説明

湾曲片の成形品に裏当てする方法と工具

本発明は、湾曲片のための成形品にライニングを取り付ける方法と工具に関するものである。前記方法は、数回の連続的なパスにより成形品3に幅A2のライニング15を、圧力を加えながら取り付ける段階を含み、それによりライニングが湾曲片の曲率に適合させられる。この適合がライニング5の幅A2の場合に最小回数のパスで達成できる。工具は、ライニング15を供給するドラム25と、各パスの開始時に成形品3にライニング端部を取り付ける手段と、ライニング全幅にわたり一様にライニングを加圧する円錐形のローラ25と、湾曲片を境界付ける曲線5,7と平行に成形品3に配置された側部案内27,28を介して工具を移動させる手段26,29とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空産業分野で使用される湾曲片の成形品に裏当てする方法と工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
裏当ては、成形品にライニング形式で強化複合材料層を取り付ける作業からなる方法である。航空産業で極めて広く用いられている複合材料の例は、予備含侵複合材料だが、これは、繊維強化材とポリマー母材との混合物で、それらは、後の使用のために貯蔵することができるように、複合材料を製造するのに使用される。
この混合物は、シート、ライニング、トウ、織物いずれかの形態にすることができる。熱硬化性母材の場合、樹脂は、概して部分硬化されるか、又は別の方法によりB段階と呼ばれる制御された粘度に形成される。フレイム(flame)触媒、抑制剤、遅延剤、トウ等の添加剤を加えることによって、最終使用の具体的な特徴が得られるようにし、かつ工程、貯蔵、取り扱い面の特徴を改善することができる。
【0003】
この方法では、ライニングは、無作為には配置されず、概して一定方向に、具体的には0°、90°、45°、−45°に配置又は位置決めされる。層の数(厚さ)と、一定方向又は他の方向でのライニング配置とは、湾曲片が各点で支える応力の性質と方向とによって決定される。
ライニングには2種類がある。すなわち、裏当てされる面が、各々平らか湾曲しているかに応じて平形と湾曲形とがある。
裏当て工程は、手動式か自動式かである。裏当てを行う機械は、基本的に次の2種類である。
−裏当て機:平らな又は僅かに湾曲した面への裏当てを行う。
−繊維配置機:裏当て機では裏当て不可能な大きい曲率を有する面への裏当てを行う。
【0004】
成形品に手動式、自動式のいずれで裏当てするかを決定する基準は、主として2つある。すなわち使用する材料と湾曲片の寸法とである。
特にライニングに使用される1つの材料は、予備含浸材料である。この材料は、粘着性で、取り扱いが簡単ではない。予備含浸材料のライニングを平面上の直線に手で適合させるのは、それほど面倒ではないが、その種のライニングを曲面に適合させるのは極めて面倒である。なぜなら、その種の材料は、それ自体では変形しないので、作業員が、絶えずライニングに圧力を加えて変形させ、目標曲面に適合させねばならず、加えて、ライニングが粘着性で扱いにくいからである。更に、配置されるライニングの数が極めて多い場合には、その手間は明らかに増大する。
【0005】
本発明は、新型のエアバスA380の湾曲片に裏当する必要から生まれたものである。該湾曲片は、航空機上に実現された楕円であって、傾斜平面を有する円筒の断面から生じている。
製造可能性の試験で、手作業によるこの成形品の裏当ては、被裏当て面の幾何形状が曲面であり、配置される層が多数の場合には、極めて面倒なことが分かった。
裏当ては、裏当て機械を用いても行った。その場合、成形品の寸法が与えられ、大きいほうの面積が先ず裏当てされ、続いて切断作業が行われ、課題の曲面が形成される。この方法は、機械が最適使用されないので、費用効果がよくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記湾曲片の手作業による裏当て時の既述の難点と、裏当て機及び繊維配置機の費用効果の低さとを克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が提案する方法及び工具は、既述の諸課題に、特に航空産業分野で要求される大型湾曲片の場合に、満足の行く解決を与えることができる。
平面的な成形品を裏当てすることにより、単一ライニングを有する所定幅の湾曲片を形成しようとする場合に考えられる基本的な課題は、予備含浸材料のライニングを使用したい時に起こることだが、ライニング材料がそれ自体では変形不能のため、ライニングが曲線的な幾何形状に精密には順応しないことである。
この課題を解決するために、本発明は、圧力を加えることにより、形成されるべき湾曲片の曲率に順応する幅のライニングを連続的な数回のパスで取り付ける段階から成る方法を提案する。パスの回数は、曲率に順応させるのに要する最小の回数であり、各パスで取り付けられるライニングは接着される。
換言すると、裏当てされる区域は、曲面の幾何形状に順応するようにライニングを精密に当て付け可能な幅の別々の区域に分割される。この幅は、曲率と裏当てされる区域の全幅とに応じた適切な試験により決定されるが、そのさい、材料に圧力を加えて変形させ、曲線の幾何形状に適合させる必要を考慮にいれる。
【0008】
本発明は、また、前述の方法を実施するための工具を提案するものである。該工具は、次の基本部材を含んでいる。
−ライニング取り付け用のドラム。ドラムの配置位置の数は全区域を裏当てするのに要するパスの回数と同数である。
−各パスの開始時に成形品にライニング端部を取り付ける手段。
−ライニングを成形品の全幅に沿って一様に成形品に取り付けるさい、ライニングンを加圧するための円錐形ローラ。
−湾曲片を境界付ける曲線と平行に成形品に配置された側方案内を介して工具を移動させるための手段。
【0009】
本発明のこのほかの特徴及び利点は、説明用の実施例を以下で添付図面につき詳細に説明することによって理解されよう。
【実施例】
【0010】
本発明の方法及び工具は、航空機構造物に使用される湾曲片を形成するため、曲線5,7によって境界付けられた区域の成形品3のライニングに適用される。
図面には、縮尺のため、この区域が再現されていないので、本発明がよりよく理解されるように、一実施例では、寸法Lと寸法Hとの値が2240mmと170mmであることを、それらの幾何形状の特徴を説明するために指摘しておかねばならない。
図2に示すように、幅Wのライニングを使用する場合には、曲率に適合するために、望ましくない折り目13が生じよう。
【0011】
本発明によれば、図3に示すように、幅A2のライニング15が数回の連続的なパスで取り付けられる。
ライニング15の最大幅は、区域3の曲率に応じて決定され、これにより、ライニングは、絶えず圧力を加えられながら取り付けられ、曲率に従って変形される。全区域を裏当てするのに必要なパスの数は、この最大幅に応じて決定されよう。最終的には、この最大幅が、全区域3の幅A1に達するようにライニング15の幅A2を決定しよう。
ライニング15は、保護材を有することができるが、この保護材は、成形品にライニングを取り付けるさいに除去せねばならない。
【0012】
次の図4からは、本発明の提案による工具が、ライニング取り付け用のドラム23と、ライニング加圧用の円錐形ローラ25とから成ることが分かる。工具は、湾曲片を境界付ける曲線5,7(図4では、略図の性質上、直線で示されている)と平行に成形品に配置された側部案内27,28のホイール26を介して移動する。工具の移動は、引き手29の手動操作により行われる。
ライニング15は、ライニング供給ドラム23に巻き付けられており、ドラムには、常時、ライニングの応力を維持するために摩擦クラッチが備えられている。
供給ドラム23は、3回のパスの各回に各区域37,39,41にライニングを取り付けるために、ライニング15のロールの3つの取り付け位置31,33,35を有している。
【0013】
供給ドラム23は、加圧ローラ25に剛性結合され、成形品表面から小間隔をおいて浮動状態に維持されるので、ライニング15の加圧時に妨げになることはない。
加圧ローラ25は円錐形なので、内側曲線7上と外側曲線5上とを前進しながら、ライニングの全幅を一様に加圧する。加圧ローラ25は、ドラム23の位置31,33,35に対応する3つの支持区域を有し、各パス時に、配置されるライニングの接合部が先行パスで配置されたライニングの接合部と確実に符合させられる。
工具は、各パスでライニングの取り付けを容易にするために、ライニング端部を成形品に取り付ける部材(図示せず)を含んでいる。
ライニングが保護材と一緒に使用される場合は、工具は、保護材の除去を容易にするための部材を有するようにされよう。
以上説明した好適実施例に対して、特許請求の範囲で規定される枠内に含まれるどのような変更を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】裏当てされる区域の幾何形状の特徴を示す図。
【図2】本発明により解決すべき課題を示す図。
【図3】本発明による裏当て方法を示す図。
【図4】本発明の裏当て工具を示す図。
【符号の説明】
【0015】
3 成形品
5,7 成形品の曲線
13 望ましくない折り目
15 ライニング
23 ライニング供給(取り付け用)ドラム
25 円錐形の加圧ローラ
26 ホイール
27,28 側部案内
29 引き手
31,33,35 ライニングのロールの3つの配置位置
37,39,41 3回の各パス時の取り付け区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行な2曲線(5,7)により境界付けられた幅A1の湾曲片を形成するために、平らな成形品(3)にライニング形式で自体変形不能な複合材料を取り付ける方法において、
前記方法が、数回の連続的なパスにおいて、各ライニングが先行パスで取り付けられたライニングと側部を結合されるように、成形品(3)に幅A2のライニング(15)を取り付けること、湾曲片の曲率に適合するようにライニング(15)上に圧力を作用させることからなり、パスの回数が前記適合を達成するためにライニング(3)の幅A2にとって必要な最小の回数であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ライニング(15)が、成形品(3)へのライニング取り付け時に除去される保護材を含むことを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された方法を実施する工具において、
該工具が、
a)成形品(3)に裏当てするために必要なパスの回数と等しい数のドラム配置位置(31,33,35)を有するライニング(15)取り付け用ドラム(23)と、
b)各パスの開始時に成形品(3)にライニング(15)の端部を取り付ける手段と、
c)成形品(3)に取り付けられると、ライニング(15)上に、その全幅にわたって一様に加圧する円錐形のローラ(25)と、
d)前記湾曲片を境界付ける曲線(5,7)と平行に成形品(3)に配置された側部案内(27,28)を介して工具を移動するための手段(26,29)とを含むことを特徴とする工具。
【請求項4】
ライニング(15)取り付け用の前記ドラム(23)が、ライニング(15)の応力を維持するための摩擦クラッチを含むことを特徴とする請求項3に記載された工具。
【請求項5】
ライニング(15)の保護材を除去する手段を含むことを特徴とする請求項3に記載された工具。
【請求項6】
ライニング(15)取り付け用の前記ドラム(23)が、加圧ローラ(25)に剛性結合され、加圧ローラ(25)の動作を容易にするために、成形品(3)の表面から小さい間隔をおいて位置することを特徴とする請求項3に記載された工具。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−532790(P2008−532790A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548828(P2007−548828)
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/057213
【国際公開番号】WO2006/070015
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507220970)
【Fターム(参考)】