説明

熱処理装置、温度制御システム、熱処理方法、温度制御方法及びその熱処理方法又はその温度制御方法を実行させるためのプログラムを記録した記録媒体

【課題】ある方向に沿って延在する容器を冷却する際に、電力消費量を増加させることなく、延在する方向に沿って容器の冷却速度に差が発生することを抑制できる熱処理装置を提供する。
【解決手段】処理容器65と、処理容器65内で、一の方向に沿って基板を所定の間隔で複数保持可能な基板保持部44と、処理容器65を加熱する加熱部63と、気体を供給する供給部91と、一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の供給口92aとを含み、供給部91が供給口92aの各々を介して処理容器65に気体を供給することによって処理容器65を冷却する冷却部90とを有する。冷却部90は、供給口92aの各々を介して気体を供給する供給流量が独立に制御可能に設けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置、温度制御システム、熱処理方法、温度制御方法及びその熱処理方法又はその温度制御方法を実行させるためのプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、例えば半導体ウェハ等の基板に、酸化、拡散、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの処理を施すために、各種の処理装置が用いられている。そして、その一つとして、一度に多数枚の被処理基板の熱処理が可能な縦型の熱処理装置が知られている。
【0003】
熱処理装置には、処理容器と、ボートと、昇降機構と、移載機構とを備えているものがある。ボートは、複数の基板を上下方向に所定の間隔で保持して処理容器に搬入搬出される基板保持部である。昇降機構は、処理容器の下方に形成されたローディングエリアに設けられており、処理容器の開口を閉塞する蓋体の上部にボートを載置した状態で蓋体を上昇下降させて処理容器とローディングエリアとの間でボートを昇降させる。移載機構は、ローディングエリアに搬出されたボートと複数枚の基板を収容する収納容器との間で基板の移載を行う。
【0004】
また、熱処理装置として、処理容器内でボートに保持されている基板を加熱するヒータと、処理容器を周囲から覆うジャケットを備えているものがある。ジャケットの内側であって処理容器の周囲には、ヒータが設けられているとともに、処理容器を冷却する冷却ガスが流れるための空間が画成されている。そして、例えばヒータにより処理容器内でボートに保持されている基板を加熱して熱処理した後、基板を冷却する際に、冷却ガスを空間に供給することによって、基板の冷却速度を制御するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−81415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような熱処理装置では、基板を熱処理した後、基板を冷却する際に、上下方向に沿って冷却速度に差が発生することがある。
【0007】
例えば特許文献1に示す例では、冷却ガスは、ジャケットの下端部に設けられた供給口から処理容器とジャケットとの間の空間に供給され、空間を下方から上方に向かって流れ、ジャケットの上端部に設けられた排出口から排出される。そのため、上下方向に沿って処理容器の冷却速度に差が発生し、上下方向に沿って所定の間隔でボートに保持された基板の間で、熱処理の履歴に差が発生し、処理後の基板の品質に差が発生するおそれがある。
【0008】
冷却速度に差が発生する場合、上下方向に沿って互いに異なる位置にヒータ素子を複数設け、処理容器の冷却速度が上下方向に沿って等しくなるように、それらのヒータ素子の発熱量を独立に制御する方法も考えられる。しかし、冷却速度が他の部分の冷却速度よりも大きい部分に設けられたヒータ素子の発熱量が、他の部分に設けられたヒータの発熱量よりも大きくなるように制御するため、冷却工程における電力消費量が増えるという問題がある。
【0009】
また、上記した課題は、基板を上下方向に沿って保持する場合に限られず、任意の方向に沿って所定の間隔で保持する場合にも共通する課題である。更に、上記した課題は、基板を熱処理する熱処理容器を冷却する場合に限られず、ある方向に沿って延在する容器を冷却する場合にも共通する課題である。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ある方向に沿って延在する容器を冷却する際に、電力消費量を増加させることなく、延在する方向に沿って容器の冷却速度に差が発生することを抑制できる熱処理装置、温度制御装置、熱処理方法及び温度制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の一実施例によれば、基板を熱処理する熱処理装置において、処理容器と、前記処理容器内で、一の方向に沿って基板を所定の間隔で複数保持可能な基板保持部と、前記処理容器を加熱する加熱部と、気体を供給する供給部と、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の供給口とを含み、前記供給部が前記供給口の各々を介して前記処理容器に気体を供給することによって前記処理容器を冷却する冷却部とを有し、前記冷却部は、前記供給部が前記供給口の各々を介して気体を供給する供給流量が独立に制御可能に設けられたものである、熱処理装置が提供される。
【0013】
また、本発明の他の一実施例によれば、一の方向に沿って延在する容器の温度を制御する温度制御システムにおいて、前記容器を加熱する加熱部と、気体を供給する供給部と、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の供給口とを含み、前記供給部が前記供給口の各々を介して前記容器に気体を供給することによって前記容器を冷却する冷却部と、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の検出素子を含み、前記処理容器内の前記一の方向に沿った温度分布を検出するための検出部と、前記容器を冷却する際に、前記検出部が検出した検出値に基づいて、前記容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記供給部が前記供給口の各々を介して気体を供給する供給流量を独立に制御する制御部とを有する、温度制御システムが提供される。
【0014】
また、本発明の他の一実施例によれば、基板を熱処理する熱処理方法において、処理容器内で、基板保持部により、一の方向に沿って基板を所定の間隔で複数保持した状態で、加熱部により前記処理容器を加熱することによって、前記基板保持部に保持されている基板を熱処理する熱処理工程と、前記熱処理工程の後、供給部により、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の供給口の各々を介して前記処理容器に気体を供給することによって、前記処理容器を冷却する冷却工程とを有し、前記冷却工程は、前記処理容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記供給部が前記供給口の各々を介して気体を供給する供給流量を独立に制御するものである、熱処理方法が提供される。
【0015】
また、本発明の他の一実施例によれば、一の方向に沿って延在する容器の温度を制御する温度制御方法において、加熱部により前記容器を加熱した後、供給部により、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の供給口の各々を介して前記容器に気体を供給することによって、前記容器を冷却する冷却工程を有し、前記冷却工程は、前記容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記供給口の各々を介して気体を供給する供給流量を独立に制御するものである、温度制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ある方向に沿って延在する容器を冷却する際に、電力消費量を増加させることなく、延在する方向に沿って容器の冷却速度に差が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態に係る熱処理装置を概略的に示す縦断面図である。
【図2】ローディングエリアを概略的に示す斜視図である。
【図3】ボートの一例を概略的に示す斜視図である。
【図4】熱処理炉の構成の概略を示す断面図である。
【図5】実施の形態に係る熱処理装置を用いた熱処理方法における各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【図6】実施例1における、各単位領域での温度と時間との関係を示すグラフである。
【図7】比較例1における、各単位領域での温度と時間との関係を示すグラフである。
【図8】比較例2における、各単位領域での温度と時間との関係を示すグラフである。
【図9】流入抑制部材を設置した場合における、処理容器内温度センサが検出した温度のうち、最も高い検出温度と、最も低い検出温度の差と時間との関係を示すグラフの一例である。
【図10】流入抑制部材を設置しない場合における、処理容器内温度センサが検出した温度のうち、最も高い検出温度と、最も低い検出温度の差と時間との関係を示すグラフの一例である。
【図11】第1のモードを行ったときの、処理容器内温度センサが検出した温度と時間との関係を示すグラフである。
【図12】第1のモードを行ったときの、送風機の出力及びヒータの出力と時間との関係を示すグラフである。
【図13】第2のモードを行ったときの、処理容器内温度センサが検出した温度と時間との関係を示すグラフである。
【図14】第2のモードを行ったときの、送風機の出力及びヒータの出力と時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
【0019】
最初に、本発明の実施の形態に係る熱処理装置について説明する。熱処理装置10は、後述する縦型の熱処理炉60を備えており、ウェハWをボートに縦方向に沿って所定の間隔で保持、一度に多数枚収容し、収容したウェハWに対して酸化、拡散、減圧CVD等の各種の熱処理を施すことができる。以下では、例えば水蒸気よりなる処理ガスを、後述する処理容器65内に設置されている基板に供給することによって、基板の表面を酸化処理する熱処理装置に適用した例について説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る熱処理装置10を概略的に示す縦断面図である。図2は、ローディングエリア40を概略的に示す斜視図である。図3は、ボート44の一例を概略的に示す斜視図である。
【0021】
熱処理装置10は、載置台(ロードポート)20、筐体30、及び制御部100を有する。
【0022】
載置台(ロードポート)20は、筐体30の前部に設けられている。筐体30は、ローディングエリア(作業領域)40及び熱処理炉60を有する。ローディングエリア40は、筐体30内の下方に設けられており、熱処理炉60は、筐体30内であってローディングエリア40の上方に設けられている。また、ローディングエリア40と熱処理炉60との間には、ベースプレート31が設けられている。
【0023】
載置台(ロードポート)20は、筐体30内へのウェハWの搬入搬出を行うためのものである。載置台(ロードポート)20には、収納容器21、22が載置されている。収納容器21、22は、前面に図示しない蓋を着脱可能に備えた、複数枚例えば50枚程度のウェハWを所定の間隔で収納可能な密閉型収納容器(フープ)である。
【0024】
また、載置台20の下方には、後述する移載機構47により移載されたウェハWの外周に設けられた切欠部(例えばノッチ)を一方向に揃えるための整列装置(アライナ)23が設けられていてもよい。
【0025】
ローディングエリア(作業領域)40は、収納容器21、22と後述するボート44との間でウェハWの移載を行い、ボート44を処理容器65内に搬入(ロード)し、ボート44を処理容器65から搬出(アンロード)するためのものである。ローディングエリア40には、ドア機構41、シャッター機構42、蓋体43、ボート44、基台45a、45b、昇降機構46、及び移載機構47が設けられている。
【0026】
なお、蓋体43及びボート44は、本発明における基板保持部に相当する。
【0027】
ドア機構41は、収納容器21、22の蓋を取外して収納容器21、22内をローディングエリア40内に連通開放するためのものである。
【0028】
シャッター機構42は、ローディングエリア40の上方に設けられている。シャッター機構42は、蓋体43を開けているときに、後述する炉口68aから高温の炉内の熱がローディングエリア40に放出されるのを抑制ないし防止するために炉口68aを覆う(又は塞ぐ)ように設けられている。
【0029】
蓋体43は、保温筒48及び回転機構49を有する。保温筒48は、蓋体43上に設けられている。保温筒48は、ボート44が蓋体43側との伝熱により冷却されることを防止し、ボート44を保温するためのものである。回転機構49は、蓋体43の下部に取り付けられている。回転機構49は、ボート44を回転するためのものである。回転機構49の回転軸は蓋体43を気密に貫通し、蓋体43上に配置された図示しない回転テーブルを回転するように設けられている。
【0030】
昇降機構46は、ボート44のローディングエリア40から処理容器65に対する搬入、搬出に際し、蓋体43を昇降駆動する。そして、昇降機構46により上昇させられた蓋体43が処理容器65内に搬入されているときに、蓋体43は、後述する炉口68aに当接して炉口68aを密閉するように設けられている。そして、蓋体43に載置されているボート44は、処理容器65内でウェハWを水平面内で回転可能に保持することができる。
【0031】
なお、熱処理装置10は、ボート44を複数有していてもよい。以下、本実施の形態では、図2を参照し、ボート44を2つ有する例について説明する。
【0032】
ローディングエリア40には、ボート44a、44bが設けられている。そして、ローディングエリア40には、基台45a、45b及びボート搬送機構45cが設けられている。基台45a、45bは、それぞれボート44a、44bが蓋体43から移載される載置台である。ボート搬送機構45cは、ボート44a、44bを、蓋体43から基台45a、45bに移載するためのものである。
【0033】
ボート44a、44bは、例えば石英製であり、大口径例えば直径300mmのウェハWを水平状態で上下方向に所定の間隔(ピッチ幅)で搭載するようになっている。ボート44a、44bは、例えば図3に示すように、天板50と底板51の間に複数本例えば3本の支柱52を介設してなる。支柱52には、ウェハWを保持するための爪部53が設けられている。また、支柱52と共に補助柱54が適宜設けられていてもよい。
【0034】
移載機構47は、収納容器21、22とボート44a、44bの間でウェハWの移載を行うためのものである。移載機構47は、基台57、昇降アーム58、及び、複数のフォーク(移載板)59を有する。基台57は、昇降及び旋回可能に設けられている。昇降アーム58は、ボールネジ等により上下方向に移動可能(昇降可能)に設けられ、基台57は、昇降アーム58に水平旋回可能に設けられている。
【0035】
図4は、熱処理炉60の構成の概略を示す断面図である。
【0036】
熱処理炉60は、例えば、複数枚の被処理基板例えば薄板円板状のウェハWを収容して所定の熱処理を施すための縦型炉とすることができる。
【0037】
熱処理炉60は、ジャケット62、ヒータ63、空間64、処理容器65を備えている。
【0038】
処理容器65は、ボート44に保持されたウェハWを収納して熱処理するためのものである。処理容器65は、例えば石英製であり、縦長の形状を有している。
【0039】
処理容器65は、下部のマニホールド68を介してベースプレート66に支持されている。また、マニホールド68から処理容器65へは、インジェクタ71を通して処理ガスが供給される。インジェクタ71は、ガス供給源72と接続されている。また、処理容器65に供給された処理ガスやパージガスは、排気ポート73を通して減圧制御が可能な真空ポンプを備えた排気系74に接続されている。
【0040】
前述したように、蓋体43は、ボート44が処理容器65内に搬入されているときに、マニホールド68下部の炉口68aを閉塞する。前述したように、蓋体43は、昇降機構46により昇降移動可能に設けられており、蓋体43の上部には保温筒48が載置されており、保温筒48の上部には、ウェハWを多数枚上下方向に所定の間隔で搭載するボート44が設けられている。
【0041】
ジャケット62は、処理容器65の周囲を覆うように設けられているとともに、処理容器65の周囲に空間64を画成している。処理容器65が円筒形状を有しているため、ジャケット62も、円筒形状を有している。ジャケット62は、ベースプレート66に支持されており、ベースプレート66には、処理容器65を下方から上方へ挿入するための開口部67が形成されている。ジャケット62の内側であって、空間64の外側には、例えばグラスウールよりなる断熱材62aが設けられていてもよい。
【0042】
なお、ジャケット62は、本発明における覆い部材に相当する。
【0043】
本実施の形態では、開口部67におけるジャケット62と処理容器65との隙間には、隙間を介してジャケット62の外部から空間64への空気の流入を抑制するための流入抑制部材67aを設けることが好ましい。流入抑制部材67aとして、例えばグラスウールを用いることができる。これにより、後述するように、空間64内の圧力が外部の圧力(大気圧)よりも低圧になったときも、空間64内の気体の温度よりも低い外部の空気が開口部67を介して空間64内に流入し、縦方向に温度差が発生することを抑制できる。
【0044】
また、空間64には、空間64の内圧の大気圧に対する差圧を計測するための差圧計75が設けられていてもよい。空間64の内圧の大気圧に対する差圧を計測するために、差圧計75は、空間64であって開口部67付近の部分に連通するように設けられていることが好ましい。
【0045】
ヒータ63は、処理容器65の周囲を覆うように設けられており、処理容器65を加熱するとともに、ボート44に保持されたウェハW、すなわち処理容器65内の被加熱物を加熱するためのものである。ヒータ63は、ジャケット62の内側であって空間64の外側に設けられている。ヒータ63は、例えばカーボンワイヤ等の発熱抵抗体よりなり、空間64の内部を流れる気体の温度を制御するとともに、処理容器65内を所定の温度例えば50〜1200℃に加熱制御可能である。ヒータ63は、処理容器65及びウェハWを加熱する加熱部として機能する。
【0046】
空間64及び処理容器65内の空間は、縦方向に沿って複数の単位領域、例えば10の単位領域A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10に分割されている。そして、ヒータ63も、上下方向に沿って単位領域と1対1に対応するように、63−1、63−2、63−3、63−4、63−5、63−6、63−7、63−8、63−9、63−10に分割されている。ヒータ63−1〜63−10の各々は、例えばサイリスタよりなるヒータ出力部86により、単位領域A1〜A10の各々に対応して独立に出力を制御できるように構成されている。ヒータ63−1〜63−10は、本発明における発熱素子に相当する。
【0047】
なお、本実施の形態では、空間64及び処理容器65内の空間を上下方向に沿って10の単位領域に分割した例について説明するが、単位領域の分割数は10に限られず、空間64は10以外の数により分割されてもよい。また、本実施の形態では均等に分割しているが、これに限らず、温度変化の大きい開口部67付近を細かい領域に分割しても良い。
【0048】
また、ヒータ63は、縦方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられていればよい。従って、ヒータ63は、単位領域A1〜A10の各々に1対1に対応して設けられていなくてもよい。
【0049】
空間64には、単位領域A1〜A10の各々に対応して温度を検出するためのヒータ温度センサAo1〜Ao10が設けられている。また、処理容器65内の空間にも、単位領域A1〜A10の各々に対応して温度を検出するための処理容器内温度センサAi1〜Ai10が設けられている。ヒータ温度センサAo1〜Ao10及び処理容器内温度センサAi1〜Ai10は、縦方向に沿った温度分布を検出するために温度を検出する検出部として機能する。
【0050】
ヒータ温度センサAo1〜Ao10からの検出信号、及び、処理容器内温度センサAi1〜Ai10からの検出信号は、それぞれライン81、82を通して制御部100に導入される。検出信号が導入された制御部100では、ヒータ出力部86の設定値を計算し、計算した設定値をヒータ出力部86に入力する。そして、設定値が入力されたヒータ出力部86は、入力された設定値をヒータ出力ライン87及びヒータ端子88を介してヒータ63−1〜63−10の各々へ出力する。例えばPID制御によりヒータ出力部86の設定値を計算することによって、制御部100は、ヒータ出力部86のヒータ63−1〜63−10の各々への出力、すなわちヒータ63−1〜63−10の各々の発熱量を制御する。
【0051】
なお、ヒータ温度センサAo及び処理容器内温度センサAiは、処理容器65内の縦方向に沿った温度分布を検出するために、縦方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられていればよい。従って、ヒータ温度センサAo及び処理容器内温度センサAiは、単位領域A1〜A10の各々に1対1に対応して設けられていなくてもよい。
【0052】
また、図4に示すように、ウェハWとともにロード・アンロードされる可動温度センサAp1〜Ap10が設けられていてもよく、可動温度センサAp1〜Ap10からの検出信号が、ライン83を通して制御部100に導入されるようにしてもよい。
【0053】
本実施の形態では、熱処理炉60は、処理容器65を冷却するための冷却機構90を備えている。
【0054】
冷却機構90は、送風機(ブロワ)91、送風管92、分岐部93及び排気管94を有する。
【0055】
送風機(ブロワ)91は、ヒータ63が設けられている空間64内に、例えば空気よりなる冷却ガスを送風して処理容器65を冷却するためのものである。
【0056】
送風管92は、送風機91からの冷却ガスをヒータ63に送るためのものである。送風管92は、分岐部93を介して単位領域A1〜A10の各々に対応する送風管92−1、92−2、92−3、92−4、92−5、92−6、92−7、92−8、92−9、92−10に分岐される。空間64には、単位領域A1〜A10の各々に対応する部分へ冷却ガスを噴出する噴出孔92a−1〜92a−10が設けられており、分岐された送風管92−1〜92−10の各々は、噴出孔92a−1〜92a−10の各々に接続されている。すなわち、冷却ガスは、噴出孔92a−1〜92a−10の各々を介して空間64に供給される。図4に示す例では、送風管92−1〜92−10の各々及び噴出孔92a−1〜92a−10の各々は、縦方向に沿って設けられている。
【0057】
なお、噴出孔92aは、本発明における供給口に相当する。
【0058】
排気管94は、空間64内の空気を排出するためのものである。空間64には、冷却ガスを空間64から排気するための排気口94aが設けられており、排気管94は、一端が排気口94aに接続されている。
【0059】
また、図4に示すように、排気管94の途中に熱交換器95を設けるとともに、排気管94の他端を送風機91の吸引側に接続してもよい。そして、排気管94により排気した冷却ガスを工場排気系に排出せずに、熱交換器95で熱交換した後、送風機91に戻し、循環使用するようにしてもよい。また、その場合、図示しないエアフィルタを介して循環させてもよい。あるいは、空間64から排出された冷却ガスは、排気管94から熱交換器95を介して工場排気系に排出されるようになってもよい。
【0060】
送風機(ブロワ)91は、制御部100からの出力信号により、例えばインバータよりなる電力供給部91aから供給される電力を制御することによって、送風機91の風量を制御できるように構成されている。
【0061】
ヒータ温度センサAo1〜Ao10からの検出信号、及び、処理容器内温度センサAi1〜Ai10からの検出信号が制御部100に導入されたときは、制御部100は、電力供給部91aの設定値を計算し、計算した設定値を電力供給部91aに入力する。そして、設定値が入力された電力供給部91aは、入力された設定値を、送風機出力ライン91bを介して送風機91へ出力する。このようにして、制御部100は、送風機91の風量を制御する。
【0062】
本実施の形態では、送風管92−1〜92−10の各々には、バルブ97(97−1〜97−10)が設けられている。バルブ97−1〜97−10の各々は、開度が独立に制御可能に設けられている。バルブ97−1〜97−10は、流量制御弁として機能するものであり、送風管92−1〜92−10の各々は、流量が独立に制御可能に設けられている。すなわち、噴出孔92a−1〜92a−10の各々を介して空間64に供給される冷却ガスの流量が独立に制御可能に設けられている。
【0063】
バルブ97−1〜97−10は、開度を予め手動バルブ等により調整した上で用いるものであってもよく、あるいは、図4に示すように、例えばモータバルブ等のように、開度をバルブ制御部98からの制御信号により制御するものであってもよい。
【0064】
図4に示す例では、バルブ97−1〜97−10は、バルブ制御部98により制御可能に構成されている。ヒータ温度センサAo1〜Ao10からの検出信号、又は、処理容器内温度センサAi1〜Ai10からの検出信号が導入された制御部100では、バルブ制御部98の設定値を計算し、計算した設定値をバルブ制御部98に入力する。そして、設定値が入力されたバルブ制御部98は、入力された設定値を、バルブ出力ライン99を介してバルブ97−1〜97−10へ出力する。このようにして、制御部100は、バルブ97−1〜97−10の開度を制御することによって、噴出孔92a−1〜92a−10の各々を介して供給される冷却ガスの流量を制御する。
【0065】
なお、送風機91の風量を制御するとともに、バルブ97−1〜97−10の開度を制御することによって、噴出孔92a−1〜92a−10の各々を介して供給される冷却ガスの流量を制御するようにしてもよい。
【0066】
また、送風管92、噴出孔92a及びバルブ97は、縦方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられていればよい。従って、送風管92、噴出孔92a及びバルブ97は、単位領域A1〜A10の各々に1:1に対応して設けられていなくてもよい。
【0067】
制御部100は、例えば、図示しない演算処理部、記憶部及び表示部を有する。演算処理部は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有するコンピュータである。記憶部は、演算処理部に、各種の処理を実行させるためのプログラムを記録した、例えばハードディスクにより構成されるコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。表示部は、例えばコンピュータの画面よりなる。演算処理部は、記憶部に記録されたプログラムを読み取り、そのプログラムに従って、熱処理装置を構成する各部に制御信号を送り、後述するような熱処理を実行する。
【0068】
また、制御部100には、処理容器65内の被加熱物であるウェハWの温度が効率よく設定温度(所定温度)に収束するように、ヒータ63に供給する電力と送風機91に供給する電力とを制御するためのプログラム(シーケンス)が組み込まれている。また、このプログラムは、ヒータ出力部86がヒータ63に供給する電力と、電力供給部91aが送風機91に供給する電力とを制御するとともに、バルブ制御部98がバルブ97の開度を制御するものであってもよい。
【0069】
次に、本実施の形態に係る熱処理装置を用いた熱処理方法について説明する。
【0070】
図5は、本実施の形態に係る熱処理装置を用いた熱処理方法における各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【0071】
実施の形態(実施例)では、処理開始後、ステップS11として、処理容器65内にウェハWを搬入する(搬入工程)。図1に示した熱処理装置10の例では、例えばローディングエリア40において、移載機構47により収納容器21からボート44aへウェハWを搭載し、ウェハWを搭載したボート44aをボート搬送機構45cにより蓋体43に載置することができる。そして、ボート44aを載置した蓋体43を昇降機構46により上昇させて処理容器65内に挿入することにより、ウェハWを搬入することができる。
【0072】
次に、ステップS12では、処理容器65の内部を減圧する(減圧工程)。排気系74の排気能力又は排気系74と排気ポート73との間に設けられている図示しない流量調整バルブを調整することにより、排気ポート73を介して処理容器65を排気する排気量を増大させる。そして、処理容器65の内部を所定圧力に減圧する。
【0073】
次に、ステップS13では、ウェハWの温度を、ウェハWを熱処理するときの所定温度(熱処理温度)まで上昇させる(リカバリ工程)。
【0074】
ボート44aを処理容器65の内部に搬入した直後は、処理容器65に設けられた温度、すなわち例えば可動温度センサAp1〜Ap10の温度は、室温近くまで下がっている。そのため、ヒータ63に電力を供給することによって、ボート44aに搭載されているウェハWの温度を熱処理温度まで上昇させる。
【0075】
本実施の形態では、後述するステップS15(冷却工程)と同様に、ヒータ63の加熱量と冷却機構90の冷却量とをバランスさせることにより、ウェハWの温度が熱処理温度に収束するように、制御してもよい。
【0076】
次に、ステップS14では、ヒータ63により加熱することによって、ボート44に保持されているウェハWを熱処理する(熱処理工程)。
【0077】
ボート44により、縦方向に沿ってウェハWを所定の間隔で複数保持し、ヒータ63により処理容器65を加熱することによって、ウェハWの温度を所定温度に保持する。この状態で、ガス供給源72からインジェクタ71を介して処理ガスを処理容器65内に供給し、ウェハW表面を熱処理する。例えば水蒸気ガスよりなる処理ガスを供給してウェハWの表面を酸化する。また、ウェハWの熱処理としては、酸化処理に限られず、拡散、減圧CVD等の各種の熱処理を行ってもよい。
【0078】
次に、ステップS15では、冷却機構90により、複数の噴出孔92a−1〜92a−10の各々を介して空間64に冷却ガスを供給することによって、処理容器65を冷却し、ウェハWの温度を熱処理温度から下降させる(冷却工程)。このとき、送風機91により供給される冷却ガスが、流量が独立に制御可能に設けられてなる複数の送風管92の噴出孔92aの各々を介して空間64に供給されることによって、熱処理したウェハWを冷却する。
【0079】
ヒータ温度センサAo1〜Ao10からの検出信号、及び、処理容器内温度センサAi1〜Ai10からの検出信号を制御部100に導入する。検出信号が導入された制御部100は、ヒータ出力部86の設定値、電力供給部91aの設定値及びバルブ制御部98の設定値を計算し、計算した設定値を、ヒータ出力部86、電力供給部91a及びバルブ制御部98に入力する。設定値が入力されたヒータ出力部86は、入力された設定値を、ヒータ出力ライン87を介してヒータ63−1〜63−10の各々へ出力する。また、設定値が入力された電力供給部91aは、入力された設定値を、送風機出力ライン91bを介して送風機91へ出力する。また、設定値が入力されたバルブ制御部98は、入力された設定値を、バルブ出力ライン99を介してバルブ97−1〜97−10へ出力する。
【0080】
なお、検出信号は、本発明における検出値に相当する。
【0081】
このとき、処理容器内温度センサAi又はヒータ温度センサAoが検出する検出信号に基づいて、処理容器65の冷却速度が縦方向に沿って等しくなるように、噴出孔92a−1〜92a−10の各々から供給される冷却ガスの流量を独立に制御する。例えば、処理容器内温度センサAi1〜Ai10又はヒータ温度センサAo1〜Ao10の各々が検出する温度の時間変化率が互いに等しくなるように、噴出孔92a−1〜92a−10の各々から空間64に供給される冷却ガスの流量を独立に制御する。このような制御を行うことによって、各ウェハWの冷却速度すなわち温度の時間変化率が互いに等しくなるようにすることができる。また、冷却工程を開始する際の各ウェハWの温度が等しい場合には、処理容器内温度センサAi又はヒータ温度センサAoの各々が検出する温度の時間変化率を等しくすることによって、冷却工程の各時点における各ウェハWの温度を均一にすることができる。
【0082】
また、処理容器内温度センサAi又はヒータ温度センサAoの各々が検出する温度の時間変化率が互いに等しくなるように、送風機91の風量を制御するとともに、バルブ97−1〜97−10の各々の開度を独立に制御してもよい。
【0083】
なお、ステップS15(冷却工程)を行う際に、予めプログラムに記録された温度と時間との関係を示す冷却曲線に基づいて、バルブ97−1〜97−10の各々の開度をリアルタイムで独立に制御してもよい。又は、ステップS14(熱処理工程)の後、ステップS15(冷却工程)を行う前に、バルブ97−1〜97−10の各々の開度を独立に制御しておき、ステップS15(冷却工程)では送風機91の風量を制御するようにしてもよい。あるいは、予めステップS11の工程を開始する前に、バルブ97−1〜97−10の各々の開度を独立に制御しておき、ステップS15(冷却工程)では送風機91の風量を制御するようにしてもよい。
【0084】
次に、ステップS16では、処理容器65の内部を大気圧に復圧する(復圧工程)。排気系74の排気能力又は排気系74と排気ポート73との間に設けられている図示しない流量調整バルブを調整することにより、処理容器65を排気する排気量を減少させ、例えば窒素(N)パージガスを導入して処理容器65の内部を大気圧に復圧する。
【0085】
次に、ステップS17では、処理容器65からウェハWを搬出する(搬出工程)。図1に示した熱処理装置10の例では、例えばボート44aを載置した蓋体43を昇降機構46により下降させて処理容器65内からローディングエリア40に搬出することができる。そして、移載機構47により、搬出した蓋体43に載置されているボート44aから収納容器21へウェハWを移載することによって、ウェハWを処理容器65から搬出することができる。そして、ウェハWを処理容器65から搬出することによって、熱処理作業は終了する。
【0086】
なお、複数のバッチについて連続して熱処理作業を行うときは、更に、ローディングエリア40において、移載機構47により収納容器21からウェハWをボート44へ移載し、再びステップS11に戻り、次のバッチの熱処理作業を行う。
【0087】
[第1の実施形態]
第1の実施形態では、実際にウェハを保持したボート44を処理容器65内に搬入し、ステップS15(冷却工程)を行ったときの各単位領域における温度を測定し、各単位領域における温度差の評価を行ったので、その評価結果について説明する。
【0088】
実施例1として、最も開口部67側のバルブ97−1の開度を予め50%とし、他のバルブ97−2〜97−10の開度を予め100%とした状態で、ステップS15(冷却工程)の一例として、800℃から400℃までの冷却を行った。また、比較例1として、全てのバルブ97−1〜97−10の開度を予め100%とした状態で、実施例1と同様に、800℃から400℃までの冷却を行った。なお、実施例1及び比較例1では、差圧計75により計測した空間64の大気圧に対する差圧は略0であり、空間64の内圧は略大気圧に等しかった。
【0089】
図6及び図7は、それぞれ実施例1及び比較例1における、各単位領域での温度と時間との関係を示すグラフである。図6及び図7では、図示を容易にするため、処理容器内温度センサAi1〜Ai10が検出した温度のうち、最も高い検出温度と、最も低い検出温度のみを示している。
【0090】
また、実施例1及び比較例1における、温度の時間変化率(以下、「冷却速度」という。)、冷却開始後12分の時刻における最も高い検出温度と最も低い検出温度との差(以下、「面間温度差」という。)を、表1に示す。
【0091】
【表1】

表1に示すように、実施例1と比較例1では、冷却速度は略等しい。また、実施例1における冷却開始後12分の時刻における面間温度差は18.3℃であり、比較例1における同時刻における最大温度差43.3℃よりも小さい。従って、実施例1によれば、縦方向に沿った冷却速度の差が発生することを抑制することができる。
【0092】
比較例1のように冷却速度の差が発生する場合でも、各単位領域におけるヒータ63の出力の差を大きくすることによって、各単位領域における冷却速度が等しくなるように制御することはできる。しかし、そのためには、冷却速度が大きな単位領域におけるヒータ63の出力を、他の単位領域におけるヒータ63の出力よりも大きくする必要がある。従って、全体としての電力消費量が増加するおそれがある。
【0093】
一方、本実施の形態では、各単位領域におけるバルブ97の開度を独立に制御し、各単位領域における噴出孔92aを介して供給される冷却ガスの流量を独立に制御する。これにより、各単位領域におけるヒータ63の出力の差を大きくしなくても、各単位領域における冷却速度が等しくなるように制御することができる。
【0094】
更に、比較例2として、流入抑制部材67aを取り去った状態で、かつ、差圧計75により計測した空間64の大気圧に対する差圧が−11Paであるときに、比較例1と同様に、800℃から400℃までの冷却を行った。図8は、比較例2における、各単位領域での温度と時間との関係を示すグラフである。図8では、図示を容易にするため、処理容器内温度センサAi1〜Ai10が検出した温度のうち、最も高い検出温度と、最も低い検出温度のみを示している。また、比較例2における、冷却速度、面間温度差も、表1に示す。
【0095】
表1に示すように、比較例2では、冷却速度は略等しい。また、比較例2における冷却開始後12分の時刻における面間温度差は92.3℃であり、比較例1における同時刻における面間温度差43.3℃よりも大きい。従って、空間64の内圧の大気圧に対する差圧が負圧になると、面間温度差が大きくなる。これは、例えば、負圧となった空間64に開口部67から室温に近い外気が流入するため、開口部67付近において冷却速度が大きくなるためと考えられる。
【0096】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、流入抑制部材67aを設置することの効果について評価を行ったので、その評価結果について説明する。
【0097】
図9及び図10は、流入抑制部材67aの効果を説明するための図であって、処理容器内温度センサAi1〜Ai10が検出した温度のうち、最も高い検出温度と、最も低い検出温度の差(以下、面間温度差と呼ぶ)と時間との関係を示すグラフである。
【0098】
図9(a)では、流入抑制部材67aを設置し、空間64の大気圧に対する差圧が−216Pa又は−333Paの状態で、570℃から300℃までの冷却(ステップS15)を行った。
【0099】
一方、図10では、流入抑制部材67aを設置せず、空間64の大気圧に対する差圧が−161Pa又は−210Paの状態で、570℃から300℃までの冷却(ステップS15)を行った。
【0100】
図9の条件では、開口部67におけるジャケット62と処理容器65との隙間に流入抑制部材67aを設けている。そのため、空間64の内圧が変化した場合においても、各時間における、面間温度差の変化が小さい。一方、図10の条件では、開口部67におけるジャケット62と処理容器65との隙間に流入抑制部材67aを設けていない。そのため、空間64の内圧が変化した場合における、各時間における、面間温度差の変化が大きい。
【0101】
通常、空間64の内圧が変化した場合、空間64の大気圧に対する負の差圧の絶対値が大きくなるにつれ、開口部67から空間64へと流入する外気が多くなるため、図10に示すように、面間温度差が大きくなる。しかしながら、図9において流入抑制部材67aを設置したことにより、空間64の内圧が大気圧に対して負圧となった場合でも、開口部67から空間64への、室温に近い外気の流入を、効果的に抑制できたと考えられる。
【0102】
したがって、流入抑制部材67aを、本発明の供給部が供給口の各々を介して気体を供給する供給流量が独立に制御可能な熱処理装置に設置することにより、より容易に、各単位領域における冷却速度が等しくなるよう制御することができる。
【0103】
[第3の実施形態]
更に、本実施の形態に係る熱処理方法として、冷却工程において、処理容器内温度センサAi又はヒータ温度センサAoの温度を、予め設定された温度パターンで制御するとともに、その温度パターンの設定方法について、選択可能な複数のモードを設けていてもよい。ここでは、ウェハ間の温度の均一性を高精度で制御可能な第1のモードと、ウェハ間の温度の均一性の精度は少し低くなるが電力消費量を低減可能な第2のモードとを有する例について説明する。
【0104】
第1のモードでは、バルブ97−1〜97−10の各々の開度を独立に制御し、送風機91の風量を制御するとともに、ヒータ63−1〜63−10の各々の発熱量を独立に制御する。そして、処理容器内温度センサAi1〜Ai10又はヒータ温度センサAo1〜Ao10のいずれの温度をも予め設定された同一の温度パターンで制御する。
【0105】
一方、第2のモードでは、ヒータ63−1〜63−10による加熱を停止した状態で、バルブ97−1〜97−10の各々の開度を独立に制御するとともに、送風機91の風量を制御する。そして、処理容器内温度センサAi1〜Ai10又はヒータ温度センサAo1〜Ao10のいずれかの温度を予め設定された温度パターンで制御する。
【0106】
図11は、第1のモードを行ったときの、処理容器内温度センサAi1〜Ai10が検出した温度と時間との関係を示すグラフである。また、図12は、図11の結果が得られたときの、送風機91の出力及びヒータ63の出力と時間との関係を示すグラフである。なお、図11では、温度を800℃から600℃まで冷却する例を示している。また、図12では、図示を容易にするために、ヒータ63の出力については、ヒータ63−1〜63−10を代表し、ある1つのヒータの出力のみを示している。
【0107】
また、第1のモード及び第2のモードについて、冷却開始後12分の時刻における最も高い検出温度と最も低い検出温度との差(面間温度差)及び冷却工程における積算電力を、表2に示す。
【0108】
【表2】

図12に示すように、送風機91の出力は、冷却工程開始直後、温度が800℃付近でいったん100%になった後、45%程度まで減少し、その後、温度の下降に伴って徐々に増加する。そして、送風機91の出力は、冷却工程終了直前、温度が600℃付近でいったん出力が増加した後、冷却工程終了後に再び0%になる。
【0109】
図13は、第2のモードを行ったときの、処理容器内温度センサAi1〜Ai10が検出した温度と時間との関係を示すグラフである。また、図14は、図13の結果が得られたときの、送風機91の出力及びヒータ63の出力と時間との関係を示すグラフである。なお、図13では、温度を800℃から600℃まで冷却する例を示している。
【0110】
図14に示すように、送風機91の出力は、冷却工程開始直後、温度が800℃付近でいったん100%になった後、20%程度まで減少し、その後、温度の下降に伴って徐々に増加する。そして、送風機91の出力は、冷却工程終了直前、温度が600℃付近でいったん出力が増加した後、冷却工程終了後に再び0%になる。
【0111】
第2のモードでは、図13に示すように、例えば開口部67付近すなわち下側の単位領域では、冷却速度が大きくなるため、面間温度差は少し大きくなる。しかし、図14に示すように、ヒータ63の出力がないため、電力消費量を低減することができる。
【0112】
表2に示すように、第2のモードの面間温度差は27.4℃であり、第1のモードの面間温度差7.5℃よりも少し大きい。しかし、第2のモードの冷却工程における電力消費量は1.63kWhであり、第1のモードの冷却工程における電力消費量3.64kWhよりも低減することができる。
【0113】
また、第1のモードと第2のモードとの中間のモードである第3のモードを設けてもよい。第3のモードとして、例えば第1のモードにおけるヒータ63の出力に所定の比率を乗じたものとすることができる。これにより、ウェハ間の温度の均一性をそれほど低くすることなく電力消費量を第1のモードよりも低減することができる。
【0114】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0115】
なお、実施の形態では、ヒータと、噴出孔と、温度センサとは、一の方向に沿って延在し、基板を熱処理する熱処理装置に備えられた処理容器内にそれぞれ複数設けられている例について説明した。しかし、ヒータと、噴出孔と、温度センサとは、一の方向に沿って延在する容器の温度を制御する温度制御システムにそれぞれ複数設けられたものであってもよい。そして、温度制御システムにおいて、容器を冷却する際に、温度センサが検出した検出値に基づいて、容器の冷却速度が一の方向に沿って等しくなるように、噴出孔を介して冷却ガスを供給する流量を独立に制御する温度制御方法を行ってもよい。
【符号の説明】
【0116】
10 熱処理装置
44 ボート
60 熱処理炉
62 ジャケット
63、63−1〜63−10 ヒータ
64 空間
65 処理容器
67 開口部
67a 流入抑制部材
68a 炉口
75 差圧計
86 ヒータ出力部
90 冷却機構
91 送風機(ブロワ)
91a 電力供給部
92、92−1〜92−10 送風管
92a、92a−1〜92a−10 噴出孔
94 排気管
94a 排気口
97 バルブ
98 バルブ制御部
100 制御部
Ai1〜Ai10 処理容器内温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を熱処理する熱処理装置において、
処理容器と、
前記処理容器内で、一の方向に沿って基板を所定の間隔で複数保持可能な基板保持部と、
前記処理容器を加熱する加熱部と、
気体を供給する供給部と、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の供給口とを含み、前記供給部が前記供給口の各々を介して前記処理容器に気体を供給することによって前記処理容器を冷却する冷却部と
を有し、
前記冷却部は、前記供給部が前記供給口の各々を介して気体を供給する供給流量が独立に制御可能に設けられたものである、熱処理装置。
【請求項2】
前記冷却部は、前記処理容器を冷却する際に、前記処理容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記供給流量が独立に制御可能に設けられたものである、請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の検出素子を含み、前記処理容器内の前記一の方向に沿った温度分布を検出するための検出部と、
前記処理容器を冷却する際に、前記検出部が検出した検出値に基づいて、前記処理容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記供給流量を独立に制御する制御部と
を有する、請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記加熱部は、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の発熱素子を含むものであり、
前記制御部は、前記処理容器を冷却する際に、前記検出値に基づいて、前記処理容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記発熱素子の各々の発熱量を独立に制御するとともに、前記供給流量を独立に制御するものである、請求項3に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記供給部は、気体を送風する送風機であり、
前記冷却部は、各々が、前記送風機から前記供給口の各々へ供給される気体が流れる各々の流路に設けられた、複数の流量調整弁を含み、
前記制御部は、前記処理容器を冷却する際に、前記検出値に基づいて、前記処理容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記送風機が気体を送風する風量を制御するとともに、前記流量調整弁の各々の開度を独立に制御することによって、前記供給流量を独立に制御するものである、請求項3又は請求項4に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記処理容器の周囲を覆うように設けられているとともに、前記処理容器の周囲に、排気口を介して内部が排気可能な空間を画成している覆い部材を有し、
前記冷却部は、前記排気口を介して排気されている前記空間の内部に、前記供給口の各々を介して気体を供給することによって前記処理容器を冷却するものであり、
前記覆い部材は、開口部が形成されてなるとともに、前記開口部を介して前記処理容器が前記覆い部材の内部に挿入されてなるものであり、
前記開口部における前記覆い部材と前記処理容器との隙間には、前記隙間を介して前記覆い部材内へ外気が流入することを抑制するための流入抑制部材が設けられている、請求項1から請求項5のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項7】
一の方向に沿って延在する容器の温度を制御する温度制御システムにおいて、
前記容器を加熱する加熱部と、
気体を供給する供給部と、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の供給口とを含み、前記供給部が前記供給口の各々を介して前記容器に気体を供給することによって前記容器を冷却する冷却部と、
前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の検出素子を含み、前記容器内の前記一の方向に沿った温度分布を検出するための検出部と、
前記容器を冷却する際に、前記検出部が検出した検出値に基づいて、前記容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記供給部が前記供給口の各々を介して気体を供給する供給流量を独立に制御する制御部と
を有する、温度制御システム。
【請求項8】
前記加熱部は、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の発熱素子を含むものであり、
前記制御部は、前記容器を冷却する際に、前記検出値に基づいて、前記容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記発熱素子の各々の発熱量を独立に制御するとともに、前記供給流量を独立に制御するものである、請求項7に記載の温度制御システム。
【請求項9】
前記供給部は、気体を送風する送風機であり、
前記冷却部は、各々が、前記送風機から前記供給口の各々へ供給される気体が流れる各々の流路に設けられた、複数の流量調整弁を含み、
前記制御部は、前記容器を冷却する際に、前記検出値に基づいて、前記容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記送風機が気体を送風する風量を制御するとともに、前記流量調整弁の各々の開度を独立に制御することによって、前記供給流量を独立に制御するものである、請求項7又は請求項8に記載の温度制御システム。
【請求項10】
基板を熱処理する熱処理方法において、
処理容器内で、基板保持部により、一の方向に沿って基板を所定の間隔で複数保持した状態で、加熱部により前記処理容器を加熱することによって、前記基板保持部に保持されている基板を熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程の後、供給部により、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の供給口の各々を介して前記処理容器に気体を供給することによって、前記処理容器を冷却する冷却工程と
を有し、
前記冷却工程は、前記処理容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記供給部が前記供給口の各々を介して気体を供給する供給流量を独立に制御するものである、熱処理方法。
【請求項11】
前記冷却工程は、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の検出素子を含み、前記処理容器内の前記一の方向に沿った温度分布を検出するための検出部が検出した検出値に基づいて、前記処理容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記供給流量を独立に制御するものである、請求項10に記載の熱処理方法。
【請求項12】
前記加熱部は、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の発熱素子を含むものであり、
前記冷却工程は、前記検出値に基づいて、前記処理容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記発熱素子の各々の発熱量を独立に制御するとともに、前記供給流量を独立に制御するものである、請求項11に記載の熱処理方法。
【請求項13】
前記供給部は、気体を送風する送風機であり、
前記冷却工程は、前記検出値に基づいて、前記処理容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記送風機が気体を送風する風量を制御するとともに、各々が、前記送風機から前記供給口の各々へ供給される気体が流れる各々の流路に設けられた、複数の流量調整弁の各々の開度を独立に制御することによって、前記供給流量を独立に制御するものである、請求項11又は請求項12に記載の熱処理方法。
【請求項14】
一の方向に沿って延在する容器の温度を制御する温度制御方法において、
加熱部により前記容器を加熱した後、供給部により、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の供給口の各々を介して前記容器に気体を供給することによって、前記容器を冷却する冷却工程を有し、
前記冷却工程は、前記容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記供給口の各々を介して気体を供給する供給流量を独立に制御するものである、温度制御方法。
【請求項15】
前記冷却工程は、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の検出素子を含み、前記容器内の前記一の方向に沿った温度分布を検出するための検出部が検出した検出値に基づいて、前記容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記供給流量を独立に制御するものである、請求項14に記載の温度制御方法。
【請求項16】
前記加熱部は、前記一の方向に沿って各々が互いに異なる位置に設けられた複数の発熱素子を含むものであり、
前記冷却工程は、前記検出値に基づいて、前記容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記発熱素子の各々の発熱量を独立に制御するとともに、前記供給流量を独立に制御するものである、請求項15に記載の温度制御方法。
【請求項17】
前記供給部は、気体を送風する送風機であり、
前記冷却工程は、前記検出値に基づいて、前記容器の冷却速度が前記一の方向に沿って等しくなるように、前記送風機が気体を送風する風量を制御するとともに、各々が、前記送風機から前記供給口の各々へ供給される気体が流れる各々の流路に設けられた、複数の流量調整弁の各々の開度を独立に制御することによって、前記供給流量を独立に制御するものである、請求項15又は請求項16に記載の温度制御方法。
【請求項18】
コンピュータに請求項10から請求項13のいずれかに記載の熱処理方法又は請求項14から請求項17のいずれかに記載の温度制御方法を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−62361(P2013−62361A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199621(P2011−199621)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】