説明

熱硬化性樹脂充填材

【課題】半導体搭載用パッケージ基板の穴部を樹脂で充填、硬化する際の硬化収縮を抑え、内部ストレスを低減し、半導体チップの実装の温度領域、冷熱サイクル温度領域や、高温高湿下での基板の信頼性を向上させることが可能な熱硬化性樹脂充填材を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂充填材において、25℃で液状の第1のエポキシ樹脂と、エポキシ当量が200以上の第2のエポキシ樹脂を含み、コーンプレート型粘度計により25℃、5rpmで測定される粘度が、2−100Psである混合エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、無機フィラーと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体搭載用パッケージ基板の穴埋めなどに用いられる熱硬化性樹脂充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・高機能化に伴い、プリント基板などの半導体搭載用パッケージ基板のパターン微細化、実装面積の縮小化、部品実装の高密度化が要求されている。そのため、スルーホールが設けられた両面基板や多層基板、さらには絶縁層、導体回路が順次形成されたビルドアップ層(以下BU層と記す)のスルーホール周辺部や上部に、ビアホールなどで層間接続されたビアオンスルーホール構造や、スタックビア構造といった基板構成により、基板の高密度化がなされている。そして、BGA(ボール・グリッド・アレイ)、LGA(ランド・グリッド・アレイ)などのエリアアレイ実装が行われる。
【0003】
このような基板構成において、表面及びスルーホールやビアホールといった貫通穴などの穴部の内壁に導電層が形成され、印刷などにより、穴部に熱硬化性樹脂などの充填材が充填、硬化される。
このとき、充填材の種類によっては、半導体チップの実装の温度領域や、冷熱サイクル温度領域や、高温高湿環境下で、BU層や穴部の周辺にクラックが発生し、さらには接続信頼性が低下するという問題が生じる。
【0004】
そのため、充填材において、アミン型エポキシ樹脂を含有することにより、実装時のはんだリフロー工程など熱が加わる工程前後の硬化収縮を抑え、BU層のクラック耐性を改善することが提案されている(例えば特許文献1など参照)。また、充填材における熱膨張をコア材より大きくし、多段BU基板にした際の収縮を抑えることが提案されている(例えば特許文献2など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−222549号公報
【特許文献2】特開2010-37544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、半導体チップの実装の温度領域、冷熱サイクル温度領域や、高温高湿下での信頼性向上のため、充填材の組成面からさまざまな検討がなされているものの、さらなる改善が要求されている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、半導体搭載用パッケージ基板の穴部を樹脂で充填、硬化する際の硬化収縮を抑え、内部ストレスを低減し、半導体チップの実装の温度領域、冷熱サイクル温度領域や、高温高湿下での基板の信頼性を向上させることが可能な熱硬化性樹脂充填材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明の一態様の熱硬化性樹脂充填材は、25℃で液状の第1のエポキシ樹脂と、エポキシ当量が200以上の第2のエポキシ樹脂を含み、コーンプレート型粘度計により25℃、5rpmで測定される粘度が2−100Psである混合エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、無機フィラーと、を含むことを特徴とする。
【0009】
このような構成により、半導体搭載用パッケージ基板の穴部を樹脂で充填、硬化する際の硬化収縮を抑え、内部ストレスを低減し、半導体チップの実装の温度領域、冷熱サイクル温度領域や、高温高湿下での基板の信頼性を向上させることが可能となる。
【0010】
本発明の一態様の熱硬化性樹脂充填材において、第1のエポキシ樹脂に対する第2のエポキシ樹脂の重量比が、5−40%であることが好ましい。このような構成により、溶剤を添加することなく、印刷性の良好な粘度を得ることが可能となる。
【0011】
本発明の一態様の熱硬化性樹脂充填材において、第2のエポキシ樹脂のエポキシ当量が、250以上であることが好ましい。このような構成により、より効果的に硬化収縮を抑えることが可能となる。
【0012】
本発明の一態様の熱硬化性樹脂充填材において、一般式:(RCOO)−R(置換基Rは炭素数が5以上の炭化水素、置換基Rは、水素、金属アルコキシド又は金属、nは1から4の整数である)で表される脂肪酸を含むことが好ましい。このような構成により、チキソ性が付与されるとともにその経時劣化を抑え、半導体搭載用パッケージ基板の穴部への充填・硬化後の優れた形状保持性、研磨性を得ることが可能となる
【0013】
また、本発明の一態様の半導体搭載用パッケージ基板において、このような熱硬化性樹脂充填材の硬化物で充填された穴部を有することが好ましい。このような構成により、内部クラックの発生が抑えられ、高い信頼性を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様の熱硬化性樹脂充填材により、半導体搭載用パッケージ基板の穴部を樹脂で充填、硬化する際の硬化収縮を抑え、内部ストレスを低減し、半導体チップの実装の温度領域、冷熱サイクル温度領域や、高温高湿下での基板の信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】反り量の測定方法を示す図である。
【図2】信頼性評価基板の作成工程図である。
【図3】簡易ビルドアップ基板作成後の外観の光学顕微鏡写真である。
【図4A】実施例1のリフロー処理後の基板外観の光学顕微鏡写真である。
【図4B】実施例1のリフロー処理後の基板断面の光学顕微鏡写真である。
【図5A】比較例2におけるリフロー処理後の基板外観の光学顕微鏡写真である。
【図5B】比較例2におけるリフロー処理後の基板断面の光学顕微鏡写真である。
【図6】実施例1の吸湿後リフロー処理後の基板断面の光学顕微鏡写真である。
【図7】比較例2の吸湿後リフロー処理後の基板断面の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本実施形態の熱硬化性樹脂充填材は、25℃で液状の第1のエポキシ樹脂と、エポキシ当量が200以上の第2のエポキシ樹脂を含み、回転式粘度計により25℃、5rpmで測定された粘度が、2−100Psである混合エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、無機フィラーと、を含むことを特徴とするものである。
【0017】
本実施形態の熱硬化性樹脂充填材における第1のエポキシ樹脂である25℃で液状のエポキシ樹脂としては、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、公知のものを使用することができる。
【0018】
例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、プロピレングリコール又はポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテルや、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、トリグリシジルパラアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルトトルイジンなどのアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0019】
これらの市販品としては、ビスA型液状エポキシ樹脂として、三菱化学社製 828、ビスF型液状エポキシ樹脂として、三菱化学社製 807、アミン型エポキシ樹脂(パラアミノフェノール型エポキシ樹脂)として、三菱化学社製 jER−630などが挙げられる。
【0020】
これらのうち、粘度が低くペースト化する際にフィラーの充填量を増やすことができ、耐熱骨格であるベンゼン環を含むことから、パラアミノフェノール型液状エポキシ樹脂が特に好ましい。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0021】
また、第2のエポキシ樹脂であるエポキシ当量が200以上のエポキシ樹脂としては、ジシクロペンタジエンとフェノールを付加縮合反応して得られるジシクロペンタジエン骨格含有のノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量:250−280)、ビフェニルとフェノールを付加縮合反応して得られるビフェニル骨格含有のノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量:265−285)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量:200−230)、ビスA型線状分子型エポキシ樹脂(エポキシ当量:450−500)などが挙げられる。
【0022】
これらの市販品としては、ジシクロペンタジエンとフェノールを付加縮合反応して得られるジシクロペンタジエン骨格含有のノボラック型エポキシ樹脂として、DIC社製 エピクロンHP7200、ビフェニルとフェノールノボラックを付加縮合反応して得られるビフェニル骨格含有のノボラック型エポキシ樹脂として、日本化薬社製 NC−3000、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、DIC社製 エピクロンN665、ビスA型線状分子型エポキシ樹脂として、三菱化学社製 1001等が挙げられる。
【0023】
これらのうち、より硬化収縮、熱膨張を抑える観点で、エポキシ当量が250以上のエポキシ樹脂がより好ましい。
【0024】
そして、このような25℃で液状の第1のエポキシ樹脂と、エポキシ当量が200以上の第2のエポキシ樹脂を含む混合エポキシ樹脂の粘度は、25℃、5rpmの30sec値で2−100Psとする。このとき、粘度はJIS Z 8803に記載されているコーンローター(円錐ロータ)とプレートから成るコーンプレート型粘度計で、たとえばTV−30型(東機産業製、ロータ 3°×R9.7)で測定される。
【0025】
このようにして測定される粘度が2Ps未満であると、第一エポキシ樹脂と第二エポキシ樹脂の混合エポキシ樹脂の耐熱性が悪化し、100Psを超えると、ペースト化する際にフィラーの充填量を増やすことが困難となる。好ましくは5−80Psである。
【0026】
またこのような混合エポキシ樹脂における第1のエポキシ樹脂に対する第2のエポキシ樹脂の重量比が5−40%であることが好ましい。5%未満であると硬化収縮の低減効果を充分に得ることができず、40%を超えると、混合エポキシ樹脂の粘度が増加し、フィラーの充填量を上げることが困難となる。より好ましくは10−30%である。
【0027】
本実施形態の熱硬化性樹脂充填材におけるエポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させるために用いられるものである。このようなエポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、及びホスホニウムイリドなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0028】
これらのうち、好ましいものとしては、イミダゾール類、イミダゾールのAZINE化合物、イミダゾールのイソシアヌル酸塩、イミダゾールヒドロキシメチル体、ジシアンジアミドとその誘導体、メラミンとその誘導体、ジアミノマレオニトリルとその誘導体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエタノーアミン、ジアミノジフェニルメタン、有機酸ジヒドラジッドなどのアミン類、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン化合物などが挙げられる。
【0029】
これらの市販品としては、イミダゾール類として、四国化成工業社製 2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ、イミダゾールのAZINE化合物として、四国化成工業社製 2MZ−A、2E4MZ−A、イミダゾールのイソシアヌル酸塩として、四国化成工業社製 2MZ−OK、2PZ−OK、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7として、サンアプロ社製 DBU、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとして、味の素社製 ATUなどが挙げられる。
【0030】
これらのうち、特にイミダゾールは、エポキシ樹脂の硬化物において耐熱性、耐薬品性に優れ、また疎水性が得られることから、吸湿を抑制することができるため好適である。また、ジシアンジアミド、メラミンや、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、3,9−ビス[2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のグアナミン及びその誘導体、及びこれらの有機酸塩やエポキシアダクトなどは、銅との密着性や防錆性を有することが知られており、エポキシ樹脂の硬化剤として働くとともに、半導体搭載用パッケージ基板の銅の変色防止に寄与することができることからで、好適に用いることができる。
【0031】
このようなエポキシ樹脂硬化剤の配合割合は、通常の割合で充分であり、例えば、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部が適当である。
【0032】
無機フィラーは、硬化収縮による応力緩和や線膨張係数の調整のために用いられるものである。このような無機フィラーとしては、通常の樹脂組成物に用いられる公知の無機フィラーを用いることができる。具体的には、例えば、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、タルク、有機ベントナイトなどの非金属フィラーや、銅、金、銀、パラジウム、シリコンなどの金属フィラーが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0033】
無機フィラーの形状は、球状、針状、板状、鱗片状、中空状、不定形状、六角状、キュービック状、薄片状などがあげられるが、無機フィラーの高充填の観点から球状が好ましい。
【0034】
これらのうち、低吸湿性、低体積膨張性に優れるシリカや、炭酸カルシウムが好適に用いられる。シリカはとしては、非晶質、結晶のいずれであってもよく、これらの混合物でもよい。高充填を図る上では、球状の非晶質(溶融)シリカが好ましい。また、炭酸カルシウムとしては、天然の重質炭酸カルシウム、合成の沈降炭酸カルシウムのいずれであってもよい。
【0035】
また、これら無機フィラーの平均粒径は、0.1〜25μmが好ましい。平均粒径が0.1μm未満では、比表面積が大きくフィラー同士の凝集作用の影響により分散不良が発生し、またフィラーの充填量を増やすことが困難になる。一方、25μmを超えると、半導体搭載用パッケージ基板の穴部への充填性が悪くなるうえ、穴埋めした部分に導体層を形成したときに平滑性が悪くなる。より好ましくは、1〜10μmである。
【0036】
このような無機フィラーの配合割合は、熱硬化性樹脂充填材全体量に対して45〜90質量%とすることが好ましい。45質量%未満では、得られる硬化物の熱膨張が大きくなり過ぎ、さらに十分な研磨性や密着性を得ることが困難となる。一方、90質量%を超えると、ペースト化が困難になり、良好な印刷性や穴埋め充填性を得ることが困難となる。より好ましくは、50〜75質量%である。さらに好ましくは、60〜75である。このような無機フィラーの配合割合とすることで、熱硬化性樹脂充填材の平均熱膨張係数を、低熱膨張のコア材料に適したものとすることができる。
【0037】
また、本実施形態の熱硬化性樹脂充填材において、さらに脂肪酸を用いることが好ましい。脂肪酸は、熱硬化性樹脂充填材にチキソ性を付与するために用いられる。単にチキソ性を付与するだけであれば、有機ベントナイト、タルクなどの不定形フィラーを添加するだけでもよいが、この場合、当初のチキソ性は良好だが、経時でチキソ性が劣化する。脂肪酸は、エポキシ樹脂との相溶性が低く、通常エポキシ樹脂の添加剤、表面処理剤としては用いられないが、脂肪酸の添加により、良好なチキソ性を得ることができるとともに、チキソ性の経時変化を抑制し、保持することが可能となる。
【0038】
本実施形態の熱硬化性樹脂充填材における脂肪酸は、一般式:(RCOO)−R(置換基Rは炭素数が5以上の炭化水素、置換基Rは、水素、金属アルコキシド又は金属、nは1から4の整数である)で表される。置換基Rの炭素数が5以上のとき、チキソ性付与の効果を発現させることができる。より好ましくはnが7以上である。
【0039】
脂肪酸としては、炭素鎖中に二重結合あるいは三重結合を有する不飽和脂肪酸であってもよいし、それらを含まない飽和脂肪酸であってもよい。例えば、ステアリン酸(炭素数と不飽和結合の数:18:0)、ヘキサン酸(6:0)、オレイン酸(18:1(9))、イコサン酸(20:0)、ドコサン酸(22:0)、メリシン酸(30:0)などが挙げられる。これら脂肪酸の置換基R1の炭素数は5〜30が好ましい。より好ましくは、炭素数5〜20である。
【0040】
また、例えば、置換基Rを、アルコキシル基でキャッピングされたチタネート系の置換基とした金属アルコキシドなど、カップリング剤系の構造で長い(置換基Rの炭素数が5以上)脂肪鎖を有する骨格のものであってもよい。例えば、KR−TTS(味の素ファインテクノ社製)などを用いることができる。その他、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム(それぞれ川村化成工業社)など金属石鹸を用いることができる。金属石鹸における金属元素としては、Ca、Zn、Li、Mg,Naなどを用いることができる。
【0041】
このような脂肪酸の配合割合は、無機フィラー100質量部に対して0.1〜2質量部とすることが好ましい。0.1質量部未満であると、十分なチキソ性を付与することできず、半導体搭載用パッケージ基板の穴部を埋め込む際、ダレが生じやすくなる。一方、2質量部を超えると、熱硬化性樹脂充填材の見かけの粘度が高くなりすぎるため、半導体搭載用パッケージ基板の穴部への埋め込み性が低下する。また、穴部に充填・硬化した後、穴部内に気泡が残存するなど、消泡性が悪化し、ボイドやクラックを生じやすくなる。より好ましくは、0.1〜1質量部である。
【0042】
脂肪酸は、予め脂肪酸で表面処理をした無機フィラーを用いることにより配合されてもよく、より効果的に熱硬化性樹脂充填材にチキソ性を付与することが可能となる。この場合、脂肪酸の配合割合は、未処理フィラーを用いた場合より低減することができ、無機フィラーを全て脂肪酸処理フィラーとした場合、脂肪酸の配合割合は、無機フィラー100質量部に対して0.1〜1質量部とすることが好ましい。
【0043】
また、本実施形態の熱硬化性樹脂充填材において、さらにシラン系カップリング剤を添加してもよい。シラン系カップリング剤を添加することにより、無機フィラーとエポキシ樹脂との密着性を向上させ、その硬化物におけるクラックの発生を抑えることが可能となる。エポキシ樹脂との相溶性が高く、熱硬化性樹脂充填材に添加することにより、エポキシ樹脂と無機フィラーのぬれ性を向上させ、無機フィラーの充填量に応じた特性の制御性を上げることができる。特に、無機フィラーの含有量が多い場合、粘度上昇を抑え、より取り扱い性、充填性を向上させることが可能となる。
【0044】
シラン系カップリング剤としては、例えば、エポキシシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン、メルカプトシラン、メタクリロキシシラン、アミノシラン、スチリルシラン、イソシアネートシラン、スルフィドシラン、ウレイドシランなどが挙げられる。このようなシラン系カップリング剤の配合割合は、無機フィラー100質量部に対して0.05〜2.5質量部とすることが好ましい。0.05質量部未満であると、十分な密着性が得られず、クラックの発生を招き易くなる。一方、2.5質量部を超えると、熱硬化性樹脂充填材を半導体搭載用パッケージ基板の穴部に充填・硬化した後、穴部内に気泡が残存するなど、消泡性が悪化し、ボイドやクラックを生じやすくなる。
【0045】
シラン系カップリング剤は、予めシラン系カップリング剤で表面処理をした無機フィラーを用いることにより配合されてもよい。
【0046】
本実施形態の熱硬化性樹脂充填材において、室温で液状のエポキシ樹脂を用いている場合、必ずしも希釈溶剤を用いる必要はないが、組成物の粘度を調整するため、希釈溶剤を添加してもよい。希釈溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、及び上記グリコールエーテル類の酢酸エステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤などの有機溶剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0047】
希釈溶剤の配合割合は、熱硬化性樹脂充填材の全体量の10質量%以下であることが好ましい。希釈溶剤の配合割合が、10質量%を超えると、硬化時に、揮発成分の蒸発の影響により、穴部内に泡やクラックが発生しやすくなる。より好ましくは、5質量%以下である。
【0048】
本実施形態の熱硬化性樹脂充填材において、その他必要に応じて、フェノール化合物、ホルマリン及び第一級アミンを反応させて得られるオキサジン環を有するオキサジン化合物を配合してもよい。オキサジン化合物を含有することにより、半導体搭載用パッケージ基板の穴部に充填された熱硬化性樹脂充填材を硬化した後、形成された硬化物上に無電解めっきを行なう際、過マンガン酸カリウム水溶液などによる硬化物の粗化を容易にし、めっきとのピール強度を向上させることができる。
【0049】
また、通常のスクリーン印刷用レジストインキに使用されているフタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知の着色剤を添加してもよい。
【0050】
また、保管時の保存安定性を付与するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知の熱重合禁止剤や、粘度などの調整のために、クレー、カオリン、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知の増粘剤、チキソトロピー剤を添加することができる。その他、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤、レベリング剤やイミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤などの密着性付与剤のような公知の添加剤類を配合することができる。
【0051】
このようにして得られる熱硬化性樹脂充填材において、コーンプレート型粘度計により測定される粘度は、25℃、5rpmの30sec値で、200−1000Psであることが好ましい。200Ps未満であると、形状保持が困難となり、ダレが発生する。一方、1000Psを超えると、半導体搭載用パッケージ基板の穴部への埋め込み性が低下する。より好ましくは200−800Psである。
【0052】
上述のようにして調製された本実施形態の熱硬化性樹脂充填材において、低熱膨張のコア材料のスルーホールへの充填に適した平均線膨張係数が得られる。ここで平均線膨張係数とは、Tg未満の温度領域で、温度範囲30〜100℃の線膨張係数のことで、X−Y方向、Z方向のどちらか一方向で測定された数値を指す。
【0053】
平均線膨張係数の測定方法は、JIS C 6481 TMA測定方法に準拠する方法とし、試験荷重5g、昇温速度10℃/min、温度範囲30〜300℃にて連続して昇温→降温→昇温と測定したとき、2回目の昇温過程の値を測定値とする。1回目の昇温過程の測定値は、硬化物作製時の歪みなどの影響を受け、精確な数値を得ることができないためである。
【0054】
また、充填材の平均熱膨張係数の規定でX−Y方向、Z方向どちらか一方向で測定された数値としたが、コア材料などと異なり、ガラスクロスに樹脂組成物を含浸させた構造でないため、異方性はない。そのため、いずれかの数値とすればよい。
【0055】
本実施形態の熱硬化性樹脂充填材において、このような条件にて測定された平均熱膨張係数を、低熱膨張のコア材料のスルーホールへの充填に適した30ppm未満とすることができる。好ましくは17〜30ppmであり、より好ましくは、17〜25ppmである。平均熱膨張係数の調整は、上述したフィラーの種類、形状、フィラー量、および平均粒子径を選択することよって行うことができる。
【0056】
本実施形態の硬化性樹脂組成物を充填する穴部を有する半導体搭載用パッケージ基板のコア材料としては、一般的なものとしては、ガラス、紙、セラミック、ガラス不織布、有機繊維(アラミド不織布)に樹脂を含侵させプレス成型などにより作られた基材が挙げられる。ここで含浸させる樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂などがあげられる。好ましくは、ガラス不織布、有機繊維などにエポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂を含浸させ、プレス成型された基材である。
【0057】
より好ましくは、基材のZ軸方向(厚み方向)のTg以下のCTE(熱膨張係数)が17〜30ppmであるコア材料である。Tg以下のCTEが17〜30ppmである市販のコア材料としては、MCL−E−679FGR、MCL−E−700G(以上、日立化成工業社製)、MEGTRON GX(R−1515S)(パナソニック電工社製)、ELC−4785GS−B(住友ベークライト社製)、CCL−HL832NX−A、CCL−HL832NS(以上、三菱ガス化学社製)が挙げられる。これらのコア材料を用いる場合、本実施形態の熱硬化性樹脂充填剤との線膨張係数の差が少ないため、信頼性に優れた半導体搭載用パッケージ基板を形成することができる。
【0058】
本実施形態の熱硬化性樹脂充填材は、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、ダイコーティング法など公知のパターニング方法を用いて、例えば表面及び穴部の壁面に銅などの導電層が形成された半導体搭載用パッケージ基板の穴部に充填される。このとき、穴部から少しはみ出るように完全に充填される。そして、穴部が熱硬化性樹脂充填材で充填された半導体搭載用パッケージ基板を、例えば、150℃で60分間加熱することにより、熱硬化性樹脂充填材を硬化させ、硬化物を形成する。
【0059】
そして、半導体搭載用パッケージ基板の表面からはみ出した硬化物の不要部分を、公知の物理研磨方法により除去し、平坦化する。そして、表面の導電層を所定パターンにパターニングして、所定の回路パターンが形成される。なお、必要に応じて過マンガン酸カリウム水溶液などにより硬化物の表面粗化を行った後、無電解めっきなどにより硬化物上に導電層を形成してもよい。
【実施例1】
【0060】
以下、実施例及び比較例を示して本実施形態を具体的に説明する。尚、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0061】
(ペーストの調製)
表1に示す成分を、それぞれの配合割合(質量部)にて撹拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて分散を行い、熱硬化性樹脂充填材である実施例1−7、比較例1−4のペーストを調製した。
【0062】
【表1】

*1:828(三菱化学社製)
*2:807(三菱化学社製)
*3:パラアミノフェノール型エポキシ jER−630(三菱化学社製)
*4:エピクロンHP7200(DIC社製)
*5:NC−3000(日本化薬社製)
*6:エピクロンN665(DIC社製)
*7:EPPN−501H(日本化薬社製)
*8:トリアジン骨格含有イミダゾール2MZ−A(四国化成社製)
*9:SO−C5(アドマテックス社製)
*10:ソフトン1800(備北粉化工業社製)
*11:マイクロパウダー3N(備北粉化工業社製)
*12:マイクロパウダー3S(備北粉化工業社製 マイクロパウダー3Nの質量に対して1wt%の脂肪酸表面処理)
*13:トリメトキシエポキシシラン KBM−403(信越化学社製)
【0063】
〈エポキシ粘度測定〉
各実施例、比較例において、ペーストの調製に用いられたエポキシ樹脂について、粘度を測定した。
先ず、エポキシ当量が200以上(室温(25℃)で固形)のエポキシ樹脂を、これら以外(室温で液状)のエポキシ樹脂中に熱を加えて溶解させ、混合エポキシ樹脂である液状+固形エポキシ樹脂のベースを調製した。
【0064】
得られたエポキシ樹脂のベースについて、測定温度25℃で、コーン形状:3°×R 9.7のコーンプレート型粘度計(TV−30型 東機産業社製)を用いて、5rpm、30secの粘度を測定し、エポキシ粘度とした。
各実施例、比較例におけるエポキシ粘度の測定結果を表2に示す。エポキシ当量が200以上のエポキシ樹脂量が多い比較例1において、エポキシ粘度が100Psを超えることがわかる。
【0065】
〈ペースト粘度測定〉
実施例、比較例の各ペーストについて、粘度を測定した。測定方法、条件はエポキシ粘度測定と同様であり、コーンプレート型粘度計(TV−30型 東機産業社製)を用いて、5rpm、30secの粘度を測定し、ペースト粘度とした。
各実施例、比較例におけるペースト粘度の測定結果を表2に示す。比較例1を除いたその他の実施例、比較例のペーストは、いずれも1000Ps以下となった。一方、エポキシ当量が200以上のエポキシ樹脂量が多い比較例1においては、ペースト粘度が1000Psを超えることがわかる。
【0066】
〈印刷性評価〉
得られた各ペーストにおいて、印刷性(充填性)を評価した。
評価基板として、スルーホールを形成した両面板(MCL−E−67 日立化成工業社製)を用いた。その仕様は、厚さ:0.8mm、スルーホール径:0.2mm、スルーホールピッチ:1mm、スルーホール数400穴とした。
このような評価基板に、半自動印刷機にてドットパターン印刷を行い、印刷性(充填性)を評価した。各実施例、比較例のペーストにおける評価結果を表2に示す。評価基準は、以下の通りである。
○:全ての穴に1回印刷でペーストの充填を行うことができた。
×:数回にわたり印刷を行い、ペーストを充填させたところ、断面に多数の気泡が発生した。
表2に示すように、比較例1において、エポキシ当量が200以上のエポキシ樹脂を含んでいても、エポキシ粘度が100Psを超えているため、良好な印刷性(充填性)を得ることができず、充填されたペースト内部に多数の気泡が発生することがわかる。
【0067】
〈硬化収縮の評価〉
得られた各ペーストは、25℃で液状であるため、硬化収縮の測定は困難であることから、極薄基材の片面に、各ペーストを塗布し、硬化前後での基材の反りを測定することにより、簡易的に評価した。片面塗布であるため、収縮により反りが発生し、反り量が大きいものほど硬化収縮が大きく、内部ストレスが大きいと推測される。
【0068】
基材としては、60μmtのエッチアウト基板(MCL−E−679FGR 日立化成工業社製)を用いた。これを50mm×50mmに裁断したものに、アプリケータによって、硬化後の厚みが約30μmとなるように、各ペーストを片面塗布した。これを、熱風循環式乾燥炉(DF610 ヤマト科学社製)に投入し、硬化条件:150℃で60分硬化させ、反り評価基板を得た。
【0069】
得られた各反り評価基板を水平面上に設置し、図1に示すように、硬化後の状態で、破線の対角線を固定した状態で、固定されていない角における高さa、bを測定し、その平均を反り量とした。各実施例、比較例のペーストにおける測定結果を表2に示す。
【0070】
表2に示すように、エポキシ当量が200以上のエポキシ樹脂を含まない比較例2−4のペーストを用いたものは、反り量が12mm以上となり、硬化収縮が大きくなっていることがわかる。
【0071】
〈硬化物のTMA(熱機械分析)測定〉
先ず、各実施例、比較例のペーストの硬化物を作製した。電解銅箔(18μmt)上に、アプリケータにより、硬化後の膜厚が約100μmとなるように塗布し、熱風循環式乾燥炉(DF610 ヤマト科学社製)に投入し、150℃で60分間、硬化処理を行った後、室温まで放冷した。
【0072】
放冷後、銅箔上より硬化物を剥離し、TMA測定用のサンプルサイズ(幅3mm×長さ20mm)にトリミングを行い、TMA測定用試料を作製した。
【0073】
得られたTMA測定用試料について、引張り法によりTMA測定を行った。測定条件(JIS−C6481)は、試験荷重:50mN、測定範囲:30−300℃、昇温速度:10℃/minとし、支点間距離は10mmとした。
【0074】
各試料について、それぞれ2度昇温を行い、1回目の昇温過程で硬化物作製時の歪を取った上で、2回目の昇温時における測定値をCTE(熱膨張係数)とした。なお、CTEは、Tg以下の熱膨張で、解析レンジは30−100℃の平均線膨張率とした。
各実施例、比較例のペーストの硬化物におけるCTEの測定結果を表2に示す。
【0075】
〈コア材のTMA測定〉
プリント配線板(MCL−E−679FGR 日立化成工業社製)を、厚さ0.8mm、約1mm×1mmサイズとなるようにトリミングを行い、コア材試料とした。得られたコア材試料について、ペネトレイト法(侵入法)により、Z軸方向(コア材の厚み方向)の熱膨張係数を測定した。測定条件は、硬化物のTMA測定と同様とし、2回目の昇温時における測定値を測定結果とした。また、Tg以下のCTEは、30−100℃の平均線膨張率とした。
【0076】
このようにしてコア材試料についてTMA測定が行われた結果、Tgは160℃、Tg以下のZ軸方向のCTEは25ppmであった。
【0077】
〈硬化物の研磨性、及び穴埋め材とコア材の熱挙動マッチング評価〉
得られた各実施例、比較例のペーストを用いて、Z軸方向のCTEが25ppmのプリント配線板の穴部を充填した簡易ビルドアップ基板を作製し、穴埋めされたペースト硬化物(穴埋め材)とコア材の熱挙動マッチング評価を行った。
【0078】
図2に簡易ビルドアップ基板の作成工程図を示す。図2(a)に示すように、基材11に穴部としてスルーホール12が形成され、表面及びスルーホール壁面に導電層13が形成されたプリント配線板10(MCL−E−679FGR 日立化成工業社製)を用いた。プリント配線板の仕様は、厚さ:0.4mm、スルーホール径:0.2mm、スルーホールピッチ:0.8mm、スルーホール数400穴の両面基板とした。
【0079】
前処理として、プリント配線板10を、塩酸1%水溶液により酸処理(洗浄)した。そして、図2(b)に示すように、半自動スクリーン印刷機(SSA−PC560A 東海商事社製)を用いて、ドットパターン印刷を行い、各実施例、比較例のペースト14をスルーホール12に充填した。
【0080】
次いで、図2(c)に示すように、各ペーストがそれぞれ充填されたプリント配線板を熱風循環式乾燥炉(DF610 ヤマト科学社製)に投入し、150℃で60分間、硬化処理を行い、硬化物15を形成した。
【0081】
次いで、図2(d)に示すように、ハイカットバフ(SFBR−♯320 住友3M社製)を用い、バフ研磨機(石井表記社製)により、表面よりはみ出したペーストの硬化物15を研磨した。
このとき、各ペーストの硬化物について、研磨性を評価した。各実施例、比較例のペーストにおける評価結果を表2に示す。評価基準は、以下の通りである。
○:表面にはみ出したペーストが研磨により除去されている。
×:スルーホールの周辺、隣接するスルーホール間に、ペーストの残渣物が認められる。
脂肪酸が含有されている実施例1−3、5のペーストを用いた硬化物については、良好な研磨性を得ることができることがわかる。
【0082】
次いで、図2(e)に示すように、デスミア液(アトテック社製)により、穴埋め材(研磨された硬化物)表面のデスミアを行い、その後、無電解・電解めっき薬液(アトテック社製)を用いて、穴埋め材上に厚さ約20μmの蓋めっき16を施した。
【0083】
そして、ラミネート前の前処理として、密着性確保のために、図2(f)に示すように、外層をCZ処理(CZ−8100〈1μmエッチング〉+CL−8300処理 MEC社製)した。
【0084】
さらに、図2(g)に示すように、両面に熱硬化性層間絶縁膜17(ABF−GX13−40μm品 味の素社製)を、2チャンバー式真空ラミネーター(CVP−300、ニチゴーモートン社製)によりラミネート温度:100℃、真空度:5mmHg以下、圧力:5kg/cmの条件でラミネートした。さらに、プレス温度:100℃、圧力:5kg/cmの条件で、プレス成型することにより、絶縁層を形成した。ラミネート後、熱風循環式乾燥炉(DF610 ヤマト科学社製)にて、180℃で60分間、硬化処理を行い、簡易ビルドアップ基板20を得た。図3に基板作成後の外観の光学顕微鏡写真を示す。
【0085】
このようにして形成された簡易ビルドアップ基板20について、先ず、リフロー処理を行った。試験条件は、大気雰囲気中で、1サイクルあたり基板の表面温度:280℃/10sec以上暴露×3サイクルとした。
【0086】
このようにしてリフロー処理された簡易ビルドアップ基板について、光学顕微鏡を用い、基板の外観及び断面観察を行った。また、レーザー顕微鏡を用い、基板表面のスルーホール近辺の凹凸状態を確認した。各実施例、比較例のペーストを用いた簡易ビルドアップ基板における評価結果を表2に示す。評価基準は、以下の通りである。
A:コア材/穴埋め材が、フラットである。
B:穴埋め材が突出している。
【0087】
これらの結果及びTMA測定結果より、穴埋め材とコア材のTg以下のCTEがほぼ一致、もしくは穴埋め材のCTEがコア材の厚み方向のCTEより小さい比較例2以外の実施例及び比較例において、高温処理条件後でも、実施例1の上面を図4A、断面を図4Bに示すように、基板はフラットな状態であることがわかる。一方、比較例2については、穴埋め材の熱膨張が大きいために、リフロー処理後、上面を図5A、断面を図5Bに示すように、穴埋め材が盛り上がってしまっていることがわかる。
【0088】
〈吸湿後リフロー評価〉
得られた各実施例、比較例のペーストを用いて、プリント配線板の穴部を充填した簡易ビルドアップ基板を作製し、吸湿後リフロー評価を行った。
【0089】
簡易ビルドアップ基板の作製工程は、穴埋め材とコア材の熱挙動マッチング評価と同様であるが、プリント配線板(MCL−E−679FGR 日立化成工業社製)の仕様を、厚さ:0.8mm、スルーホール径:0.2mm、スルーホールピッチ:1.0mm、スルーホール数400穴の両面基板とした点、蓋めっき工程を行わず、研磨後前処理を行い、熱硬化性層間絶縁材料をラミネートした点において異なっている。なお、蓋めっき工程を行わないのは、穴埋め材への吸湿の影響を明確にするためである。
【0090】
このようにして得られた簡易ビルドアップ基板について、100℃の沸騰させた純水に投入し、2時間浸漬を行い、吸湿処理を行った。次いで、直ちにリフロー試験機(エアーリフロー炉NIS−20−62C エイテックテクトロン社製)に投入し、リフロー試験を行った。試験条件は、大気雰囲気中で、280℃に10sec以上暴露される条件で、10サイクル処理を行った。
【0091】
リフロー試験後の信頼性評価基板の外観を、それぞれ25穴について、目視及び光学顕微鏡により観察し、熱硬化性層間絶縁材料のデラミネーション及びクラックなどの発生の有無を評価した。各実施例、比較例における外観評価結果を表2に示す。評価基準は、以下の通りである。
○:熱硬化性層間絶縁材料のデラミネーション及びクラックが発生していない。
×:熱硬化性層間絶縁材料のデラミネーション又はクラックが発生した。
【0092】
また、リフロー試験後の信頼性評価基板の断面を、それぞれ25穴について、光学顕微鏡により観察し、スルーホール内のクラック、スルーホール内壁とのデラミネーションを評価した。各実施例、比較例のペーストにおけるスルーホールの状態の評価結果を表2に示す。また、図6に実施例1の、図7に比較例2のそれぞれ光学顕微鏡写真を示す。評価基準は、以下の通りである。
A:穴埋め材内部にクラック又は内壁とのデラミネーションが発生していない。
B:穴埋め材内部にマイクロクラックが発生した。
C:印刷性不良により、穴埋め材内部に気泡が発生した。
【0093】
【表2】

【0094】
このように、熱硬化性樹脂充填材にエポキシ当量の大きなエポキシ樹脂を導入することにより、硬化収縮を抑え、内部ストレスを低減し、マイクロクラックを抑制することができる。また、熱膨張を抑えることができるため、半導体搭載用パッケージ基板のコア材、外層ビルドアップ、ソルダーレジスト、フィルドビアなどに対する熱ストレスを低減することができる。
【0095】
【符号の説明】
【0096】
10…プリント配線板
11…基材
12…スルーホール
13…導電層
14…ペースト
15…硬化物
16…蓋めっき
17…熱硬化性層間絶縁材料
20…信頼性評価基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃で液状の第1のエポキシ樹脂と、エポキシ当量が200以上の第2のエポキシ樹脂を含み、コーンプレート型粘度計により25℃、5rpmで測定される粘度が2−100Psである混合エポキシ樹脂と、
エポキシ樹脂硬化剤と、
無機フィラーと、を含むことを特徴とする熱硬化性樹脂充填材。
【請求項2】
前記第1のエポキシ樹脂に対する前記第2のエポキシ樹脂の重量比が、5−40%であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂充填材。
【請求項3】
前記第2のエポキシ樹脂のエポキシ当量が、250以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱硬化性樹脂充填材。
【請求項4】
一般式:(RCOO)−R(置換基Rは炭素数が5以上の炭化水素、置換基Rは、水素、金属アルコキシド又は金属、nは1から4の整数である)で表される脂肪酸を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂充填材。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載の熱硬化性樹脂充填材の硬化物で充填された穴部を有することを特徴とする半導体搭載用パッケージ基板。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−69879(P2012−69879A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215527(P2010−215527)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】