説明

無線装置

【課題】 測位地点の周辺環境の影響やGPS衛星の配置の影響等によって、測位座標点が、真の座標点に対してオフセット値を有する場合であっても、また、無線装置が、移動状態である場合であっても、十分な測位精度で当該無線装置の存在位置を決定する。
【解決手段】 本発明に係る無線装置30は、位置情報を取得する位置情報取得部31と、取得した位置情報についての推定誤差値を取得する推定誤差値取得部33と、無線装置の移動状態を決定する移動状態決定部34と、取得された推定誤差値と決定された移動状態とに基づいて、無線装置の存在位置を決定する位置決定部36とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ネットワークを介して通信可能な無線装置に関する。特に、本発明は、自機の位置情報を取得する機能を具備する無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS(Global Positioning System)測位機能を用いて、自機の位置情報を取得するように構成されている無線装置が知られている。
【0003】
しかしながら、従来の無線装置では、測位地点の周辺環境の影響によっては、十分な測位精度の位置情報を取得することができず、十分な測位精度で当該無線装置の存在位置を知ることができない場合があるという問題点があった。
【0004】
かかる問題点を解決するために、測位機能を用いて取得した位置情報(以下、測位座標点)に対して平均化処理を施すことによって当該無線装置の存在位置を決定する手法が考案されている。
【特許文献1】特開2003-121528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる手法では、測位地点の周辺環境の影響やGPS衛星の配置の影響等によって、例えば、測位座標点が、真の座標点に対してオフセット値を有する場合、測位座標点に対して平均化処理を施した結果は、真の座標点には近似しないという問題点があった。
【0006】
また、無線装置が、移動状態である場合は、現在の座標点と過去の座標点とを平均した結果に基づいて当該無線装置の存在位置を決定すると、測位精度が著しく低下するという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、測位地点の周辺環境の影響やGPS衛星の配置の影響等によって、測位座標点が、真の座標点に対してオフセット値を有する場合であっても、また、無線装置が、移動状態である場合であっても、十分な測位精度で当該無線装置の存在位置を決定することができる無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴は、無線ネットワークを介して通信可能な無線装置であって、前記無線装置の位置情報を取得するように構成されている位置情報取得部と、取得した前記位置情報についての推定誤差値を取得するように構成されている推定誤差値取得部と、前記無線装置の移動状態を決定するように構成されている移動状態決定部と、取得された前記推定誤差値と決定された前記移動状態とに基づいて、前記無線装置の存在位置を決定するように構成されている位置決定部とを具備することを要旨とする。
【0009】
かかる発明によれば、無線装置の移動状態とGPS測位機能等によって取得した位置情報(測位座標点)についての推定誤差値とに基づいて当該無線装置の存在位置を決定するため、測位地点の周辺環境の影響やGPS衛星の配置の影響や無線装置の移動状態等を考慮して、十分な測位精度で当該無線装置の存在位置を知ることができる。
【0010】
本発明の第1の特徴において、前記移動状態決定部によって前記無線装置の移動状態が高速移動状態であると判断された場合で、かつ、取得された推定誤差値が高速用誤差閾値よりも小さい場合に、前記位置決定部は、該推定誤差値を取得した位置情報に基づいて、該無線装置の位置を決定するように構成されていてもよい。
【0011】
本発明の第1の特徴において、前記移動状態決定部によって前記無線装置の移動状態が中速移動状態であると判断された場合で、かつ、所定期間内に取得された推定誤差値の最小値が中速用誤差閾値よりも小さい場合に、前記位置決定部は、該推定誤差値の最小値を取得した位置情報に基づいて、該無線装置の位置を決定するように構成されていてもよい。
【0012】
本発明の第1の特徴において、前記無線装置の移動距離を累積するように構成されている移動距離累積部を具備し、前記移動状態決定部によって前記無線装置の移動状態が低速移動状態であると判断された場合で、累積された移動距離が移動距離閾値よりも大きい場合で、かつ、所定期間内に取得された推定誤差値の最小値が低速用誤差閾値よりも小さい場合に、前記位置決定部は、該推定誤差値の最小値を取得した位置情報に基づいて、該無線装置の位置を決定するように構成されていてもよい。
【0013】
本発明の第1の特徴において、前記移動状態決定部によって前記無線装置の移動状態が静止状態であると判断された場合で、かつ、同一推定誤差ランク内において推定誤差値の最小値が更新された回数が第1閾値に達した場合、前記位置決定部は、最後に更新された推定誤差値の最小値を取得した位置情報に基づいて、該無線装置の位置を決定するように構成されていてもよい。
【0014】
本発明の第1の特徴において、取得された推定誤差値が属する推定誤差ランクが、前回取得された推定誤差値が属する推定誤差ランクよりも高い場合、前記推定誤差値の最小値が更新された回数は、リセットされるように構成されていてもよい。
【0015】
本発明の第1の特徴において、前記移動状態決定部によって前記無線装置の移動状態が静止状態であると判断された場合で、かつ、推定誤差値の最小値が更新されなかった回数が第2閾値に達した場合、前記位置決定部は、推定誤差値の最小値を取得した位置情報に基づいて、該無線装置の位置を決定するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、測位地点の周辺環境の影響やGPS衛星の配置の影響等によって、測位座標点が、真の座標点に対してオフセット値を有する場合であっても、また、無線装置が、移動状態である場合であっても、十分な測位精度で当該無線装置の存在位置決定することができる無線装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(本発明の第1の実施形態に係る無線装置の構成)
図1乃至図3を参照して、本発明の第1の実施形態に係る無線装置30の構成について説明する。本実施形態に係る無線装置30は、無線ネットワークを介して通信可能な装置であって、例えば、GPS測位機能を搭載した携帯通信端末や車両に搭載されるGPS受信装置等が該当する。
【0018】
図1に、本実施形態に係る無線装置30の一例として、WCDMA方式の携帯通信端末30Aのハードウエア構成を示す。かかる携帯通信端末30Aは、アンテナ1、2と、WCDMA RF回路3と、WCDMAベースバンド回路4と、CPU5と、GPS RF回路6と、時計7と、LCD8と、キーパッド9と、スピーカ10と、マイク11とを具備している。
【0019】
ここで、アンテナ1で受信された信号は、WCDMA RF回路3で増幅・選択されて、WCDMAベースバンド回路4に入力される。その後、かかる信号は、WCDMAベースバンド回路4で復調されて、CPU5に送信される。
【0020】
また、GPS RF回路(GPSモジュール)6は、アンテナ2によって受信されたGPS衛星からの信号を増幅・解析して、携帯通信端末30Aの位置情報としてCPU5に送信するように構成されている。
【0021】
CPU5は、キーパッド9を介したユーザ入力や時計7からの時刻情報に従って、携帯通信端末30Aの位置情報を取得するようにGPS RF回路6に指示し、GPS RF回路6によって取得された携帯通信端末30Aの位置情報をLCD8に表示するように構成されている。
【0022】
CPU5は、携帯通信端末30Aの位置情報をネットワーク側に通知する必要がある場合、GPS RF回路6によって取得された携帯通信端末30Aの位置情報を、WCDMAベースバンド回路4とWCDMA RF回路3とアンテナ1とを介して基地局に通知するように構成されている。
【0023】
次に、図2に、本実施形態に係る無線装置30の機能ブロックを示す。具体的には、図2に示すように、本実施形態に係る無線装置30は、位置情報取得部31と、位置情報記憶部32と、推定誤差値取得部33と、移動状態決定部34と、移動距離累積部35と、位置決定部36とを具備している。
【0024】
さらに、位置情報取得部31と、移動状態決定部32と、推定誤差値取得部33と、移動距離累積部35は、図示していないGPS測位機能部に接続されている。
【0025】
位置情報取得部31は、GPS測位機能等の測位機能を用いて無線装置30の位置情報を取得するように構成されている。
【0026】
位置情報記憶部32は、位置情報取得部31によって取得された無線装置30の位置情報を記憶するように構成されている。例えば、位置情報記憶部32は、所定期間が経過するまでの間、過去に取得された無線装置30の位置情報を記憶しておくように構成されていてもよい。
【0027】
推定誤差値取得部33は、位置情報取得部31によって取得された無線装置30の位置情報についての推定誤差値を取得するように構成されている。
【0028】
ここで、図3を参照して、推定誤差値について説明する。本明細書では、かかる推定誤差値を用いて測位精度を表現するものとする。
【0029】
推定誤差値は、測位座標点が、真の座標点(無線装置30がGPS測位機能を用いて無線装置30の位置情報を実際に取得した位置を示す座標点)から、統計的にどの程度離れているかについて表す値である。すなわち、図3に示すように、真の座標点は、例えば、標準正規分布に従うとした場合、0.68や0.95等の確率で、測位座標点を中心として推定誤差値を半径とする円内に存在すると推定される。
【0030】
この結果、推定誤差値が小さいほど、位置情報取得部31によって取得された無線装置30の位置情報(測位座標点)が真の座標点に近いと推定される。
【0031】
また、推定誤差値取得部33は、所定期間が経過するまでの間、過去に取得された推定誤差値を記憶しておくように構成されていてもよい。
【0032】
移動状態決定部34は、無線装置30の移動状態を決定するように構成されている。具体的には、移動状態決定部34は、GPS衛星から取得した無線装置30の移動速度情報に基づいて、無線装置30の移動状態が、「高速移動状態(例えば、15m/sec以上)」、「中速移動状態(例えば、1m/sec以上15m/sec未満)」、「低速移動状態(例えば、0.1m/sec以上1m/sec未満)」、「静止状態(例えば、0.1m/sec未満)」のいずれに該当するかについて決定するように構成されている。
【0033】
移動距離累積部35は、無線装置30の移動距離を累積するように構成されている。例えば、移動距離累積部35は、リセットするように指示されるまで、又は、所定期間が経過するまで、無線装置30の移動距離を累積するように構成されている。
【0034】
位置決定部36は、推定誤差値取得部33によって取得された推定誤差値と、移動状態決定部34によって決定された無線装置30の移動状態とに基づいて、無線装置30の存在位置を決定するように構成されている。具体的な無線装置30の存在位置の決定方法については、後述する。
【0035】
(本発明の第1の実施形態に係る無線装置の動作)
図4乃至図16を参照して、本実施形態に係る無線装置30の存在位置を決定する動作について説明する。
【0036】
図4に示すように、ステップS101において、移動状態決定部34は、GPS測位機能部から無線装置30の移動速度情報を取得し、取得した無線装置30の移動速度情報に基づいて無線装置30の移動状態を決定する。
【0037】
一方、ステップS102において、位置情報取得部31は、GPS測位機能部から無線装置30の位置情報(測位座標点)を取得し、ステップS103において、推定誤差値取得部33は、無線装置30の位置情報についての推定誤差値を取得する。
【0038】
ステップS104において、位置決定部36は、無線装置30の移動状態が静止状態であるか否かについて判定する。
【0039】
位置決定部36は、無線装置30の移動状態が静止状態でないと判定した場合、ステップS105において、移動速度別の位置決定処理を行う。一方、位置決定部36は、無線装置30の移動状態が静止状態であると判定した場合、ステップS106において、推定誤差値別の位置決定処理を行う。
【0040】
以下、図5乃至図10を参照して、ステップ105において行われる移動速度別の位置決定処理について詳述し、図11乃至図16を参照して、ステップ106において行われる推定誤差値別の位置決定処理について詳述する。
【0041】
第1に、図5及び図6を参照して、無線装置30の移動状態が「低速移動状態」である場合の位置決定処理について説明する。
【0042】
図5に示すように、ステップS201において、位置決定部36は、今回の測位で得られた座標点(無線装置30の位置情報)Cについての推定誤差値Cと、保持している最小推定誤差値Yとを比較する。
【0043】
推定誤差値Cが、最小推定誤差値Yよりも小さい場合、ステップS202において、位置決定部36は、推定誤差値Cを最小推定誤差値Yに代入する。一方、それ以外の場合、本動作はステップS203に進む。
【0044】
ステップS203において、位置決定部36は、移動距離累積部35によって蓄積されている累積移動距離と、移動距離閾値N31とを比較する。累積移動距離が、移動距離閾値N31よりも大きい場合、本動作は、ステップS204に進み、それ以外の場合、本動作は、無線装置30の存在位置を決定することなく終了し、図4の開始状態に戻る。
【0045】
ステップS204において、位置決定部36は、保持している最小推定誤差値Yと、低速用誤差閾値N32とを比較する。最小推定誤差値Yが、低速用誤差閾値N32よりも小さい場合、本動作は、ステップS205に進み、それ以外の場合、本動作は、無線装置30の存在位置を決定することなく終了し、図4の開始状態に戻る。
【0046】
ステップS205において、位置決定部36は、保持している最小推定誤差値Yを取得した位置情報(測位座標点)に基づいて、無線装置30の存在位置を決定する。
【0047】
上述のように、移動状態決定部34によって無線装置30の移動状態が「低速移動状態」であると判断された場合で、累積された移動距離(累積移動距離)が移動距離閾値N31よりも大きい場合で、かつ、所定期間内に取得された推定誤差値の最小値(最小推定誤差値Y)が低速用誤差閾値N32よりも小さい場合に、位置決定部36は、当該最小推定誤差値Yを取得した位置情報(測位座標点)に基づいて、無線装置30の存在位置を決定するように構成されている。
【0048】
図6に示すように、「低速移動状態」における無線装置30は、現在の測位座標点Cだけでなく、過去の測位座標点A、Bについても考慮した上で、無線装置30の存在位置を決定するように構成されている。
【0049】
また、図6に示すように、「低速移動状態」における無線装置30は、無線装置30の存在位置を決定する際に参照する測位座標点の数を増やすことができる。
【0050】
第2に、図7及び図8を参照して、無線装置30の移動状態が「中速移動状態」である場合の位置決定処理について説明する。
【0051】
図7に示すように、ステップS301において、位置決定部36は、今回の測位で得られた座標点(無線装置30の位置情報)Cについての推定誤差値Cと、現地点の最小推定誤差値Yとを比較する。
【0052】
推定誤差値Cが、最小推定誤差値Yよりも小さい場合、ステップS302において、位置決定部36は、推定誤差値Cを最小推定誤差値Yに代入する。一方、それ以外の場合、本動作はステップS303に進む。
【0053】
ステップS303において、位置決定部36は、保持している最小推定誤差値Yと、中速用誤差閾値N4とを比較する。最小推定誤差値Yが、中速用誤差閾値N4よりも小さい場合、本動作は、ステップS304に進み、それ以外の場合、本動作は、無線装置30の存在位置を決定することなく終了し、図4の開始状態に戻る。
【0054】
ステップS304において、位置決定部36は、保持している最小推定誤差値Yを取得した位置情報(測位座標点)に基づいて、無線装置30の存在位置を決定する。
【0055】
上述のように、移動状態決定部34によって無線装置30の移動状態が「中速移動状態」であると判断された場合で、かつ、所定期間内に取得された推定誤差値の最小値(最小推定誤差値Y)が中速用誤差閾値N4よりも小さい場合に、位置決定部36は、当該最小推定誤差値Yを取得した位置情報(測位座標点)に基づいて、無線装置30の存在位置を決定するように構成されている。
【0056】
図8に示すように、「中速移動状態」における無線装置30は、現在の測位座標点Cだけでなく、過去の測位座標点Bについても考慮した上で、無線装置30の存在位置を決定するように構成されている。
【0057】
第3に、図9及び図10を参照して、無線装置30の移動状態が「高速移動状態」である場合の位置決定処理について説明する。
【0058】
図9に示すように、ステップS401において、位置決定部36は、今回の測位で得られた座標点(無線装置30の位置情報)Cについての推定誤差値Cと、高速用誤差閾値N5とを比較する。最小推定誤差値Yが、高速用誤差閾値N5よりも小さい場合、ステップS402において、位置決定部36は、今回の測位で得られた座標点Cに基づいて、無線装置30の存在位置を決定する。
【0059】
一方、それ以外の場合、ステップS403において、位置決定部36は、推定誤差値Cを最小推定誤差値Yに代入し、本動作は、無線装置30の存在位置を決定することなく終了し、図4の開始状態に戻る。
【0060】
上述のように、移動状態決定部34によって無線装置30の移動状態が「高速移動状態」であると判断された場合で、かつ、取得された推定誤差値が高速用誤差閾値N5よりも小さい場合に、位置決定部36は、当該推定誤差値を取得した位置情報に基づいて、無線装置30の存在位置を決定するように構成されている。
【0061】
図10に示すように、「高速移動状態」における無線装置30は、過去の測位座標点については考慮せず、現在の測位座標点Cだけを考慮した上で、無線装置30の存在位置を決定するように構成されている。
【0062】
第4に、図11乃至図14を参照して、推定誤差値別の位置決定処理について説明する。
【0063】
図11に示すように、ステップS501において、位置決定部36は、今回の測位で得られた座標点(無線装置30の位置情報)Cについての推定誤差値Cが、過去の推定誤差値が属する精度ランク(推定誤差ランク)よりも高い(推定誤差値が小さい)推定誤差ランクに属するか否かについて判定する。「YES」の場合、本動作はステップS502に進み、「NO」の場合、本動作はステップS503に進む。
【0064】
ここで、精度ランクは、取得された推定誤差値を、その大きさによって分類するために用いられるものである。例えば、推定誤差値が10m未満の場合、精度ランクは「Aランク」であり、推定誤差値が10m以上50m未満の場合、精度ランクは「Bランク」であり、推定誤差値が50m以上の場合、精度ランクは「Cランク」であるものとする。
【0065】
ステップS502において、位置決定部36は、保持している最小推定誤差値Yの更新回数をリセットする。
【0066】
ステップS503において、位置決定部36は、推定誤差値Cと、保持している最小推定誤差値Yとを比較する。推定誤差値Cが、最小推定誤差値Yよりも小さい場合、本動作はステップS504に進み、それ以外の場合、本動作はステップS508に進む。
【0067】
ステップS504において、位置決定部36は、推定誤差値Cを最小推定誤差値Yに代入することによって最小推定誤差値Yを更新する。
【0068】
ステップS505において、位置決定部36は、現時点における最小推定誤差値Yが更新されない回数(最小推定誤差値Yの非更新回数)をリセットする。
【0069】
ステップS506において、位置決定部36は、同一の精度ランク(推定誤差ランク)内において、最小推定誤差値Yの更新回数が第1閾値N1に到達したか否かについて判定する。
【0070】
最小推定誤差値Yの更新回数が第1閾値N1に到達したと判定された場合、本動作は、ステップS507に進み、それ以外の場合、本動作は、無線装置30の存在位置を決定することなく終了し、図4の開始状態に戻る。
【0071】
ステップS507において、位置決定部36は、保持している最小推定誤差値Yを取得した位置情報(測位座標点)に基づいて、無線装置30の存在位置を決定する。
【0072】
ステップS508において、位置決定部36は、最小推定誤差値Yの非更新回数が第2閾値N2に到達したか否かについて判定する。最小推定誤差値Yの非更新回数が第2閾値N2に到達したと判定された場合、本動作は、ステップS509に進み、それ以外の場合、本動作は、無線装置30の存在位置を決定することなく終了し、図4の開始状態に戻る。
【0073】
ステップS509において、位置決定部36は、保持している最小推定誤差値Yを取得した位置情報に基づいて、無線装置30の存在位置を決定する。
【0074】
図12の例では、GPS測位の時刻Tkにおいて、Bランクにおいて最小推定誤差値Yの更新回数が「N1」回に到達したので、位置決定部36は、測位を終了して、無線装置30の存在位置を決定している。
【0075】
上述のように、移動状態決定部34によって無線装置30の移動状態が「静止状態」であると判断された場合で、かつ、同一推定誤差ランク内において推定誤差値の最小値(最小推定誤差値)が更新された回数が第1閾値N1に達した場合、位置決定部36は、最後に更新された最小推定誤差値を取得した位置情報に基づいて、無線装置30の存在位置を決定するように構成されている。
【0076】
すなわち、位置決定部36は、同一精度ランク(図12の例ではBランク)の範囲内で、最小推定誤差値を「N1」回更新した場合、今後の最小推定誤差値の更新によって、測位精度が向上する確率が低いと判断して測位を終了し、その時点での測位座標点に基づいて、無線装置30の存在位置を決定するように構成されている。
【0077】
図13の例では、GPS測位の時刻T4における推定誤差値が、過去の推定誤差値(GPS測位の時刻T0乃至T3における推定誤差値)が属する推定誤差ランク(Bランク又はCランク)よりも高い推定誤差ランク(Aランク)に属するため、現時点における最小推定誤差値Yの更新回数はリセットされる(「0」となる)。その結果、GPS測位の時刻T4における最小推定誤差値の更新回数は「3」ではなく「1」となっている。
【0078】
上述のように、移動状態決定部34によって無線装置30の移動状態が「静止状態」であると判断された場合で、かつ、同一推定誤差ランク内において推定誤差値の最小値(最小推定誤差値)が更新された回数が第1閾値N1に達した場合、位置決定部36は、最後に更新された最小推定誤差値を取得した位置情報に基づいて、無線装置30の存在位置を決定するように構成されている。そして、取得した推定誤差値が属する推定誤差ランクが、前回取得した推定誤差値が属する推定誤差ランクよりも高い場合、推定誤差値の最小値(最小推定誤差値)が更新された回数は、リセットされるように構成されている。
【0079】
すなわち、位置決定部36は、新しく観測された推定誤差値が、それまでに観測された推定誤差値の最小値が属する推定誤差ランクよりも高い推定誤差ランク(推定誤差値が小さい推定誤差ランク)に属する場合、現時点での最小推定誤差値の更新回数をリセットし、以降、高い推定誤差ランクにおいて最小推定誤差値の更新回数を観測する。
【0080】
例えば、位置決定部36は、「Bランク」において最小推定誤差値を4回更新した後に、より精度の高い「Aランク」に属する推定誤差値を観測した場合、今までの最小推定誤差値の更新回数を「0」に戻し、以降、「Bランク」ではなく「Aランク」において最小推定誤差値の更新回数を観測する。
【0081】
図14の例では、GPS測位の時刻Tkにおいて、最小推定誤差値Yの非更新回数が「N2」回に到達したので、位置決定部36は、測位を終了して、無線装置30の存在位置を決定している。
【0082】
上述のように、移動状態決定部34によって無線装置30の移動状態が「静止状態」であると判断された場合で、かつ、推定誤差値の最小値(最小推定誤差値)が更新されなかった回数が第2閾値N2に達した場合、位置決定部36は、推定誤差値の最小値を取得した位置情報に基づいて、無線装置30の存在位置を決定するように構成されている。
【0083】
すなわち、位置決定部36は、最小推定誤差値が更新されなかった回数が「N2」回に達した場合、今後の最小推定誤差値の更新によって、測位精度が向上する確率が低いと判断して測位を終了し、その時点での測位座標点に基づいて、無線装置30の存在位置を決定するように構成されている。
【0084】
また、位置決定部36は、上述した無線装置30の存在位置の決定方法以外に、測位時刻が予め制限された時間Tmaxに達した場合は、保持している最小推定誤差値を取得した座標点に基づいて、無線装置30の存在位置を決定するように構成されていてもよい。
【0085】
(本実施形態に係る無線装置の作用・効果)
本実施形態に係る無線装置によれば、無線装置30の移動状態とGPS測位機能等によって取得した位置情報(測位座標点)についての推定誤差値とに基づいて当該無線装置30の存在位置を決定するため、測位地点の周辺環境の影響やGPS衛星の配置の影響や無線装置30の移動状態等を考慮して、十分な測位精度で当該無線装置30の存在位置を知ることができる。
【0086】
また、移動時における高速、中速、低速の数値、及び、精度ランクの数値を、上述の実施形態における記述以外に設定した場合であっても、発明の効果に変わりはない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線装置のハードウエア構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る無線装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る無線装置によって用いられる推定誤差値について説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る無線装置が位置情報を測定する際の全体動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る無線装置が低速で移動している際に位置情報を測定する動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る無線装置が低速で移動している際に位置情報を測定する動作を説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る無線装置が中速で移動している際に位置情報を測定する動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る無線装置が中速で移動している際に位置情報を測定する動作を説明するための図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る無線装置が高速で移動している際に位置情報を測定する動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る無線装置が高速で移動している際に位置情報を測定する動作を説明するための図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る無線装置が静止している際に位置情報を測定する動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る無線装置が静止している際に位置情報を測定する動作を説明するための図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る無線装置が静止している際に位置情報を測定する動作を説明するための図である。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る無線装置が静止している際に位置情報を測定する動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0088】
1、2…アンテナ
3…WCDMA RF回路
4…WCDMAベースバンド回路
5…CPU
6…GPS RF回路
7…時計
8…LCD
9…キーパッド
10…スピーカ
11…マイク
30A…携帯通信端末
30…無線装置
31…位置情報取得部
32…位置情報記憶部
33…推定誤差値取得部
34…移動状態決定部
35…移動距離累積部
36…位置決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワークを介して通信可能な無線装置であって、
前記無線装置の位置情報を取得するように構成されている位置情報取得部と、
取得した前記位置情報についての推定誤差値を取得するように構成されている推定誤差値取得部と、
前記無線装置の移動状態を決定するように構成されている移動状態決定部と、
取得された前記推定誤差値と決定された前記移動状態とに基づいて、前記無線装置の存在位置を決定するように構成されている位置決定部とを具備することを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記移動状態決定部によって前記無線装置の移動状態が高速移動状態であると判断された場合で、かつ、取得された推定誤差値が高速用誤差閾値よりも小さい場合に、前記位置決定部は、該推定誤差値を取得した位置情報に基づいて、該無線装置の存在位置を決定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記移動状態決定部によって前記無線装置の移動状態が中速移動状態であると判断された場合で、かつ、所定期間内に取得された推定誤差値の最小値が中速用誤差閾値よりも小さい場合に、前記位置決定部は、該推定誤差値の最小値を取得した位置情報に基づいて、該無線装置の存在位置を決定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項4】
前記無線装置の移動距離を累積するように構成されている移動距離累積部を具備し、
前記移動状態決定部によって前記無線装置の移動状態が低速移動状態であると判断された場合で、累積された移動距離が移動距離閾値よりも大きい場合で、かつ、所定期間内に取得された推定誤差値の最小値が低速用誤差閾値よりも小さい場合に、前記位置決定部は、該推定誤差値の最小値を取得した位置情報に基づいて、該無線装置の存在位置を決定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項5】
前記移動状態決定部によって前記無線装置の移動状態が静止状態であると判断された場合で、かつ、同一推定誤差ランク内において推定誤差値の最小値が更新された回数が第1閾値に達した場合、前記位置決定部は、最後に更新された推定誤差値の最小値を取得した位置情報に基づいて、該無線装置の存在位置を決定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項6】
取得された推定誤差値が属する推定誤差ランクが、前回取得された推定誤差値が属する推定誤差ランクよりも高い場合、前記推定誤差値の最小値が更新された回数は、リセットされるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の無線装置。
【請求項7】
前記移動状態決定部によって前記無線装置の移動状態が静止状態であると判断された場合で、かつ、推定誤差値の最小値が更新されなかった回数が第2閾値に達した場合、前記位置決定部は、推定誤差値の最小値を取得した位置情報に基づいて、該無線装置の存在位置を決定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−51869(P2007−51869A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235073(P2005−235073)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】