説明

燃料供給装置

【課題】 反応容器に収容した化学水素化物の反応を、別途に電力を消費することなく促進させることができる燃料供給装置の提供。
【解決手段】 化学水素化物を反応させて水素ガスを発生させる反応容器1Aと、この反応容器1を車体に取り付ける固定部材10とを備え、この固定部材10は、反応容器1と車体との間に介在させるインシュレータ19を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に取り付けられ、水素を供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車や水素自動車には、水素を貯蔵し供給するための燃料供給装置が取り付けられている。燃料供給装置には、高圧ガスや水素吸蔵合金を用いて水素を貯蔵し、これらを収容する貯蔵容器を有するものがある。また、近年では、化学水素化物(ケミカルハイドライド)と呼ばれる化学反応系材料を用いて水素を貯蔵することの研究開発が行われている。この化学反応系材料には、無機ハイドライドや有機系ハイドライドがあり、熱分解や加水分解といった化学反応を利用して、水素を吸放出させる。このような化学反応系材料は、反応容器又は反応容器に接続された貯蔵容器に収容される。
【0003】
ケミカルハイドライドを利用し、水素を貯蔵、供給する水素貯蔵容器の例として、固体のケミカルハイドライドを保持する反応器と、この反応器内のケミカルハイドライドの表面に生成する反応生成物を除去する被覆抑制機構とを備えるものがある(特許文献1)。また、液体水素を貯蔵する内側容器と、固体のケミカルハイドライドを貯蔵する外側容器との2つの同心容器を有するものがある(特許文献2)。
【0004】
また、水素を充填した燃料タンクを取り付けた車体構造に関し、圧縮ガス容器をサポートフレームに固定し、サポートフレームごと車両に取り付ける例がある(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開2002−137903号公報
【特許文献2】特表2004−530628号公報
【特許文献2】特開2003−72398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された水素貯蔵容器を自動車に取り付けて使用することを考えると、特許文献1の反応容器は、反応容器内の金属水素化物と水とを接触加熱させるために、ポンプで加圧された水を金属水素化物に向けて噴射する構造や、水に浸した金属水素化物を超音波アクチュエータで加振する構造や、金属水素化物を回転やすりで微粉化する構造となっている。そのため、加圧ポンプやアクチュエータや回転やすりの駆動のために電力が必要となり、水素ガスを原料とする燃料電池自動車全体の発電効率が低下するという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2の貯蔵容器では、外側容器に貯蔵された熱分解系無機ハイドライドの温度分布を均一化することが困難であり、システム全体の水素貯蔵量すべてを放出させるためには過大に加熱する必要があり、車両全体の熱収支が悪化するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を有利に解決する本発明の燃料供給装置は、化学水素化物を反応させて水素ガスを発生させる反応容器と、この反応容器を車体に取り付ける固定部材とを備え、この固定部材は、反応容器と車体との間に介在させるインシュレータを含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る燃料供給装置によれば、化学水素化物を用いる燃料供給装置において、ガス燃料を吸放出させるための反応容器を、車体に対してインシュレータを介して固定したため、サスペンションより下のばね下振動を利用して反応容器を振動せることができ、効率良く水素を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る燃料供給装置の実施例を、図面を用いて説明する。
【0010】
まず、本発明の第一実施例の構成を図1〜図3に示す。第一実施例は、反応装置を車体に取り付ける固体部材として、フロアメンバに固定されるサブフレームを用いる例である。
【0011】
本実施例の燃料供給装置は、図1の斜視図で示すように、加水分解反応によって水素を放出する化学水素化物を収容する反応容器1Aと、この反応容器1Aに隣接し、加水分解のための水を貯蔵する水貯蔵容器2と、この水貯蔵容器2及び反応容器1Aのそれぞれに図示しない配管で接続され、水貯蔵容器2から供給される水を加熱する予熱ヒータ3を備えている。また、本実施例の燃料供給装置は、これらの反応容器1A、水貯蔵容器2及び予熱ヒータ3の他に、図2の平面図に示すように、水貯蔵容器2からの水を加圧して反応容器1Aに導くためのポンプ4と、水貯蔵容器2から供給される水量を測定する流量計5とを備えている。これらの反応容器1A、水貯蔵容器2、予熱ヒータ3、ポンプ4及び流量計5が取り付けられる概略矩形枠形状のサブフレーム10は、左側サブフレーム11、右側サブフレーム12、前側サブフレーム13及び後側サブフレーム14により構成されている。このサブフレーム10は、このサブフレーム10上面の四隅にそれぞれ設けられた取付点10aを介して、ボルト等の固定手段により車体のフロアメンバ20の左フレーム21及び右フレーム22に取り付け固定される。
【0012】
サブフレーム10に対する水貯蔵容器2、予熱ヒータ3、ポンプ4及び流量計5の取り付けを説明する。図2に示すように、左側サブフレーム11と右側サブフレーム12との間に支持部材15及び支持部材16が互いに平行に掛け渡され、この支持部材15及び支持部材16上に、水貯蔵容器2、予熱ヒータ3、ポンプ4及び流量計5が載置され、図示しない固定部材により固定されることで取り付けられる。
【0013】
サブフレーム10に対する反応容器1Aの取り付けのために、図2及びこの図2のA−A線視断面図である図3に示されるように、左側サブフレーム11の底面に、右側サブフレーム12に向けて突出する固定板17が固着されるとともに、反応容器1A上面の左側縁部に、左側サブフレーム11に向けて突出する取付板18が固着され、この固定板17の上面と取付板18の下面との間にインシュレータ19が介在される。同様に、右側サブフレーム12の底面に、左側サブフレーム11に向けて突出する固定板17が固着されるとともに、反応容器1A上面の右側縁部に、この右側サブフレーム12に向けて突出する取付板18が固着され、この固定板17の上面と取付板18の下面との間にインシュレータ19が介在される。このようにして、反応容器1Aは、このインシュレータ19を介してサブフレーム10に支持されることになる。このインシュレータ19としては、例えば、ラバーブッシュを用いることができる。
【0014】
本実施例に従い、反応容器1Aがインシュレータ19を介してサブフレーム10に取り付けられることにより、別途に加振装置を設けることなく、車両の走行時の振動のみで、反応容器1Aを振動させることができる。これにより、反応容器1A内に収容された化学水素化物の反応率を高めることができる。
【0015】
詳述すると、凹凸のある路面上を走行する車両への振動入力は、タイヤ・ホイルを介して車体、そしてサブフレーム10を加振する。サブフレーム10と反応容器1Aとの間にインシュレータ19が介在せず、両者がダイレクトに固着されている場合には、反応容器1Aの振動は、車体のばね上振動と同じ振動である。これに対して、サブフレーム10と反応容器1Aとの間にインシュレータ19が介在している本実施例の場合には、反応容器1Aを車体のばね上振動よりも大きく、車両の走行条件に応じて振動させることができる。
【0016】
例えば、サブフレーム10と反応容器1Aとの間に介在された4個のインシュレータ19合計の垂直方向のバネ定数がk、反応容器1A全体の質量がmであるときに、反応容器1Aとインシュレータ19との共振周波数(固有振動数)域を、車両のバネ下共振周波数fと同一周波数域である5〜15Hzとする。反応容器1A及びインシュレータ19の垂直方向の固有振動数域を車両のバネ下共振周波数域と略同一周波数域の5〜15Hzの範囲とすることにより、反応容器1Aは走行時の車両への振動入力によって車両のバネ下と同様に振動することになる。
【0017】
そして、路面の凹凸が大きく、車両の走行抵抗が大きくなればなるほど、路面からの加振力が大きくなり、反応容器1Aも振動する。また、車速が高くなればなるほど、走行抵抗が増え、同一速度を維持するためには、大きな駆動力が必要となる。つまり、同一路面であっても、車速に比例して、車両への加振力が大きくなり、反応容器1Aも振動することになる。したがって、アクチュエータ等の加振装置を別途に設けることなく、良好な乗り心地を従来どおり維持したままで、反応容器1Aを車両の走行条件に応じて振動させることが可能となる。
【0018】
インシュレータ19合計の垂直方向のバネ定数がk、反応容器1A全体の質量がm、車両のバネ下共振周波数がfであるとき、次式の関係がある。
【0019】
〔数1〕
2 π f =ωn=√(k/m) ……式(1)
上記式(1)に、一例としてf=10(Hz)、m=15(kg)を代入すると、複数個のインシュレータ19の垂直方向の合成バネ定数は、5.9(N/mm)となる。すなわち、インシュレータ19として、合成バネ定数が、5.9(N/mm)程度のものを用いることにより、効果的に反応容器1Aを加振することができる。
【0020】
この合成バネ定数は、車両のバネ下共振周波数域である5〜15Hzと、反応容器の質量との関係から、上記(1)を満たすように、1〜200N/mmの範囲で適宜選択することができる。
【0021】
また、本実施例に従い、反応容器1Aをインシュレータ19を介してサブフレーム10に支持することにより、走行時に車体へ入力される加振力により、反応容器1Aをダイナミックダンパとして振動させ、その結果として客室の乗員や荷物への振動を抑える効果もある。
【0022】
次に、本発明の第二実施例の構成を、図4及び図5を用いて説明する。第二実施例は、反応容器を車体に取り付ける固定部材として、前輪サスペンションメンバと後輪サスペンションメンバとを連結固定するサブフレームを兼用している例である。
【0023】
本実施例の燃料供給装置は、図4に斜視図で、図5(a)に平面図で、そして図5(b)に側面図でそれぞれ模式的に示すように、加水分解反応によって水素を放出する化学水素化物を収容する反応容器1Bを、中空なサブフレーム30の内部空間にインシュレータ31を介して懸架された反応容器1Bを複数個で備えている。このサブフレーム30は、前輪サスペンションメンバ40及び後輪サスペンションメンバ50の間に掛け渡され、当該前輪サスペンションメンバ40及び後輪サスペンションメンバ50を固定するものである。
【0024】
前輪サスペンションメンバ40には、左側前輪サスペンションユニット41と、右側前輪サスペンションユニット42とが取り付け固定されている。また、この前輪サスペンションメンバ40上に駆動用モータ6が載置固定されるとともに、この駆動用モータ6近傍に、駆動用モータ6の補機7が配設される。この補機7に、燃料供給装置の水貯蔵容器2や予熱ヒータ3やポンプ4や流量計5等を含ませることができる。
【0025】
後輪サスペンションメンバ50には、左側前輪サスペンションユニット51と、右側前輪サスペンションユニット52が取り付け固定される。
【0026】
サブフレーム30は、概略矩形断面の中空形状を有していて、両側面には、複数の開口30a、30bが形成されている。このサブフレーム30の内部空間に、複数個の反応容器1Bが収容されている。複数の反応容器1Bのそれぞれには、燃料電池と接続する配管(図示を省略)が個別に配設され、これにより一方の反応容器1Bが故障した際も、残りの反応容器1Bから、燃料供給ができる構造となっている。
【0027】
サブフレーム30に対する反応容器1Bの取り付けのために、この反応容器1Bの前面上端部及び後面上端部のそれぞれに、逆L型の取付部材32が固着されている。この取付部材32を、インシュレータ31を介してサブフレーム30の内部空間の上面へ固定する。これにより、反応容器1Bは、インシュレータ31を介してサブフレーム30に懸架されることになる。このインシュレータ31としては、例えば、ラバーブッシュを用いることができる。
【0028】
本実施例に従い、反応容器1Bがインシュレータ31を介してサブフレーム30に取り付けられることにより、第一実施例と同様に、別途に加振装置を設けることなく、車両の走行時の振動のみで反応容器1Bを振動させることができる。これにより、反応容器1B内に収容された化学水素化物の反応率を高めることができる。
【0029】
このインシュレータ31と反応容器1Bとの合計の固有振動数域を、車両のばね下の共振周波数域と略同一周波数域程度、具体的には、5〜15Hzとすることにより、反応容器1Bを、走行時の車両への振動入力によって車両のバネ下と同様に振動させることができる。
【0030】
本実施例においても複数個のインシュレータ31の垂直方向の合成バネ定数は、車両のバネ下共振周波数域である5〜15Hzと、反応容器の質量との関係から、先に記した(1)式を満たすように、1〜200N/mmの範囲で適宜選択することにより、反応容器1Bを効果的に振動させることができる。
【0031】
本実施例の燃料供給装置は、インシュレータ31を介して反応容器1Bをサブフレーム30に取り付け固定したために、前輪及び後輪のタイヤ43、44、53、54から、前輪、後輪のサスペンションユニット41、42、51、52を介して車体、そしてサブフレーム30を加振する振動入力により、路面の凹凸状況及び走行抵抗に応じて、反応容器1B内に収容された化学水素化物が攪拌され、脱水素化反応が促進される、そして、インシュレータ31の特性を最適化することにより、効果的に振動させることができる構造となっている。また、反応容器1Bを口の字又はコの字型断面のサブフレーム30内に格納したために、反応容器が車両最外部とならず、走行時に突起物や段差を乗り越えた場合であっても、サブフレーム30により反応容器1Bが保護され、反応容器1Bの破損を防止できる。
【0032】
また、本実施例に従い、反応容器1Bをインシュレータ31を介してサブフレーム30に支持することにより、走行時に車体へ入力される加振力により、反応容器1Bをダイナミックダンパとして振動させ、その結果として客室の乗員や荷物への振動を抑える効果もある。
【0033】
次に、本発明の第三実施例の構成を、図6に斜視図で、図7(a)に平面図で、そして図7(b)に側面図でそれぞれ模式的に示す。なお、図6及び図7において、前掲した図面と同一部材については同一符号を付してあり、以下では重複する説明を省略する。この第三実施例は、反応容器を車体に取り付ける固定部材として、フレームの一部を兼用している例である。
【0034】
本実施例の燃料供給装置は、加水分解反応によって水素を放出する化学水素化物を収容する反応容器1Cを、梯子型フレーム60に懸架している。すなわち、梯子型フレーム60は、左右のサイドメンバ61、62と、これらのサイドメンバ61、62の間に掛け渡された複数本のクロスメンバ63により構成されている。そして、この梯子型フレーム60の左右のサイドメンバ61、62の間に、複数本の台形形状の支持メンバ64を掛け渡して固定し、この支持メンバ64から、インシュレータ65を介して反応容器1Cを懸架する。このインシュレータ65としては、例えば、ラバーブッシュを用いることができる。
【0035】
この梯子型フレーム60は、図7(a)の平面図及び同図(b)の側面図に示すように、車両のほぼ全長にわたる長さを有し、この梯子型フレーム60の前輪側に前輪サスペンションメンバ40、前輪サスペンションユニット45、46、駆動用モータ6が取り付けられる。また、燃料供給装置の水貯蔵容器や予熱ヒータやポンプや流量計等も、この梯子型フレーム60の前輪側に配設することができる。梯子型フレーム60の後輪側には、後輪サスペンションメンバ50、後輪サスペンションユニット54、55が取り付けられる。
【0036】
そして、梯子型フレーム60の前輪側と後輪側との中間に、燃料供給装置の反応容器1Cが、前述したように支持メンバ64にインシュレータ65を介して懸架される。
【0037】
なお、走行時の石はねによる反応容器1Cの損傷を防止するために、反応容器1Cの下方にアンダカバを設けるようにしてもてもよい。
【0038】
本実施例に従い、反応容器1Cがインシュレータ65を介して梯子型フレーム60に取り付けられることにより、第一実施例と同様に、路面の凹凸状況及び走行抵抗に応じて、反応容器1C内に収容された化学水素化物が攪拌され、脱水素化反応が促進される。そのため、別途に加振装置を設けることなく、車両の走行時の振動のみで反応容器1Cを振動させることができる。そして、インシュレータ31の特性を最適化することにより、効果的に振動させることができる。
【0039】
このインシュレータ65と反応容器1Cとの合計の固有振動数域を、車両のばね下の共振周波数域と略同一周波数域程度、具体的には、5〜15Hzとすることにより、反応容器1Cを、走行時の車両への振動入力によって車両のバネ下と同様に振動させることができる。
【0040】
本実施例においても複数個のインシュレータ31の垂直方向の合成バネ定数は、車両のバネ下共振周波数域である5〜15Hzと、反応容器の質量との関係から、先に記した(1)式を満たすように、1〜200N/mmの範囲で適宜選択することにより、反応容器1Cを効果的に振動させることができる。
【0041】
また、本実施例に従い、反応容器1Cをインシュレータ65を介して梯子型フレーム60に支持することにより、走行時に車体へ入力される加振力により、反応容器1Cをダイナミックダンパとして振動させ、その結果として客室の乗員や荷物への振動を抑える効果もある。
【0042】
このダイナミックダンパとしての作用を、図8及び図9を用いて説明する。図8は、燃料装置の反応容器の振動モデル図であり、合計質量がM(kg)の車体及びフレームが、バネ定数がK(N/mm)のタイヤ及びサスペンションにより支えられるとともに、この車体及びフレームに、質量m(kg)の燃料装置の特に反応容器が、バネ定数k(N/mm)のインシュレータを介して支えられている。このモデルの振動系では、質量比μ=m/Mであり、燃料装置の反応容器の固有振動数ωn=√(k/m)であり、車体+フレームの固有振動数Ωn=√(K/M)である。
【0043】
この振動系における振動数とゲインとの関係を図9(a)、(b)にそれぞれ示す。図9(a)は、車体及びフレームに対する燃料装置の反応容器のゲインX2/X1を示していて、このゲインX2/X1は、インシュレータを設けたことにより、車両のばね下の共振周波数域である5〜15Hzで大きくなっている。図9(a)から、インシュレータを介在させることにより、反応容器を効果的に振動させることができることが分かる。
【0044】
また、図9(b)は、地表面に対する燃料装置の反応容器のゲインX2/Xinを示していて、このゲインX2/Xinは、インシュレータを設けたことにより、ピーク値が下がっている。したがって、インシュレータがダイナミックダンパとして作用し、客室の乗員や荷物への振動を抑える効果を有することがわかる。
【0045】
以上、図面を用いて本発明の燃料供給装置を説明したが、本発明の燃料供給装置は、図面に図示したものに限定されるものではない。例えば、インシュレータは、一般的なラバーブッシュを例に説明を行ったが、より高い周波数の加振力により、反応容器内に収容された化学水素化物を攪拌させるために、液体封入式ブッシュや空気バネを用いたダイヤフラム型、ベローズ型や油圧を用いた構造としてもよい。また、センサで路面形状を検知し、アクティブにブッシュを制御する構造としてもよいし、サスペンションメンバ、車体フロアなどに上下加速度センサを取り付け、車両振動の加速度に応じて、ブッシュの固さを可変にする構造としてもよい。
【0046】
前述した各実施例では、水タンクもしくは燃料電池から発生する水を、反応容器内で、金属水素化物に噴霧して、水素を生成する加水分解系ハイドライドを例に説明をした。本発明の燃料供給装置は、加水分解系ハイドライドに限定されず、有機系ハイドライドを反応器内の触媒や加熱器に噴霧して、脱水素化反応により水素生成を行う燃料装置に適用してもよいし、アラネート系材料やアミド系を貯蔵した貯蔵容器兼反応器に適用してもよい。
【0047】
本発明の燃料供給装置において、反応容器又は反応容器に接続される金属水素化物の貯蔵容器の水素貯蔵量が2〜20kgであることが好ましい。燃料電池自動車は、1回の燃料充填で長距離走行できることが望まれており、そのため、反応容器又は貯蔵容器は、システム効率(水素貯蔵質量/燃料システム質量)にもよるが、実用的な航続距離である200km〜500kmを走行可能な貯蔵量として、2〜20kgは水素を貯蔵できる容量であることが望まれる。
【0048】
また、反応容器又は貯蔵容器には、1種類の化学水素化物を収容させる場合に限定されず、2種類以上の化学水素化物を収容させる構成とすることもできる。
【0049】
反応容器内には、化学水素化物の他に、反応を促進させるための触媒を収容させることができる。この触媒の材料は、化学水素化物の種類によって有効な材料を適宜選択することができる。
【0050】
また、反応容器内には、化学水素化物の他に、攪拌材を収容させることができる。この攪拌材により、化学水素化物を攪拌し、反応をいっそう促進させることが可能となる。この攪拌材としては、反応容器内に収容された化学水素化物と反応しない金属材料又はセラミックス材料又は有機材料のボールを用いることができる。
【0051】
反応容器又は貯蔵容器内に、2種類以上の水素吸収材もしくは吸蔵、吸着材の体積:攪拌材のボールの体積:空間の体積の構成比は、1:1:1程度とすることが好ましい。この構成比を1:1:1とすることで、外部からの振動により、水素吸収材もしくは吸蔵、吸着材を効果的に攪拌でき、温度分布を均一化できる。
【0052】
更に2種類以上の水素吸収材もしくは吸蔵、吸着材の体積:混合用のボールの体積:空間の体積の構成比を1以下:1:1程度の割合、例えば、0.1:1:1とすることにより、燃料装置全体の体積に対する水素貯蔵量は減るが、より適切な嵩密度となり、同一の路面入力であっても、水素吸収材もしくは吸蔵、吸着材の攪拌は促進され、単位時間あたりの水素生成量を増加させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第一実施例の斜視図である。
【図2】第一実施例の平面図である。
【図3】図2の部分拡大断面図である。
【図4】第二実施例の斜視図である。
【図5】第二実施例の説明図である。
【図6】第三実施例の斜視図である。
【図7】第三実施例の説明図である。
【図8】振動モデル図である。
【図9】ダイナミックダンパの効果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
1A、1B、1C、 反応容器
10 サブフレーム
19 インシュレータ
30 サブフレーム
31 インシュレータ
60 サブフレーム
65インシュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学水素化物を反応させて水素ガスを発生させる反応容器と、この反応容器を車体に取り付ける固定部材とを備え、この固定部材は、当該反応容器と車体との間に介在させるインシュレータを含むことを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記反応容器及び前記インシュレータの垂直方向の固有振動数域が、車両のバネ下共振周波数帯と略同一周波数域であることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記反応容器及び前記インシュレータの垂直方向の固有振動数域が5〜15Hzであることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記インシュレータの垂直方向における合成バネ定数が1〜200N/mmであることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記反応容器の質量が5〜200kgであることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項6】
前記反応容器又は前記反応容器に接続する水素貯蔵容器に収容される化学水素化物の水素貯蔵量が2〜20kgであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料供給装置。
【請求項7】
前記反応容器内に、1種類以上の化学水素化物、触媒及び攪拌材を収容してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料供給装置。
【請求項8】
前記反応容器内に、2種類以上の化学水素化物と、水素化合物の攪拌材とを収容してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料供給装置。
【請求項9】
前記反応容器内に収容した2種類以上の化学水素化物と、攪拌材と残余空間との体積構成比が1:1:1であることを特徴とした請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料供給装置。
【請求項10】
前記反応容器内に、2種類以上の水素吸収材もしくは吸蔵、吸着材の体積:混合用固体の体積:空間の体積構成比が1以下:1:1であることを特徴とした請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−216922(P2007−216922A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42825(P2006−42825)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】