説明

無機薄膜が形成された無延伸フィルム。

【課題】
本発明は、ガスバリア性、蒸着適性に優れた包装用フィルムを得るに適した生分解性を有する脂肪族ポリエステル系無延伸フィルムに関する。
【解決手段】
融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)、結晶化度10%以下の脂肪族・芳香族ポリエステル成分(B)含有量10重量%以下、からなる組成物((A)+(B)の合計で100重量%とする)から得られるフィルムの片面又は両面に、酸化アルミニウム、アルミニウム、酸化珪素及びITOから選ばれる少なくとも一以上の無機薄膜が形成されていること等を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性、蒸着適性に優れた包装用フィルムを得るに適した生分解性を有する脂肪族ポリエステル系無延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にする目的で生分解性のあるフィルムが注目され、各種フィルムが開発されて来ている。その生分解性フィルムは、土壌中や水中で加水分解や生分解を受け、徐々にフィルムの崩壊や分解が進み、最後には微生物の作用で無害な分解物へと変化するものである。そのようなフィルムとして、芳香族系ポリエステル樹脂やポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン等から成形したフィルムが知られている。
【0003】
ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂の剛性を改良する方法として、脂肪族ポリエステルとして、脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジヒドロキシ化合物成分に、脂肪族オキシカルボン酸成分を共重合させた脂肪族ポリエステル共重合体(例えば、特許文献1参照)、脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジヒドロキシ化合物成分に、脂肪族オキシカルボン酸成分若しくはラクトンを共重合させた脂肪族ポリエステル共重合体(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0004】
一方、かかる脂肪族ポリエステル共重合体からなるフィルムのガスバリア性を改良する目的で酸化アルミニウム、アルミニウム、酸化珪素、ITOのいずれか1種類以上を蒸着する方法(例えば、特許文献3、4参照)が提案されている。
【0005】
しかしながら、これら脂肪族ポリエステル共重合体からなるフィルムは耐熱性が不十分であるため、蒸着適性に劣る虞がある。
【0006】
【特許文献1】特開平8−239461号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平8−311181号公報(請求項1)
【特許文献3】特願2006−106942号公報(請求項1)
【特許文献4】特願2006−110478号公報(請求項7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はガスバリア性優れた包装用フィルムを得るに適した生分解性を有する脂肪族ポリエステルフィルム及び積層フィルムを開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するものであり、請求項1記載の発明は、融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)から得られるフィルムの片面又は両面に、酸化アルミニウム、アルミニウム、酸化珪素及びITOから選ばれる少なくとも一層以上の無機薄膜が形成されていることを特徴とする無延伸フィルムを提供するものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1の特徴に加え、脂肪族ポリエステル共重合体(A)が、2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%〔脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にあることを特徴とする無延伸フィルムを提供するものである。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の特徴に加え、2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)が、乳酸であることを特徴とする無延伸フィルムを提供するものである。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一の特徴に加え、前記形成された無機薄膜の少なくとも一の表面に熱可塑性樹脂からなる一軸延伸フィルム及び/又は二軸延伸フィルムが設けられたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の無延伸フィルムを提供するものである。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4の特徴に加え、前記延伸フィルムがポリ乳酸又は芳香族系ポリエステル共重合体からなる二軸延伸フィルムであることを特徴とする無延伸フィルムを提供するものである。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5の特徴に加え、前記芳香族系ポリエステル共重合体がスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を1共重合成分として含むポリエステルであり、芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコール、及びスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸、それに必要に応じて脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸を加え、それらの成分間で重縮合反応を行って得られるポリエステルであることを特徴とする無延伸フィルムを提供するものである。

【発明の効果】
【0014】
本発明無延伸フィルムは蒸着適性に優れるため製造時のロスが少なく、またガスバリア性に優れているため包装に好適なフィルムが得られる。また本発明のフィルムは、優れたガスバリア性に加え、従来のフィルムと遜色のないヒートシール性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、融点(Tm)が80〜120℃、好ましくは80〜115℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃、好ましくは37〜73℃及び(Tm)−(Tc)が30〜55℃、好ましくは35〜50℃の範囲にある、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)である。
【0016】
融点(Tm)が80℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、得られるフィルムを基材層として用いるには融点が低過ぎ、蒸着時に溶解しプロセス適性が悪いためロスが大きく、また包装用フィルムとして用いた場合、ヒートシールする際に、ヒートシールバーにフィルムが融着する虞があり、包装適性に劣る。一方、融点(Tm)が120℃を越える脂肪族ポリエステル共重合体は、結果として2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が少なく、得られるフィルムの柔軟性が損なわれる虞がある。
【0017】
結晶化温度(Tc)が35℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、結晶化温度が低過ぎ、かかる共重合体からフィルムを得ようとしても、通常の冷却温度(5〜30℃)では完全に固化せず、得られるフィルムにニップロール等の押し跡が転写されたり、冷却ロールから容易に剥がれず、外観に劣るフィルムとなる虞がある。(Tm)−(Tc)が30℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、得られるフィルムは耐衝撃性、耐突刺し性に劣る虞がある。
【0018】
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、好ましくは2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%、より好ましくは1〜10モル%〔脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にある。
【0019】
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0020】
脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものが好ましい。
【0021】
また、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
【0022】
かかる脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸及び2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステル又はジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。これら、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独か又は2種以上からなる混合物として使用することもできる。
【0023】
脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、特に、コハク酸又はそのアルキルエステル又はそれらの混合物が好ましく、融点(Tm)が低い脂肪族ポリエステル共重合体(A)を得るために、コハク酸を主成分とし、副成分としてアジピン酸を併用してもよい。
【0024】
脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれ又は線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
【0025】
かかる脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、特には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0026】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)は、特に限定はされないが、通常、1〜10個の炭素原子を有する枝分かれ又は線状の二価脂肪族基を有する化合物が挙げられる。
【0027】
かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)としては、具体的には、例えば、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、D,L−乳酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸、ヒドロキシカプロン酸等、かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、シクロヘキシルエステル等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステル形成誘導体を挙げることができる。
【0028】
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特開平8−239461号公報、特開平9−272789号公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(A)としては、例えば、三菱化学株式会社からGS Pla(商品名)として製造・販売されている。
【0029】
本発明に係る生分解性重合体組成物は、脂肪族ポリエステル(A)に、あるいはフィルムを製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0030】
特に本発明に係る生分解性重合体組成物は、脂肪族ポリエステル(A)に、あるいはフィルムを製造する際に、アンチブロッキング剤としてシリカ、タルク等を使用することができるが、フィルムにおける透明性の確保の観点から、当該アンチブロッキング剤の含有量としては脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対し、1重量部以下にすることが好ましい。
【0031】
無機薄膜が形成される前の無延伸フィルム
本発明に係る無機薄膜が形成される前の無延伸フィルムは、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)からなる無延伸フィルムである。本発明無延伸フィルムに用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は前記したように、融点(Tm)が80〜120℃、好ましくは80〜115℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃、好ましくは37〜73℃及び(Tm)−(Tc)が30〜55℃、好ましくは35〜50℃の範囲にあること、即ち、(冷却時の)結晶化温度が低い(結晶化が遅い)共重合体であることが必要であり、例えば、融点(Tm)が上記範囲にある脂肪族ポリエステル共重合体であっても、結晶化温度(Tc)が76〜80℃と高い温度(結晶化が速い)、即ち、(Tm)−(Tc)が26〜29℃と30℃未満の共重合体を用いた場合は、得られる無機薄膜が形成される前の無延伸フィルムは突刺し破壊エネルギーに劣る虞がある。
【0032】
本発明に係る無機薄膜が形成される前の無延伸フィルムの厚さは、用途に応じて種々決め得るが、通常10〜200μm、好ましくは20〜100μmの範囲にある。本発明無延伸フィルムは、印刷性あるいは延伸フィルムとの接着性、滑り性等を改良するために、一方の表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0033】
本発明に係る無機薄膜が形成される前の無延伸フィルムは、種々公知の方法で製造し得る。例えば、脂肪族ポリエステル共重合体(A)を直接フィルム成形機に投入してT−ダイ、環状ダイ等を用いてフィルムにする方法等を用いてフィルムに成形する方法を例示できる。
【0034】
蒸着、スパッタ
本発明の無延伸フィルムは上記、無機薄膜が形成される前の無延伸フィルムに蒸着、スパッタ処理をしてられる。ガスバリア性、特に水蒸気バリア性を改良するために酸化アルミニウム、アルミニウム、酸化珪素、ITO、の内いずれか1種以上の無機金属が蒸着又はスパッタ処理することができる。この中でもコストが安いことから酸化アルミニウム、酸化珪素の蒸着処理が好ましい。 また、本フィルムは煎餅、乾燥食品、スナック菓子、等を包装する際の透明性を維持したままガスバリア性が改良されている。
【0035】
また、蒸着又はスパッタ処理した無延伸フィルムとポリ乳酸延伸フィルム又は芳香族系ポリエステル共重合体延伸フィルムをラミネートする場合には、当然ではあるが、蒸着膜又はスパッタ膜を保護するために、蒸着膜又はスパッタ面がラミネート面とし包装袋の外面にならないことが好ましい。これらの蒸着、スパッタによる層の厚さは、通常10Åから500Å程度である。
【0036】
延伸フィルム
上記の本発明の無延伸フィルムと貼り合される延伸フィルムはポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、スルホネート基含有芳香族ポリエステル等の生分解性ポリエステルからなる二軸延伸フィルムが好ましく、その中でも特にポリ乳酸又は芳香族系ポリエステル共重合体からなる二軸延伸フィルムが生分解性を備え且つ剛性、透明性、耐熱性に優れているので好ましい。
【0037】
また、延伸フィルムが包装材料として使用されている種々材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体等の熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、からなる二軸延伸フィルムであっても良い。勿論、無機薄膜を有する無延伸フィルムに前記延伸フィルムは一層貼り合わせてもよいし、或いは二層以上貼り合わせても良い。
【0038】
ポリ乳酸
本発明に係る延伸フィルムの原料となるポリ乳酸は、D−乳酸若しくはL−乳酸の含有量が5重量%未満、好ましくは3重量%未満で、融点が150〜170℃、好ましくは160〜170℃の範囲のものである。D−乳酸の含有量が5重量%以上のものは延伸成形性が劣る虞がある。なお、ポリ乳酸におけるD−乳酸含有量は、クロムバック社製ガスクロマトグラフCP CYCLODEX B 236Mを用いて測定した値である。
【0039】
かかるポリ乳酸としては、D−乳酸若しくはL−乳酸以外に、乳酸と共重合可能なコモノマーとしては、例えば3−ヒドロキシブチレート、カプロラクトン、グリコール酸などを共重合したものであってもよい。ポリ乳酸の重量平均分子量はフィルム成形能がある限り特に限定はされないが、MFR(ASTM D−1238による、荷重2160g、温度190℃)が、通常、0.1〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜10g/10分のものが使用される。
【0040】
かかるポリ乳酸の重合法としては、縮合重合、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することもできる。例えば、縮合重合ではL−乳酸又はD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を持ったポリ乳酸を得ることができる。
【0041】
芳香族ポリエステル
本発明で延伸フィルムの原料となる芳香族系ポリエステル共重合体が、スルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を含む芳香族系ポリエステルであり、より具体的には、芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコール、及びスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸、それに必要に応じて脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸を加え、それらの成分間で重縮合反応を行って得られるポリエステルであることが望ましい。ポリエステル樹脂の好ましい組成は、芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が30〜49.9モル%、脂肪族グリコール成分に由来する単位が35〜50モル%、スルホン酸金属塩基を置換基として有する芳香族又は脂肪族ジカルボン酸成分に由来する単位が0.1〜5モル%、及び脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30モル%(ここで、全単位の合計が100モル%になる)である。
【0042】
本発明に使用されるスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を1共重合成分として含むポリエステルは、基本的には、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとの重縮合によって形成される芳香族ポリエステル樹脂であって、生分解性を付与するためにスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を共重合成分の1種として含むポリエステル樹脂である。また、そのフィルムに可撓性、生分解性等の性能を付与し、また向上させるために、さらに脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸を共重合成分として加えた多成分系のポリエステル樹脂であってもよい。
【0043】
好適な当該共重合体は、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族グリコールを主成分にし、それにスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸、及び脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸を副成分として加え、それらの成分間で重縮合反応を進行させて得られたポリエステルである。
【0044】
また、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などを例示することができ、またそれらのジアルキルエステルのようにエステル形成能を有する誘導体を使用することもできる。それらの内ではテレフタル酸又はジメチルテレフタレートの使用が好ましい。さらに、前記したジカルボン酸を2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0045】
脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコール類を例示することができ、またそれらのオリゴマー、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらに高分子量のポリアルキレングリコール等のポリアルキレングリコール類も使用することができる。また、前記したグリコール類を2種類以上組み合わせて使用してもよい。ジエチレングリコール等のオリゴマーは、ポリエステル樹脂の機械的物性、加水分解性あるいは生分解性を適度に調整する効果を有していることから、アルキレングリコール類とポリアルキレングリコール類とを併用して用いることが好ましい。それらの中で、エチレングリコールとジエチレングリコールとの併用が望ましい。
【0046】
スルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸のベンゼン環にスルホン酸金属塩基(−SOM)が置換基として結合した化合物である。金属(M)としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、あるいはマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属である。好ましい例として、5−スルホ−イソフタル酸の金属塩、4−スルホ−イソフタル酸の金属塩、4−スルホ−フタル酸の金属塩を挙げることができる。この成分は、芳香族系ポリエステル共重合体に加水分解性や生分解性を付与する目的で加えられるが、特に5−スルホ−イソフタル酸ナトリウム塩はその効果が高いので好ましい。なお、前記の芳香族ジカルボン酸は、アルキルエステルになっていてもよく、例えばジメチル-5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩の形で使用することができる。
【0047】
脂肪族ジカルボン酸としては、アゼライン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸等を例示することができ、また脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、カプロラクトン等を例示することができる。この脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸は、芳香族系ポリエステル共重合体のガラス転移点温度を下げ、好適には70℃以下に下げ、あるいは樹脂の加水分解性や生分解性を向上させる目的で共重合成分の1種として加えられるものである。
【0048】
前記した成分間の重縮合反応は、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム等の触媒の存在下に200℃以上の高温かつ減圧下で行うことにより、分子鎖に沿ってランダムにそれらの成分に由来する単位が分布した線状ポリエステル樹脂を得ることができる。
【0049】
前記重縮合したポリエステル樹脂中の各成分に由来する単位の含有量は、芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が30〜49.9モル%、好ましくは37〜48.7モル%、脂肪族グリコール成分に由来する単位が35〜50モル%、好ましくは40〜49モル%、スルホン酸金属塩基を置換基として有する芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が0.1〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%、及び脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30モル%、好ましくは2〜20モル%である。ここで、全単位の合計が100モル%になる。
【0050】
好適な芳香族系ポリエステル共重合体では、テレフタル酸成分に由来する単位が30〜49.9モル%、好ましくは37〜48.7モル%、エチレングリコール成分に由来する単位が15〜48モル%、好ましくは20〜45モル%、ジエチレングリコール成分に由来する単位が1〜29モル%、好ましくは4〜20モル%、スルホン酸金属塩基を置換基として有する芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が0.1〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%、及び脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30、好ましくは2〜20モル%である。ここで、全単位の合計が100モル%になる。
【0051】
本発明で用いる芳香族系ポリエステル共重合体は、その重量平均分子量が、10,000〜500,000の範囲が好ましい。また、そのメルトフローレートは、ASTM D−1238に準拠し、220℃、2160g荷重下で測定した値が、0.1〜100(g/10分)であることが好ましい。分子量及びメルトフローレートが前記の範囲内にあると、押出成形に適した溶融粘度を示し、本発明に係る無延伸フィルムに延伸フィルムを設けた場合に十分な機械的強度を有する。
【0052】
ポリ乳酸延伸ラミネートフィルム
上記本発明の無延伸フィルムと上記ポリ乳酸延伸フィルム、好ましくは二軸延伸フィルムをラミネートして得られるポリ乳酸延伸ラミネートフィルムは透明性及びグロス等の光学特性、剛性に優れており、且つ無延伸フィルムをシーラント層として有するので光学特性を損なうことなく、ヒートシール時には基材である延伸フィルムの融解前に無延伸フィルムが溶融することから自動製袋適性が付与されている。
【0053】
本発明のポリ乳酸延伸ラミネートフィルムの全体の厚さは15〜200μm、好ましくは30〜100μmの範囲にある。ポリ乳酸延伸ラミネートフィルムの厚さが15μm未満では包装袋として用いた際にピンホールが空く虞があり、200μmを超えると包装袋としてはかさばり、製品(包装袋)としてのハンディさを損ない、またコストが高くなる虞がある。
【0054】
また、ポリ乳酸延伸ラミネートフィルムを製造する方法としては、ポリ乳酸を用いて延伸フィルムを製造し、また脂肪族ポリエステル共重合体(A)のフィルムに蒸着を施した接着剤を用いて貼り合せる方法、即ちラミネート法が好ましい。
【0055】
芳香族ポリエステル延伸ラミネートフィルム
本発明無延伸フィルム又は当該無延伸フィルムと延伸フィルムから構成される複層フィルムと上記芳香族ポリエステルからなる延伸フィルム、より好ましくは芳香族ポリエステルからなる二軸延フィルム(以下、「芳香族ポリエステル延伸ラミネートフィルム」と記す。)をラミネートして得られる芳香族ポリエステル延伸ラミネートフィルムは透明性及びグロス等の光学特性、剛性に優れており、且つ前記芳香族ポリエステルからなる二軸延フィルムをシーラント層として有するので光学特性を損なうことなく低温ヒートシール性、ヒートシール強度が付与されている。
【0056】
前記芳香族ポリエステル延伸ラミネートフィルムの全体の厚さは15〜200μm、好ましくは30〜100μmの範囲にある。芳香族ポリエステル延伸ラミネートフィルムの厚さが15μm未満では例えば、包装袋として用いた際にピンホールが空く虞があり、200μmを超えると包装袋としてはかさばるため、取り扱いにくくなる上、コストが高くなる虞がある。
【0057】
また、芳香族ポリエステル延伸ラミネートフィルムを製造する方法としては、芳香族ポリエステルを用いて延伸フィルム、より好ましくは二軸延伸フィルムを製造し、また脂肪族ポリエステル共重合体(A)のフィルムに蒸着を施した接着剤を用いて貼り合せる方法、即ちラミネートネート法が好ましい。
【0058】
ピロー包装用フィルム
本発明無延伸フィルムを用いて得られるラミネートフィルムは、上記ポリ乳酸延伸フィルム又は芳香族ポリエステル延伸フィルムを本発明無延伸フィルムにラミネートすることにより形成することができる。
【0059】
そのためピロー包装用フィルムとして用いる場合は、ポリ乳酸延伸フィルム又は芳香族ポリエステル延伸フィルムが外面となるので、得られるピロー包装袋は透明性及びグロス等の光学特性、剛性に優れ、且つ片面に、脂肪族ポリエステル共重合体(A)から得られる無延伸フィルムを有しているので、片面が低温ヒートシール性、ヒートシール強度を有しており、ピロー包装適性に優れている。
【0060】
溶断シール包装用フィルム
同じく溶断包装用フィルムとして用いる場合は、ポリ乳酸延伸フィルム又は芳香族ポリエステル延伸フィルムが外面となるので、得られる溶断シール包装袋は透明性及びグロス等の光学特性、剛性に優れ、且つ片面に、脂肪族ポリエステル共重合体(A)からなる無延伸フィルムを有しているので、溶断ヒートシール強度を有しており、溶断シール包装適性に優れている。

【実施例】
【0061】
実施例1〜6、比較例
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限
りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0062】
実施例及び比較例で使用した脂肪族ポリエステル共重合体及び脂肪族・芳香族ポリエステルは次の通りである。
(A)脂肪族ポリエステル共重合体(A)
コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−1)
三菱化学社製、商品名 GS−Pla AZ91T、MFR(190℃、荷重2160
g):4.5g/10分、融点(Tm):108.9℃、結晶化温度(Tc):68.0
℃、(Tm)−(Tc):40.9℃、密度:1.25g/cm

(B)脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−
1)
テレフタル酸:46モル%、アジピン酸:54モル%及び1,4−ブタンジオール:1
00モル%、BASF社製、商品名 ECOFLEX、MFR(190℃、荷重2160
g):3g/10分、融点(Tm):112℃、密度:1.26g/cm3。

【0063】
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。 尚、測定はすべてラミネートフィルムを用いて行っている。

(1)ヘイズ(HZ)
日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
(2)酸素透過度
JIS K7126に基づいて20℃湿度0%RH(相対湿度)の条件で、酸素透過測定器(MOCON社製、OXTRAN2/21 ML)を使用して測定した。
(3)透湿度(水蒸気透過度)
JIS Z0208 に準拠して求めた。フィルムを採取して、表面積が約100cm2の袋を作り、塩化カルシウムを適量入れた後、密封した。これを40℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気中に3日間放置し、重量増加から透湿度(水蒸気透過度)を求めた。
(4)引張り試験
試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、降伏点及び破断点における強度(MPa)、伸び(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
(5)ヒートシール強度
ラミネートフィルムの無延伸フィルム面を重ね合わせて、テスター産業株式会社製TP−701−B HEATSEALTESTERを用いて、所定の温度で、シール面圧:1kg/cm、時間:1秒の条件下で熱融着した。尚、加熱は上側のみとした。
熱融着したラミネートフィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度で剥離し、その最大強度を熱融着強度とした。
【0064】
ポリ乳酸二軸延伸ラミネートフィルム、芳香族ポリエステル二軸延伸ラミネートフィルムの物性を前記方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
<無延伸フィルムの製造>
先端にマルチマニホールド式のT−ダイを備えた共押出シート成形機を用い、200℃に加熱したT−ダイから、単層シートを押出した後、30℃のキャスティングロールで急冷することにより、厚さ30μmの無延伸フィルムを用意した。また片面にコロナ処理を行った。

<ポリ乳酸二軸延伸フィルム>
ポリ乳酸二軸延伸フィルム(東セロ社製:パルグリーンLC#25)(厚み:25μmm、両面コロナ処理)を用いた。

<蒸着処理>
電子ビーム加熱方式真空蒸着装置を用い、真空容器内を0.001Torr以下の真空度に維持しながら蒸着処理を行った。アルミニウム蒸着の場合は蒸着源としてアルミニウムを使用し、製膜速度3m/分で行った。また、酸化アルミニウム蒸着の場合は、蒸着源としてアルミニウムを用い、更に酸素導入しアルミニウムを酸化アルミニウムに酸化することで、製膜速度20m/分で行った酸化アルミニウム蒸着膜を形成した。

<無延伸フィルムと二軸延伸フィルムのラミネートフィルム>
ポリ乳酸二軸延伸フィルム又はスルホネート基含有芳香族ポリエステル二軸延伸フィルムのコロナ面(蒸着を行っている場合は蒸着面)に上記記載の無延伸フィルムのコロナ面((蒸着を行っている場合は蒸着面)をウレタン系接着剤(武田薬品工業製:タケラックA310(60%)+タケラックA3(5%)+酢酸エチル(35%))を約7g/m2塗布した後にドライラミネートして厚さ50〜55μmのラミネートフィルムを得た。
ラミネートフィルムの物性を前記方法で測定した。測定結果を表に示す。

比較例2
実施例1の無延伸フィルムに代えて、脂肪族ポリエステル(A)に芳香族・脂肪族ポリエステル(B)を20%配合したフィルムを用いて蒸着を行ったところ、蒸着時の熱によりフィルムがたるみチルノールから離れ冷却不良となったため、連続蒸着装置内でフィルムが融解したため実験を中止した。従って、前記脂肪族ポリエステル(A)に芳香族・脂肪族ポリエステル(B)を20%配合したフィルムに蒸着することは不可能であり、蒸着適性を欠いていることが分かった。
【0067】
実施例1乃至6においては、問題なくアルミニウム、又は酸化アルミニウムを蒸着することができ、上表に示されるように優れたガスバリア性を有していることから、蒸着適性に優れていることが分かった。このことは、実施例1乃至6において、比較例1と比べて、極めて優れたガスバリア性を有していることはアルミニウム等の蒸着がガスバリア性を発揮できる程度に均一かつ確実に行われていることを意味するからである。
【0068】
また、実施例1乃至6においては、フィルムにおける主要な物性である透明性(ヘイズ値)、ヤング率、引っ張り強度、及びヒートシール強度のいずれにおいても、比較例1と同等、又はそれ以上の値を示していることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のラミネートフィルムは生分解性を有し、且つ、蒸着適性、及びガスバリア性に優れ、引っ張り強度、ヒートシール性等の他のフィルムにおける主要物性も従来のフィルムと同等、又はそれ以上の性能を有する包装用フィルムに好適なフィルムが得られるので、食品、医薬品等幅広い用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)から得られるフィルムの片面又は両面に、酸化アルミニウム、アルミニウム、酸化珪素及びITOから選ばれる少なくとも一層以上の無機薄膜が形成されていることを特徴とする無延伸フィルム。
【請求項2】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)が、2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%〔脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の無延伸フィルム。
【請求項3】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)が、乳酸であることを特徴とする請求項1又は2記載の無延伸フィルム。
【請求項4】
前記形成された無機薄膜の少なくとも一の表面に熱可塑性樹脂からなる一軸延伸フィルム及び/又は二軸延伸フィルムが設けられたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の無延伸フィルム。
【請求項5】
前記延伸フィルムがポリ乳酸又は芳香族系ポリエステル共重合体からなる二軸延伸フィルムであることを特徴とする請求項4に記載の無延伸フィルム。
【請求項6】
前記芳香族系ポリエステル共重合体がスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を1共重合成分として含むポリエステルであり、芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコール、及びスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸、それに必要に応じて脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸を加え、それらの成分間で重縮合反応を行って得られるポリエステルであることを特徴とする請求項5に記載の無延伸フィルム。


【公開番号】特開2008−260205(P2008−260205A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104496(P2007−104496)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】