説明

照度センサチップ、照度センサ、照度測定装置、および照度測定方法

【課題】 製造コスト的に有利に、可視光の光量を反映した照度を測定することができる技術を提供する。
【解決手段】 照度センサチップにおいて、第1半導体層と、上記第1半導体層に接合された第2半導体層と、を有し、上記第1半導体層と上記第2半導体層との接合部分に上記第2半導体層を介して光が入射した場合に、上記接合部分への入射光量に応じた電気信号を出力するように構成し、上記第2半導体層の厚みを、上記電気信号の出力量を基準とした分光感度特性におけるピーク感度波長が、可視光の波長範囲(たとえば580〜600nm)となるように、たとえば2〜4μm設定した。第2半導体層をシリコン半導体として構成するとともに、照度センサを、npn接合を有するフォトトランジスタとして構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、周囲の明るさを検出する目的で使用される照度センサチップおよびこれに関連する技術に関する。
【0002】
【背景技術】照度センサは、周囲の明るさを検出するために使用されるものであり、従来より様々な目的に使用されている。たとえば、カメラにおいては、照度センサからの出力に基づいて、フラッシュを焚くか否かが判断される。
【0003】照度センサは、たとえばフォトトランジスタなどとして構成された照度センサチップを有している。照度センサチップは、受光量に応じた電気信号を出力するものである。従来より用いられている照度センサチップは、分光感度特性(波長と出力との関係を示すもの)において、そのピーク感度波長が800〜950nmとされている。この照度センサチップでは、主として赤外光の受光量に応じた電気信号が出力される。すなわち、上記照度センサチップを備えた照度センサにおいては、赤外光の光量に基づいて周囲の明るさに相関させた電気信号を出力していた。
【0004】ところで、携帯電話においては、たとえば反射型の液晶表示装置を用いて画像表示が行われている。反射型の液晶表示装置では、入射光の可視光成分の量で表示画面の明るさが決まる。したがって、表示装置の周囲が十分に明るければ、外部光のみにより画像表示を行うことができるのに対して、表示装置の周囲が暗ければ、外部光のみでは画像表示を行うことができない。このため、上記液晶表示装置では、外部光の光量が不十分な場合には、光源を点灯させて可視光の光量を補償する必要がある。
【0005】この場合、照度センサからの出力に基づいて液晶表示装置の周囲の明るさを検出し、その検出結果に応じて、光源を点灯させるか否かを判断することも考えられる。
【0006】上述したとおり、反射型の液晶表示装置の表示画面の明るさは入射光の可視光成分の量で決まる。そのため、理想的には、可視光の光量を基準として液晶表示装置の周囲の明るさを把握し、光源を点灯させるか否かを判断する必要がある。これに対して、従来の照度センサチップは、分光感度特性におけるピーク感度波長が赤外領域にある。一方、明所視において人が最も目に感じる波長(比視ピーク波長)は約555nmであり、従来の照度センサチップのピーク感度波長から大きくずれている。したがって、上記した携帯電話の照度センサとしては、従来の照度センサは適切ではない。そのため、照度センサに赤外光カットフィルタを設け、可視光を選択的に受光させようとする方法もある。しかしながら、可視光の光量を減少させることなく、赤外光をカットするのは技術的に困難であるばかりか、赤外光カットフィルタを設ける分だけ製造コスト的にも不利である。
【0007】本願発明は上記した事情のもとに考え出されたものであって、製造コスト的に有利に、可視光の光量を反映した照度を測定することができる技術を提供する。
【0008】
【発明の開示】本願発明の第1の側面では、第1半導体層と、上記第1半導体層に接合された第2半導体層と、を有し、上記第1半導体層と上記第2半導体層との接合部分に上記第2半導体層を介して光が入射した場合に、上記接合部分への入射光量に応じた電気信号を出力するように構成されており、かつ、上記第2半導体層の厚みは、上記電気信号の出力量を基準とした分光感度特性におけるピーク感度波長が、可視光の波長範囲となるように設定されていることを特徴とする、照度センサチップが提供される。
【0009】第2半導体層の厚みは、4μm以下とするのが好ましい。さらに好ましくは、第2半導体層の厚みは、2μm以上とされる。
【0010】好ましい実施の形態においては、ピーク感度波長は580〜600nmとされる。第2半導体層は、たとえばシリコン半導体として構成される。
【0011】好ましい実施の形態においては、照度センサチップは、フォトトランジスタとして構成される。フォトトランジスタは、npn接合を有するものが好ましい。その場合には、第2半導体層はP型半導体層として構成される。
【0012】本願発明の第2の側面においては、上述した本願発明の第1の側面に係る照度センサチップを備えたことを特徴とする、照度センサが提供される。
【0013】好ましい実施の形態においては、照度センサは、上記照度センサチップと分光感度特性が同一または略同一である追加の照度センサチップと、上記追加の照度センサチップに対して、可視光を吸収してから入射光を受光させるための可視光カット部と、をさらに備えている。
【0014】追加の照度センサチップは、たとえば黒色に着色した樹脂パッケージ内に封止されている。この場合には、樹脂パッケージが可視光カット部を構成する。
【0015】好ましい実施の形態においては、上記照度センサチップは透明な第1樹脂パッケージに封止され、上記追加の照度センサチップは、黒色に着色した第2樹脂パッケージに封止されている。この場合には、第2樹脂パッケージが可視光カット部を構成する。
【0016】第1樹脂パッケージおよび第2樹脂パッケージは、透明な第3樹脂パッケージにより封止するのが好ましい。
【0017】可視光カット部は、第2半導体層を覆うようにして可視光カットフィルタを設けることより構成してもよい。
【0018】本願発明の第3の側面においては、第1半導体層と、上記第1半導体層に接合された第2半導体層と、を備え、かつ、上記第1半導体層と上記第2半導体層との接合部分に上記第2半導体層を介して光が入射した場合に、上記接合部分への入射光量に応じた電気信号を出力するように構成された第1および第2の照度センサチップと、可視光を吸収してから上記第2の照度センサチップの接合部に対して入射光を受光させるための可視光カット部と、上記第1および第2の照度センサからの出力に基づいて、照度を演算するための照度演算部と、を備えていることを特徴とする、照度測定装置が提供される。
【0019】好ましい実施の形態においては、上記第2の照度センサチップは、上記第1の照度センサチップと同一または略同一の分光感度特性を有している。
【0020】好ましい実施の形態においては、上記照度演算部は、上記第1の照度センサチップからの出力と、上記第2の照度センサチップからの出力との差分に相当する信号に基づいて、照度を演算する。
【0021】本願発明の第4の側面においては、第1および第2の照度センサチップを用いて照度を測定する方法であって、上記第1および第2の照度センサチップは、第1半導体層と、上記第1半導体層に接合された第2半導体層と、を備え、かつ、上記第1半導体層と上記第2半導体層との接合部分に上記第2半導体層を介して光が入射した場合に、上記接合部分への入射光量に応じた電気信号を出力するように構成されており、上記第1および第2の照度センサからの出力に基づいて、照度を演算することを特徴とする、照度測定方法が提供される。
【0022】好ましい実施の形態においては、上記第1の照度センサチップおよび上記第2の照度センサチップは、同一または略同一の分光感度特性を有してしており、かつ、上記第2の照度センサチップには、可視光を吸収してから光が入射させられる。
【0023】好ましい実施の形態においては、上記第1の照度センサチップからの出力と、上記第2の照度センサチップからの出力との差分に相当する信号に基づいて、照度が演算される。
【0024】
【発明の実施の形態】図1に示した本願発明の第1の実施の形態に係る照度測定装置 X1は、たとえば携帯電話に組み込まれて使用される。携帯電話では、照度測定装置 X1によって測定された照度に基づいて、反射型の液晶表示装置の光源を点灯させるか否かが判断される。
【0025】照度測定装置 X1は、照度センサ1および照度演算部2を有している。照度センサ1は、主として可視光を受光することを目的として構成されている。図1および図2に示したように照度センサ1は、絶縁基板10、第1電極11、第2電極12、および第1の照度センサチップ13を有している。
【0026】絶縁基板10は、たとえばガラスエポキシ樹脂などの絶縁材料により、略矩形板状とされている。第1および第2電極11,12は、絶縁基板10の上面10aから側面10bを介して下面10cにまで繋がっている。第1および第2電極11,12は、たとえば蒸着などにより金属膜(たとえば Al膜)を形成した後に、エッチング処理を施すことにより形成することができる。
【0027】第1電極11には、照度センサチップ13が実装されている。照度センサチップ13は、たとえば導電性接着剤を介して第1電極11に接合されている。第2電極12と照度センサチップ13の間は、ワイヤ14により接続されている。ワイヤ14は、たとえば金線などにより構成されている。第2電極12と照度センサチップ13との間のワイヤ14による接続は、たとえば既存のワイヤボンダを用いて行うことができる。
【0028】照度センサチップ13およびワイヤ14は、樹脂パッケージ15により封止されている。樹脂パッケージ15は、可視光を透過可能なように、たとえばエポキシ樹脂により透明に形成されている。このような樹脂パッケージ15は、たとえばトランスファモールド法により形成することができる。
【0029】照度センサチップ13は、分光感度特性のピーク感度波長が、可視光の波長範囲、たとえば380〜780 nm、より好ましくは580〜600 nmの波長範囲にあるものである。照度センサチップ13は、図3に示したようにN+型シリコン基板30上に、NPN接合部31を形成したフォトトランジスタとして構成されている。N+型シリコン基板30の下面30bには、コレクタ電極32が形成されている。コレクタ電極32は、たとえば Auなどにより形成されている。コレクタ電極32は、蒸着などにより形成することができる。
【0030】NPN接合部31は、第1半導体層としてのN-型半導体層33、第2半導体層としてのP型半導体層34、およびN+型半導体層35からなる。
【0031】N-型半導体層33は、コレクタとして機能する部分であり、Si基板30の全面にわたって設けられている。
【0032】P型半導体層34は、ベースとして機能する部分であり、N-型半導体層33内に造り込まれた格好とされている。P型半導体層34は、分光感度特性におけるピーク感度波長が可視光の範囲となるように、その厚み Dが設定されている(図4のD=3.2μm参照)。このような分光感度特性を得るためには、P型半導体層34の厚み Dは、たとえば2〜4μmとされ、好ましくは2.5〜3.5μmとされる。P型半導体層34の厚み Dと、ピーク感度波長との関係については、後において考察する。
【0033】N+型半導体層35は、エミッタとして機能する部分であり、P型半導体層34内に造り込まれた格好とされている。
【0034】NPN接合部31は、 N+型シリコンウエハに対するウエハプロセスにおいて形成される。ウエハプロセスにおいては、たとえば気相エピタキシャル成長によってN-型半導体層33に相当する部分が形成され、不純物拡散によりP型半導体層34およびN+型半導体層35に相当する部分が形成される。P型半導体層34に相当する部分を形成する際のドーパントとしては、たとえば ホウ素が用いられる。 N+型半導体層35に相当する部分を形成する際のドーパントとしては、たとえば リンが用いられる。
【0035】不純物源としてB26(ドーパントは ホウ素)を用いて、不純物拡散により厚み Dが2〜4μmのP型半導体層34を形成するときの拡散条件は、たとえば加熱温度1100〜1200℃、加熱時間90〜110分とされる。
【0036】NPN接合部31の上面31aには、絶縁層36が設けられている。絶縁層36は、上面31aにおける隣接する半導体層33,34,35どうしの境界線を覆うようにして形成されている。したがって、P型半導体層34およびN+型半導体層35の大部分は、絶縁層36を介して露出している。絶縁層36は、たとえば SiO2により形成されている。
【0037】P型半導体層34の露出面34aは、保護膜38により覆われている。保護膜38は、 たとえばSiNなどにより形成されている。一方、N+型半導体層35の露出面35aは、エミッタ電極37により覆われている。エミッタ電極37は、たとえばAlなどにより形成されている。
【0038】照度センサ1では、樹脂パッケージ15を介して照度センサチップ13のP型半導体層34に光が入射されると、受光量に応じた電気信号(エミッタ電流)が出力される。P型半導体層13への光入射によりキャリアが注入され、ベース電流が流れる。これにより、N-型半導体層33には、コレクタ電流が供給される。コレクタ電流は、第1電極11に接続された外部電源(図示略)から、コレクタ電極32を通じて供給される。エミッタ電極37からは、ベース電流とコレクタ電流とが合算されてエミッタ電流として出力される。エミッタ電流は、ワイヤ14および第1電極11を介して照度演算部2に入力される。
【0039】照度演算部2は、照度センサ1からのエミッタ電流に基づいて、照度を演算するものである。照度演算部2は、たとえば CPU、ROMおよびRAMなどにより構成することができる。
【0040】ROMには、たとえばエミッタ電流と照度との関係を示すテーブルやこのテーブルに基づいて照度を演算するプログラムが格納されている。CPUおよびRAMは、 エミッタ電流を変数としてプログラムを実行し、エミッタ電流(受光量)に応じた照度を演算する。
【0041】本願発明者らは、P型半導体層34の厚みD(図3参照)のみが異なる4つの照度センサチップについて、分光感度特性を調べた。分光感度特性は、図1および図2に示したような照度センサの形態として測定した。その結果を図4に示した。なお、P型半導体層は、ドーパントとしてホウ素を拡散させることにより形成した。
【0042】P型半導体層の厚みは、P型半導体層34の上面34aからの深さの異なる位置での抵抗(Ω)、抵抗率(Ωcm)、キャリア密度(cm―3)を測定することにより決定した。より具体的には、これらの値の絶対値がピークとなる位置をP型半導体層の厚さとした。図5には、抵抗を黒三角、抵抗率を実線、キャリア密度を2点鎖線として一例を示したが、この例ではP型半導体層の厚さは、3.2μmである。このような測定の結果、上記4つの照度センサチップのP型半導体層の厚さは、それぞれ3.2μm、4.3μm、4.9μm、および5.1μmであった。
【0043】図4から分かるように、P型半導体層の厚みが相対的に小さければ、ピーク感度波長が可視光の波長範囲となる。P型半導体層の厚みが大きくなるほど、ピーク感度波長が長波長側にシフトしていく。この結果は、P型半導体層の厚みを調整すれば、可視光感度が高められ、ピーク感度波長が可視光の範囲にある照度センサチップ(照度センサ)を提供できることを意味している。今回の実験結果では、図4から推測されるように、P型半導体層の厚みを4μm以下とすればよいことが分かる。P型半導体層の厚みを3、2μmとすれば、ピーク感度波長が580〜600nmの範囲に照度センサチップ(照度センサ)が提供される。
【0044】一方、P型半導体層34の厚みDの下限は、2μmとするのが好ましい。P型半導体層34の厚みDを不当に小さくすれば、適切な NPN接合を達成するのが困難となるためである。すなわち、不純物拡散などの方法によりN+型半導体層35を形成する場合には、P型半導体層34の厚みを不当に小さくすれば、N-型半導体層33に不純物を拡散させることなく、P型半導体層34にのみ不純物を拡散させるのが困難となるからである。
【0045】このように、照度センサチップ13では、P型半導体層34の厚みDを調整することにより、ピーク感度波長が可視光の範囲となるように構成されている。そして、P型半導体層34の厚みDを適切なものとすることにより、ピーク感度波長を、明所視における比視感度ピーク波長に近づけることができる。したがって、照度センサチップ13(照度センサ1)では、明るさに対する人の感覚に相関させて、人の感覚に則して出力(エミッタ電流)が大小するものとなっている。その結果、照度測定装置X1では、人の感覚に則した照度が測定されることなる。
【0046】照度センサチップ13は、P型半導体層34の厚みDを調整することにより、ピーク感度波長が可視光の範囲とされているので、製造コスト的に有利である。第1に、ピーク感度波長を可視光の範囲にするための赤外光カットフィルタが不要となるため、製造コスト的に有利である。第2に、たとえば不純物拡散によりP型半導体層34を形成する場合には、P型半導体層34の厚みDの調整は拡散条件を調整するだけでよいために、製造ラインを変更することなく既存の製造ラインを使用でき、製造コスト的に有利である。
【0047】照度測定装置X1は、携帯電話などで使用される反射型の液晶表示装置について、それの光源を点灯させるか否かを判断するために使用することができる。上述したように、照度測定装置X1では人の感覚に則した照度が測定される。人が明るいと感じるときは、液晶表示装置の表示画面が明るくて表示画像を視認しやすい。一方、人が暗いと感じるときは、表示画面が暗くて表示画像を視認しにくい。そのため、人の感覚に則して照度が測定できれば、表示画像を視認しにくい環境下でのみ光源を点灯させることができるようになる、その結果、光源の無駄な点灯を防止でき、消費電力の低減を図ることができる。
【0048】次に、本願発明の第2の実施の形態に係る照度測定装置X2を図6および図7を参照して説明する。
【0049】照度測定装置 X2は、第1の照度センサ1、第2の照度センサ5、および照度演算部6を有している。第1の照度センサ1は、本願発明の第1の実施の形態で採用されていた照度センサと同一物である。したがって、照度センサ1は、主として可視光の受光量に応じた電気信号(エミッタ電流)を出力する。エミッタ電流は、ワイヤ14および第2電極12を介して照度演算部6に入力される。なお、図6においては、第1の照度センサ1およびその構成要素については、図1および図2R>2の照度センサおよびその構成要素と同一の符号を付してある。
【0050】一方、第2の照度センサ5は、その基本的な構成および動作が第1の照度センサ1と同様なものとされている。すなわち、第2の照度センサ5は、実装基板50、第1および第2電極51,52、照度センサチップ53、ワイヤ54、および樹脂パッケージ55を有している。
【0051】ただし、樹脂パッケージ55、可視光を選択的に吸収するように構成されている。より具体的には、樹脂パッケージ55は、たとえばエポキシ樹脂などに対して、黒色顔料を添加することにより黒色に着色されている。黒色顔料としては、黒色酸化鉄、CdTe、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0052】第2の照度センサチップ53は、照度センサチップ13と同一または略同一の分光感度特性を有するものであり(図4のD=3.2μm参照)、たとえば第1の照度センサチップ13と同一物である。
【0053】第2の照度センサ5では、黒色に着色された樹脂パッケージ55に照度センサチップ53が封止されている。そのため、樹脂パッケージ55において可視光が吸収され、照度センサチップ53には、赤外光が選択的に入射する。したがって、第2の照度センサ5は、図7に示したように赤外光の受光量に応じた電気信号(エミッタ電流)を出力する。エミッタ電流は、ワイヤ54および第2電極52を介して照度演算部6に入力される(図6参照)。
【0054】とくに、第2の照度センサ5では、第1の照度センサ1と同一または略同一の分光感度特性を有する照度センサチップ53が採用されているため、図7に良く表れているように第2の照度センサ5の分光感度特性は、第1の照度センサ1における赤外光領域での分光感度特性と略一致している。
【0055】照度演算部6は、第1の照度センサ1の出力(エミッタ電流)から第2の照度センサ5の出力(エミッタ電流)を差分して、その差分量から照度を演算するものである。照度演算部6は、たとえば差分アンプ、 CPU、ROMおよびRAMなどにより構成することができる。
【0056】差分アンプは、第1の照度センサ1からのエミッタ電流と、第2の照度センサ5からのエミッタ電流とを差分して出力するものである。
【0057】CPU、ROMおよびRAMは、差分アンプからの出力に基づいて、照度を演算するものである。ROMには、たとえば出力と照度との関係を示すテーブルやこのテーブルに基づいて照度を演算するプログラムが格納されている。CPUおよびRAMは、 差分アンプからの出力を変数としてプログラムを実行し、出力に応じた照度を演算する。
【0058】照度測定装置 X2では、図7を参照して説明したように第2の照度センサ5の分光感度特性が第1の照度センサ1における赤外光領域での分光感度特性と略一致している。そのため、第1の照度センサ1のエミッタ電流から第2の照度センサ5のエミッタ電流を差分したものは、可視光の光量に略対応したものとなっている。したがって、第1および第2照度センサ1,5のエミッタ電流の差分量を用いて照度を演算すれば、より人の感覚に則して照度を測定することができる。
【0059】照度センサチップ53においては、P型半導体層(図3参照)を覆うように可視光カットフィルタを設けてもよい。その場合には、樹脂パッケージ55を透明に構成してもよい。
【0060】次に、本願発明の第3の実施の形態に係る照度測定装置を、図8および図9を参照して説明する。
【0061】照度測定装置X3は、1つの絶縁基板70に対して、図6に示した照度センサ1、5に相当するものを造り込んだものである。なお、図8および図9においては、図6に示した照度センサ1、5の構成要素に対応するものには、同一の符号を付してある。
【0062】絶縁基板70には、第1電極11,51および第2電極12,52が形成されている。第1電極11,51には、照度センサチップ13,53が実装されている。これらの照度センサチップ13,53は、同一または略同一の分光感度特性を有するものであり、好ましくは同一物である。照度センサチップ13,53は、第2電極12,52とワイヤ14,54を介して接続されている。
【0063】照度センサチップ13およびワイヤ14は、第1樹脂パッケージ15により封止されている。照度センサチップ53およびワイヤ54は、第2樹脂パッケージ55により封止されている。第1樹脂パッケージ15は透明に、第2樹脂パッケージ55は、たとえば黒色に形成されている。第1および第2樹脂パッケージ15、55は、第3樹脂パッケージ71により覆われている。第3樹脂パッケージ71は、透明に形成されている。
【0064】照度演算部6は、照度センサチップ13の出力から照度センサチップ53の出力を差分し、その差分量から照度を演算するものである。この照度演算部6は、たとえば差分アンプ、 CPU、ROMおよびRAMなどにより構成することができる。
【0065】照度測定装置X3は、その基本構成および動作が照度測定装置X2と同様であるため、照度測定装置X2と同様の効果を享受できる。
【0066】照度センサ7においては、第3樹脂パッケージ71を省略して照度センサを構成してもよい。照度センサチップ53においては、P型半導体層(図3参照)を覆うように可視光カットフィルタを設けてもよい。その場合には、樹脂パッケージ55を透明に構成し、あるいは照度センサチップ13、53を1つの透明樹脂パッケージにより封止してもよい。
【0067】本願発明では、照度センサチップをPNP型のフォトトランジスタとして構成してもよい。その場合には、N型半導体層の厚みを調整することにより、分光感度特性におけるピーク感度波長が可視光の波長範囲となるように形成される。
【0068】照度センサチップは、フォトダイオードとして構成してもよい。その場合にも、PN接合部までの距離(図3のP型半導体層34の厚みDに相当するもの)を調整することにより、分光感度特性におけるピーク感度波長が可視光の波長範囲となるように形成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の第1の実施の形態に係る照度測定装置を、一部を模式化して示した斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】照度センサチップの断面図である。
【図4】本願発明に係る照度センサチップおよびこれとは P型半導体層の厚みが異なる従来の照度センサチップの分光感度特性を示すグラフである。
【図5】照度センサチップのP型半導体層の厚みを決定するための測定結果の一例を示すグラフである。
【図6】本願発明の第2の実施の形態に係る照度測定装置を、一部を模式化して示した斜視図である。
【図7】図6に示した2つの照度センサの分光感度特性を示すグラフである。
【図8】本願発明の第3の実施の形態に係る照度測定装置を、一部を模式化して示した斜視図である。
【図9】図8のIX―IX線に沿う断面図である。
【符号の説明】
X1〜X3 照度測定装置
1,5,7 照度センサ
2,6 照度演算部
13 (第1の)照度センサチップ
15 (第1)1樹脂パッケージ
33 N-型半導体層(第1半導体層)
34 P型半導体層(第2半導体層)
53 (第2の、追加の)照度センサチップ
55 (第2)樹脂パッケージ
71 第3樹脂パッケージ
D (P型半導体層)厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1半導体層と、上記第1半導体層に接合された第2半導体層と、を有し、上記第1半導体層と上記第2半導体層との接合部分に上記第2半導体層を介して光が入射した場合に、上記接合部分への入射光量に応じた電気信号を出力するように構成されており、かつ、上記第2半導体層の厚みは、上記電気信号の出力量を基準とした分光感度特性におけるピーク感度波長が、可視光の波長範囲となるように設定されていることを特徴とする、照度センサチップ。
【請求項2】 上記第2半導体層の厚みは、4μm以下である、請求項1に記載の照度センサチップ。
【請求項3】 上記第2半導体層の厚みは、2μm以上である、請求項2に記載の照度センサチップ。
【請求項4】 上記ピーク感度波長は、580〜600nmである、請求項1ないし3のいずれかに記載の照度センサチップ。
【請求項5】 上記第2半導体層は、シリコン半導体である、請求項1ないし4のいずれかに記載の照度センサチップ。
【請求項6】 フォトトランジスタとして構成されている、請求項1ないし5のいずれかに記載の照度センサチップ。
【請求項7】 上記フォトトランジスタは、npn接合を有している、請求項6に記載の照度センサチップ。
【請求項8】 請求項1ないし7のいずれかに記載した照度センサチップを備えたことを特徴とする、照度センサ。
【請求項9】 上記照度センサチップと分光感度特性が同一または略同一である追加の照度センサチップと、上記追加の照度センサチップに対して、可視光を吸収してから入射光を受光させるための可視光カット部と、をさらに備えている、請求項8に記載の照度センサ。
【請求項10】 上記追加の照度センサチップは、黒色に着色した樹脂パッケージ内に封止されている、請求項9に記載の照度センサ。
【請求項11】 上記照度センサチップは透明な第1樹脂パッケージに封止され、上記追加の照度センサチップは、黒色に着色した第2樹脂パッケージに封止されている、請求項9に記載の照度センサ。
【請求項12】 上記第1および第2樹脂パッケージは、透明な第3樹脂パッケージにより封止されている、請求項11に記載の照度センサ。
【請求項13】 第1半導体層と、上記第1半導体層に接合された第2半導体層と、を備え、かつ、上記第1半導体層と上記第2半導体層との接合部分に上記第2半導体層を介して光が入射した場合に、上記接合部分への入射光量に応じた電気信号を出力するように構成された第1および第2の照度センサチップと、可視光を吸収してから上記第2の照度センサチップの接合部に対して入射光を受光させるための可視光カット部と、上記第1および第2の照度センサチップからの出力に基づいて、照度を演算するための照度演算部と、を備えていることを特徴とする、照度測定装置。
【請求項14】 上記第2の照度センサチップは、上記第1の照度センサチップと同一または略同一の分光感度特性を有している、請求項13に記載の照度測定装置。
【請求項15】 上記照度演算部は、上記第1の照度センサチップからの出力と、上記第2の照度センサチップからの出力との差分に相当する信号に基づいて、照度を演算する、請求項13または14に記載の照度測定装置。
【請求項16】 第1および第2の照度センサチップを用いて照度を測定する方法であって、上記第1および第2の照度センサチップは、第1半導体層と、上記第1半導体層に接合された第2半導体層と、を備え、かつ、上記第1半導体層と上記第2半導体層との接合部分に上記第2半導体層を介して光が入射した場合に、上記接合部分への入射光量に応じた電気信号を出力するように構成されており、上記第1および第2の照度センサからの出力に基づいて、照度を演算することを特徴とする、照度測定方法。
【請求項17】 上記第1の照度センサチップおよび上記第2の照度センサチップは、同一または略同一の分光感度特性を有してしており、かつ、上記第2の照度センサチップには、可視光を吸収してから光が入射させられる、請求項16に記載の照度測定方法。
【請求項18】 上記第1の照度センサチップからの出力と、上記第2の照度センサチップからの出力との差分に相当する信号に基づいて、照度を演算する、請求項17に記載の照度測定方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図6】
image rotate


【図9】
image rotate


【図5】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【公開番号】特開2002−176192(P2002−176192A)
【公開日】平成14年6月21日(2002.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−276150(P2001−276150)
【出願日】平成13年9月12日(2001.9.12)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】