説明

熱伝導シート及び放熱装置

【課題】熱伝導性と取扱い性に優れる熱伝導シートを提供する。
【解決手段】熱伝導シートに、ガラス転移温度が50℃以下であり、熱可塑性であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)と、鱗片状、楕球状又は棒状である黒鉛粒子及び六方晶窒化ほう素粒子から選択される少なくとも1種であり、(0001)結晶面が前記鱗片の面方向、前記楕球の長軸方向又は前記棒の長軸方向に配向している無機粒子(B)と、フェノール系高分子化合物(C)とを含有させ、前記無機粒子(B)の前記鱗片の面方向、前記楕球の長軸方向又は前記棒の長軸方向を、厚み方向に配向して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導シート及び放熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多層配線板、半導体パッケージに対する配線の高密度化や、電子部品の搭載密度が大きくなり、また半導体素子も高集積化して単位面積当たりの発熱量が大きくなったため、半導体パッケージからの熱放散を向上することが望まれるようになっている。
【0003】
一般に半導体パッケージのような発熱体とアルミや銅等の放熱体との間に、熱伝導グリース又は熱伝導シートを挟んで密着させることにより熱を放散する放熱装置が使用されている。一般に熱伝導グリースに比べて熱伝導シートの方が放熱装置を組み立てる際の作業性に優れている。
【0004】
発熱体と放熱体との間に熱伝導グリース又は熱伝導シートを挟んで密着させる方法には、常温でバネなどを用いて加圧する方法、加熱圧着する方法等がある。前者は簡便でリワーク性を持たせやすい利点があるが、加熱されないため、十分な密着が得難い場合がある。一方、高温で加熱圧着させる方法には、常温での強度と圧着時の密着に必要な柔軟性とを両立させやすい利点があり、特に発熱の激しいデスクトップPCやサーバー等のCPU−スプレッダ間等の密着方法では、後者のような手法がとられる。
【0005】
また、近年CPUのチップはマルチコア化、マルチチップ化により大面積化する傾向があり、圧着圧力は低圧化する傾向があり、更なる圧着時の柔軟性が求められている。
【0006】
デスクトップPCのCPU−スプレッダ間では一般に金属インジウム又は熱伝導グリースが用いられている。熱伝導グリースは熱伝導率が低いため、薄膜化しないと低熱抵抗化できず、また薄膜化すると信頼性が低下するため、発熱が激しいチップに対応できない問題点がある。一方、金属インジウムは融着する際に150℃程度以上の加熱を要し、また、しっかり接合させるため、チップやスプレッダに表面処理を施す必要があるので工程が煩雑となる。さらに金属インジウムはレアメタルなので資源量に制約がある。
【0007】
一般的に熱伝導シートは、熱伝導フィラを充填した樹脂シートの形態をとっていることが多く、架橋したシリコーンゲルにアルミナ等の無機フィラを充填した、いわゆるシリコーンゲルシートや、パラフィンやEVA等の半導体の作動時の熱で液化する樹脂にアルミナ等の無機フィラを充填した、いわゆるフェーズチェンジシート等が一般に用いられている。しかしながらこれらは発熱量の多いデスクトップPCやサーバー等のCPU−スプレッダ間等に用いることができるほど熱伝導率が高くない。
【0008】
熱伝導フィラを充填した樹脂シートの熱伝導率を飛躍的に向上させる手法の一つとして、熱伝導フィラとして、特に熱伝導性の大きな無機粉末を選択し、さらにそれをシート面に対し垂直に配向させた熱伝導シートが種々提案されている。
例えば、シート面に関してほぼ垂直な方向に熱伝導フィラ(窒化ホウ素)が配向した熱伝導シート(例えば、特許文献1参照)や、ゲル状物質に分散された炭素繊維がシート面に対して垂直に配向した構造の熱伝導シート(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−26202号公報
【特許文献2】特開2005−82721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、2に記載された熱伝導シートのように熱伝導フィラをシート面に対して垂直配向に配向させるとシートの引き裂き強度が弱くなるため、ハンドリング強度を保つ上で薄膜化しにくく、その結果として熱抵抗を充分に下げ難くなることがある。また強度を保つために樹脂架橋するとシートの変形性が規制される結果、特に薄膜化した場合には充分な密着が得られず、熱抵抗を充分に下げ難くなる傾向があった。
【0011】
本発明は、熱伝導性と取扱い性に優れる熱伝導シートを提供することを課題とする。また本発明は、高い放熱能力を有する放熱装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、熱伝導シートの組成中に、ガラス転移温度が50℃以下であり、熱可塑性であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)と、鱗片状、楕球状又は棒状であり、結晶中の(0001)結晶面が、鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している黒鉛粒子及びは六方晶窒化ほう素粒子から選択される少なくとも一種である無機粒子(B)と、フェノール系高分子化合物(C)とを含有させ、かつ無機粒子(B)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向を、熱伝導シートの厚み方向に配向させることにより、熱伝導性と取扱い性に優れた熱伝導シートが得られることを見出した。
【0013】
すなわち本発明は、以下の通りである。
<1> ガラス転移温度が50℃以下であり、熱可塑性であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)と、鱗片状、楕球状又は棒状である黒鉛粒子及び六方晶窒化ほう素粒子から選択される少なくとも1種であり、(0001)結晶面が前記鱗片の面方向、前記楕球の長軸方向又は前記棒の長軸方向に配向している無機粒子(B)と、フェノール系高分子化合物(C)と、を含有し、前記無機粒子(B)の前記鱗片の面方向、前記楕球の長軸方向又は前記棒の長軸方向が、厚み方向に配向している熱伝導シートである。
かかる熱伝導シートは、高い熱伝導性を有し、常温における取扱い性にいてフリーフィルムでのハンドリングが可能な強度を有し、放熱用途に好適に使用できる。
【0014】
<2> 前記フェノール系高分子化合物(C)の軟化温度が50℃以上200℃以下である、前記<1>に記載の熱伝導シートである。
これにより、更に常温での強度と熱圧着時の密着性を高いレベルで両立できる。
【0015】
<3> 前記無機粒子(B)の含有率が総質量中の40質量%以上75質量%以下であり、前記フェノール系高分子化合物(C)の含有率が総質量から前記無機粒子(B)を除いた質量中の10質量%以上75質量%以下である、前記<1>又は<2>に記載の熱伝導シートである。
これにより、更に高熱伝導性と薄膜での高い密着性を達成できる。
【0016】
<4> 前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)は、(メタ)アクリル酸n-ブチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルの少なくとも一方に由来する構造単位を含み、重量平均分子量が20万以上60万以下である、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の熱伝導シートである。
これにより、更に強度と応力緩和性の両立性に優れる熱伝導シートを構成できる。
【0017】
<5> 前記フェノール系高分子化合物(C)は、テルペンフェノール樹脂である、前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の熱伝導シートである。
これにより、更に強度と応力緩和性の両立性に優れる熱伝導シートを構成できる。
【0018】
<6> りん酸エステル系の難燃剤(D)をさらに含む、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の熱伝導シートである。
これにより、難燃性に優れる熱伝導シートを構成できる。
【0019】
<7> 前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)の含有率が総質量中の5質量%以上25質量%以下であり、前記無機粒子(B)の含有率が総質量中の40質量%以上75質量%以下であり、前記フェノール系高分子(C)の含有率が総質量中の5質量%以上40質量%以下であり、前記りん酸エステル系の難燃剤(D)の含有率が総質量中の10質量%以上40質量%以下である、前記<6>に記載の熱伝導シートである。
これにより、常温での強度、熱伝導性、熱圧着時の密着性、薄膜での高い密着性、難燃性のいずれにおいても優れる熱伝導シートを構成できる。
【0020】
<8> 発熱体と、放熱体と、前記発熱体と前記放熱体との間に、前記発熱体及び前記放熱体の双方に接するように配置された、前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の熱伝導シートと、を有する放熱装置である。
これにより、高い放熱能力を有する放熱装置を構成できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、熱伝導性と取扱い性に優れる熱伝導シートを提供することができる。また本発明によれば、高い放熱能力を有する放熱装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0023】
<熱伝導シート>
本発明の熱伝導シートは、ガラス転移温度が50℃以下であり、熱可塑性であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)と、鱗片状、楕球状又は棒状である黒鉛粒子及び六方晶窒化ほう素粒子の少なくとも1種であり、(0001)結晶面が前記鱗片の面方向、前記楕球の長軸方向又は前記棒の長軸方向に配向している無機粒子(B)と、フェノール系高分子化合物(C)とを含有し、前記無機粒子(B)の前記鱗片の面方向、前記楕球の長軸方向又は前記棒の長軸方向が、厚み方向に配向していることを特徴とする。
かかる構成の熱伝導シートは、優れた熱伝導性と取扱い性を有する。特に常温においてフリーフィルムでのハンドリングが可能な強度を持ち、さらに薄膜での高い密着性を持つことから、放熱用途に好適である。
【0024】
(A)ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)は、ガラス転移温度(Tg)が50℃以下であるが、好ましくは−70℃〜20℃、より好ましくは−60℃〜0℃である。
ガラス転移温度(Tg)が50℃を超える場合は、柔軟性に劣り、発熱体及び放熱体に対する密着性が不十分となる場合がある。
なお、ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量装置(DSC)により、通常の条件で測定される。
また、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物を構成するモノマーの種類及び含有率を適宜選択することで、ガラス転移温度を所望の範囲とすることができる。
【0025】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)は熱可塑性を有する。ここで熱可塑性とは、加熱により任意に形状を変えられることを意味する。
具体的には例えば、非架橋のポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物や、加熱により水素結合等による擬似架橋を可逆的に切断−再結合することが可能なポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物等を挙げることができる。
一方、化学結合による架橋により3次元網目構造をもったポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物は加熱により任意に形状を変えがたくなるため、本明細書でいう熱可塑性のポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)には該当しない。
【0026】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルを含み、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマーを含むモノマー組成物を重合させることで得ることができる。
ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方を意味する。
【0027】
モノマー組成物を構成する(メタ)アクリル酸エステルは、熱伝導シートの熱伝導性と柔軟性の観点から、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、炭素数2〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることがより好ましい。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基は、環状、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。また前記アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、グリシジル基、ジアルキルアミノ基等を挙げることができる。
【0028】
前記(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の無置換の(メタ)アクリル酸エステルや、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
これらは1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)における(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有率は特に制限されない。熱伝導シートの熱伝導性と柔軟性の観点から、70質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。
【0030】
モノマー組成物を構成する(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等のカルボキシ基含有モノマー、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、スチレン等のスチレン系モノマー等を挙げることができる。
これらは1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)における(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマーに由来する構造単位の含有率は特に制限されない。熱伝導シートの熱伝導性と柔軟性の観点から、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)の重量平均分子量は特に制限されない。熱伝導シートの熱伝導性と柔軟性の観点から、10万以上100万以下であることが好ましく、20万以上60万以下であることがより好ましい。
尚、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の重量平均分子量は、GPCを用いる通常の方法により測定することができる。
【0033】
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)は、強度と応力緩和性の観点から、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル及びアクリル酸エチルから選択される少なくとも1種に由来する構造単位を含み、重量平均分子量が10万以上100万以下であることが好ましく、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルの少なくとも一方に由来する構造単位を含み、重量平均分子量が20万以上60万以下であることがより好ましい。
【0034】
また 前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)は、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、カルボキシ基含有モノマー及びニトリル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位とを含み、重量平均分子量が、10万以上100万以下であることが好ましく、炭素数2〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来し、含有率が70質量%〜98質量%である構造単位と、カルボキシ基含有モノマー及びニトリル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種に由来し、含有率が2質量%〜30質量%である構造単位とを含み、重量平均分子量が20万以上60万以下であることがより好ましい。
【0035】
また前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)は、炭素数1〜12の無置換のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、ヒドロキシ基及びグリシジル基から選ばれる置換基を有するアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位とを含むこともまた好ましく、炭素数2〜8の無置換のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来し、含有率が70質量%〜98質量%である構造単位と、ヒドロキシ基及びグリシジル基から選ばれる置換基を有するアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来し、含有率が2質量%〜30質量%である構造単位とを含むことがより好ましい。
【0036】
さらにまた前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)は、炭素数1〜12の無置換のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、ヒドロキシ基及びグリシジル基から選ばれる置換基を有するアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位とを含み、重量平均分子量が10万以上100万以下であることもまた好ましく、炭素数2〜8の無置換のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来し、含有率が70質量%〜98質量%である構造単位と、ヒドロキシ基及びグリシジル基から選ばれる置換基を有するアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来し、含有率が2質量%〜30質量%である構造単位とを含み、重量平均分子量が20万以上60万以下であることがより好ましい。
【0037】
熱可塑性であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)の含有率は、熱伝導シートの総質量中に3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましい。
3質量%以上であることで、シートが脆くなることを抑制できる傾向があり、30質量%以下であることで、熱伝導性や強度がより向上する傾向がある。
【0038】
(B)無機粒子
熱伝導シートは、鱗片状、楕球状又は棒状である黒鉛粒子及び六方晶窒化ほう素粒子から選択される少なくとも1種であり、(0001)結晶面が前記鱗片の面方向、前記楕球の長軸方向又は前記棒の長軸方向に配向している無機粒子の少なくとも1種を含む。
かかる特定構造の無機粒子を含むことで、優れた熱伝導性を達成することができる。
【0039】
無機粒子の形状は、鱗片状、楕球状又は棒状であり、中でも鱗片状が好ましい。無機粒子の形状が鱗片状、楕球状又は棒状であることで、熱伝導性と成形性に優れた熱伝導シートを構成することができる。
一方、無機粒子の形状が、球状や不定形の場合は熱伝導性に劣る場合があり、繊維状の場合はシートに成形するのが困難で生産性に劣る場合がある。
【0040】
前記無機粒子は、黒鉛粒子及び六方晶窒化ほう素粒子から選択される少なくとも1種である。従って無機粒子の結晶は六方晶形をとる。前記無機粒子は、六方晶形において6員環が形成される面(以下、「六員環面」ともいう)、すなわち(0001)結晶面が粒子中で特定の方向に配向している。具体的には、無機粒子の形状が鱗片状の場合には(0001)結晶面が鱗片の面方向に配向している。また無機粒子の形状が前記楕球状の場合には(0001)結晶面が楕球の長軸方向に配向している。さらに無機粒子の形状が棒状の場合には(0001)結晶面が棒の長軸方向に配向している。無機粒子がかかる特定の結晶構造を有することで熱伝導性に優れる。
ここで無機粒子の形状が楕球状又は棒状の場合における長軸とは、無機粒子をSEM(走査型電子顕微鏡、倍率20〜200倍程度)を用いて観察し、2つの平行な平面で無機粒子を挟んだ場合に、その平面間の距離が最大となるように選ばれる平面と無機粒子との2つの接点を通る軸を意味する。
【0041】
このような無機粒子中における(0001)結晶面の配向性は、X線回折測定により確認することができる。具体的には以下のようにして確認することができる。
先ず、無機粒子(B)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が、シート又はフィルムの面方向に対して実質的に平行に配向した測定用サンプルシートを作製する。測定用サンプルシート調製の具体的な方法としては、10体積%以上の黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子を含む、樹脂との混合物をシート化する。ここで用いる「樹脂」とは、熱可塑性であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)に相当する樹脂を使用できる。また非晶質樹脂のようなX線回折の妨げになるピークが現れない材料や、形状を作ることが可能である材料であれば、樹脂でなくても用いることができる。
【0042】
この混合物のシートを元の厚みの1/10以下となるようにプレスする。次いでプレスしたシートを積層し、この積層体を更に1/10以下まで押しつぶす操作を3回以上繰り返す。この操作により、調製した測定用サンプルシート中では、無機粒子(B)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が、測定用サンプルシートの面方向に対し実質的に平行に配向した状態になる。
【0043】
上記のように調製した測定用サンプルシートの表面に対し、黒鉛粒子、六方晶窒化ほう素粒子のいずれの場合も、X線回折測定を行うと、2θ=77°付近に現れる黒鉛粒子又は六方晶ほう素粒子の(110)面に対応するピークの高さを、2θ=27°付近に現れる黒鉛又は六方晶窒化ほう素粒子の(002)面に対応するピークの高さで割った値が0〜0.02となる。
以上のことから、「結晶中の(0001)結晶面が鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している」とは、無機粒子(B)及び熱可塑性であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)等を含有した組成物をシート化したものの表面に対し、X線回折測定を行い、黒鉛粒子、六方晶窒化ほう素粒子いずれの場合も、2θ=77°付近に現れる黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子の(110)面に対応するピークの高さを、2θ=27°付近に現れる黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子の(002)面に対応するピークの高さで割った値が0〜0.02となる状態であることが分かる。
【0044】
前記黒鉛粒子としては、例えば、鱗片黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、薄片化黒鉛粉末、酸処理黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末、炭素繊維フレーク等の鱗片状、楕球状又は棒状の、黒鉛粒子を用いることができる。
また前記六方晶窒化ほう素粒子としては、板状窒化ほう素粉末、鱗片状窒化ほう素粉末等が挙げられる。
これらは、市販の黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子から適宜選択して用いることができる。
【0045】
前記無機粒子としては、熱可塑性であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)と混合した際に、鱗片状の黒鉛粒子になり易いものが好ましい。具体的には、薄片化黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末の鱗片状黒鉛粒子であることが好ましい。これにより黒鉛粒子を所望の状態に配向させ易く、粒子間接触も保ち易く、高い熱伝導性を達成することができる。
【0046】
無機粒子(B)の大きさは特に制限されないが、熱伝導性の向上の観点から、長径の平均値が、熱伝導シートの膜厚×0.8以上であることが好ましい。このような大きさであると、無機粒子が熱伝導シートを厚み方向にほぼ貫通することになり、優れた熱伝導性が達成できる。尚、理論最大値は全数貫通の場合であり、膜厚×1である。
ここで「長径の平均値」とは、熱伝導シートの厚み方向の断面をSEM(走査型電子顕微鏡、倍率20〜200倍程度)を用いて観察し、任意の50個の無機粒子について見えている方向から長径を測定し、平均値を求めた結果をいう。
また無機粒子の長径は、観察される無機粒子を平行な2つの面で挟んだ場合に、2つの面の距離が最大になる長さである。
【0047】
また無機粒子(B)の重量平均粒子径は特に制限されないが、熱伝導性と柔軟性の観点から、20μm〜1000μmであることが好ましく、40μm〜500μmであることがより好ましい。
尚、無機粒子(B)の重量平均粒子径は、通常、JISふるいで分級し、各粒径成分の重量を電子天秤にて秤量し、重量分布曲線を得ることにより測定される。
【0048】
熱伝導シートにおける無機粒子(B)の含有率は特に制限されず、無機粒子の形状や種類によって適宜選択することができる。中でも、熱伝導シート全体の質量中に40質量%〜80質量%であることが好ましく、50質量%〜75質量%であることがより好ましい。
無機粒子の含有率が40質量%以上であると、熱伝導性がより向上する傾向がある。また80質量%以下であると、熱伝導シートの柔軟性が向上し、密着性が向上する傾向がある。
【0049】
(C)フェノール系高分子化合物
熱伝導シートは、フェノール系高分子化合物の少なくとも1種を含む。フェノール系高分子化合物を含むことで、熱伝導シートの機械的強度が向上し、保護フィルム等を有さない熱伝導シート自体(以下、「フリーフィルム」ともいう)の取り扱い性に優れる。
フェノール系高分子化合物として具体的には、例えば、クレゾールノボラック樹脂、フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン環型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。
これらのフェノール系高分子化合物は、市販のフェノール系高分子化合物から適宜選択して用いることができる。
【0050】
中でもテルペンフェノール樹脂及びフェノールノボラック樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、テルペンフェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
これらのフェノール系高分子化合物は、安定性が高く、かつポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)との相溶性に優れるため、熱伝導シートを構成した場合に、より優れた熱伝導性と柔軟性を達成することができる。
【0051】
テルペンフェノール樹脂は天然樹脂抽出成分をフェノール樹脂変性したものであり、例えば、ヤスハラケミカル製YSポリスター及びマイティエース、荒川化学製タマノル、並びに海西爾(厦門)化工有限公司TPシリーズ等を挙げることができる。
またフェノールノボラック樹脂としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等の単官能フェノールや、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の2官能フェノール、さらには1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等の3官能フェノールなどをメチレン鎖等で連結したフェノールノボラック樹脂や、単官能又は多官能フェノールとキシリレングリコールジアルキルエーテル等をメチレン鎖等で連結したフェノールノボラック樹脂を挙げることができる。具体的には例えば、フェノール・p−キシレングリコールジメチルエーテル重縮合物等を挙げることができる。
【0052】
前記フェノール系高分子化合物の軟化温度は特に制限されないが、熱伝導シートの強度と熱圧着時の密着性の観点から、50℃以上200℃以下であることが好ましく、80℃以上160℃以下であることがより好ましい。
フェノール系高分子化合物の軟化温度が50℃以上であると常温での強度がより向上し取り扱い性がより向上する傾向がある。また200℃以下であると、熱圧着時の密着性がより向上したり、製造時の混合性がより向上したりする傾向がある。
尚、軟化温度は、環球法(JIS−K2207)で測定される。
またフェノール系高分子化合物を構成するモノマーの種類、含有率、重合度等を適宜選択することで、軟化温度を所望の範囲とすることができる。
【0053】
フェノール系高分子化合物の重量平均分子量は特に制限されない。熱伝導シートの強度と柔軟性の観点から、200以上10000以下であることが好ましく、500以上2000以下であることがより好ましい。
尚、フェノール系高分子化合物の重量平均分子量は、GPCを用いる通常の方法により測定することができる。
【0054】
熱伝導シートにおけるフェノール系高分子化合物(C)の含有率は特に制限されないが、熱伝導シートの総質量から無機粒子(B)を除いた質量中に10質量%以上75質量%以下であることが好ましく、12質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
含有率が10質量%以上であると、常温での強度がより向上する。また75質量%以下であると、シートが脆くなることを抑制できる。また熱圧着時に圧縮されすぎることが抑制され、無機粒子(B)の厚み方向への配向を所望の状態に維持することができ、優れた熱伝導性を達成できる傾向がある。
【0055】
熱伝導シートは、熱伝導性、強度、柔軟性の観点から、テルペンフェノール樹脂及びフェノールノボラック樹脂から選ばれる少なくとも1種のフェノール系高分子化合物(C)を、熱伝導シートの総質量から無機粒子(B)を除いた質量中に10質量%以上75質量%以下含むことが好ましく、テルペンフェノール樹脂及びフェノールノボラック樹脂から選ばれ、軟化温度が50℃以上200℃以下であるフェノール系高分子化合物を、熱伝導シートの総質量から無機粒子(B)を除いた質量中に12質量%以上60質量%以下含むことがより好ましい。
【0056】
熱伝導シートにおけるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)とフェノール系高分子化合物(C)の含有比は特に制限されないが、強度と応力緩和性と柔軟性の観点から、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)に対するフェノール系高分子化合物(C)の含有比((C)/(A))として0.3〜3であることが好ましく、0.6〜2であることがより好ましい。
【0057】
さらに熱伝導シートは、強度と応力緩和性と柔軟性の観点から、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル及び(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルから選択される少なくとも1種に由来する構造単位を含み、重量平均分子量が10万以上100万以下である(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)と、テルペンフェノール樹脂及びフェノールノボラック樹脂から選択されるフェノール系高分子化合物(B)とを含むことがより好ましく、アクリル酸n−ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルの少なくとも一方に由来する構造単位を含み、重量平均分子量が20万以上60万以下であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)と、テルペンフェノール樹脂であるフェノール系高分子化合物(B)とを含むことがより好ましい。
【0058】
(D)難燃剤
熱伝導シートは難燃剤の少なくとも1種を含有することができる。難燃剤としては特に限定されず、例えば、赤りん系の難燃剤やりん酸エステル系の難燃剤等から適宜選択して用いることができる。
本発明においては、りん酸エステル系の難燃剤の少なくとも1種であることが好ましい。りん酸エステル系の難燃剤は安全性が高い上、可塑効果により密着性を向上する効果に優れる。
【0059】
赤りん系の難燃剤としては、純粋な赤りん粉末の他に、安全性や安定性を高める目的で種々のコーティングを施したもの、マスターバッチになっているもの等が挙げられる。具体的には、例えば、燐化学工業株式会社製、商品名:ノーバレッド、ノーバエクセル、ノーバクエル、ノーバペレット等が挙げられる。
【0060】
りん酸エステル系の難燃剤しては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等の脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート、トリス(t−ブチル化フェニル)ホスフェート、トリス(イソプロピル化フェニル)ホスフェート、リン酸トリアリールイソプロピル化物等の芳香族リン酸エステル;レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビスジキシレニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステル等が挙げられる。
これらは1種類を用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
熱伝導シートにおける難燃剤(D)の含有率は特に制限されないが、難燃性と密着性の観点から、熱伝導シート中に10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、20質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
熱伝導シートがポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)、無機粒子(B)及びフェノール系高分子化合物に加えて、リン酸エステル系の難燃剤(D)を含む場合、各成分の含有率は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)の含有率が総質量中の5質量%以上25質量%以下であり、無機粒子(B)の含有率が総質量中の40質量%以上75質量%以下であり、フェノール系高分子化合物(C)の含有率が総質量中の5質量%以上40質量%以下であり、りん酸エステル系の難燃剤(D)の含有率が総質量中の10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
各成分の含有率が前記範囲であることにより、常温での強度、熱伝導性、熱圧着時の密着性、薄膜での高い密着性、難燃性のいずれにおいても優れる熱伝導シートを構成できる。
【0063】
本発明の熱伝導シートにおいては、無機粒子(B)が特定の方向に配向している。具体的には、無機粒子の形状が鱗片状の場合は鱗片の面方向が熱伝導シートの厚み方向に配向している。また無機粒子の形状が楕球状の場合は楕球の長軸方向が熱伝導シートの厚み方向に配向している。さらに無機粒子の形状が棒状の場合は棒の長軸方向が熱伝導シートの厚み方向に配向している。
無機粒子がこのように配向していることで、優れた熱伝導性が達成できる。
【0064】
本発明において「熱伝導シートの厚み方向に配向」とは、熱伝導シートの厚み方向の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の無機粒子について見えている方向から、無機粒子の面又は長軸方向の熱伝導シート表面に対する角度(90度以上の場合は補角を採用する)を測定し、その平均値が60〜90度の範囲になる状態をいう。
【0065】
無機粒子を上記のような特定の方向に配向させる方法としては、例えば、以下のようにして熱伝導シートを製造する方法を挙げることができる。
すなわち、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)、無機粒子(B)及びフェノール系高分子化合物を含むシート状の組成物であって、無機粒子の面又は長軸がシートの面に対して実質的に平行なシート状の組成物を、既述のようにして作製する。
作製したシート状の組成物を所定の枚数積層して積層体を形成する。得られた積層体を積層方向と平行な面で所望の厚さにスライスして熱伝導シートを製造することで、無機粒子の面又は長軸が熱伝導シートの厚み方向に配向した熱伝導シートを得ることができる。
【0066】
また本発明の熱伝導シートにおいては、粘着面を保護するために、使用前の熱伝導シートの粘着面を保護フィルムで覆っておいてもよい。
保護フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルナフタレート、メチルペンテンフィルム等の樹脂、コート紙、コート布、アルミ等の金属が使用できる。
これらの保護フィルムは、2種以上組み合わせて多層フィルムとしてもよく、保護フィルムの表面が、シリコーン系、シリカ系等の離型剤等で処理されたものが好ましく用いられる。
【0067】
<放熱装置>
本発明の放熱装置は、発熱体と放熱体と前記熱伝導シートとを有し、発熱体と放熱体との間に、熱伝導シートを発熱体及び放熱体の双方に接するように配置して得られる。
発熱体と放熱体との間に熱伝導シートが介在することで、発熱体からの熱を効率よく放熱体に伝導することができる。
【0068】
発熱体としては、その表面温度が200℃を超えないものが好ましい。発熱体の表面温度が200℃を超えないことで熱伝導シートの柔軟性の低下が抑制され、熱伝導性が低下することを抑制できる。
本発明の熱伝導シートを特に好適に使用できる温度範囲は−10℃〜120℃であり、半導体パッケージ、ディスプレイ、LED、電灯等が好適な発熱体の例として挙げられる。
【0069】
一方、放熱体としては、例えば、アルミ、銅のフィン・板等を利用したヒートシンク、ヒートパイプに接続されているアルミや銅のブロック、内部に冷却液体をポンプで循環させているアルミや銅のブロック、ペルチェ素子及びこれを備えたアルミや銅のブロック等が使用できる代表的なものである。
【0070】
本発明の放熱装置は、発熱体と放熱体に本発明の熱伝導シートの各々の面を接触させて配置したものである。発熱体、熱伝導シート及び放熱体を充分に密着させた状態で固定できる方法であれば、接触させる方法に制限はないが、50℃〜170℃に加熱され、0.1MPa〜2MPa程度に加圧される加熱圧着工程を伴って組み立てられることが好ましく、70℃〜150℃に加熱され、0.15MPa〜1MPa程度に加圧される加熱圧着工程を伴って組み立てられることがより好ましい。
【0071】
加熱温度が50℃以上、又は加圧圧力が0.1MPa以上であると、充分な密着を得ることができる傾向がある。また加熱温度が170℃以下、又は加圧圧力が2MPa以下であるとシートが圧縮されることが抑制されるため、無機粒子の配向状態が破壊されることが抑制され、熱抵抗の上昇を抑制できる傾向がある。
また放熱装置においては、発熱体と放熱体の間が別途ネジ、バネ、他の接着剤等の手段により固定されていることが、密着を持続させる上で好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0073】
(実施例1)
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)として、アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−280改2DR、共重合質量比:82/10/3/5、Tg:−39℃、重量平均分子量:53万):444g、無機粒子(B)として、鱗片状の膨張黒鉛粉末(日立化成工業株式会社製、商品名:HGF−L、質量平均径:270μm、前述のX線回折測定を用いた方法により、結晶中の六員環面が、鱗片の面方向に配向していることを確認した。):2156g、フェノール系高分子化合物(C)として、テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、商品名YSポリスターT145、軟化温度145℃):333g、りん酸エステル系の難燃剤(D)として、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(りん酸エステル系難燃剤、大八化学工業株式会社製、商品名:CR−741):1067gを4L加圧ニーダに投入し、到達温度156℃の条件で混練し、組成物を得た。
フェノール系高分子化合物(C)の含有率は、無機粒子(B)を除いた成分に対して18質量%であり、(A)、(B)、(C)、(D)の全体に対する含有率(単位:質量%)は、この順にそれぞれ11.1、53.9、8.3、26.7であった。
【0074】
この組成物を押出機に入れ、幅20cm、1.5mm〜1.6mm厚の平板形状に押出して一次シートを得た。
【0075】
得られた一次シートを、40mm×150mmの型刃を用いてプレス打ち抜きし、打ち抜いたシートを56枚積層し、厚さが80mmになるよう、積層方向に80℃で2分間圧力をかけ、成形体を得た。
【0076】
次いで、この成形体の80mm×150mmの積層断面(積層方向に平行な面)を木工用スライサーを用いてスライスし、縦80mm×横150mm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(I)を得た。
【0077】
<評価>
(無機粒子の配向性)
この熱伝導シート(I)の断面をSEMで観察し、任意の50個の黒鉛粒子(B)について見えている方向から、鱗片の長軸方向(面方向)の熱伝導シート表面に対する角度を測定したところ、角度の平均値は90度であり、黒鉛粒子(B)の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。
【0078】
(熱抵抗の測定)
熱伝導シートを厚さ1mm、直径13.75mmの銅板間に挟み、クリップ(PLUS社製 CP-107SI、はさみ力12N〜14N)2個で止めた(圧力換算値0.16〜0.18MPa)状態で120℃/30分の条件で圧着させ、室温冷却後にクリップをはずして評価用サンプルを作製した。
続いて、この評価用サンプルの25℃での熱伝導率を、熱拡散率測定装置(NETZCH社製、装置名:LFA447)を用いて測定した。予め、銅板の熱伝導率を測定しておき、当該装置の3層法により熱伝導シート部分の熱伝導率λ(W/mK)を求めた。熱抵抗Rth(K・cm/W)は、この値と膜厚t(mm)から下式により求めた。なお、膜厚t(mm)は圧着サンプルの厚みから予め測定しておいた上下の銅板の厚みを引く事で求めた値であり、マイクロメータで測定を行った。
Rth=10×t/λ (式)
【0079】
この熱伝導シート(I)の熱抵抗は0.036(K・cm/W)と良好な値を示した。
【0080】
(引張強度の測定)
引張強度は1cm×5cmに打ち抜いた熱伝導シートを用い、以下の装置・条件で測定した。
使用装置:東洋精機製 STROGRAPH E−S
温度:25℃
引張速度:10mm/分
なお、数値が0.10MPa以上であれば、フリーフィルムでの取り扱いに充分である。
【0081】
この熱伝導シート(I)の引張強度は0.13(MPa)とフリーフィルムでのハンドリングに充分な値を示した。
【0082】
(実施例2)
実施例1において、フェノール系高分子化合物(C)として、テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、商品名YSポリスターT130、軟化温度130℃):333g、を用いた以外は実施例1と同様に操作し、縦80mm×横150mm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(II)を得た。
フェノール系高分子化合物(C)の含有率は、無機粒子(B)を除いた成分に対して18質量%であり、(A)、(B)、(C)、(D)の全体に対する含有率(単位:質量%)は、この順にそれぞれ11.1、53.9、8.3、26.7であった。
【0083】
この熱伝導シート(II)の断面をSEMで観察し、任意の50個の黒鉛粒子(B)について見えている方向から、鱗片の長軸方向(面方向)の熱伝導シート表面に対する角度を測定したところ、角度の平均値は88度であり、黒鉛粒子(B)の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。
【0084】
この熱伝導シート(II)の熱抵抗は0.035(K・cm/W)と良好な値を示した。
またこの熱伝導シート(II)の引張強度は0.12(MPa)とフリーフィルムでのハンドリングに充分な値を示した。
【0085】
(実施例3)
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)として、アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−280改2DR、共重合質量比:82/10/3/5、Tg:−39℃、重量平均分子量:53万):35g、無機粒子(B)として、鱗片状の膨張黒鉛粉末(日立化成工業株式会社製、商品名:HGF−L、質量平均径:270μm、前述のX線回折測定を用いた方法により、結晶中の六員環面が、鱗片の面方向に配向していることを確認した。):194g、フェノール系高分子化合物(C)として、テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、商品名YSポリスターT115、軟化温度115℃):35g、りん酸エステル系難燃剤(D)として、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(りん酸エステル系難燃剤、大八化学工業株式会社製、商品名:CR−741):96gをポリエチレン袋中で予備混合した後、二軸ロール(関西ロール社製)で混練(100℃)し、組成物を混練シートの形態で得た。
フェノール系高分子化合物(C)の含有率は、無機粒子(B)を除いた成分に対して21質量%であり、(A)、(B)、(C)、(D)の全体に対する含有率(単位:質量%)は、この順にそれぞれ9.7、53.9、9.7、26.7であった。
【0086】
この混練シートを離型処理したPETフィルムに挟み、ロール成形機(日立機械エンジニアリング株式会社製、装置名:V2S−SR型シーティング熱ロール機)を用いてプレスし、厚さ約1mmの一次シートを得た。
【0087】
得られた一次シートを、30mm×90mmの型刃を用いてプレス打ち抜きし、打ち抜いたシートを60枚積層し、厚さが50mmになるよう、積層方向に80℃で2分間圧力をかけ、成形体を得た。
【0088】
次いで、この成形体の50mm×90mmの積層断面を木工用スライサーを用いてスライスし、縦50mm×横90mm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(III)を得た。
【0089】
この熱伝導シート(III)の断面をSEMで観察し、任意の50個の黒鉛粒子(B)について見えている方向から、鱗片の長軸方向(面方向)の熱伝導シート表面に対する角度を測定したところ、角度の平均値は89度であり、黒鉛粒子(B)の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。
【0090】
この熱伝導シート(III)の熱抵抗は0.038(K・cm/W)と良好な値を示した。
またこの熱伝導シート(III)の引張強度は0.11(MPa)とフリーフィルムでのハンドリングに充分な値を示した。
【0091】
(実施例4)
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)として、アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−280改2DR、共重合質量比:82/10/3/5、Tg:−39℃、重量平均分子量:53万):30g、無機粒子(B)として、鱗片状の膨張黒鉛粉末(日立化成工業株式会社製、商品名:HGF−L、質量平均径:270μm、前述のX線回折測定を用いた方法により、結晶中の六員環面が、鱗片の面方向に配向していることを確認した。):194g、フェノール系高分子化合物(C)として、フェノール・p−キシレングリコールジメチルエーテル重縮合物(フェノールノボラック樹脂:三井化学株式会社製、商品名ミレックスXLC−LL、軟化温度77℃):40g、りん酸エステル系難燃剤(D)として、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(りん酸エステル系難燃剤、大八化学工業株式会社製、商品名:CR−741):96gを用い、以下実施例3と同様の操作により、縦50mm×横90mm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(IV)を得た。
フェノール系高分子化合物(C)の含有率は、無機粒子(B)を除いた成分に対して24質量%であり、(A)、(B)、(C)、(D)の全体に対する含有率(単位:質量%)は、この順にそれぞれ8.3、53.9、11.1、26.7であった。
【0092】
この熱伝導シート(IV)の断面をSEMで観察し、任意の50個の黒鉛粒子(B)について見えている方向から、鱗片の長軸方向(面方向)の熱伝導シート表面に対する角度を測定したところ、角度の平均値は88度であり、黒鉛粒子(B)の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。
【0093】
この熱伝導シート(IV)の熱抵抗は0.040(K・cm/W)と良好な値を示した。
またこの熱伝導シート(IV)の引張強度は0.11(MPa)とフリーフィルムでのハンドリングに充分な値を示した。
【0094】
(実施例5)
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)として、アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−811DR、共重合質量比:76/19/5、Tg:−43℃、重量平均分子量:42万):363g、無機粒子(B)として、鱗片状の六方晶窒化ほう素(モメンティブ株式会社製、商品名:PT−110、質量平均径:35〜60μm、前述のX線回折測定を用いた方法により、結晶中の六員環面が、鱗片の面方向に配向していることを確認した。):3710g、フェノール系高分子化合物(C)として、テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル製、商品名YSポリスターT130、軟化温度130℃):363g、りん酸エステル系難燃剤(D)として、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(りん酸エステル系難燃剤、大八化学工業株式会社製、商品名:CR−741):564gを4L加圧ニーダに投入し、到達温度150℃の条件で混練し、組成物を得た。
フェノール系高分子化合物(C)の含有率は、無機粒子(B)を除いた成分に対して28質量%であり、(A)、(B)、(C)、(D)の全体に対する含有率(単位:質量%)は、この順にそれぞれ7.3、74.2、7.3、11.3であった。
以降は実施例1と同様に操作し、縦80mm×横150mm×厚さ0.25mmの熱伝導シート(V)を得た。
【0095】
この熱伝導シート(V)の断面をSEMで観察し、任意の50個の黒鉛粒子(B)について見えている方向から、鱗片の長軸方向(面方向)の熱伝導シート表面に対する角度を測定したところ、角度の平均値は90度であり、黒鉛粒子(B)の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。
【0096】
この熱伝導シート(V)の熱抵抗は0.150(K・cm/W)と非導電性で0.25mm厚の熱伝導シートとしては良好な値を示した。
またこの熱伝導シート(V)の引張強度は0.14(MPa)とフリーフィルムでのハンドリングに充分な値を示した。
【0097】
以上の実施例の内容を表1に纏める。
【0098】
【表1】

【0099】
(比較例1)
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)として、アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−280改2DR、共重合質量比:82/10/3/5、Tg:−39℃、重量平均分子量:53万):70gを用い、フェノール系高分子化合物(C)に相当する樹脂を配合しなかったこと以外は、実施例3と同様の操作により、熱伝導シート(VI)を得た。
フェノール系高分子化合物(C)の含有率は、無機粒子(B)を除いた成分に対して0質量%であり、(A)、(B)、(C)、(D)の全体に対する含有率(単位:質量%)は、この順にそれぞれ19.4、53.9、0、26.7であった。
【0100】
この熱伝導シート(VI)の断面をSEMで観察し、任意の50個の黒鉛粒子(B)について見えている方向から、鱗片の長軸方向(面方向)の熱伝導シート表面に対する角度を測定したところ、角度の平均値は88度であり、黒鉛粒子(B)の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。
【0101】
この熱伝導シート(VI)の熱抵抗は0.064(K・cm/W)と劣っていた。
この熱伝導シート(VI)の引張強度は0.06(MPa)とフリーフィルムでのハンドリングに不充分な値を示した。
【0102】
(比較例2)
実施例3の配合組成中、フェノール系高分子化合物(C)として用いたテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、商品名YSポリスターT115、軟化温度115℃):35gの代わりに、フェノール系高分子化合物(C)には該当しないポリブテン樹脂(日油株式会社製、ポリブテン200N):35gを使用した以外は実施例3と同様の操作により、熱伝導シート(VII)を得た。フェノール系高分子化合物(C)の含有率は、無機粒子(B)を除いた成分に対して0質量%であり、(A)、(B)、(C)、(D)の全体に対する含有率(単位:質量%)は、この順にそれぞれ9.7、53.9、0、26.7であった。
【0103】
この熱伝導シート(VII)の断面をSEMで観察し、任意の50個の黒鉛粒子(B)について見えている方向から、鱗片の長軸方向(面方向)の熱伝導シート表面に対する角度を測定したところ、角度の平均値は89度であり、黒鉛粒子(B)の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。
【0104】
この熱伝導シート(VII)の熱抵抗は0.055(K・cm/W)と劣っていた。
またこの熱伝導シート(VII)の引張強度は0.05(MPa)とフリーフィルムでのハンドリングに不充分な値を示した。
【0105】
(比較例3)
実施例3の配合組成中、フェノール系高分子化合物(C)として用いたテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、商品名YSポリスターT115、軟化温度115℃):35gの代わりに、フェノール系高分子化合物(C)には該当しない脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学株式会社製、アルコンP−140):35gを使用した以外は、実施例3と同様の操作を行ったが、混練シートを離型処理したPETフィルムに挟み、ロール成形機(日立機械エンジニアリング株式会社製、装置名:V2S−SR型シーティング熱ロール機)を用いてプレスし、厚さ約1mmの一次シートを得ようとした工程において、凝集力が不足し、1次シートを製作できなかった。
【0106】
(比較例4)
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)として、アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−280改2DR、共重合質量比:82/10/3/5、Tg:−39℃、重量平均分子量:53万):726gを用い、フェノール系高分子化合物(C)に相当する樹脂を配合しなかったこと以外は、(実施例5)と同様の操作により、熱伝導シート(VIII)を得た。フェノール系ポリマー又はコポリマー(C)の含有率は、無機粒子(B)を除いた成分に対して0質量%であり、(A)、(B)、(C)、(D)の全体に対する含有率(単位:質量%)は、この順にそれぞれ14.6、74.2、0、11.3であった。
【0107】
この熱伝導シート(VIII)の断面をSEMで観察し、任意の50個の黒鉛粒子(B)について見えている方向から、鱗片の長軸方向(面方向)の熱伝導シート表面に対する角度を測定したところ、角度の平均値は90度であり、黒鉛粒子(B)の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。
【0108】
この熱伝導シート(VIII)の熱抵抗は0.240(K・cm/W)と非導電性で0.25mm厚の熱伝導シートとしても劣っていた。
またこの熱伝導シート(VIII)の引張強度は0.10(MPa)とフリーフィルムでのハンドリングに充分な値を示した。
以上の結果を下記表2に示す。
【0109】
【表2】

【0110】
以上から、本発明の熱伝導シートは、優れた熱伝導性を有することが分かる。また引張強度に優れ、取扱い性に優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が50℃以下であり、熱可塑性であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)と、
鱗片状、楕球状又は棒状である黒鉛粒子及び六方晶窒化ほう素粒子から選択される少なくとも1種であり、(0001)結晶面が前記鱗片の面方向、前記楕球の長軸方向又は前記棒の長軸方向に配向している無機粒子(B)と、
フェノール系高分子化合物(C)と、を含有し、
前記無機粒子(B)の前記鱗片の面方向、前記楕球の長軸方向又は前記棒の長軸方向が、厚み方向に配向している熱伝導シート。
【請求項2】
前記フェノール系高分子化合物(C)の軟化温度が50℃以上200℃以下である、請求項1に記載の熱伝導シート。
【請求項3】
前記無機粒子(B)の含有率が総質量中の40質量%以上75質量%以下であり、前記フェノール系高分子化合物(C)の含有率が総質量から前記無機粒子(B)を除いた質量中の10質量%以上75質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の熱伝導シート。
【請求項4】
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)は、(メタ)アクリル酸n-ブチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルの少なくとも一方に由来する構造単位を含み、重量平均分子量が20万以上60万以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【請求項5】
前記フェノール系高分子化合物(C)は、テルペンフェノール樹脂である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【請求項6】
りん酸エステル系の難燃剤(D)をさらに含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【請求項7】
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(A)の含有率が総質量中の5質量%以上25質量%以下であり、
前記無機粒子(B)の含有率が総質量中の40質量%以上75質量%以下であり、
前記フェノール系高分子化合物(C)の含有率が総質量中の5質量%以上40質量%以下であり、
前記りん酸エステル系の難燃剤(D)の含有率が総質量中の10質量%以上40質量%以下である、請求項6に記載の熱伝導シート。
【請求項8】
発熱体と、
放熱体と、
前記発熱体と前記放熱体との間に、前記発熱体及び前記放熱体の双方に接するように配置された、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の熱伝導シートと、を有する放熱装置。

【公開番号】特開2012−158695(P2012−158695A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19900(P2011−19900)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】