説明

無線タグ検出システム

【課題】無線タグ検出システムにおいて、新たな周波数帯域を使用することなく、読取装置が無線タグから情報を読み取る際の電波と、読取装置が受信機に対して情報を送信する際の電波とが互いに干渉しないようにする。
【解決手段】以上のように詳述した無線タグ検出システム1において、読取器101は、無線タグ102,103から送り返されたタグ応答に対応したタグデータを含む読取コマンドを生成し、この読取コマンドを送信する。読取器101から送信された読取コマンドは、無線タグ102,103によりタグ応答を出力する際に用いられるだけでなく、コマンド受信機104がタグデータを取得するためにも用いられる。よって、新たな周波数帯域を使用することなく、読取器101が無線タグ102,103から情報を読み取る際の電波と、読取器101が受信機に対して情報を送信する際の電波とが互いに干渉しないようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグと読取装置を使ったシステムにおいて、読取装置が無線タグにて保持された情報を読み取ることにより、その存在を検出するシステムに関するものである。特に、無線タグを歩行者に持たせ、或いは車両に搭載し、これを検知することにより、歩行者や他の車両の存在を通知し、交通安全に寄与する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、上記のようなシステムにおいて、無線タグを歩行者に持たせ、或いは、無線タグを車両に搭載して、歩行者や車両の存在を別の車両に通知するシステムが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このシステムにおいては、歩行者に無線タグを持たせ、道路わきに置かれた読取装置で無線タグを読み取ることにより歩行者の存在を検知し、その検知結果を別の通信機を使って車両に搭載された車載通信機に向かって通知する。
【0004】
さらに、車両に無線タグを搭載し、歩行者に読取装置を持たせることにより、読取装置が車両の接近を検知し、歩行者に通知するシステムも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−346297号公報
【特許文献2】特開2003−173499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無線タグを使って歩行者や車両を検出し、その存在を他の車両に通知する際、その通知方法に課題がある。
例えば、特許文献1では、通知のために車載通信機を利用している。このためには道路わきに設置する設備に、無線タグの読取装置に加え、車載通信機に検出結果を通知するための送信機も別途必要となり、道路わきの設備のコストが高くなるという問題点がある。
【0006】
これに対し特許文献2の技術では、車両に搭載された無線タグと歩行者が携帯する読取装置が直接通信するため、特許文献1に比べればシステムは簡素化されるが、歩行者に読取装置という比較的複雑な電子機器を携帯させる必要があり、コストの面でも、電源供給(即ち電池の寿命)の面でも普及の上での課題が多い。
【0007】
さらに、両者の上記技術では、多くの歩行者や車両がシステムを利用した際の問題点について懸念が存在する。
具体的には、特許文献1の技術では、検出結果の通知を受けるためには車両に車載通信機を搭載する必要がある。また、検出結果の通知を受けたい車載通信機が多くなると、個々の通信が集中し情報が迅速に伝達し難くなる、いわゆる輻輳等の干渉が発生する可能性もある。
【0008】
また、この技術では、無線タグのための電波と、車載通信機のための電波という2種類の周波数帯、即ち周波数チャネルを確保する必要があり、電波資源有効活用の観点でも課題がある。
【0009】
さらに、特許文献2では、読取装置をもった歩行者が近い場所に多く集中した場合、読取装置が送信する読み取り信号がお互いに干渉し、効率よく無線タグを読み取り難くなるという問題も懸念される。
【0010】
そこで、このような問題点を鑑み、読取装置が無線タグから情報を受信し、該受信した情報を例えば車両等に搭載された受信機に対して無線送信する無線タグ検出システムにおいて、新たな周波数帯域を使用することなく、読取装置が無線タグから情報を読み取る際の電波と、読取装置が受信機に対して情報を送信する際の電波とが互いに干渉しないようにすること、および安価なシステムを提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために成された請求項1に記載の無線タグ検出システムにおいて、読取装置は、無線タグから送り返された応答信号に対応したタグデータを含む送信信号を生成し、この送信信号を送信する。読取装置から送信された送信信号は、無線タグにより応答信号を出力する際に用いられるだけでなく、受信装置がタグデータを取得するためにも用いられる。
【0012】
よって、このような無線タグ検出システムによれば、新たな周波数帯域を使用することなく、読取装置が無線タグから情報を読み取る際の電波と、読取装置が受信機に対して情報を送信する際の電波とが互いに干渉しないようにすることができる。
【0013】
また、読取装置には対受信機用の通信手段を設ける必要がないので、安価にシステムを構築することができる。
なお、本発明でいう「認識データ」とは、無線タグの種類や無線タグの個体番号(識別子:ID)等のデータを示す。また、「応答信号」には、少なくとも認識データが含まれていればよく、無線タグに移動速度や移動方向等の各種情報を検出する機能が備えられている場合には、無線タグは、これらの各種情報を認識データと共に応答信号として送信してもよい。
【0014】
また、本発明でいう「タグデータ」とは、無線タグの有無の情報、前述の認識データ、無線タグの個数の情報、複数の無線タグから送信された応答信号が衝突した旨を示す情報等のデータを示す。
【0015】
ところで、請求項1に記載の無線タグ検出システムにおいて、読取装置の信号生成手段は、請求項2に記載のように、受信手段を介して受信した応答信号から認識データを抽出し、少なくともこの認識データがタグデータとして含まれる送信信号を生成するようにしてもよい。
【0016】
このような無線タグ検出システムによれば、受信装置は読取装置が受信した無線タグの認識データを受信することができる。よって、受信装置は無線タグの詳細な情報(認識データに含まれる情報)を認識することができる。
【0017】
また、請求項1または請求項2に記載の無線タグ検出システムにおいて、読取装置の信号生成手段は、請求項3に記載のように、受信手段を介して応答信号を受信したか否かを検出することにより応答信号を送り返した無線タグの有無を検出し、該検出結果が前記タグデータとして含まれる送信信号を生成するようにしてもよい。
【0018】
このような無線タグ検出システムによれば、複数の無線タグからの応答信号が衝突し、読取装置により各応答信号の内容が識別できなかったとしても、受信装置は無線タグの有無だけならば確実に検出することができる。
【0019】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の無線タグ検出システムにおいて、受信装置は、請求項4に記載のように、抽出手段により抽出されたタグデータに基づいて、少なくとも無線タグが存在するか否かの情報を当該受信装置の使用者に報知する報知手段を備えていてもよい。
【0020】
このような無線タグ検出システムによれば、無線タグの有無を使用者に報知することができる。また、例えば、受信装置により、受信したタグデータに基づいて、受信装置が搭載された装置の制御(受信装置の移動速度を抑制する制御等)が実施される場合であっても、受信装置は少なくとも無線タグの有無を使用者に対して報知するので、使用者は受信装置により装置の制御が実施されることを認識することができる。
【0021】
さらに、請求項4に記載の無線タグ検出システムにおいては、請求項5に記載のように、読取装置は、応答信号を送り返した無線タグの有無の検出結果、および認識データが正常に抽出できたか否かの検出結果がタグデータとして含まれる送信信号を生成するよう構成され、受信装置は、応答信号を送り返した無線タグが有り、かつ認識データが正常に抽出できていない旨の抽出結果が抽出手段により得られれば、応答信号を送り返した無線タグが複数ある旨を示す第1検知情報を受信装置の使用者に報知し、応答信号を送り返した無線タグがあり、かつ認識データが正常に抽出できた旨の抽出結果が得られれば、認識データを含むタグデータの内容を表す第2検知情報を受信装置の使用者に報知するようにしてもよい。
【0022】
このような無線タグ検出システムによれば、受信装置の使用者は、複数の無線タグが検出されこと(第1検知情報)、および1つの無線タグが検出されたこと(第2検知情報)を識別することができる。
【0023】
また、請求項4または請求項5に記載の無線タグ検出システムにおいては、請求項6に記載のように、無線タグは、認識データとして、少なくとも歩行者により所持されるか、或いは自転車、オートバイ、自動車の何れの車両に搭載されているか(無線タグが搭載されている車両の種別)を表す搭載情報を送信し、読取装置は、無線タグより受信した搭載情報を前記タグデータとして含む送信信号を生成し、受信装置は、読取装置から受信した送信信号に含まれる搭載情報に基づいて、歩行者、自転車、オートバイ、自動車の存在の有無を受信装置の使用者に報知するようにしてもよい。
【0024】
このような無線タグ検出システムによれば、読取装置が歩行者、自転車、オートバイ、自動車の何れを検出したかを受信装置の使用者に報知することができる。
さらに請求項1〜請求項6の何れかに記載の無線タグ検出システムにおいて、読取装置は、請求項7に記載のように、送信手段により送信される送信信号の受信可能領域を変更する領域変更手段を備え、信号生成手段は、範囲変更手段による送信信号の送出範囲を表すエリア情報を前記タグデータに含めた送信信号を生成するようにしてもよい。
【0025】
このような無線タグ検出システムによれば、受信装置は、送信信号のタグデータからエリア情報を抽出することにより、何れの受信可能領域に無線タグが存在するのかを検出することができる。
【0026】
また、請求項7に記載の無線タグ検出システムにおいて、領域変更手段は、請求項8に記載のように、送信手段に対して送信信号の送信出力を変更させることにより受信可能領域を変更するようにしてもよいし、請求項9に記載のように、送信手段に対して送信信号の送出角度を変更させることにより受信可能領域を変更するようにしてもよい。
【0027】
このような無線タグ検出システムによれば、領域変更手段としての構成をより具体的に実現することができる。
さらに、請求項7〜請求項9の何れかに記載の無線タグ検出システムにおいて、領域変更手段は、請求項10に記載のように、受信可能領域を順次拡大させるようにしてもよい。
【0028】
このような無線タグ検出システムによれば、読取装置の近くに存在する無線タグを早期に検出することができる。このため、例えば、読取装置を交差点等の事故が起こり易い場所に配置し、無線タグを歩行者や車両とともに移動するようにすれば、受信装置は無線タグの情報を交差点に近い順に読取装置を介して受信することができるので、事故が起こり易い場所であっても事故が起こり難くすることができる。
【0029】
また、請求項10に記載の無線タグ検出システムにおいては、請求項11に記載のように、読取装置の信号生成手段は、領域変更手段により受信可能領域が変更されつつ送信手段により送信信号が送信され、再び始めの受信可能領域で送信手段により送信信号が送信される前までの一連の送信手続の実施回数を表すシーケンス番号をタグデータとして含む送信信号を生成するようにしてもよい。この場合には、無線タグの応答手段は、送信信号を受けるとタグデータを解析し、タグデータに含まれるシーケンス番号が前回のシーケンス番号から変更されていることを検出すると、タグデータに含まれるエリア情報を記憶手段に格納するとともに、応答信号を送り返し、シーケンス番号が前回のシーケンス番号から変更されていない状態で、かつタグデータに含まれるエリア情報が記憶手段に格納されたエリア情報から変更されていることを検出すると、応答信号を送り返さないようにしてもよい。
【0030】
即ち、読取装置が受信可能領域を順次拡大して送信信号を送信すれば、受信可能領域が拡大されるにつれて送信信号に応答する無線タグの個数が増えるので、応答信号が衝突する確率が高くなる。しかしながら本発明の構成によれば、送信信号に応答した無線タグは、同じシーケンス番号においてエリア情報が変更(拡大)された場合には応答しなくなるので、受信可能領域を順次拡大する場合においても、送信信号に対する応答信号の衝突を減らすことができる。
【0031】
よって、このような無線タグ検出システムによれば、複数の無線タグの応答が衝突する可能性が減り、検出時間を短くすることができるので、無線タグからの応答信号の受信精度を向上させることができる。
【0032】
さらに、請求項11に記載の無線タグ検出システムにおいては、無線タグの応答手段は、請求項12に記載のように、シーケンス番号が前回のシーケンス番号から変更されていない状態で、かつタグデータに含まれるエリア情報が記憶手段に格納されたエリア情報から変更されていないことを検出すると、当該無線タグの種別により予め設定された確率で応答信号を送り返すか否かを設定するようにしてもよい。
【0033】
このような無線タグ検出システムによれば、無線タグの種別により応答信号を送り返す優先順位を設定することができる。このため、例えば、歩行者に比べて事故の確率が高い自転車や、バイク等の高速で移動する物体に搭載される無線タグに高い優先順位を設定(応答信号を送り返す確率を高く設定)すれば、事故の確率が高いものを優先的に検出することができる。
【0034】
なお、無線タグが応答信号を送り返すか否かを決定する処理は、例えば無線タグ内において乱数を発生し、その乱数の値が予め設定された閾値を超えるか否かにより決定するなど、様々な処理が考えられる。
【0035】
加えて、請求項12に記載の無線タグ検出システムにおいて、無線タグは、請求項13に記載のように、無線タグが予め設定された閾値速度以上の速度で移動していること、または無線タグが読取装置に対して接近していることを検出する移動検出手段と、移動検出手段により無線タグが閾値速度以上の速度で移動していること、または読取装置に対して接近していることが検出されると、応答信号を送り返す確率をより高い確率に変更する確率変更手段と、を備えていてもよい。
【0036】
即ち、本発明においては、閾値速度以上の速度で移動する無線タグ、および読取装置に対して接近している無線タグを危険なものとして応答信号を送り返す優先順位を高く設定する。
【0037】
従って、このような無線タグ検出システムによれば、閾値速度以上の速度で移動する無線タグ、および読取装置に対して接近している無線タグを優先的に検出することができるので、無線タグを所持する者、若しくは無線タグを搭載した移動物体と、受信装置が搭載された移動物体とが読取装置近傍で接触することを防止することができる。よって、読取装置を交差点等の事故が起こり易い箇所に配置しておけば、事故が起こり難くすることができる。
【0038】
また、請求項7〜請求項13の何れかに記載の無線タグ検出システムにおいて、読取装置の信号生成手段は、請求項14に記載のように、読取装置の設置位置を表す位置情報を送信信号に含めて生成するようにしてもよい。
【0039】
このような無線タグ検出システムによれば、読取装置の信号生成手段は、読取装置の設置位置を表す位置情報、および送信信号の送出範囲を表すエリア情報を送信信号に含めて生成することになるので、受信装置では、無線タグが存在する領域を特定することができる。
【0040】
さらに、請求項14に記載の無線タグ検出システムにおいて、受信装置は、請求項15に記載のように、受信装置の現在地を検出する現在地検出手段と、現在地検出手段により検出された現在地、および読取装置から受信した位置情報に基づいて受信装置および無線タグの位置関係を検出する位置関係検出手段と、を備えていてもよい。
【0041】
このような無線タグ検出システムによれば、無線タグの現在地(無線タグが存在する領域)に加えて受信装置の現在地も検出することができるので、受信装置と無線タグとの位置関係を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
図1に第1実施形態の無線タグ検出システム1の概要説明図を示す。この無線タグ検出システム1においては、交差点等の事故が発生し易い道路上の箇所において歩行者や自転車を検出して、走行中の乗用車等の車両(車両に搭載されたコマンド受信機104(104a〜104c))にその存在を通知し、交通事故の防止に役立てる例である。
【0043】
無線タグ検出システム1は、図1に示すように、交差点近傍(例えば信号機が配置された電柱や、交差点付近の看板等)に読取器101(読取装置)を設置し、歩行者に無線タグ102(102a、102b)を持たせ、また自転車にも無線タグ103(103a、103b)を取り付け、これらの無線タグ102,103を読取器101より検知する。
【0044】
車両104にはコマンド受信機104(受信装置)を搭載し、読取器101の電波を受信し、読取器101が出す読取コマンド(送信信号)の内容を解析して無線タグ102,103の存在を検知し、運転者に警告を伝える。なお、コマンドの解析例や警告の内容は後述する。
【0045】
次に、無線タグ検出システム1を構成する各構成要素について図3を用いて説明する。図3は、読取器101、無線タグ102,103、コマンド受信機104の概略構成を示すブロック図である。
【0046】
読取器101は、制御回路10で生成した読取コマンドを変調器11を用いて変調し、パワーアンプ12を用いて増幅後、サーキュレータ13を介して送受信アンテナ14から送信する。また、読取器101は、無線タグ102,103からのタグ応答(応答信号)を送受信アンテナ14にて受信し、受信アンプ15で増幅後、復調器16で復調し制御回路10に伝達する。
【0047】
なお、サーキュレータ13は、パワーアンプ12から出力された読取コマンドが受信アンプ15側に侵入することを防止する。
また、この読取器101は周知の技術(例えば、ISO標準規格書18000−6に記載の技術)で用いられている手法と同様の手法を用いて無線タグ102,103からタグ応答を取得するよう構成されており、送受信に利用する電波として例えばUHF帯を利用することで数mから10数m先の無線タグを検知することができるよう設定されている。
【0048】
次に、読取器101の送受信アンテナ14から送受信される電波の伝達特性について図2を用いて説明する。図2(a)には送受信アンテナ14からのビームパターンの一例を示す。図2(b)にはアンテナから送信された電波が、空間を伝搬する際の減衰例を示す。
【0049】
送受信アンテナ14は、図2(a)に示すように、正面(0deg)方向に電波を送受信する一般的な指向性アンテナとして構成されている。なお、送受信アンテナ14からの電波は、正面に比べると弱いものの、実際には側方(±90deg)や、後方(180deg)にもある程度の電波が出力される。従って、正面以外の方向であっても、電波の送受信は可能である。
【0050】
また、送受信アンテナ14は、例えば2.15dBiの利得を有し、この送受信アンテナ14を地上高1.5mの位置に配置し、0mの位置(基準点)に配置された1Wの送信電力の送信器を用いて、周波数950MHzの電波を送信すると、図2(b)に示すような受信電力特性が得られる(理論計算値)。
【0051】
ここで、例えば、一般に広く用いられている無線タグの動作受信電力は−20dBm程度である。そこで、−20dBmの電力が必要な無線タグを用いる場合、この図2(b)示すグラフから、無線タグが検出可能な最大距離は15mであることがわかる。
【0052】
これに対し、本実施形態で用いるコマンド受信機104は、受信アンプ53を備えており、かつ、読取器101にタグ応答を返す必要がないため、小さな受信電力でも動作させることができる。例えば、現在広く知られている技術を用いても、コマンド受信機104が−40dBmの電力を検出することはきわめて容易である。
【0053】
従って、コマンド受信機104が読取器101からの読取コマンドを受信・解析できる範囲(コマンド受信機検知エリア(例えば図9参照))は、無線タグ102,103が応答できる範囲に比べではるかに広いといえる(図8(b)に示す例では100m以上の範囲内)。
【0054】
本実施形態では、このような特性を鑑みて、読取器101からの読取コマンドをコマンド受信機104が受信するようにしている。
次に、無線タグ102,103としては、例えばパッシブタイプの無線タグ102やセミパッシブタイプの無線タグ103を採用している。
【0055】
パッシブタイプの無線タグ102では、送受信アンテナ21で受信された読取器101からの電波は、一部が整流回路24に導かれ、電力に変換されて無線タグ102自身の動作電力として利用される。そして、残りの電波は反射型変調器22に導かれ、制御回路23の指示により無線タグを特定するための認識データ(IDや製造番号等、固有の情報)に基づく変調を受け、送受信アンテナ21を通して読取器101に向けて返答される。
【0056】
セミパッシブタイプの無線タグ103においては、基本動作原理はパッシブタイプ102と同一であるが、電源34を備えており、反射型変調器32、制御回路33、およびGPS受信機37に電源を供給しているため、読取器101からの電波はすべて無線タグ103の応答に利用することができる。
【0057】
また、図3に示すように、セミパッシブタイプの無線タグ103においては、制御回路33に速度センサ35および方位センサ36を接続しているので、制御回路33は認識データのほかに無線タグ103を搭載した物体の速度(即ち第1図の例では自転車の速度および進行方向)を無線タグの応答に乗せて読取器101に返答することができる。
【0058】
ここで、パッシブタイプの無線タグ102は、無線タグ102に電源を必要としないため、電池切れの心配もなく、かつ小型軽量、低コストで無線タグ102を製作できる。よって、図1で説明したように歩行者が携帯する用途に特に適する。
【0059】
また、セミパッシブタイプの無線タグ103は変調器や制御回路33の電源34を別途供給するが、必要な電力は非常に少ないため、この無線タグ103を例えば自転車に搭載する際には、自転車のダイナモ発電機を電源34に用いることができる。
【0060】
なお、無線タグ102,103を構成する制御回路23,33には、受信した読取コマンドの内容を解析し、この解析結果に応じてタグ応答を送信するか否かを決定する機能を有する。
【0061】
コマンド受信機104は、電波の送信機能は持たず、読取器101の出す読取コマンドを受信する機能のみ備えている。具体的には、受信アンテナ54で受けた読取コマンドを受信アンプ53で増幅し、復調器52で復調後、コマンド解析部51で読取コマンドの内容を解析する。解析の結果、読取器が周囲に無線タグが存在することを検知していると判明した場合には、例えば液晶カラーディスプレイとして構成された検出結果表示部55にその旨を表示するとともに、例えばスピーカとして構成された警告出力部56から警報音を出力し、コマンド受信機104が搭載された車両の運転者に注意を促す。これにより、車両を運転者は、近くの交差点に無線タグ102,103を持った歩行者や自転車が存在することがわかり、この車両が無線タグ102,103を持った歩行者や自転車と接触する事故を回避することができる。
【0062】
次に、無線タグ検出システム1において、読取器101、無線タグ102,103、およびコマンド受信機104にて実行される処理について順に説明する。
まず、図4は読取器101の制御回路10が実行する読取器処理を示すフローチャートである。読取器処理は、読取器101の電源が投入されている際に繰り返し実行される処理であって、まず、カウンタCを0にセットする(S110)。そして、GROUP_SELECTコマンド(一斉呼出信号)を送信する(S115)。
【0063】
続いて、予め設定された所定時間内に無線タグ102,103からのタグ応答を受信したか否か、およびタグ応答に衝突があったか否かを判定する(S120)。無線タグ102,103からのタグ応答を受信していなければ(S120:No)、SUCCESSコマンドを送信し(S125)、カウンタCをインクリメントする(S160)。
【0064】
また、無線タグ102,103からタグ応答を受信し、衝突がなければ(S120:Yes、衝突なし)、受信したタグ応答に含まれる無線タグ102,103のIDを抽出し、この無線タグ102,103のIDを指定してこの無線タグ102,103からの応答を求めるDATA_READコマンドを送信する(S130)。
【0065】
そして、指定した無線タグ102,103からタグ応答(データ)を受信し(S135)、タグ応答を正常に受信することができたか否かを判定する(S140)。タグ応答を正常に受信することができていれば(S140:Yes)、SUCCESSコマンドを送信し(S145)、カウンタCをインクリメントする(S160)。
【0066】
また、タグ応答を正常に受信することができていなければ(S140:No)、RESENDコマンドを送信し(S150)、カウンタCをインクリメントする(S160)。なお、RESENDコマンドとは、DATA_READコマンドと同様のものであり、RESENDコマンドを受けた無線タグ102,103は、DATA_READコマンドを受けたときと同様の作動をする。ただし、無線タグ102,103の作動については後述する。
【0067】
次に、S120にて無線タグ102,103からタグ応答を受信し、衝突があれば(S120:Yes、衝突あり)、FAILコマンドを送信し(S155)、カウンタCをインクリメントする(S160)。
【0068】
続いて、カウンタCの値が予め設定された規定回数Cmax(Cmaxは例えば10〜数十程度の値)を超えたか否かを判定する(S165)。カウンタCの値が規定回数Cmaxを超えていれば(S165:Yes)、S120の処理に戻る。
【0069】
また、カウンタCの値が規定回数Cmaxを超えていなければ(S165:No)、INITIALIZEコマンドを送信し(S170)、読取器処理を始めから繰り返す。なお、読取器処理にて各コマンドを送信した後は、読取器101は無変調の電波を連続して送信する。この電波は、パッシブタイプの無線タグ102のエネルギー源となるとともに、無線タグが反射型変調器22によりタグ応答を変調する電波としても利用される。
【0070】
次に、図5は無線タグ102(103)の制御回路23(33)が実行する無線タグ処理を示すフローチャートである。
この無線タグ処理は、前述の読取器処理にて送信された各種コマンド(読取コマンド)を受信すると開始される処理であって、まず、読取器101から送信されたコマンドの種別を解析する(S210)。そして、この解析結果に応じて以下の処理を実行する。
【0071】
即ち、GROUP_SELECTコマンドを受信していれば、カウンタCを0にセットし(S215)、少なくともIDを含むタグ応答を送信し(S220)、無線タグ処理を終了する。
【0072】
FAILコマンドを受信していれば、カウンタCが0であるか否かを判定する(S225)。カウンタCが0であれば、乱数を発生させ、乱数の値に応じて0または1を結果値pとして保持する(S230)。なお、このように乱数を発生させる処理としては、例えば、数値が順不同に並べられた乱数表が予め準備されており、乱数表を用いて選択された数値が予め設定された乱数閾値を超えるか否かに基づいて、結果値pとして0または1が出力されるよう構成されていればよい。
【0073】
続いて、乱数の値に応じて保持された結果値pが1であるか否かを判定する(S235)。この結果値pが1であれば(S235:Yes)、カウンタCをインクリメントし(S240)、無線タグ処理を終了する。
【0074】
また、結果値pが0であれば(S235:No)、S220の処理と同様に、少なくともIDを含むタグ応答を送信し(S245)、無線タグ処理を終了する。
次に、S210にてSUCCESSコマンドを受信していれば、カウンタCをディクリメントし(S250)、カウンタCが0以下であるか否かを判定する(S255)。カウンタCが0以下であれば(S255:Yes)、S220の処理と同様に、少なくともIDを含むタグ応答を送信し(S260)、無線タグ処理を終了する。
【0075】
また、カウンタCが0よりも大きければ(S255:No)、そのまま無線タグ処理を終了する。
次に、S210にてDATA_READコマンド(RESENDコマンド)を受信していれば、自身が所持するIDがDATA_READコマンドに含まれているか否かを判定する(S265)。自身が所持するIDがDATA_READコマンドに含まれていれば(S265:Yes)、IDおよび詳細な情報(例えば、速度センサ35や方位センサ36による情報等)を送信し(S270)、無線タグ処理を終了する。
【0076】
また、自身が所持するIDがDATA_READコマンドに含まれていなければ(S265:No)、無線タグ処理を終了する。
なお、S210にてINITIALISEコマンドを受信していれば、保持しているデータを初期化(ここではカウンタCをクリア)して無線タグ処理を終了する。
【0077】
次に、図6はコマンド受信機104のコマンド解析部51が実行する受信機処理を示すフローチャートである。
受信機処理は、コマンド受信機104の電源が投入されたときに起動される処理であって、まず、カウンタCおよびSUCCESSコマンドの検出状態を示す検出フラグFをクリアする。つまり、カウンタCを0にセットするとともに、SUCCESSコマンドの検出状態を示す検出フラグFを0にセットする(S310)。
【0078】
続いて、読取器101からの読取コマンドを受信し解析する処理を実施し(S315)、予め設定された指定時間内に読取器101からの読取コマンドを受信したか否かの判定(S320)、およびGROUP_SELECTコマンドまたはSUCCESSコマンド以外のコマンドを受信したか否かの判定(S325)を実施する。指定時間内に読取器101からの読取コマンドを受信し(S320:Yes)、かつGROUP_SELECTコマンドまたはSUCCESSコマンド以外のコマンドを受信していれば(S325:Yes)、カウンタCをクリアする(S330)。
【0079】
そして、検出フラグFが0(つまり、GROUP_SELECTコマンドまたはSUCCESSコマンド以外のコマンドの検出が初めてである)か否かを判定する(S335)。検出フラグFが0以外(つまり1)であれば(S335:No)、受信したコマンド(読取コマンド)がFAILコマンドであるか否かを判定する(S340)。
【0080】
受信したコマンドがFAILコマンドであれば(S340:Yes)、S315の処理に戻る。また、受信したコマンドがFAILコマンドでなければ(S340:No)、受信したコマンド(例えばDATA_READコマンドに含まれるID)に基づいて検出内容をRAM等のメモリに追加し(S345)、S315の処理に戻る。
【0081】
また、S335にて、検出フラグFが0であれば(S335:Yes)、受信したコマンド(読取コマンド)がFAILコマンドであるか否かを判定する(S350)。受信したコマンドがFAILコマンドであれば(S350:Yes)、例えば、「飛び出しの可能性に注意」等の運転者に注意を促す注意報を出力し(S360)、検出フラグFを1にセットし、S315の処理に戻る。
【0082】
また、受信したコマンドがFAILコマンドでなければ(S350:No)、受信したコマンド(例えばDATA_READコマンドに含まれるID)に基づいて「歩行者がいます」等の警報を出力し(S355)、検出フラグFを1にセットし(S365)、S315の処理に戻る。なお、S360およびS355にて出力される注意報および警報は、警告出力部56を用いて音声を出力するとともに、検出結果表示部55に注意や警告を表すメッセージを表示することにより行われる。
【0083】
また、指定時間内に読取器101からの読取コマンドを受信していない場合(S320:No)、或いは、指定時間内に読取器101からの読取コマンドを受信したとしても、SUCCESSコマンドを受信していれば(S325:No)、カウンタCをインクリメントし(S370)、カウンタCの値(受信試行回数)が予め設定された規定回数Cmax(Cmaxは例えば10〜数十程度の値であって、読取器処理におけるCmaxとは異なる値であってもよい。)を超えたか否かを判定する(S375)。
【0084】
カウンタCの値が規定回数Cmaxを超えていれば(S375:Yes)、カウンタCおよび検出フラグFをクリアし(S380)、S315の処理に戻る。また、カウンタCの値が規定回数Cmaxを超えていなければ(S375:No)、S315の処理に戻る。
【0085】
次に、上記各処理にてやりとりされる信号の例と、読取器101からの読取コマンドを受信したコマンド受信機104がコマンドを解析し、歩行者や自転車の存在を知るための処理の例を示す。図7は読取器処理、無線タグ処理、および受信機処理にて実行される信号のやりとりを示すラダーチャートである。
【0086】
この例では、読取器101、無線タグ102a,102b,103a、コマンド受信機104a,104bにおける信号のやり取りを時間的推移に従って説明している。なお、無線タグ102a,102b,103aには、図7に示すように、READY状態、ID状態、DATA_EX状態の各状態があり、READY状態とは、各コマンドを受信可能な状態を示し、ID状態とは、全ての無線タグ102a,102b,103aが応答する状態を示し、DATA_EX状態とは、IDを指定された特定の無線タグ102a,102b,103aのみが応答する状態を示す。
【0087】
図7に示すラダーチャートにおいては、まず、読取器101はGROUP_SELECTコマンドを送り(S115)、無線タグ102a,102b,103aにIDを返答する準備をするように伝える。これにより、読取器101からの電波が届く範囲にいる無線タグ102a,102b,103aは、自らのIDを含むタグ応答を読取器101に向かって返送する。
【0088】
ここで、図7に示すように複数の無線タグが同時に返答を返した場合には、個々の無線タグからのタグ応答の混信(いわゆるタグ応答の衝突)が発生し、読取器101ではIDを正しく読むことができない(S120)。
【0089】
このようなタグ応答の衝突を検知した読取器101は、FAILコマンドを送信する(S155)。このFAILコマンドを受信した無線タグは、従来技術で知られている、複数読み取り処理を開始する。即ち、複数読取処理は、乱数などを用いて互いの無線タグの応答が重ならないように返答する機会を調整する処理である。なお、このような複数読取処理については、例えば、「Klaus Finkenzeller著 RFIDハンドブック 2001年2月26日発行 日刊工業新聞社 P.145−147」に開示されている。
【0090】
ところで、読取器101が発生したFAILコマンドは、コマンド受信機104にも届いている。そこで、コマンド受信機104は、読取器101がFIALコマンドを発したことを知ることができる。これは、読取器101周辺に複数の無線タグ102,103が存在することを意味しているため、コマンド受信機104は『複数の歩行者或いは自転車が存在する』旨の注意報を発することができる(S360)。
【0091】
この後、読取器101は複数読み取り処理に基づき、周辺に存在する無線タグ102a,102b,103aのIDを順番に読み取ってゆく。例えば102bの無線タグが応答機会を得、自らのIDを返答すると(S245)、読取器101はそのIDを認識し、102bの無線タグに向かってDATA_READコマンドを送信する(S130)。
【0092】
このコマンドには、102b自身のIDを指定する。これにより、DATA_READコマンドはすべての無線タグに届くものの、指定先として102bのIDが記載されているため、102bのみが詳細なデータを返答し、読取器101に伝えることができる。
【0093】
ここで、コマンド受信機104は、DATA_READコマンドを受信し、指定先のIDを解析すると、このコマンドが歩行者が持っている無線タグ102bに向けられたものであるということを知ることができる(ただし、102a,102bが歩行者が持つ無線タグだということは、予めID番号を割り当てる際に取り決めておくものとする。)従って、コマンド受信機104は、『歩行者がいる』というより具体的な情報を伝えることができる(S345)。
【0094】
この後、読取器101は順次102aや103aの無線タグの情報を読み出してゆく。この際、それぞれ102aや103aのIDを指定して、DATA_READコマンドを送信するため、これを受信したコマンド受信機もこれらの歩行者や自転車の存在を順次知ることができる。
【0095】
なお、上記の例では、従来技術の読取コマンドを例にとって説明したため、無線タグ102a,102b,103aはIDを返すのみであるが、例えば図3で説明した無線タグ103のように、速度センサを備えた無線タグの場合には、無線タグ103が、IDに加えて速度情報を返答し、それに対して読取器がDATA_READを送信する際に、IDに加えて速度情報を含めるように読取コマンドで指定すれば、コマンド受信機にはIDと速度、即ち『自転車で時速30km/h』という情報を伝えることができる。これにより、運転者に警告を出す際、より具体的でかつ効果的な警告を発することができる。
【0096】
なお、本実施形態において、読取器処理(図4)は、本発明でいう信号生成手段、送信手段に相当する。
また、無線タグ処理(図5)は、本発明でいう応答手段に相当する。
【0097】
さらに、受信機処理は(図6)は、本発明でいう抽出手段、報知手段(S355,S360)に相当する。
以上のように詳述した無線タグ検出システム1において、読取器101は、無線タグ102,103から送り返されたタグ応答に対応したタグデータを含む読取コマンドを生成し、この読取コマンドを送信する。読取器101から送信された読取コマンドは、無線タグ102,103によりタグ応答を出力する際に用いられるだけでなく、コマンド受信機104がタグデータを取得するためにも用いられる。
【0098】
よって、このような無線タグ検出システム1によれば、新たな周波数帯域を使用することなく、読取器101が無線タグ102,103から情報を読み取る際の電波と、読取器101が受信機に対して情報を送信する際の電波とが互いに干渉しないようにすることができる。
【0099】
また、このような無線タグ検出システム1によれば、無線タグ102,103の検出結果を車両に通知するために読取器101のコストだけが必要となり、車載通信機などの新たな無線機を必要としないので、安価にシステムを構築することができる。また、無線タグ102,103の検知は読取器101の送信コマンドを受信するだけなので、コマンド受信機104を搭載した車両が多数存在した場合でも輻輳の問題は発生しない。
【0100】
また、本実施形態の無線タグ102,103には、上記に説明したように、複数の無線タグ102,103の衝突を検知し、その後個々の無線タグ102,103の内容を読み出す、複数読み取り手順を採用している。つまり、読取器101が送信するコマンドには、無線タグ102,103の衝突を検知した旨が含まれており、コマンド受信機104は読取器101が送信するコマンドを受信し、解析して衝突の有無を検出する。
【0101】
従って、コマンド受信機104は、読取器101からの読取コマンドの受信可能領域(タグ応答エリア)内に無線タグ102,103が存在するか否かを知ることができる。
さらに、無線タグ検出システム1において、読取器101は、読取器処理(図4)にて、送受信アンテナ14等を介して受信したタグ応答からID(認識データ)を抽出し、少なくともこのIDがタグデータとして含まれる読取コマンドを生成する。
【0102】
従って、このような無線タグ検出システム1によれば、コマンド受信機104は少なくとも読取器101が受信した無線タグ102,103のIDを受信することができる。よって、コマンド受信機104は無線タグ102,103の詳細な情報(タグデータに含まれる情報)を認識することができる。
【0103】
また、読取器101は、送受信アンテナ14等を介してタグ応答を受信したか否かを検出することによりタグ応答を送り返した無線タグ102,103の有無を検出し、該検出結果が前記タグデータとして含まれる読取コマンドを生成する。
【0104】
従って、このような無線タグ検出システム1によれば、複数の無線タグ102,103からのタグ応答が衝突し、読取器101により各タグ応答の内容が識別できなかったとしても、コマンド受信機104は無線タグ102,103の有無だけならば確実に検出することができる。
【0105】
さらに、コマンド受信機104は、受信機処理(図6)にて、抽出したタグデータに基づいて、少なくとも無線タグ102,103が存在するか否かの情報をコマンド受信機104の使用者(つまり車両の運転者)に報知する。
【0106】
従って、このような無線タグ検出システム1によれば、無線タグ102,103の有無を使用者に報知することができる。また、例えば、コマンド受信機104により、受信したタグデータに基づいて、コマンド受信機104が搭載された装置の制御(コマンド受信機104の移動速度を抑制する制御等)が実施される場合であっても、コマンド受信機104は少なくとも無線タグ102,103の有無を使用者に対して報知するので、使用者はコマンド受信機104により装置の制御が実施されることを認識することができる。
【0107】
さらに、読取器101は、タグ応答を送り返した無線タグ102,103の有無の検出結果、およびIDが正常に抽出できたか否かの検出結果がタグデータとして含まれる読取コマンドを生成するよう構成され、コマンド受信機104は、タグ応答を送り返した無線タグ102,103が有り、かつIDが正常に抽出できていない旨の抽出結果が抽出手段により得られれば、タグ応答を送り返した無線タグ102,103が複数ある旨を示す第1検知情報をコマンド受信機104の使用者に報知し、タグ応答を送り返した無線タグ102,103があり、かつIDが正常に抽出できた旨の抽出結果が得られれば、IDを含むタグデータの内容を表す第2検知情報をコマンド受信機104の使用者に報知する。
【0108】
従って、このような無線タグ検出システム1によれば、コマンド受信機104は、無線タグ102,103からのタグ応答に衝突が発生したことを読取器101から受信した場合に、何らかの衝突の可能性があるという第1検知情報を使用者に伝え、使用者に危険を予知させる。さらにコマンド受信機104は、無線タグ102,103からのタグ応答に含まれるIDが検知できたことを読取器101から受信した場合に、例えば自転車が存在するなどの詳細な第2検知情報を使用者に伝えることができる。また、使用者に危険に対応する余裕を与え、使用者がより安全に対処できるような警告を発することができる。
【0109】
さらに、無線タグ102,103は、IDとして、少なくとも歩行者により所持されるか、或いは自転車、オートバイ、自動車の何れの車両に搭載されているか(無線タグ102,103が搭載されている車両の種別)を表す搭載情報を送信する。また、読取器101は、無線タグ102,103より受信した搭載情報をタグデータとして含む読取コマンドを生成し、コマンド受信機104は、読取器101から受信した読取コマンドに含まれる搭載情報に基づいて、歩行者、自転車、オートバイ、自動車の存在の有無をコマンド受信機104の使用者に報知する。
【0110】
従って、このような無線タグ検出システム1によれば、読取器101が歩行者、自転車、オートバイ、自動車の何れを検出したかをコマンド受信機104の使用者に報知することができる。
【0111】
また、このような無線タグ検出システム1によれば、交差点などに読取器101を設置しているので、コマンド受信機104を搭載した車両に他の歩行者、自転車、オートバイ、自動車が交差点に接近している旨を示す接近情報を通知することができる。コマンド受信機104は、この接近情報に基づいて使用者に警告するので、交差点等の読取器101が配置された箇所における交通事故を防止することができる。
【0112】
[第2実施形態]
次に、別形態の無線タグ検出システム2について説明する。本実施形態では、第1実施形態の無線タグ検出システム2と異なる箇所のみを詳述し、第1実施形態の無線タグ検出システム1と同様の箇所については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0113】
第2実施形態の無線タグ検出システム2(図示は省略)においては、第1実施形態の無線タグ検出システム1に対して、読取器201の構成、および読取機201、無線タグ102,103、コマンド受信機104にて実行される各種処理が異なる。ここで、図8は第2実施形態の無線タグ検出システム2における読取器201の概略構成を示すブロック図である。
【0114】
本実施形態の読取器201においては、図3で説明した読取器101のパワーアンプ12を可変利得パワーアンプ17に置き換えた。これにより、制御回路10が可変利得パワーアンプ17に対して読取コマンドの出力を変更するための送信パワー制御信号を送信することになる。この結果、読取器201は、読取コマンドの出力を制御することができ、読取コマンドを送信する範囲を制御することができる。
【0115】
以下にこの実例を説明する。なお、第2実施形態における読取器201の送受信アンテナ14においても、図2に示したような電波特性を有するものである。
ここで、第2実施形態において読取器201の電波が到達するエリアを図示すると、例えば図9のようになる。なお図9は、交差点を上方から眺めた様子を示しており、交差点角に読取器201が設置され、図中斜め右上方に向かって読取コマンドを送信している例である。
【0116】
読取器201の制御回路10は、後述する送信エリアRのフラグ値に基づいて、可変利得パワーアンプ17を制御し、送信電力を3段階に切り替える。すると、無線タグ102,103が動作する範囲、即ち無線タグ102,103の応答が可能になるエリア(タグ応答エリア、または受信可能領域)は、201,202,203のように変動する。この際、コマンド受信機104が読取器101の読取コマンドを受信・解析できるエリア(コマンド受信機検知エリア)は、それぞれ、211,212,213のように変動する。
【0117】
この図からわかるように、コマンド受信機104は、無線タグ102,103が応答する範囲よりも広い範囲で読取コマンドを受信することができ、例えば、紙面上方の道路から接近する歩行者や自転車を、紙面左右の道路を走行する車から検知することが可能となる。
【0118】
さらに、読取器201が読取コマンドの出力(送信電力)を制御することにより、無線タグの検知範囲を調節でき、例えばたくさんの人が多く存在する場合には送信電力を弱くして、近傍の歩行者だけを検知し、人が少なくなれば送信電力を強くして、より遠くの歩行者や自転車を検知するような制御が可能となる。
【0119】
次に、第2実施形態における読取器201から送信される読取コマンドと無線タグ102,103によるタグ応答の具体例について説明する。図10(a)は読取コマンドの構成を示す説明図、図10(b)はタグ応答の構成を示す説明図である。
【0120】
本実施形態における読取コマンドは、ヘッダ情報91、読取結果92、読取器設置情報93から構成されている。ヘッダ情報91には、データの先頭であることを示す既知の数列からなるプリアンブルと、E,S,Rの3つのフラグ情報を設けた。この3つのフラグ情報は何れも一桁の整数値である。
【0121】
特にEは、前回の読み取りで無線タグを検出したか否かの無線タグ検出フラグを示し、無線タグ検出フラグとしては、例えば、0:無線タグなし、1:無線タグあり(1つだけ存在、ID読み取り成功)、2:無線タグあり(複数存在、衝突検知)、という意味を定義すればよい。
【0122】
またSは、送信電力を低い状態から高い状態まで変化させる、一連の読み取りを1シーケンスとして数えた際のシーケンス番号であり、Sの値を1,2,3,…Smaxと順に増加させてゆく。なお、予め決めた上限のシーケンス番号Smaxを超えたら再び1から繰り返せばよい。
【0123】
またRは、送信電力を変動させた際のエリア区分を示す。例えば、図9のように送信電力を3段階に制御する場合には、1:送信エリア狭 2:送信エリア中 3:送信エリア広、のように定義すればよい。
【0124】
次に読取コマンドに含まれる読取結果92には、前回までの読み取りで読取器201が認識した無線タグ102,103の詳細情報を保持する。即ち、読取結果92としては、送信エリア毎に、そのエリアで検出した代表的な無線タグの種別(歩行者か自転車かなど)、無線タグの状態(静止しているか移動しているか、或いは未検出のため関係ないか)、他に無線タグがいるか(衝突を検知した場合には、複数の無線タグが存在すると考えるため、他無線タグを『存在』とする)の情報を格納する。
【0125】
また、読取コマンドに含まれる読取器設置情報93には、例えば、読取器が設置されている場所の緯度・経度、読取器201が無線タグ102,103を検出できる最大距離の設計値、送信エリアを制御する場合のエリア分割数(図9の例では3つ)、読取コマンドを送信している方向(例えば北北東:NNWなど)を格納する。
【0126】
以上のコマンドを送信した後は、最後にコマンドが終了した旨を示す終了認識子を送信して送信コマンドを完了する。
このように、読取コマンドの中に、無線タグ102,103の読取結果や読取器設置情報を含ませることにより、コマンド受信機104に無線タグ102,103の存在や位置を通知することが可能となる。
【0127】
次に、無線タグ102,103のタグ応答は、図10(b)に示すように、無線タグ種別、IDと無線タグ状態から構成されており、無線タグ種別は、例えばその無線タグ102,103が歩行者に持たせるものか、自転車に搭載するものか、或いはオートバイに搭載するものかという種別が記載されている。
【0128】
IDはその無線タグ102,103を他の無線タグ102,103と区別するための番号であり、一般的な無線タグ102,103に搭載されているものと同じである。
無線タグ状態は、特に図3で説明したセミパッシブタイプの無線タグ103で用いるものであり、速度センサ35の状態を元に、無線タグが静止しているか移動しているかを通知する。また、制御回路33は、読取コマンドに含まれる読取器201の位置情報と、速度センサ35、方位センサ36、GPS受信機37による位置情報や移動方向の情報に基づいて、無線タグ103が読取器に向かって近づくのか遠ざかるのか、また、速度はどの程度なのか演算し、この演算結果を無線タグ状態として併せて伝えてもよい。
【0129】
次に、無線タグ検出システム2において、読取器201、無線タグ102,103、およびコマンド受信機104は、以下に示すような処理を実行する。
まず、図11は読取器201の制御回路10が実行する読取器処理を示すフローチャートである。
【0130】
本実施形態の読取器処理においては、図10(a)で説明したフラグ(無線タグ検出フラグE、シーケンス番号S、エリア区分R)を初期値に変更し(S410)、変更後の各値をセットして送信し(S415)、無線タグ102,103からのタグ応答を待つ(S420)。
【0131】
無線タグ102,103からのタグ応答を検知した場合には(S420:Yes)、データエラーの有無(タグ応答が正常に受信できたか否か)を判定する(S425)。データエラーが発生していれば(S425:Yes)、衝突が発生したものとして、無線タグ検出フラグEを2(「衝突」)に設定し(S430)、現在の送信エリアRに相当する、他無線タグ102,103がいるか否かの情報を『存在』に設定し(S435)、S415の処理に戻る。
【0132】
一方、S425にてデータエラーが発生していなければ(S425:No)、無線タグ102,103から単独の応答があったものとして、無線タグ検出フラグEを1(「読取成功」)に設定し(S440)、無線タグ102,103から取得したデータを読取結果92のエリアRに対応する部位に書き込み(S445)、S465の処理に移行する。
【0133】
次に、S420の処理にて無線タグ102,103からのタグ応答を検知できなかった場合には(S420:No)、無線タグ検出フラグEを0(「存在無し」)に設定する(S450)。そして、S415における読取コマンドの送信処理がエリア区分Rにおける最初の送信であるか否かを判定する(S455)。なお、この判定においては、図示は省略するが、エリア区分Rが変更されるとリセットされ、S415における送信処理を実行する度にインクリメントされるカウンタ値を参照するようにすればよい。
【0134】
ここで、エリア区分Rにおける最初の送信の場合には、最初の送信で応答がなかったことを意味する。つまり、後述するように、無線タグ102,103は、読取器201から初めて読取コマンドを受信した場合には、必ずタグ応答を返すように設定されているので、最初の送信で応答がなかったことを検出した場合には、エリアR内に無線タグの存在がないことを意味する。
【0135】
従って、S415における送信処理がエリア区分Rにおける最初の送信の場合には(S455:Yes)、読取結果92のエリアRにおける無線タグ検出フラグEを0(「存在無し」)に設定し(S460)、S465に移行する。
【0136】
一方、S455にてエリア区分Rにおける最初の送信でない場合には、一旦無線タグ102,103からのタグ応答が衝突し、2度目以降の読取要求によって、無線タグ102,103からの応答がなかったことを意味する。つまり、後述するように、無線タグ102,103には乱数を使ってタグ応答の衝突を回避する手順を利用するため、S455にてエリア区分Rにおける最初の送信でないと判定された場合には、無線タグ102,103にて発生される乱数の状況によって、存在する無線タグ102,103がすべて応答を止めた状態と考えることができる。
【0137】
ここで、この状態のときに繰り返し読取器201より読取コマンドの送信を行えば、再び無線タグ102,103が応答を返すことが期待できるが、本実施形態では、無線タグ102,103の詳細な認識情報を読み取るよりも、無線タグ102,103が存在するか否かを検出することが重要であるため、無線タグ102,103を高速に検出することを優先する。
【0138】
従って、エリア区分Rにおける最初の送信でない場合には(S455:No)、次のエリア拡大の処理(S465)に移る。なお、この場合もエリア拡大前のエリア区分Rにおける読取結果92の他の無線タグ102,103がいるか否かの部分については『存在』のままになっているため、後述するコマンド受信機104に対して、エリア拡大前のエリア区分Rに無線タグ102,103が存在することは通知することができる。
【0139】
さて、エリア拡大の処理(S465)では、エリア区分Rを1ステップ拡大(Rをインクリメント)し、変更後のエリア区分Rが最大エリアRmaxを超えたか否かを判定する(S470)。変更後のエリア区分Rが最大エリアRmaxを越えていなければ(S470:No)、そのままS415の処理に戻る。
【0140】
一方、変更後のエリア区分Rが最大エリアRmaxを超えていれば(S470:Yes)、一連のシーケンスが完了したため、シーケンス番号Sを更新(Sをインクリメント)し、エリアをリセット(Rを1に設定)する(S475)。続いて、更新されたシーケンス番号Sが最大シーケンス番号Smaxを超えたか否かを判定する(S480)。
【0141】
更新されたシーケンス番号Sが最大シーケンス番号Smaxを超えた場合には(S480:Yes)、シーケンスを1に戻して(S490)、S415の処理に戻る。
また、更新されたシーケンス番号Sが最大シーケンス番号Smaxを超えていない場合には(S480:No)、そのままS415の処理に戻る。
【0142】
次に、図12は第2実施形態の無線タグ102(103)の制御回路23(33)が実行する無線タグ処理を示すフローチャートである。ここでは、読取器201がコマンドとともに送信してくるエリア区分Rを保持するためのエリア変数r、シーケンス番号Sを保持するためのシーケンス変数s、および衝突回避をするためのカウンタcを用いている。
【0143】
この無線タグ処理は、無線タグ102,103が起動すると開始される処理であって、まず、エリア変数r、シーケンス変数s、およびカウンタcを初期値(つまり0)に設定し(S510)、受信待機する(S515)。そして、読取コマンドを受信できると、読取コマンドのヘッダ情報91を取得し、ヘッダ情報91に含まれる無線タグ検出フラグE、エリア区分R、シーケンス番号Sを、それぞれEr、Rr、Srとして制御回路23(33)の内部(記憶手段:例えばフラッシュメモリとして構成)にて保持する(S520)。つまり、ヘッダ情報91に含まれる各フラグの値は、エリア変数rと関連付けて、エリア変数r毎に保持される。
【0144】
続いて、Srの値を、無線タグが内部で保持するsと比較することにより、現在のシーケンスにおける読取コマンドを無線タグ102,103が初めて受信するか否かを判定する(S525)。初めてであるならば(s≠Sr、S525:Yes)、エリア区分Erおよびシーケンス番号Srを記憶し(S530,S535)、カウンタcをクリアして(S540)する。
【0145】
続いて、応答を返し(S545)、S515の処理に戻る。このような処理により、あるシーケンス番号Sにおける読取コマンドを最初に受信した際には、情報を一旦保管した後、タグ応答を必ず返すことができる。
【0146】
一方、このシーケンス番号Sにおける読取コマンドを無線タグ102,103が過去に受信した履歴がある場合には(s=Sr、S525:Yes)、このエリア区分Rにおいてタグ応答を送信すべきか否かを判断する(S550)。この際、保持していたエリアrと、読取コマンドのヘッダに書かれていたエリア区分Rが異なる場合(r≠Rr、S550:No)には、読取器201はこのシーケンスの別のエリア区分Rにおいて、既にこの無線タグ102,103からのタグ応答を受信していることになる。よって、無線タグ102,103は、このエリア区分Rでのタグ応答の送信は不要であるものとして、タグ応答を送信することなくS515の処理に戻る。
【0147】
また、保持していたエリアrと、読取コマンドのヘッダに書かれていたエリアRが異なる場合(r≠Rr、S550:No)には、前回の応答で無線タグの衝突が発生したことを意味するため、図中点線で囲んだ衝突回避の手順に移る。衝突回避の手順においては、まず、読取器201が無線タグ102,103を検知していたかを判断する(S555)。ここでは、無線タグ検出フラグEを参照し、Eが1以上(1または2)であれば読取器201により何れかの無線タグ102,103が検知されたと判断する。
【0148】
読取器201が無線タグ102,103を検知していた場合には(S555:Yes)、読取器201側で複数の無線タグ102,103からのタグ応答が衝突したと判断する。この場合には、まず、カウンタcが0か否かを判断し(S560)、カウンタcが0でない場合は(S560:No)カウンタを加算し(S580)、S515の処理に戻る。
【0149】
また、カウンタcが1の場合には(S560:Yes)、無線タグの状態を検出して乱数頻度を設定し(S565)、0か1かの乱数を発生させる(S570)。
続いて、乱数が1であるか否かを判定する(S575)。乱数が1であれば(S575:Yes))、カウンタを加算し(S580)、タグ応答を送信することなくS515処理に戻る。また、乱数が0の場合には(S575:No)、タグ応答を送信し(S585)、S515の処理に戻る。
【0150】
ここで、S565の処理においては、当該無線タグ103のIDが、例えば自転車に搭載されているものに割り当てられるIDである場合には、歩行者が携帯する無線タグ102に比べて0が出る確率(タグ応答を送信する確率)を増やし、さらに、自転車に搭載された無線タグ103の速度センサが該当する自転車が移動中と判断した場合には、さらに0が出る確率を増やすという処理を加える。これにより、複数の無線タグ102,103が存在する場合、歩行者より自転車、さらには移動中の自転車が、より高い確率で応答するように設定することができる。
【0151】
また、S555にて、読取器201が無線タグ102,103を検知していないことを検出した場合には(S555:No)、衝突回避の処理において、前回の応答時は複数ある無線タグ102,103の全てがたまたま未応答だったと考えられる。そこで、無線タグ102,103はカウンタcを減算(cをディクリメント)し(S590)、カウンタcが0以下であるか否かを判定する(S595)。
【0152】
カウンタcが0以下であれば(S595:Yes)、タグ応答を送信し(613)、S515の処理に戻る。また、カウンタcが0以下でなければ(S595:No)、そのままS515の処理に戻る。
【0153】
次に、図13は第2実施形態のコマンド受信機104のコマンド解析部51が実行する受信機処理を示すフローチャートである。ここでは、受信処理の回数を管理するカウンタCと、前回の受信で無線タグ102,103が検出できているか否かを示す検出フラグGを用いている。
【0154】
受信機処理は、コマンド受信機104の電源が投入されたときに起動される処理であって、まず、カウンタCおよび検出フラグGをクリアする。つまり、カウンタCを0にセットするとともに、検出フラグGを0にセットする(S610)。
【0155】
そして、読取器201からの読取コマンドを受信し解析する処理を実施し(S615)、予め設定された指定時間内に読取器201からの読取コマンドを受信したか否かを判定する(S620)。指定時間内に読取器201からの読取コマンドを受信していなければ(S620:No)、カウンタCをインクリメントし(S625)、カウンタCの値(受信試行回数)が予め設定された規定回数Cmaxを超えたか否かを判定する(S630)。
【0156】
カウンタCの値が規定回数Cmaxを超えていれば(S630:Yes)、カウンタCおよび検出フラグGをクリアし(S635)、S615の処理に戻る。また、カウンタCの値が規定回数Cmaxを超えていなければ(S630:No)、そのままS615の処理に戻る。
【0157】
また、S620にて指定時間内に読取器201からの読取コマンドを受信していれば(S620:Yes)、カウンタCをクリアする(S640)。そして、読取器201の読取結果92に無線タグ102,103の存在が記載されているか否か(具体的な無線タグ検出結果が書き込まれているか、或いは、他無線タグが『存在』になっているか否か)を判定する(S645)。
【0158】
無線タグ102,103の存在が記載されている場合には(S645:Yes)、読取器201の周辺(エリア区分Rが対応する領域)に無線タグ102,103が存在することがわかる。そこで、これがはじめての検出か否かを検出フラグGを使って判定する。つまり、検出フラグGが0であるか否かを判定する(S655)。
【0159】
これがはじめての検出である場合には(G=0、S655:Yes)、S355やS360に示すような警報を出力し(S660)、検出フラグGを1にセットして(S665)、S615の処理に戻る。
【0160】
S655にて、はじめての検出でない場合には(G≠0、S655:No)、検出内容を更新し(S670)、S615の処理に戻る。なお、S670では、検出内容を更新する程度の処理にとどめることにより、繰り返し警報を鳴らし続けることによる煩わしさを解消している。
【0161】
また、S645にて、読取器201による読取結果92に、なんら無線タグ102,103の存在が記載されていない場合には(S645:No)、検出フラグGと検出結果表示部55への検出内容表示とをクリアして(S650)、S615の処理に戻る。
【0162】
引き続き、第2の実施形態の動作をより具体的かつ詳細に説明するために、読取コマンドの送信範囲と無線タグ102,103の存在の状況に応じて実行される、読取器201、無線タグ102,103、コマンド受信機104の情報のやり取りを説明する。
【0163】
図14は、無線タグ102,103の存在状態(存在位置)の一例を示す説明図である。図14(a)では3段階に設定した送信エリアのすべてに無線タグが存在する例を示す。これに対し図14(b)では、読取器201に最も近い送信エリア201内には無線タグが存在しない例を示す。
【0164】
なお、図14(a)、図14(b)の何れにおいても、図示はしていないが、図9に示したように、エリア区分Rが1の時のコマンド受信機検知可能エリアにコマンド受信機104を搭載した2台の車両107a、107cが存在し、同じくエリア区分Rが3の時のコマンド受信機検知可能エリアに1台の車両107bが存在するものとする。
【0165】
次に、本実施形態における上記各処理にてやりとりされる信号の例と、読取器101からの読取コマンドを受信したコマンド受信機104がコマンドを解析し、歩行者や自転車の存在を知るための処理の例を示す。図15は図14(a)の状態において、読取器処理、無線タグ処理、および受信機処理にて実行される信号のやりとりを示すラダーチャートである。
【0166】
まず読取器201は、送信エリア1(エリア区分R=1)に向かって読取コマンドを送信する(S701)。この際、送信エリア1には無線タグ102aしか存在しないため、この無線タグ102aが応答し、読取器201による無線タグ102a検出が成功する(S702)。
【0167】
次に読取器201は送信エリアを広くし、送信エリア2まで届くように設定し(エリア区分R=2)、送信する。この際、無線タグ検出フラグEを1にし、無線タグ102aの存在を知らせるとともに、読取結果92の部分に先ほど検出した無線タグ102aの情報を記載して送信する(S703)。
【0168】
この読取コマンドを受信したコマンド受信機104a、104cは、送信エリア1に無線タグ102a(即ち歩行者)が存在することがわかるため、歩行者が存在する旨の通知を行う。
【0169】
また、送信エリア2に対する読取コマンドに対して、無線タグ102aは応答しないが、送信エリア2に位置する無線タグ102b、103a、102c、102dは、初めて受信信号を受信し、一斉に応答を返すため、読取器201が受信するタグ応答には衝突が発生する(S704)。そこで、読取器201は無線タグ検出フラグE=2として、衝突の発生を通知し、加えて読取結果92に送信エリア2の他の無線タグを『存在』として、次の読取コマンドを送信する(S705)。
【0170】
この読取コマンドを受信したコマンド受信機104は、送信エリア1に歩行者がいて、かつ、送信エリア2には歩行者或いは自転車が複数存在するという情報を得ることができるため、これに併せた警報と注意報を通知する。
【0171】
一方この読取コマンドを受信した無線タグ102b、103a、102c、102dは、図12で説明した衝突回避の処理に従い、乱数で応答・非応答を決定する。この結果、例えば自転車に搭載された無線タグ103aのみが応答したと仮定すると(S706)、読取器201はこの103aの情報を元に読取結果92を更新して、『送信エリア2には、自転車がいる、他の無線タグも存在する』と設定し、送信エリアをさらに広げて読取コマンドを送信する(S707)。
【0172】
この読取コマンドにより、コマンド受信機104a,104cの他、コマンド受信機104bにも読取コマンドが届き、それぞれ警報の結果を更新して通知する。
以下、同様の処理を継続して行い(S708、S709、S710)、シーケンス1の処理が完了する。この後、シーケンス2に移るが、シーケンス2の最初のコマンドには、シーケンス1の最後の検出結果が含まれており(S711)、これを受信したコマンド受信機104は、無線タグ102,103の存在を迅速に知ることができる。
【0173】
なお、図11で説明した読取器201のフローチャートのように、この検出結果は、シーケンス2以降に、無線タグが読取器の送信エリアからすべて遠ざかり、近くに無線タグが存在しなくなればクリアされる。
【0174】
次に、図16は図14(b)の状態において、読取器処理、無線タグ処理、および受信機処理にて実行される信号のやりとりを示すラダーチャートである。
この例では、送信エリア1に無線タグ102,103はいないため、S751における読取コマンドはコマンド受信機104a,104cに届くものの、この読取コマンドに含まれる各フラグの値は、無線タグ検出フラグEが0で、かつ読取結果92の他の無線タグも存在なしである。このため、コマンド受信機104では注意報も警報も通知しない。
【0175】
その後、S753の読取コマンドに対して複数の無線タグ102,103が応答し、タグ応答に衝突が発生した場合、送信エリア2に他の無線タグ102,103が存在する旨をセットして、読取器201は読取コマンドを送信する(S755)。この結果、コマンド受信機104a,104cは、送信エリア2に歩行者或いは自転車が存在する旨を知るため、詳細な特定はできていないが、『複数の歩行者or自転車が存在する』という注意報を通知することができる。
【0176】
この後、無線タグ102,103における衝突回避の処理にて、たまたま無線タグ102b,102cの両方が応答を返さなかった場合、すでに説明したように、読取器201は送信エリア2の送信を完了し、送信エリア3の送信に移る。この例では、結局、送信エリア2に存在するのは歩行者なのか、自転車なのかを正確に検出することはできていないが、複数の無線タグ102,103が存在することはコマンド受信機104にも通知できているので充分である。
【0177】
さらに、この後、次のシーケンスに進んでいった際、無線タグ102,103が依然として読取器201の近傍に位置しておれば、次回以降のシーケンスでは正しく認識できる可能性も上がり、本実施形態が想定している、交通事故の防止の用途に効果的に利用することができる。
【0178】
なお、本実施形態において、読取器処理(図11)は、本発明でいう領域変更手段(S465)に相当する。
また、無線タグ処理(図12)は、本発明でいう移動検出手段(S565)、確率変更手段(S570)に相当する。
【0179】
以上のように詳述した無線タグ検出システム2において、読取器101は、読取器処理(図11)にて、読取コマンドの受信可能領域を順次拡大させ、読取コマンドの受信可能範囲を表すエリア情報をタグデータに含めた読取コマンドを生成する。
【0180】
従って、このような無線タグ検出システム2によれば、コマンド受信機104は、読取コマンドのタグデータからエリア情報を抽出することにより、何れの受信可能領域に無線タグ102,103が存在するのかを検出することができる。
【0181】
また、このような無線タグ検出システム1によれば、受信可能領域を順次拡大させるので、読取器201の近くに存在する無線タグ102,103を早期に検出することができる。このため、例えば、読取器101を交差点等の事故が起こり易い場所に配置し、無線タグ102,103を歩行者や車両とともに移動するようにすれば、コマンド受信機104は無線タグ102,103の情報を交差点に近い順に読取器101を介して受信することができるので、事故が起こり易い場所であっても事故が起こり難くすることができる。
【0182】
また、受信可能領域を順次に広く設定することにより、すべての無線タグ102,103が一斉に応答するときに発生するタグ応答の衝突を回避し易くなり、特に、無線タグ102,103を携帯した歩行者や、無線タグ102,103を搭載した車両が多く存在する場所において、読み取りの効率を高めることができる。
【0183】
なお、本実施形態においては、それぞれの読取コマンドの受信可能領域において、読取器101により無線タグ102,103の存在が検出された場合、および無線タグ102,103が存在しないことが検出された場合に、受信可能領域を次の段階まで広げている。
【0184】
例えば、無線タグ102,103を物流や商品管理に用いる場合には、無線タグ102,103を付けた品物を一つ残らず読み取ることが大切である。しかしながら、無線タグ102,103を使って、歩行者や他の車両の存在を通知し、交通事故防止に役立てる場合、検知結果を通知される他の車の使用者は、周囲に存在する歩行者や車両の台数を正確に知る必要はなく、“いる”か“いない”かの情報が重要である。
【0185】
このため、読取器101はある受信可能領域内に無線タグ102,103を持った歩行者或いは車両が“いる”か“いない”かの情報のみを迅速に検知しながら、読取コマンドの送信範囲を変化させることができる。よって、無線タグ102,103検知のスピードを向上させ、情報の更新を早くすることができる。
【0186】
また特に、本実施形態の読取器201においては、読取コマンドの送信出力を変更させることにより受信可能領域を変更する。
このような無線タグ検出システム1によれば、読取器201からの送信電力を弱くすれば、読取器201近傍に位置する無線タグ102,103だけを検知することができ、送信電力を強くすればより遠くに位置する無線タグ102,103をも検知することができる。
【0187】
また、無線タグ検出システム1において、読取器201は、受信可能領域が変更されつつ読取コマンドが送信され、再び始めの受信可能領域で読取コマンドが送信される前までの一連の送信手続の実施回数を表すシーケンス番号をタグデータとして含む読取コマンドを生成する。そして、無線タグ102,103は、読取コマンドを受けるとタグデータを解析し、タグデータに含まれるシーケンス番号が変更されていることを検出したときのみにタグ応答を送り返す。この場合には、無線タグ102,103は、読取コマンドを受けるとタグデータを解析し、タグデータに含まれるシーケンス番号が前回受信した読取コマンドにおけるシーケンス番号から変更されていることを検出すると、タグデータに含まれるエリア区分Rを記憶するとともに、タグ応答を送り返す。そして、シーケンス番号が前回受信した読取コマンドにおけるシーケンス番号から変更されていない状態で、かつタグデータに含まれるエリア区分Rが記憶したエリア区分Rから変更されていることを検出すると、応答信号を送り返さないようにしている。
【0188】
即ち、読取器101が受信可能領域を順次拡大して読取コマンドを送信すれば、受信可能領域が拡大されるにつれて読取コマンドに応答する無線タグ102,103の個数が増えるので、タグ応答が衝突する確率が高くなる。しかしながら実施形態の構成によれば、読取コマンドに応答した無線タグ102,103は、同じシーケンス番号においてエリア情報が変更された場合には応答しなくなるので、受信可能領域を順次拡大する場合においても、読取コマンドに対するタグ応答の衝突を減らすことができる。
【0189】
よって、このような無線タグ検出システム1によれば、複数の無線タグ102,103の応答が衝突する可能性が減り、検出時間を短くすることができるので、無線タグ102,103からのタグ応答の受信精度を向上させることができる。
【0190】
無線タグ検出システム1において、無線タグ102,103は、シーケンス番号が前回のシーケンス番号から変更されていない状態で、かつタグデータに含まれるエリア情報が記憶手段に格納されたエリア情報から変更されていないことを検出すると、当該無線タグの種別により予め設定された確率で応答信号を送り返すか否かを設定するようしている。
【0191】
このような無線タグ検出システム1によれば、無線タグ102,103の種別によりタグ応答を送り返す優先順位を設定することができる。このため、例えば、歩行者に比べて事故の確率が高い自転車や、バイク等の高速で移動する物体に搭載される無線タグ102,103に高い優先順位を設定(タグ応答を送り返す確率を高く設定)すれば、事故の確率が高いものを優先的に検出することができる。
【0192】
加えて、無線タグ102,103は、無線タグ処理(図12)自身が予め設定された閾値速度以上の速度で移動していること、または無線タグ102,103が読取器101に対して接近していることが検出されると、タグ応答を送り返す確率をより高い確率に変更する。
【0193】
即ち、無線タグ処理(図12)では、閾値速度以上の速度で移動する無線タグ102,103、および読取器101に対して接近している無線タグ102,103を危険なものとしてタグ応答を送り返す優先順位を高く設定する。
【0194】
従って、このような無線タグ検出システム1によれば、閾値速度以上の速度で移動する無線タグ102,103、および読取器101に対して接近している無線タグ102,103を優先的に検出することができるので、無線タグ102,103を所持する者、若しくは無線タグ102,103を搭載した移動物体と、コマンド受信機104が搭載された移動物体とが読取器101近傍で接触することを防止することができる。よって、読取器101を交差点等の事故が起こり易い箇所に配置しておけば、事故が起こり難くすることができる。
【0195】
また、読取器201は、読取器101の設置位置を表す位置情報を読取コマンドに含めて生成する。
従って、このような無線タグ検出システム1によれば、読取器101の読取器処理(図4)にては、読取器101の設置位置を表す位置情報、および読取コマンドの送出範囲を表すエリア情報を読取コマンドに含めて生成することになるので、コマンド受信機104では、無線タグ102,103が存在する領域を特定することができる。
【0196】
[第3実施形態]
図17は本発明の第3の実施形態で用いる読取器301の構造を示す。この読取器は第2の実施形態と同じように、読取コマンドを送信するエリアを制御することを目的としているが、送信電力を変化させる代わりに、マルチビーム送受信アンテナ18を用いることを特徴とする。
【0197】
マルチビーム送受信アンテナ18は、例えば図18に示すような構成を用い、読取器301から近いエリアにはアンテナを下向きに設置し、遠いエリアにはアンテナを地面に平行に近く設置する。
【0198】
ここで、第2実施形態の読取器201では送信パワーを変化させたため、例えば図9で説明すると、無線タグ102,103の応答可能エリアは、送信エリア1では読取器201の位置から送信エリア1の境界まで、送信エリア2では読取器201からエリア2の境界まで、というように、読取器201の極近傍は常に無線タグ102,103による応答可能エリアに含まれていた。
【0199】
これに対し第3実施形態の読取器301では、アンテナの設置角度で読取コマンドに対する応答可能エリアの変更を実現しているため、送信エリア1では読取器301の極近傍から送信エリア1の境界までが応答可能なエリアだが、送信エリア2では送信エリア1の境界から送信エリア2の境界までの、ドーナッツ状(送信エリア1を除く領域)の応答可能エリアを形成することができる。これにより、不要な範囲に電波を送信することを抑制し、無線タグ102,103からのタグ応答の衝突をより確実に抑制できるようになる。
【0200】
なお、図11〜図16で示した読取器、コマンド受信機、無線タグの処理手順は、一旦応答した無線タグはその後エリアが拡大しても応答を返さないというアルゴリズムを取るため、第3実施形態でも共通の処理手順を用いることができる。
【0201】
上記に詳述した読取器301のように、読取器301から下向きに読取コマンドを送信すれば、読取器101の近傍に位置する無線タグ102,103だけを検知することができ、角度を浅くして路面に平行に近く読取コマンドを送信すれば、より遠くに位置する無線タグ102,103をも検知することができる。
【0202】
[第4実施形態]
図19には、本発明の第4実施形態を示す。第1実施形態では無線タグ102,103を歩行者や自転車に持たせることを想定していたが、この実施形態ではこれに加えて、無線タグ105(105a,105b)をオートバイに搭載し、無線タグ106(106a〜106c)を自動車に搭載した。なお、これらの無線タグ105,106はセミパッシブのタイプを用いることができる。
【0203】
また、コマンド受信機104も自動車だけではなく、オートバイに搭載しても良い(コマンド受信機104d)。この実施形態により、自動車やオートバイがお互いの接近を検知し、巻き込み事故や交差点での衝突事故を未然に防ぐような用途に利用することができる。
【0204】
[第5実施形態]
図20に本発明の第5実施形態を示す。この実施形態では、コマンド受信機504に工夫を加えており、GPS受信機57(現在地検出手段)による信号を新たに利用している。この実施形態では、コマンド受信機504は、読取器201が送信する読取コマンドのうち、読取器設置情報93も活用する。
【0205】
すでに図10(a)で説明したように、読取器設置情報93には、読取器201の設置位置と、電波の照射方向が含まれている。例えば、GPS受信機37により自らの車両の位置を判定した結果を設置情報93と併せて読取器201とコマンド受信機504との位置関係を検出すれば(位置関係検出手段)、『自車は、ある交差点より南の道路を北進しており、読取器は自らよりも北に位置し、電波を東に向けて送信している。最大送信距離は30mで、3つの送信エリアに分割している』等の情報を検出できる。この際、読取器201の読取結果92に、『エリア1に歩行者あり』と書かれていたとすると、これらの情報から『前方左手交差点、左側10m以内に歩行者を検知』というように、自らとの相対的な関係を含めて、より具体的に運転者に警告を通知することができる。
【0206】
また、コマンド受信機504と無線タグ103との位置関係、および無線タグ103の移動方向を検出することにより、無線タグ103が交差点の方向(読取器201の方向)に移動していない場合には、警告を行わないようにすることもできる。
【0207】
[その他の実施形態]
なお、本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0208】
例えば、上記実施形態における無線タグ検出システム1では、無線タグ102,103としてパッシブ或いはセミパッシブタイプを用いているが、電源を搭載し、自ら積極的に電波を発信するアクティブタイプの無線タグでも本発明の特徴を実現することができる。
【0209】
また、上記第2実施形態における衝突回避の処理においては、乱数頻度を設定する処理、および乱数を発生させる処理を実施したが、衝突回避のためには他の手順を用いてもよい。ただし、この際には、移動速度が速い物体(つまり、車両に対して危険を及ぼし易いと思われる物体)を優先的に検出するために、歩行者より自転車、さらに移動中の自転車が、より高い優先度でタグ応答を送信するする権利を得るような処理にすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】第1実施形態の無線タグ検出システムの概要を示す説明図である。
【図2】第1実施形態の読取器の送受信アンテナから送受信される電波伝達特性を示す説明図である。
【図3】第1実施形態の読取器、無線タグ、コマンド受信機の概略構成を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態の読取器処理を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の無線タグ処理を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の受信機処理を示すフローチャートである。
【図7】読取器処理、無線タグ処理、および受信機処理にて実行される信号のやりとりを示すラダーチャートである。
【図8】第2実施形態の無線タグ検出システムにおける読取器の概略構成を示すブロック図である。
【図9】交差点角に設置された読取器から図中斜め右上方に向かって読取コマンドを送信する例を示す説明図である。
【図10】第2実施形態における読取器から送信される読取コマンドと無線タグ102,103によるタグ応答の具体例を示す説明図である。
【図11】第2実施形態の読取器処理を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態の無線タグ処理を示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態の受信機処理を示すフローチャートである。
【図14】無線タグの存在状態(存在位置)の一例を示す説明図である。
【図15】図14(a)の状態において、読取器処理、無線タグ処理、および受信機処理にて実行される信号のやりとりを示すラダーチャートである。
【図16】図14(b)の状態において、読取器処理、無線タグ処理、および受信機処理にて実行される信号のやりとりを示すラダーチャートである。
【図17】第3実施形態における読取器の概略構成を示すブロック図である。
【図18】第3実施形態のマルチビーム送受信アンテナの概略構成を示す説明図である。
【図19】第4実施形態の無線タグ検出システムの概要を示す説明図である。
【図20】第5実施形態の無線タグ検出システムにおけるコマンド受信機の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0211】
1…無線タグ検出システム、10…制御回路、11…変調器、12…パワーアンプ、13…サーキュレータ、14…送受信アンテナ、15…受信アンプ、16…復調器、17…可変利得パワーアンプ、18…マルチビーム送受信アンテナ、21…送受信アンテナ、22…反射型変調器、23…制御回路、24…整流回路、32…反射型変調器、33…制御回路、34…電源、35…速度センサ、36…方位センサ、37…GPS受信機、51…コマンド解析部、52…復調器、53…受信アンプ、54…受信アンテナ、55…検出結果表示部、56…警告出力部、57…GPS受信機、91…ヘッダ情報、92…読取結果、93…読取器設置情報、101…読取器、102…無線タグ、103…無線タグ、104…コマンド受信機、105…無線タグ、106…無線タグ、107a…車両、107b…車両、201…読取器、301…読取器、504…コマンド受信機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線により送信された特定の送信信号に対して、少なくとも自らの認識データを含む応答信号を無線によって送り返す応答手段を有する無線タグと、
前記無線タグから送り返された応答信号を受信する受信手段、該受信手段により受信された応答信号に対応したタグデータを含む送信信号を生成する信号生成手段、および該信号生成手段により生成された送信信号を送信する送信手段、を有する読取装置と、
前記読取装置から送信された送信信号を受信し、該送信信号からタグデータを抽出する抽出手段を有する受信装置と、
を備えたことを特徴とする無線タグ検出システム。
【請求項2】
前記読取装置の信号生成手段は、前記受信手段を介して受信した応答信号から前記認識データを抽出し、少なくとも該認識データが前記タグデータとして含まれる送信信号を生成すること
を特徴とする請求項1に記載の無線タグ検出システム。
【請求項3】
前記読取装置の信号生成手段は、前記受信手段を介して応答信号を受信したか否かを検出することにより応答信号を送り返した無線タグの有無を検出し、該検出結果が前記タグデータとして含まれる送信信号を生成すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線タグ検出システム。
【請求項4】
前記受信装置は、前記抽出手段により抽出されたタグデータに基づいて、少なくとも無線タグが存在するか否かの情報を当該受信装置の使用者に報知する報知手段を備えたこと
を特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の無線タグ検出システム。
【請求項5】
前記読取装置の信号生成手段は、前記受信手段を介して応答信号を受信したか否かを検出することにより応答信号を送り返した無線タグの有無を検出するとともに、該応答信号を受信した場合に該応答信号から前記認識データを抽出し、前記認識データが正常に抽出できたか否かを検出し、該検出された前記応答信号を送り返した無線タグの有無の検出結果、および前記認識データが正常に抽出できたか否かの検出結果が前記タグデータとして含まれる送信信号を生成するよう構成され、
前記受信装置の抽出手段は、前記読取装置から受信した送信信号に含まれるタグデータから、前記応答信号を送り返した無線タグの有無の検出結果、および前記認識データが正常に抽出できたか否かの検出結果を抽出し、
前記受信装置の報知手段は、前記応答信号を送り返した無線タグが有り、かつ前記認識データが正常に抽出できていない旨の抽出結果が前記抽出手段により得られれば、前記応答信号を送り返した無線タグが複数ある旨を示す第1検知情報を前記受信装置の使用者に報知し、前記応答信号を送り返した無線タグがあり、かつ前記認識データが正常に抽出できた旨の抽出結果が前記抽出手段により得られれば、前記認識データを含むタグデータの内容を表す第2検知情報を前記受信装置の使用者に報知すること
を特徴とする請求項4に記載の無線タグ検出システム。
【請求項6】
前記無線タグの応答手段は、前記認識データとして、少なくとも歩行者により所持されるか、或いは自転車、オートバイ、自動車の何れの車両に搭載されているかを表す搭載情報を送信し、
前記読取装置の信号生成手段は、前記無線タグより受信した搭載情報を前記タグデータとして含む送信信号を生成し、
前記受信装置の報知手段は、前記読取装置から受信した送信信号に含まれる前記搭載情報に基づいて、歩行者、自転車、オートバイ、自動車の存在の有無を前記受信装置の使用者に報知すること
を特徴とする請求項4または請求項5に記載の無線タグ検出システム。
【請求項7】
前記読取装置は、
前記送信手段により送信される送信信号の受信可能領域を変更する領域変更手段を備え、
前記信号生成手段は、前記範囲変更手段による送信信号の送出範囲を表すエリア情報を前記タグデータに含めた送信信号を生成すること
を特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の無線タグ検出システム。
【請求項8】
前記領域変更手段は、前記送信手段に対して送信信号の送信出力を変更させることにより受信可能領域を変更すること
を特徴とする請求項7に記載の無線タグ検出システム。
【請求項9】
前記領域変更手段は、前記送信手段に対して送信信号の送出角度を変更させることにより受信可能領域を変更すること
を特徴とする請求項7または請求項8に記載の無線タグ検出システム。
【請求項10】
前記領域変更手段は、前記受信可能領域を順次拡大させることを特徴とする請求項7〜請求項9の何れか記載の無線タグ検出システム。
【請求項11】
前記読取装置の信号生成手段は、前記領域変更手段により前記受信可能領域が変更されつつ前記送信手段により送信信号が送信され、再び始めの受信可能領域で前記送信手段により送信信号が送信される前までの一連の送信手続の実施回数を表すシーケンス番号を前記タグデータとして含む送信信号を生成し、
前記無線タグの応答手段は、
前記送信信号を受けると前記タグデータを解析し、前記タグデータに含まれるシーケンス番号が前回のシーケンス番号から変更されていることを検出すると、前記タグデータに含まれるエリア情報を記憶手段に格納するとともに、前記応答信号を送り返し、
前記シーケンス番号が前回のシーケンス番号から変更されていない状態で、かつ前記タグデータに含まれるエリア情報が前記記憶手段に格納されたエリア情報から変更されていることを検出すると、前記応答信号を送り返さないこと
を特徴とする請求項10に記載の無線タグ検出システム。
【請求項12】
前記無線タグの応答手段は、前記シーケンス番号が前回のシーケンス番号から変更されていない状態で、かつ前記タグデータに含まれるエリア情報が前記記憶手段に格納されたエリア情報から変更されていないことを検出すると、当該無線タグの種別により予め設定された確率で前記応答信号を送り返すか否かを設定すること
を特徴とする請求項11に記載の無線タグ検出システム。
【請求項13】
前記無線タグは、
当該無線タグが予め設定された閾値速度以上の速度で移動していること、または当該無線タグが前記読取装置に対して接近していることを検出する移動検出手段と、
前記移動検出手段により当該無線タグが前記閾値速度以上の速度で移動していること、または前記読取装置に対して接近していることが検出されると、前記応答信号を送り返す確率をより高い確率に変更する確率変更手段と、
を備えたことを特徴とする請求項12に記載の無線タグ検出システム。
【請求項14】
前記読取装置の信号生成手段は、少なくとも当該読取装置の設置位置を表す位置情報を前記送信信号に含めて生成すること
を特徴とする請求項7〜請求項13の何れかに記載の無線タグ検出システム。
【請求項15】
前記受信装置は、
当該受信装置の現在地を検出する現在地検出手段と、
前記現在地検出手段により検出された現在地、および前記読取装置から受信した位置情報に基づいて当該受信装置および前記無線タグの位置関係を検出する位置関係検出手段と、
を備えたことを特徴とする請求項14に記載の無線タグ検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−5432(P2008−5432A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175660(P2006−175660)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】