説明

炉内監視装置及び炉内監視方法並びにこれらを用いた炉の操業制御方法

【課題】 、灰溶融炉内やごみ焼却炉内の広範囲をダスト等の影響を受けることなく確実且つ良好に監視することができると共に、その監視結果に基づいて灰溶融炉への投入電力及び投入灰供給量やごみ焼却炉へのごみ供給量及びストーカへの燃焼空気量を最適化して安定した炉の操業制御を行えるようにする。
【解決手段】 灰を電気エネルギーにより溶融する灰溶融炉1の炉内又はごみをストーカ21上で燃焼するごみ焼却炉17の炉内を監視する炉内監視装置4であって、前記炉内監視装置4は、炉本体6,18の天井壁6a,18aに設けられ、透過性の窓材15aを備えた覗き窓15と、覗き窓15の窓材15aの外側に配置され、炉内の略全域を写せる広角レンズ2と、覗き窓15の窓材15aの外側に配置され、広角レンズ2からの像を撮影する長波長型の赤外線カメラ3とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にごみ焼却炉から排出された灰(焼却灰及び飛灰)を電気エネルギーにより溶融処理する灰溶融炉や都市ごみ等をストーカ上で焼却処理するごみ焼却炉等に用いられるものであり、炉内の広範囲を監視できる広角レンズと長波長型の赤外線カメラを併用した炉内監視装置及び炉内監視装置を用いた炉内監視方法並びにこれらを用いた炉の操業制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市ごみや産業廃棄物等を焼却処理するごみ焼却炉から排出された灰(焼却灰及び飛灰)の減容化及び無害化を図るため、灰の溶融固化処理法が注目され、現実に実用に供されている。何故なら、灰は、溶融固化することにより、その容積を1/2〜1/3に減らすことができると共に、重金属等の有害物質の溶出防止や溶融スラグの再利用、最終埋め立て処分場の延命等が可能になるからである。
【0003】
そして、前記灰の溶融処理には、電気エネルギーによって灰を溶融処理する電気溶融方式の灰溶融炉が広く利用されている。この電気溶融方式の灰溶融炉を利用するのは、ごみ焼却施設の発電設備から溶融用電力が得られ易い等の理由からである。
【0004】
従来、この種の灰溶融炉としては、炉の天井壁に設けた主電極と炉の底壁(炉底)に設けた炉底電極との間に直流電源により電圧を印加してプラズマアークを発生させ、当該プラズマアークにより炉内に投入された灰を溶融処理するようにしたプラズマアーク式の灰溶融炉が知られている。
【0005】
即ち、前記灰溶融炉30は、図6に示す如く、耐火物等により形成された天井壁、周壁及び底壁(炉底)から成る炉本体31と、天井壁に貫通状に配設した昇降自在な主電極32と、天井壁に貫通状に配設した昇降自在なスタート電極33と、底壁に配設した導電性耐火物製の炉底電極34等から成り、直流電源を利用して主電極32から炉底電極34へ向けてプラズマアークを発生させ、当該プラズマアークの発生熱により炉内に投入された灰を溶融処理するように構成されている。
尚、図6に於いては、35は溶融スラグ出滓口、36は排ガス排出口、37は覗き窓、38は赤外線カメラ、Sは溶融スラグ層、Mは溶融メタル層である。
【0006】
上述した構成の灰溶融炉30の運転中に於いては、炉内に投入される灰の供給量や炉内の灰の溶融状況に応じて灰溶融炉30への投入電力(投入電圧×投入電流)を調整する必要がある。又、灰溶融炉30への投入電力を効率よく溶湯に伝達するため、溶湯と主電極32の電極距離間を最適な位置で一定に保つ必要がある。更に、灰溶融炉30の主電極32は、灰溶融炉30の運転中に徐々に消耗するので、その消耗分に相当する分だけ、主電極32を下降させる必要がある。
そのため、灰溶融炉30の運転中に於いては、炉内を監視して炉内の溶湯範囲やプラズマアークのアーク長さ等を観察し、その観察結果に基づいて灰溶融炉30への投入電力や主電極32の高さ位置等を制御する必要がある。
【0007】
ところで、灰を溶融処理する灰溶融炉30に於いては、灰溶融時に発生する飛灰やヒューム(金属の蒸気が炉内で凝固、化学変化を起こし、固体の微粒子となって炉内に浮遊するもの)等の浮遊物により、可視光線カメラでは炉内を確実且つ充分に監視することができなかった。
【0008】
そこで、最近では、図6に示す如く、炉内の浮遊物を透過し易い波長が8μm〜12μmの長波長型の赤外線カメラ38を利用し、当該赤外線カメラ38により灰溶融炉30の炉側壁マンホール39や溶融スラグ出滓口35等に設置の覗き窓37から炉内を監視することが行われている(例えば、特許文献1〜特許文献8参照)。
【0009】
然し乍ら、従来の灰溶融炉30に於いては、覗き窓37の外側位置から赤外線カメラ38により炉内を監視するようにしているため、限られた視野での炉内監視となり、炉内全域を監視することができなかった。そのため、プラズマアークのアーク長は把握できるものの、灰溶融炉30内の未溶融範囲や温度分布等は把握することが困難であった。
その結果、最適な投入電力と投入灰供給量のバランスを判別するのが非常に困難となり、灰の最適な溶融処理を行えないと云う問題があった。
例えば、図7に示す如く、未溶融灰aが主電極32の近傍位置まで接近したり、未溶融灰aが溶融スラグ出滓口35まで到達したりするのを把握することが困難になり、前者の場合には、電圧が不安定になり、又、後者の場合には、溶融スラグが間欠的に出滓されると云う問題が発生することになる。
【0010】
尚、灰溶融炉30内の必要監視個所(例えば、灰供給口廻り、溶融スラグ出滓口廻り、主電極廻り及び側壁耐火物)を全て撮影できるように複数台の赤外線カメラ38を設置すれば、上述した問題を解決することができるが、この場合には、複数台の赤外線カメラ38を使用しているために大幅なコスト上昇を招くと云う別の問題が発生することになる。
【0011】
【特許文献1】特許第3659903号公報
【特許文献2】特開2002−081634号公報
【特許文献3】特開2003−028411号公報
【特許文献4】特開2002−081992号公報
【特許文献5】特開2003−343824号公報
【特許文献6】特開2004−156865号公報
【特許文献7】特許第3611299号公報
【特許文献8】特開平11−287426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、灰溶融炉内又はごみ焼却炉内の広範囲をダスト等の影響を受けることなく確実且つ良好に監視することができると共に、その監視結果に基づいて灰溶融炉への投入電力及び投入灰供給量やごみ焼却炉へのごみ供給量及びストーカへの燃焼空気量を最適化して安定した炉の操業制御を行えるようにした炉内監視装置及び炉内監視方法並びにこれらを用いた炉の操業制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、灰を電気エネルギーにより溶融する灰溶融炉の炉内又はごみをストーカ上で燃焼するごみ焼却炉の炉内を監視する炉内監視装置であって、前記炉内監視装置は、炉本体の天井壁に設けられ、透過性の窓材を備えた覗き窓と、覗き窓の窓材の外側に配置され、炉内の略全域を写せる広角レンズと、覗き窓の窓材の外側に配置され、広角レンズからの像を撮影する長波長型の赤外線カメラとから構成したことに特徴がある。
【0014】
本発明の請求項2の発明は、覗き窓の窓材を、波長が8μm〜12μmの長波長の赤外線を透過するゲルマニウム製の窓材としたことに特徴がある。
【0015】
本発明の請求項3の発明は、ゲルマニウム製の窓材の前面側に、炉内の必要監視個所を撮影できる穴を形成したセラミック板を配置したことに特徴がある。
【0016】
本発明の請求項4の発明は、ゲルマニウム製の窓材とセラミック板との間にパージガスが吹き込まれるパージガス空間を形成し、当該パージガス空間にパージガスを流す構成としたことに特徴がある。
【0017】
本発明の請求項5の発明は、請求項1〜請求項4の何れかに記載の炉内監視装置を用いて灰溶融炉内又はごみ焼却炉内の広範囲を連続的に監視し、灰溶融炉内の灰供給状態や未溶融範囲、温度分布、又はごみ焼却炉内のごみ乾燥状況や燃焼位置、温度分布を把握するようにしたことに特徴がある。
【0018】
本発明の請求項6の発明は、請求項1〜請求項4の何れかに記載の炉内監視装置を用いて灰溶融炉内又はごみ焼却炉内の広範囲を連続的に監視して灰溶融炉内の灰供給状態や未溶融範囲、温度分布又はごみ焼却炉内のごみ乾燥状況や燃焼位置、温度分布を把握し、その監視結果に基づいて制御装置により灰溶融炉への投入電力及び投入灰供給量又はごみ焼却炉へのごみ供給量及びストーカへの燃焼空気量を最適化するようにしたことに特徴がある。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1の炉内監視装置は、炉本体の天井壁に設けられ、透過性の窓材を備えた覗き窓と、覗き窓の窓材の外側に配置され、炉内の略全域を写せる広角レンズと、覗き窓の窓材の外側に配置され、広角レンズからの像を撮影する長波長型の赤外線カメラとから構成しているため、灰溶融炉内の溶湯範囲及び側壁耐火物の広範囲を監視することができ、又、ごみ焼却炉内のストーカ及び側壁耐火物の広範囲を監視することができる。その結果、本発明の請求項1の炉内監視装置を用いれば、灰溶融炉内の灰供給状態や未溶融範囲、温度分布を確実且つ良好に把握することができ、又、ごみ焼却炉内のごみ乾燥状況や燃焼位置、温度分布を確実且つ良好に把握することができる。
【0020】
本発明の請求項2〜請求項4の炉内監視装置は、上記効果に加えて更に次のような優れた効果を奏することができる。
即ち、本発明の請求項2の炉内監視装置は、覗き窓の窓材を、波長が8μm〜12μmの長波長の赤外線を透過するゲルマニウム製の窓材としているため、多数の運転員が従事するごみ処理場に於いて安全性の向上を図れると共に、広角レンズ及び赤外線カメラにより灰溶融炉やごみ焼却炉の炉内をより確実且つ良好に監視することができる。
又、本発明の請求項3の炉内監視装置は、ゲルマニウム製の窓材の前面側に、炉内の必要監視個所を撮影できる穴を形成したセラミック板を配置しているため、セラミック板が炉からの大部分の輻射を受けることになり、ゲルマニウム製の窓材の温度上昇を抑制することができる。その結果、本発明の請求項3の炉内監視装置は、ゲルマニウム製の窓材の温度上昇に伴う透過率の低下を防止することができ、広角レンズ及び赤外線カメラにより炉内の撮影を確実且つ良好に行えて炉内の正確な監視が可能となる。
更に、本発明の請求項4の炉内監視装置は、ゲルマニウム製の窓材とセラミック板との間にパージガスが吹き込まれるパージガス空間を形成し、当該パージガス空間に窒素ガス等のパージガスを流す構成としているため、パージガス空間に流したパージガスがゲルマニウム製の窓材を冷却してゲルマニウム製の窓材の温度上昇を更に抑制すると共に、パージガスがセラミック板に形成した穴をパージガス空間から炉内側へ高速で通過して高濃度のダストを含む高温ガスの侵入を防ぎ、ゲルマニウム製の窓材へのダストの付着を大幅に低減することなる。その結果、本発明の請求項4の炉内監視装置は、広角レンズ及び赤外線カメラにより炉内の撮影をより一層確実且つ良好に行えて炉内のより正確な監視が可能となる。
【0021】
本発明の請求項5の炉内監視方法は、請求項1〜請求項4の何れかに記載の炉内監視装置を用いて灰溶融炉内の広範囲又はごみ焼却炉内の広範囲を連続的に監視するようにしているため、灰溶融炉内の溶湯範囲及び側壁耐火物又はごみ焼却炉内のストーカ及び側壁耐火物を監視することができ、灰溶融炉内の灰供給状態や未溶融範囲、温度分布又はごみ焼却炉内のごみ乾燥状況や燃焼位置、温度分布を正確に確実且つ良好に把握することができる。
【0022】
本発明の請求項6の炉の操業制御方法は、請求項1〜請求項4の何れかに記載の炉内監視装置を用いて灰溶融炉内の広範囲又はごみ焼却炉内の広範囲を連続的に監視して灰溶融炉内の灰供給状態や未溶融範囲、温度分布又はごみ焼却炉内のごみ乾燥状況や燃焼位置、温度分布を把握し、その監視結果に基づいて制御装置により灰溶融炉への投入電力及び投入灰供給量又はごみ焼却炉へのごみ供給量及びストーカへの燃焼空気量を最適化するようにしているため、灰の最適な溶融処理やごみの最適な焼却処理を行うことができ、安定した灰溶融炉及びごみ焼却炉の操業制御が可能になると共に、灰溶融炉への過剰な投入電力やごみ焼却炉への過剰な燃焼空気量の供給を抑制することができて側壁耐火物の損傷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る炉内監視装置4を用いた灰溶融炉1を示し、当該灰溶融炉1は、都市ごみや産業廃棄物等を焼却処理するごみ焼却炉から排出された灰(焼却灰及び飛灰)を溶融処理するものであり、灰溶融炉1内の広範囲を広角レンズ2と長波長型の赤外線カメラ3等を併用した炉内監視装置4により連続的に監視して灰溶融炉1内の灰供給状態や未溶融範囲、温度分布を把握し、その監視結果に基づいて制御装置5により灰溶融炉1への投入電力(投入電圧×投入電流)及び投入灰供給量を最適化するようにしたものである。
【0024】
即ち、前記灰溶融炉1は、図1に示す如く、ケーシング及び耐火物等により形成された天井壁6a、周壁及び底壁(炉底)から成る炉本体6と、天井壁6aに貫通状に配設され、直流電源装置7の陰極に接続された昇降自在な主電極8と、天井壁6aに貫通状に配設され、直流電源装置7の一方の陽極に接続された昇降自在なスタート電極(図示省略)と、底壁全域に配設され、直流電源装置7の他方の陽極に集電板を介して接続された導電性耐火物製の炉底電極9と、炉本体6の周壁に設けられ、炉内に灰を供給する灰供給装置10(スクリューフィーダー)と、炉本体6の天井壁6a部分に設けられ、炉内の広範囲を監視する炉内監視装置4と、炉内監視装置4からのデータ信号を処理して灰溶融炉1内の灰供給状態や未溶融範囲、温度分布を把握すると共に、これに基づいて灰溶融炉1内への投入電力及び投入灰供給量を演算して直流電源装置7及び灰供給装置10を制御する制御装置5等から成り、直流電源を利用して主電極8から炉底電極9へ向けてプラズマアークを発生させ、当該プラズマアークの発生熱により炉内に投入された灰を溶融処理すると共に、炉内監視装置4により炉内の広範囲を監視して灰供給状態や未溶融範囲、温度分布を把握し、これに基づいて制御装置5により投入電力及び投入灰供給量を最適化するように構成されている。
尚、図1に於いて、11は炉本体6の周壁に形成され、炉内に灰を投入するための灰供給口、12は炉本体6の周壁に形成され、溶融スラグをオーバーフローさせる溶融スラグ出滓口、13は溶融スラグを流下させるスラグ出湯樋、14は炉内の排ガスを排出する排ガス排出口である。
【0025】
前記炉内監視装置4は、図1〜図3に示す如く、炉本体6の天井壁6aに設けられ、透過性の窓材15aを備えた覗き窓15と、覗き窓15の窓材15aの外側に配置され、炉内の略全域を写せる広角レンズ2と、覗き窓15の窓材15aの外側に配置され、広角レンズ2からの像を撮影する長波長型の赤外線カメラ3と、窓材15aの前面側に配置され、窓材15aとの間に窒素ガス等のパージガスGが吹き込まれるパージガス空間を形成すると共に、炉内の必要監視個所を撮影できる穴16aを形成したセラミック板16とから構成されており、パージガス空間内に窒素ガス等のパージガスGを流しながら、広角レンズ2により窓材15a及びセラミック板16の穴16aを通して炉内の必要監視個所を写し、広角レンズ2からの像を赤外線カメラ3により撮影することによって、灰溶融炉1内の溶融範囲及び側壁耐火物の広範囲を監視できるようにしたものである。
【0026】
具体的には、前記覗き窓15は、図2に示す如く、炉本体6の天井壁6aに形成した貫通穴15bと、天井壁6aの外面側に設けられ、貫通穴15bの周囲に位置して複数のパージガス通路15cを形成した取付け枠材15dと、取付け枠材15dに押え板15e及びボルト15fを介して取り付けられ、取付け枠材15dの開口を塞いで炉内ガスを遮断する透過性の窓材15aとを備えている。
又、窓材15aには、安全性があって波長が8μm〜12μmの長波長の赤外線を透過するゲルマニウム製の窓材15aが使用されている。このゲルマニウム製の窓材15aには、表面反射による光量ロスを少なくするため、反射防止膜がコーティングされている。
【0027】
前記広角レンズ2は、覗き窓15の窓材15aの外側位置に炉内の略全域を写せるように配置されており、この広角レンズ2には、少なくとも炉内の溶湯範囲全域と側壁耐火物を写せる従来公知の広角レンズ2が使用されている。
【0028】
前記長波長型の赤外線カメラ3は、覗き窓15の窓材15aの外側位置に配置されており、広角レンズ2に写し出された灰溶融炉1内の像を連続的に撮像するようになっている。
この長波長型の赤外線カメラ3には、灰溶融炉1内の飛灰やヒュームを透過し易い波長が8μm〜12μmの長波長型の赤外線カメラ3が使用されている。
【0029】
前記セラミック板16は、窓材15aの前面側に窓材15aと一定の間隔を空けて配置されており、取付け枠材15dの内周縁部に取り付けられている。これによって、窓材15aとセラミック板16との間には、取付け部材15dのパージガス通路15cに連通するパージガス空間が形成されることになる。このパージガス空間には、取付け部材15dのパージガス通路15cからパージガスGが吹き込まれるようになっている。
又、セラミック板16には、図2及び図3に示す如く、広角レンズ2及び赤外線カメラ3により炉内の必要監視個所を撮影できる穴16aが形成されている。この実施の形態に於いては、セラミック板16には、灰供給口11廻り、溶融スラグ出滓口12廻り、主電極8廻り、数個所の側壁部を夫々撮影できるように複数の穴16aが形成されている。従って、広角レンズ2及び赤外線カメラ3によりセラッミク板16の各穴16aを通して灰供給口11廻り、溶融スラグ出滓口12廻り、主電極8廻り、数個所の側壁部を夫々撮影することによって、灰供給状態の確認、出滓状態の確認、主電極8からのアークによる溶融スラグの温度上昇の確認、側壁耐火物温度の確認を夫々行えることになる。
【0030】
尚、窓材15aの前面にセラッミク板を配置して窓材15aとの間にパージガス空間を形成するのは、ゲルマニウム製の窓材15aの温度上昇とゲルマニウム製の窓材15aへのダスト付着を防止するためである。何故なら、ゲルマニウム製の窓材15aは、温度の上昇と共に透過率が低下し、赤外線カメラ3により灰溶融炉1内を撮影できなくなるからである。又、ゲルマニウム製の窓材15aの内側に炉内のダストが付着し、赤外線カメラ3により灰溶融炉1内を撮影できなくなるからである。
従って、ゲルマニウム製の窓材15aの前面側にセラミック板16を配置すると、炉内からの大部分の輻射熱をセラミック板16が受けることになり、ゲルマニウム製の窓材15aの温度上昇を抑制することができる。又、ゲルマニウム製の窓材15aとセラミック板16との間に形成したパージガス空間にパージガスGを供給すると、パージガスGがゲルマニウム製の窓材15aを冷却すると共に、当該パージガスGがセラミック板16に形成した穴16aを炉内側へ高速で通過して炉内側からの高濃度のダストを含む高温ガスの侵入を防ぎ、ゲルマニウム製の窓材15aの温度上昇とダストの付着を抑制することができる。
【0031】
前記制御装置5は、炉内監視装置4からのデータ信号を処理して灰溶融炉1内の灰供給状態や未溶融範囲、温度分布を把握するデータ処理部(図示省略)と、データ処理部からの信号により灰溶融炉1内への最適な投入電力及び投入灰供給量を演算する演算部(図示省略)と、演算部からの信号により灰溶融炉1内への投入電力及び投入灰供給量が最適になるように直流電源装置7及び灰供給装置10を制御する制御部(図示省略)とを備えている。
【0032】
以上のように構成された灰溶融炉1に於いては、灰(焼却灰及び飛灰)の溶融処理を開始するに当たっては、先ず、主電極8とスタート位置に下降させたスタート電極(図示省略)とに通電させて両電極間に電流を発生させ、これにより炉内の灰を溶融させる。これは、主電極8と炉底電極9の間に非導電性の溶融物が介在するため、運転開始時に於いては、主電極8と炉底電極9との間にプラズマアークを発生させ得ないからである。
【0033】
炉内の灰が溶融して導電性が上昇すると、スタート電極を待機位置に上昇させたうえ、主電極8と炉底電極9との間に直流電源装置7により所定の電圧を印加して両電極間にプラズマアークを発生させ、当該プラズマアークの発生熱により灰供給装置10から炉内へ投入された灰を溶融する。
尚、一般的に灰溶融炉1への投入電力は、炉本体6の灰処理量と炉本体6から放熱される放熱量とにより決定されている。
【0034】
主電極8と炉底電極9との間に発生するプラズマアークにより炉内の灰が順次溶融されて行くと、炉本体6内に溶湯が形成される。この溶湯は、灰中に鉄を始めとする金属類やシリカを始めとするスラグ成分が多く含まれているため、比重差によって上方に位置する溶融スラグ層Sと溶融スラグ層Sの下方に位置する溶融メタル層Mとに分離される。
【0035】
前記溶融スラグは、溶融スラグ出滓口12から順次オーバーフローし、スラグ出湯樋13を流下して冷却水Wを貯留した水冷槽(図示省略)内へ落下排出され、ここで水冷されて水砕スラグにされる。
又、炉内で発生した排ガスは、誘引通風機(図示省略)の誘引作用により天井壁6aに形成した排ガス排出口14を通って燃焼室(図示省略)内へ導入され、ここで燃焼された後、排ガス処理装置(図示省略)等を経て浄化されてから大気中へ放出されている。
【0036】
一方、溶融スラグの下方に位置する溶融メタルは、灰溶融炉1の運転時間の経過と共に順次底壁に残留・蓄積し、溶融メタル層Mの液面レベルを上昇させて溶融メタル層Mの厚さを増加させる。これに伴って、上方の溶融スラグ層Sの厚さは、炉本体6の溶湯容積が一定であることとも相俟って、順次薄くなって行く。
尚、溶融メタル層Mの液面が上昇すると、溶融スラグに溶融メタルが混合して排出され、スラグの品質が低下する等の問題が発生するため、周壁下部に設けたタップホール(図示省略)を間欠的に開孔し、ここから溶融メタルを抜き出して溶融メタル層Mの厚さが所定の厚さを超えないようにしている。
【0037】
そして、灰溶融炉1の運転中に於いては、炉内監視装置4により炉内の溶湯範囲及び側壁耐火物の広範囲を連続的に監視している。即ち、灰溶融炉1の運転中に於いては、パージガス空間内に窒素ガス等のパージガスGを流しながら、広角レンズ2によりゲルマニウム製の窓材15a及びセラミック板16の複数の穴16aを通して炉内の必要監視個所(灰供給口11廻り、溶融スラグ出滓口12廻り、主電極8廻り、数個所の側壁部)を写し、広角レンズ2からの像を赤外線カメラ3により連続的に撮影している。これにより、灰溶融炉1内の灰供給状態、未溶融範囲、温度分布を把握することができる。
【0038】
このとき、炉内を長波長型の赤外線カメラ3で撮影しているため、炉内の飛灰やヒュームの影響を受けることなく、炉内の状況を把握することができる。
又、ゲルマニウム製の窓材15aの前面側にセラミック板16を配置しているため、セラミック板16が炉からの大部分の輻射を受けてゲルマニウム製の窓材15aの温度上昇を抑制し、ゲルマニウム製の窓材15aの透過率が低下するのを防止することができると共に、窓材15aへのダストの付着を防止することができる。その結果、広角レンズ2及び赤外線カメラ3により炉内の撮影を確実且つ良好に行え、炉内の正確な監視が可能となる。
更に、ゲルマニウム製の窓材15aとセラミック板16との間に形成したパージガス空間に窒素ガス等のパージガスGを流すようにしているため、パージガス空間に流れ込んだパージガスGがゲルマニウム製の窓材15aを冷却してゲルマニウム製の窓材15aの温度上昇を更に抑制すると共に、パージガスGがセラミック板16に形成した穴16aをパージガス空間から炉内側へ高速で通過して高濃度のダストを含む高温ガスの侵入を防ぎ、ゲルマニウム製の窓材15aへのダストの付着を大幅に低減することができる。その結果、広角レンズ2及び赤外線カメラ3による炉内の撮影をより一層確実且つ良好に行え、炉内のより正確な監視が可能となる。
【0039】
炉内監視装置4からのデータ信号は、制御装置5へ入力されてここでデータ処理される。即ち、制御装置5は、炉内監視装置4からのデータ信号をデータ処理して灰溶融炉1内の灰供給状態、未溶融範囲、温度分布を把握し、これに基づいて灰溶融炉1内への最適な投入電力及び投入灰供給量を決定すると共に、灰溶融炉1内への投入電力及び投入灰供給量が最適な値になるように直流電源装置7や灰供給装置10を制御する。これにより、灰溶融炉1の安定した操業制御を実現することができる。又、過剰な電力投入を抑制することで、側壁耐火物の損傷を低減することができる。
尚、図4は灰溶融炉1が安定した状態で操業されている状態を示すものであり、未溶融灰aが主電極8の近傍位置まで接近したり、未溶融灰aが溶融スラグ出滓口12まで到達したりすると云うことがない。その結果、電圧が不安定になったり、溶融スラグが間欠的に出滓されるのを防止することができる。
【0040】
図5は本発明の実施の形態に係る炉内監視装置4を用いたストーカ式のごみ焼却炉17を示し、当該ごみ焼却炉17は、都市ごみや産業廃棄物等をストーカ21上で焼却処理するものであり、ごみ焼却炉17内の広範囲を広角レンズ2と長波長型の赤外線カメラ3等を併用した炉内監視装置4により連続的に監視してごみ焼却炉17内のストーカ21上のごみの乾燥状況や燃焼位置(ストーカ21上のごみ燃焼中心位置や燃え切り位置)、温度分布を把握し、その監視結果に基づいて制御装置5によりごみ焼却炉17へのごみ供給量及びストーカ21への燃焼空気量を最適化するようにしたものである。
【0041】
即ち、前記ストーカ式のごみ焼却炉17は、炉本体18、ごみ供給ホッパ19、ごみ供給装置20、ストーカ21、ストーカ下ホッパ22、一次燃焼室23、二次燃焼室24、灰出し口25、排ガス出口26、一次燃焼空気供給ダクト27、二次燃焼空気供給ダクト28、ダンパ29、炉内監視装置4及び制御装置5等から成り、ストーカ21上に供給したごみをストーカ21下から供給する燃焼空気により順次乾燥、燃焼させると共に、ストーカ21の広範囲を監視してごみの乾燥状況や燃焼位置、温度分布を把握し、これに基づいてストーカ21へのごみ供給量及び燃焼空気量を最適化するように構成されている。
又、ストーカ21は、乾燥ストーカ21a、燃焼ストーカ21b及び後燃焼ストーカ21cから成り、ストーカ21下から各ストーカ21a,21b,21cに燃焼空気(一次燃焼空気)が供給されるようになっている。
【0042】
前記炉内監視装置4は、炉本体18の天井壁18aに設けられ、透過性の窓材15a(ゲルマニウム製の窓材15a)を備えた覗き窓15と、覗き窓15の窓材15aの外側に配置され、炉内の略全域(ストーカ21全域及び側壁耐火物)を写せる広角レンズ2と、覗き窓15の窓材15aの外側に配置され、広角レンズ2からの像を撮影する長波長型の赤外線カメラ3と、窓材15aの前面側に配置され、窓材15aとの間にパージガスGが吹き込まれるパージガス空間を形成すると共に、炉内の必要監視個所(乾燥ストーカ21a上、ストーカ21上のごみ燃焼中心位置や燃え切り位置、数個所の側壁耐火物)を撮影できる複数の穴16aを形成したセラミック板16とから構成されており、パージガス空間内に窒素ガス等のパージガスGを流しながら、広角レンズ2により窓材15a及びセラミック板16の穴16aを通して炉内の必要監視個所を写し、広角レンズ2からの像を赤外線カメラ3により撮影することによって、ごみ焼却炉17内の広範囲を監視できるようにしたものである。
尚、炉内監視装置4には、図1に示す灰溶融炉1に用いたものと全く同じものを使用しているため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0043】
前記制御装置5は、炉内監視装置4からのデータ信号を処理してごみ焼却炉17内のストーカ21上のごみ乾燥状況や燃焼位置、温度分布を把握するデータ処理部(図示省略)と、データ処理部からの信号によりストーカ21への最適なごみ供給量及び燃焼空気量を演算する演算部(図示省略)と、演算部からの信号によりストーカ21へのごみ供給量及び燃焼空気量が最適になるようにごみ供給装置20及びダンパ29を制御する制御部(図示省略)とを備えている。
【0044】
而して、前記ストーカ式のごみ焼却炉17によれば、ごみ供給ホッパ19からごみ供給装置20により炉内に供給されたごみは、乾燥ストーカ21a上へ連続的に供給され、ここで乾燥ストーカ21a下から供給される燃焼空気(一次燃焼空気)と高温状態にある一次燃焼室からの輻射熱により加熱・乾燥されると共に、ごみの一部に燃焼が始まる。これにより、ごみ中の水分や揮発分が蒸発すると共に、COやHC等の未燃ガスが放出される。
【0045】
次に、乾燥されたごみは、引き続き乾燥ストーカ21aから燃焼ストーカ21b上へ送られ、ここで燃焼ストーカ21b下から供給される燃焼空気(一次燃焼空気)によって火炎を上げて燃焼をすると共に、燃焼ストーカ21bの下流側端部に於いて丁度燃え切り点に達する。
【0046】
そして、燃焼ストーカ21bの下流側端部に於いて燃え切ったごみは、引き続き後燃焼ストーカ21c上へ送られ、ここで後燃焼ストーカ21c下から供給される燃焼空気(一次燃焼空気)によりいわゆるおき燃焼をして未燃分が殆どない焼却灰となった後、灰出し口25から落下排出される。
【0047】
一方、ごみの焼却に伴い発生する未燃ガスや未燃物は、一次燃焼室23内を上昇して行き、二次燃焼室24内に於いてここに吹き込まれる燃焼空気(二次燃焼空気)により攪拌・混合され、燃焼ガス中に含まれる未燃ガス等が完全燃焼された後、排ガスとなって排ガス出口26から排出される。
【0048】
そして、ごみ焼却炉17の運転中に於いては、炉内監視装置4によりストーカ21及び側壁耐火物の広範囲を連続的に監視している。即ち、ごみ焼却炉17の運転中に於いては、パージガス空間内に窒素ガス等のパージガスGを流しながら、広角レンズ2により窓材15a及びセラミック板16の穴16aを通して炉内のストーカ21上の必要監視個所及び側壁耐火物を写し、広角レンズ2からの像を赤外線カメラ3により連続的に撮影している。これにより、ごみ焼却炉17内のごみ乾燥状況や燃焼位置、温度分布を把握することができる。
【0049】
炉内監視装置4からのデータ信号は、制御装置5へ入力されてここでデータ処理される。即ち、制御装置5は、炉内監視装置4からのデータ信号をデータ処理してごみ焼却炉17内のストーカ21上のごみ乾燥状況や燃焼位置(ストーカ21上のごみ燃焼中心位置や燃え切り位置)、温度分布を把握し、これに基づいてごみの乾燥状況や燃焼位置(ストーカ21上のごみ燃焼中心位置や燃え切り位置)が最適な位置になるようにごみ焼却炉17内への最適なごみ供給量及び燃焼空気量を決定すると共に、ごみ焼却炉17内へのごみ供給量及び燃焼空気量が最適な値になるようにごみ供給装置20及び一次燃焼空気供給ダクト27に介設したダンパ29を制御する。これにより、ごみ焼却炉17の安定した操業制御を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、灰溶融炉1やごみ焼却炉17に適用するようにしたが、ガラス溶融炉や製鉄用高炉等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の炉内監視装置を用いた灰溶融炉の概略縦断面図である。
【図2】炉内監視装置の概略縦断面図である。
【図3】炉内監視装置のセラミック板の平面図である。
【図4】灰溶融炉が安定した状態で操業されている状態を示し、(A)は炉内の平面図、(B)は炉内の縦断面図である。
【図5】本発明の炉内監視装置を用いたストーカ式のごみ焼却炉の概略縦断面図である。
【図6】従来の灰溶融炉の縦断面図である。
【図7】灰溶融炉が不安定な状態で操業されている状態を示し、(A)は炉内の平面図、(B)は炉内の縦断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1は灰溶融炉、2は広角レンズ、3は赤外線カメラ、4は炉内監視装置、5は制御装置、6は炉本体、6aは天井壁、15は覗き窓、15aは窓材、16はセラミック板、16aはセラミック板の穴、17はごみ焼却炉、18は炉本体、18aは天井壁、21はストーカ、Gはパージガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灰を電気エネルギーにより溶融する灰溶融炉の炉内又はごみをストーカ上で燃焼するごみ焼却炉の炉内を監視する炉内監視装置であって、前記炉内監視装置は、炉本体の天井壁に設けられ、透過性の窓材を備えた覗き窓と、覗き窓の窓材の外側に配置され、炉内の略全域を写せる広角レンズと、覗き窓の窓材の外側に配置され、広角レンズからの像を撮影する長波長型の赤外線カメラとから構成したことを特徴とする炉内監視装置。
【請求項2】
覗き窓の窓材を、波長が8μm〜12μmの長波長の赤外線を透過するゲルマニウム製の窓材としたことを特徴とする請求項1に記載の炉内監視装置。
【請求項3】
ゲルマニウム製の窓材の前面側に、炉内の必要監視個所を撮影できる穴を形成したセラミック板を配置したことを特徴とする請求項2に記載の炉内監視装置。
【請求項4】
ゲルマニウム製の窓材とセラミック板との間にパージガスが吹き込まれるパージガス空間を形成し、当該パージガス空間にパージガスを流す構成としたことを特徴とする請求項3に記載の炉内監視装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の炉内監視装置を用いて灰溶融炉内又はごみ焼却炉内の広範囲を連続的に監視し、灰溶融炉内の灰供給状態や未溶融範囲、温度分布、又はごみ焼却炉内のごみ乾燥状況や燃焼位置、温度分布を把握するようにしたことを特徴とする炉内監視方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の炉内監視装置を用いて灰溶融炉内又はごみ焼却炉内の広範囲を連続的に監視して灰溶融炉内の灰供給状態や未溶融範囲、温度分布又はごみ焼却炉内のごみ乾燥状況や燃焼位置、温度分布を把握し、その監視結果に基づいて制御装置により灰溶融炉への投入電力及び投入灰供給量又はごみ焼却炉へのごみ供給量及びストーカへの燃焼空気量を最適化するようにしたことを特徴とする炉の操業制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−2150(P2010−2150A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162777(P2008−162777)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】