説明

測定装置

【課題】分注装置に異常が発生した場合でも、動作状態によっては測定を続行することができる測定装置を提供する。
【解決手段】液体を吸排可能な分注管20Aが設けられた分注ヘッド20を、X方向及びZ方向に移動させることにより、分注管20Aにより液体を分注して検体物質と試料との間の相互作用を測定するに際し、分注管20Aの先端に着脱可能なピペットチップCPの有無を分注ヘッド20に設けられたLED82及びフォトダイオード84を用いて検出し、検出タイミングにおける分注ヘッド20の動作状態に基づいて、検出結果が異常であるか否かを前記各分注管20A毎に判定し、異常であると判定された場合に、動作状態に基づいて実行すべき処理を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の管の先端にピペットチップを装着して液体の吸引及び排出を行って液体を分注する分注装置を備えた測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象とされた検体物質と、生理活性物質の間の相互作用を測定することは、従来から行われている。この種の測定装置においては、検体物質や試料等の液体を吸排するために、分注装置が用いられている。
【0003】
分注装置は、一般に、液体を吸排するためのノズルの先端に、ピペットチップを着脱可能に構成されたものが用いられている。
【0004】
従来、ピペットチップが着脱可能に構成された分注装置において、ノズルの先端におけるピペットチップの有無を検出し、チップが脱落した場合には装置を停止させて警告を発することが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−221469公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、チップが脱落すると、動作状態にかかわらず装置が停止されてしまい、測定が進まない、という問題点があった。
【0006】
本発明は上記問題点を考慮してなされたものであり、分注装置に異常が発生した場合でも、動作状態によっては測定を続行することができる測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、検体物質と試料との間の相互作用を測定する測定装置であって、液体を吸排可能なノズルと、前記ノズルの先端に着脱可能なピペットチップと、複数の前記ノズルが設けられ、水平方向及び鉛直方向の少なくとも一方に移動可能なヘッド部と、前記ヘッド部に設けられ、各ノズルの先端における前記ピペットチップの有無を検出する検出手段と、前記検出手段による検出タイミングにおける前記ノズル及び前記ヘッド部の動作状態に基づいて、前記検出手段による検出結果が異常であるか否かを前記各ノズル毎に判定する判定手段と、前記判定手段により異常であると判定された場合に、前記動作状態に基づいて実行すべき処理を選択する選択手段と、を備えている。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、液体を吸排可能なノズルが設けられたヘッド部を、水平方向及び鉛直方向の少なくとも一方に移動させることにより、ノズルにより液体を分注するに際し、ノズルの先端に着脱可能なピペットチップをヘッド部に設けられた検出手段により検出し、検出タイミングにおける前記ノズル及び前記ヘッド部の動作状態に基づいて、前記検出手段による検出結果が異常であるか否かを前記各ノズル毎に判定し、異常であると判定された場合に、前記動作状態に基づいて実行すべき処理を選択するようにしているので、分注装置に異常が発生した場合でも、動作状態によっては測定を続行することができる。
【0009】
本発明は、請求項2記載の発明のように、前記選択手段において、前記判定手段により異常であると判定されたノズルを用いて測定された測定データに、異常が発生した旨を示す情報を付加する付加処理を選択可能に構成することもできる。
【0010】
また、請求項3記載の発明のように、前記選択手段において、前記判定手段により異常であると判定されたノズルの吸排動作を禁止する禁止処理を選択可能に構成することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分注装置に異常が発生した場合でも、動作状態に応じて測定を続行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
本発明に係る測定装置としてのバイオセンサー10は、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴を利用して、タンパクTaと試料Aとの相互作用を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。本発明に係る測定スティック上にタンパクTaを固定し、このタンパクTaへ試料Aを供給して信号変化を検出することにより、相互作用を測定する。
【0014】
図1〜図3に示すように、バイオセンサー10は、分注ヘッド20、測定部30、試料ストック部40、ピペットチップストック部42、バッファストック部44、冷蔵部46、測定スティックストック部48及びラジエータ60を備えている。
【0015】
ラジエータ60は、金属製の薄板が積層されて内部に流路が構成されており、流路に温調水を流して、温調水と筐体内の空気との熱交換を行っている。ラジエータ60には、ラジエータ送風ファン62が設けられている。ラジエータ送風ファン62により、ラジエータ60で熱交換された空気が、筐体内部へ送り込まれる。ラジエータ60には、循環ホース66が連結されている。これにより、筐体内部の温度が調整される。
【0016】
試料ストック部40は、試料積層部40A及び試料セット部40Bで構成されている。試料積層部40Aには、個々のセルに各々異なるアナライト溶液をストックする試料プレート40Pが、Z方向に積層されて収容されている。試料セット部40Bには、1枚の試料プレート40Pが、図示しない搬送機構により試料積層部40Aから搬送されてセットされる。
【0017】
ピペットチップストック部42は、ピペットチップ積層部42A及びピペットチップセット部42Bで構成されている。ピペットチップ積層部42Aには、複数のピペットチップを保持するピペットチップストッカー42Pが、Z方向(鉛直方向)に積層されて収容されている。ピペットチップセット部42Bには、1枚のピペットチップストッカー42Pが、図示しない搬送機構によりピペットチップ積層部42Aから搬送されてセットされる。
【0018】
バッファストック部44は、ボトル収容部44A及びバッファ供給部44Bで構成されている。ボトル収容部44Aには、バッファ液が貯留された複数本のボトル44Cが収容されている。バッファ供給部44Bには、バッファプレート44Pがセットされている。バッファプレート44Pは、複数筋に区画されており、各々の区画には濃度の異なるバッファ液が貯留されている。また、バッファプレート44Pの上部には、分注ヘッド20のアクセス時にピペットチップCPが挿入される孔Hが構成されている。バッファプレート44Pへは、ホース44Hによりボトル44Cからバッファ液が供給される。
【0019】
バッファ供給部44Bの隣には、補正用プレート45が配置され、その隣に冷蔵部46が配置されている。補正用プレート45は、バッファ液の濃度調整を行うためのプレートであり、マトリクス状に複数セルが構成されている。冷蔵部46には、冷蔵の必要な試料が配置される。冷蔵部は低温とされており、この上で試料は低温状態に保たれる。
【0020】
測定スティックストック部48には、測定スティック収容プレート48Pがセットされている。測定スティック収容プレート48Pには、測定チップとしての測定スティック50が複数本収納されている。
【0021】
測定スティックストック部48と測定部30との間には、測定スティック搬送機構49が備えられている。測定スティック搬送機構49は、測定スティック50を両側から挟み込んで保持する保持アーム49A、回転により保持アーム49AをY方向に移動させるボールねじ49B、Y方向に配置され、測定スティック50が載せられる搬送用レール49C、を含んで構成されている。測定の際には、1本の測定スティック50が測定スティック搬送機構49により測定スティック収容プレート48Pから搬送用レール49C上に載せられ、保持アーム49Aにより挟持されつつ測定部30へ移動してセットされる。
【0022】
測定スティック50は、図4及び図5に示すように、誘電体ブロック52、流路部材54、及び、保持部材56、で構成されている。
【0023】
誘電体ブロック52は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部52A、及び、プリズム部52Aの両端部にプリズム部52Aと一体的に形成された被保持部52Bを備えている。
【0024】
プリズム部52Aの互いに平行な2面の内の広い側の測定面には、金属膜57が形成されている。金属膜57の表面には、タンパクTaを金属膜57上に固定化するための、リンカー層57Aが形成されている。このリンカー層57A上にタンパクTaが固定される。
【0025】
この誘電体ブロック52は、いわゆるプリズムとして機能し、バイオセンサー10での測定の際には、プリズム部52Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から金属膜57との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0026】
プリズム部52Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材56と係合される係合凸部52Cが形成されている。また、プリズム部52Aの下側には、側端辺に沿って搬送用レール49Cと係合されるフランジ部52Dが形成されている。
【0027】
流路部材54は、図5に示すように、6個のベース部材54Aを備えている。ベース部材54Aの各々には4本の円筒部材54Bが立設されている。ベース部材54Aは、3個のベース部材54A毎に、立設された円筒部材54Bのうちの1本の上部が連結部材54Dによって連結されている。流路部材54は、軟質で弾性変形可能な材料、例えば非晶質ポリオフィレンエラストマーで構成することができる。弾性変形可能な材料で構成することにより、誘電体ブロック52との密着性を高め、誘電体ブロック52との間に構成される液体流路55の密閉性を確保することができる。
【0028】
保持部材56は、長尺とされ、上面部材56A及び2枚の側面板56Bが蓋状に構成された形状とされている。側面板56Bには、誘電体ブロック52の係合凸部52Cと係合される係合孔56C、及び、上記光ビームの光路に対応する部分に窓56Dが形成されている。保持部材56は、係合孔56Cと係合凸部52Cとが係合されて、誘電体ブロック52に取り付けられる。流路部材54は、保持部材56と一体成形されており、保持部材56と誘電体ブロック52の間に配置される。上面部材56Aには、流路部材54の円筒部材54Bに対応する位置に、受部59が形成されている。受部59は略円筒状とされている。
【0029】
ベース部材54Aには、図6及び図7に示すように、底面側に略S字状の2本の流路溝54Cが形成されている。ベース部材54Aは、底面が誘電体ブロック52の測定面(上面)と密着されることにより、流路溝54Cと誘電体ブロック52の測定面との間に構成される空間と前記中空部とで、液体流路55が構成される。1個のベース部材54Aには、2本の液体流路55が構成される。
【0030】
なお、流路部材54は、不図示の測定スティック押さえ部材によって誘電体ブロック52に押圧されることにより誘電体ブロック52に密着させられるので、液体流路55の密閉性が確保される。
【0031】
また、流路溝54Cの端部の各々は、円筒部材54Bの中空部と1対1に連通されている。これにより、図7に示すように、各液体流路55の一端には、当該液体流路55に試料を供給する供給口53Aが、他端には、当該液体流路55から試料を排出させるための排出口53Bが、それぞれ形成される。
【0032】
ここで、1の流路部材により形成される2本の液体流路55のうち、1本は測定流路55Aとして用いられ、他の1本は参照流路55Rとして用いられる。測定流路55Aの金属膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaが固定され、参照流路55Rの金属膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaが固定されない状態で測定が行われる。
【0033】
測定流路55A及び参照流路55Rには、図6に示すように、各々光ビームL1、L2が入射される。
【0034】
光ビームL1、L2は、図7に示すように、ベース部材54Aの中心線M上に配置されるS字の屈曲部分に照射される。以下、測定流路55Aにおける光ビームL1の照射領域を測定領域E1、参照流路55Rにおける光ビームL2の照射領域を参照領域E2という。参照領域E2は、タンパクTaの固定された測定領域E1から得られるデータを補正するための測定を行う領域である。
【0035】
図8には、測定部30の構成が示されている。同図に示されるように、測定部30は、光学定盤32、光出射部34、受光部36を含んで構成されている。なお、同図では、測定スティック50の誘電体ブロック52と流路部材54以外の部材は省略されている。
【0036】
光学定盤32には、側方向から見て、上部中央の水平平面で構成される定盤レール部32A、定盤レール部32Aから離れる方向に向かって低くなる出射傾斜部32B、定盤レール部32Aを挟んで出射傾斜部32Bと逆側に配置される受光傾斜部32Cが形成されている。定盤レール部32Aには、Y方向沿って測定スティック50がセットされる。光学定盤32の出射傾斜部32Bには、測定スティック50へ向かって光ビームL1、L2を出射する光出射部34が設置されている。また、受光傾斜部32Cには、受光部36が設置されている。
【0037】
光出射部34には、光源34A、レンズユニット34Bが備えられている。また、受光部36には、レンズユニット36A、CCD36Bが備えられている。光源34Aは全体の動作を制御するための制御部70と接続され、CCD36Bは信号処理部38及び制御部70と接続されている。
【0038】
光源34Aからは、発散状態の光ビームLが出射される。光ビームLは、レンズユニット34Bを介して、2本の光ビームL1、L2となり、光学定盤32上に配置された誘電体ブロック52の一対の測定領域E1と参照領域E2に入射される。測定領域E1及び参照領域E2において、光ビームL1、L2は、金属膜57と誘電体ブロック52との界面に対して種々の入射角成分を含み、かつ全反射角以上の角度で入射される。光ビームL1、L2は、誘電体ブロック52と金属膜57との界面で全反射される。全反射された光ビームL1、L2も、種々の反射角成分をもって反射される。この全反射された光ビームL1、L2は、レンズユニット36Aを経てCCD36Bで受光されて、各々光電変換され、光検出信号が信号処理部38へ出力される。信号処理部38では、入力された光検出信号に基づいて所定の処理が行なわれ、測定領域E1及び参照領域E2での屈折率変化データが求められる。
【0039】
ここでの屈折率変化データは、全反射された光ビームL1、L2の暗線位置に基づいて求められるものである。金属膜57の界面に、特定の入射角で入射した光ビームL1、L2は、金属膜57とタンパクTaとの界面に表面プラズモンを励起させ、これにより、この入射角で入射した光ビームL1、L2の反射光の強度が鋭く低下して暗線として観察される。この暗線となる光ビームL1、L2の入射角が全反射減衰角θSPであり、タンパクTaと試料Aとの反応に応じた全反射減衰角θSPの変化が、屈折率変化データとなる。屈折率変化データが制御部70へ出力され、タンパクTaと試料Aとの反応が測定される。
【0040】
図9には、分注ヘッド20の構成が示されている。同図に示されるように、分注ヘッド20には、12本の分注管20Aが備えられている。分注管20Aは、X方向と直交する矢印Y方向に沿って1列に配置されている。分注管20Aは、隣り合う2本で一対とされ、液体流路55の供給口53A及び排出口53Bにそれぞれ1本ずつ対応させて使用される。また、一対の液体流路55A、55Rには、共通の分注管20Aを用いる。
【0041】
また、各分注管20Aの先端は、ピペットチップCPが着脱可能に構成されている。分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPは、必要に応じて交換される。
【0042】
分注ヘッド20は、図1及び図3に示すように、水平駆動機構22により矢印X方向に移動可能とされている。水平駆動機構22は、ボールねじ22A、モータ22B、ガイドレール22Cにより構成されている。ボールねじ22A及びガイドレール22Cは、X方向に配置されている。ガイドレール22Cは平行に2本配置され、そのうちの1本はボールねじ22Aの下側に所定間隔離れて配置されている。分注ヘッド20は、ボールねじ22Aの回転により、ガイドレール22Cに沿ってX方向に移動される。このX方向移動により、分注ヘッド20は、ピペットチップセット部42B、試料セット部40B、バッファ供給部44B、冷蔵部46及び測定部30に対向する位置に移動可能に構成されている。
【0043】
また、図9に示されるように、分注ヘッド20には、分注ヘッド20を矢印Z方向に移動させる鉛直駆動機構24が設けられている。同図に示されるように、鉛直駆動機構24は、モータ24A及びZ方向に配置された駆動軸24Bを含んで構成され、分注ヘッド20をZ方向に移動させる。このZ方向移動により、分注ヘッド20は、ピペットチップセット部42Bにセットされたピペットチップストッカー42P、試料セット部40Bにセットされた試料プレート40P、バッファ供給部44Bにセットされたバッファプレート44P及び測定部30にセットされた測定スティック50にアクセス可能となっている。
【0044】
さらに、分注ヘッド20は、12本の分注管20Aが固定される固定基部20Bと、その外周部に設けられた被覆部材20Cと、被覆部材20CのX方向で対向する両面に取り付けられた一対の支持板80A、80Bと、を含んで構成されている。
【0045】
被覆部材20Cは、内側に不図示の留め部材等が設けられており、固定基部20Bに着脱可能に固定されている。このため、被覆部材20Cは、通常時は固定基部20Bと一体的にX方向及びZ方向に移動される。
【0046】
また、被覆部材20Cは、Y方向両端面に、一対の支持部材76が突設されている。この支持部材76は、それぞれ同図に示す一対のストッパ78の2本のバー78Aに挟持されるようになっている。
【0047】
なお、一対のストッパ78は、Z方向位置及びY方向位置が固定とされており、分注ヘッド20と共にガイドレール22C上をX方向に移動される。また、ストッパ78の軸78BはX方向に伸縮可能に構成されている。これにより、支持部材78のZ方向位置がストッパ78の配設位置にある場合に軸78Bが伸長すると、2本のバー78Aにより支持部材76が挟持される。
【0048】
図10に示されるように、ストッパ78の2本のバー78Aにより支持部材76が挟持されると、Z方向移動が禁止される。この被覆部材20CのZ方向移動が禁止された状態でさらにモータ24Aが駆動されると、被覆部材20Cの内側に設けられた留め部材による固定基部20Bへの固定が解除されて固定基部20BだけがZ方向に移動する。
【0049】
なお、被覆部材20Cの固定基部20Bへの固定が解除されてストッパ78により支持部材78が挟持された状態においてモータ24Aが駆動され、固定基部20Bが被覆部材20Cに近づく方向に移動されると、被覆部材20Cは再び固定基部20Bに固定される。また、ストッパ78による被覆部材20Cの移動禁止は、被覆部材20Cが固定基部20Bに固定された状態で解除される。
【0050】
図11に示されるように、分注ヘッド20には、吸排駆動部26が接続される。吸排駆動部26は、第1ポンプ27、第2ポンプ28を備えている。第1ポンプ27及び第2ポンプ28は、前述の一対の分注管20Aに各々対応して設けられている。第1ポンプ27は、シリンジポンプで構成されており、第1シリンダ27A、第1ピストン27B、及び、第1ピストン27Bを駆動させる第1モータ27Cを備えている。第1シリンダ27Aは、配管27Hを介して分注ヘッド20と接続されている。また、第2ポンプ28も、シリンジポンプで構成されており、第2シリンダ28A、第2ピストン28B、及び、第2ピストン28Bを駆動させる第2モータ28Cを備えている。第2シリンダ28Aは、配管28Hを介して分注ヘッド20と接続されている。
【0051】
試料やバッファ液などの液体の供給時には、分注ヘッド20を、冷蔵部46、試料セット部40A、バッファ供給部44B上へ移動させ、一対の分注管20Aの一方(計6本)に取り付けられたピペットチップCPで試料やバッファ液を吸引する。このときの吸引量は、一対の液体流路55A、55Rに供給するため、液体流路2本分の量である。そして、試料やバッファ液を吸引した6本の分注管20A側のピペットチップCPを、測定スティック50の測定流路55A側の供給口53Aに挿入すると共に、他方の列の6本の分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPを測定流55Aの排出口53Bに挿入する。そして、供給口53A側の分注管20Aから半量の液体を吐出すると共に、排出口53B側の分注管20Aで液体を吸入することにより液体の供給が行われる。続いて、参照流路55R側へも、同様にしてピペットチップCPの残り半量の液体が供給される。
【0052】
ここで、図12に示されるように、分注ヘッド20の被覆部材20Cに取り付けられた一対の支持板80には、一方の支持板80Aには光源としてのLED82が、他方の支持板80Bには受光した光を電気信号に光電変換するフォトダイオード84が、1つの分注管20Aに対してそれぞれ1つずつ設けられている。同図に示されるように、LED82とフォトダイオード84は、分注管20Aの取り付け位置の中心Cを通る直線上に配設されている。
【0053】
すなわち、図13(A)に示されるように、LED82とフォトダイオード84の間に光を遮るものがない状態では、LED82が発光させた場合、フォトダイオード84の受光光量が著しく増加する。
【0054】
一方、LED82とフォトダイオード84の間に、同図(B)に示されるように、分注管20Aに装着されたピペットチップCPが存在する場合や、同図(C)に示されるように分注管20Aが存在する場合には、LED82を発光させてもフォトダイオード84による受光光量の増加量に著しい変化は見られない。
【0055】
本実施の形態では、このLED82及びフォトダイオード84を用いて、ピペットチップCPの装着、取り外し、ピペットチップCPを用いたバッファ液や試料の吸引及び流路への注入等の分注ヘッド20による処理を行う際に、分注管20Aの先端におけるピペットチップCPの有無を検知するようにしている。
【0056】
図14に示されるように、支持板80Aと支持板80Bとの間の距離をL、支持板80Aと分注管20Aの取り付け位置中心Cとの間の距離をL1、支持板80Bとフォトダイオード84の間の距離をL2とすると、L,L1及びL2との関係は、以下の(1)式を満たすように設定することが好ましい。
【0057】
L1<1/2・L ・・・ (1)
図15には、Lを、30mm、40mm、50mm、60mm、70mm、80mm、90mm、100mmとした場合に、それぞれL1を変化させたときのピペットチップによる遮光光量の測定結果が示されている。
【0058】
この測定結果は、ポリプロピレンを用いて中空の円錐状に成形された半透明のピペットチップCPを用い、LED82として東芝LEDランプInAlGaP赤色発光TLSH160(F)を用い、フォトダイオード84として東芝フォトICシリコンエピタキシャルプレーナTPS855(F)を用いた場合のものである。
【0059】
なお、LEDランプの輝度は平均4500mcdであるが、輝度を6000mcdにしても、3000mcdにしても、同様の結果が得られた。 ただし、実際に装置に搭載する場合には、受光素子が飽和しない範囲とすれば問題ない。
【0060】
また、フォトICの受光面は0.35mm四方であり、波長λは、LEDランプの特性に合わせ、感度ピークが同じ範囲にあるもの(λ=630nm)を選定した。
【0061】
同図に示されるように、L1を長くするほど、2次曲線的に遮光光量が減っていく(受光光量が増加していく)傾向にある。
【0062】
これは、ピペットチップCPが光源から近いほど、ピペットチップCPによる光源からの光の散乱効果が大きく、L1を変化させることにより散乱光の影響に顕著な差異がみられるためである。
【0063】
また、図14に示すように、L1が短いほど受光面に係るピペットチップCPの影86が大きくなる事象が観測された。このことにより、L1が短いほど光軸のアライメントの精度を厳密に管理しなくてもよいという効果もある。
【0064】
ここで、図15に示す測定においては、Lを30mm以下とした場合について測定を行っていないが、LED、フォトダイオード、ピペットチップの大きさや、分注管20Aの駆動スペースを考慮すると、Lを30mm以下とすることは困難であったためである。また、Lを60mm以上とすることは実際の装置構成上、想定しにくいため、Lを100mmまでについて測定した。
【0065】
図16には、分注ヘッド20の動作制御に関する機能ブロック図が示されている。同図に示されるように、制御部70には、入力部72及び表示部74(何れも図1乃至図3では図示を省略)が接続されている。
【0066】
制御部70では、入力部72を介してオペレータにより入力されたバイオセンサ10に対する動作指示に応じた流路への試料やバッファ液の注入、屈折率データの取得、解析等を含む測定処理が実行される。また、制御部70では、表示部74へのバイオセンサ10における動作状態や測定結果等の表示が実行される。
【0067】
なお、入力部72及び表示部74は、バイオセンサ10の筐体に取り付けられた構成でもよいし、パーソナルコンピュータのように一体的に構成されたものをバイオセンサ10に接続した構成でもよい。
【0068】
また、同図に示されるように、分注ヘッド20をX方向移動させるためのモータ22B、Z方向移動させるためのモータ24A、第1モータ27C、第2モータ28C、LED82及びフォトダイオード84は、上記制御部70と接続されている。
【0069】
制御部70では、測定処理を実行するにあたり、適宜分注ヘッド20のX方向及びZ方向への移動制御を主とした分注ヘッド動作制御処理が実行される。
【0070】
この分注ヘッド動作制御処理に伴い、制御部70では、LED82の点灯/消灯、フォトダイオード84による電荷の読み出しを制御して分注管20Aの先端におけるピペットチップCPの有無を検出するチップ検出処理が実行される。
【0071】
さらに、制御部70では、バイオセンサ10の電源投入時やメンテナンス時等に、各分注管20Aに対応して設けられたLED82及びフォトダイオード84の動作チェックが行われる。分注管20Aが図13(A)に示されるような位置にある状態でLED82の発光及びフォトダイオード84による受光を行った後、分注管20Aを図13(C)に示される位置まで移動させてLED82の発光及びフォトダイオード84による受光を行い、これらの受光光量の差分が所定量以上である場合に正常に動作していると認識する。
【0072】
ここで、12本の分注管20Aに対応するLED82を全て同時に点灯させると、1つのフォトダイオード84で複数のLED82の発光光を受光してしまい(図12参照)、ピペットチップCPの有無を正確に検出することができない。
【0073】
そこで、図17に示されるように、制御部70では、LED82を1つずつ所定時間点灯させるようにしている。
【0074】
また、同図に示されるように、フォトダイオード84における受光光量は、LEDの点灯開始時には安定しないことが想定されるので、LED82の点灯を開始してから所定時間経過後にフォトダイオード84に蓄積された電荷を一旦読み出しておき、LED82を消灯した時点で再び蓄積された電荷を読み出す。このとき読み出した電荷に応じた電圧に基づいてチップの有無を検知する。
【0075】
なお、制御部70では、LED82及びフォトダイオード84について、それぞれ1〜12の識別符号Nを用いて識別し、それぞれの点灯状態又は蓄積された電荷の読み出しタイミングを制御している。
【0076】
次に、本実施形態での液体流路55の形成について説明する。
【0077】
測定スティック50は、測定スティック搬送機構49により搬送用レール49Cに沿って測定部30まで搬送され、定盤レール部32A上に載置される。図示しないセンサにより測定スティック50が定盤レール部32A上に載置されたことが検知されると、スライドベアリング81Cが上側部33Aから下側部33Bへ移動し、ブロック押さえ81の爪81Dで誘電体ブロック52のフランジ部52Dが保持される。このようにして、液体流路55が形成される。その後、通常の測定手順で液体の供給及び光ビームの照射が行われて、屈折率変化データが取得される。
【0078】
図18には、制御部70により実行される分注ヘッド動作制御処理の流れが概略的に示されている。以下、同図を参照して、本実施の形態に係る分注ヘッド20の動作制御処理を実行する。
【0079】
まず、ステップ100ではピペットチップCPを分注管20Aの先端に装着する。具体的には、モータ22Bを駆動してピペットチップセット部42Bの配設位置に対向する位置まで分注ヘッド20をX方向に移動させる。
【0080】
その後、モータ24Bを駆動して分注ヘッド20をZ軸方向に下降移動させ、ピペットチップセット部40Bにセットされたピペットチップストッカー42Pにセットされたピペットチップをピペットチップストッカー42Pに押し付けるようにして、分注管20AにピペットチップCPを装着する。
【0081】
そして、ピペットチップCPが装着されると、再びモータ24Bを駆動して分注ヘッド20をZ軸方向に上昇移動させる。
【0082】
このとき、後述するチップ検出処理を実行する。チップ検出処理を行う際には、まず、分注ヘッド20をストッパ78の配設位置まで上昇させ、モータ24Bの駆動を一旦停止する。次に、ストッパ78により支持部材76を挟持し、被覆部材20Cの移動を禁止する。この状態で更にモータ24Bを駆動して、被覆部材20Cに取り付けられたLED82及びフォトダイオードとピペットチップとの位置関係が図13(B)に示すようになるまで、固定基部20Bのみを上昇移動させる。
【0083】
この状態でチップ検出処理を実行し、チップ検出処理の実行後は、モータ24Bを駆動してストッパ78の配設位置まで固定基部20Bを下降移動させ、移動が禁止されている被覆部20Cを再び固定基部20Bと一体化させる。
【0084】
次のステップ102では、ピペットチップCP内部に、液体流路55に注入するためのバッファ又は試料を吸引する。なお、バッファを吸引するか、試料を吸引するかは、予め入力部72を介してオペレータにより入力されたバイオセンサ10に対する動作指示に応じて決められる。
【0085】
このバッファ又は試料の吸引は、ステップ100におけるピペットチップの装着時と同様に、モータ22B及びモータ24Bの駆動により分注ヘッド20をX方向及びZ方向に移動させ、ピペットチップCPをバッファプレート44Pの孔H又は試料プレート40Pのセル内のバッファ又は試料を吸引可能な位置で待機させる。
【0086】
そして、分注ヘッド20を待機させた状態で、各吸排機構26の第1モータ27Cを駆動して第1ピストン27Bを作動させ、液体流路55の供給口53Aに対応する分注管20AのピペットチップCP内にバッファ又は試料を吸引する。その後、再びモータ24Bを駆動して分注ヘッド20をZ軸方向に上昇移動させる。
【0087】
この吸引処理の終了後にも、上述したように分注ヘッド20及びストッパ78を用いて被覆部材20Cに取り付けられたLED82及びフォトダイオードとピペットチップCPとの位置関係が図13(B)に示すようになるまで、固定基部20Bのみを上昇移動させ、チップ検出処理を実行する。また、チップ検出処理の実行後は、モータ24Bを駆動してストッパ78の配設位置まで固定基部20Bを下降移動させ、移動が禁止されている被覆部20Cを再び固定基部20Bと一体化させる。
【0088】
次のステップ104では、ピペットチップCP内部に吸引した液体を液体流路55に注入する。液体流路55への液体の注入時は、モータ22B及びモータ24Bの駆動により分注ヘッド20をX方向及びZ方向に移動させ、ピペットチップCPの先端を測定スティック50の供給口53A及び排出口53Bに挿入した状態で待機させる。
【0089】
そして、分注ヘッド20を待機させた状態で、各吸排機構26の第1モータ27C及び第2モータ28Cをそれぞれ駆動して、液体流路55の供給口53Aに対応する分注管20AのピペットチップCP内のバッファ又は試料を液体流路55に注入すると共に、排出口53Bに対応する分注管20AのピペットチップCP内に、液体流路55内に充填されていた液体を吸引する。その後、再びモータ24Bを駆動して分注ヘッド20をZ軸方向に上昇移動させる。
【0090】
なお、この液体の注入にあたり、注入前と、注入後にそれぞれ上述したように分注ヘッド20及びストッパ78を用いて被覆部材20Cに取り付けられたLED82及びフォトダイオードとピペットチップCPとの位置関係が図13(B)に示すようになるまで、固定基部20Bのみを上昇移動させ、チップ検出処理を実行する。また、チップ検出処理の実行後は、モータ24Bを駆動してストッパ78の配設位置まで固定基部20Bを下降移動させ、移動が禁止されている被覆部20Cを再び固定基部20Bと一体化させる。
【0091】
次のステップ106では、ピペットチップCPを交換するか否かを判定し、当該判定が否定判定となった場合は、再びステップ102に戻る。
【0092】
一方、ステップ106で肯定判定となった場合はステップ108に移行して、不図示のチップ外し機構によりピペットチップCPを取り外し、次のステップ109に移行する。
【0093】
なお、このステップ108の処理においても、ピペットチップCPの取り外し後に上述したように分注ヘッド20及びストッパ78を用いて被覆部材20Cに取り付けられたLED82及びフォトダイオードとピペットチップCPとの位置関係が図13(B)に示すようになるまで、固定基部20Bのみを上昇移動させ、チップ検出処理を実行する。また、チップ検出処理の実行後は、モータ24Bを駆動してストッパ78の配設位置まで固定基部20Bを下降移動させ、移動が禁止されている被覆部20Cを再び固定基部20Bと一体化させる。
【0094】
ステップ109では、本分注ヘッド動作制御処理を終了するか否かを判定し、測定の動作指示に基づく全ての試料等の液体流路55への注入が完了していない場合は当該判定が否定判定となり、再びステップ100に戻る。
【0095】
また、ステップ109で肯定判定となった場合は、本分注ヘッド動作制御処理を終了する。
【0096】
図19には、上記分注ヘッド動作制御処理において実行されるチップ検出処理の流れが示されている。以下、同図を参照して、本実施の形態に係るチップ検出処理について説明する。なお、同図に示すチップ検出処理は、分注ヘッド20及びストッパ78を用いて被覆部材20Cに取り付けられたLED82及びフォトダイオードとピペットチップCPとの位置関係が図13(B)に示すようになるまで、固定基部20Bのみを上昇移動させた状態で実行される。
【0097】
まず、ステップ110では、識別符号Nに1をセットし、次のステップ112では、N番目のLED82を点灯させる。
【0098】
次のステップ114では、所定時間の経過待ちを行い、次のステップ116では、N番目のフォトダイオード84に蓄積された電荷を読み出した後に、ステップ118に移行する。
【0099】
ステップ118では、測定時間の経過待ちを行い、次のステップ120では、再びN番目のフォトダイオードに蓄積された電荷の読み出し、その後にステップ122に移行する。
【0100】
次のステップ122では、読み出した電荷に応じた電圧値Vが予め設定された閾値Sよりも小さいか否かを判定し、当該判定が肯定判定となった場合はピペットチップCPが分注管20Aに装着されているものと判断し、ステップ124に移行して、N番目の分注管20Aの検出結果として、チップが装着されていることを記憶する。
【0101】
一方、ステップ122で否定判定とされた場合には、N番目の分注管20AにピペットチップCPが装着されていないものと判断し、ステップ126に移行して、N番目の分注管20Aの検出結果として、チップが装着されていないことを記憶する。
【0102】
次のステップ128では、N番目のLED82を消灯させ、その後にステップ130に移行して、Nをインクリメントした後、ステップ132に移行してNが12よりも大きいか否かを判定する。当該判定が否定判定となった場合は、まだ全てのLED82の点灯及び対応するフォトダイオード84による光量検出が終了していないものと判断して、再びステップ112に戻る。
【0103】
一方、ステップ132で肯定判定となった場合は、全てのLED82の点灯及び対応するフォトダイオード84による光量検出が終了したものと判断して、次のステップ134に移行する。
【0104】
ステップ134では、分注ヘッド20の動作状態を取得し、その後にステップ136に移行して、動作状態と各分注管20Aのチップの有無とに基づいて、異常があるか否かを判定する。
【0105】
なお、動作状態としては、上記分注ヘッド動作制御処理における、ピペットチップ装着後、バッファ又は試料吸引後、液体流路への注入前、液体流路への注入後及びチップ取り外し後があげられる。
【0106】
また、異常であるか否かについては、ピペットチップ
ステップ136で肯定判定となった場合は、ステップ138に移行して、動作状態に応じて次の処理を決定し、その後にステップ140に移行して、決定した処理を実行した後に、本チップ検出処理を終了する。
【0107】
一方、ステップ136で否定判定となった場合はステップ138及びステップ140の処理を実行することなく本チップ検出処理を終了する。
【0108】
ここで、チップの検出結果が異常である場合の、次の処理の決定は、例えば、以下の表1に示されるように決定される。
【0109】
【表1】

【0110】
(1)ピペットチップ装着後のチップ検出においてチップがなかった場合は、もう一度ピペットチップの装着を実行する。このように再試行する場合には、再試行することを記憶しておき、再試行しても異常である場合には、異常部位の縮退、及び、装置全体の動作停止と警告の発信のうちの何れかを実行する。何れの処理を実行するかは、予め設定しておいてもよいし、ユーザによって選択可能としてもよい。
【0111】
なお、異常部位の縮退は、ピペットチップCPの装着状態が異常である分注管20Aとその対された分注管20Aのポンプの駆動を停止することにより実行される。
【0112】
また、異常部位の縮退を実行する場合、当該縮退した分注管20Aに対応する液体流路55の測定データは正しくないため、当該液体流路55の測定データに、縮退中である旨を示すマーキングをしておくことが好ましい。
【0113】
(2)バッファ又は試料の吸引後のチップ検出においてチップがなかった場合は、装置全体の動作停止と警告の発信を実行する。
【0114】
すなわち、この場合、バッファプレート44Pの孔H又は試料プレート40PのセルにピペットチップCPが残されたままの可能性がある。このまま処理を続行すると、残されたピペットチップCPが原因でこれ以降の処理が正常に実行できず、故障や破損が生じる場合もあるため、動作を停止して警告を発信し、残されたチップを除去してから動作停止を解除する。
【0115】
(3)液体流路への注入前のチップ検出においてチップがなかった場合は、異常部位の縮退、及び、装置全体の動作停止と警告の発信のうちの何れかを実行する。
【0116】
すなわち、この段階でのチップなしの結果は、分注ヘッド20の移動中に、バッファや試料を吸引したピペットチップCPが装置内に落下していることを意味している。
【0117】
この場合、チップが取り残された状態と異なり、装置の故障や破損が生じる可能性は低いことから、装置の故障や破損の防止を重要視して装置全体の動作を停止して警告を発信し、残されたチップを除去してから動作停止を解除するか、測定の効率を重要視して異常部位の縮退により、とりあえず正常な部位の測定だけを実行するか、適宜選択し得る。
【0118】
(4)液体流路への注入後のチップ検出においてチップがなかった場合は、供給口53Aや排出口53Bにチップが取り残されていることを意味しており、この状態では、今回の測定結果の信頼性が低いだけでなく、次の測定は不可能であり、装置の動作を続行すると装置の故障や破損を招くので、装置全体の動作を停止して、警告を発信し、残されたチップを除去してから動作停止を解除する。
【0119】
(5)ピペットチップ取り外し後のチップ検出においてチップがあった場合は、もう一度ピペットチップの取り外しを実行する。このように再試行する場合には、再試行することを記憶しておき、再試行しても異常である場合には、故障や破損が生じる場合もあるため、動作を停止して警告を発信し、残されたチップを除去してから動作停止を解除する。
【0120】
本実施形態によれば、液体を吸排可能な分注管20Aが設けられた分注ヘッド20を、X方向及びZ方向に移動させることにより、分注管20Aにより液体を分注して検体物質と試料との間の相互作用を測定するに際し、分注管20Aの先端に着脱可能なピペットチップCPの有無を分注ヘッド20に設けられたLED82及びフォトダイオード84を用いて検出し、検出タイミングにおける分注ヘッド20の動作状態に基づいて、検出結果が異常であるか否かを前記各分注管20A毎に判定し、異常であると判定された場合に、動作状態に基づいて実行すべき処理を選択するようにしているので、分注ヘッド20に異常が発生した場合でも、動作状態によっては測定を続行することができる。
【0121】
なお、本実施形態では、測定装置として、表面プラズモンセンサーを一例として説明したが、測定装置としては、表面プラズモンセンサーに限定されるものではない。その他の例えば、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した光学的測定技術など、あらゆるバイオセンサーに本発明は適用することができる。
【0122】
また、全反射減衰を利用する他のバイオセンサーとしては、漏洩モード検出器をあげることができる。漏洩モードセンサーは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、表面プラズモン共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の反応を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】実施形態に係るバイオセンサーの内部の斜視図である。
【図2】実施形態に係るバイオセンサーの内部の上面図である。
【図3】実施形態に係るバイオセンサーの内部の側面図である。
【図4】実施形態に係る測定スティックの斜視図である。
【図5】実施形態に係る測定スティックの分解斜視図である。
【図6】実施形態に係る測定スティックの測定領域及び参照領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図7】実施形態に係る測定スティックの1の流路部材を下側からみた図である。
【図8】実施形態に係るバイオセンサーの測定部付近の概略図である。
【図9】実施形態に係るバイオセンサーの分注ヘッドの鉛直駆動機構を示す斜視図である。
【図10】実施形態に係るバイオセンサーの分注ヘッドのストッパにより被覆部材の移動が禁止された状態を示す斜視図である。
【図11】実施形態に係るバイオセンサーの液体吸排部の概略構成図である。
【図12】実施形態に係る支持板に設けられたLEDとフォトダイオードとの位置関係を示す説明図である。
【図13】実施形態に係る支持板と分注管又はピペットチップの位置関係を示す説明図である。
【図14】実施形態に係るLEDと分注管の配設位置、及びフォトダイオードにかかる影の大きさの関係を示す説明図である。
【図15】実施形態に係るピペットチップによるLEDの発光光の遮光量を示すグラフである。
【図16】実施形態に係るバイオセンサーの制御部とその周辺の概略ブロック図である。
【図17】実施形態に係るLEDの発光時期とフォトダイオードの電荷蓄積時期とを示すタイムチャートである。
【図18】実施の形態に係る分注ヘッド動作制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図19】実施形態に係るチップ検出処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0124】
10 バイオセンサー
20 分注ヘッド(ヘッド部)
20A 分注管(ノズル)
20B 固定基部
20C 被覆部材
30 測定部
32A 定盤レール部
34A 光源
34 光出射部
49C 搬送用レール
50 測定スティック
52 誘電体ブロック
54 流路部材
54D 連結部材
55 液体流路
70 制御部(判定手段、選択手段)
76 支持部材
78 ストッパ
80 支持板
82 LED(検出手段)
84 フォトダイオード(検出手段)
CP ピペットチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体物質と試料との間の相互作用を測定する測定装置であって、
液体を吸排可能なノズルと、
前記ノズルの先端に着脱可能なピペットチップと、
複数の前記ノズルが設けられ、水平方向及び鉛直方向の少なくとも一方に移動可能なヘッド部と、
前記ヘッド部に設けられ、各ノズルの先端における前記ピペットチップの有無を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出タイミングにおける前記ノズル及び前記ヘッド部の動作状態に基づいて、前記検出手段による検出結果が異常であるか否かを前記各ノズル毎に判定する判定手段と、
前記判定手段により異常であると判定された場合に、前記動作状態に基づいて実行すべき処理を選択する選択手段と、
を備えた測定装置。
【請求項2】
前記選択手段が、前記判定手段により異常であると判定されたノズルを用いて測定された測定データに、異常が発生した旨を示す情報を付加する付加処理を選択可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記選択手段が、前記判定手段により異常であると判定されたノズルの吸排動作を禁止する禁止処理を選択可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−89365(P2008−89365A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269039(P2006−269039)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】