説明

無線データ監視システム

【課題】ネットワークの使用中に使用環境が変化しても、システム管理者がセンサの送信出力の微調整を必要とすることなく最適な電波状況で運用でき、無線ネットワークの安定稼動及び電池の長寿命化を図ることができる無線データ監視システムを提供する。
【解決手段】基地局と、電池で動作し周期的にデータを計測しその計測データを前記基地局に無線送信するセンサと、基地局とセンサの無線通信経路を中継する中継器とを備える無線ネットワークシステムと、基地局と無線或いは有線で接続され計測データを監視する監視操作端末とを備えた無線データ監視システムにおいて、センサは、計測データと、基地局とセンサの送受信に関する情報である無線ネットワーク通信情報とを記録する記憶手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計装システム、環境監視システム等のデータ監視システムにおいて、無線ネットワークを使用した無線データ監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データ監視システムは、PLC(Programmable Logic Controller)等のコントローラとフィールドに配置されるセンサとを有線で接続し、コントローラで管理しているデータを監視操作端末で表示する構成が一般的であった。無線技術の発達により、センサに無線チップを搭載させ、計測したデータを無線で送信し、監視端末で表示するシステムが普及してきた。無線ネットワークシステムを利用したデータ監視システムは、配線レスでシステム構築できることから、様々な用途で使用されるようになってきた。
【0003】
一般的な無線データ監視システムは、基地局と、データを計測し、その計測データを基地局に送信するセンサと、基地局とセンサ間の無線通信経路の中継を行う中継器とを備える。基地局は、基地局に接続されたユーザインタフェース(監視操作端末)からの無線ネットワークの構築要求により、無線ネットワークの構築を行う。無線ネットワークの構築後、センサは、指定された間欠周期で計測データを予め設定された送信出力で基地局に送信する。
【0004】
無線データ監視システムにおいて、無線通信の安定稼動、電池の長寿命化を図るため、センサの送信出力が可変であるシステムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−158710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、無線データ監視システムの運用において、センサと基地局の間(センサと中継器間、基地局と中継器間を含む)に無線環境の悪化を招く障害物が発生した場合、電波状況が悪化する。センサは、予め設定められた送信出力でデータ送信を継続するため、最悪の場合、基地局とセンサ間の通信が途切れて計測データが欠損するという状況が発生する。
【0007】
センサと基地局間(センサと中継器間、基地局と中継器間を含む)の距離が近く、センサが必要以上の送信出力で基地局に計測データの送信をしていた場合、センサは送信出力を変更することなく継続して運用されるため、センサが備える電池の消費量が大きくなり電池の寿命が短くなる。
【0008】
例えば、特許文献1記載の無線データ監視システムは、センサの送信出力が可変であるものの、センサの送信出力はネットワーク接続時の状況で決まるものであり、連続稼動中の使用環境の変化については考慮されていない。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、ネットワークの使用中に使用環境が変化しても、システム管理者がセンサの送信出力の微調整を必要とすることなく最適な電波状況で運用でき、無線ネットワークの安定稼動及び電池の長寿命化を図ることができる無線データ監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明に係る無線データ監視システムは、基地局と、電池で動作し周期的にデータを計測しその計測データを前記基地局に無線送信するセンサと、前記基地局と前記センサの無線通信経路を中継する中継器とを備える無線ネットワークシステムと、前記基地局と無線或いは有線で接続され前記計測データを監視する監視操作端末とを備えた無線データ監視システムにおいて、前記センサは、前記計測データと、前記基地局とセンサの送受信に関する情報である無線ネットワーク通信情報とを記録する記憶手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
特に、無線ネットワーク通信情報として、無線通信の受信感度の履歴を保持するようにし、基地局はセンサから送信されたデータの受信応答に、センサからの送信に対する受信感度を付帯情報として送信することにより、センサは正確な受信感度を取得することが可能となる。また、受信感度の推移変化の判定により送信出力を変更することで、最適な送信出力でデータ監視を継続するようにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ネットワークの使用中に使用環境が変化してもシステム管理者がセンサの送信出力の微調整を必要とすることなく最適な電波状況での運用ができ、安定稼動及び電池の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る無線データ監視システムの一実施形態の全体構成を示す概略図である。
【図2】センサのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】センサの動作を示すフローチャートである。
【図4】センサの計測データ送信及び通信情報格納のステップを示す説明図である。
【図5】センサの通信診断方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の無線データ監視システムの全体構成を示す概略図である。図1に示すように、無線データ監視システムは、データの監視、無線ネットワークの操作を行う監視操作卓11と、無線通信の制御を行う基地局12と、データの計測、計測データの送信及び基地局12から送信される情報を受信するセンサ13と、基地局12とセンサ13の無線通信中継を行う中継器14とで構成される。
【0016】
本実施形態の無線データ監視システムは、例えば、工場内の所定のデータを計測するために利用される。例えば、食品工場や薬品工場内等において、センサ13は製造現場や原料倉庫に配置され、製造現場や原料倉庫の温度、湿度及び埃数等を計測して基地局12へ送信する。監視操作卓11と基地局12はEthernet(登録商標)などの有線で接続されており、事務室や監視室などに設置され、計測データの監視を行う。中継器14は、基地局12とセンサ13との間に配置され、センサ13が基地局12と直接無線通信が不可能な位置にある場合、中継器14を経由して無線通信経路を確保しデータの送信を行う。なお、監視操作卓11は、基地局12と無線接続されてもよい。
【0017】
一般の無線通信を使用したデータ監視システムの運用について説明する。
【0018】
監視者は、監視操作卓11から基地局12に対して無線ネットワークの構築要求を行い、基地局12は無線ネットワークの構築を行う。ネットワークの構築を行うにあたり必要なチャネル、無線通信の送信出力などは監視操作卓11からのネットワーク構築要求で指定するか、予め個々に定義されている。次に、基地局12へ直接接続されるセンサ13及び基地局12と離れた場所に設置されるセンサ13の無線通信経路を中継する中継器14の電源を投入し、センサ13はネットワークに加入後指定された間欠周期でデータを基地局12に対して送信する。
【0019】
図2は、センサ13のハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示すように、センサ13は、センサ13の動作を制御するマイコン21、データを計測する内蔵センサ部22、外付けセンサ等の外部機器との接続を可能にする拡張コネクタ23、データの送信を行う無線チップ24及びアンテナ27、無線ネットワークの送受信に関する情報である無線ネットワーク通信情報(以下、単に「通信情報」と称する)と計測データの蓄積を行う記憶手段としての不揮発性メモリ25、通信情報等の動作環境や計測データを表示するLCD26とを備える。従来、不揮発性メモリ25は、無線通信切断時の計測データを通信復帰後に再収集できるように、計測データを蓄積するために使用されることが一般的であった。ただし、本実施形態では、不揮発性メモリ25は、計測データの蓄積に加え、通信情報を記憶する。通信情報は、基地局12におけるセンサ13の受信感度であり、センサ13に蓄積された受信感度の履歴は、センサ13の送信出力変更のためのデータとして利用される。通信情報としては、受信感度の他に、電波強度や通信品質情報を用いてもよい。
【0020】
次に、センサ13のメインフローについて説明する。図3は、センサ13の動作を示すフローチャートである。図3に示すように、センサ13は初回起動させると使用チャネルや無線送信出力などの無線通信に必要なパラメータのほか、予め設定された最低受信感度、推奨受信感度、受信感度範囲を不揮発性メモリ25から取得する(動作パラメータの読出し31)。最低受信感度は、基地局12がセンサ13からデータを受信するのに最低限必要な受信感度である。推奨受信感度は、最低受信感度よりも高く、基地局12がセンサからデータを受信するのに最適な受信感度である。受信感度範囲(許容範囲)は、推奨受信感度の許容範囲であり、基地局12の受信感度が許容範囲外になるとセンサ12は送信出力を増減する。
【0021】
ネットワーク通信情報のデータ初期値は、ユーザごとに設定できるインタフェースにより予め入力される。センサ13は、取得したパラメータに従い無線チップの初期化を行い(ステップ32)、無線ネットワークへの加入に成功すると(ステップ33)、間欠周期でループするデータ送信に関する一連の処理に移行する。データ送信に関する一連の処理とは、センサ13が基地局12に計測データを送信(ステップ34)し、データ送信が正常に行われた場合には、基地局12から送信される通信情報(受信感度)を不揮発性メモリ25に格納し、その通信情報を基に通信診断を行う(ステップ36)処理を指す。データ送信に異常が発生した場合、一度無線ネットワークから離脱し(ステップ38)、動作パラメータの変更を行う(ステップ39)。このときの変更内容は送信出力の最大値設定となる。動作パラメータ変更後は、再度動作パラメータの読出し31、無線チップの初期化32を行い、最大送信出力でネットワークへ再加入33を行い、ネットワークへの復帰確立の可能性を少しでも高くする。
【0022】
図4はデータ送信34から通信情報格納35までのステップを示すフローである。図4に示すように、センサ13は通常、休眠状態(スリープモード)にあり、電池の消耗を抑えている(ステップ401)。予め設定されているデータ計測タイミングになると、センサ13は起動状態となり(ステップ402)、内蔵センサ22または拡張コネクタ23に接続された外付けセンサからデータ計測・保存を実施し(ステップ403)、基地局12に対しデータパケットの送信を行う(ステップ404)。基地局12は、センサ13から送信されたデータパケットを受信すると(ステップ405)、無線チップ24でデータパケット受信時の受信感度を取得する(ステップ406)。受信感度を取得後、基地局12は、その受信感度を付帯情報として、センサ13に対するデータパケット受信に対する応答パケットを送信する(ステップ407)。センサ13は応答パケットを受信し(ステップ408)、応答パケット受信時の受信感度取得を行う(ステップ409)。センサ13は、応答パケットに含まれる受信感度を基地局12の受信感度、応答パケット受信時の受信感度をセンサ13の受信感度として不揮発性メモリ25に保存する。
【0023】
中継器14を経由してセンサ13から基地局12に計測データを送信する場合は、中継器14の受信感度が通信情報として必要になる。データ送信では送信先が基地局12であり、中継器14はパケットを中継するのみで、応答パケットを作成することが無い。このためセンサ13は中継器14に対するパケット送信、例えば、時刻あわせ等で中継器14の受信感度を受信し蓄積する。
【0024】
図4の処理によってセンサ13に蓄積された基地局12の受信感度の履歴は、通信診断(図3のステップ36)で使用される。図5は、基地局12とセンサ13間の通信診断方法を示すフローチャートである。
【0025】
図5に示すように、センサ13は、先ず、最新の基地局受信感度と最低受信感度とを比較する(ステップ51)。最新の基地局受信感度が最低受信感度より低い場合(RSSI≦LOW)、所定時間経過後に再度、最新の基地局受信感度と最低受信感度とを比較し、基地局受信感度が連続して低いかチェックする(ステップ52)。最新の基地局受信感度が、最初の1回だけ最低受信感度よりも低い場合(ステップ52→NO)、受信感度の低下が一過性のものであったとして判定結果を見送り、正常時の判定処理へ移行する。ただし、最新の基地局受信感度が連続して低い場合(ステップ52→YES)は、通信環境が悪化したと判断し、要送信出力アップの判定をする(ステップ54)。この際、連続何回で通信環境の悪化と判断するかは固定とせず、適宜設定できるようにしておくことが望ましい。
【0026】
最新の基地局受信感度が最低受信感度よりも高い場合、基地局12の受信感度の過去一定期間の平均値を求め、その平均値と推奨受信感度とを比較する(ステップ53)。基地局12の受信感度の平均値が推奨受信感度より低い場合(ステップ53→AVE≦RECOMMEND)、センサ13の送信出力が低く、基地局12との無線通信が途切れる可能性があるので、送信出力をアップさせる判定をする(ステップ54)。基地局12の受信感度の平均値が推奨受信感度の受信感度範囲の間である場合(ステップ53→RECOMMEND<AVE≦RECOMMEND+BAND)、センサ13は基地局12に最適な送信出力で無線送信していることを示し、現状の送信出力を維持させる判定をする(ステップ55)。基地局12の受信感度の平均値が推奨受信感度の受信感度範囲に収まらず高い場合(ステップ53→RECOMMEND+BAND<AVE)、センサ13は必要以上の出力で無線送信を行っていることを示しており、センサ13の送信出力をダウンさせる判定をする(ステップ56)。
【0027】
図3に戻り、通信診断の判定結果により、センサ13の送信出力を現状維持すると判断された場合、次回の計測タイミングまでスリープする(ステップ37)。
【0028】
他方、通信診断の判定結果により、センサ13の送信出力が変更と判断された場合、センサ13はネットワークからの離脱を実施し(ステップ38)、動作パラメータ変更を行う(ステップ39)。
【0029】
動作パラメータの変更について、センサ13の変更送信出力値は、センサ13の受信感度と基地局12の受信感度の平均から算出する。また、基地局12及び中継器14はAC電源駆動であることから電池寿命の心配が無いため、通常最大出力で無線送信を実施している。このため、センサ13の受信感度の平均値は、最大送信出力時の受信感度となり、「基地局の受信感度平均:センサの受信感度平均=現在のセンサの送信出力:最大出力」の式を得ることができる。この対比より、例えば、受信感度を1dBm変化させるために必要なセンサ13の送信出力を求め、理想の受信感度を得るための送信出力を算出し、動作パラメータを変更する。なお、算出した結果が送信出力の設定可能範囲を超える場合は、それぞれ設定可能な最低または最高送信出力を設定する。
【0030】
本実施形態の無線データ監視システムによれば、無線ネットワークの使用中に、基地局12の受信感度等の使用環境に変化が生じても、基地局12がセンサ13の通信環境状態をセンサ13に送信し、基地局12からの通信情報をセンサ13が記憶することにより、センサ13に保持された通信情報を基に、監視者が操作することなくセンサ13の送信出力を最適な出力値に保持することができる。
【0031】
特に、基地局12の受信感度が低いと判断した場合はセンサ13の送信出力を上昇させて、無線データ通信のデータ欠損を防止することができる。基地局12の受信感度が必要以上に高いと判断した場合は、センサ13の送信出力を低減し、センサ13が備える電池の消費電力を抑え、電池の長寿命化を図ることができる。
【0032】
以上、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定される。
【符号の説明】
【0033】
11 現場操作卓
12 基地局
13 センサ
14 中継器
25 不揮発性メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、電池で動作し周期的にデータを計測しその計測データを前記基地局に無線送信するセンサと、前記基地局と前記センサの無線通信経路を中継する中継器とを備える無線ネットワークシステムと、
前記基地局と無線或いは有線で接続され前記計測データを監視する監視操作端末とを備えた無線データ監視システムにおいて、
前記センサは、前記計測データと、前記基地局とセンサの送受信に関する情報である無線ネットワーク通信情報とを記録する記憶手段を備えたことを特徴とする無線データ監視システム。
【請求項2】
請求項1記載の無線データ監視システムにおいて、前記無線ネットワーク通信情報は、前記基地局の受信感度であることを特徴とする無線データ監視システム。
【請求項3】
請求項2記載の無線データ監視システムにおいて、前記基地局は、前記計測データを受信する毎にその時の受信感度を前記センサに送信し、前記センサは、前記受信感度を逐次記憶することを特徴とする無線データ監視システム。
【請求項4】
請求項3記載の無線データ監視システムにおいて、前記センサは、前記受信感度に基づいて無線送信の送信出力を調整することを特徴とする無線データ監視システム。
【請求項5】
請求項4記載の無線データ監視システムにおいて、前記センサは、センサに予め設定された受信感度よりも前記基地局の受信感度が低いと判断した場合、前記センサは送信出力を上げ、他方、センサに予め設定された受信感度よりも前記基地局の受信感度が必要以上に良好であると判断した場合、前記センサは送信出力を下げることを特徴とする無線データ監視システム。
【請求項6】
請求項5記載の無線データ監視システムにおいて、前記センサには、基地局がセンサと無線通信を行うのに適した受信感度範囲が予め設定され、前記基地局から間欠的に送信された受信感度の平均値と前記受信感度とを比較し、前記平均値が前記受信感度範囲を超えて低い場合は、前記センサの送信出力を上げ、前記平均値が前記受信感度範囲内に収まるときは、前記センサの送信出力を変更せず、前記平均値が前記受信感度範囲を超えて高い場合には、前記センサの送信出力を下げることを特徴とする無線データ監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−19167(P2011−19167A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163730(P2009−163730)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】