説明

焼結層の製造方法及び構造体

【課題】緻密、かつ、基板への密着性の良い焼結層の製造方法及び構造体を提供する。
【解決手段】本発明に係る焼結層の製造方法は、基板10の表面に金属粒子を含むペーストを塗布し、第1塗布層20を形成する第1塗布工程と、第1塗布層20を焼結し、1.0μm以下の厚さを有する第1焼結層30を形成する第1焼結工程と、第1焼結層30の表面にペーストを塗布し、第2塗布層22を形成する第2塗布工程と、第2塗布層22を焼結し、第2焼結層32を形成する第2焼結工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結層の製造方法及び構造体に関する。特に、本発明は、金属微粒子の焼結による焼結層の製造方法及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁基材上に供給された導電ペーストを焼成して回路導体とする回路基板の製造方法であって、導電ペーストには、金属材料でナノメータオーダーの粒径を持つ金属ナノ粒子が含まれてなり、アルコールを含む低酸素雰囲気下で導電ペーストを焼成することにより金属ナノ粒子を焼結させる回路基板の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の回路基板の製造方法によれば、金属ナノ粒子が含まれてなる導電ペーストを低温で焼結させ、アルコールを含む低酸素雰囲気下で導電ペーストを焼成することにより焼成雰囲気中のアルコールが還元剤として機能し、金属ナノ粒子の表面酸化膜が焼成中に除去されるので、導電ペーストが焼結して形成される回路導体の抵抗値増大を抑制でき、バルク状態の金属材料と同程度の回路導体を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−53212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の回路基板の製造方法は、導電ペーストの厚さが厚いと、導電ペーストの表層部分のみで焼結反応が進行する場合があり、斯かる場合、層内部の焼結が不十分になり、緻密、かつ、基板への密着性の良い焼結層が得られない場合がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、緻密、かつ、基板への密着性の良い焼結層の製造方法及び構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、上記目的を達成するため、基板の表面に金属粒子を含むペーストを塗布し、第1塗布層を形成する第1塗布工程と、第1塗布層を焼結し、1.0μm以下の厚さを有する第1焼結層を形成する第1焼結工程と、第1焼結層の表面にペーストを塗布し、第2塗布層を形成する第2塗布工程と、第2塗布層を焼結し、第2焼結層を形成する第2焼結工程とを備える焼結層の製造方法が提供される。
【0008】
(2)また、上記焼結層の製造方法は、金属粒子は、20nm以下の平均粒径を有すると共に、金、銀、及び銅からなる群から選択される金属からなる粒子を含むことが好ましい。
【0009】
(3)また、上記焼結層の製造方法は、金属粒子は、金属の酸化物を更に含むことができる。
【0010】
(4)また、上記焼結層の製造方法は、第2焼結工程は、1.0μm以下の厚さを有する第2焼結層を形成することが好ましい。
【0011】
(5)また、上記焼結層の製造方法は、第1焼結工程及び第2焼結工程はそれぞれ、表面が粗化された第1焼結層及び第2焼結層を形成することができる。
【0012】
(6)また、上記焼結層の製造方法は、第1焼結工程及び第2焼結工程は、レーザ光、プラズマ、若しくはキセノンランプの照射により第1塗布層及び第2塗布層を焼結することができる。
【0013】
(7)また、上記焼結層の製造方法は、第2焼結工程の後に、第2塗布工程及び第2焼結工程を繰り返すことにより焼結層を更に形成することもできる。
【0014】
(8)また、本発明は上記目的を達成するため、基板と、基板上に設けられ金属粒子を含む第1焼結層と、第1焼結層上に設けられ金属粒子を含む第2焼結層とを備え、第1焼結層及び第2焼結層は、上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の焼結層の製造方法により形成される構造体が提供される。
【0015】
(9)また、上記構造体は、第2焼結層の上に、第2塗布工程及び第2焼結工程を繰り返すことにより形成される焼結層を更に備えることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る焼結層の製造方法及び構造体によれば、緻密、かつ、基板への密着性の良い焼結層の製造方法及び構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る焼結層の製造工程の流れを示す図である。
【図2】比較例に係る構造体の製造工程の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態の要約]
金属粒子を焼結させることにより焼結層を形成する焼結層の製造方法において、基板の表面に金属粒子を含むペーストを塗布し、第1塗布層を形成する第1塗布工程と、前記第1塗布層を焼結し、1.0μm以下の厚さを有する第1焼結層を形成する第1焼結工程と、前記第1焼結層の表面に前記ペーストを塗布し、第2塗布層を形成する第2塗布工程と、前記第2塗布層を焼結し、第2焼結層を形成する第2焼結工程とを備える焼結層の製造方法が提供される。
【0019】
[実施の形態]
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る焼結層の製造工程の流れの一例を示す。
【0021】
まず、基板10を準備する(基板準備工程)。基板10としては、銅等の金属製の基板、又はポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性の樹脂基板を用いることができる。次に、基板10の表面に金属粒子を含むペーストを塗布することにより、基板10の表面に第1塗布層20を形成する(第1塗布工程)。ここで、第1塗布層20は、後述する第1焼結工程において第1塗布層20に供給されるエネルギーにより、層の内部が十分に焼結される厚さを有して形成される。
【0022】
ここで、この第1塗布工程及び後述する第2塗布工程の後に、乾燥工程を設けてもよい。また、乾燥を速めるために、加熱乾燥させてもよい。
【0023】
本実施形態に係る金属粒子としては、20nm以下の平均粒径を有する粒子を用いる。また、金属粒子は、金、銀、及び銅からなる群から選択される金属から形成される粒子を含む。更に、金属粒子は、金の酸化物、銀の酸化物、又は銅の酸化物を含むことができる。なお、ペーストとしては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ウンデカン等の炭化水素系の有機溶媒、又はトルエン等の芳香族系の有機溶媒を主溶剤として、この主要剤に所定の平均粒径を有する金属粒子を分散させ、所定の粘度に調製されたペーストを用いることができる。
【0024】
続いて、第1塗布層20に局所的にエネルギーを加える。例えば、第1塗布層20の表面から基板10に向けて、レーザ光40、プラズマ又はキセノンランプを照射する(図1(a))。レーザ光40等の照射は連続照射である。これにより、第1塗布層20中の有機溶媒が蒸発すると共に第1塗布層20が焼結され、第1焼結層30が形成される(図1(b)、第1焼結工程)。なお、ペースト中に金属酸化物が含まれている場合、ペーストの焼結中に金属粒子の周囲の有機物(例えば、有機溶媒)に金属酸化物の酸素が供給され、有機物の分解が促進される。
【0025】
本実施の形態において、第1焼結層30の厚さは、1.0μm以下である。また、第1焼結層30の表面は粗化されており、所定の表面粗さを有する。なお、当該表面を粗化する方法としては、例えば、パルス発振、Qスイッチ発振を用いたレーザ等の高出力のエネルギーを当該表面に短時間照射する方法が挙げられる。これらの方法により、アブレーション効果等を利用して当該表面を粗化できる。
【0026】
ここで、本実施の形態においては、例えば、レーザ光40を用いるので、第1塗布層20は局所的に加熱され、加熱された領域が焼結される。したがって、本実施の形態においては、第1塗布層20の表面をレーザ光40で走査することにより、第1塗布層20の全体を焼結させる。なお、レーザ光40の集光径を調整することにより、加熱する領域の広さを調節できる。例えば、レーザ光40は、所定の光学系で帯状に広げたラインビーム状にすることができ、あるいは、所定の光学系で集光して、レーザ光40の集光径を数十μm程度にすることができる。また、焼結させるべき領域にのみレーザ光40を照射することにより、第1塗布層20を部分的に焼結させることもできる。すなわち、レーザ光40の照射のOn/Off制御により、焼結させる部分と第1塗布層20のままの部分とを混在させることもできる。
【0027】
レーザ光の波長としては、532nm、1064nmが望ましいが、任意の波長、及び532nm、1064nmの波長を同時に、若しくは、選択的に照射することもできる。
【0028】
次に、第1焼結層30の表面に金属粒子を含むペーストを塗布することにより、第1焼結層30の表面に第2塗布層22を形成する(第2塗布工程)。なお、第2塗布層22は、第1焼結層30を形成した直後に形成することが好ましい。第1焼結層30を形成した直後に第2塗布層22を形成することにより、第2塗布層22中に外部から不純物が混入することを抑制すること、及び第1焼結層30の最表面の汚染を抑制することができる。第1塗布層20と同様に、第2塗布層22は、後述する第2焼結工程において第2塗布層22に供給されるエネルギーにより、層の内部が十分に焼結される厚さを有して形成される。なお、第1焼結層30の表面に塗布するペーストとしては、基板10の表面に塗布したペーストと同一のペーストを用いることができる。また、金属粒子の種類が異なるペーストを塗布することもできる。
【0029】
続いて、第2塗布層22に局所的にエネルギーを加える。例えば、第2塗布層22の表面から基板10に向けて、レーザ光40、プラズマ、又はキセノンランプを照射する(図1(c))。これにより第2塗布層22が焼結され、第2焼結層32が形成される(図1(d)、第2焼結工程)。なお、第2焼結層32中に外部から不純物が混入すること等を抑制することを目的として、第2塗布層22を形成した直後にレーザ光40等を第2塗布層22に照射することが好ましい。本実施の形態において、第2焼結層32の厚さは、1.0μm以下である。また、第2焼結層32の表面は粗化されており、所定の表面粗さを有する。なお、第2焼結層32の表面の粗化は、第1焼結層30の表面の粗化と同様の手法により実施できる。
【0030】
以上の工程を経て、基板10と、第1焼結層30と第2焼結層32とを有する焼結層34とを備える構造体1が製造される。すなわち、本実施の形態に係る構造体1は、レーザ光40又はプラズマ、キセノンランプを用い、基板10上に設けられた第1塗布層20、及び第1焼結層30上に設けられた第2塗布層22に局所的にエネルギーを加えることにより、短時間でナノメートルサイズの微粒子からなる第1焼結層30及び第2焼結層32を形成することにより製造される。
【0031】
なお、同一の焼結層を形成する際に、レーザ光40、プラズマ、又はキセノンランプを同一の塗布層上に選択的に照射することもできる。照射時間は、一例として、一つのスポットで1秒未満に設定する。更に、第1焼結層30及び第2焼結層32をそれぞれ異なる種類の光で焼結することもできる。また、第1焼結層30の基板10に対する密着性、及び第2焼結層32の第1焼結層30に対する密着性を向上させることを目的として、焼結層の製造工程を所定のクリーン度のチャンバー内、又はクリーンルーム内で実施することができる。
【0032】
なお、本実施の形態においては、基板10上に第1焼結層30と第2焼結層32とを形成したが、焼結層の層数は2層に限られず、3層以上にすることもできる。また、本実施の形態に係る焼結層の製造方法は、ナノメートルサイズの微粒子を焼結して得られる焼結層を用いる製品に応用することができる。例えば、めっき技術を用いて形成される金属パッド部を備えるデバイスの製造方法に応用することができる。
【0033】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る焼結層の製造方法においては、第1塗布層20及び第2塗布層22の厚さが、レーザ光40等によるエネルギーにより層内部が十分に焼結される厚さに調製され、レーザ光40等のエネルギーにより層内部が十分に焼結される。したがって、本実施の形態に係る焼結層の製造方法によれば、緻密であり、かつ、基板10に対する密着性が良好な焼結層34を形成することができる。なお、樹脂材料を用いて基板10を構成した場合、基板10と第1焼結層30との密着性を更に向上させることができる。
【0034】
また、本実施の形態に係る焼結層の製造方法によれば、金属粒子を含むペーストの塗布と焼結とを2回以上繰り返すことで、焼結層34の厚膜化を図ることができ、また、基板10に近い側に設けられる焼結層ほど(例えば、本実施の形態においては第1焼結層30)、複数回、エネルギーが供給されるので、基板10に対する第1焼結層30の密着性を向上させることができる。
【0035】
更に、本実施の形態に係る焼結層の製造方法によれば、ペーストを塗布することにより第1塗布層20及び第2塗布層22を形成するので、例えば、電子回路基板等の所望の箇所に限定的に焼結層34を形成することができる。これにより、本実施の形態に係る焼結層の製造方法によれば、めっき法等により焼結層を形成する場合に比べて、材料の消費量を低減でき、製造コストを抑制することができる。
【0036】
(比較例1)
図2は、比較例に係る構造体の製造工程の流れを示す。
【0037】
比較例においては、銅からなる基板10上に、銀ナノ粒子(ただし、平均粒径が5nmの銀ナノ粒子を用いた。他の比較例及び実施例においても同様である。)を有機溶媒(ただし、テトラデカンを主成分とした有機溶媒であり、他の比較例及び実施例においても同様である。)により希釈して得られるインク状のペースト(ただし、銀の濃度は30wt%である)をスピンコートで塗布することにより、基板10上に塗布層24を形成した。次に、光学系で帯状に広げたレーザ光40(すなわち、ラインビーム)を塗布層24に照射した(図2(a))。レーザ光40の照射により、塗布層24中の銀ナノ粒子を焼結させ、焼結層36を形成した(図2(b))。これにより、比較例に係る構造体2が得られた。なお、用いたレーザ光40は、波長1064nmのYVOレーザ光を用いた。レーザ光出力は6Wである。
【0038】
構造体2が備える焼結層36の厚さを測定したところ、2μmであった。また、焼結層36の基板10に対する密着性をピール試験により評価した。具体的には、焼結層36の表面にテープ(ただし、テープには、3M社製のスコッチメンディングテープ810を使用した)を貼り、当該テープを基板10の表面に対して垂直に引き剥がすことによりピール試験を実施した。その結果、焼結層36が基板10から剥がれる結果になった。
【0039】
(比較例2)
銅からなる基板10上に、銀ナノ粒子を有機溶媒で希釈して得られるインク状のペースト(ただし、銀の濃度は30wt%である)をスピンコートで塗布することにより、第1塗布層20を形成した。
【0040】
次に、光学系で帯状に広げたレーザ光40(すなわち、ラインビーム)を第1塗布層20に照射した。レーザ光40の照射により、第1塗布層20中の銀ナノ粒子を焼結させ、第1焼結層30を形成した。なお、用いたレーザ光40は、波長1064nmのYVOレーザ光である。レーザ光出力は6Wである。
【0041】
ここで、第1焼結層30の厚さを測定したところ、1.1μmであった。
【0042】
続いて、第1焼結層30の表面に、第1塗布層20の形成に用いたペーストをスピンコートで塗布した。スピンコートは、回転数を2000rpmに設定すると共に、回転時間を30秒に設定して実施した。これにより、第1焼結層30の表面に第2塗布層22を形成した。そして、光学系で帯状に広げたレーザ光40(すなわち、ラインビーム)を第2塗布層22に照射した。用いたレーザ光40は上記と同一である。レーザ光40の照射により、第2塗布層22中の銀ナノ粒子を焼結させ、第2焼結層32を形成した。
【0043】
第1焼結層30と第2焼結層32とからなる焼結層34の厚さを測定したところ、2.2μmであった。すなわち、第2塗布層に厚さは1.1μmの焼結層が形成されたことになる。
【0044】
この焼結層34の基板10に対する密着性をピール試験により評価した。具体的には、焼結層34の表面にテープ(ただし、テープには、3M社製のスコッチメンディングテープ810を使用した)を貼り、当該テープを基板10の表面に対して垂直に引き剥がすことによりピール試験を実施した。その結果、焼結層34が基板10から剥がれる結果となった。
【0045】
(比較例3)
銅からなる基板10上に、銀ナノ粒子を有機溶媒で希釈して得られるインク状のペースト(ただし、銀の濃度は30wt%である)をスピンコートで塗布することにより、第1塗布層20を形成した。その後、第1塗布層20を加熱乾燥させた。続いて、第1塗布層20と同様にして、第2塗布層22を第1塗布層20上に形成した。その後、第1塗布層及び第2塗布層22にレーザ光40を照射し、焼結層を形成した。
【0046】
この焼結層の基板10に対する密着性をピール試験により評価した。具体的には、焼結層34の表面にテープ(ただし、テープには、3M社製のスコッチメンディングテープ810を使用した)を貼り、当該テープを基板10の表面に対して垂直に引き剥がすことによりピール試験を実施した。その結果、焼結層が基板10から剥がれる結果となった。
【実施例1】
【0047】
実施の形態において説明した製造方法を用いて実施例に係る構造体1を製造した。具体的には、銀ナノ粒子を有機溶媒により希釈して得られるインク状のペーストをスピンコートで塗布することにより、銅からなる基板10上に第1塗布層20を形成した。ただし、実施例においては、銀粒子の濃度が30wt%であるインク状のペーストを、有機溶媒を用いた体積比にて5倍希釈した。すなわち、実施例においては、比較例において用いたペーストより粘度の低いペーストを用いた。なお、比較例及び実施例のいずれにおいても、ペーストの量、スピンコート時の回転数、回転時間等を調整することにより、塗布層の厚さを調整することができる。
【0048】
次に、光学系で帯状に広げたレーザ光40(すなわち、ラインビーム)を第1塗布層20に照射した。レーザ光40の照射により、第1塗布層20中の銀ナノ粒子を焼結させ、第1焼結層30を形成した。なお、用いたレーザ光40は、波長1064nmのYVOレーザ光を用いた。レーザ光出力は6Wである。
【0049】
ここで、第1焼結層30の厚さを測定したところ、0.5μmであった。
【0050】
続いて、第1焼結層30の表面に、第1塗布層20の形成に用いたペーストをスピンコートにより塗布した。これにより、第1焼結層30の表面に第2塗布層22を形成した。そして、光学系で帯状に広げたレーザ光40(すなわち、ラインビーム)を第2塗布層22に照射した。用いたレーザ光40は上記と同一である。レーザ光40の照射により、第2塗布層22中の銀ナノ粒子を焼結させ、第2焼結層32を形成した。
【0051】
第1焼結層30と第2焼結層32とからなる焼結層34の厚さを測定したところ、1μmであった。また、焼結層34の基板10に対する密着性をピール試験により評価した。具体的には、焼結層34の表面にテープ(ただし、テープには、3M社製のスコッチメンディングテープ810を使用した)を貼り、当該テープを基板10の表面に対して垂直に引き剥がすことによりピール試験を実施した。その結果、焼結層34が基板10から剥がれることはなかった。
【0052】
なお、塗布の段階では塗布層はペースト状であり、塗布層の厚さの正確な計測が困難であるため、焼結層の厚みを記載した。また、焼結前のペーストの塗布量は、金属粒子の量(wt%)や有機溶媒によっても変動する。したがって、用いる溶媒、金属粒子等によってペーストの塗布量は適宜、調整できる。本発明者らは、焼結層の厚みが、これらの条件によって塗布層の厚みの約5〜30%程度になることを確認した。
【実施例2】
【0053】
実施例1と同じ条件(すなわち、ペースト(銀の濃度は30wt%)、スピンコート時の回転数(2000rpm)、回転時間(30秒))とし、銀ナノ粒子を有機溶媒により希釈して得られるインク状のペーストをスピンコートで塗布することにより、銅からなる基板10上に第1塗布層20を形成した。
【0054】
次に、光学系で帯状に広げたレーザ光40(すなわち、ラインビーム)を第1塗布層20に照射した。レーザ光40の照射により、第1塗布層20中の銀ナノ粒子を焼結させ、第1焼結層30を形成した。なお、用いたレーザ光40は、波長1064nmのYVOレーザ光を用いた。レーザ光出力は6Wである。ここで、第1焼結層30の厚さを測定したところ、0.3μmであった。
【0055】
続いて、第1焼結層30の表面に、第1塗布層20の形成に用いたペーストをスピンコート時の回転数、回転時間等を同じ条件として、スピンコートにより塗布した。これにより、第1焼結層30の表面に第2塗布層22を形成した。そして、光学系で帯状に広げたレーザ光40(すなわち、ラインビーム)を第2塗布層22に照射した。用いたレーザ光40は上記と同一である。レーザ光40の照射により、第2塗布層22中の銀ナノ粒子を焼結させ、第2焼結層32を形成した
【0056】
第1焼結層30と第2焼結層32とからなる焼結層34の厚さを測定したところ、1μmであった。すなわち、第2焼結層32の厚さは0.7μmであった。また、焼結層34の基板10に対する密着性をピール試験により評価した。具体的には、焼結層34の表面にテープ(ただし、テープには、3M社製のスコッチメンディングテープ810を使用した)を貼り、当該テープを基板10の表面に対して垂直に引き剥がすことによりピール試験を実施した。その結果、焼結層34が基板10から剥がれることはなかった。
【実施例3】
【0057】
実施例1、2と同様に、ペーストの量、スピンコート時の回転数、回転時間等を調整することで銀ナノ粒子を有機溶媒で希釈して得られるインク状のペーストをスピンコートで塗布することにより、銅からなる基板10上に第1塗布層20を形成した。次に、光学系で帯状に広げたレーザ光40(すなわち、ラインビーム)を第1塗布層20に照射した。レーザ光40の照射により、第1塗布層20中の銀ナノ粒子を焼結させ、第1焼結層30を形成した。なお、用いたレーザ光40は、波長1064nmのYVOレーザ光である。レーザ光出力は6Wである。ここで、第1焼結層30の厚さを測定したところ、0.7μmであった。
【0058】
続いて、第1焼結層30の表面に、第1塗布層20の形成に用いたペーストをスピンコート時の回転数、回転時間等を実施例2と同じ条件として、スピンコートで塗布した。これにより、第1焼結層30の表面に第2塗布層22を形成した。そして、光学系で帯状に広げたレーザ光40(すなわち、ラインビーム)を第2塗布層22に照射した。用いたレーザ光40は上記と同一である。レーザ光40の照射により、第2塗布層22中の銀ナノ粒子を焼結させ、第2焼結層32を形成した。
【0059】
第1焼結層30と第2焼結層32とからなる焼結層34の厚さを測定したところ、1μmであった。すなわち、第2焼結層32の厚さは0.3μmであった。また、焼結層34の基板10に対する密着性をピール試験により評価した。具体的には、焼結層34の表面にテープ(ただし、テープには、3M社製のスコッチメンディングテープ810を使用した)を貼り、当該テープを基板10の表面に対して垂直に引き剥がすことによりピール試験を実施した。その結果、焼結層34が基板10から剥がれることはなかった。
【0060】
本実施例では、各塗布層に十分なエネルギーを供給させることができ、基材と第1焼結層30との間、第1焼結層30と第2焼結層32との間の密着性を確保することができる。このため、基材と第1焼結層30との間の密着性の向上のために、第1塗布層20と、第2塗布層22とを異なる材料で形成する必要がない。すなわち、第1塗布層20と第2塗布層22とを同じ材料で形成することができ、また、第1焼結層30と第2焼結層32とを同じ材料から構成することができる。
【0061】
上記の通り、第1焼結層30及び第2焼結層32の違いを意識する必要がないことから、第1焼結層30及び第2焼結層32で焼結層全体を形成するのではなく、第2塗布工程及び第2焼結工程と同様の作業を複数回繰り返すことにより、基材の表面から、厚さの厚い焼結層を形成することができる。
【0062】
更に、本実施例では、レーザを使用して焼結させたが、プラズマ、キセノンランプを用いても、同様の効果が得られることを確認した。
【0063】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0064】
1、2 構造体
10 基板
20 第1塗布層
22 第2塗布層
24 塗布層
30 第1焼結層
32 第2焼結層
34 焼結層
36 焼結層
40 レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に金属粒子を含むペーストを塗布し、第1塗布層を形成する第1塗布工程と、
前記第1塗布層を焼結し、1.0μm以下の厚さを有する第1焼結層を形成する第1焼結工程と、
前記第1焼結層の表面に前記ペーストを塗布し、第2塗布層を形成する第2塗布工程と、
前記第2塗布層を焼結し、第2焼結層を形成する第2焼結工程と
を備える焼結層の製造方法。
【請求項2】
前記金属粒子は、20nm以下の平均粒径を有すると共に、金、銀、及び銅からなる群から選択される金属からなる粒子を含む請求項1に記載の焼結層の製造方法。
【請求項3】
前記金属粒子は、前記金属の酸化物を更に含む請求項2に記載の焼結層の製造方法。
【請求項4】
前記第2焼結工程は、1.0μm以下の厚さを有する前記第2焼結層を形成する請求項2又は3に記載の焼結層の製造方法。
【請求項5】
前記第1焼結工程及び前記第2焼結工程は、表面が粗化された前記第1焼結層及び前記第2焼結層を形成する請求項2〜4のいずれか1項に記載の焼結層の製造方法。
【請求項6】
前記第1焼結工程及び前記第2焼結工程は、レーザ光、プラズマ若しくはキセノンランプの照射により前記第1塗布層及び前記第2塗布層を焼結するものを含む請求項5に記載の焼結層の製造方法。
【請求項7】
前記第2焼結工程の後に、前記第2塗布工程及び前記第2焼結工程を繰り返すことにより焼結層を更に形成する請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
基板と、前記基板上に設けられ金属粒子を含む第1焼結層と、前記第1焼結層上に設けられ金属粒子を含む第2焼結層とを備え、前記第1焼結層及び前記第2焼結層は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の焼結層の製造方法により形成される構造体。
【請求項9】
前記第2焼結層の上に、前記第2塗布工程及び前記第2焼結工程を繰り返すことにより形成される焼結層を更に備える請求項8記載の構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−192947(P2011−192947A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60218(P2010−60218)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】