説明

災害情報伝達システム

【課題】災害情報送信装置1から災害情報を無線により送信する災害情報伝達システムにおいて、災害情報を効果的に伝達する。
【解決手段】災害情報送信装置1から災害情報を無線により送信する災害情報伝達システムにおいて、災害情報送信装置1では、検出手段が発生した災害に関する情報を災害情報として検出し、決定手段が検出手段により検出された災害情報に基づいて当該災害情報の伝達に使用する通信方式を決定し、無線送信手段が決定手段により決定された通信方式を使用して前記災害情報を当該通信方式に対応した受信装置12〜15に対して無線により送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害情報伝達システムに関し、特に、災害情報を効果的に伝達する災害情報伝達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、地震、火災、洪水のような大規模災害に対して、政府や自治体が中心となり、災害情報の共有や対策を目的として、無線通信を利用したインフラ整備を実施することや(例えば、非特許文献1参照。)、携帯電話のような移動無線端末装置を利用した災害情報の伝達などが行われている。
具体例として、非特許文献1に記載された災害情報サポートシステムは、地域IP(Internet Protocol)網を基幹として、各所に配備された無線通信アクセスポイント又は無線装置で情報共有及び災害復旧の支援を行うシステムであり、主に大規模災害を想定したシステムとなっている。
また、移動無線端末装置を利用したシステムとしては、携帯電話機が防災センタへ位置情報を送信することで、防災センタから携帯電話機に最も近い避難所の情報を通知するシステムが知られている。
【0003】
上記したいずれのシステムにおいても、災害情報を防災センタ等で一元管理するため、自動車事故、一般家庭の火災、犯罪などの局所的な小さな災害が起きた場合には、災害発生から近隣への災害情報の伝達が遅れることにより、2次災害の防止にはその効果が発揮されない可能性がある。更に、これらのシステムでは、特定の無線装置(例えば、戸別受信機)が配置されていない場合や携帯電話機を所持していない場合には災害情報を受け取ることができないため、その効果はゼロに等しくなる。
【0004】
また、災害時に無線通信を行う装置やシステムとしては、他にも、テレビ放送やラジオ放送による緊急割込み放送や、列車間の衝突防止のための防護無線などに関するものがある。また、人々の生活形態の面では、各家庭に地上ディジタル放送に対応したテレビ装置や家庭内の無線LAN(Local Area Network)などが配備されてきており、テレビ装置やパーソナルコンピュータ(PC)なども一種の受信機として活用することが可能である。
これらを考慮すると、災害情報の伝達方法としては、単一の通信方式に頼るのではなく、多様な生活形態に合わせて、種々な伝達方法及びシステムによる複数の手段を組み合わせて用いることが望ましいと考えられる。
【0005】
ここで、災害情報の伝達経路について説明する。
図6には、災害情報伝達システムにおける災害情報伝達経路の一例を示してある。なお、図6では、後述する本発明に係る実施例で参照する図1に示されるのと概略的に同様な部分については同一の符号を付して示したが、ここでは、本発明を不要に限定する意図は無い。
災害発生時、災害現場11では、ビル管理システム2から電話や専用線を通じてビル管理会社(又は、警備会社)3へ災害発生の通報a1が行われる。ビル管理会社(又は、警備会社)3は行政機関(災害対策本部など)4や公共機関(病院など)5への通報a2を行い、行政機関4や公共機関5が近隣の住宅(住民)12、13や避難所14や通行人15の受信装置に対して災害情報の通知d1、d2を行う。また、行政機関4と公共機関5は災害情報の共有b1を行う。
このような災害情報伝達経路では、ビル管理会社(又は、警備会社)3や行政機関4や公共機関5を経由して住宅(住民)12、13や避難所14や通行人15の受信装置に災害情報が伝達されるため、逃げ遅れによる2次災害や初動活動の遅れが発生する可能性がある。
【0006】
【非特許文献1】“災害情報サポートシステムに関する調査研究”、[online]、総務省四国総合通信局、[平成18年7月4日検索]、インターネット<URL:http://www.shikoku-bt.go.jp/chosa/ip-bosai/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、従来の災害情報伝達システムでは、災害情報を効果的に伝達する技術の更なる開発が強く望まれていた。
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、災害情報を効果的に伝達することができる災害情報伝達システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る災害情報伝達システムでは、次のような構成により、災害情報送信装置から災害情報を無線により送信する。
すなわち、前記災害情報送信装置では、検出手段が、発生した災害に関する情報を災害情報として検出する。決定手段が、前記検出手段により検出された災害情報に基づいて、当該災害情報の伝達に使用する通信方式を決定する。無線送信手段が、前記決定手段により決定された通信方式を使用して、前記災害情報を、当該通信方式に対応した受信装置に対して、無線により送信する。
【0009】
従って、発生した災害に関する災害情報に応じてその災害情報を伝達するのに適した通信方式が決定され、決定された通信方式によりその災害情報が無線送信されて、当該通信方式に対応した受信装置へ当該災害情報が伝達されるため、発生した災害に関する災害情報を所定の機関や住民などへ効果的に伝達することができる。
【0010】
ここで、災害情報送信装置としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、ソフトウエア無線機を用いることができる。
また、災害に関する情報としては、種々な災害に関する種々な情報が用いられてもよく、例えば、災害の種別やレベルに関する情報を用いることができる。なお、災害の種別やレベルの一方又は両方とセンサとが1対1で対応しているような場合には、災害の発生を検出したセンサにより災害の種別やレベルの一方又は両方を特定することが可能であり、このような構成が用いられてもよい。
また、災害情報を検出する手段としては、例えば、センサが用いられてもよく、或いは、外部のセンサなどから災害情報を入力する手段が用いられてもよい。
【0011】
また、災害情報と通信方式との対応としては、種々な対応が用いられてもよく、例えば、1つの災害情報に対して、1つの通信方式が用いられてもよく、或いは、複数の通信方式が用いられてもよい。
また、複数の通信方式が用いられる場合には、例えば、各通信方式に優先順位(優先度)を設けて、優先順位に従って複数の通信方式の1つずつを順に使用して災害情報の伝達を行うような構成を用いることが可能である。
また、各通信方式毎に、災害情報を連続的に送信する時間(連続通信時間)を設けることも可能である。
また、或る時点で発生した災害に関する災害情報を送信した後に、次に発生した災害に関する災害情報を送信するまでに経過すべき時間(再送信待ち時間)を設けて、この時間が経過しないと次に発生した災害に関する災害情報の送信を行わないような構成を用いることも可能である。
【0012】
また、検出手段により検出される災害情報と、無線送信手段により無線送信される災害情報とは、同一であってもよいが、必ずしも全く同一でなくともよく、例えば、検出された災害情報が加工されたものが無線送信されてもよい。
また、通信方式や、その通信方式に対応した受信装置としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、テレビ装置や、ラジオ装置や、携帯電話端末装置などを用いると、一般の人々への災害情報の伝達に大きな効果を発揮することができる。
また、通信方式に対応した受信装置としては、例えば、1つの通信方式に対して、複数の受信装置が設置或いは携帯などされているような態様が考えられるが、1つの通信方式に対して1つの受信装置しかないような態様が用いられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る災害情報伝達システムによると、発生した災害に関する災害情報に応じて決定した通信方式により当該災害情報を無線送信し、当該通信方式に対応した受信装置へ当該災害情報を伝達するようにしたため、災害情報を効果的に伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施例に係る災害情報伝達システムにおける災害情報伝達経路の一例を示してある。
災害発生時、災害現場11では、ビル管理システム2から電話や専用線を通じてビル管理会社(又は、警備会社)3へ災害発生の通報a1が行われる。ビル管理会社(又は、警備会社)3は行政機関(災害対策本部など)4や公共機関(病院など)5への通報a2を行う。また、行政機関4と公共機関5は災害情報の共有b1を行う。
また、本例では、災害が発生する可能性のある場所にはソフトウエア無線機1が予め設置されており、その場所が災害現場11となった場合には、ビル管理会社(又は、警備会社)3へ通報a1が行われるのと同時に、災害情報を検出したソフトウエア無線機1が、災害情報の種別とレベルに基づいて、通信方式の設定を行って、近隣の住宅(住民)12、13や避難所14や通行人15の受信装置に対して即座に災害情報の通知c1を行う。これにより、2次災害の防止を図り初動活動を迅速に行うことができる。
【0015】
図2には、本例のソフトウエア無線機1の構成例を示してある。
本例のソフトウエア無線機1は、入出力部21と、アプリケーション部22と、ディジタル信号処理部23と、コンバータ部24と、RF(Radio Frequency)部25と、アンテナ26と、通信方式判定部27と、制御部28と、バス29を備えている。ここで、アンテナ26はRF部25と接続されており、アンテナ26以外の処理部21〜25、27、28はバス29を介して接続されている。
【0016】
入出力部21は、ユーザ(人)或いは外部の装置との間の情報のインタフェース機能を有しており、本例では、災害情報を入出力(送受)する。具体例として、入出力部21は、災害を検出するためのセンサや、災害情報を選択するためのスイッチや、ビル管理システムなどの既存の管理システムや、通信方式判定部27に対する設定変更を行うための画面或いはキーボードなどとの接続機能を有する。
アプリケーション部22は、災害情報を人間が解読可能な文字情報や音声情報などへ変換し、災害情報伝達サービスを提供する。本例では、アプリケーション部22は、入出力部21から入力された災害情報を伝達先が備えるユーザインタフェース用に文字情報や音声情報や図形情報などのうちの単一の情報又は複数の情報の組み合わせへ変換する。
【0017】
ディジタル信号処理部23は、ソフトウエアの変更により、様々な変復調方式を実現することが可能であり、アプリケーション部22により文字情報や音声情報や図形情報などに変換された災害情報に対して、無線通信するために必要な変調処理を行うことで、アプリケーション部22からの災害情報を特定の通信方式の信号へ変換する。
コンバータ部24は、アナログ信号をディジタル信号へ変換するA/D(Analog to Digital)コンバータ及びディジタル信号をアナログ信号へ変換するD/A(Digital to Analog)コンバータを有しており、それぞれの変換を行う。本例では、コンバータ部24は、ディジタル信号処理部23により処理されたディジタル信号(災害情報)をアナログ信号へ変換する。
【0018】
RF部25は、通信方式毎に規定された周波数や出力態様で無線通信を行うために、コンバータ部24により変換されたアナログ信号(災害情報)の周波数変換や増幅などを行い、周波数や出力レベルなどを可変に変更する。このような周波数や出力態様は、制御部28により設定される。例えば、周波数や出力レベルやアンテナ角度を変更することで、災害情報の伝達範囲を限定することが可能である。
アンテナ26は、無線信号を通信(送受信)し、本例では、RF部25により処理された信号(災害情報)を無線送信する。
ここで、災害情報を無線通信する際に暗号化が必要である場合には、例えば、アプリケーション部22或いはディジタル信号処理部23或いはRF部25のいずれか又は複数の処理部で暗号化を行う。
【0019】
通信方式判定部27は、入出力部21により入力された災害情報に基づいて通信方式を判定する。
制御部28は、各処理部21〜27を制御し、本例では、ソフトウエアの変更を行い、通信方式判定部27により判定された通信方式に対応したソフトウエアへ変更する。
ここで、本例では、アプリケーション部22とディジタル信号処理部23とRF部25と通信方式判定部27のうちの一部又は全ての機能がソフトウエアを使用して構成される。また、制御部28による制御によりソフトウエアを変更することにより、様々な通信方式に対応することが可能であり、様々な災害情報やデバイス等に対応することが可能である。
【0020】
具体例として、ソフトウエア無線では、複数の通信方式のそれぞれに対応した複数のプログラム(ソフトウエア)がメモリ(本例では、アプリケーション部22のメモリ)に記憶されており、制御部28による制御により、その中の1つの通信方式に対応したプログラムをプログラムの書き替えが必要なアプリケーション部22やディジタル信号処理部23やRF部25のRAM(Random Access Memory)に書き込み、書き込まれたプログラムをDSP(Digital Signal Processor)などが処理する。また、ハードウエアについても、必要に応じて、変更する各通信方式について用意しておき、全ての通信方式に対応することを可能としておく。
【0021】
次に、通信方式判定部27及び制御部28により行われる通信方式の判定及び変更について詳しく説明する。
通信方式判定部27は、通信方式を判定するために用いる情報のテーブルとして、災害情報伝達テーブルと通信方式テーブルをメモリに記憶している。
【0022】
図3には、災害情報伝達テーブルの一例を示してある。
本例の災害情報伝達テーブルでは、災害種別と、災害レベルと、伝達対象と、伝達方法と、暗号方式が対応付けられている。
災害種別は、災害の種別を表し、本例では、入出力部21により入力される災害情報の内容に基づいて特定される。災害種別としては、例えば、火災、地震、病気、交通事故、強盗などがある。
災害レベルは、災害の場所や規模などを表し、本例では、入出力部21により入力される災害情報の内容に基づいて特定される。災害レベルとしては、例えば、火災に関するフロア火災や設備火災、地震に関する倒壊や器物損壊、病気に関する軽症や重症、交通事故に関する人身や物損などがある。また、レベルが用いられない災害種別があってもよく、本例では、強盗についてはレベルが設けられていない。
【0023】
伝達対象は、災害情報の伝達先を表す。伝達対象としては、例えば、隣接建物、周辺道路、公共機関、駅などがある。なお、伝達先としては、例えば、個人の電話番号或いは住所や、災害現場からの距離などを用いることも可能であり、入力方法や内容には特に制限は無い。
伝達方法は、伝達対象との間で行う無線通信の総称(名称)を表す。伝達方法としては、例えば、緊急割り込み放送、移動通信、同報無線、列車無線、業務無線などがある。
ここで、本例では、複数の伝達方法が規定されている場合には、規定された全ての伝達方法で災害情報の伝達を行う。
【0024】
暗号方式は、通信に暗号方式を使用するか否かを表し、使用する場合には使用する暗号方式の名称を表す。暗号方式としては、例えば、PGP(Pretty Good Privacy)などがあり、任意の方式が用いられてもよい。
【0025】
図4には、通信方式テーブルの一例を示してある。
本例の通信方式テーブルでは、伝達方法(受信対象)と、通信方式と、通信優先度と、連続通信時間が対応付けられている。
各伝達方法による受信対象は、受信を行う機器の総称(名称)を表す。伝達方法(受信対象)としては、例えば、緊急割り込み放送(テレビ)、緊急割り込み放送(ラジオ)、移動通信(携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant))、同報無線(市町村防災受信機)、列車無線(列車)、業務無線(タクシー)などがある。
【0026】
通信方式は、各伝達方法で使用する通信方式の総称(名称)を表す。通信方式としては、例えば、緊急割り込み放送(テレビ)で使用されるISDB(Integrated Services Digital Broadcasting)−T、緊急割り込み放送(ラジオ)で使用されるFM(Frequency Modulation)やAM(Amplitude Modulation)やISDB−TやSB(Side Band)、移動通信(携帯電話端末、PDA)で使用されるW−CDMA(Wideband−Code Division Multiple Access)やGSM(Global System for Mobile Communications)やBluetooth(登録商標)、同報無線(市町村防災受信機)で使用される同報通信や単向通信や単信や半複信や複信、列車無線(列車)で使用される列車無線や防護無線、業務無線(タクシー)で使用される狭帯域ディジタル通信方式(SCPC(Single Channel Per Carrier)/FDMA(Frequency Division Multiple Access))などがある。
【0027】
ここで、本例では、通信方式の情報をテーブル情報として持って、その通信方式により、無線通信に使用する周波数や変調方式や出力レベルなどが特定される構成としたが、他の構成例として、通信方式から無線通信に使用する周波数や変調方式や出力レベルなどを導くのではなく、無線通信に使用する周波数や変調方式や出力レベルなどの情報をテーブル情報として持って、その情報により直接的に、無線通信に使用する周波数や変調方式や出力レベルなどが特定される構成を用いることも可能である。
【0028】
通信優先度は、災害情報の伝達を行う優先順位を表す。本例の通信方式テーブルでは、通信優先度として、1〜6の数値が用いられており、小さい数値の方が優先順位が高く優先的に伝達が行われる。
連続通信時間は、災害情報伝達(送信)の継続時間を表す。本例では、連続通信時間として、秒数が設定される。連続通信時間は、任意な値に設定されてもよく、例えば、緊急車両の到着時間などから想定される時間とするとともに、大規模災害時などにおいて近接するソフトウエア無線機1が同時に送信することによる混信、干渉、輻輳などを抑えることができる時間とするのが好ましい。
【0029】
ここで、災害情報に基づく災害種別及び災害レベルの検出について説明する。
本例のソフトウエア無線機1は、種々な災害に関する情報(災害情報)を検出する種々なセンサと接続されており、これらのセンサにより検出された災害情報を入出力部21から入力して、入力した災害情報に基づいて災害種別や災害レベルを特定する。
各災害情報を検出するセンサとしては、例えば、人が操作することによりその操作に応じて災害に関する情報を検出するようなものが用いられてもよく、或いは、自動的に災害に関する情報を検出するものが用いられてもよい。人により操作される操作部としては、例えば、スイッチやボタンやキーなどを用いることができる。
【0030】
各災害に対応したセンサの具体例として、火災については手動又は自動的な火災検知器を用いることができ、地震については手動又は自動的な地震検知器を用いることができ、病気についてはペースメーカなどと連動した自動的なセンサ又は病人などにより操作される病院の操作部や各家庭の操作部を用いることができ、交通事故については壊れる物(建物や設置物など)に付加された自動的な衝撃センサ又は人により操作される操作部を用いることができ、強盗については画像を撮像して画像解析により侵入者を自動的に検出する監視カメラ又は人により操作される操作部を用いることができる。
【0031】
また、火災のレベルに関して、例えば、火災発生の場所又は物については、センサが設置された場所又は物により特定することができ、また、火災の程度については、火の強さ(例えば、温度など)により特定することができる。
地震のレベルに関して、例えば、地震発生の場所又は壊れた物については、センサが設置された場所又は物により特定することができ、また、地震の程度については、揺れの大きさにより特定することができる。
なお、火災や地震の規模については、例えば、複数のセンサを用意して、対象物(例えば、建物など)の端から端の幾つかの所に各センサを設けて、これら複数のセンサによる検出結果に基づいて災害の規模を特定することができる。
【0032】
病気に関して、例えば、病気の程度については、ペースメーカの場合にはペースメーカが止まった或いは動いてはいるがペースメーカに異常が発生したという検出結果により特定することができ、心拍数などを検出するセンサの場合にはその検出結果により特定することができ、また、病人自身の申告により特定することができる。
交通事故に関して、例えば、踏み切りや特定の道路などの事故発生の場所又は物については、センサが設置された場所又は物により特定することができ、また、衝撃の程度については、センサによる衝撃の大きさの検出結果により特定することや、周囲にいた人による判断により特定することができる。
【0033】
図5には、通信方式判定部27により行われる通信方式判定処理の手順の一例を示してある。
通信方式判定部27では、起動されて処理が開始されると(ステップS1)、現在の時刻を取得し(ステップS2)、現在の時刻とメモリに記憶された最終の送信完了時刻とを比較して、最終の送信完了時刻から現在の時刻までに所定の再送信待ち時間が経過しているか否かを判定し(ステップS3)、再送信待ち時間が経過していなければ再び現在の時刻を取得する処理へ移行し(ステップS2)、再送信待ち時間が経過した場合には以降の処理を行う(ステップS4〜ステップS10)。
ここで、本例では、センサの故障或いは誤用や悪用などによる誤動作により誤った災害情報(非災害情報)が伝達されてしまうことを制限するために、送信を完了した時刻と現在時刻との比較を行って、一定時間(再送信待ち時間)の間は災害情報の検出を回避している。
【0034】
送信完了時刻から一定時間(再送信待ち時間)が経過した場合には、入出力部21からの災害情報の検出処理を開始する(ステップS4)。災害情報が検出された場合には、それを契機として、検出された災害情報に基づく災害種別および災害レベルをキーとして、図3に示される災害情報伝達テーブル及び図4に示される通信方式テーブルを参照することにより、災害情報の伝達で使用する伝達方法に係る通信方式、通信優先度、連続通信時間、暗号方式を取得する(ステップS5)。
【0035】
次に、通信優先度に基づいて取得した1つ以上の通信方式(伝達方法)の中で最優先の通信方式を判定し(ステップS6)、その通信方式について制御部28に対して通信方式と連続通信時間(送信時間)を設定し(ステップS7)、アプリケーション部22に伝達対象となる災害情報を設定することにより(ステップS8)、設定された特定の通信方式による災害情報の伝達が行われる。この災害情報の伝達は連続通信時間だけ行われ、具体的には、連続通信時間(送信時間)の送信が完了したか否かが監視されて(ステップS9)、連続通信時間の送信が完了した場合には、その完了時刻に最終の送信完了時刻を更新する(ステップS10)。
【0036】
上記のような最優先の通信方式での伝達が完了すると、次に低い優先度の通信方式を判定し(ステップS6)、そのような通信方式つまり未だに伝達が未完了である通信方式がある場合には、上記と同様にして、そのような通信方式で災害情報の伝達を行い(ステップS7〜ステップS10)、これを繰り返す(ステップS6〜ステップS10)。一方、そのような通信方式が無くつまり規定された全ての通信方式での伝達が完了した場合には、再び、現在時刻の取得処理へ戻り(ステップS2)、他の災害情報の発生を待機する。
【0037】
ここで、制御部28は、通信方式判定部27からの通信方式の設定(変更の設定)を契機として、ソフトウエアの変更が必要な例えばアプリケーション部22やディジタル信号処理部23やRF部25のソフトウエアを指定された通信方式に対応したソフトウエアへ変更する処理を行う。なお、通信方式判定部27による通信方式の判定方法としては、種々な方法が用いられてもよく、例えば、制御部28によるソフトウエアの判定方法や、ソフトウエアを変更するためのソフトウエアの媒体や、ソフトウエアの変更方法に依存しない構成とすることができる。
本例では、災害情報の検出結果に基づいて容易に通信方式の判定が行われるため、災害発生時から即座に近隣の住宅(住民)12、13や避難所14や通行人15の受信装置へ災害情報の伝達を行うことができる。また、災害情報の伝達を複数の通信方式で行うことが可能であり、人々の多様な生活形態に対応することができる。
【0038】
以上のように、本例の災害情報伝達システムでは、災害情報に基づいて伝達に使用する通信方式を決定し、決定した通信方式に対応した無線機としてソフトウエア無線機1から災害情報を無線送信することにより、当該通信方式に対応した無線機(例えば、複数の受信機)に対して災害情報を伝達することができる。
また、本例の災害情報伝達システムでは、通信方式判定部27において、災害の内容(種別)と規模など(レベル)に応じて送信出力を制御することにより、情報伝達範囲を制限することが可能である。
また、本例の災害情報伝達システムでは、通信方式判定部27において、災害の種別とレベルに応じて使用する通信方式の組み合わせを変更することにより、情報伝達先の受信デバイスを制限することができる。なお、通信方式の組み合わせとしては、例えば、2つ以上の通信方式の組み合わせが用いられ、或いは、1つの通信方式のみ(ここでは、通信方式の組み合わせに含める)が用いられてもよい。
【0039】
また、本例の災害情報伝達システムでは、通信方式判定部27において、災害の種別とレベルに応じて使用する通信方式の通信優先度や連続通信時間を制御することにより、情報伝達先への伝達順番や情報伝達の継続時間を制御することができる。
また、本例の災害情報伝達システムでは、個人情報保護のために、通信方式判定部27において、災害の種別とレベルに応じて災害情報を暗号化して伝送して、情報伝達先の受信者を制限することが可能である。
また、本例の災害情報伝達システムでは、誤用や悪用などの防止のために、通信方式判定部27において、災害情報送信後の再送信待ち時間を制御して、誤動作による非災害情報の伝達を制限することが可能である。なお、再送信待ち時間は、例えば、一定の時間が設定されてもよく、或いは、災害の種別とレベルなどに応じて可変な値が設定されてもよい。
【0040】
また、本例の災害情報伝達システムでは、誤用や悪用などの防止のために、通信方式判定部27において、災害情報の送信後に信号処理用のソフトウエアを消去して、誤動作による非災害情報の伝達を制限することが可能である。ここで、ソフトウエアは、例えば、ソフトウエア無線機1のメモリから消去され、この場合、ソフトウエア無線機1では、作業者などにより再設定(例えば、インストール)されるまでは災害情報の無線送信が行われなくなり、悪用されなくなる。
【0041】
また、本例の災害情報伝達システムでは、例えば、既存のビル管理システム2とソフトウエア無線機1との接続インタフェース(入出力部21)を有しており、ビル管理システム2におけるセンサにより検出された災害情報をソフトウエア無線機1により受信して通信方式判定部27へ伝達することで、ビル全体に関する災害情報をソフトウエア無線機1からの無線通信により伝達することが可能である。一例として、入出力部21において、LonWorks(登録商標)のニューロンチップ(登録商標)及びトランシーバや、BACnet(登録商標)のプロトコルスタックを備えて、既存のビル管理システム2を利用することができる。なお、LonWorks(登録商標)やBACnet(登録商標)については、ビル管理システムに関する一般的に知られた技術である。
【0042】
従って、本例の災害情報伝達システムでは、例えば、災害情報の受信対象者に特定の防災情報専用の受信機を与えなくとも、災害現場11に設置されたソフトウエア無線機1から当該災害現場11の近隣の住宅(住民)12、13や避難所14や通行人15の受信装置に対して、迅速且つ確実に災害情報を伝達することができる。
また、本例の災害情報伝達システムでは、ソフトウエア無線機1を利用することにより、例えば、同種類の通信方式に対応した複数の無線機を用意する場合と比べて、小型で軽量なシステムを構築することが可能である。
また、本例の災害情報伝達システムでは、例えば、将来的に新しい通信方式や受信装置が開発された場合においても、ソフトウエアの変更により、新しい通信方式や受信装置に対して災害情報を伝達することを容易に行うことができる。
【0043】
このように、本例の災害情報伝達システムでは、ソフトウエアの変更により様々な通信方式に対応することができるソフトウエア無線機1を災害情報の伝達に用いて、各家庭に設置された受信機や、避難所などの所定の場所に設置された受信機や、人々が所有する受信機などの様々な受信機に応じた通信方式をソフトウエア無線機1が選択して災害情報を無線送信することにより、例えば、従来のように高価な防災無線受信機を必要とせず、人々の様々な生活形態において、より迅速且つ確実に災害情報を伝達することが可能となる。
【0044】
なお、本例の災害情報伝達システムでは、ソフトウエア無線機1において、入出力部21から入力された災害情報を通信方式判定部27が検出する機能により災害情報の検出手段が構成されており、災害情報の検出を契機として通信方式判定部27が災害情報の種別やレベルに基づいて通信方式を決定する機能により決定手段が構成されており、図2に示される各処理部21〜29により前記決定された通信方式を使用して災害情報を無線により送信する機能により無線送信手段が構成されている。
【0045】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例に係る災害情報伝達システムにおける災害情報伝達経路の一例を示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係るソフトウエア無線機の構成例を示す図である。
【図3】災害情報伝達テーブルの一例を示す図である。
【図4】通信方式テーブルの一例を示す図である。
【図5】通信方式判定処理の手順の一例を示す図である。
【図6】災害情報伝達システムにおける災害情報伝達経路の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1・・ソフトウエア無線機、 2・・ビル管理システム、 3・・ビル管理会社(又は、警備会社)、 4・・行政機関、 5・・公共機関、 11・・災害現場、 12、13・・近隣住宅、 14・・避難所、 15・・通行人、 a1〜a2・・災害発生の通報、 b1・・災害情報の共有、 c1、d1〜d2・・災害情報の通知、 21・・入出力部、 22・・アプリケーション部、 23・・ディジタル信号処理部、 24・・コンバータ部、 25・・RF部、 26・・アンテナ、 27・・通信方式判定部、 28・・制御部、 29・・バス、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害情報送信装置から災害情報を無線により送信する災害情報伝達システムにおいて、
前記災害情報送信装置は、発生した災害に関する情報を災害情報として検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された災害情報に基づいて当該災害情報の伝達に使用する通信方式を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された通信方式を使用して前記災害情報を当該通信方式に対応した受信装置に対して無線により送信する無線送信手段と、を備えた、
ことを特徴とする災害情報伝達システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−117038(P2008−117038A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297413(P2006−297413)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】