説明

炊飯器

【課題】鍋を誘導加熱により加熱する炊飯器において、底外加熱コイルと底内加熱コイルに配置したフェライト(磁性体)の曲がり角での割れをなくし、加熱分布を安定させるとともに、フェライトがぶつかり合うことによる異常音が発生するのを防止する。
【解決手段】炊飯器本体1の内部に米と水を入れる鍋2を収納し、鍋2の底外周を底外加熱コイル4により加熱するとともに鍋2の底内周を底内加熱コイル5により加熱し、底インバータ回路により底外加熱コイル4と底内加熱コイル5とに高周波電流を供給するよう構成する。底外加熱コイル4は、底内加熱コイル5より高い位置に配置し、底外加熱コイル4と底内加熱コイル5とを直列または並列に接続する。底外加熱コイル4に放射状に配置した複数のフェライト6と底内加熱コイル5に放射状に配置した複数のフェライト7とをその端部が隙間11を介して互いに対向するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋を誘導加熱により加熱する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から炊飯器は、鍋を加熱するために加熱コイルに高周波電流を流して、高周波磁界を発生させ、この高周波磁界で鍋の表面に渦電流を発生させていた。しかし、この磁界のエネルギーの一部は外部に漏れる漏洩磁界となり、この漏洩磁界が人体には好ましくない影響を与えることを懸念する報告がされており、社会的にその関心が高まっている。
【0003】
この漏洩磁界を効果的に低減するものとして、鍋を収納する保護枠の外周側面から底面にかけて一体化したフェライト(磁性体)を取り付け、底外加熱コイルと底内加熱コイルに高周波電流を流したときに発生する磁力線のうち、鍋と反対側に発生する磁力線をフェライトの内部に誘導し、側面外周および底部外周への漏れを防止するとともに、鍋との誘導結合を高めるようにするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2−134111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では、フェライトと底外加熱コイルおよび底内加熱コイルを一体成形したりして、フェライトに力がかかると、フェライトの曲がり角で割れが発生しやすく、底外加熱コイルおよび底内加熱コイルとの磁気的結合度合いが変化し、加熱分布が変化したり、フェライトが割れた部分で互いにぶつかり、異常音を発生させるという問題を有していた。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、底外加熱コイルと底内加熱コイルに配置したフェライト(磁性体)の曲がり角での割れをなくし、加熱分布を安定させるとともに、異常音が発生するのを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、炊飯器本体の内部に米と水を入れる鍋を収納し、鍋の底外周を底外加熱コイルにより加熱するとともに鍋の底内周を底内加熱コイルにより加熱し、インバータ回路により底外加熱コイルと底内加熱コイルとに高周波電流を供給するよう構成し、底外加熱コイルは、底内加熱コイルより高い位置に配置し、底外加熱コイルと底内加熱コイルとを直列または並列に接続し、底外加熱コイルに放射状に配置した複数の第一の磁性体群と底内加熱コイルに放射状に配置した複数の第二の磁性体群とをその端部が隙間を介して互いに対向するように配置したものである。
【0007】
これにより、底外加熱コイルと底内加熱コイルに配置したフェライト(磁性体)の曲がり角での割れをなくすことができて、加熱分布を安定させることができるとともに、フェライトがぶつかり合うことによる異常音が発生するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の炊飯器は、底外加熱コイルと底内加熱コイルに配置したフェライト(磁性体)の曲がり角での割れをなくすことができて、加熱分布を安定させるとともに、フェライトがぶつかり合うことによる異常音が発生するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、炊飯器本体と、前記炊飯器本体の内部に収納され米と水を入れる鍋と、前記鍋の底外周を加熱する底外加熱コイルと、前記鍋の底内周を加熱する底内加熱コイルと、前記底外加熱コイルと前記底内加熱コイルとに高周波電流を供給するインバータ回路とを備え、前記底外加熱コイルは、前記底内加熱コイルより高い位置に配置し、前記底外加熱コイルと前記底内加熱コイルとを直列または並列に接続し、前記底外加熱コイルに放射状に配置した複数の第一の磁性体群と底内加熱コイルに放射状に配置した複数の第二の磁性体群とをその端部が隙間を介して互いに対向するように配置したものであり、略直線状の第一の磁性体群と略第二の磁性体群とを組み合わせて曲がり角の部分で分割し、空間を設けることで、フェライト(磁性体)の曲がり角での割れをなくすことができて、加熱分布を安定させるとともに、フェライトがぶつかり合うことによる異常音が発生するのを防止することができる。また、第一の磁性体群の端面と第二の磁性体群の端面とを対向させることで、漏れ磁束を抑えることができて、加熱効率の低下を抑えることができる。さらに、第一の磁性体群と第二の磁性体群とを放射状に配置することで、底外加熱コイルと底内加熱コイルの磁束分布を略均一にすることができるので、漏れ磁束の分布が均一になり、局所的に漏れ磁束が増加するのを防止できる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、底外加熱コイルに流れる電流と底内加熱コイルに流れる電流の向きを同一方向としたものであり、底外加熱コイルに流れる電流と底内加熱コイルに流れる電流の向きを同一方向にすると、逆方向のときに比べ、各加熱コイルの巻数を少なくしてもインダクタンスを確保することができるので、各加熱コイルの巻数を減らすことができ、各加熱コイルの抵抗値を減らすことができることとなり、各加熱コイルの発熱を抑え、炊飯器の加熱効率を上げることができる。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、第一の磁性体群と第二の磁性体群の間の隙間を略一定としたものであり、第一の磁性体群と第二の磁性体群の間の隙間を略一定にすることで、漏れ磁束の分布を均一にすることができるので、局所的に漏れ磁束が増加するのを防止できる。
【0012】
第4の発明は、上記第3の発明において、第一の磁性体群と第二の磁性体群の対向する端部の面積を略同一としたものであり、第一の磁性体群と第二の磁性体群との間の隙間からの漏れ磁束を低減することができ、底外加熱コイルと底内加熱コイル全体のインダクタンス値を大きくすることができて、鍋との磁気的な結合を上げることができるので、鍋に入力される高周波電力を増大することができ、効率の高い炊飯器を提供できる。
【0013】
第5の発明は、上記第3の発明において、第一の磁性体群と第二の磁性体群の断面積を略同一としたものであり、第一の磁性体群と第二の磁性体群の損失が略同一となり、各磁性体群の発熱を均一にすることができるので、加熱分布が均等な炊飯器を提供できる。また、第一の磁性体群と第二の磁性体群を同じ金型で成形することができ、生産コストを下げることができる。
【0014】
第6の発明は、上記第1〜5のいずれか1つの発明において、第一の磁性体群と第二の磁性体群の間の隙間を底外加熱コイルより底内加熱コイルに近づけたものであり、第一の磁性体群と第二の磁性体群の間の隙間から炊飯器の外周までの距離を大きくすることができるので、炊飯器の外周に漏れる漏れ磁束を抑えることができる。
【0015】
第7の発明は、上記第1〜6のいずれか1つの発明において、底外加熱コイルの巻数を底内加熱コイルの巻数より少なくしたものであり、炊飯器の外周に面する加熱コイルの投影面積を小さくすることができ、炊飯器の外周に漏れる漏れ磁束を抑えることができる。
【0016】
第8の発明は、上記第1〜7のいずれか1つの発明において、底外加熱コイルの低周波のインダクタンス値と底内加熱コイルの低周波のインダクタンス値を略同じとしたものであり、各加熱コイルから発生する低周波磁界が同じになるので、第一の磁性体群と第二の磁性体群に直流重畳される磁束の量がほぼ同一になり、第一の磁性体群と第二の磁性体群の磁束の変化による損失が略同じになり、同じ特性のフェライトを使うことができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態における炊飯器の断面図を示し、図2は、同炊飯器の一部ブロック化した要部回路図を示し、図3は、同炊飯器の底加熱コイルと磁性体群の配置関係を示し、図4は、同炊飯器のフェライト(磁性体)の拡大側面図を示すものである。
【0019】
図1に示すように、炊飯器本体1は、内部に米と水を入れる鍋2を着脱自在に収納可能な鍋収納部3を設け、その鍋収納部3の外側には鍋2の側面部に対向するように渦巻状に巻かれた底外加熱コイル4を配置し、鍋2の底面部に対向するように渦巻状に巻かれた底内加熱コイル5を配置しており、底外加熱コイル4と底内加熱コイル5から発生する磁界により鍋2の底部分を誘導加熱するようにしている。炊飯器本体1の上部(コイルの開口部方向)から見た場合、底外加熱コイル4の巻き中心部と底内加熱コイル5の巻き中心部は略同一に配置している。
【0020】
また、底外加熱コイル4を底内加熱コイル5より高い位置に配置し、底外加熱コイル4と底内加熱コイル5は、図2に示すように、直列に接続している。
【0021】
底外加熱コイル4の外側には第一の磁性体群を構成するフェライト6を配置し、底内加熱コイル5の外側には第二の磁性体群を構成するフェライト7を配置し、それぞれのコイルから漏れる漏れ磁界を抑えるとともに、フェライト6およびフェライト7の端部に磁束を集中させるようにしている。
【0022】
図3は、底外加熱コイル4と底内加熱コイル5とフェライト6、7の位置関係を炊飯器下部から示したものである。図3に示すように、フェライト6は4つを底外加熱コイル4に放射状に配置し、フェライト7は4つを底内加熱コイル5に放射状に配置し、これらフェライト6の端部とフェライト7の端部を互いに隙間11を介して対向するように配置している。
【0023】
ここで、フェライト6とフェライト7の間の隙間11を略一定とし、この隙間11と底外加熱コイル4との距離L1を隙間11と底内加熱コイル5との距離L2より長くして、フェライト6とフェライト7の間の隙間11を底外加熱コイル4より底内加熱コイル5に近づけるようにしている。
【0024】
また、図4に示すように、フェライト6とフェライト7の対向する端部の面積を略同一としている。すなわち、フェライト6とフェライト7の間の角度αは、底外加熱コイル4と底内加熱コイル5の間の角度に応じて設定しており、この角度αに応じてフェライト7の端面の傾斜角βが決まる。したがって、フェライト7の厚みをフェライト5の厚みより薄くすることで、フェライト6とフェライト7の対向する端部の面積を略同一としている。
【0025】
炊飯器本体1の上面開口部には、鍋2を着脱可能なように開閉自在な外蓋8を備えている。炊飯器本体1の下方部には、図2に示すように、底外加熱コイル4と底内加熱コイル5に高周波電流を供給する底インバータ回路(インバータ回路)24を搭載する加熱基板9を配置している。さらに、外蓋8の内部には、底インバータ回路24を制御する制御回路25や炊飯器を操作する操作キーを搭載している制御基板10を配置している。
【0026】
また、図2に示すように、炊飯器本体1を商用電源21に接続すると、加熱基板10上に搭載した全波整流器22とコンデンサ23を介して底インバータ回路24に直流電源が供給される。この底インバータ回路24に底外加熱コイル4と底内加熱コイル5の直列回路を接続し、底インバータ回路24は底外加熱コイル4と底内加熱コイル5に高周波電流IL1を供給する。
【0027】
ここで、底外加熱コイル4と底内加熱コイル5は、炊飯器本体1を上部から見たときに巻かれている方向を表示している。すなわち、底外加熱コイル4は、高周波電流IL1が右回りに流れるように巻かれている。また、底内加熱コイル5にも高周波電流IL1が右回りに流れるように巻かれている。すなわち、底外加熱コイル4に流れる電流と底内加熱コイル5に流れる電流の向きを同一方向としている。また、底外加熱コイル4の巻数は底内加熱コイル5の巻数より少なくし、底外加熱コイル4の低周波のインダクタンス値と底内加熱コイル5の低周波のインダクタンス値とを略同じとしている。
【0028】
制御基板10に搭載された制御回路24は、加熱基板9上の底インバータ回路24の通電状態や発振周波数を制御する。
【0029】
図5は、主要部の波形を示すものであり、図5(a)は商用電源21の電圧波形、図5(b)は底インバータ回路24動作時のコンデンサ23の両端電圧の波形、図5(c)は高周波電流IL1の包絡線波形である。本実施の形態では、コンデンサ23の容量は小さく高周波成分を平滑するだけである。したがって、底インバータ回路24に供給される電源は、商用電源21の約2倍の周波数を有することになり、底外加熱コイル4と底内加熱コイル5に流れる高周波電流IL1は、商用電源21の約2倍の周波数成分も持つことになり、底外加熱コイル4と底内加熱コイル5の商用電源21の約2倍の周波数の磁界が発生する。この磁界は低周波のため鍋2の加熱に寄与せず、漏洩磁界となる。
【0030】
図6は、鍋2を加熱コイルの上に置いたときのインダクタンス値、抵抗値の周波数特性である。曲線(a)はインダクタンス値を示し、曲線(b)は抵抗値を示している。図6に示すように、周波数が高くなるほど、インダクタンス値は減少し、抵抗値が増加する。つまり、高周波磁界は鍋2を加熱することができるが、低周波磁界は鍋2を加熱できず、漏洩磁界となることを示している。
【0031】
上記構成において動作、作用を説明する。鍋2を炊飯器本体1の所定の位置にセットして操作キーを操作すると、制御回路25は予め設定されている炊飯シーケンスに基づいて鍋2を加熱するように底インバータ回路24の動作を制御する。
【0032】
制御回路25は鍋2を加熱制御する際、底インバータ回路24に駆動信号を送り、底インバータ回路24が高周波電流IL1を底外加熱コイル4と底内加熱コイル5に供給する。これにより、外加熱コイル4と底内加熱コイル5から発生する磁界により鍋2の底部分を誘導加熱する。
【0033】
このとき、底外加熱コイル4に放射状に配置したフェライト6と底内加熱コイル5に放射状に配置したフェライト7とをその端部が隙間11を介して互いに対向するように配置することにより、底外加熱コイル4および底内加熱コイル5の磁束が漏れるのを防止することができるとともに、略直線状のフェライト6とフェライト7とを組み合わせて曲がり角の部分で分割し、空間を設けることで、フェライト6、7の曲がり角での割れをなくすことができて、加熱分布を安定させるとともに、フェライト6、7がぶつかり合って異常音が発生するのを防止することができる。また、フェライト6の端面とフェライト7の端面とを対向させることで、漏れ磁束を抑えることができて、加熱効率の低下を抑えることができる。
【0034】
さらに、フェライト6とフェライト7とを放射状に配置することで、底外加熱コイル4と底内加熱コイル5の磁束分布を略均一にすることができるので、漏れ磁束の分布が均一になり、局所的に漏れ磁束が増加するのを防止できる。また、フェライト6とフェライト7の間の隙間11を略一定にすることで、漏れ磁束の分布を均一にすることができるので、局所的に漏れ磁束が増加するのを防止できる。
【0035】
また、フェライト6とフェライト7の対向する端部の面積を略同一とすることで、フェライト6とフェライト7との間の隙間11からの漏れ磁束を低減することができ、底外加熱コイル4と底内加熱コイル5全体のインダクタンス値を大きくすることができて、鍋2との磁気的な結合を上げることができるので、鍋2に入力される高周波電力を増大することができ、効率を向上することができる。
【0036】
また、底外加熱コイル4に流れる電流と底内加熱コイル5に流れる電流の向きを同一方向としているので、底外加熱コイルに流れる電流と底内加熱コイルに流れる電流の向きが逆方向のときに比べ、各加熱コイルの巻数を少なくしてもインダクタンスを確保することができるので、各加熱コイルの巻数を減らすことができ、各加熱コイルの抵抗値を減らすことができることとなり、各加熱コイルの発熱を抑えることができる。
【0037】
また、フェライト6とフェライト7の間の隙間11を底外加熱コイル4より底内加熱コイル5に近づけることにより、隙間11から炊飯器本体1の外周までの距離を大きくすることができるので、炊飯器本体1の外周に漏れる漏れ磁束を抑えることができる。
【0038】
また、炊飯器の側面および上面に近い底外加熱コイル4の巻数を底内加熱コイル5の巻き数よりも少なくすることで、人間が磁界の暴露を受けやすい上面側と側面側の漏洩磁界を抑えることができ、人体に安全な炊飯器を提供できる。
【0039】
また、低周波、すなわち商用電源21の2倍の周波数における底外加熱コイル4のインダクタンス値と底内加熱コイル5のインダクタンス値を略同じにすることで、図5でも説明したように、商用電源21の2倍の周波数(日本においては100Hz、120Hz)といった低周波の領域では、磁界はその殆どが鍋2の加熱に寄与せず、漏洩磁界となるので、底外加熱コイル4のインダクタンス値と底内加熱コイル5のインダクタンス値を略同じにし、直列接続で加熱コイルに流れる電流も同じにしておけば、二つの加熱コイルから発生する低周波磁界はほぼ同じになり、互いの磁界を打ち消すことになり、低周波漏洩磁界は殆どゼロになる。したがって、人体に安全な炊飯器を提供できる。
【0040】
以上のように、本実施の形態においては、底外加熱コイル4に放射状に配置した複数のフェライト6と底内加熱コイル5に放射状に配置した複数のフェライト7とをその端部が隙間11を介して互いに対向するように配置したので、フェライト6、7の曲がり角での割れをなくすことができて、加熱分布を安定させることができるとともに、フェライト同士がぶつかって異常音が発生するのを防止することができる。また、フェライト6の端面とフェライト7の端面とを対向させることで、漏れ磁束を抑えることができて、加熱効率の低下を抑えることができる。さらに、フェライト6とフェライト7とを放射状に配置することで、底外加熱コイル4と底内加熱コイル5の磁束分布を略均一にすることができるので、漏れ磁束の分布が均一になり、局所的に漏れ磁束が増加するのを防止できる。
【0041】
また、底外加熱コイル4に流れる電流と底内加熱コイル5に流れる電流の向きを同一方向としたので、逆方向のときに比べ、各加熱コイルの巻数を少なくしてもインダクタンスを確保することができるので、各加熱コイルの巻数を減らすことができ、各加熱コイルの発熱を抑え、加熱効率を上げることができる。
【0042】
また、フェライト6とフェライト7の間の隙間11を略一定としたので、漏れ磁束の分布を均一にすることができるので、局所的に漏れ磁束が増加するのを防止できる。
【0043】
また、フェライト6とフェライト7の対向する端部の面積を略同一としたので、フェライト6とフェライト7との間の隙間11からの漏れ磁束を低減することができ、鍋2との磁気的な結合を上げることができるので、鍋2に入力される高周波電力を増大することができ、効率を向上することができる。
【0044】
また、フェライト6とフェライト7の間の隙間11を底外加熱コイル4より底内加熱コイル5に近づけたので、隙間11から炊飯器本体1の外周までの距離を大きくすることができるので、炊飯器本体1の外周に漏れる漏れ磁束を抑えることができる。
【0045】
また、底外加熱コイル4の巻数を底内加熱コイル5の巻数より少なくしたので、炊飯器の外周に面する加熱コイルの投影面積を小さくすることができ、炊飯器の外周に漏れる漏れ磁束を抑えることができる。
【0046】
また、底外加熱コイル4の低周波のインダクタンス値と底内加熱コイル5の低周波のインダクタンス値を略同じとしたので、各加熱コイルから発生する低周波磁界が同じになるので、フェライト6とフェライト7に直流重畳される磁束の量がほぼ同一になり、フェライト6とフェライト7の磁束の変化による損失が略同じになり、同じ特性のフェライトを使うことができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、底外加熱コイル4と底内加熱コイル5とを直列に接続しているが。並列に接続してもよく、同様の作用、効果を得ることができる。
【0048】
また、本実施の形態では、フェライト6とフェライト7の対向する端部の面積を略同一としているが、図7に示すように、フェライト6とフェライト7の厚みを略同一にしてそれぞれの断面積を略同一にしてもよく、この場合は、フェライト6とフェライト7の損失が略同一となり、フェライト6、7の発熱を均一にすることができるので、加熱分布が均等な炊飯器を提供できる。また、フェライト6とフェライト7を同じ金型で成形することができ、生産コストを下げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、底外加熱コイルと底内加熱コイルに配置したフェライト(磁性体)の曲がり角での割れをなくすことができて、加熱分布を安定させるとともに、フェライトがぶつかり合うことによる異常音が発生するのを防止することができるので、鍋を誘導加熱により加熱する炊飯器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態における炊飯器の断面図
【図2】同炊飯器の一部ブロック化した要部回路図
【図3】同炊飯器の底加熱コイルと磁性体群の配置関係図
【図4】同炊飯器のフェライト(磁性体)の拡大側面図
【図5】同炊飯器の主要部の動作波形図
【図6】同炊飯器の加熱コイル上に鍋を置いたときのインダクタンス値と抵抗値の周波数特性図
【図7】同炊飯器のフェライト(磁性体)の他の例の拡大側面図
【符号の説明】
【0051】
1 炊飯器本体
2 鍋
4 底外加熱コイル
5 底内加熱コイル
6 フェライト(第一の磁性体群)
7 フェライト(第二の磁性体群)
11 隙間
24 底インバータ回路(インバータ回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体と、前記炊飯器本体の内部に収納され米と水を入れる鍋と、前記鍋の底外周を加熱する底外加熱コイルと、前記鍋の底内周を加熱する底内加熱コイルと、前記底外加熱コイルと前記底内加熱コイルとに高周波電流を供給するインバータ回路とを備え、前記底外加熱コイルは、前記底内加熱コイルより高い位置に配置し、前記底外加熱コイルと前記底内加熱コイルとを直列または並列に接続し、前記底外加熱コイルに放射状に配置した複数の第一の磁性体群と底内加熱コイルに放射状に配置した複数の第二の磁性体群とをその端部が隙間を介して互いに対向するように配置した炊飯器。
【請求項2】
底外加熱コイルに流れる電流と底内加熱コイルに流れる電流の向きを同一方向とした請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
第一の磁性体群と第二の磁性体群の間の隙間を略一定とした請求項1または2記載の炊飯器。
【請求項4】
第一の磁性体群と第二の磁性体群の対向する端部の面積を略同一とした請求項3記載の炊飯器。
【請求項5】
第一の磁性体群と第二の磁性体群の断面積を略同一とした請求項3記載の炊飯器。
【請求項6】
第一の磁性体群と第二の磁性体群の間の隙間を底外加熱コイルより底内加熱コイルに近づけた請求項1〜5のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項7】
底外加熱コイルの巻数を底内加熱コイルの巻数より少なくした請求項1〜6のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項8】
底外加熱コイルの低周波のインダクタンス値と底内加熱コイルの低周波のインダクタンス値を略同じとした請求項1〜7のいずれかに記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−253434(P2008−253434A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97113(P2007−97113)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】