測位組み合わせ決定システム1の性能や目標精度などに応じて任意に(例えば、入力部から)設定可能である。なお、図7に示すように、注目地点p5が建物と建物の間ではなく、建物の横に位置している場所においては、建物壁ランドマーク間隔距離zは“0”とする。
【0035】
続いて、測位精度影響パラメータ地図作成手段2が作成し、測位精度影響パラメータ地図記憶手段7が記憶する測位精度影響パラメータ地図101について説明する。
前述のとおり、GPSを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータである開空率sは、場所毎に異なる値を持つ。よって、対象走行環境入力手段4から入力される対象走行環境を、例えば10m四方のグリッドで区切り、各グリッド中心において開空率を求めて測位精度影響パラメータ地図101に記憶する。あるいは、各グリッド四隅における開空率の平均を記憶する。なお、グリッドのサイズ、即ちグリッド幅iは、10mに限定するものではなく、任意の数値を用いる。ただし、グリッド幅iは、測位組み合わせ決定システム1が対象としている自律移動車や物流搬送ロボットなどのビークルのサイズの10倍以下であることが望ましい。これは、ビークルが移動する経路rの幅は、おおむねビークルのサイズの10倍以下であることによる。例えば国土交通省によれば、自動車の横幅が2m程度であり、片側2車線である幹線道路の横幅が20m程度である。もって、ビークルが移動する経路rを測位精度影響パラメータ地図101上で表現するためには、グリッド幅iはビークルのサイズの10倍以下であることが望ましい。即ち、例えばビークルのサイズが2m四方の場合は、グリッド幅iは20m以下であることが好適である。
【0036】
あるいは、開空率sを記憶する区切りを、対象走行環境中のビークルが走行可能である道を基準として区切ることもできる。即ち、道を例えば10m毎の均等な間隔で区切り、当該区間毎の中心において開空率を求めて測位精度影響パラメータ地図101に記憶する。あるいは、当該区間の四隅における開空率の平均を記憶する。なお、道を区切る間隔、即ち区切り幅eは、10mに限定するものではなく、任意の数値を用いる。ただし、区切り幅eは、測位組み合わせ決定システム1が対象としている自律移動車や物流搬送ロボットなどのビークルのサイズの10倍以下であることが望ましい。これは、ビークルが移動する経路rの幅は、おおむねビークルのサイズの10倍以下であることによる。例えば国土交通省によれば、自動車の横幅が2m程度であり、片側2車線である幹線道路の横幅が20m程度である。もって、ビークルが移動する経路rを測位精度影響パラメータ地図101上で表現するためには、やはり区切り幅eはビークルのサイズの10倍以下であることが望ましい。即ち、例えばビークルの全長が2mの場合は、やはり区切り幅eは20m以下であることが好適である。
【0037】
また、木ランドマークtを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータである木ランドマーク間隔距離x、電柱ランドマークuを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータである電柱ランドマーク間隔距離y、及び、建物壁ランドマークwを用いた測位手段に対応する測位精度影響パラメータである建物壁ランドマーク間隔距離zは、それぞれ当該ランドマークの間となる区間毎に異なる値を持つ。よって、ビークルが走行可能である道に対して、それぞれ当該ランドマークが存在する位置毎に区間を区切り、それぞれの区間毎に当該測位精度影響パラメータを求めて記憶する。
【0038】
以上の説明から、測位手段毎に、対応する測位精度影響パラメータを記憶する測位精度影響パラメータ地図101の区間の区切り方は異なることになる。
【0039】
ここで図8から図13を参照して、測位精度影響パラメータ地図101のデータ形式、即ち、区間の区切り方と測位精度影響パラメータの表現方法について詳細に説明する。
【0040】
図8は、対象走行環境入力手段4から入力される対象走行環境を示す平面地図であり、ビークルが走行可能である道jを描いている。また図中には、木ランドマークt、電柱ランドマークu、建物壁ランドマークwの配置も示している。この環境を例として、各測位精度影響パラメータ地図101のデータ形式を説明する。
【0041】
まず、図9には、GPSに対応する測位精度影響パラメータである開空率sを記憶する一形態である、測位精度影響パラメータ地図101a(101)のデータ形式(第1のデータ形式)を示す。開空率sを記憶する測位精度影響パラメータ地図101aは、前述のとおり、対象走行環境をグリッド幅iのグリッドgで区切られたデータ形式を持ち、各グリッドgの中心における開空率sを記憶する。あるいは、各グリッドgの四隅における開空率sの平均を記憶する。なお、ビークルが走行可能である道jが含まれないグリッドgにおいては、開空率sを記憶する必要はない。
【0042】
続いて、図10には、開空率sを記憶するもう1つの形態である、測位精度影響パラメータ地図101b(101)のデータ形式(第2のデータ形式)を示す。開空率sを記憶する測位精度影響パラメータ地図101bは、前述のとおり、対象走行環境中の道jを区切り幅eの区間aで区切られたデータ形式を持つ。ここで区間aの区切り線fは、道jに対して直交する線(法線)とする。それぞれの区間aには、各区間aの中心における開空率sを記憶する。あるいは、各区間aの四隅における開空率sの平均を記憶する。
【0043】
次に、図11には、木ランドマークtに対応する測位精度影響パラメータである木ランドマーク間隔距離xを記憶する、測位精度影響パラメータ地図101c(101)のデータ形式(第3のデータ形式)を示す。木ランドマーク間隔距離xを記憶する測位精度影響パラメータ地図101cは、前述のとおり、木ランドマークtが存在する位置毎に区間を区切られたデータ形式を持つ。ただし、道jからの距離が検出可能距離d1以内である木ランドマークtに限る。ここで区間a(図10のものと同機能であるが別物)の区切り線f(図10のものと同機能であるが別物)は、木ランドマークtの位置から道jに対して直交する線とする。各区間aには、当該区間の両側にある木ランドマーク間隔距離xを記憶する。なお、道jの交差点から交差点までの間に木ランドマークtがない場合においては、交差点で区間を区切る。例えば、区切り線f1がこれに相当する。当該区間においては木ランドマークtが存在しないため、木ランドマーク間隔距離xとしては例外的に“−1”を記憶する。なお“−1”でなくとも、例外値であることが判別可能であれば、他の値を用いても良い。
【0044】
同様に、図12には、電柱ランドマークuに対応する測位精度影響パラメータである電柱ランドマーク間隔距離yを記憶する、測位精度影響パラメータ地図101d(101)のデータ形式(第3のデータ形式)を示す。電柱ランドマーク間隔距離yを記憶する測位精度影響パラメータ地図101dは、前述のとおり、電柱ランドマークuが存在する位置毎に区間を区切られたデータ形式を持つ。ただし、道jからの距離が検出可能距離d2以内である電柱ランドマークuに限る。ここで区間a(図10のものと同機能であるが別物)の区切り線f(図10のものと同機能であるが別物)は、電柱ランドマークuの位置から道jに対して直交する線とする。各区間aには、当該区間の両側にある電柱ランドマーク間隔距離yを記憶する。なお、道jの交差点から交差点までの間に電柱ランドマークuがない場合においては、交差点で区間を区切る。例えば、区切り線f2がこれに相当する。当該区間においては電柱ランドマークuが存在しないため、電柱ランドマーク間隔距離yとしては例外的に“−1”を記憶する。なお“−1”でなくとも、例外値であることが判別可能であれば他の値を用いても良い。
【0045】
また、図13には、建物壁ランドマークwに対応する測位精度影響パラメータである建物壁ランドマーク間隔距離zを記憶する、測位精度影響パラメータ地図101e(101)のデータ形式(第3のデータ形式)を示す。建物壁ランドマーク間隔距離zを記憶する測位精度影響パラメータ地図101eは、前述のとおり、建物壁ランドマークwが存在する位置毎に区間を区切られたデータ形式を持つ。ただし、道jからの距離が検出可能距離d3以内である建物壁ランドマークwに限る。ここで区間a(図10のものと同機能であるが別物)の区切り線f(図10のものと同機能であるが別物)は、建物壁ランドマークwの両端の位置から道jに対して直交する線とする。各区間aには、当該区間の両側にある建物壁ランドマーク間隔距離zを記憶する。また、建物の横に位置する区間においては、建物壁ランドマーク間隔距離zは“0”として記憶する。なお、道jの交差点から交差点までの間に建物壁ランドマークwがない場合においては、交差点で区間を区切る。例えば、区切り線f3がこれに相当する。当該区間においては建物壁ランドマークwが存在しないため、建物壁ランドマーク間隔距離zとしては例外的に“−1”を記憶する。なお“−1”でなくとも、例外値であることが判別可能であれば他の値を用いても良い。
【0046】
これらのデータ形式は、測位手段のそれぞれに対して独立に用いることができる。つまり、測位手段ごとに用いて異なるデータ形式を含む測位精度影響パラメータ地図101を作成することができる。
【0047】
続いて、測位精度影響パラメータ地図作成手段2について詳細を説明する。測位精度影響パラメータ地図作成手段2は、前述した測位精度影響パラメータ地図記憶手段7が記憶する、測位手段毎の測位精度影響パラメータ地図101を作成する。各測位精度影響パラメータ地図101のデータ形式は先に述べたとおりであるため、対象とする走行環境の3次元形状、及び、必要に応じて木や電柱や建物の位置の情報が分かれば、幾何計算によって各測位精度影響パラメータ地図101を作成できる。3次元形状と位置の情報は公知の技術によって取得可能であり、例えば、特開2002−31528号公報、特開2009−14643号公報、あるいは特開2007−198760号公報において提案されているように、レーザスキャナを用いた技術で取得したり、例えば、ネットワークを介して他の計算機から取得したりすることが可能である。また、特開2008−204458号公報に示されるように、対象とする走行環境において取得した映像、即ち画像列から、3次元形状と位置の情報を取得することも可能である。なお、対象とする走行環境の画像は、インターネット上の既存サービス(例えば、Google(登録商標)ストリートビュー“http://www.google.co.jp/help/maps/streetview/”)から取得することもできる。例えば、ネットワークを介して他の計算機から取得することもできる。もって、測位精度影響パラメータ地図作成手段2は、取得した当該情報に対して、計算機上のソフトウェアとして実現される幾何計算によって、各測位精度影響パラメータ地図101を作成する。
【0048】
次に、測位精度データベース作成手段3が作成し、測位精度データベース記憶手段9が記憶する測位精度データベース102について説明する。
【0049】
測位精度データベース102は、各測位精度影響パラメータと、当該測位手段による測位精度の関係を表すデータベースである。即ち、ある場所の測位精度影響パラメータが、ある数値であった場合に、どの程度の精度で当該測位手段による測位が可能かを表現するデータ(関係)の集合である。なお、測位精度データベース102は、各測位手段毎に個別のデータベースとなる。GPSに対しては、測位精度影響パラメータとしての開空率sと測位精度の関係を表すデータベースである。木ランドマークに対しては、測位精度影響パラメータとしての木ランドマーク間隔距離xと測位精度の関係を表すデータベースである。同様に、電柱ランドマークに対しては、測位精度影響パラメータとしての電柱ランドマーク間隔距離yと測位精度の関係を表すデータベースである。また、建物壁ランドマークに対しては、測位精度影響パラメータとしての建物壁ランドマーク間隔距離zと測位精度の関係を表すデータベースである。
【0050】
ここで図14及び図15を参照して、測位精度データベース102のデータ形式について詳細に説明する。データ形式としては、少なくとも2つの形態がある。1つ目は図14に示すように、各測位精度影響パラメータと当該測位手段の測位精度の関係を、関数102a(102)として記憶する形態である(第1の関係形式)。関数102aは、測位精度データベース作成手段3が実際のデータ(詳細は図17を参照して説明する。)に基づいて作成する。2つ目は図15に示すように、各測位精度影響パラメータと当該測位手段の測位精度の関係を、ルックアップテーブル102b(102)として記憶する形態である(第2の関係形式)。こちらの形態においても、ルックアップテーブル102bは、測位精度データベース作成手段3が実際のデータに基づいて作成する。測位精度データベース作成手段3及び測位精度データベース記憶手段9は、以上のいずれかの形態をもって、測位精度データベース102を作成し記憶する。なお、全測位手段の測位精度データベース102の形態を統一する必要はなく、測位手段毎にいずれかの形態を用いれば良い。
【0051】
続いて、図16を参照して、測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段6が記憶する各測位手段と測位精度影響パラメータとの対応情報について説明する。
【0052】
各測位手段と測位精度影響パラメータとの対応情報とは、即ち、ある測位手段に影響を与える測位精度影響パラメータは何かを表す対応関係、及び、測位精度影響パラメータと測位精度との関係式である。測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段6はこれらの情報を、図16に示すテーブル103として記憶する。テーブル103は、「使用ランドマーク」、「センシング方法」、「測位精度影響パラメータ」、「測位精度影響パラメータ‐測位精度関係式」をフィールドとして備え、対応情報を示すテーブルである。なお、対応情報には、少なくとも使用ランドマーク(測位手段)と測位精度影響パラメータとが必要である。
【0053】
ここで、各測位手段を、使用ランドマーク及びセンシング方法の組み合わせによって、詳細に表現する。例えば前述のGPSを用いた測位手段は、GPS衛星をランドマークとして用いた測位であるが、書籍「GPS‐理論と応用」(出版社:Springer、ISBN:3-211-83534-2)に示されるとおり、単独測位で用いる場合とディファレンシャル測位で用いる場合がある。よって、GPSを用いた測位手段は、単独測位を行うか、あるいはディファレンシャル測位を行うかで個別に表現される。また、木ランドマークtを用いた測位手段は、木ランドマークtのセンシングをレーザスキャナで行うか、あるいはステレオカメラで行うかによって個別に表現される。なお、センシング方法はレーザスキャナとステレオカメラに限るものではなく、単眼カメラなどの他のセンシング方法を用いることも可能である。その他の測位手段においても、図16に示すテーブル103のように、使用ランドマーク及びセンシング方法の組み合わせによって、詳細に表現する。
【0054】
測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段6は、以上のように表現された各測位手段に対して、それぞれの測位精度に影響を与える測位精度影響パラメータの項目を、対応する測位精度影響パラメータとして記憶する。
【0055】
また、同じランドマークを使用しても、センシング方式毎にランドマーク位置検出精度が異なることによって測位精度に影響がある。もって、測位精度影響パラメータを用いて測位精度データベース102に記憶されている測位精度を参照する際に用いる測位精度影響パラメータ‐測位精度関係式は、センシング方式毎に異なる式とすることが望ましい。このため、測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段6は、センシング方式毎に測位精度影響パラメータ‐測位精度関係式(補正式)を記憶する。
【0056】
測位精度影響パラメータ‐測位精度関係式の具体例としては、測位精度データベース102が基準とするGPSの単独測位に対して、ディファレンシャル測位の位置誤差が0.7倍であることが分かっている(事前に調査済みである)場合には、単独測位では測位精度データベース102に記憶されている測位精度(データベース誤差:測位誤差)をそのまま参照し、ディファレンシャル測位では測位精度データベース102に記憶されている測位精度を0.7倍して参照(補正)する。また、もう1つの例として、測位精度データベース102が基準とするレーザスキャナと比較して、ステレオカメラによるランドマーク位置検出精度が0.5m悪いことが分かっている場合には、レーザスキャナでは測位精度データベース102に記憶されている測位精度をそのまま参照し、ステレオカメラでは測位精度データベース102に記憶されている測位精度を0.5m悪化させて(+0.5m)参照する。
【0057】
次に、図17を参照して、測位精度データベース作成手段3について詳細に説明する。測位精度データベース作成手段3は、複数測位手段13、高精度自己位置取得手段(位置センサ)14、測位精度算出手段15、測位精度影響パラメータ参照手段16、測位精度データベース構築手段17から構成する。また、測位精度データベース作成手段3は、プローブ車両18に搭載して使用する。即ち、複数測位手段13、高精度自己位置取得手段14、測位精度算出手段15、測位精度影響パラメータ参照手段16、測位精度データベース構築手段17による機能を実現する情報処理を実行するコンピュータがプローブ車両18に搭載されている。このコンピュータは、測位組み合わせ決定システム1の一部を構成する。
【0058】
複数測位手段13は、測位精度データベース102を作成する対象とする測位手段であり、具体的には、前述のGPS、木ランドマーク、電柱ランドマーク、建物壁ランドマークなどをそれぞれ用いる。また、測位精度データベース102の作成対象となる測位手段の数だけ、当該測位手段を用いることとする。複数測位手段13は基本的には複数であるが、単数でも良い。
【0059】
高精度自己位置取得手段14は、測位精度データベース作成手段3を搭載したプローブ車両18の自己位置を、位置誤差が数cmの高精度(複数測位手段13による測位の測位精度を算出するのに十分な精度)で取得する手段である。例えば、RTK(Real Time Kinematic)−GPSを高精度自己位置取得手段14として用いる。
【0060】
測位精度算出手段15は、高精度自己位置取得手段14が取得する自己位置を真値とし、複数測位手段13が取得する自己位置の誤差、即ち測位精度を算出する手段である。
【0061】
測位精度影響パラメータ参照手段16は、前述した測位精度影響パラメータ取得手段8と同じ構成を持ち、複数測位手段13に対応する測位精度影響パラメータの値を得る。なお、高精度自己位置取得手段14から自己位置を入力することで、自己位置における測位精度影響パラメータを得る。
【0062】
測位精度データベース構築手段17は、測位精度算出手段15が算出する測位精度と、測位精度影響パラメータ参照手段16が得る測位精度影響パラメータとを組み合わせることで、測位精度データベース102を構築する。なお、測位精度データベース102のデータ形式は前述のとおりであり、各測位手段毎に個別のデータベースとなる。この際、当該データ形式に合わせて、測位精度と測位精度影響パラメータの情報に対して、関数102aを計算機上のソフトウェアとして実現される関数フィッティングによって求めるか、または、当該情報からルックアップテーブル102bを作成することで、測位精度データベース102を構築する。
【0063】
もって、測位精度データベース作成手段3を搭載したプローブ車両18が環境中を走行することで、測位精度データベース作成手段3が測位精度データベース102を作成することができる。
【0064】
なお、特筆すべき事柄として、プローブ車両18は対象走行環境入力手段4から入力される対象走行環境と同じ場所を走行しなくても良い。つまり、対象走行環境と同じ場所を走行して測位精度データベース102を作成することも可能だが、対象走行環境とは異なる場所を走行して測位精度データベース102を作成しても何ら問題はない。これは、直感的には、測位組み合わせ決定システム1が測位精度影響パラメータを用いることで抽象的に環境を表現できることにより、対象走行環境と測位精度の性質が似ている環境の測位精度データを用いて、対象走行環境における測位精度を予測可能であることに基づく。もって、測位精度影響パラメータの全域にわたっての測位精度データベース102を一度作成すれば、以降は測位精度データベース102を作り直す必要なく、新たな対象走行環境に対応できる。即ち、使用者毎に場所がまったく異なると考えられる対象走行環境毎に測位精度データベース102を作成する必要がないため、測位組み合わせ決定システム1を用いることで費用と時間のコストを抑えて、対象とする走行環境において好適な測位手段の組み合わせを決定することが可能である。
【0065】
〔処理〕
ここで、測位組み合わせ決定システム1を使用する際の処理手順を説明する。測位組み合わせ決定システム1の処理手順は、準備段階と運用段階の2つに分割される。もって、それぞれの段階における処理手順を、別個に説明する。
【0066】
まず、図18に示すフローチャートを参照して、測位組み合わせ決定システム1における準備段階の処理手順を説明する。
【0067】
最初に、測位精度影響パラメータ地図101を作成する(S11)。測位精度影響パラメータ地図作成手段2が測位精度影響パラメータ地図101を作成して、測位精度影響パラメータ地図記憶手段7に記憶する。測位精度影響パラメータ地図101のデータ形式、及び作成方法は、前述のとおりである。また、この際に、各測位手段と測位精度影響パラメータとの対応情報のうち、測位手段と測位精度影響パラメータ項目の対応関係を、つまり、「使用ランドマーク」と「測位精度影響パラメータ」(図16参照)を、測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段6に記憶する。
【0068】
次に、測位精度データベース102を作成する(S12)。測位精度データベース作成手段3が測位精度データベース102を作成して、測位精度データベース記憶手段9に記憶する。測位精度データベース102のデータ形式、及び作成方法は、前述のとおりである。また、この際に、各測位手段と測位精度影響パラメータとの対応情報の内、測位精度影響パラメータと測位精度の関係式を、つまり、「測位精度影響パラメータ」と「測位精度影響パラメータ‐測位精度関係式」(図16参照)を、測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段6に記憶する。なお、「測位精度影響パラメータ‐測位精度関係式」を記憶することになれば、「センシング方法」も記憶される。
【0069】
以上の手順が、測位組み合わせ決定システム1の準備段階に相当する。準備段階の処理手順は、最低限、測位組み合わせ決定システム1を構築するときに一度行えば良い。ただし、新たな測位手段に対応する場合や、測位精度影響パラメータ地図101の領域を拡大する場合、あるいは測位精度データベース102を拡充させる場合には、適宜、上記手順を実施する必要がある。
【0070】
続いて、図19に示すフローチャートを参照して、測位組み合わせ決定システム1における運用段階の処理手順を説明する。
【0071】
最初に、使用者が対象とする走行環境を入力する(S21)。対象とする走行環境の入力には、前述した対象走行環境入力手段4を用いる。
【0072】
次に、測位手段の組み合わせ候補を決定する(S22)。前述した測位組み合わせ候補提示手段5が提示する複数の測位組み合わせ候補のうち、使用者が任意の測位組み合わせ候補を選択することで、測位組み合わせ候補の決定を行う。この決定では、センシング方法の候補の決定を含むようにしても良い。
【0073】
続いて、当該測位組み合わせ候補の各測位手段に対応する測位精度影響パラメータを取得する(S23)。前述した測位精度影響パラメータ取得手段8が、測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段6から各測位手段に対応する測位精度影響パラメータの項目を取得する。当該測位精度影響パラメータの項目を用いて、同じく測位精度影響パラメータ取得手段8が、測位精度影響パラメータ地図記憶手段7から、対象走行環境入力手段4から入力される対象走行環境における当該測位精度影響パラメータの値を取得する。即ち、対象走行環境中の各位置における当該測位精度影響パラメータの値を得る。
【0074】
ここで、当該測位組み合わせ候補による測位精度を予測する(S24)。測位組み合わせ候補の各測位手段に対して、前述した測位精度予測手段10が、それぞれの測位精度を予測する。測位精度予測手段10は、測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段6から測位精度影響パラメータと測位精度の関係式を取得し、当該関係式と測位精度影響パラメータ取得手段8から入力される当該測位精度影響パラメータとを用いて、測位精度データベース記憶手段9が記憶する測位精度データベース102を参照することによって、各測位手段それぞれの測位精度を予測する。例えば、当該関係式が“データベース誤差×0.7”だった場合には、当該測位精度影響パラメータの値に対応する測位精度を、測位精度データベース102を参照することで取得し、取得した測位精度、即ち測位誤差を、0.7倍した(補正を加味した)数値を予測値とする。もって、当該測位組み合わせ候補に含まれる測位手段の数だけ、対象走行環境中の各位置における測位精度を予測する。
【0075】
更に、当該測位組み合わせ候補の各測位精度予測値を評価する(S25)。即ち、当該測位組み合わせ候補に含まれる各測位手段それぞれにおいて、対象走行環境中の各位置における測位精度予測値が、目標精度を達成しているかどうかを評価する。目標精度は、前述した目標精度入力手段11を用いて、使用者によって入力される。また、前述した予測測位精度評価手段12が、当該測位組み合わせ候補に含まれる各測位手段それぞれの測位精度予測値と、当該目標精度とを比較することで、目標精度を達成しているかどうかを評価する。ここで、対象走行環境中の各位置において、当該測位組み合わせ候補に含まれる測位手段のいずれかが目標精度を達成していれば(測位精度予測値のいずれかが目標精度以上であれば)、当該測位組み合わせ候補が対象走行環境の全体に対して目標精度を達成している(測位精度予測値の全体に対して目標精度以上である)と判断する。これは、複数測位手段の組み合わせにおいて、カルマンフィルタ、あるいはパーティクルフィルタなどの確率論を用いることにより、最も尤もらしい自己位置を推定可能であるということに基づく。カルマンフィルタ、あるいはパーティクルフィルタなどの確率論による自己位置の推定は、前記先行技術文献において述べられている公知の技術である。
【0076】
S25において、当該測位組み合わせ候補が、対象走行環境の全体に対して目標精度を達成していると判断された場合は(S25でYes)、当該測位組み合わせ候補を測位手段の組み合わせとして本決定する。一方、目標精度を達成していると判断されなかった場合には(S25でNo)、S22に戻り、先ほどとは異なる測位組み合わせ候補に対して同手順を行う。
【0077】
以上の説明から、本実施形態の測位組み合わせ決定システム1は、対象とする走行環境において、費用と時間のコストが高い実機実験を行うことなく、目標精度を達成可能な測位手段の組み合わせを、低コストで決定可能である。もって、測位組み合わせ決定システム1を用いることにより、対象とする走行環境に対して好適な測位手段の組み合わせを搭載した自律移動車や物流搬送ロボットなどのビークルを実現可能とする、という優れた効果を発揮する。
【0078】
<変形例>
次に、測位組み合わせ決定システム1の変形例となる、測位精度影響パラメータを用いない測位組み合わせ決定システム1a(1)について説明する。測位精度影響パラメータを用いない測位組み合わせ決定システム1aは、前述した測位組み合わせ決定システム1よりも簡単な構成となるが、目標精度を達成可能な測位手段の組み合わせを決定するための、運用段階の処理に必要な費用と時間のコストが、測位組み合わせ決定システム1と比較して低くなる点で有効である。もって、従来技術よりは低コストで、目標精度を達成可能な測位手段の組み合わせを決定できる。
【0079】
測位精度影響パラメータを用いない測位組み合わせ決定システム1aの構成について、添付の図20を参照して説明する。
【0080】
測位組み合わせ決定システム1aは、測位精度データベース作成手段3a(3)、対象走行環境入力手段4、測位組み合わせ候補提示手段5、測位精度データベース記憶手段9a(9)、測位精度予測手段10a(10)、目標精度入力手段11、予測測位精度評価手段12から構成する。
【0081】
ここで、対象走行環境入力手段4、測位組み合わせ候補提示手段5、目標精度入力手段11、予測測位精度評価手段12は、前述した測位組み合わせ決定システム1の構成要素と同じであるため、説明は省略する。
【0082】
また、測位精度データベース作成手段3a、測位精度データベース記憶手段9a、測位精度予測手段10aは、それぞれ前述した測位組み合わせ決定システム1の、測位精度データベース作成手段3、測位精度データベース記憶手段9、測位精度予測手段10に変更(変形;少なくとも機能は同じになるようにして設計を変更したという意)を加えた構成要素である。
【0083】
続いて、変更を加えた構成要素を個別に説明する。
測位精度データベース作成手段3aは、前述した測位精度データベース作成手段3の変形であり、測位精度データベース記憶手段9aが記憶する測位精度データベース102cを作成する手段である。なお、測位精度データベース102cは、測位精度データベース102と同等の機能を有するが、そのデータ形式は、前述した測位精度データベース作成手段3が作成する測位精度データベース102のデータ形式とは異なり、(各測位精度影響パラメータではなく)各位置における各測位手段の測位精度を格納したデータ形式である。
【0084】
測位精度データベース記憶手段9aは、前述した測位精度データベース記憶手段9の変形であり、測位精度データベース作成手段3aが作成した、各位置における各測位手段の測位精度を格納した測位精度データベース102cを記憶する。
【0085】
測位精度予測手段10aは、前述した測位精度予測手段10の変形であり、測位組み合わせ候補提示手段5から入力される測位組み合わせ候補の各測位手段に対して、対象走行環境入力手段4から入力される対象走行環境(の各位置)における当該測位精度を、測位精度データベース記憶手段9aが記憶している測位精度データベース102cを参照することにより予測する。
【0086】
次に、測位精度データベース作成手段3aが作成し、測位精度データベース記憶手段9aが記憶する測位精度データベース102cについて説明する。
【0087】
測位精度データベース102cは、対象とする走行環境中の各位置における、各測位手段の測位精度を格納したデータベースである。即ち、ある場所において、どの程度の精度で当該測位手段による測位が可能かを表現するデータの集合である。なお、測位精度データベース102cは、各測位手段毎に個別のデータベースとなる。
【0088】
ここで、測位精度データベース102cのデータ形式について説明する。測位精度データベース102cは、即ち地図であって、地図上の各位置における各測位手段の測位精度を記憶する。地図の形態は、図9及び図10にて示した、測位精度影響パラメータ地図101aまたは測位精度影響パラメータ地図101bと同様の区切り方とする。ただし、記憶する情報は測位精度影響パラメータではなく、各測位手段の測位精度である。つまり、対象走行環境をグリッドgで区切るか、または対象走行環境中の道を区間aで区切ったデータ形式を持ち、各グリッドgまたは各区間aにおける当該測位手段の測位精度を記憶する。
【0089】
次に、図21を参照して、測位精度データベース作成手段3a(3)について詳細に説明する。測位精度データベース作成手段3aは、前述した測位精度データベース作成手段3の変形であり、複数測位手段13、高精度自己位置取得手段14、測位精度算出手段15、測位精度データベース構築手段17a(17)から構成する。また、測位精度データベース作成手段3aは、プローブ車両18に搭載して使用する。
【0090】
ここで、測位精度データベース構築手段17a以外の構成要素は、前述した測位精度データベース作成手段3の構成要素と同じであるため、説明は省略する。また、測位精度データベース構築手段17aは、前述した測位精度データベース作成手段3の、測位精度データベース構築手段17に変更を加えた構成要素である。
【0091】
測位精度データベース構築手段17aは、高精度自己位置取得手段14が取得する自己位置に対して、測位精度算出手段15が算出する測位精度を記憶することで、測位精度データベース102cを構築する。なお、測位精度データベース102cのデータ形式は前述のとおりであり、各測位手段毎に個別のデータベースとなる。
【0092】
もって、測位精度データベース作成手段3aを搭載したプローブ車両18が環境中を走行することで、測位精度データベース作成手段3aが測位精度データベース102cを作成することができる。
【0093】
なお、測位精度データベース作成手段3aを使用する場合には、プローブ車両18は対象走行環境入力手段4から入力される対象走行環境と同じ場所を走行する必要がある。これは、測位組み合わせ決定システム1aにおいては、前述した測位組み合わせ決定システム1と異なり測位精度影響パラメータを用いていないためである。即ち、対象走行環境が異なる毎に測位精度データベース102cを作成する必要がある。もって、測位組み合わせ決定システム1aは、対象とする走行環境において好適な測位手段の組み合わせを決定するための、準備段階の処理に必要な費用と時間のコストは、測位組み合わせ決定システム1と比較して高くなるが、前述した測位組み合わせ決定システム1よりも簡単な構成となり、運用段階の費用と時間のコストが低くなるという利点がある。
【0094】
ここで、測位組み合わせ決定システム1aを使用する際の処理手順を説明する。測位組み合わせ決定システム1aの処理手順は、前述した測位組み合わせ決定システム1と同じく、準備段階と運用段階の2つに分割される。もって、それぞれの段階における処理手順を、別個に説明する。
【0095】
まず、図22に示すフローチャートを参照して、測位組み合わせ決定システム1aにおける準備段階の処理手順を説明する。
【0096】
準備段階の処理は、測位精度データベース102cの作成のみである(S31)。測位精度データベース作成手段3aが測位精度データベース102cを作成して、測位精度データベース記憶手段9aに記憶する。測位精度データベース102cのデータ形式、及び作成方法は、前述のとおりである。
【0097】
以上の手順が、測位組み合わせ決定システム1aの準備段階に相当する。準備段階の処理手順は、最低限、測位組み合わせ決定システム1aを構築するときに一度行えば良い。ただし、前述のとおり、対象走行環境に変更がある毎に、上記手順を実施する必要がある。
【0098】
続いて、図23に示すフローチャートを参照して、測位組み合わせ決定システム1aにおける運用段階の処理手順を説明する。
【0099】
最初に、使用者が対象とする走行環境を入力する(S41)。対象とする走行環境の入力には、前述した対象走行環境入力手段4を用いる。
【0100】
次に、測位手段の組み合わせ候補を決定する(S42)。前述した測位組み合わせ候補提示手段5が提示する複数の測位組み合わせ候補のうち、使用者が任意の測位組み合わせ候補を選択することで、測位組み合わせ候補の決定を行う。この決定では、センシング方法の候補の決定を含むようにしても良い。
【0101】
続いて、当該測位組み合わせ候補による測位精度を予測する(S43)。測位組み合わせ候補の各測位手段に対して、前述した測位精度予測手段10aが、それぞれの測位精度を予測する。測位組み合わせ候補提示手段5から測位組み合わせ候補を取得し、また、対象走行環境入力手段4から対象とする走行環境を取得する。測位精度データベース記憶手段9aが記憶している、測位組み合わせ候補の各測位手段に対応する測位精度データベース102cを参照することで、対象走行環境における各測位手段それぞれの測位精度の値を得る。もって、当該測位組み合わせ候補に含まれる測位手段の数だけ、対象走行環境中の各位置における測位精度を予測する。
【0102】
更に、当該測位組み合わせ候補の各測位精度予測値を評価する(S44)。即ち、当該測位組み合わせ候補に含まれる各測位手段それぞれにおいて、対象走行環境中の各位置における測位精度予測値が、目標精度を達成しているかどうかを評価する。目標精度は、前述した目標精度入力手段11を用いて、使用者によって入力される。また、前述した予測測位精度評価手段12が、当該測位組み合わせ候補に含まれる各測位手段それぞれの測位精度予測値と、当該目標精度とを比較することで、目標精度を達成しているかどうかを評価する。ここで、対象走行環境中の各位置において、当該測位組み合わせ候補に含まれる測位手段のいずれかが目標精度を達成していれば、当該測位組み合わせ候補が対象走行環境の全体に対して目標精度を達成していると判断するのは、前述した測位組み合わせ決定システム1と同様である。
【0103】
S44において、当該測位組み合わせ候補が、対象走行環境の全体に対して目標精度を達成していると判断された場合は、当該測位組み合わせ候補を測位手段の組み合わせとして本決定する。一方、目標精度を達成していると判断されなかった場合には、S42に戻り、先ほどとは異なる測位組み合わせ候補に対して同手順を行う。
【0104】
以上の説明から、本実施形態の測位組み合わせ決定システム1aは、対象とする走行環境において、費用と時間のコストが高い実機実験を行うことなく、目標精度を達成可能な測位手段の組み合わせを、低コストで決定可能である。特に、運用段階におけるコストを低くすることができる。したがって、例えば、他に類似した走行環境が存在しないくらいに独特な対象走行環境に対しては、測位精度影響パラメータを用いる利点が小さいので、測位組み合わせ決定システム1よりも測位組み合わせ決定システム1aを用いたほうがコストを抑えられる。
【0105】
なお、前記実施形態は本発明を実施するときの好適な実施形態であるが、その実施形式はこれらに限定されるものではない。したがって、本発明の要旨を変更しない範囲内においてその実施形式を種々変形することが可能である。
【0106】
例えば、本実施形態では、1つの使用ランドマークに対して1つの測位精度影響パラメータを用いるようにして対応情報を構成した(図16参照)。しかし、1つの使用ランドマークに対して2以上の測位精度影響パラメータを用いるようにして対応情報を構成しても良い。また、1つの使用ランドマークに対して別の測位精度影響パラメータを用いるようにして対応情報を構成しても良い。
【0107】
また、本実施形態では、木ランドマーク間隔距離というように、同種のランドマークからなる測位精度影響パラメータを使用している。しかし、ランドマークの1つは木であり、もう1つは電柱であるとして、その木と電柱との間隔距離を測位精度影響パラメータとして使用しても良い。つまり、異種のランドマークからなる測位精度影響パラメータを使用することもできる。
【0108】
また、本実施形態で使用した測位精度影響パラメータは、基本的には、走行環境に影響しないパラメータである。例えば、木ランドマーク間隔距離についていえば、その間隔距離を構成する2つの木がどこに植えられていようとも、木ランドマーク間隔距離は基本的には不変である。しかし、走行環境に影響する測位精度影響パラメータを使用しても良い。
【0109】
その他、ハードウェア、ソフトウェア、各フローチャート等の具体的な構成について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 測位組み合わせ決定システム
1a 測位組み合わせ決定システム
2 測位精度影響パラメータ地図作成手段
3 測位精度データベース作成手段
3a 測位精度データベース作成手段
4 対象走行環境入力手段
5 測位組み合わせ候補提示手段
6 測位手段‐測位精度影響パラメータ対応記憶手段
7 測位精度影響パラメータ地図記憶手段
8 測位精度影響パラメータ取得手段
9 測位精度データベース記憶手段
9a 測位精度データベース記憶手段
10 測位精度予測手段
10a 測位精度予測手段
11 目標精度入力手段
12 予測測位精度評価手段
13 複数測位手段
14 高精度自己位置取得手段(位置センサ)
15 測位精度算出手段
16 測位精度影響パラメータ参照手段
17 測位精度データベース構築手段
17a 測位精度データベース構築手段
18 プローブ車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビークルで測位を行うときに用いる1以上の測位手段の組み合わせを決定する測位組み合わせ決定システムにおいて、
前記測位手段が用いるランドマークと、前記測位手段による測位の測位精度に影響を及ぼす測位精度影響パラメータとを対応付けた対応情報と、
前記測位精度影響パラメータが示す値を含む地図データである測位精度影響パラメータ地図と、
前記測位精度影響パラメータが示す値と前記測位精度との関係を示す測位精度データベースと、を記憶する記憶部と、
入力部から、前記ビークルの走行環境と、前記測位手段の組み合わせ候補とを取得する制御と、
前記対応情報により、前記組み合わせ候補に係わる測位手段が用いるランドマークに対応付けられた測位精度影響パラメータを特定する制御と、
前記測位精度影響パラメータ地図により、前記走行環境において前記特定した測位精度影響パラメータが示す値を特定する制御と、
前記測位精度データベースを参照して、前記特定した測位精度影響パラメータが示す値に対する測位精度を、前記組み合わせ候補に係わる測位手段ごとに予測する制御と、
前記予測した測位精度のいずれかが、前記入力部から入力した目標精度以上であれば、前記組み合わせ候補を、前記測位手段の組み合わせとして決定する制御と、を実行する制御部と、を有する
ことを特徴とする測位組み合わせ決定システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記測位手段による測位の測位精度を算出するのに十分な精度で自己の位置を求める位置センサを用いることにより、前記測位精度と前記測位精度影響パラメータが示す値との関係を求めて前記測位精度データベースを作成する制御、を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の測位組み合わせ決定システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記走行環境の3次元形状、または前記走行環境の画像の少なくとも一方を、ネットワークを介して他の計算機から取得し、前記取得した3次元形状または前記画像の少なくとも一つに基づいて幾何計算によって前記測位精度影響パラメータ地図を作成する制御、を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の測位組み合わせ決定システム。
【請求項4】
前記測位精度影響パラメータ地図は、
前記走行環境を区切る所定のサイズのグリッドを有する第1のデータ形式、前記走行環境に存在する道を区切る所定のサイズの区間を有する第2のデータ形式、前記測位手段が用いるランドマークの位置で前記走行環境に存在する道を区切る区間を有する第3のデータ形式のいずれかが、前記測位手段ごとに設定され、前記第1のデータ形式、前記第2のデータ形式、前記第3のデータ形式のいずれかのデータ形式で前記測位精度影響パラメータが示す値を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の測位組み合わせ決定システム。
【請求項5】
前記第1のデータ形式のグリッドのサイズ、また前記第2のデータ形式の区間のサイズは、前記ビークルの大きさの10倍以下である
ことを特徴とする請求項4に記載の測位組み合わせ決定システム。
【請求項6】
前記測位精度影響パラメータは、前記測位手段が用いるランドマーク同士の間隔距離である
ことを特徴とする請求項1に記載の測位組み合わせ決定システム。
【請求項7】
前記測位精度データベースは、
前記測位精度影響パラメータが示す値と前記測位精度との関係を関数で示す第1の関係形式、またはルックアップテーブルで示す第2の関係形式のいずれかにより、前記測位手段ごとに記憶されている
ことを特徴とする請求項1に記載の測位組み合わせ決定システム。
【請求項8】
前記対応情報は、さらに、
前記測位手段による測位のセンシング方法と、前記センシング方法により測位したときの前記測位精度を補正する補正式とを対応付けており、
前記制御部は、
前記測位精度データベースを参照して、前記特定した測位精度影響パラメータが示す値に対する測位精度を、前記補正式による補正を加味して、前記組み合わせ候補に係わる測位手段ごとに予測する制御、を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の測位組み合わせ決定システム。
【請求項9】
ビークルで測位を行うときに用いる1以上の測位手段の組み合わせを決定する測位組み合わせ決定システムにおいて、
前記ビークルの走行環境の各位置と測位精度との関係を示す測位精度データベースを記憶する記憶部と、
入力部から、前記走行環境と、前記測位手段の組み合わせ候補とを取得する制御と、
前記測位精度データベースを参照して、前記走行環境の各位置に対する測位精度を、前記組み合わせ候補に係わる測位手段ごとに予測する制御と、
前記予測した測位精度のいずれかが、前記入力部から入力した目標精度以上であれば、前記組み合わせ候補を、前記測位手段の組み合わせとして決定する制御と、を実行する制御部と、を有する
ことを特徴とする測位組み合わせ決定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−64523(P2011−64523A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214030(P2009−214030)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】