説明

燃料残量表示システム

【課題】燃料タンク内に残量検出用のフロートを設ける必要がなく、燃料残量を正確に計測することが可能な燃料残量表示システムを提供することを目的とする。
【解決手段】自動車1に搭載された燃料タンク2内の燃料残量を自動車の乗員に表示する燃料残量表示システムにおいて、車体側アンテナ10がGS側アンテナ30から給油量情報Aを受信するとともに、エンジン3に付設されたフュエルインジェクタ7の噴射量を制御するエンジンECU11からエンジン3が消費した燃料消費量検出結果Bを検出して、給油量情報Aと燃料消費量検出結果Bとに基づき、メインECU20が燃料タンク2内の燃料残量C(C=A−B)を算出し、この算出結果に基づいて燃料メータ15が燃料残量Cを表示するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された燃料タンク内の燃料残量を表示する燃料残量表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン等を燃料とする自動車では、運転者が燃料タンク内の燃料残量を確認できるように、インストルメントパネル等に燃料メータが設置されている。一般の自動車では、燃料の増減に伴って上下動する残量計測用のフロートが燃料タンク内に配設されており、フロートの上下位置によって抵抗値が変化する可変抵抗器の抵抗値から推定された燃料残量が燃料メータに表示される。
【0003】
このように抵抗値から燃料残量を推定する燃料残量表示システムにあっては、可変抵抗器に硫化物が析出して抵抗が増大することによって燃料残量を正確に推定できなくなることがある。このような場合にあっても燃料メータが燃料残量を正確に表示できるようにするために、燃料タンクの満タン付近においては、フロートと連動する可変抵抗器に抵抗が生じないように構成することにより、満タンとなったことを検出し易くし、一旦満タンとなったことが検出されると、満タン量から燃料噴射式エンジンの燃料消費量検出結果に基づく消費量を減算してその後の燃料残量を求めることにより、燃料残量を正確に推定できるようにした燃料残量計測装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−343379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の燃料残量計測装置では、依然として燃料タンク内にフロートを設ける必要があり、タンク内の燃料ポンプの設置や取り外しに支障を来たすことがある。また、タンク内に係留されたフロートが他のものと干渉する虞もある。
【0005】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、燃料タンク内に残量検出用のフロートを設ける必要がなく、燃料残量を正確に計測することが可能な燃料残量表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、車両に搭載された燃料タンク内の燃料残量を当該車両の乗員に表示する燃料残量表示システムであって、給油量情報を外部から取り込む給油量情報取込手段と、エンジンが消費した燃料量を検出する燃料消費量検出手段と、前記給油量取込手段の取込結果と前記燃料消費量検出手段の検出結果とに基づき、前記燃料残量を燃料残量算出値として算出する燃料残量算出手段と、前記燃料残量算出手段の算出結果に基づいて燃料残量を表示する燃料メータとを備えたことを特徴とする燃料残量表示システムを提供する。
【0007】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1の燃料残量表示システムにおいて、前記燃料タンク内の燃料残量が所定値になったことを検出する燃料センサを更に備え、前記燃料残量算出手段は、前記燃料センサからの検出信号に基づき、前記燃料残量算出値を補正することを特徴とする燃料残量表示システムを提供する。
【0008】
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2の燃料残量表示システムにおいて、前記給油量情報取込手段が、キャッシュレス清算システムの受信器であることを特徴とする燃料残量表示システムを提供する。
【0009】
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1〜請求項3のいずれかの燃料残量表示システムにおいて、前記燃料消費量検出手段が、エンジンに付設された燃料噴射弁の噴射量を制御する燃料噴射量制御手段の受信器であることを特徴とする燃料残量表示システムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の燃料残量表示システムによれば、燃料タンク内に燃料残量計測用のフロートを設ける必要がなくなり、フロートの干渉問題が解消されるとともに、燃料タンクや燃料ポンプユニット等のレイアウト設計に自由度が与えられる。また、フロートが無くなることにより、燃料ポンプユニットのメンテナンス等も容易に行えるようになる。
【0011】
また、請求項2の燃料残量表示システムによれば、取り込んだ給油量情報が正確でなかった場合や、燃料消費量検出手段か検出した消費燃料量が正確でなかった場合においても、燃料残量値を補正することによって正確な燃料残量を表示することができる。
【0012】
また、請求項3の燃料残量表示システムによれば、既存の設備を利用することによって本システムを容易に使用することができる。
【0013】
また、請求項4の燃料残量表示システムによれば、燃料噴射弁の正確な噴射量情報を取り込めるので、消費燃料量が正確に検出されて正確な燃料残量を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は燃料残量表示システムの構成を示す模式的側面図であり、図2は燃料残量表示システムの構成を示すブロック図である。また、図3は燃料残量表示システムが燃料残量を表示する際のフローチャートであり、図4は燃料残量表示システムの使用の様子を示す斜視図である。
【0015】
<実施形態の構成>
図1に示すように、自動車1(車両)は、車体の下部後方に燃料タンク2を搭載し、前方のエンジンルームにエンジン3を搭載している。燃料タンク2の内部には燃料ポンプ4が設置されており、燃料タンク2内のガソリン5が、この燃料ポンプ4によって吸引されて、燃料パイプ6を介してエンジン3側に圧送される。燃料パイプ6はフュエルインジェクタ7(燃料噴射弁)に接続され、フュエルインジェクタ7は、エンジン3の各吸気管にそれぞれ付設されており、ガソリン5をエンジン3の吸気管内に噴射する。
【0016】
一方、燃料タンク2には給油口8を備えた給油パイプ9が接続されている。また、燃料タンク2の内部には、ガソリン5の液位が低下したことを検出するサーミスタ(燃料センサ)が設置されている。本実施例においては、取付け位置の上から順に上部サーミスタ12、中部サーミスタ13、下部サーミスタ14の3つのサーミスタが設置されている。例えば、燃料タンク2の容量が50Lである場合に設置され、上部サーミスタ12はタンク内燃料残量が45Lとなったことを検出する位置に設置され、中部サーミスタ13はタンク内燃料残量が25Lとなったことを検出する位置に、下部サーミスタ14はタンク内燃料残量が5Lとなったことを検出する位置に設置されている。
【0017】
また自動車1には、フュエルインジェクタ7の噴射量の制御を行うエンジンECU(Electronic Control Unit)11(燃料噴射量制御手段(燃料消費量検出手段))と、自動車1の全体に及ぶ各種制御を行うメインECU20(燃料残量算出手段)とが備えられている。フュエルインジェクタ7は、エンジンECU11に駆動制御され、エンジンの燃焼に必要な量のガソリン5を正確に吸気管に供給する。エンジンECU11およびメインECU20は、それぞれマイクロコンピュータやROM、RAM、周辺回路、入出力インターフェース、各種ドライバ等から構成されている。エンジンECU11とメインECU20とは互いに接続されており、メインECU20は燃料消費量の制御信号をエンジンECU11に入力し、エンジンECU11は燃料消費量検出結果をメインECU20に入力する。
【0018】
自動車1のドアミラー(図示せず)には、後述する給油量情報信号Sを受信する車体側アンテナ10(給油量情報取込手段)が内蔵されている。車体側アンテナ10はメインECU20に接続されており、受信した給油量情報はメインECU20に入力される。同様に、燃料タンク2内の各サーミスタ12,13,14もメインECU20に接続されており、それぞれの検出結果がメインECU20に入力される。
【0019】
また、自動車1のインストルメントパネルには乗員に燃料残量を表示する燃料メータ15が設置されており、メインECUから出力される燃料残量算出値に基づいた燃料残量がこの燃料メータ15に表示される。これにより、乗員は燃料タンク2内の燃料残量を知ることができ、給油の必要性や給油時期、給油量などを考慮することが可能となる。
【0020】
次に、図2を参照して燃料残量表示システムの構成について説明する。メインECU20は、各種信号が入力される入力インターフェース21と、燃料の残量を算出する燃料残量算出部22と、燃料残量算出部22が算出した燃料残量結果を補正する燃料残量補正部23と、燃料残量算出部22および燃料残量補正部23の算出した算出結果を記録する記録部24と、燃料残量補正部23で補正された燃料残量算出値を出力する出力インターフェース25とから構成されている。記録部24が給油量情報および燃料消費量を記録することにより、給油量情報や燃料消費量検出結果をデータベース化することができ、これら給油情報や走行情報等を各種診断等に利用することもできる。
【0021】
そして、メインECU20の入力側には、車体側アンテナ10と、エンジンECU11と、上部サーミスタ12と、中部サーミスタ13と、下部サーミスタ14とが接続されている一方、メインECU20の出力側には、燃料メータ15が接続されている。また、ガソリンスタンド側の設備として、ガソリンスタンド側アンテナ30(以下、GS側アンテナ30と記す)が設けられている。
【0022】
図4に示すように、ガソリンスタンドには、給油ノズル31を先端に備えた給油ホース32が接続され、自動車1にガソリンを給油する給油設備33が設置されている。給油設備33の付近にはアンテナスタンド34が設置されており、アンテナスタンド34の上部には自動車1に給油された給油量情報を送信するGS側アンテナ30が収容されている。
【0023】
<実施形態の作用>
運転者は、燃料メータ15により燃料残量を確認し、給油の必要がある場合には、自動車1を運転してガソリンスタンド行き、燃料を補給する。図4に示すように、運転者が自動車1を給油設備33の付近に停車させると、給油作業員(図示せず)が給油口8を開蓋して給油ノズル31からガソリンの給油を行う。給油が完了すると、GS側アンテナ30から給油量情報を含む給油量情報信号Sが送信され、この給油量情報信号Sが車体側アンテナ10によって受信される。車体側アンテナ10は、給油量情報を受信したことを知らせる受信確認信号、およびその他の必要な情報を送信する。その他の必要な情報とは、例えば、ガソリンスタンドでの給油の清算をキャッシュレスで行う清算システムにおける運転者の個人情報等である。車体側アンテナ10により受信された給油量情報は、メインECUに入力されて燃料残量の算出に利用される。
【0024】
図2に示すように、GS側アンテナ30から送信された給油量情報信号Sは、車体側アンテナ10によって受信され、給油量情報が入力インターフェース21を介してメインECU20に入力される。また、エンジンECU11により検出された燃料消費量検出結果も、入力インターフェース21を介してメインECU20に入力される。そして給油量情報と燃料消費量検出結果とに基づいて、燃料残量算出部22が燃料残量を算出する。フュエルインジェクタ7はエンジンECU11により制御された噴出量を正確に計測して噴射することができるため、エンジンECU11から入力された燃料消費量検出結果は実際に消費された燃料量と殆ど変わらず、燃料残量算出部22は高精度に燃料残量を算出することができる。
【0025】
また、上部サーミスタ12により検出された45L検出結果は、入力インターフェース21を介してメインECU20に入力される。同様に、中部サーミスタ13により検出された25L検出結果と、下部サーミスタ14により検出された5L検出結果も、入力インターフェース21を介してそれぞれメインECU20に入力される。メインECU20に各サーミスタ12,13,14から各検出信号が入力されると、燃料残量補正部23は燃料残量算出部が算出した燃料残量と各サーミスタに対応する燃料残量(すなわち45L,25L,5L)とを比較し、両者の値が異なっている場合に補正を行う。そして燃料残量は出力インターフェース25から出力されて燃料メータ15に表示される。
【0026】
このように各サーミスタ12,13,14による検出信号に併せて燃料残量を補正することにより、ガソリンスタンドの流量メータが不正確であるような場合に、燃料残量をより正確に把握することができる。また、GS側アンテナ30が設けられていない場合や、GS側アンテナ30が故障している場合などにおいても、サーミスタに基づいて補正を行うことにより、正確な燃料残量を得ることができる。
【0027】
また、図1に示すように、燃料タンク2内には従来と異なってフロートが設けられていないため、燃料タンク2や燃料ポンプ4のレイアウト設計の自由度が増す他、燃料ポンプ4のメンテナンス等も容易に行うことができる。また、フロートが存在しないためフロートの干渉問題が発生することもない。
【0028】
次に、図3を参照して本実施形態に係る燃料残量表示システムのフローについて説明する。先ず、ステップ1において、メインECU20はガソリンスタンドからの給油量情報Aを取り込む。本実施形態においては、GS側アンテナ30から発信された給油量情報信号Sを車体側アンテナ10が受信して出力することにより、メインECU20が給油量情報Aを取り込んでいる。次にステップ2において、メインECU20はエンジンECU11から燃料消費量検出結果Bを取得する。そしてステップ3において、メインECU20は、給油量情報Aから燃料消費量検出結果Bを減算して、燃料残量C(燃料残量算出値)を算出する。
【0029】
次に、ステップ4における判定がYesである場合、すなわち各サーミスタ12,13,14が所定液量C’(それぞれ、45L,25L,5L)を検出した場合には、ステップ5において、メインECU20は、燃料残量Cが所定液量C’と異なる否かを判定する。ステップ4における判定がNoである場合、すなわち各サーミスタ12,13,14が所定液量Cを検出しない場合には、ステップ7において、燃料メータ15は燃料残量Cを燃料タンク2内の燃料残量として表示する。
【0030】
ステップ5における判定がNoである場合、すなわち燃料残量Cが所定液量C’と同じ燃料量の場合には、ステップ7において、燃料メータ15は燃料残量Cを燃料タンク2内の燃料残量として表示する。ステップ5においる判定がYesである場合、すなわち燃料残量Cが所定液量C’と異なる燃料量の場合には、ステップ6において、メインECU20は燃料残量CをC’に補正する。そして、ステップ7において、燃料メータ15は燃料残量C’を燃料タンク2内の燃料残量として表示する。燃料残量表示システムはこのフローを繰り返して燃料残量を表示する。
【0031】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、車体側アンテナはドアミラーの中に収容した専用品を用いているが、ETC(Electronic Tool Collection:自動料金収受)システムや、VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)等に用いられているアンテナを利用してもよい。このような場合にはGS側アンテナは、自動車が通過するゲートの上部に設けるような形態とすることが好ましい。
【0032】
また、電波や光などの無線による情報通信を行わなくても、自動車側に読取り器を装備し、ガソリンスタンド側の書込み器により書込まれた、または書込み器により発行された磁気カードやICチップを搭載したカード等を用いて給油量情報を取り込んでもよい。さらに、カーナビゲーションシステム等と連動させて、タッチ画面やリモコンによって手動で給油量を入力したり、燃料残量を補正したりできるようにしてもよい。
【0033】
また、本実施形態では、燃料消費量をフュエルインジェクタ7の噴射した燃料量としてエンジンECUから検出信号が入力されているが、燃料ポンプに接続された燃料パイプに流量計を設け、流量計が計測した燃料量検出結果を燃料消費量として燃料残量の算出に用いてもよい。また、燃料タンクには上部、中部、下部の3つのサーミスタを設置したが、サーミスタの数や、サーミスタを取付ける位置等もこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】燃料残量表示システムの構成を示す模式的側面図である。
【図2】燃料残量表示システムの構成を示すブロック図である。
【図3】燃料残量表示システムが燃料残量を表示する際のフローチャートである。
【図4】燃料残量表示システムの使用の様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 自動車
2 燃料タンク
3 エンジン
4 燃料ポンプ
7 フュエルインジェクタ
10 車体側アンテナ
11 エンジンECU
12 上部サーミスタ
13 中部サーミスタ
14 下部サーミスタ
15 燃料メータ
20 メインECU
30 GS側アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された燃料タンク内の燃料残量を当該車両の乗員に表示する燃料残量表示システムであって、
給油量情報を外部から取り込む給油量情報取込手段と、
エンジンが消費した燃料量を検出する燃料消費量検出手段と、
前記給油量取込手段の取込結果と前記燃料消費量検出手段の検出結果とに基づき、前記燃料残量を燃料残量算出値として算出する燃料残量算出手段と、
前記燃料残量算出手段の算出結果に基づいて燃料残量を表示する燃料メータと
を備えたことを特徴とする燃料残量表示システム。
【請求項2】
前記燃料タンク内の燃料残量が所定値になったことを検出する燃料センサを更に備え、
前記燃料残量算出手段は、前記燃料センサからの検出信号に基づき、前記燃料残量算出値を補正することを特徴とする、請求項1に記載の燃料残量表示システム。
【請求項3】
前記給油量情報取込手段が、キャッシュレス清算システムの受信器であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の燃料残量表示システム。
【請求項4】
前記燃料消費量検出手段が、エンジンに付設された燃料噴射弁の噴射量を制御する燃料噴射量制御手段であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の燃料残量表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−278108(P2007−278108A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102754(P2006−102754)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】