説明

点火制御装置

【課題】1個の点火プラグのみを使用して点火を行う場合に、内燃エンジンの出力の低下および排気温度の上昇を抑制する点火制御装置を提供する。
【解決手段】本発明による点火制御装置(101)は、各気筒に2個の点火プラグを備えるエンジンにおいて、各気筒における2個の点火プラグのうち第1の点火プラグの点火時期を制御する第1の点火時期制御手段(1015a)を備える第1のコントローラ(101a)と、各気筒における2個の点火プラグのうち第2の点火プラグの点火時期を制御する第2の点火時期制御手段(1015b)を備える第2のコントローラ(101b)と、を備える。前記第1および第2の点火時期制御手段は、少なくとも一つの気筒で1個の点火プラグしか使用しない場合に、所定のパラメータにしたがって点火時期を補正することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各気筒に2個の点火プラグを備える内燃エンジンの点火制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の内燃エンジンは、信頼性を向上させるため、各気筒に2個の点火プラグを設け、該2個の点火プラグを点火制御装置によって制御するように構成されている。
【0003】
ある気筒において、一方の点火プラグが故障した場合には、故障していない他方の点火プラグを使用して点火制御が行われる。点火プラグの故障を検出する装置は、たとえば、特許文献1に記載されている。ここで、1個の点火プラグのみを使用して点火を行う場合には、2個の点火プラグを使用する場合と比較して、未燃焼のまま排気される燃料が増加し、内燃エンジンの出力が低下するとともに排気温度が上昇する。
【特許文献1】特開平8−288157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、1個の点火プラグのみを使用して点火を行う場合に、内燃エンジンの出力の低下および排気温度の上昇を抑制する点火制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による点火制御装置は、各気筒に2個の点火プラグを備えるエンジンにおいて、 各気筒における2個の点火プラグのうち第1の点火プラグの点火時期を制御する第1の点火時期制御手段を備える第1のコントローラと、各気筒における2個の点火プラグのうち第2の点火プラグの点火時期を制御する第2の点火時期制御手段を備える第2のコントローラと、を備える。前記第1および第2の点火時期制御手段は、少なくとも一つの気筒で1個の点火プラグしか使用しない場合に、所定のパラメータにしたがって点火時期を補正することを特徴とする。
【0006】
本発明による制御装置によれば、少なくとも一つの気筒で1個の点火プラグしか使用しない場合に、所定のパラメータにしたがって点火時期を補正する第1および第2の点火時期制御手段を備えるので、1個の点火プラグのみを使用して点火を行う場合に、点火時期を最適な値に補正することによって、内燃エンジンの出力の低下および排気温度の上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明の一実施形態による点火制御装置101の構成を示す図である。点火制御装置101は、第1のコントローラ101aおよび第2のコントローラ101bを備え、第1の気筒2111、第2の気筒2112、第3の気筒2113および第4の気筒2114における点火時期を制御する。
【0008】
第1の気筒2111は、第1の点火プラグ2131aおよび第2の点火プラグ2131bを備える。第1の点火プラグ2131aは、第1のイグナイター2171aによって第1のイグニッションコイル2151aに高電圧を発生させることによって点火される。第2の点火プラグ2131bは、第2のイグナイター2171bによって第2のイグニッションコイル2151bに高電圧を発生させることによって点火される。第1のコントローラ101aは、第1のイグナイター2171aに点火信号を送ることによって、第1の点火プラグ2131aの点火時期を制御する。第2のコントローラ101bは、第2のイグナイター2171bに点火信号を送ることによって、第2の点火プラグ2131bの点火時期を制御する。第1のイグニッションコイル2151aおよび第2のイグニッションコイル2151bは、失火検出回路をさらに備えており、失火を検出した場合には、それぞれ、第1のコントローラ101aおよび第2のコントローラ101bへ失火検出信号を送る。
【0009】
第2の気筒2112、第3の気筒2113および第4の気筒2114においても、同様に、第1のコントローラ101aが第1の点火プラグの点火時期を制御し、第2のコントローラ101bが第2の点火プラグの点火時期を制御する。また、第1のコントローラ101aが第1の点火プラグの失火を検出し、第2のコントローラ101bが第2の点火プラグの失火を検出する。
【0010】
第1のコントローラ101aおよび第2のコントローラ101bは、内燃エンジンおよびその周囲に設置したセンサまたは信号発生器の信号を取り込む。
【0011】
図2は、点火制御装置101に使用される、内燃エンジンおよびその周囲に設置したセンサまたは信号発生器を示す図である。以下において、符号aは、第1のコントローラ101aに使用されるセンサまたは信号発生器を示し、符号bは、第2のコントローラ101bに使用されるセンサまたは信号発生器を示す。このように、第1のコントローラ101aおよび第2のコントローラ101bの使用するセンサまたは信号発生器は別個のものとし、信頼性を向上させている。
【0012】
吸気管201のスロットル弁部203の上流には、大気圧センサPAa、PAbが設置されている。吸気管201のスロットル弁部203の下流には、吸気圧センサPBa、PBbおよび吸気温センサTAa、TAbが設置されている。スロットル弁部203のスロットル弁2031には、弁開度センサTHLa、THLbが設置されている。燃料噴射弁205は、吸気管201の、スロットル弁部203と内燃エンジン207との間において、気筒ごとに設けられる。
【0013】
内燃エンジン207には、クランク角センサCRKa、CRKb、タイミングパルス発生器TDC1、TDC2、エンジン水温センサTWa、TWbおよびノックセンサKRa、KRb、KLa、KLbが設置されている。クランク角センサCRKa、CRKbは、所定のクランク角周期(たとえば、30°周期)でパルス信号を出力する。タイミングパルス発生器TDC1、TDC2は、クランク軸の180°回転ごとに、各気筒の基準クランク角度位置を示すタイミングパルスを出力する。ノックセンサKRa、KRb、KLa、KLbは、内燃エンジン207のノッキングを検出する。符号Rは内燃エンジン207の右(R)バンクに設置されていることを示し、符号Lは内燃エンジン207の左(L)バンクに設置されていることを示す。
【0014】
第1のコントローラ101aは、符号aが付されたセンサまたは信号発生器から信号を取り込み、第2のコントローラ101bは、符号bが付されたセンサまたは信号発生器から信号を取り込む。タイミングパルス発生器TDC1、TDC2からの信号は、コントローラ演算において最も重要な基準信号であるので、1個のセンサが故障した場合でも通常の制御が可能であるように並列接続としている(図1)。
【0015】
図1に示すように、第1のコントローラ101aおよび第2のコントローラ101bは、それぞれ、他方のコントローラの状態を監視する第1の監視部1011aおよび第2の監視部1011bを備えている。第1の監視部1011aおよび第2の監視部1011bは、取り込んだセンサ信号およびプロセッサの状態を他方のコントローラへ連絡する。後で説明するように、一方のコントローラが正常に機能しないと判断された場合には、他方のコントローラによって点火制御が行われる。
【0016】
第1のコントローラ101aおよび第2のコントローラ101bは、それぞれ、各気筒の点火プラグの失火を検出する第1の失火検出部1013aおよび第2の失火検出部1013bを備えている。後で説明するように、いずれかの気筒において点火プラグの失火が検出された場合には、点火制御モードが変更される。点火制御モードについては後で説明する。
【0017】
第1のコントローラ101aおよび第2のコントローラ101bは、それぞれ、各気筒の第1の点火プラグの点火時期を制御する第1の点火時期制御手段1015aおよび各気筒の第2の点火プラグの点火時期を制御する第2の点火時期制御手段1015bを備える。
【0018】
第1の点火時期制御手段1015aは、符号aが付されたセンサまたは信号発生器から信号を使用する。第1の点火時期制御手段1015aは、第1の監視部1011aおよび第1の失火検出部1013aから信号を受け取る。第2の点火時期制御手段1015bは、符号bが付されたセンサまたは信号発生器から信号を使用する。第2の点火時期制御手段1015bは、第2の監視部1011bおよび第2の失火検出部1013bから信号を受け取る。
【0019】
最初に、第1のコントローラ101aおよび第2のコントローラ101bならびに全ての点火プラグが正常に機能している場合の点火制御モードについて説明する。上記の場合の制御モードを2レーン2点火プラグ制御モードと呼称する。レーンは、点火制御装置の制御系統を示す。2レーン2点火プラグ制御モード用に、種々のエンジン回転数および吸気圧の値に対して、エンジン出力を最大とするように点火時期(点火進角)を定めた2点火プラグ用点火時期マップ(基本点火時期マップ)を予め準備しておく。第1の点火時期制御手段1015aおよび第2の点火時期制御手段1015bは、取り込んだクランク角パルス信号およびタイミングパルス信号に基づいてエンジン回転数を算出し、取り込んだ吸気圧の計測値を使用して、該2点火プラグ用点火時期マップに基づいて点火時期を定める。第1のコントローラ101aおよび第2のコントローラ101bは、クランク角パルス信号およびコントローラの内部信号に基づいて点火時期において点火信号を作成し、第1のイグナイター2171aおよび第2のイグナイター2171bに点火信号を送ることによって点火時期を設定する。該2点火プラグ用点火時期マップに基づいて点火時期を設定した後に、ノックセンサによってノッキングが検出された場合には、ノックセンサによってノッキングが検出されない限界の進角まで点火時期を遅らせる。
【0020】
図3は、2点火プラグ用点火時期マップの一例を示す図である。
【0021】
つぎに、いずれかの気筒において、1個の点火プラグが失火し使用できない場合の点火制御モードについて説明する。上記の場合の制御モードを2レーン1点火プラグ制御モードと呼称する。第1の点火時期制御手段1015aおよび第2の点火時期制御手段1015bは、それぞれ、第1の失火検出部1013aおよび第2の失火検出部1013bによって各気筒の点火プラグの失火を検出する。いずれかの気筒で点火プラグの失火が検出された場合には、該気筒において、1点火プラグ制御が行われる。1点火プラグ制御用に、種々のエンジン回転数および吸気圧の値に対して、点火時期(点火進角)の補正量を定めた1点火プラグ用点火時期補正マップを予め準備しておく。他の気筒では2点火プラグ制御が行われる。
【0022】
1点火プラグ用点火時期補正マップの補正量は、以下の考え方に基づいて作成されている。2点点火を基本として設計されたエンジン(たとえば、燃焼室中央から対称にオフセットした位置に2個のプラグを配置)において、1プラグ失火により1点点火となった場合、燃焼室中央からオフセットした位置に配置された1個のプラグで点火すると、火炎伝播距離(燃料が燃え広がる距離)が長くなる。したがって、2点火プラグ用点火時期マップに基づいて点火時期を設定すると、噴射された燃料が燃焼し終わる前に未燃焼のまま排気されてしまうのでエンジン出力が低下する。そこで、1点火プラグ制御の場合に、ノッキングが発生しない範囲で、2点火プラグ用点火時期マップに基づく点火時期を進めれば、未燃焼のまま排気されていた燃料を燃焼させてから排気できるのでエンジン出力の低下が抑制される。
【0023】
図4は、1点火プラグ用点火時期補正マップの一例を示す図である。たとえば、点火時期補正マップは、吸気絶対圧が90kPa以上の場合のみのデータを含んでいる。スロットルが全開でないときに、点火異常が起きてエンジン出力が低下した場合には、スロットルを全開方向に操作してエンジン出力を上昇させることができるが、スロットル全開付近での出力低下は避けられなかった。したがって、スロットル全開付近(吸気絶対圧が90kPa以上)の場合に点火時期を補正して出力をリカバリする必要がある。弁開度センサTHLa、THLbの値が所定値以上である場合に、点火時期を補正するようにしてもよい。なお、点火時期補正マップの代わりに、エンジン回転数および吸気圧の値をパラメータとする式に基づいて、点火時期の補正量を定めてもよい。
【0024】
つぎに、第1のコントローラ101aおよび第2のコントローラ101bのいずれかが正常に機能しない場合の点火制御モードについて説明する。上記の場合の制御モードを1レーン1点火プラグ制御モードと呼称する。第1の点火時期制御手段1015aおよび第2の点火時期制御手段1015bは、それぞれ、第1の監視部1011aおよび第2の監視部1011bによって他方のコントローラが正常に機能していないことを検出する。1レーン1点火プラグ制御モードの場合には、正常に機能しているコントローラによって、各気筒の1個の点火プラグを使用して点火制御が行われる。すなわち、正常に機能しているコントローラによって、各気筒において、1点火プラグ用点火時期補正マップを使用して1点火プラグ制御が行われる。
【0025】
図5は、点火制御装置101が制御モードを決定する方法を示す流れ図である。
【0026】
ステップS010において、第1の監視部1011aおよび第2の監視部1011bが、第1のコントローラ101および第2のコントローラが正常に機能しているかどうか判断する。2台とも正常に機能していると判断されれば、ステップS020に進む。いずれかが正常に機能していないと判断されれば、ステップS040に進む。
【0027】
ステップS020において、第1のプラグ失火検出部1013aおよび第2のプラグ失火検出部1013bが、点火プラグが正常に機能しているかどうか判断する。全ての点火プラグが正常に機能していると判断されれば、ステップS030に進む。いずれかの点火プラグが正常に機能していないと判断されれば、ステップS070に進む。
【0028】
ステップS030において、2レーン2点火プラグ制御モードが選択される。
【0029】
ステップS040において、正常なコントローラの失火検出部が制御する点火プラグは全て正常かどうか判断する。制御する点火プラグが全て正常であると判断されれば、ステップS050に進む。いずれかの点火プラグが正常に機能していないと判断されれば、ステップS060に進む。
【0030】
ステップS050において、1レーン1点火プラグ制御モードが選択される。
【0031】
ステップS060において、たとえば、点火プラグが正常な気筒のみを制御するなどの異常処理が行われる。
【0032】
ステップS070において、第1のプラグ失火検出部1013aおよび第2のプラグ失火検出部1013bが、異常な点火プラグは1個だけであるかどうか判断する。異常な点火プラグは1個だけであると判断されれば、ステップS080に進む。異常な点火プラグが2個以上で有ると判断されれば、ステップS090に進む。
【0033】
ステップS080において、2レーン1点火プラグ制御モードが選択される。
【0034】
ステップS090において、第1のプラグ失火検出部1013aおよび第2のプラグ失火検出部1013bが、それぞれ、いずれかのコントローラの制御する全ての点火プラグが正常に機能しているか判断する。いずれかのコントローラの制御する全ての点火プラグが正常に機能していると判断されれば、ステップS100に進む。両方のコントローラの制御する点火プラグの少なくとも1個の点火プラグが異常であれば、ステップS110に進む。
【0035】
ステップS100において、制御対象の点火プラグが全て正常に機能しているコントローラによる1レーン1点火プラグ制御モードが選択される。
【0036】
ステップS110において、たとえば、点火プラグが正常な気筒のみを制御するなどの異常処理が行われる。
【0037】
以下に、上述の制御モードにおける内燃エンジンの性能について説明する。内燃エンジンの性能は、スロットル全開(そのエンジン回転数における全負荷)で、空燃比を12.5に固定した場合の値である。
【0038】
表1は、2レーン2点火プラグ制御モードに対する1レーン1点火プラグ制御モードにおける出力低下率を示す。2レーン2点火プラグ制御モードの場合の出力を基準として、1レーン1点火プラグ制御モード(補正無し)の場合の出力の低下は最大9%であるが、1レーン1点火プラグ制御モード(補正有り)の場合の出力の低下は最大3%である。このように、補正によって出力の低下が抑制される。
【表1】

【0039】
図6は、2レーン2点火プラグ制御モードおよび1レーン1点火プラグ制御モードの場合の点火時期を示す。点火時期は、各気筒の基準クランク角度位置からの進角で示す。補正量は6°乃至9°である。
【0040】
表2は、2レーン1点火プラグ制御モードの場合に、1点火プラグ用点火時期補正マップによる補正を行った場合と行わなかった場合の出力低下率を示す。2レーン2点火プラグ制御モードの場合の出力を基準として、2レーン1点火プラグ制御モード(補正無し)の場合の出力の低下は最大2.2%であるが、2レーン1点火プラグ制御モード(補正有り)の場合の出力の低下は最大0.8%である。このように、補正によって出力の低下が抑制される。
【表2】

【0041】
図7は、2レーン2点火プラグ制御モードおよび2レーン1点火プラグ制御モードの場合の第1気筒の排気温度を示す図である。図7には、2レーン1点火プラグ制御モードにおいて、1点火プラグ用点火時期補正マップによる補正を行わなかった場合の第1気筒の排気温度も示す。2レーン2点火プラグ制御モードの場合の排気温度を基準として、2レーン1点火プラグ制御モード(補正無し)の場合の排気温度の上昇は最大46℃であるが、2レーン1点火プラグ制御モード(補正有り)の場合の排気温度の上昇は最大16℃である。このように、補正によって排気温度の上昇が抑制される。
【0042】
上述の本発明の実施形態によれば、1個の点火プラグのみを使用して点火を行う場合に、内燃エンジンの出力の低下および排気温度の上昇を抑制することができる。本発明のそれぞれの実施形態の特徴は以下のとおりである。
【0043】
本発明の一実施形態による点火制御装置において、前記第1および第2のコントローラは、コントローラが正常に機能しているかどうかを互いに監視する監視部を備える。前記第1および第2の点火時期制御手段は、該監視部によって正常に機能していないと判断されたコントローラによって制御される点火プラグを使用せず、正常に機能しているコントローラによって制御される点火プラグのみを使用し、所定のパラメータにしたがって点火時期を補正することを特徴とする。
【0044】
本実施形態によれば、2台のコントローラの内1台が正常に機能しない際に1個の点火プラグのみを使用して点火を行う場合にも、内燃エンジンの出力の低下および排気温度の上昇を抑制することができる。
【0045】
本発明の他の実施形態による点火制御装置において、前記第1および第2のコントローラは、各気筒の第1および第2の点火プラグの失火を検出する第1および第2の失火検出部をさらに備える。前記第1および第2の点火時期制御手段は、前記第1および第2の失火検出部のいずれかによって少なくとも一つの気筒で一方の点火プラグの失火が検出された場合に、前記一方のプラグを使用せず、他方の点火プラグの点火時期を、所定のパラメータにしたがって点火時期を補正することを特徴とする。
【0046】
本実施形態によれば、気筒内の2個の点火プラグの内1個が正常に機能しない際に1個の点火プラグのみを使用して点火を行う場合にも、内燃エンジンの出力の低下および排気温度の上昇を抑制することができる。
【0047】
本発明の他の実施形態による点火制御装置において、前記第1および第2の点火時期制御手段は、エンジン回転数および吸気圧をパラメータとするマップによって点火時期の補正を行うことを特徴とする。
【0048】
本実施形態によれば、エンジン回転数および吸気圧をパラメータとするマップによって点火時期の補正を行うので、エンジンの種々の動作状態において、内燃エンジンの出力の低下および排気温度の上昇を抑制することができる。
【0049】
本発明の他の実施形態による点火制御装置において、前記第1および第2の点火時期制御手段は、エンジン回転数および吸気圧によって定まる点火時期を、2個の点火プラグを使用する場合に比較して、所定量進めるように(たとえば、図4に示すように回転数および吸気絶対圧に応じた補正マップに基づいて)補正すること特徴とする。
【0050】
本実施形態によれば、1個の点火プラグしか使用しない場合に、未燃焼のまま排気される燃料が減少させることができる。したがって、内燃エンジンの出力の低下および排気温度の上昇を抑制することができる。
【0051】
本発明の他の実施形態による点火制御装置において、前記第1および第2の点火時期制御手段は、前記エンジンのノックが検出された場合に、ノックが検出されない限界の進角まで点火時期を遅らせること特徴とする。
【0052】
本実施形態によれば、ノックが生じない範囲で点火時期を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態による点火制御装置の構成を示す図である。
【図2】点火制御装置に使用されるセンサまたは信号発生器を示す図である。
【図3】2点火プラグ用点火時期マップの一例を示す図である。
【図4】1点火プラグ用点火時期補正マップの一例を示す図である。
【図5】点火制御装置が制御モードを決定する方法を示す流れ図である。
【図6】2レーン2点火プラグ制御モードおよび1レーン1点火プラグ制御モードの場合の点火時期を示す図である。
【図7】2レーン2点火プラグ制御モードおよび1レーン1点火プラグ制御モードの場合の第1気筒の排気温度を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
101…点火制御装置、101a…第1のコントローラ、101b…第2のコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各気筒に2個の点火プラグを備えるエンジンにおいて、
各気筒における2個の点火プラグのうち第1の点火プラグの点火時期を制御する第1の点火時期制御手段を備える第1のコントローラと、
各気筒における2個の点火プラグのうち第2の点火プラグの点火時期を制御する第2の点火時期制御手段を備える第2のコントローラと、
を備える点火制御装置であって、
前記第1および第2の点火時期制御手段は、少なくとも一つの気筒で1個の点火プラグしか使用しない場合に、所定のパラメータにしたがって点火時期を補正することを特徴とする点火制御装置。
【請求項2】
前記第1および第2のコントローラは、コントローラが正常に機能しているかどうかを互いに監視する第1および第2の監視部をそれぞれ備え、前記第1および第2の点火時期制御手段は、前記第1および第2の監視部によって正常に機能していないと判断されたコントローラによって制御される点火プラグを使用せず、正常に機能しているコントローラによって制御される点火プラグのみを使用し、所定のパラメータにしたがって点火時期を補正することを特徴とする、請求項1に記載の点火制御装置。
【請求項3】
前記第1および第2のコントローラは、各気筒の第1および第2の点火プラグの失火を検出する第1および第2の失火検出部をさらに備え、前記第1および第2の点火時期制御手段は、前記第1および第2の失火検出部のいずれかによって少なくとも一つの気筒で一方の点火プラグの失火が検出された場合に、前記一方のプラグを使用せず、他方の点火プラグの点火時期を、所定のパラメータにしたがって点火時期を補正することを特徴とする請求項1または2に記載の点火制御装置。
【請求項4】
前記第1および第2の点火時期制御手段は、エンジン回転数および吸気圧をパラメータとするマップによって点火時期の補正を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の点火制御装置。
【請求項5】
前記第1および第2の点火時期制御手段は、エンジン回転数および吸気圧によって定まる点火時期を、2個の点火プラグを使用する場合に比較して、所定量進めるように補正すること特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の点火制御装置。
【請求項6】
前記第1および第2の点火時期制御手段は、前記エンジンのノックが検出された場合に、ノックが検出されない限界の進角まで点火時期を遅らせること特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の点火制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−150335(P2009−150335A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330061(P2007−330061)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】