説明

熱電素子を有する温度制御システム

特定の開示する実施形態は、車両の乗員室内の温度を制御することに関する。例えば、温度制御システム(TCS)が、車両の乗員室に気流を送達するように構成された風洞を含むことができる。TCSは、1つの熱エネルギー源、及び風洞に接続された熱伝達装置を含むことができる。第1の流体回路が、熱エネルギー源及び熱電素子(TED)に冷却剤を循環させることができる。第2の流体回路が、TED及び熱伝達装置に冷却剤を循環させることができる。バイパス回路が、TEDを迂回して熱伝達装置に熱エネルギー源を接続することができる。アクチュエータにより、冷却剤をバイパス回路、又は第1の流体回路及び第2の流体回路のいずれかを選択的に循環させることができる。熱エネルギー源が気流に熱を供給できる状態にあると判断された場合、制御装置がアクチュエータを動作させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2009年5月18日に出願された「熱電素子及び共用熱交換器を使用する温度制御システム」という名称の米国仮特許出願第61/179,314号の利益を主張するものであり、該特許はその内容全体が引用により本明細書に組み入れられて本明細書の一部を成す。
【0002】
本発明は、一般に環境制御に関し、より具体的には、車両内の温度制御に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、車両の乗員室は、暖房、換気及び空調(HVAC)システムによって冷暖房される。HVACシステムは、熱交換器を通じて空気を加温又は冷却してから乗員室内に流入させるように空気の流れを導く。車両の乗員室の冷暖房用エネルギーは、例えば内燃機関などの燃料供給式エンジンから供給することができる。熱交換器では、例えば、空気と水グリコールクーラントなどの冷却剤との間でエネルギーが伝達される。この空気は、外気から、又は乗員室から再循環した空気と外気の混合物から供給することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で説明する実施形態はいくつかの特徴を有し、これらのうち単独で望ましい特性を担うものは1つもない。ここで、特許請求の範囲によって表される本発明の範囲を限定することなく、有利な特徴の一部について手短に説明する。
【0005】
特定の開示する実施形態は、車両の乗員室内の温度を制御することに関する。例えば、温度制御システム(TCS)が、車両の乗員室に気流を送達するように構成された風洞を含むことができる。TCSは、1つの熱エネルギー源、及び風洞に接続された熱伝達装置を含むことができる。第1の流体回路が、熱エネルギー源及び熱電素子(TED)に冷却剤を循環させることができる。第2の流体回路が、TED及び熱伝達装置に冷却剤を循環させることができる。バイパス回路が、TEDを迂回して熱伝達装置に熱エネルギー源を接続することができる。アクチュエータにより、冷却剤をバイパス回路、又は第1の流体回路及び第2の流体回路のいずれかに選択的に循環させることができる。熱エネルギー源が気流に熱を供給できる状態にあると判断された場合、制御装置がアクチュエータを動作させることができる。
【0006】
いくつかの実施形態は、車両の乗員室内の温度を制御するためのシステムを提供し、このシステムは、車両の乗員室に乗員用の気流を送達するように構成された少なくとも1つの乗員用風洞と、少なくとも1つの熱エネルギー源と、乗員用風洞に接続された少なくとも1つの熱伝達装置と、少なくとも1つの熱電素子(TED)と、熱エネルギー源及びTEDに冷却剤を循環させるように構成された第1の流体回路と、TED及び熱伝達装置に冷却剤を循環させるように構成された、第1の流体回路とは別の第2の流体回路と、熱伝達装置に熱エネルギー源を接続するように構成された少なくとも1つのバイパス回路と、冷却剤を第1の流体回路及び第2の流体回路の代わりにバイパス回路内に循環させるように構成された少なくとも1つのアクチュエータと、少なくとも1つの制御システムとを含む。制御システムは、熱エネルギー源が気流に熱を供給できる状態にあると判断された場合にアクチュエータを動作させ、これにより冷却剤を第1の流体回路及び第2の流体回路内の代わりにバイパス回路内に循環させることができる。
【0007】
さらなる実施形態は、冷却剤を第2の流体回路内に循環させるように構成されたポンプを含むことができる。システムは、乗員用風洞に動作可能に接続された蒸発器を含むこともできる。熱エネルギー源は、車両エンジン、車両エンジンから熱エネルギーを供給されるヒーターコア、排気システム、別の適当な熱源、又はこれらの供給源の組み合わせとすることができる。別の実施形態は、乗員用風洞内に動作可能に接続されて、乗員用の気流を熱伝達装置を横切って送るように構成されたブレンドドアを含むことができる。いくつかの実施形態では、アクチュエータを、流体制御装置、弁、調整器、又はこれらの構造の組み合わせとすることができる。
【0008】
さらなる実施形態は、TEDを低温コアに接続するように構成された第3の流体回路を含むことができる。この低温コアは、流体から外気に熱を放散するように構成されたラジエータとすることができる。第3の流体回路は、流体を適切に移動させるためのポンプを含むこともできる。制御システムは、システムが暖房モード又は冷房モードのいずれで動作しているかを判断し、システムが冷房モードで動作していると判断した場合、冷却剤を第3の流体回路内に循環させるべく少なくとも1つのアクチュエータを動作させるようにさらに構成することもできる。
【0009】
いくつかの実施形態では、熱エネルギー源が閾値温度に達した場合、熱エネルギー源は、乗員用の気流に熱を供給できる状態にある。コントローラは、熱エネルギー源を循環する冷却剤が閾値温度に達した場合、熱エネルギー源が乗員用の気流に熱を供給できる状態にあると判断することもできる。
【0010】
いくつかの実施形態は、車両の乗員室内の温度を制御する方法を提供し、この方法は、車両の乗員用風洞内に動作可能に接続された少なくとも1つの熱伝達装置を横切って乗員用の気流を移動させるステップと、車両の温度制御システムを、熱伝達装置を含む第1の流体回路と熱エネルギー源を含む第2の流体回路との間で熱電素子(TED)が熱エネルギーを伝達する第1の動作モードで動作させるステップと、温度制御システムが第1の動作モードで動作した後に、温度制御システムを第2の動作モードに切り替えるステップとを含む。第2の動作モードでは、温度制御システムが、熱伝達装置及び熱エネルギー源と熱連通しているバイパス回路を開く。バイパス回路は、熱伝達装置と熱エネルギー源との間でTEDを使用せずに熱エネルギーを伝達するように構成される。
【0011】
他の実施形態では、熱エネルギー源が閾値温度に達した場合、温度制御システムが第2のモードに切り替わる。この熱エネルギー源は、自動車エンジンとすることができる。温度制御システムは、第2の流体回路内の流体の温度が閾値温度に達した場合、一定時間が経過した場合、乗員用の気流の温度が閾値温度に達した場合、或いは他のいずれかの特定条件、又はこれらの条件の組み合わせなどのその他の基準に基づいて第2のモードに切り替わることもできる。
【0012】
特定の実施形態は、車両の乗員室内の温度を制御する装置を製造する方法を提供し、この方法は、車両の乗員室に乗員用の気流を送達するように構成された少なくとも1つの乗員用風洞を設けるステップと、乗員用風洞に少なくとも1つの熱伝達装置を動作可能に接続するステップと、少なくとも1つの熱電素子(TED)を設けるステップと、冷却剤を循環させるように構成された第1の流体回路を熱エネルギー源及びTEDに動作可能に接続するステップと、冷却剤を循環させるように構成された第2の流体回路をTED及び熱伝達装置に動作可能に接続するステップと、冷却剤を循環させるように構成された少なくとも1つのバイパス回路を熱エネルギー源及び熱伝達装置に動作可能に接続するステップと、冷却剤を第1の流体回路及び第2の流体回路の代わりにバイパス回路内に循環させるように構成された少なくとも1つのアクチュエータを設けるステップと、熱エネルギー源が乗員用の気流に熱を供給できる状態にあると判断された場合に少なくとも1つのアクチュエータを動作させるように構成された少なくとも1つの制御装置を設けるステップとを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、乗員用風洞が、第1の風洞及び第2の風洞を含むことができる。第2の風洞は、第1の風洞に対して少なくとも部分的に平行に配置することができる。乗員用風洞は、第1の風洞及び第2の風洞を通過する気流の向きを選択的に変えるように構成されたブレンドドアを含むこともできる。熱伝達装置は、第2の風洞内にのみ配置することができる。
【0014】
他の実施形態では、乗員用風洞に蒸発器を動作可能に接続することができる。いくつかの実施形態は、低温コアを含むこともできる。低温コア及びTEDには、第3の流体回路を動作可能に接続することができる。この第3の流体回路を、冷却剤を循環させるように構成することができる。
【0015】
以下の図面及び関連する説明は、本開示の実施形態を例示するために示すものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】温度制御システムの実施形態の概略図である。
【図2】迂回可能なTEDを有する温度制御システムの実施形態に関するフロー図である。
【図3】冷房回路及び暖房回路を含む温度制御システムの実施形態の概略図である。
【図4】図3に示す温度制御システムの実施形態に関するフロー図である。
【図5】エンジンの暖気期間に対応する暖房モードにある温度制御システムの実施形態の概略図である。
【図6】エンジンが十分に暖かい場合の暖房モードにある温度制御システムの実施形態の概略図である。
【図7】冷房モードにある温度制御システムの実施形態の概略図である。
【図8】代替の冷房モードにある温度制御システムの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書では特定の好ましい実施形態及び実施例を開示するが、発明の主題は、具体的に開示する実施形態を超えて他の代替の実施形態及び/又は本発明の用途、及び本発明の修正例及び同等物にも及ぶ。従って、本明細書に開示する本発明の範囲は、後述する特定の実施形態のいずれかによって限定されるものではない。例えば、本明細書に開示するあらゆる方法又は処理では、方法又は処理の作用又は動作をいずれかの適当な順序で実行することができ、必ずしもいずれかの特定の開示する順序に限定されるわけではない。
【0018】
様々な実施形態を従来技術と対比させるために、これらの実施形態の特定の態様及び利点について説明する。必ずしも全てのこのような態様又は利点が、いずれかの特定の実施形態によって達成されるわけではない。従って、例えば、本明細書で教示するような1つの利点又はまとまった利点を、やはり本明細書で教示又は示唆できる他の態様又は利点を必ずしも達成せずに達成又は最適化するような形で様々な実施形態を実施することができる。実施形態によっては、特定の温度制御及び/又は流体回路構成との関連で説明するものもあるが、本発明をその他のシステム構成とともに使用することもできると理解されたい。さらに、本発明は車両との使用に限定されているが、温度制御が望まれる他の環境でも有利に使用することができる。
【0019】
通常、車両の乗員室の温度は、暖房、換気及び空調(HVAC)システムを使用して制御される。システムを暖房に使用する場合、車両エンジンが、流体回路を介して乗員室用の気流に熱エネルギーを供給することができる。気流内に配置された(ヒーターコアなどの)熱交換器を、気流が乗員室に入り込む前に、熱交換器を横切る気流に熱エネルギーを伝達するように構成することができる。このような構成では、エンジンの始動後に、車両のエンジン又はヒーターコアが、車両乗員室に導かれる空気をヒーターコアが十分に加熱できる温度に達して空気の温度が車両の乗員にとって快適なものとなるのに数分などの相当量の時間がかかる可能性がある。ヒーターコアが、乗員室が快適となるのに十分な熱エネルギーを乗員室用の気流に伝達できる温度に達した場合、ヒーターコア及び/又はエンジンが気流を加熱「できる状態にある」と言うことができる。
【0020】
冷房は、圧縮機を基本とする(蒸発器などの様々な構成部品を含む)冷却システムを使用して、乗員室に入り込む気流を冷却することにより行うことができる。車両エンジンがエネルギーを供給して、冷房システムの構成部品に(機械的又は電気的結合などを介して)動力を与えることができる。冷房システムの多くの構成部品は、暖房システムの構成部品とは別個のものであることが多い。例えば、通常、冷房システムは、ヒーターコアとは別の熱交換器を使用して乗員室用の気流に接続される。
【0021】
自動車のHVACアーキテクチャは、乗員室用冷暖房システムの1又はそれ以上の部分を補完する、又はこれに取って代わる1又はそれ以上の熱電素子(TED)を含むことができる。熱電素子に電気エネルギーを供給することにより、1又はそれ以上の流体回路及び/又は熱交換器を介して乗員用の気流との間で熱エネルギーを伝達することができる。熱電素子は、独立型の加熱器として、乗員室及びエンジンが設定温度に達した後でも通電したままにすることができる。このような構成を使用するシステムでは、乗員室を暖めるのにエンジンからの廃熱で十分な場合があるので、車両エンジンが乗員室を暖めるのに十分な温度に達すると、熱電素子に印加されるエネルギーが無駄になる恐れがある。
【0022】
いくつかの実施形態では、TEDを、乗員室の暖房及び冷房を補完するように構成することができる。例示的な構成では、エンジン及び熱電素子が、乗員用の気流に接続する1又はそれ以上の熱交換器に熱を伝達することができる。しかしながら、通常、暖冷房システムに熱電素子を追加すると、2又はそれ以上の熱交換器を含むことができるHVACシステム設計に大きな影響が及ぶ。従って、追加の熱交換器又は通常のHVACシステム設計で使用されていないその他の構成部品を数多く必要とすることなく、乗員室を素早く及び効率的に暖房及び/又は冷房できる改善された温度制御システムが必要とされている。システムは、エンジン及び/又は熱電素子から選択的に暖房を行う一方で、乗員用の気流に接続された共通の熱交換器を介して熱電素子から冷房も行うことができれば有利と考えられる。
【0023】
自動車用HVACシステムの中には、暖房モード中に空気から湿気を除去して曇りを除去し及び/又はフロントガラス上の結露形成を防ぐ曇り止め機能を提供するものもある。いくつかのシステムでは、まず空気を強制的に蒸発器に通して空気温度を露点未満に下げ、この結果湿気を凝縮して除去することにより曇り止め機能が達成される。蒸発器は、例えば二相蒸気圧縮サイクルによって冷却することができる。蒸発器を通過した後、空気を強制的に加熱器に通して、搭乗者の快適さに適した温度を実現することができる。
【0024】
本明細書では、「十分な(sufficient)」及び「十分に(sufficiently)」という用語を通常の意味に従って広義に使用する。例えば、暖房又は熱伝達との関連では、これらの用語は、(例えば、気流が1又はそれ以上の通気孔を介して乗員室に強制されるような場合)乗員用の気流が搭乗者にとって快適な温度に加温される状態、又は乗員用の気流が閾値温度に加温される状態を制限なく広義に含む。
【0025】
本明細書では、「〜できる状態にある(ready)」という用語も、通常の意味に従って広義に使用する。例えば、熱源との関連では、この用語は、熱源がいつ乗員用の気流を十分に加温できるかを判断するための1又はそれ以上の基準が満たされる状態を制限なく広義に含む。例えば、熱源は、気流が車両の乗員の場所又はその付近に導かれたときに快適となるほど十分な熱エネルギーをヒーターコアが気流に伝達できる場合、乗員用の気流を十分に加温することができる。気流は、ほぼ室温、室温と同等又は若干高め、室温より高い状態、又は適当な閾値温度以上である場合に快適であると考えられる。適当な閾値温度は、約70°F、約72°F、約75°F、室温、周囲温度に依存する温度、又は別の温度とすることができる。
【0026】
本明細書では、「冷却剤(coolant)」という用語を通常の意味に従って広義に使用する。例えば、この用語は、暖房又は冷房システム内で熱エネルギーを伝達する流体を広義に含む。
【0027】
本明細書では、「熱伝達装置(heat transfer device)」という用語を通常の意味に従って広義に使用する。例えば、この用語は、熱交換器、熱伝達面、熱伝達構造、媒体間で熱エネルギーを伝達する別の適当な装置、又はこのような装置のいずれかの組み合わせを広義に含む。
【0028】
本明細書では、「熱エネルギー源(thermal energy source)」及び「熱源(heat source)」という用語を通常の意味に従って広義に使用する。例えば、これらの用語は、車両エンジン、排気システム、発熱体、エネルギーを熱エネルギーに変換するいずれかの適当な装置、又はこれらの装置の組み合わせを広義に含む。
【0029】
本明細書では、「乗員用風洞(passenger air channel)」という用語を通常の意味で広義に使用する。例えば、乗員用風洞は、ダクト、管、通気孔、ポート、コネクタ、HVACシステム、他の適当な構造、又はこれらの構造の組み合わせなどの、空気が中を貫流できる構成部品を含む。
【0030】
本明細書では、「熱電素子(thermoelectric device)」という用語を通常の意味に従って広義に使用する。例えば、この用語は、熱電材料を組み込み、熱エネルギーを伝達するため又は温度差に基づいて電気出力を生成するために使用されるあらゆる装置を広義に含む。熱電素子は、ヒーターコア、蒸発器、電気発熱体、蓄熱装置、熱交換器、別の構造、又はこれらの構造の組み合わせなどの他の温度制御要素に一体化することができ、或いはこれらの構造とともに使用することができる。
【0031】
本明細書では、「アクチュエータ」という用語を通常の意味に従って広義に使用する。例えば、この用語は、弁、調整器、及び流体の流れを制御するために使用されるその他の適当な構造、又はこれらの構造の組み合わせなどの流体制御装置を広義に含む。
【0032】
本明細書では、「制御装置(control device)」という用語を通常の意味に従って広義に使用する。例えば、この用語は、1又はそれ以上の間の流体移動、電気エネルギー伝達、熱エネルギー伝達、及び/又はデータ通信を制御するように構成された装置又はシステムを広義に含む。制御装置は、システムの1又はそれ以上の構成部品を制御する単一のコントローラを含むことができ、又はシステムの様々な構成部品を制御する複数のコントローラを含むことができる。
【0033】
ここで図1を参照すると、エンジン100、熱電素子(TED)12、熱伝達装置150及び乗員用風洞18を含む温度制御システムの実施形態を示している。熱伝達装置150は、乗員用風洞18内に配置される。乗員用風洞18は、気流が風洞18を通過して熱伝達装置150と熱連通できるように構成される。いくつかの実施形態では、(ファンなどの)空気調和ユニットが、気流を運ぶように構成される。システムの構成部品の少なくとも一部は、例えば流体伝導管などの熱エネルギー移送手段と流体連通することができる。弁120、130及び160などのアクチュエータを使用して、管を介した熱エネルギー伝達を制御することができる。コントローラなどの制御装置を、システムの様々な構成部品及びこれらの相対的な流体連通を制御するように構成することができる。
【0034】
図示の実施形態では、弁130が開くとともに弁160が開いている第1のモードでは、熱伝達装置150、TED12、及びエンジン100の間に熱連通が存在する。第1の回路、すなわち熱源回路110では、冷却剤などの流体が循環して、エンジン100とTED12の間で熱エネルギーが伝達される。TED12には、TED12が第1の回路110と第2の回路、すなわち熱伝達回路140との間で熱エネルギーを伝達できるようにする特定の極性の電気エネルギーが供給される。流体は、第2の回路140内を循環し、熱伝達装置150とTED12の間で熱エネルギーが伝達される。第1のモードでは、TEDが第1の回路110から第2の回路140に熱エネルギーを送り出し、熱エネルギーが熱伝達装置150を介して気流に伝達される。
【0035】
第2のモードでは、バイパス回路アクチュエータ120が開き、他のアクチュエータ130、160が閉じて、流体がバイパス回路内を循環できるようになる。この循環する流体が、エンジン100と熱伝達装置150の間の熱連通を可能にする。TED12は迂回されており、エンジン100又は熱伝達装置150とはもはや熱連通していない。この動作モードでは、第1の回路110及び第2の回路140内で流体流が停止し、電気エネルギーがTEDに供給されなくなる。いくつかの実施形態では、システムが、第1の動作モードと第2の動作モードを切り替えることができる。いくつかの実施形態では、第1の流体回路110に低温コア(図示せず)を動作可能に接続又は選択的に動作可能に接続し、これを使用して熱伝達装置150、TED12、又は温度制御システムのその他の要素から外気に熱エネルギーを伝達することができる。例えば、少なくともいくつかの動作モードでは、低温コアをエンジン100と平行に、又はエンジン100の代わりに接続することができる。
【0036】
TED12は、電気エネルギーが印加された場合に熱エネルギーを特定の方向に伝達する1又はそれ以上の熱電素子を含むことができる。第1の極性を使用して電気エネルギーが印加された場合、TED12は熱エネルギーを第1の方向に伝達する。これとは別に、第1の極性とは逆の第2の極性を使用して電気エネルギーが印加された場合、TED12は、第1の方向とは逆の第2の方向に熱エネルギーを伝達する。TED12の加熱部分が熱伝達装置150と熱連通するようにシステムを構成することにより、TED12を、第1の極性の電気エネルギーが印加された場合に熱伝達装置150に熱エネルギーを伝達するように構成することができる。さらに、TED12の冷却部分をエンジン100と熱連通状態にして、TED12が、エンジンが接続された回路から熱エネルギーを取り出すようにすることができる。特定の実施形態では、制御システム(図示せず)が、TED12に印加される電気エネルギーの極性を調整して、暖房モード及び冷房モードの間で選択を行う。いくつかの実施形態では、制御システムが、TED12に印加される電気エネルギーの大きさを調整して暖房又は冷房能力を選択する。
【0037】
図2に、車両の乗員室内の温度を制御する方法を示す。この方法は、熱交換器を横切って気流を移動させるステップを含む。気流は、乗員室に入る前にダクトなどの1又はそれ以上の乗員用風洞を通過することができる。最初、制御システムは第1のモードで動作し、TEDが、熱源から熱交換器に接続された回路に、又は直接熱交換器に熱エネルギーを送り出す。制御システムは、1又はそれ以上の切り換え基準が満たされるまで第1のモードで動作し続ける。1又はそれ以上の基準が満たされた場合、制御システムは第2の動作モードに切り替わる。1つの実施形態では、制御システムが、エンジン又は別の熱源を循環する冷却剤が気流を加温できる状態にある場合に第2のモードに切り替わる。第2のモードでは、熱エネルギーが、エンジン又はその他の熱源から熱交換器に伝達される。TEDは迂回され、熱源又は熱交換器と実質的に熱連通しなくなる。この構成では、冷却剤などの流体がバイパス回路を貫流し、熱エネルギーの伝達がバイパス回路内で行われるようになる。システムは、流体流がTEDを迂回するようにするために、弁などの1又はそれ以上のアクチュエータを動作させることもできる。1つの実施形態では、コントローラが弁を制御して動作モードを切り替える。第2の動作モードでは、熱交換器が、従来の車両用HVACシステムのヒーターコアとほぼ同じように作動することができる。
【0038】
動作モードを切り替えるための1又はそれ以上の基準は、いずれの適当な基準であってもよく、車両の特性又は温度パラメータに限定されない。いくつかの実施形態では、流体流を切り替えるための基準が、アルゴリズム、ユーザの活動又は不活動、熱エネルギー源の温度、流体温度、経過した時間、及び気温のうちの1又はそれ以上を含む。特定の実施形態では、優先事項に基づいてユーザが基準を指定又は調整することができる。1つの実施形態では、エンジンが閾値温度に達した場合に第1のモードから第2のモードへの切り替えが行われる。別の実施形態では、流体回路が閾値温度に達した場合に切り替えが行われる。さらに別の実施形態では、気温が閾値温度に達した場合に切り替えが行われる。
【0039】
図3には、乗員用風洞18内の気流を加熱及び冷却するように構成できる温度制御システムの実施形態を示している。このシステムは、TED12、熱伝達装置150、低温コア、すなわち放熱部171、熱エネルギー源181、及び複数のアクチュエータ160、175、185を備える。熱伝達装置150は、乗員用風洞18内に配置される。乗員用風洞18は、気流が風洞18を通過して熱伝達装置150と熱連通できるように構成される。いくつかの実施形態では、(ファンなどの)空気調和ユニットが、気流を運ぶように構成される。システムは、低温コア171及び少なくとも1つの弁175を含む放熱回路170をさらに備える。TED12は、熱接点190において放熱回路170と熱連通する。システムは、熱エネルギー源181及び少なくとも1つの弁185を含む熱源回路180も備える。TED12は、熱接点190において熱源回路180と熱連通する。いくつかの実施形態は、熱伝達装置150及び少なくとも1つの弁160を含む熱伝達回路も含む。熱伝達回路140はTED12と熱連通し、気流と熱伝達装置150の間で熱が伝達される。1つの実施形態では、熱エネルギー源181が自動車エンジンであり、低温コアがラジエータである。流体流を引き起こすために、ポンプをシステムとともに機能するように構成できることも意図される。
【0040】
弁175及び185の少なくとも一方を動作させることにより、システムを異なるモードで動作するように構成することができ、この結果、暖房モード又は冷房モードのいずれが選択されたかに応じて、冷却剤が熱源回路又は放熱回路を貫流するようになる。暖房モードでは、弁185を開いて弁175を閉じることにより、冷却剤が熱源回路180を貫流して放熱回路170を貫流しなくなる。このモードでは、TED12が第1の極性で動作し、熱源回路180から熱伝達回路140に熱エネルギーを伝達し、この熱伝達回路140がさらに乗員用風洞18内の気流に熱エネルギーを伝達するように構成される。
【0041】
冷房モードでは、弁185を閉じて弁175を開くことにより、冷却剤が放熱回路170を貫流して熱源回路180を貫流しなくなる。このモードでは、TED12が、第1の極性とは逆の第2の極性で動作し、熱伝達回路140から放熱回路170に熱エネルギーを伝達し、この放熱回路170が気流から放熱回路170に熱エネルギーを伝達することによって気流の温度を下げるように構成される。
【0042】
図4には、図3に示すシステムの実施形態が従うことができる温度制御システムの動作方法の別の実施形態を示している。この実施形態では、気流が熱伝達装置を横切って乗員室に入る。特定の実施形態では、システムが、熱伝達装置及び熱電性装置(TED)と熱連通している第1の回路、すなわち熱伝達回路内に冷却剤などの流体を循環させる。このシステムは、暖房モード又は冷房モードのいずれが選択されたかに関する指示を受け取る。暖房モードが選択された場合、システムは、熱エネルギー源及びTEDと熱接点において熱連通する熱源回路内を流体が流れるようにする。暖房モードでは、TEDが、熱源回路と熱伝達回路の間で熱エネルギーを伝達する。冷房モードが選択された場合、システムは、低温コア及びTEDと熱接点において熱連通する放熱回路内を流体が流れるようにする。冷房モードでは、TEDが、放熱回路と熱伝達回路の間で熱エネルギーを伝達する。システムは、暖房モード又は冷房モードのいずれが選択されたかに基づいて選択する極性を指定し、この選択した極性の電気エネルギーがTEDに供給される。暖房モードでは、TEDが熱源回路から熱伝達装置に熱エネルギーを伝達するようにする極性が選択される。冷房モードでは、TEDが熱伝達装置から放熱回路に熱エネルギーを伝達するようにする極性が選択される。
【0043】
図3に示すシステムの実施形態に関して説明したように、放熱回路及び熱源回路は、システム内の流体すなわち冷却剤の流れを制御するために使用できるアクチュエータを含むことができる。1つの実施形態では、システムが、熱源回路に付随するアクチュエータを動作させることにより、流体が放熱回路を貫流するようにする。別の実施形態では、システムが、放熱回路に付随するアクチュエータを動作させることにより、流体が放熱回路を貫流するようにすることができる。さらに、いくつかの実施形態では、流体が放熱回路内を流れるようにするために、放熱回路に付随するアクチュエータを開いて、熱源回路に付随するアクチュエータを閉じることができる。流体の流れを促すために、複数のポンプを熱伝達回路、放熱回路及び熱源回路とともに機能するように構成できることも意図される。
【0044】
図5に、温度制御された空気を乗員室に供給するために使用する温度制御システム10の実施形態を示す。この実施形態では、システム10が、熱電素子(TED)12、エンジン13、熱交換器16などの熱伝達装置、及びHVACシステム62などの乗員用風洞を備える。いくつかの実施形態では、システムが低温コア40をさらに備える。システムは、1又はそれ以上のポンプ20、52、及び冷却剤などの流体を異なる構成部品間で伝達するように構成されたアクチュエータ24、26、28、32、34、36をさらに備える。エンジン13は、内部燃焼機関などのいずれかの種類の車両エンジンとすることができ、これが熱エネルギー源となる。システム10は、1つのコントローラ、複数のコントローラ、又はポンプ、弁、熱源、TED及びシステムのその他の構成部品を制御する機能を果たすことができる他のいずれかの装置によって制御することができる。コントローラは、構成部品、弁及びポンプを制御することにより、システムを様々な動作モードで動作させることができる。コントローラは、入力信号又は命令に応答してシステムのモードを変更することもできる。
【0045】
1つの実施形態では、液体冷却剤などの流体が、システム構成部品間で熱エネルギーを伝達し、1又はそれ以上のポンプによって制御される。液体冷却剤は、様々な構成部品間に流体連通を提供する管システムを介して熱エネルギーを送達することができる。アクチュエータを使用して、所定の時間にどの構成部品が熱交換器16と熱連通するかを制御することができる。或いは、温度制御システムは、他の材料又は手段を使用して構成部品間に熱連通を提供することもできる。
【0046】
この実施形態では、システム10が単一の熱交換器16を使用し、これによりさらなる熱交換器を必要とせずに標準構成を維持できるので、HVAC設計に及ぼす影響を最小限に抑えることができる。しかしながら、システム10を、複数の熱交換器及び/又は複数のHVACシステム又は風洞を含むように構成できることも意図される。システム10のモード次第で、熱交換器16は、エンジン13又は低温コア40と熱連通することができる。暖房モードでは、熱交換器16が、エンジン13及び/又は熱電素子12と熱連通することができる。冷房モードでは、熱伝達装置16が、低温コアすなわちラジエータ40及び/又は熱電素子12と熱連通することができる。
【0047】
図5には、気流が乗員室に入る前に通過するHVACシステム62の実施形態も示している。この実施形態では、熱伝達装置16が、気流との間で熱エネルギーを伝達できるようにHVACシステム62に機能的に結合され、又はHVACシステム62内に配置される。HVACシステム62内の気流は、仕切り60によって分離される1又はそれ以上の風洞52、54を貫流することができる。特定の実施形態では、第1及び第2の風洞52、54が、(同じ近似高さ、長さ、幅及び/又は断面積などの)同じ近似サイズである。他の実施形態では、第1及び第2の風洞52、54が、図5に示すように異なるサイズである。例えば、第1及び第2の風洞52、54の幅、高さ、長さ及び/又は断面積を異なるものとすることができる。いくつかの実施形態では、第1の風洞の方が第2の風洞よりも大きい。他の実施形態では、第1の風洞の方が第2の風洞よりも小さい。さらなる実施形態では、追加の仕切りを使用して、あらゆる数の風洞又は導管を形成することができる。この仕切りは、いずれの適当な材料、形状又は構成のものであってもよい。仕切りは、導管又は風洞を部分的に又は完全に分離する役目を果たすことができ、開口部、隙間、弁、ブレンドドア、その他の適当な構造、又は風洞間の流体連通を可能にする構造の組み合わせを有することができる。仕切りの少なくとも一部は、第1の風洞52を第2の風洞54から熱的に絶縁することができる。
【0048】
特定の実施形態では、HVACシステム62が、第1及び第2の風洞52、54を通過する気流を制御するように構成された第1の可動要素を備える。例えば、ブレンドドア56を、風洞52、54を通過する気流を制御するように構成することができる。風洞52、54の入口近くにブレンドドアを回転自在に結合することができる。ブレンドドアは、回転することによって、風洞52、54を通る気流を制御することができる。ブレンドドア56は、第1及び第2の風洞52、54の一方又は両方を通る気流を選択的に変更し、許容し、阻害し、又は阻止することができる。ブレンドドア56は、風洞の一方を通る気流を阻止すると同時に、他方の風洞を通る気流を全て導けることが好ましい。ブレンドドア56は、気流が両方の風洞を異なる量及び比率で通過できるようにすることもできる。いくつかの実施形態では、ブレンドドア56が仕切り60に結合され、仕切り60に対して回転する。気流を導いて気流の加熱及び冷却を向上させるために、HVACシステム62内で複数のブレンドドアを使用できることも意図される。
【0049】
いくつかの実施形態では、乗員室に入る前に気流から湿度を除去するために、HVACシステム62の気流の経路内に蒸発器58を配置することができる。いくつかの実施形態では、蒸発器58を風洞52、54の前に配置して、気流全体を調整できるようにすることができる。他の実施形態では、蒸発器を風洞の一方の中に配置して、特定の風洞内の気流のみを調整できるようにすることができる。乗員室に入る前に気流を準備又は冷却するために、復水器などの他の装置を使用することもできる。
【0050】
1つの実施形態では、システムが、第1のモード、すなわちエンジンの暖気期間のための暖房モード(「始動暖房モード」)、第2のモード、すなわちエンジンが十分に暖かい場合の暖房モード(「温暖エンジン暖房モード」)、及び乗員室を冷房するための第3のモード(「冷房モード」)を含む異なるモードで作動する。いくつかの実施形態では、単一のシステムが様々なモードの各々を実行することができるが、本発明の実施形態を、以下で説明するモードのうちの1つのみを実行するように構成できることも意図される。例えば、1つの実施形態は、エンジンを暖めている間には熱電素子から熱エネルギーを供給するモードのみを実行するように構成することができる。別の実施形態は、冷房モードにおいて説明したような冷房のみを行うように構成することができる。
【0051】
図5には、「始動暖房モード」と呼ぶこともできる第1のモードにある温度制御システム10の実施形態を示している。このモードでは、エンジン13が暖機中であり、まだ乗員室を加温するのに十分な温度に達していない間に乗員室に熱が供給される。エンジン13を最初に始動した場合、このエンジンは、乗員室内の温度を十分に高めるだけの熱を生成しない。車両エンジンは、乗員室にとって快適な空気を供給するのに必要な温度まで暖機するために数分又はそれ以上かかる可能性がある。このモードでは、コントローラがTED12に電気エネルギーを供給し、このTED12が熱勾配を発生させて、TED12の加熱部分から熱伝達回路14に熱を伝達する。ポンプ20により、暖房回路14内の液体冷却剤が暖房回路内を移動する。弁24が開き、暖房回路14が熱交換器16と流体連通し、これによりTED12と熱交換器16が熱的に接続される。熱交換器16は、HVACシステム62内に配置される。このようにして、熱電素子12によって冷却剤に伝達された熱エネルギーが、熱交換器16によって乗員室に入る気流に伝達される。1つの実施形態では、TED12が、熱交換器16のための唯一の熱エネルギー源であり、エンジン13から熱エネルギーが取られることはない。
【0052】
代替の実施形態では、始動暖房モードにおいて、熱伝達回路14内の冷却剤を加温するためにエンジン13からの熱エネルギーも使用する。弁26及び28が開くことができ、エンジン13内のポンプを、エンジン13とTED12の間で冷却剤を循環させるように構成することができる。エンジン13からの暖められた冷却剤が、TED12に熱エネルギーを伝達する。TED12の極性は、熱エネルギーをエンジンから熱伝達回路14及び熱交換器16に伝達するように構成される。従って、熱交換器16は、エンジン13及びTED12の両方から熱エネルギーを受け取る。
【0053】
図5に示すように、始動暖房モード中には、いくつかの弁32、34及び36を閉じることができる。コントローラは、低温コア40に接続された回路内に冷却剤を循環させるポンプ52を切ることもできる。いくつかの実施形態では、乗員室に入り込む気流が暖められているので、始動暖房モード中には低温コア40が不要となる。
【0054】
この実施形態では、HVACシステム62が、乗員室につながる異なる風洞52、54内に気流を導くように構成されたブレンドドア56又はその他の装置を含むことができる。この実施形態では、熱交換器16が第2の風洞54内に位置し、始動暖房モードでは、ブレンドドア56が、気流の少なくとも一部を第2の風洞54を通じて導くような位置に置かれる。代替の実施形態では、HVACシステム62の複数の風洞内に熱交換器16を動作可能に結合又は設置することができる。
【0055】
始動暖房モード中には、システム10を、気流が乗員室に入る前に曇り止めを行うように構成することができる。HVACシステム62内で蒸発器58を、気流が蒸発器58を通過することにより、熱交換器16によって加温される前に気流を冷却して湿度を除去するように構成することができる。
【0056】
図6に、「温暖エンジン暖房モード」と呼ぶこともできる第2のモードにある温度制御システム10の実施形態を示す。このモードでは、エンジン13が十分な温度に達しており、これがシステムの唯一の熱エネルギー源となる。このモードでは、エンジン13が熱交換器16と熱連通する。エンジン13からの熱エネルギーが、管内の冷却剤を介して熱交換器16に伝達される。エンジン13内のポンプを、エンジン13と熱交換器16との間に冷却剤を循環させるように構成することができる。熱交換器16とエンジン13が流体連通できるようにするために、コントローラが、アクチュエータ24、32及び34を開くように動作する。いくつかの実施形態では、アクチュエータ24及び26を閉じて冷却剤の流れをより効率的にし、アクチュエータ36を閉じてラジエータ40に冷却剤が流れないようにすることができる。
【0057】
温暖エンジン暖房モードでは、コントローラが、TED12に供給する電気エネルギーを停止するとともに、ポンプ20を切ることができる。エンジン13が十分な温度である場合、TED12はもはや不要であり、TED12に印加される電気エネルギーを節約することができる。システム10は、アクチュエータの動作を制御することにより、TED12を迂回して熱交換器16をエンジン13に熱的に接続することができる。この実施形態では、乗員用風洞62内に複数の熱交換器16又は複数組の熱交換器を有する必要はない。代わりに、システム10は、単一の熱交換器16又は単一組の熱交換器に接続された状態で様々な冷房及び/又は暖房モードで動作することができる。
【0058】
温度制御システムが温暖エンジン暖房モードにある場合、蒸発器56を、気流から湿度を除去するように構成することができる。従って、暖房処理期間を通じて曇り止めが可能となる。始動暖房モードの構成と同様に、蒸発器56をHVACシステム62内に配置して、気流が熱交換器16によって加温される前に蒸発器56を通過するようにすることができる。
【0059】
ブレンドドア56により、気流の少なくとも一部を、熱交換器16が位置する風洞54を通るように導いて、気流が乗員室に入る前に加熱されるようにすることができる。乗員室をゆっくりと暖めるためには、風洞54内の熱交換器16を通過する気流をより少なくし、及び/又は暖められていない他方の風洞52を通過する気流をより多くするようにブレンドドア56を調整することができる。暖房速度を高めるためには、熱交換器16を有する風洞54に導かれる気流をより多くし、他方の風洞52に入る気流をより少なくするようにブレンドドアを調整することができる。
【0060】
必要に応じ、温暖エンジン暖房モード中にTED12を熱エネルギー源として使用することもできる。通常は、暖まったエンジン13が、乗員室を暖めるのに十分な熱エネルギーを熱交換器16に供給できるが、TED12を補完的な熱エネルギー源として使用することもできる。システム10内のアクチュエータを、エンジン13及び暖房回路14を熱交換器16と熱連通させるように構成することができる。TED12に電気エネルギーを供給し続けて、TED12が暖房回路14に熱エネルギーを伝達し、この熱エネルギーがポンプ20によって熱交換器に移動するようにすることができる。エンジン13もまた、エンジン13内のポンプによって移動する加熱された冷却剤を介して熱交換器16に熱エネルギーを伝達するので、TED12からの熱エネルギーは補完的なものとなる。
【0061】
図7に、第3のモード、すなわち「冷房モード」にある温度制御システム10の実施形態を示す。このモードでは、システム10が、気流から熱交換器16に熱を伝達することにより、HVACシステム62内の気流を冷却する。1つの実施形態では、弁24が開き、ポンプ20が冷却剤を熱伝達回路14に貫流させて、熱交換器16からTED12に熱エネルギーが伝達される。TED12は、暖房モードで使用する極性とは逆の極性の電気エネルギーを受け取る。逆の極性の電気エネルギーがTED12に印加されると、熱勾配の方向が逆転する。TED12は、熱交換器16に熱、すなわち熱エネルギーを供給する代わりに、熱伝達回路14から離れる方向に熱エネルギーを伝達することによって熱交換器16を冷却する。
【0062】
システム10の別の実施形態では、低温コアすなわちラジエータ40が、気流の冷却を支援するように構成される。システム10の一部として、放熱回路又すなわち冷房回路50が、TED12を低温コアすなわちラジエータ40と熱連通させるように構成される。この実施形態では、アクチュエータ28、32及び34が閉じ、アクチュエータ26及び36が開いて、ポンプ52が、冷却剤が低温コア40を通じて流れるようにする。この構成では、エンジン13が冷却剤システムによって迂回され、TED12及び熱交換器16と熱連通していない。従って、冷房回路50及びラジエータ40は、TED12から効率的に熱を伝達する。
【0063】
冷房回路50及び/又はラジエータ40は、熱エネルギーを効率的に伝達するように熱電素子12の近くに位置することが好ましい。冷房中のTED12の熱勾配の方向により、熱エネルギーは、熱伝達回路14から冷房回路50及びラジエータ40に伝達される。TED12の加熱部分が冷房回路50に向けられ、TEDの冷却部分が暖房回路32に向けられる。従って、熱は、気流から熱交換器16及び暖房回路14を介してTED12の冷却部分に伝達される。TED12からは、熱が加熱部分から冷房回路50に伝達されてラジエータ40内に伝達される。ラジエータ40すなわち低温コアは、気流、又は熱を放散させる別の源にさらされることが好ましい。
【0064】
「冷房モード」中は、乗員室に入る前に気流を冷却する一部として蒸発器58を使用することができる。蒸発器58を、気流が蒸発器58を通過し、気流が熱交換器16に達する前に湿度を除去するように構成することができる。また、複数の風洞52、54の一方の中に熱交換器16を配置することができる。ブレンドドア56を、熱交換器16が位置する風洞54内に気流を導くように構成することができる。暖房モードと同様に、「冷房モード」では、ブレンドドア56が、風洞52、54を通過できる気流の量を調整することにより冷却の速度を調整することができる。或いは、個別の風洞を使用せずに、熱交換器16を気流全体から熱を伝達するように構成することができる。
【0065】
図8に、車両の乗員室を冷房するために使用できる温度制御システムの代替の実施形態を示す。この実施形態では、熱交換器16を使用せずに気流を冷却することができる。弁を全て閉じ、ポンプを全て切ることができる。TED12には電気エネルギーが印加されず、エンジン13から熱交換器16への熱エネルギーの伝達は存在しない。熱伝達源として熱交換器を使用する代わりに、気流を風洞52に導き、その後乗員室内に導く。1つの実施形態では、ブレンドドア56が、実質的に全ての気流を風洞52に導いて、気流が乗員室に入る前に熱交換器16を通過しないように構成される。いくつかの実施形態では、気流が、風洞52に入る前に蒸発器58を通過することができる。或いは、気流が通る風洞52内に蒸発器58を配置してもよい。このようにして、システム10がHVACシステム62に熱伝達を行うことなく気流を冷却する。
【0066】
本明細書を通じて行う「いくつかの実施形態」、「特定の実施形態」又は「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造、又は特性が少なくともいくつかの実施形態に含まれることを意味する。従って、本開示を通じて様々な箇所に出現する「いくつかの実施形態では」、「ある実施形態では」という表現は、必ずしも全てが同じ実施形態を示すわけではなく、同じ又は異なる実施形態の1又はそれ以上を示すことができる。さらに、1又はそれ以上の実施形態において、特定の特徴、構造、又は特性を、本開示から当業者に明らかになるようなあらゆる適当な方法で組み合わせることができる。
【0067】
本出願で使用する、「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」などの用語は同義であって、制約を持たずに包括的に使用しており、追加の要素、特徴、行為、動作などを除外するものではない。また、「又は(or)」という用語は、例えば、要素のリストを結び付けるために使用する場合には、「又は」という用語がリスト内の要素の1つ、いくつか、又は全てを意味するように(排他的な意味ではなく)包括的な意味で使用している。
【0068】
同様に、上記の実施形態の説明では、本開示を簡素化し、様々な発明の態様の1又はそれ以上を理解しやすくするために、単一の実施形態、図、又はこれらの説明において様々な特徴をともにグループ化していることがある。しかしながら、この開示方法を、いずれかの請求項に明示的に記載する特徴よりも多くの特徴をこの請求項が必要とするという意図を反映するものであると解釈すべきではない。むしろ、発明の態様は、上述したいずれかの単一の開示した実施形態の全ての特徴よりも少ないものを組み合わせた中に存在する。
【0069】
本明細書で示した発明を、特定の好ましい実施形態及び実施例との関連において開示したが、当業者であれば、本発明が、具体的に開示する実施形態を超えて他の代替の実施形態及び/又は本発明の用途、及び本発明の修正例及び同等物にも及ぶことを理解するであろう。従って、本明細書で開示した発明の範囲は、上述した特定の実施形態によって限定すべきものではなく、以下の特許請求の範囲を正しく判読することによってのみ決定すべきものであることが意図されている。
【符号の説明】
【0070】
12 熱電素子
18 乗員用風洞
100 エンジン
110 第1の回路
120 アクチュエータ
130 アクチュエータ
140 第2の回路
150 熱伝達装置
160 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員室内の温度を制御するためのシステムであって、
前記車両の前記乗員室に乗員用の気流を送達するように構成された少なくとも1つの乗員用風洞と、
少なくとも1つの熱エネルギー源と、
前記乗員用風洞に接続された少なくとも1つの熱伝達装置と、
少なくとも1つの熱電素子(TED)と、
前記熱エネルギー源及び前記TEDに冷却剤を循環させるように構成された第1の流体回路と、
前記TED及び前記熱伝達装置に冷却剤を循環させるように構成された、前記第1の流体回路とは別の第2の流体回路と、
前記熱伝達装置に前記熱エネルギー源を接続するように構成された少なくとも1つのバイパス回路と、
冷却剤を前記第1の流体回路及び前記第2の流体回路の代わりに前記バイパス回路内に循環させるように構成された少なくとも1つのアクチュエータと、
前記熱エネルギー源が前記乗員用の気流に熱を供給できる状態にあると判断された場合に前記少なくとも1つのアクチュエータを動作させ、これにより冷却剤を前記第1の流体回路及び前記第2の流体回路内の代わりに前記バイパス回路内に循環させるように構成された少なくとも1つの制御システムと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記第2の流体回路が、該第2の流体回路内に冷却剤を循環させるように構成された少なくとも1つのポンプを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記乗員用風洞に動作可能に接続された少なくとも1つの蒸発器をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記乗員用風洞内に動作可能に接続されて、前記乗員用の気流を前記熱伝達装置を横切って送るように構成された少なくとも1つのブレンドドアをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの乗員用風洞が、第1の風洞と、該第1の風洞に対して少なくとも部分的に平行に配置された第2の風洞とを備え、前記少なくとも1つのブレンドドアが、前記乗員用の気流の向きを、前記第1の風洞、前記第2の風洞、又は前記第1の風洞と前記第2の風洞を通じて流れるように選択的に変えるように構成される、
ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの熱エネルギー源が車両エンジンを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記TEDを少なくとも1つの低温コアに接続するように構成された第3の流体回路をさらに備え、前記少なくとも1つの低温コアが、熱エネルギーを外気に放散させるように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの低温コアが、熱を放散させるように構成されたラジエータを含む、
ことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第3の流体回路が、該第3の流体回路内に冷却剤を循環させる少なくとも1つのポンプを備える、
ことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの制御システムが、
前記システムが暖房モード又は冷房モードのいずれで動作しているかを判断し、
前記システムが前記冷房モードで動作していると判断された場合、冷却剤を前記第3の流体回路内に循環させるように前記少なくとも1つのアクチュエータを動作させる、
ようにさらに構成されることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの熱エネルギー源が、該熱エネルギー源が閾値温度に達した場合に、前記乗員用の気流に熱を供給できる状態にある、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの熱エネルギー源が、該少なくとも1つの熱エネルギー源を循環する前記冷却剤が閾値温度に達した場合に、前記乗員用の気流に熱を供給できる状態にある、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つのアクチュエータが、流体制御装置、弁、調整器、又はこれらの構造の組み合わせを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
車両の乗員室内の温度を制御する方法であって、
前記車両の乗員用風洞内に動作可能に接続された少なくとも1つの熱伝達装置を横切って乗員用の気流を移動させるステップと、
前記少なくとも1つの熱伝達装置に接続された第1の流体回路と、少なくとも1つの熱エネルギー源に接続された第2の流体回路との間で少なくとも1つの熱電素子(TED)が熱エネルギーを伝達する第1の動作モードで前記車両の温度制御システムを動作させるステップと、
前記温度制御システムが前記第1の動作モードで動作した後に、前記温度制御システムを第2の動作モードに切り替えるステップと、
を含み、
前記第2の動作モードでは、前記温度制御システムが、前記少なくとも1つの熱伝達装置及び前記少なくとも1つの熱エネルギー源に接続されたバイパス回路を開き、
前記バイパス回路が、前記少なくとも1つのTEDを使用せずに前記少なくとも1つの熱伝達装置と前記少なくとも1つの熱エネルギー源との間で熱エネルギーを伝達するように構成される、
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記温度制御システムを前記第2のモードに切り替えるステップが、前記少なくとも1つの熱エネルギー源の少なくとも1つが閾値温度に達した場合に行われる、
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの熱エネルギー源が自動車エンジンを含む、
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記温度制御システムを前記第2のモードに切り替えるステップが、前記自動車エンジンが最後に始動してから閾値時間が経過した後に行われる、
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記温度制御システムを前記第2のモードに切り替えるステップが、前記第2の流体回路内の前記流体の温度が閾値温度に達した場合に行われる、
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記温度制御システムを第2のモードに切り替えるステップが、前記乗員用の気流の温度が閾値温度に達した場合に行われる、
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
車両の乗員室内の温度を制御する装置を製造する方法であって、
前記車両の前記乗員室に乗員用の気流を送達するように構成された少なくとも1つの乗員用風洞を設けるステップと、
前記乗員用風洞に少なくとも1つの熱伝達装置を動作可能に接続するステップと、
少なくとも1つの熱エネルギー源を設けるステップ、
少なくとも1つの熱電素子(TED)を設けるステップと、
前記少なくとも1つの熱エネルギー源及び前記少なくとも1つのTEDに第1の流体回路を動作可能に接続するステップと、
前記少なくとも1つのTED及び前記少なくとも1つの熱伝達装置に第2の流体回路を動作可能に接続するステップと、
前記少なくとも1つの熱エネルギー源及び前記少なくとも1つの熱伝達装置にバイパス回路を動作可能に接続するステップと、
第1の動作モードでは前記第1の流体回路及び前記第2の流体回路内に流体を循環させ、第2の動作モードでは前記バイパス回路内に流体を循環させるように構成された少なくとも1つのアクチュエータを設けるステップと、
前記少なくとも1つの熱エネルギー源が、前記乗員用の気流に熱を供給できる状態にあると判断される前には前記装置を前記第1の動作モードで動作させ、前記少なくとも1つの熱エネルギー源が前記乗員用の気流に熱を供給できる状態にあると判断された後には前記装置を前記第2の動作モードで動作させるように構成された少なくとも1つの制御装置を設けるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの乗員用風洞を設けるステップが、第1の風洞及び第2の風洞を設けるステップを含む、
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
気流の向きを前記第1の風洞、前記第2の風洞、又は前記第1の風洞及び前記第2の風洞の両方に選択的に変えるように構成された少なくとも1つのブレンドドアを前記乗員用風洞に動作可能に接続するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの熱伝達装置を動作可能に接続するステップが、前記少なくとも1つの熱伝達装置を前記第1の風洞及び前記第2の風洞の一方のみに配置するステップを含む、
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記乗員用風洞に蒸発器を動作可能に接続するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項25】
低温コアの内部を流れる流体から熱エネルギーを外気に伝達するように構成された少なくとも1つの低温コアを設けるステップと、
前記少なくとも1つの低温コア及び前記少なくとも1つのTEDに第3の流体回路を動作可能に接続するステップと、
第3の動作モードにおいて流体を前記第3の流体回路内に循環させるように構成された少なくとも1つのアクチュエータを設けるステップと、
をさらに含み、
前記少なくとも1つの制御装置が、前記車両の前記乗員室内で冷房が望まれていると判断された場合に、前記装置を前記第3の動作モードで動作させるように構成される、
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−527376(P2012−527376A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511972(P2012−511972)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/035313
【国際公開番号】WO2010/135363
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(507405441)ビーエスエスティー リミテッド ライアビリティ カンパニー (4)
【Fターム(参考)】